(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011114
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】走行体システム,走行体制御装置及び走行体
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230117BHJP
【FI】
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114738
(22)【出願日】2021-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年7月31日発行の『地方独立行政法人岩手県工業技術センター最新成果集2020』の表紙,目次,第4頁の写し
(71)【出願人】
【識別番号】306017014
【氏名又は名称】地方独立行政法人 岩手県工業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】箱崎 義英
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE12
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】 走行経路の変更に対しても容易に対応できるように、システムの設定作業の簡易化を図る。
【解決手段】 走行経路Rにおいて駆動部により各種の走行動作を行う走行体1を備え、走行体1に駆動部を制御する走行体制御装置Tを搭載し、走行経路Rの複数の特定個所(P1~P6)内やその近傍に夫々標識体Mを設置し、各標識体Mに、夫々、走行経路Rの始点Psから終点Pgに向かって設置される順番に対応した順番マーカMaを表示するとともに、設置される特定個所(P1~P6)における走行体1が行うべき特定走行動作に対応した走行動作マーカMbを表示し、順番マーカMaを人が視認して順番として判読できるマーカで構成し、走行動作マーカMbを人が視認して特定走行動作として判読できるマーカで構成した。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体を備え、該走行体に上記駆動部を制御する走行体制御装置を搭載した走行体システムであって、
上記走行経路の複数の特定個所内やその近傍に夫々標識体を設置し、各標識体に、夫々、上記走行経路の始点から終点に向かって該各標識体が設置される順番に対応した順番マーカを表示するとともに、上記標識体が設置される特定個所における上記走行体が行うべき特定走行動作に対応した走行動作マーカを表示し、上記順番マーカを人が視認して順番として判読できるマーカで構成し、上記走行動作マーカを人が視認して特定走行動作として判読できるマーカで構成し、
上記走行体制御装置は、
上記標識体を撮像する撮像手段と、
該撮像手段が撮像した標識体に表示された順番マーカを認識するとともに当該認識した順番マーカが特定すべき正しい順番マーカか否かを判定し、正しいと判定した順番マーカを特定する順番マーカ認識特定手段と、
上記撮像手段が撮像し上記順番マーカ認識特定手段が特定した順番マーカが表示された標識体の走行動作マーカを認識して特定する走行動作マーカ認識特定手段と、
上記走行体が一般部を走行するときの一般走行動作を該走行体に行わせるとともに、上記順番マーカ認識特定手段が順番マーカを特定し且つ上記走行動作マーカ認識特定手段が当該順番マーカに対応する走行動作マーカを特定する毎に該走行動作マーカに対応した特定走行動作を上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする走行体システム。
【請求項2】
上記順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段は、予め複数のマーカに係る撮像画像に基づき機械学習手段により学習した学習済みモデルを用いて、上記撮像手段が撮像した標識体の撮像画像から該当するマーカを認識することを特徴とする請求項1記載の走行体システム。
【請求項3】
上記順番マーカ認識特定手段は、
上記標識体を撮像した撮像画像から順番マーカを認識する順番マーカ認識手段と、
該順番マーカ認識手段が認識した順番マーカの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段と、
該フレームサイズ判定手段が閾値以上と判定した順番マーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段と、
該認識頻度判定手段が閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番の正否を判定する順番正否判定手段と、
該順番正否判定手段が正と判定したとき当該順番マーカを特定する一方、否と判定したとき当該順番マーカの特定をキャンセルする順番マーカ特定手段とを備え、
上記走行動作マーカ認識特定手段は、
上記標識体を撮像した撮像画像から走行動作マーカを認識する走行動作マーカ認識手段と、
該走行動作マーカ認識手段が認識した走行動作マーカの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段と、
該フレームサイズ判定手段が閾値以上と判定した走行動作マーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段と、
該認識頻度判定手段が閾値以上と判定したとき認識した走行動作マーカを特定する走行動作マーカ特定手段とを備え、
上記順番マーカ特定手段が特定した順番マーカに係り上記走行動作マーカ特定手段が特定した走行動作マーカに対応し該当する特定個所で行うべき特定走行動作を上記順番マーカ特定手段の特定毎に更新して記憶する特定走行動作記憶手段を備え、
