(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111113
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230803BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230803BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20230803BHJP
H05K 7/00 20060101ALI20230803BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
H05K7/20 B
H01B7/00 301
H02G3/16
H05K7/00 F
B60R16/02 610D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012778
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英昭
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹中 祐司
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
【テーマコード(参考)】
4E352
5E322
5G309
5G361
【Fターム(参考)】
4E352AA07
4E352BB02
4E352CC05
4E352CC12
4E352CC14
4E352GG30
5E322AA04
5E322AB01
5E322AB04
5E322EA10
5G309AA11
5G361BB01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】ワイヤハーネスの接続先となる電気機器について、放熱性を高めることを目的とする。
【解決手段】発熱部品24を有する電気機器22と、電気機器から延出する配線50と、配線に沿って広がる熱伝導性板70とを有するワイヤハーネス30とを備え、熱伝導性板70が、電気機器22に対して、発熱部品24から熱伝導性板70に伝熱可能な位置に配置されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール30Mである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部品を有する電気機器と、
前記電気機器から延出する配線と、前記配線に沿って広がる熱伝導性板とを有するワイヤハーネスと、
を備え、
前記熱伝導性板が、前記電気機器に対して、前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記ワイヤハーネスは、全体として扁平である、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記熱伝導性板は、前記配線に沿って広がる配線重複領域と、前記電気機器に重ねられる機器重複領域とを含む、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記発熱部品と前記機器重複領域との間に介在する熱伝導体をさらに備える電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記電気機器は、前記発熱部品を収容するケースを有し、
前記ケースに開口が形成され、
前記熱伝導体は、前記開口を貫通した状態で、前記発熱部品と前記機器重複領域との間に介在する、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記電気機器は、前記発熱部品が実装された基板を有し、
前記基板が前記発熱部品と前記熱伝導体との間に介在している、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記熱伝導体は、熱伝導性絶縁ゴムを含む、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記熱伝導体は前記熱伝導性板に固定されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記熱伝導性板が前記電気機器に固定されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記ワイヤハーネスは、前記電気機器のコネクタに接続される機器用コネクタと、それぞれ相手側ワイヤハーネスのコネクタが接続される第1ハーネス用コネクタ及び第2ハーネス用コネクタとを含み、
前記配線は、前記機器用コネクタから分岐して前記第1ハーネス用コネクタ及び前記第2ハーネス用コネクタに接続される複数の配線を含む、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、
前記配線は、前記第1ハーネス用コネクタと前記第2ハーネス用コネクタとを接続するスルー回路用配線を含む、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール。
【請求項12】
発熱部品を有する電気機器から延出する配線と、
前記配線に沿って広がる熱伝導性板と、
を備え、
前記熱伝導性板が、前記配線が重なる領域に広がる配線重複領域と、前記電気機器に重ねられ、前記電気機器に対して前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置される機器重複領域とを含む、ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール及びワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、インパネハーネス、エンジンルームハーネス、ドアハーネス及びフロアハーネスを相互に電気的に接続する相互接続箱を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスの接続先となる電気機器について、放熱性を高めることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、ワイヤハーネスの接続先となる電気機器について、放熱性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールは、発熱部品を有する電気機器と、前記電気機器から延出する配線と、前記配線に沿って広がる熱伝導性板とを有するワイヤハーネスと、を備え、前記熱伝導性板が、前記電気機器に対して、前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールである。
【0007】
また、本開示のワイヤハーネスは、発熱部品を有する電気機器から延出する配線と、前記配線に沿って広がる熱伝導性板と、を備え、前記熱伝導性板が、前記配線が重なる領域に広がる配線重複領域と、前記電気機器に重ねられ、前記電気機器に対して前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置される機器重複領域とを含む、ワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイヤハーネスの接続先となる電気機器について、放熱性を高めつつ小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施形態に係る一体化モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は一体化モジュールを示す平面図である。
【
図3】
図3は一体化モジュールを示す分解平面図である。
【
図5】
図5は熱伝導性板と電気機器との位置関係を示す断面図である。
【
図6】
図6は熱伝導性板と電気機器との分解斜視図である。
【
図7】
図7は
図5のVII-VII線における部分断面図である。
【
図8】
図8は第1変形例に係る電気機器の開口及び熱伝導体を示す斜視図である。
【
図9】
図9は第2変形例に係る電気機器の開口及び熱伝導体を示す斜視図である。
【
図10】
図10は複数種のコネクタ及び複数の配線の接続関係を説明する図である。
【
図11】
図11は機器用コネクタ、第1ハーネス用コネクタ及び第2ハーネス用コネクタの接続関係を説明する図である。
【
図13】
図13は第3変形例にかかるワイヤハーネスを示す分解平面図である。
【
図14】
図14は第4変形例にかかるワイヤハーネスを示す斜視図である。
【
図15】
図15は第4変形例にかかるワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
【
図16】
図16は第5変形例にかかるモジュールを示す平面図である。
【
図17】
図17は第6変形例にかかる熱伝導体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