上記駆動制御手段は、上記特定走行動作記憶手段に記憶した行うべき走行動作を所定のタイミングで上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御することを特徴とする請求項2記載の走行体システム。
【請求項4】
上記駆動制御手段は、上記順番マーカ認識特定手段の順番マーカ特定手段が順番マーカの特定をキャンセルしたとき、上記走行体の走行状態を維持するとともに、上記順番マーカ特定手段による次の順番マーカの特定がない状態で、所定時間経過し若しくは該走行体が所定距離走行したとき、該走行体の走行を停止するよう上記駆動部を制御することを特徴とする請求項3記載の走行体システム。
【請求項5】
上記特定個所で上記走行体が順に行うべき特定走行動作が複数あるとき、上記標識体に、各特定走行動作に対応した複数の走行動作マーカを上記走行体が行うべき特定走行動作順に基づいて予め定めた表示形式で表示し、
上記走行動作マーカ認識特定手段は、上記表示形式に従う特定走行動作順に対応付けて上記複数の走行動作マーカを認識して特定し、
上記特定走行動作記憶手段は、上記走行動作マーカ認識特定手段によって特定された複数の走行動作マーカに対応した特定走行動作を上記表示形式に従う特定走行動作順に対応付けて記憶し、
上記駆動制御手段は、上記特定走行動作記憶手段に記憶された複数の特定走行動作を上記表示形式に従う特定走行動作順に従って順次上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御することを特徴とする請求項3または4記載の走行体システム。
【請求項6】
特定個所における特定走行動作が終了する毎に終了に係る順番マーカを記憶する既出順番マーカ記憶手段を備え、
上記順番正否判定手段は、
初回に認識すべき順番マーカのときは順番を1とし、2回目以降に認識すべき順番マーカのときは上記既出順番マーカ記憶手段に記憶された最後の順番マーカの順番に1つ加算した順番として算出する順番算出手段と、
上記認識頻度判定手段が閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番が、上記順番算出手段が算出した順番と一致するか否かを照合する順番照合手段と、
該順番照合手段の照合結果が一致したとき当該順番マーカを特定すべき順番マーカと認定する順番マーカ認定手段とを備え、
上記順番マーカ特定手段は、上記順番マーカ認定手段の認定に基づいて順番マーカの特定またはキャンセルを行う機能を備えたことを特徴とする請求項3乃至5何れかに記載の走行体システム。
【請求項7】
上記順番正否判定手段は、上記認識頻度判定手段が初回に閾値以上と判定した順番マーカを特定すべき順番マーカとして認定するとともに、上記認識頻度判定手段が2回目以降に閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番が、上記既出順番マーカ記憶手段に記憶された最後の順番マーカの順番より大きいとき当該順番マーカを特定すべき順番マーカと認定する第2順番マーカ認定手段を備え、
上記順番マーカ特定手段は、上記第2順番マーカ認定手段の認定に基づいて順番マーカの特定またはキャンセルを行う機能を備え、
基本モード及び修正モードの2つのモードの何れかに切換えて設定可能なモード設定手段と、
該モード設定手段が基本モードに設定したとき、上記順番正否判定手段の順番算出手段,順番照合手段及び順番マーカ認定手段の機能を有効にし、上記モード設定手段が修正モードに設定したとき、上記第2順番マーカ認定手段の機能を有効にするモード切換え手段とを備えたことを特徴とする請求項6記載の走行体システム。
【請求項8】
上記走行体制御装置は、上記特定走行動作に係り人が視認して特定走行動作として判読できる動作表示を上記走行経路の路面に投影する投影手段と、上記順番マーカ認識特定手段が順番マーカを特定し且つ上記走行動作マーカ認識特定手段が当該順番マーカに対応する走行動作マーカを特定したとき上記走行体が特定走行動作を行う前に、該特定走行動作に係る動作表示を上記投影手段に所定のタイミングで投影させる投影制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の走行体システム。
【請求項9】
上記投影手段は、上記一般走行動作に係り人が視認して一般走行動作として判読できる動作表示を上記走行経路の路面に投影する機能を備え、上記投影制御手段は、該一般走行動作に係る動作表示を上記投影手段に所定のタイミングで投影させる機能を備えたことを特徴とする請求項8記載の走行体システム。
【請求項10】
上記動作表示は、動画であることを特徴とする請求項8または9記載の走行体システム。
【請求項11】
上記特定走行動作が、直進動作の場合、直進動作を示す走行動作マーカに直進距離を表示する距離表示を付加したことを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載の走行体システム。
【請求項12】
上記特定走行動作が、角度のある曲がり動作の場合、当該角度のある曲がり動作を示す走行動作マーカに角度を表示する角度表示を付加したことを特徴とする請求項1乃至11何れかに記載の走行体システム。
【請求項13】
上記一般走行動作は、直進する所定走行と、該所定走行の過程で上記撮像手段が1つの標識体を検知したときに当該検知した標識体を目標にして走行する目標誘導走行とからなることを特徴とする請求項1乃至12何れかに記載の走行体システム。
【請求項14】
上記走行体制御装置は、上記走行経路の路面上の物体を検知する物体検知手段を備え、上記駆動制御手段は、上記物体検知手段が検知した物体に対して所定距離を保持して走行するように上記駆動部を制御することを特徴とする請求項1乃至13何れかに記載の走行体システム。
【請求項15】
走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体に搭載され、上記駆動部を制御する走行体制御装置において、上記請求項1乃至14何れかに記載の走行体制御装置。