本開示の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールは、次の通りである。
【0012】
(1)発熱部品を有する電気機器と、前記電気機器から延出する配線と、前記配線に沿って広がる熱伝導性板とを有するワイヤハーネスと、を備え、前記熱伝導性板が、前記電気機器に対して、前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置されている、電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールである。
【0013】
本開示によると、発熱部品から熱伝導性板に熱が伝わる。熱伝導性板は配線に沿って広がる板である。このため、発熱部品からの熱が熱伝導性板によって効果的に放熱され、ワイヤハーネスの接続先となる電気機器の放熱性を高めることができる。
【0014】
(2)(1)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記ワイヤハーネスは、全体として扁平であってもよい。広く設定し易い熱伝導性板によって効果的な放熱が可能となる。
【0015】
(3)(1)又は(2)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記熱伝導性板は、前記配線に沿って広がる配線重複領域と、前記電気機器に重ねられる機器重複領域とを含んでもよい。これにより、熱伝導性板の機器重複領域を利用して発熱部品から熱伝導性板に伝熱されることが容易となる。
【0016】
(4)(3)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記発熱部品と前記機器重複領域との間に介在する熱伝導体をさらに備えてもよい。これにより、発熱部品の熱を熱伝導体によって効果的に電気機器に伝えることができる。
【0017】
(5)(4)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記電気機器は、前記発熱部品を収容するケースを有し、前記ケースに開口が形成され、前記熱伝導体は、前記開口を貫通した状態で、前記発熱部品と前記機器重複領域との間に介在してもよい。この場合、熱伝導体はケースの開口を貫通しているため、発熱部品の熱が効果的に熱伝導性板に伝わる。
【0018】
(6)(4)又は(5)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記電気機器は、前記発熱部品が実装された基板を有し、前記基板が前記発熱部品と前記熱伝導体との間に介在していてもよい。
【0019】
発熱部品の熱が基板から発熱部品から基板を介して機器重複領域に伝わることができる。発熱部品が基板に対して熱伝導性板とは反対側に実装されている場合でも、熱伝導性板を介して発熱部品の熱を放熱し易い。
【0020】
(7)(4)から(6)のいずれか1つの電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記熱伝導体は、熱伝導性絶縁ゴムを含んでもよい。このように、熱伝導体が熱伝導性絶縁ゴムを含めば、発熱部品と熱伝導性板とを絶縁しつつ、発熱部品から熱伝導性板に熱が伝わり易いようにできる。
【0021】
(8)(4)から(7)のいずれか1つの電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記熱伝導体は前記熱伝導性板に固定されていてもよい。この場合、電気機器とワイヤハーネスとの合体時に、熱伝導体を発熱部品と熱伝導性板との間に介在させ易い。
【0022】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記熱伝導性板が前記電気機器に固定されていてもよい。このように、熱伝導性板が電気機器に固定されていると、前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な状態が保たれ易い。
【0023】
(10)(1)から(9)のいずれか1つの電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記ワイヤハーネスは、前記電気機器のコネクタに接続される機器用コネクタと、それぞれ相手側ワイヤハーネスのコネクタが接続される第1ハーネス用コネクタ及び第2ハーネス用コネクタとを含み、前記配線は、前記機器用コネクタから分岐して前記第1ハーネス用コネクタ及び前記第2ハーネス用コネクタに接続される複数の配線を含んでもよい。この場合、電気機器に接続されるコネクタの数を減らすことができる。これにより、電気機器のコネクタ数を削減でき、電気機器の小型化が可能となる。
【0024】
(11)(10)の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールであって、前記配線は、前記第1ハーネス用コネクタと前記第2ハーネス用コネクタとを接続するスルー回路用配線を含んでもよい。この場合、本ワイヤハーネスを介して複数種の相手側ワイヤハーネス同士を接続することも可能となり、複数種の相手側ワイヤハーネス同士の接続及び当該複数種の相手側ワイヤハーネスと機器との接続が簡易となる。
【0025】
本開示に係るワイヤハーネスは次の通りである。
【0026】
(12)発熱部品を有する電気機器から延出する配線と、前記配線に沿って広がる熱伝導性板と、を備え、前記熱伝導性板が、前記配線が重なる領域に広がる配線重複領域と、前記電気機器に重ねられ、前記電気機器に対して前記発熱部品から前記熱伝導性板に伝熱可能な位置に配置される機器重複領域とを含む、ワイヤハーネスである。
【0027】
本開示によると、発熱部品から熱伝導性板に熱が伝わる。熱伝導性板は配線に沿って広がる板である。このため、発熱部品からの熱が熱伝導性板材によって効果的に放熱され、ワイヤハーネスの接続先となる電気機器の放熱性を高めることができる。
【0028】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0029】
[実施形態]
以下、実施形態に係る電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール及びワイヤハーネスについて説明する。
図1は実施形態にかかる一体化モジュール30Mが車両10に配置された様子を示す斜視図である。
図1に示される前後方向(FRONT,REAR)、左右方向(LEFT,RIGHT)、及び上下方向(UP,LOW)は、車両10における前後方向、左右方向、及び上下方向に対応する。
図2は実施形態に係る一体化モジュール30Mを示す平面図である。
図3は実施形態に係る一体化モジュール30Mを示す分解平面図である。
図4は
図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【0030】
<電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュールの全体構成について>
電気機器22とワイヤハーネス30との一体化モジュール30Mは、例えば、車両10に配置される。一体化モジュール30Mは、電気機器22とワイヤハーネス30とを備える。電気機器22は、後述する発熱部品24を有する機器である(
図5参照)。ワイヤハーネス30は、配線50と、熱伝導性板70とを有し、全体として扁平な形状を有している。配線50は、電気機器22から延出している。本実施形態では、複数の配線50が扁平な経路に沿うように配置されている。熱伝導性板70は、配線50に沿って広がる板である。換言すれば、複数の配線50は、熱伝導性板70に沿って広がる部分を含む。複数の配線50が広がる扁平形態に沿って熱伝導性板70が配置されており、ワイヤハーネス30全体として扁平な形態を呈している。ワイヤハーネス30が扁平な形態とされているため、ワイヤハーネス30を、パネルの一主面に沿って配置し易い。
【0031】
ワイヤハーネス30は、複数種の相手側ワイヤハーネス20及び電気機器22の間に介在して、複数種の相手側ワイヤハーネス20同士を接続すると共に、複数種の相手側ワイヤハーネス20それぞれと電気機器22とを接続する。複数種の相手側ワイヤハーネス20は、車両10において互いに異なるエリアに配置される。
【0032】
<一体化モジュールの配置エリア及び接続関係について>
便宜上、車両10におけるワイヤハーネス30の配置エリア、相手側ワイヤハーネス20及び電気機器22の例について先に説明する。
【0033】
車両10におけるワイヤハーネス30の配置エリアは、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。ワイヤハーネス30が複数種の相手側ワイヤハーネス20の間に介在することに鑑みると、ワイヤハーネス30の配置エリアは、複数種の相手側ワイヤハーネス20がそれぞれ配置される複数のエリアの境界に近いエリアであることが好ましい。ここではワイヤハーネス30の配置エリアは、ダッシュパネル11及びカウルサイドパネル15の交わるエリアであるものとした説明がなされる。
【0034】
ダッシュパネル11は、車両10におけるエンジンルームと車室とを仕切る。ダッシュパネル11よりも前方がエンジンルームであり、ダッシュパネル11よりも後方が車室である。通常、ダッシュパネル11よりも後方にインストルメントパネルが設けられ、インストルメントパネルが車室に露出する。ダッシュパネル11は、本体部分12と張出部分13とを含む。ダッシュパネル11の本体部分12の主面は、車両10において、左右方向及び上下方向に広がる。張出部分13は、本体部分12における左右方向の端部の下方に設けられる。張出部分13は、本体部分12よりも車室側に張り出す部分である。張出部分13は、車両10にホイールハウスを設けるための部分である。
【0035】
カウルサイドパネル15は、ダッシュパネル11の左側及び右側のそれぞれにおいて、ダッシュパネル11に連なる。カウルサイドパネル15の主面は、車両10において、前後方向及び上下方向に広がる。
図1では、ダッシュパネル11の左側に設けられたカウルサイドパネル15とダッシュパネル11との交わるエリアが示されている。カウルサイドパネル15の前側の下方の縁部は、張出部分13に応じて曲がっている。
【0036】
カウルサイドパネル15にはインパネリンフォースメント17の端部が固定される。インパネリンフォースメント17は、ダッシュパネル11及びインストルメントパネルの間に設けられる。インパネリンフォースメント17は、左右方向に長尺な棒状の部材である。
【0037】
ダッシュパネル11及びカウルサイドパネル15の交わるエリアの下方には、フロアパネル18が設けられる。フロアパネル18の主面は、車両10において、前後方向及び左右方向に広がる。
【0038】
ワイヤハーネス30の配置エリアが、ダッシュパネル11及びカウルサイドパネル15の交わるエリアである場合、相手側ワイヤハーネス20としては、エンジンルームハーネス20A、インパネハーネス20B、ドアハーネス20C及びフロアハーネス20Dなどが想定される。エンジンルームハーネス20Aは、エンジンルームに配置される。インパネハーネス20Bは、インパネリンフォースメント17に沿って延びるように配置される。ドアハーネス20Cは、ドアに配置される。フロアハーネス20Dは、フロアに配置される。相手側ワイヤハーネス20としては、ルーフハーネス20Eが想定されてもよい。ルーフハーネス20Eは、ルーフに配置される。
【0039】
なお、本開示においてエンジンルームとの語とは、車室よりも前に位置する前室の便宜上の呼称であり、必ずしもエンジンルームにエンジンが配置されている必要は無い。同様に、本開示においてエンジンルームハーネス20Aとの語とは、車室よりも前に位置する前室に配置される相手側ワイヤハーネス20の便宜上の呼称である。
【0040】
ワイヤハーネス30の配置エリアと、エンジンルームハーネス20Aの配置エリアとは、ダッシュパネル11によって仕切られている。ここでは、ダッシュパネル11に貫通孔14が形成されている。当該貫通孔14を通じてワイヤハーネス30及びエンジンルームハーネス20Aが接続される。同様に、ワイヤハーネス30の配置エリアと、ドアハーネス20Cの配置エリアとは、カウルサイドパネル15によって仕切られている。ここでは、カウルサイドパネル15に貫通孔16が形成されている。当該貫通孔16を通じてワイヤハーネス30及びドアハーネス20Cが接続される。車両におけるフロアパネル18の側縁には、例えばロッカ部18aが位置する。フロアハーネス20Dのうちワイヤハーネス30と接続される端部が当該ロッカ部18aに沿って車両の前後方向に延びる。ルーフは、ダッシュパネル11及びカウルサイドパネル15の交わるエリアよりも上方に位置する。例えば、ルーフハーネス20Eのうちワイヤハーネス30と接続される端部が、Aピラー19に沿ってルーフからダッシュパネル11及びカウルサイドパネル15の交わるエリア又はその近傍まで延びる。
【0041】
<電気機器について>
電気機器22は、ワイヤハーネス30の配置エリアと同じエリアに配置される。
図1に示す例では、電気機器22は、カウルサイドパネル15に固定されている。電気機器22は、ダッシュパネル11、インパネリンフォースメント17又はフロアパネル18などに固定されていてもよい。
【0042】
電気機器22は、発熱部品を有する電気機器であり、例えば、ECU(電子制御ユニット)である。車両10において、1つのセントラルECUと、複数のゾーンECUとが設けられてもよい。ゾーンECUは、車両10において複数に区分けされたゾーン毎に設けられる。ゾーンECUは、主として、そのゾーン内に存在する機器の制御を実施する。セントラルECUは、複数のゾーンECUを統括して、車両10全体で協働する制御を実現する。電気機器22は、例えば、ゾーンECUであってもよい。この場合、ゾーンECUとしての電気機器22の制御対象は、エンジンルームハーネス20A、インパネハーネス20B、ドアハーネス20C及びフロアハーネス20Dの接続先の複数の機器などである。
【0043】
もっとも、ECUである電気機器22は、ゾーンECU以外の一般的なECUであってもよい。また、電気機器22は、ECUでなくともよく、例えば、ジャンクションブロック(電気接続箱などとも言う)などであってもよい。
【0044】
<ワイヤハーネスについて>
ワイヤハーネス30は、複数の配線50と熱伝導性板70とを備える。本実施形態では、ワイヤハーネス30は、さらに複数種のコネクタ42,44備える。複数種のコネクタ42、44は、接続先が相互に異なる。複数種のコネクタ42、44は、接続先となる電気機器22、相手側ワイヤハーネス20に対する接続位置に対応する位置に配置される。
【0045】
本実施形態では、複数の配線50がベース部材56、62に固定されることによって扁平な形態に保たれている。ベース部材56、62は、例えば、樹脂シートである。上記複数種のコネクタ42、44の位置及び配線50の経路に応じて分岐したり、曲ったりする形状に形成されている。複数の配線50がベース部材56又はベース部材62に固定されている。ベース部材56及びベース部材62が積層されることで、複数の配線50が扁平な形態にまとめられる。ベース部材56、62の間に配線50を配置するようにすれば、ベース部材56、62によって配線50を保護し易い。ワイヤハーネス30が扁平であることは必須ではない。ワイヤハーネス30が粘着テープ又は結束バンド等の結束部材によって束ねられており、ワイヤハーネス30の一部又は全部が円形状に束ねられた状態に保たれていてもよい。
【0046】
配線50の複数の端部のそれぞれにコネクタ42、44が接続されている。配線50は、コネクタ42を介して電気機器22に接続され、コネクタ44を介して相手側ワイヤハーネス20に接続される。配線50がコネクタ42、44を介して電気機器22及び相手側ワイヤハーネス20に接続されることは必須ではない。配線50の少なくとも一部は、電気機器22から直接引出された配線、又は、相手側ワイヤハーネス20の配線に直接繋がる配線であってもよい。
【0047】
熱伝導性板70は、複数の配線50に沿って広がる板である。本実施形態では、熱伝導性板70は、平板状である。熱伝導性板70は、厚み方向に曲っていてもよい。熱伝導性板70は、熱伝導性が良好な板、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属板である。熱伝導性板70の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも大きく、好ましくは、樹脂の熱伝導率よりも大きい。例えば、熱伝導性板70の熱伝導率は、80(W/mK)以上、好ましくは、230(W/mK)以上である。
【0048】
熱伝導性板70は、電気機器22に対して、発熱部品24からの熱伝導性板70に伝熱可能な位置に配置されている。熱伝導性板70が、電気機器22に対して、発熱部品24からの熱伝導性板70に伝熱可能な位置に配置されているとは、例えば、熱伝導性板70が空気ではない熱伝達物質を介して発熱部品24に接するか、熱伝導性板70が発熱部品24に直接接する場合を含む。つまり、電気機器22と熱伝導性板70との間に主として空気が介在する場合と比較して、熱伝導性が良好になればよい。
【0049】
本実施形態では、熱伝導性板70は、配線重複領域72と、機器重複領域74とを含む。
【0050】
配線重複領域72は、配線50に沿って広がる領域である。本実施形態では、配線重複領域72は、配線50の端部のコネクタ44に隣接する領域を除き、配線50の経路全体に沿って広がっている。配線重複領域72は、配線50の経路の少なくとも一部に重なっていればよい。配線重複領域72は、配線50の経路に重ならない付加的な領域を有していてもよい。
【0051】
機器重複領域74は、電気機器22に重ねられる領域である。本実施形態では、コネクタ42が電気機器22に接続されている。このため、配線50のうち当該コネクタ42の延長上に電気機器22が位置している。機器重複領域74は、配線重複領域72から電気機器22が位置する領域に向けて延出する領域である。本実施形態では、機器重複領域74は、電気機器22の全体に重なっている。機器重複領域74は、電気機器22の少なくとも一部に重なっていればよい。また、機器重複領域74は、電気機器22に重ならない付加的な領域を有していてもよい。
【0052】
熱伝導性板70は、ネジ又はクリップ等の固定具によって車両に固定するための固定部を有していてもよい。
図1-
図3において、固定部の一例としての固定片71の一部が例示される。固定片71は、熱伝導性板70の外周縁から外方に延出する部分的な板状部分であり、挿通孔71hを有している。固定片71が車両(例えば、カウルサイドパネル15)に接触した状態で、ネジS等によって固定片71が車両に固定される。熱伝導性板70が車両に接することで、熱伝導性板70から車両に熱が伝わり易くなる。固定片71は、必要性に応じて熱伝導性板70の周囲に複数設けられる。
【0053】
なお、車両に対する熱伝導性板70の固定構造は上記例に限られない。熱伝導性板70は、他の嵌込構造、溶接等によって車両に固定されてもよいし、電気機器22等によって一定位置に支持されてもよい。
【0054】
なお、配線50及び当該配線50を支持するベース部材56、62は、熱伝導性板70と一体化されていてもよい。例えば、熱伝導性板70の一方主面(車両に接する側とは反対側)に配線50及びベース部材56、62が配置された状態で、それらに粘着テープ、結束バンド等の結束部材79が結束されてもよい(
図2)。配線50及びベース部材56、62と、熱伝導性板70との一体化は、上記例に限定されず、例えば、両面テープ、接着剤、ネジ止等によってなされてもよい。
【0055】
配線50と熱伝導性板70とが一体化されていれば、熱伝導性板70は、配線50を熱伝導性板70に沿って平たい状態に保つ役割を果すことができる。
【0056】
<熱伝導性板と電気機器との関係について>
熱伝導性板70と電気機器22との位置関係について説明する。
図5は熱伝導性板70と電気機器22との位置関係を示す断面図である。
図6は熱伝導性板70と電気機器22との分解斜視図である。
図7は
図5のVII-VII線における部分断面図である。
図7においてケース23,回路基板25、熱伝導体78及び熱伝導性板70が断面で示されている。
【0057】
電気機器22は、発熱部品24を有する。発熱部品24は、例えば、電磁リレー、半導体スイッチ、ヒューズ(FUSE)、IC(Integrated Circuit)等、電気回路において発熱する素子である。本実施形態では、電気機器22は、ケース23と、回路基板25と、コネクタ26とを備える。
【0058】
ケース23は、樹脂等によって形成されていた箱である。本実施形態では、ケース23は、扁平な箱状に形成されている。ケース23内に発熱部品24が収容される。
【0059】
ケース23内に回路基板25が固定されている。回路基板25は、銅箔等で形成された回路パターンを有している。回路基板25には、発熱部品24が実装されている。発熱部品24の数及び位置は任意である。本実施形態では、回路基板25上に複数(図では2つ)の発熱部品24が間隔をあけて実装固定されている。回路基板25には他の電子部品が実装されてもよい。発熱部品24は、ケース23のうちの1つ板部分に面している。
【0060】
コネクタ26は、ケース23の1つの側板部においてケース23の内外を貫通している。コネクタ26の端子がケース23内で回路基板25の回路パターンに電気的に接続されている。このコネクタ26にワイヤハーネス30の機器用コネクタ42が接続されることで、配線50が電気機器22内の回路に接続される。
【0061】
ケース23のうち発熱部品24と対応する位置に開口24hが形成される。開口24hは、発熱部品24の少なくとも一部を外側に臨ませる位置に形成されればよい。つまり、ケース23のうち開口24hが形成された板部分を、当該板部分に対して垂直方向に沿って外側から観察したときに、開口24hの少なくとも一部と発熱部品24の少なくとも一部とが重なっていればよい。
図5及び
図6では、開口24hは、複数の発熱部品24に重なる複数の領域及び当該複数の領域を繋ぐ。つまり、開口24hは、複数の発熱部品24に共通する1つの開口24hとして形成されている。
【0062】
熱伝導性板70のうち機器重複領域74がケース23のうち開口24hが形成された板部分に沿って配置される。電気機器22に対して熱伝導性板70が一定位置に保たれることが好ましい。熱伝導性板70に対して電気機器22が固定されてもよい。例えば、ケース23に孔23hを有する固定片23pが突出形成されており、当該固定片23pが熱伝導性板70に形成された固定片71に重ね合わされていてもよい。この場合、ネジSが孔23h及び71hに挿通されてナットに締結されてもよい。ナットが車両側に設けられていれば、電気機器22及び熱伝導性板70を車両10に一括固定できる。
図6に1つの固定片23pが例示される。固定片23pは、必要に応じてケース23の周囲に複数設けられる。熱伝導性板70と、ケース23とが別々に車両10等に固定されることによって、熱伝導性板70とケース23とが一定の位置関係に保たれてもよい。
【0063】
一体化モジュール30Mは、発熱部品24と、機器重複領域74との間に介在する熱伝導体78を備える。熱伝導体78は、空気よりも熱伝導性に優れており、好ましくは、ケース23を形成する樹脂よりも熱伝導性に優れている。例えば、熱伝導体78の熱伝導率は、1.0(W/mK)以上、好ましくは、6.5(W/mK)以上である。
【0064】
例えば、熱伝導体78は、熱伝導性が良好でかつ絶縁性を有する熱伝導性絶縁ゴムであってもよい。熱伝導性ゴムは、例えば、熱伝導性が良好でかつ絶縁性を有するフィラー(酸化マグネシウム等)を含むゴムである。熱伝導体78がゴムであれば、熱伝導体78を発熱部品24及び熱伝導性板70に密着させ易い。また、熱伝導体78を開口24hの内周面に密着させ易い。熱伝導体78は、セラミックス、熱伝導性グリスであってもよい。
【0065】
熱伝導体78は、開口24h内に配置可能な形状に形成される。本実施形態では、開口24hは方形状であり、熱伝導体78は当該開口24h内に配置可能な直方体状である。熱伝導体78のうち発熱部品24側の面78Fが当該発熱部品24に面することができる。熱伝導体78の面78Fは当該発熱部品24の少なくとも一部に面すればよい。熱伝導体78の面78Fは当該発熱部品24からはみ出る部分を有していてもよい。本実施形態では、熱伝導体78の面78Fは、開口24hと同じ大きさに広がっている。よって、熱伝導体78の面78Fは、複数の発熱部品24の上面の全体に接触でき、かつ、複数の発熱部品24間にも広がる。
【0066】
熱伝導体78は、直方体ではない他の形状であってもよい。例えば、熱伝導体78は、円柱状形状であり、円形端面が発熱部品24の上面に対向配置されてもよい。
【0067】
熱伝導体78の外周面は、開口24hの内周面と接触するように配置されることが好ましい。これにより、熱伝導体78と開口24hとの間を通って水、ほこり等がケース23内に進入し難くなる。
【0068】
熱伝導体78の発熱部品24との間、又は、熱伝導体78と機器重複領域74との間に他の介在物が介在してもよい。介在物は、相手側に対する密着性を高める熱伝導性シート、熱伝導性接着剤、熱伝導性両面テープ又は熱伝導性グリスである。介在物が熱伝導性接着剤又は熱伝導性両面テープであれば、熱伝導体78を発熱部品24又は機器重複領域74に固定した状態に保つことができる。
【0069】
熱伝導体78が熱伝導性板70に固定されていれば、電気機器22とワイヤハーネス30とを一体化する作業時に、熱伝導体78を発熱部品24と機器重複領域74との間に介在させることが容易となる。例えば、電気機器22を熱伝導性板70に組付ける際に、熱伝導体78を開口24hに挿入すれば、熱伝導体78が発熱部品24と機器重複領域74との間に配置される。
【0070】
開口及び熱伝導体に係る第1変形例が
図8示される。同図に示すように、開口24hに対応する複数の開口24Bhは、各発熱部品24に対応して形成されてもよい。
図8では、複数の発熱部品24のそれぞれの真上に開口24Bhが形成されており、複数の開口24Bhは繋がっておらず、分離している。この場合、熱伝導体78に対応する複数の熱伝導体78Bは、複数の開口24Bhのそれぞれに配置され、複数の発熱部品24のそれぞれと熱伝導性板70との間に介在配置される。この場合、ケース23に形成される開口24Bhを小さくでき、ケース23の剛性を高めることができる。
【0071】
開口及び熱伝導体に係る第2変形例が
図9に示される。同図に示すように、開口24hに対応する開口24Chは、開口24hよりも大きい。よって、開口24Chは、複数の発熱部品24が存在する領域よりも大きい領域に形成される。
図9では、複数の発熱部品24の存在領域の周囲4方に大きく広がるように開口24Chが形成されている。この場合、熱伝導体78に対応する複数の熱伝導体78Cは、開口24Chに配置され、複数の発熱部品24のそれぞれと熱伝導性板70との間に介在配置される。この場合、熱伝導体78Cを1つの開口24Chに挿入すればよいため、熱伝導体78Cの配置作業が容易となる。また、熱伝導体78Cの断面を大きくして熱伝導性を良好にできる。
【0072】
なお、ケースに開口が形成されることは必須ではない。例えば、発熱部品24がケースの内面に熱伝導体を介して接触し、熱伝導性板が当該ケースに接していてもよい。
【0073】
<配線の接続関係例について>
図10は複数種のコネクタ42、44及び複数の配線50の接続関係を説明する図である。
図11は機器用コネクタ42、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yの接続関係を説明する図である。
【0074】
ワイヤハーネス30は、機器用コネクタ42と複数種のハーネス用コネクタ44とを含む。機器用コネクタ42は、電気機器22のコネクタ26に接続される。複数種のハーネス用コネクタ44は、それぞれに異なる相手側ワイヤハーネス20のコネクタが接続される。ここでは、複数種のハーネス用コネクタ44として、エンジンルーム(ER)ハーネス用コネクタ44A、インパネ(IP)ハーネス用コネクタ44B、ドア(DR)ハーネス用コネクタ44C及びフロア(FL)ハーネス用コネクタ44Dが設けられる。もっとも、複数種のハーネス用コネクタ44として、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dのすべてが設けられる必要は無く、2種以上が設けられるとよい。また、相手側ワイヤハーネス20としてルーフハーネス20Eが想定される場合、複数種のハーネス用コネクタ44のうちの1種としてルーフハーネス用コネクタ44Eが設けられる。ルーフハーネス用コネクタ44Eは、例えば、車両において機器用コネクタ42、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dよりも上方に配置されてもよい。ルーフハーネス用コネクタ44Eに接続される配線は機器22の側方を上下方向に延びてもよい。
【0075】
図2に示す例では、各種のコネクタ40は、1つのコネクタである。つまり、機器用コネクタ42、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dは、それぞれ1つのコネクタである。本開示において、2つ以上のコネクタについても、接続先が同じであれば1種のコネクタとみなすものとする。換言すると、同じ機器22又は同じ相手側ワイヤハーネス20に接続されるコネクタの数がいくつであっても、1種のコネクタとする。別の見方をすると、複数種のコネクタ40のそれぞれは、1つ又は複数のコネクタ(以下、分割コネクタという)からなる。それぞれの種のコネクタには、同じ構造を有するコネクタが含まれてもよい。ここでは、同じ構造を有するコネクタであっても、接続先が異なれば、異なる種類のコネクタとする。
【0076】
複数種のコネクタ40のうち少なくとも1種が2つ以上の分割コネクタを有していてもよい。例えば、複数種のコネクタ40のうち最も極数の多いコネクタ40(例えば機器用コネクタ42)が、2つ以上の分割コネクタを有していてもよい。これにより、複数種のコネクタ40のうち最も極数の多いコネクタ40の製造が容易となる。
【0077】
コネクタ40が複数の分割コネクタを含む場合、複数種のコネクタ40が4種以上であり、かつ、分割コネクタの数はN個以下であることが好ましい。ただし、Nは、ワイヤハーネス30における複数種のコネクタ40の種類の数から2を引いた数である。これにより、ある1種のコネクタ40の接続相手に他の種のコネクタ40がそれぞれ接続される場合と比べて、嵌合させるコネクタの組数を少なくすることができる。具体的には、ここではワイヤハーネス30におけるコネクタ40が、機器用コネクタ42、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dの5種である。このため、機器用コネクタ42、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dのそれぞれが複数の分割コネクタを含む場合、その数は3つ以下であることが好ましい。例えば、エンジンルームハーネス20A、インパネハーネス20B、ドアハーネス20C及びフロアハーネス20Dの4つの相手側ワイヤハーネス20がそれぞれ機器22に接続される場合、4組のコネクタを嵌合させる必要がある。これに対して、機器用コネクタ42が3つ以下の分割コネクタからなる場合、嵌合させるコネクタの組数を3つ以下とすることができる。
【0078】
複数の配線50は、スルー回路用配線52と複数の機器用配線51とを含む。スルー回路用配線52は、ハーネス用コネクタ44同士を接続する。機器用配線51は、機器用コネクタ42とハーネス用コネクタ44とを接続する。
【0079】
図3に示すように、ここでは、機器用配線51として、機器用配線51A、51B、51C、51Dが設けられる。機器用配線51Aは、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及び機器用コネクタ42を接続する。機器用配線51Bは、インパネハーネス用コネクタ44B及び機器用コネクタ42を接続する。機器用配線51Cは、ドアハーネス用コネクタ44C及び機器用コネクタ42を接続する。機器用配線51Dは、フロアハーネス用コネクタ44D及び機器用コネクタ42を接続する。なお、各機器用配線51A、51B、51C、51Dは、1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0080】
図10に示すように、ここでは、スルー回路用配線52として、スルー回路用配線52A、52B、52C、52D、52Eが設けられる。スルー回路用配線52Aは、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びインパネハーネス用コネクタ44Bを接続する。スルー回路用配線52Bは、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びフロアハーネス用コネクタ44Dを接続する。スルー回路用配線52Cは、インパネハーネス用コネクタ44B及びドアハーネス用コネクタ44Cを接続する。スルー回路用配線52Dは、インパネハーネス用コネクタ44B及びフロアハーネス用コネクタ44Dを接続する。スルー回路用配線52Eは、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dを接続する。なお、各スルー回路用配線52A、52B、52C、52D、52Eは、1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0081】
従って、ここでは、5種のコネクタ42、44間の10の経路のうち、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44C間の1つの経路以外の9つの経路に配線50が設けられている。
【0082】
図11に示すように、本開示において、複数種のハーネス用コネクタ44は、第1ハーネス用コネクタ44Xと第2ハーネス用コネクタ44Yとを含む。第1ハーネス用コネクタ44Xは第1相手側ワイヤハーネス20Xに接続される。第2ハーネス用コネクタ44Yは第2相手側ワイヤハーネス20Yに接続される。機器用コネクタ42、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yの3種のコネクタ42、44は、配線50によって相互に接続されている。具体的には、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yは、複数の機器用配線51によって機器用コネクタ42に接続される。機器用コネクタ42と第1ハーネス用コネクタ44Xとは、第1機器用配線51Xによって接続されている。機器用コネクタ42と第2ハーネス用コネクタ44Yとは、第2機器用配線51Yによって接続されている。第1ハーネス用コネクタ44Xと第2ハーネス用コネクタ44Yとは、スルー回路用配線52によって接続される。エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dの4種のハーネス用コネクタ44が、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yに当てはまるかどうかについて説明する。
【0083】
エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dの4種のハーネス用コネクタ44のうち2種が選択される組み合わせとして、6つの組が生じる。当該6組のうちエンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cからなる1組を除く5つの組は、当該組の2種のハーネス用コネクタ44を接続するスルー回路用配線52を有する。また、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dの4種のハーネス用コネクタ44は、いずれも機器用配線51を介して機器用コネクタ42に接続されている。このため、当該6組のうちエンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cからなる1組を除く5つの組は、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yの組み合わせとみなすことができる。
【0084】
一方、ここでは、ワイヤハーネス30は、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cを接続するスルー回路用配線52を有しない。このため、ここでは、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cは、第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yの組み合わせとはみなされない。
【0085】
複数種のハーネス用コネクタ44として、3種以上のハーネス用コネクタ44が設けられて、ワイヤハーネス30が、3種以上のハーネス用コネクタ44を互いに接続するスルー回路用配線52を有してもよい。エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dのうち3種が選択される組み合わせとして、4つの組が生じる。当該4組のうちエンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cを同時に含む2組を除く2つの組は、3種のハーネス用コネクタ44を相互に接続するスルー回路用配線52を有する。当該4組のうちエンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cを同時に含む2組を除く2つの組は、当該3種以上のハーネス用コネクタ44とみなすことができる。
【0086】
具体的には、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B及びフロアハーネス用コネクタ44Dは、スルー回路用配線52A、52B、52Dを介して相互に接続される。このため、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B及びフロアハーネス用コネクタ44Dの組み合わせは、当該3種以上のハーネス用コネクタ44とみなすことができる。同様に、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dは、スルー回路用配線52C、52D、52Eを介して相互に接続される。このため、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dの組み合わせは、当該3種以上のハーネス用コネクタ44とみなすことができる。
【0087】
もっとも、ワイヤハーネス30において、エンジンルームハーネス用コネクタ44A及びドアハーネス用コネクタ44Cを接続するスルー回路用配線52が設けられてもよい。この場合、エンジンルームハーネス用コネクタ44A、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dは、相互にスルー回路用配線52を介して接続される。
【0088】
また、上記配線50は、機器用コネクタ42から分岐して第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yに接続される複数の配線51X、51Yを含むとも把握される。
【0089】
<配線を扁平状態に保つための構成例について>
図12はワイヤハーネス30の分解平面図である。
図12において熱伝導性板70は省略されている。
図12に示すように、本実施形態では、複数の配線50の一部がまとめられて第1配線群54とされると共に、複数の配線50の他の一部が第1配線群54とは別にまとめられて第2配線群60とされている。ここでは、複数の配線50がベース部材56、62に固定されてまとめられている。
【0090】
複数の配線50が第1配線群54と第2配線群60とに仕分けられる分け方は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。ここでは、機器用配線51とスルー回路用配線52とに基づいて、複数の配線50が仕分けられている。具体的には、第1配線群54のうち過半数が機器用配線51である。第2配線群60のうち過半数がスルー回路用配線52である。第1配線群54のうち60%以上が機器用配線51であってもよく、70%以上が機器用配線51であってもよく、80%以上が機器用配線51であってもよく、90%以上が機器用配線51であってもよい。また、第1配線群54のすべて(100%)が機器用配線51であってもよい。同様に、第2配線群60のうち60%以上がスルー回路用配線52であってもよく、70%以上がスルー回路用配線52であってもよく、80%以上がスルー回路用配線52であってもよく、90%以上がスルー回路用配線52であってもよい。また、第2配線群60のすべて(100%)がスルー回路用配線52であってもよい。
【0091】
本例では、第1配線群54のすべて(100%)が機器用配線51である。また、第2配線群60のうち90%以上がスルー回路用配線52である。機器用配線51のうちエンジンルームハーネス用コネクタ44Aと機器用コネクタ42とを接続する機器用配線51Aが第2配線群60に設けられている。機器用配線51のうち機器用配線51Aを除く機器用配線51B、51C、51Dは第1配線群54に設けられている。スルー回路用配線52は、すべてが第2配線群60に設けられている。
【0092】
第1配線群54と第2配線群60とがそれぞれ扁平に形成されて互いに積層されている。ここでは第1配線群54は、複数の電線55と複数の電線55とを扁平に保つ扁平なベース部材56とを有する。ここでは電線55とベース部材56とは固定されている。電線55とベース部材56とは固定されていなくてもよい。また第2配線群60は、複数の電線61と複数の電線61とを扁平に保つ扁平なベース部材62とを有する。ここでは電線61とベース部材62とは固定されている。電線61とベース部材62とは固定されていなくてもよい。各電線55、61は、芯線と芯線を覆う被覆層とを有する絶縁電線である。絶縁電線は、押出成形された被覆層を有してもよい。絶縁電線は、エナメル電線であってもよい。各ベース部材56、62は、樹脂製の部材であってもよいし、金属製の部材であってもよいし、樹脂製の部分と金属製の部分との両方を有する複合部材であってもよい。例えば、ベース部材は、複数の配線を収容可能な1つ又は複数の溝が形成された樹脂成形品であってもよい。以下、第1配線群54における電線55とベース部材56との関係に着目した説明がなされる。第1配線群54における電線55とベース部材56との関係は、矛盾のない限り、第2配線群60における電線61とベース部材62との関係に適用可能である。
【0093】
複数の電線55は、ベース部材56の主面上に並んでいる。各電線55がベース部材56に固定されることによって、並列状態が保たれる。電線55とベース部材56との固定態様は、特に限定されるものではなく適宜設定可能である。例えば、電線55とベース部材56とは、融着によって固定されてもよい。この場合、電線55の被覆と、ベース部材56の主面との少なくとも一方に含まれる樹脂が溶けて、相手側の部材の表面に接着して固定される。また例えば、電線55とベース部材56とは、接着材又は粘着材によって貼り付けられてもよい。
【0094】
第1配線群54において、電線55同士がベース部材56上で交差しないように配置されている。第2配線群60においても、電線61同士がベース部材62上で交差しないように配置されている。これにより、第1配線群54及び第2配線群60の厚みが厚くなることが抑制され、第1配線群54及び第2配線群60が積層したワイヤハーネス30の厚みが厚くなることが抑制される。もっとも、第1配線群54及び第2配線群60の少なくとも一方において、電線同士がベース部材上で交差する交差部が設けられていてもよい。
【0095】
ベース部材56、62は、柔軟なシート部材56、62である。シート部材56、62は、不織布など、繊維材を有するシートであってもよい。シート部材56、62は、充実断面を有するシートであってもよい。シート部材56、62は、電線55、61の曲げに追従可能な柔軟性を有する。
【0096】
ここでは、ワイヤハーネス30の一部は、ダッシュパネル11に沿って配置される。エンジンルームハーネス用コネクタ44Aから延び出る配線部分がダッシュパネル11に沿って配置されるように保持される。
【0097】
ワイヤハーネス30の他の一部は、カウルサイドパネル15に沿って配置される。インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dが高さ方向に並び、かつ、インパネハーネス用コネクタ44B、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dのそれぞれから延び出る配線部分がカウルサイドパネル15に沿って配置されるように保持されている。
【0098】
ワイヤハーネス30は、ダッシュパネル11に沿って配置される部分と、カウルサイドパネル15に沿って配置される部分との間で、電線61及びシート部材62が厚み方向に曲がった状態で配置される。ここでは、ダッシュパネル11に沿って配置される部分は、第1配線群54及び第2配線群60のうち第2配線群60のみとなっている。このため、ワイヤハーネス30は、ダッシュパネル11に沿って配置される部分と、カウルサイドパネル15に沿って配置される部分との間で、厚み方向に曲げられやすい。
【0099】
ベース部材56のうち電線55が固定される主面と、ベース部材62のうち電線61が固定される主面とが対向するように、第1配線群54と第2配線群60とが積層されている。これにより、電線55、61が、ベース部材56、62に囲まれて保護される。もっとも、第1配線群54と第2配線群60とは、ベース部材56のうち電線55が固定される主面と、ベース部材62のうち電線61が固定されない主面とが対向するように積層されていてもよいし、ベース部材62のうち電線61が固定される主面と、ベース部材56のうち電線55が固定されない主面とが対向するように積層されていてもよい。また、第1配線群54と第2配線群60とは、ベース部材56のうち電線55が固定されない主面と、ベース部材62のうち電線61が固定されない主面とが対向するように積層されていてもよい。
【0100】
電線55と電線61とが重なるように、第1配線群54と第2配線群60とが積層されている。電線55、61は、1段の電線55と、1段の電線61とが重なって2段とされている。ワイヤハーネス30が配置される箇所のスペースの都合によっては、ワイヤハーネス30の少なくとも一部は、厚み寸法が多少大きくなっても幅寸法が小さくされることが望まれる場合もあり得る。このような場合、例えば、電線55、61が、3段以上になってもよい。また例えば、ベース部材56、62が設けられずに、テープなどの結束部材によって電線55、61が円形状断面を有するように束ねられていてもよい。
【0101】
ベース部材56は、延出片56aを有する。延出片56aは、電線55が配置される部分の両側に設けられている。ベース部材62も同様の延出片62aを有する。ベース部材56の延出片56aとベース部材62の延出片62aとが固定されることによって、第1配線群54と第2配線群60とが固定される。もっとも、ベース部材56の延出片56aとベース部材62の延出片62aとは固定されていなくてもよい。
【0102】
コネクタ42、44は、ベース部材56、62に保持されていてもよい。電線55、61がベース部材56、62の端部から延び出て、コネクタ42、44がベース部材56、62と離れて設けられていてもよい。
【0103】
複数の配線50のそれぞれの長さは1メートル以内である。ワイヤハーネス30において、一番長い配線50は、エンジンルームハーネス用コネクタ44Aとフロアハーネス用コネクタ44Dとを接続するスルー回路用配線52B又はインパネハーネス用コネクタ44Bとフロアハーネス用コネクタ44Dとを接続するスルー回路用配線52Cである。これらのスルー回路用配線52B、52Cの長さが1メートル以内である。
【0104】
なお、複数の配線50を扁平な形態に保つための構成は上記例に限られない。例えば、樹脂成形品であるプロテクタが所定の経路に沿う収容空間を形成し、複数の配線50が当該収容空間内に収容されることによって、扁平な形態に保たれてもよい。この場合、プロテクタに1本又は2、3本の配線50を収容する溝状の収容空間が複数並列状に形成されており、複数の配線50が当該溝に分けて収容されることで、全体として扁平な形態に保たれてもよい。また、プロテクタに、複数の配線を収容する扁平な収容空間が所定の経路に沿って形成されており、複数の配線が当該扁平な収容空間に収容されることによって扁平な形態に保たれてもよい。もちろん、これらの溝状の収容空間を複数並列状に形成する構成と、扁平な収容空間を形成する構成とが組合わされてもよい。
【0105】
また、複数の配線50は、熱伝導性板70に粘着テープ、結束バンド等の結束部材、両面テープ、接着剤等によって固定されてもよい。
【0106】
<効果等>
以上のように構成された一体化モジュール30M又はワイヤハーネス30によると、熱伝導性板70が、電気機器22に対して、発熱部品24から熱伝導性板70に伝熱可能な位置に配置されている。このため、発熱部品24で生じた熱が熱伝導性板70に容易に伝わる。熱伝導性板70は、配線50に沿って広がる板であるため、熱伝導性板70によって効果的に放熱される。これにより、ワイヤハーネス30の接続先となる電気機器22の放熱性を高めることができる。
【0107】
特に、近年、セントラルECU(電子制御ユニット)とは別に、車両のゾーン別にゾーンECUを設置する構成が増えている。かかるセントラルECUとゾーンECUとのうちの少なくとも一つについて、熱対策を考慮しつつ小型化することが望まれている。本実施形態によると、電気機器22をゾーンECUとすることで、当該ゾーンECUの熱対策を図ることでき、ゾーンECUに対して熱対策がなされることで、当該ゾーンECUの小型化が可能となる。
【0108】
また、熱伝導性板70は、配線50に沿って広がる配線重複領域72と、電気機器22に重ねられる機器重複領域74とを含む。このため、機器重複領域74を利用して、発熱部品24から機器重複領域74に熱が伝わる構成を容易に実現できる。
【0109】
また、発熱部品24と機器重複領域74との間に熱伝導体78を介在させることで、発熱部品24の熱が熱伝導体78を介して熱伝導性板70に効果的に伝わる。これにより、電気機器22の放熱性が良好になる。
【0110】
また、熱伝導体78が熱伝導性絶縁ゴムであれば、発熱部品24と熱伝導性板70とを絶縁しつつ、発熱部品24から熱伝導性板70に熱が伝わり易いようにできる。
【0111】
また、熱伝導体78が熱伝導性板70に固定されていれば、電気機器22とワイヤハーネス30との合体時に、熱伝導体78を発熱部品24と熱伝導性板70との間に介在させ易い。
【0112】
また、熱伝導性板70が電気機器22に固定されていれば、発熱部品24から熱伝導性板70に伝熱可能な構成が保たれ易い。例えば、上記のように、熱伝導体78を発熱部品24と熱伝導性板70との間に介在させ易い。
【0113】
また、ワイヤハーネス30が、機器用コネクタ42と、それぞれ相手側ワイヤハーネス20X、20Yのコネクタが接続される第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yとを含み、配線50が、機器用コネクタ42から分岐して第1ハーネス用コネクタ44X及び第2ハーネス用コネクタ44Yに接続される複数の配線を含む。このため、電気機器22に相手側ワイヤハーネス20X、20Y用に別々のコネクタを設けずに、コネクタ26を設ければよい。このため、電気機器22のコネクタの数を減らすことができる。ここで、電気機器における総コネクタ端子数が同じであっても、コネクタの数が多ければ、コネクタハウジングの設置スペース分、電気機器が大型化する可能性がある。電気機器22におけるコネクタ数を削減することで、電気機器22の小型化が可能となる。
【0114】
また、配線50は、第1ハーネス用コネクタ44Xと第2ハーネス用コネクタ44Yとを接続するスルー回路用配線52を含む。このため、第1ハーネス用コネクタ44Xに接続された相手側ワイヤハーネス20Xと、第2ハーネス用コネクタ44Yに接続された相手側ワイヤハーネス20Yとがスルー回路用配線52を介して接続される。これにより、本ワイヤハーネス30を介して複数種の相手側ワイヤハーネス同士を接続することも可能となり、複数種の相手側ワイヤハーネス同士の接続及び当該複数種の相手側ワイヤハーネスと機器との接続が簡易となる。
【0115】
図13は第3変形例にかかるワイヤハーネス330を示す分解平面図である。
【0116】
第3変形例にかかるワイヤハーネス330において、第1配線群354と第2配線群360との分け方が、上記ワイヤハーネス30における第1配線群54と第2配線群60との分け方とは異なる。ここでは、配線50が電源線355であるか信号線361であるかに基づいて、第1配線群354と第2配線群360とに仕分けられる。具体的には、第1配線群354のうち過半数が電源線355であり、第2配線群360のうち過半数が信号線361である。または、第1配線群354における電源線355の割合が、第2配線群360における電源線の割合よりも高い。これにより、電源線355の多くと信号線361の多くとを別にすることができる。
【0117】
第1配線群354の中での電源線355の割合は、特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、第1配線群354の中での電源線355の割合は、50%以上であってもよいし、50%未満であってもよい。つまり、第1配線群354の過半数が電源線355であってもよいし、信号線であってもよい。
【0118】
また、ワイヤハーネス330におけるすべての電源線の過半数が第1配線群354に配置されてもよい。ワイヤハーネス330におけるすべての信号線の過半数が第2配線群360に配置されてもよい。第1配線群354は信号線を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。第2配線群360は電源線を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0119】
図13に示す例では、ドアハーネス用コネクタ44Cに接続される配線50及びフロアハーネス用コネクタ44Dに接続される配線50のうち電源線355が第1配線群354に設けられ、信号線361が第2配線群360に設けられている。第1配線群354における電源線355Aは、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dそれぞれと機器用コネクタ42とを接続する。第1配線群354における電源線355Bは、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dそれぞれと他のハーネス用コネクタ44とを接続する。第2配線群360における信号線361Aは、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dそれぞれと機器用コネクタ42とを接続する。第2配線群360における信号線361Bは、ドアハーネス用コネクタ44C及びフロアハーネス用コネクタ44Dそれぞれと他のハーネス用コネクタ44とを接続する。
【0120】
図14は第4変形例にかかるワイヤハーネス430を示す斜視図である。
図15は第4変形例にかかるワイヤハーネス430を示す分解斜視図である。
【0121】
第4変形例にかかるワイヤハーネス430において、コネクタ46の形状が、上記ワイヤハーネス30におけるコネクタ44の形状とは異なる。具体的には、複数種のコネクタ44の少なくとも1種は、複数の分割コネクタ47、48からなる。複数の分割コネクタ47、48は、第1分割コネクタ47と第2分割コネクタ48とを含む。第1分割コネクタ47には、第1配線群54の配線50が接続される。第2分割コネクタ48には、第2配線群60の配線が接続される。これにより、ワイヤハーネス30の場合と比べて、第1配線群54の配線50及び第2配線群60の配線50のいずれか一方が予め挿入されたコネクタ44に、第1配線群54の配線50及び第2配線群60の配線50のいずれか他方を挿入する作業が生じにくい。これにより、第1配線群54と第2配線群60とを別に製造して、後から合体させてワイヤハーネス430とすることが容易となる。
【0122】
ここでは第1分割コネクタ47と第2分割コネクタ48とが合体して積層コネクタ46をなしている。従ってここでは、複数種のコネクタ40の少なくとも1種のコネクタ46は、相互に合体した複数の分割コネクタ47、48からなる積層コネクタ46である。各種のコネクタ44は、積層コネクタ46以外の態様で分割されていてもよい。例えば、機器用コネクタ42が、厚み方向と交差する方向に並ぶ複数の分割コネクタに分割されてもよい。2つの分割コネクタが合体せずにそれぞれ電気機器22に接続されてもよい。
【0123】
図16は第5変形例にかかるモジュール530Mを示す平面図である。
【0124】
本モジュール530Mにおいて、配線50に対応する配線650は、機器用コネクタ42から複数(ここでは2つ)ハーネス用コネクタ544X、544Yに分れる複数の配線650X、650Yを含む。配線650は、シート部材等のベース部材556に固定されて扁平状態に保たれている。
【0125】
熱伝導性板70に対応する熱伝導性板570は、配線650に沿って広がっている。熱伝導性板570は、例えば、ベース部材556に沿って広がっている。また、上記実施形態と同様に、熱伝導性板570は、電気機器22にも重なっている。本変形例では、モジュール530Mは、スルー回路用配線を有していない。また、複数の配線50が複数の群に分けられず、ひとまとめとされて扁平な形態に保たれている。
【0126】
図17は第6変形例に係る熱伝導体678の配置例を示す断面図である。
【0127】
上記実施形態では、ケース23のうち発熱部品24と対向する位置に開口24hが形成されており、熱伝導体78は、開口24h内に配置されている。このため、熱伝導体78は、発熱部品24に対して回路基板25とは反対側から当該発熱部品24に面することができる。
【0128】
本変形例では、ケース23に対して、発熱部品24よりも回路基板25に近い側に熱伝導性板70の機器重複領域74が配置されている。そこで、ケース23のうち回路基板25に対して発熱部品24とは反対側から面する領域に開口624hが形成されている。
【0129】
熱伝導体678は、開口624hを通った状態で、熱伝導性板70と回路基板25との間に介在している。熱伝導体678は、熱伝導性板70及び回路基板25に対して直接接触していてもよい。熱伝導体678と熱伝導性板70又は回路基板25との間に、他の介在物が介在してもよい。介在物は、相手側に対する密着性を高める熱伝導性シート、熱伝導性接着剤、熱伝導性両面テープ又は熱伝導性グリスである。
【0130】
この変形例によると、発熱部品24の熱は、当該発熱部品24が回路基板25に接することによって、又は、当該発熱部品24のリードを介して回路基板25に伝わる。回路基板25に伝わった熱は、熱伝導体678から熱伝導性板70に伝わり、放熱される。このため、発熱部品24が回路基板25に対して熱伝導性板70とは反対側に実装されている場合でも、熱伝導性板70を介して発熱部品24の熱を放熱し易い。
【0131】
なお、ケースの開口が側壁に形成されており、熱伝導体が当該側壁の開口を通じて発熱部品24の側面又は回路基板25に直接又は間接的に接していてもよい。この場合、熱伝導性板の一部がケースの側壁の外側に延長するように形成されており、熱伝導体が当該延長部分に直接又は間接的に接しているとよい。発熱部品24が回路基板25の周縁に近い位置に実装されている場合に有効である。
【0132】
また複数種のコネクタのうち少なくとも一部は、車両等に固定された待ち受けコネクタとされてもよい。例えば、複数種のハーネス用コネクタ44のうち少なくとも一部が、待ち受けコネクタとされてもよい。これにより、相手側ワイヤハーネスをハーネス用コネクタ44に接続しやすい。
【0133】
また、ワイヤハーネス30の配置エリアは、リアシート又はリアラゲージに近接するエリアなどであってもよい。この場合、相手側ワイヤハーネス20としては、フロアハーネス、シートハーネス及びリアハーネスなどが想定される。
【0134】
上記実施形態及び各変形例では、ケース23と、熱伝導性板70、570とが別体である例が説明された。ケースと熱伝導性板とは一体形成されていてもよい。例えば、1枚の金属板がプレス加工されることによって、熱伝導性板の一部がケースをなすように構成されていてもよい。
【0135】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0136】
10 車両
11 ダッシュパネル
12 本体部分
13 張出部分
14、16 貫通孔
15 カウルサイドパネル
17 インパネリンフォースメント
18 フロアパネル
18a ロッカ部
19 Aピラー
20 相手側ワイヤハーネス(20A エンジンルームハーネス、20B インパネハーネス、20C ドアハーネス、20D フロアハーネス、20E ルーフハーネス)
20X 第1相手側ワイヤハーネス
20Y 第2相手側ワイヤハーネス
22 電気機器
23 ケース
23h 孔
23p 固定片
24 発熱部品
24h、24Bh、24Ch、24h 開口
25 回路基板
26 コネクタ
30、330、430 ワイヤハーネス
30M、530M 電気機器とワイヤハーネスとの一体化モジュール
42 機器用コネクタ
44 ハーネス用コネクタ(44A エンジンルームハーネス用コネクタ、44B インパネハーネス用コネクタ、44C ドアハーネス用コネクタ、44D ハーネス用コネクタ、44E ルーフハーネス用コネクタ)
44X、544X 第1ハーネス用コネクタ
44Y、544Y 第2ハーネス用コネクタ
46 積層コネクタ
47 第1分割コネクタ
48 第2分割コネクタ
50、650、650X、650Y 配線
51、51A、51B、51C、51D 機器用配線
51X 第1機器用配線
51Y 第2機器用配線
52、52A、52B、52C、52D、52E スルー回路用配線
54 第1配線群
55、61 電線
56、62、556 シート部材(ベース部材)
56a、62a 延出片
60 第2配線群
62a 延出片
70、570 熱伝導性板
71 固定片
71h 挿通孔
72 配線重複領域
74 機器重複領域
78、78B、78C 熱伝導体
78F 面
79 結束部材
354 第1配線群
355、355A、355B 電源線
360 第2配線群
361、361A、361B 信号線
S ネジ