【請求項16】
走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体において、上記請求項15記載の走行体制御装置を搭載した走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造や組立等の各種工場,農場,倉庫やオフィス等で使用される無人搬送車等の無人走行体に係り、この走行体を走行経路に沿って走行させる走行体システム,走行体制御装置及び走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の走行体システムとしては、例えば、特開2015-121928号公報(特許文献1)に掲載された技術が知られている。このシステムは、走行経路を走行させられる走行体に搭載される走行体制御装置を備え、この走行体制御装置は、予め設定された走行経路に応じ、目的地に設けられたマーカを画像認識して移動するマーカ追従移動制御と、教示された教示経路に沿って移動する教示経路追従移動制御とを切り替えて走行体を誘導制御している。教示経路の教示は走行体を操縦したり直接手で動かすことにより行っている。これにより、走行体を移動させる際は、先ず、教示経路追従移動制御により、走行体を教示経路に従って移動させる。走行体は、オドメトリ機能等の手段によって自己位置を推定しており、予め教示された教示経路と比較して、教示経路に追従して走行体を移動させる。カメラが目的地のマーカを探索してこれを認識すると、マーカ追従移動制御に切り替わり、マーカを目標にして走行体を移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来の走行体システムにおいては、走行体を教示経路に従って移動させるようにしているので、経路を変更する際には、逐一教示経路の教示をやり直さなければならず、システムの設定に手間がかかって作業が煩雑になり、それだけ、コスト高になっているという問題があった。
【0005】
このため、この従来の制御システムにおいては、カメラによりマーカを目標にして走行体を移動させることも行っているので、マーカの設置は比較的容易であることから、全ての走行経路においてマーカ探索によって走行体を走行させることも考えられるが、経路が複雑になる等してマーカの種類が増えるとその設置順が分かりにくくなり、それだけ、マーカの設定にも手間がかかって作業が煩雑になり、単にマーカに切換えることでは問題を解消できない。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みて為されたもので、走行経路の変更に対しても容易に対応できるように、システムの設定作業の簡易化を図った走行体システムを提供することを目的とする。また、このシステムを実現できる走行体制御装置及び走行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の走行体システムは、走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体を備え、該走行体に上記駆動部を制御する走行体制御装置を搭載した走行体システムであって、
上記走行経路の複数の特定個所内やその近傍に夫々標識体を設置し、各標識体に、夫々、上記走行経路の始点から終点に向かって該各標識体が設置される順番に対応した順番マーカを表示するとともに、上記標識体が設置される特定個所における上記走行体が行うべき特定走行動作に対応した走行動作マーカを表示し、上記順番マーカを人が視認して順番として判読できるマーカで構成し、上記走行動作マーカを人が視認して特定走行動作として判読できるマーカで構成し、
上記走行体制御装置は、
上記標識体を撮像する撮像手段と、
該撮像手段が撮像した標識体に表示された順番マーカを認識するとともに当該認識した順番マーカが特定すべき正しい順番マーカか否かを判定し、正しいと判定した順番マーカを特定する順番マーカ認識特定手段と、
上記撮像手段が撮像し上記順番マーカ認識特定手段が特定した順番マーカが表示された標識体の走行動作マーカを認識して特定する走行動作マーカ認識特定手段と、
上記走行体が一般部を走行するときの一般走行動作を該走行体に行わせるとともに、上記順番マーカ認識特定手段が順番マーカを特定し且つ上記走行動作マーカ認識特定手段が当該順番マーカに対応する走行動作マーカを特定する毎に該走行動作マーカに対応した特定走行動作を上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御する駆動制御手段とを備えた構成としている。
【0008】
ここで、走行動作は、例えば、前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止等から選択される。走行体が一般部を走行する一般走行動作は、一般に、直進する前進若しくは後進である。標識体が設置される特定個所としては、曲がり角や、交差路のあるところ、あるいは、一時的に停止して作業を行うようなところであって良く、適宜に定められる。走行経路の始点及び終点には特に標識体を設ける特定個所としなくても良いが、特定個所として標識体を設置するようにして良い。この特定個所における走行体が行うべき特定走行動作としては、例えば、前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止等から選択される。
【0009】
走行経路の特定個所とは、走行体が走行動作を行う所定の面積を有したエリアを指す。
走行経路の一般部とは、始点及び終点に標識体を設置する場合には、標識体の設置した特定個所間の経路を指し、始点及び終点に標識体を設置しない場合には、始点と最初の標識体のある特定個所間の経路,標識体の設置した特定個所間の経路及び最後の標識体を設置した特定個所と終点との間の経路を指す。始点に標識体を設置しない場合には、始点と最初の標識体のある特定個所間の経路,標識体の設置した特定個所間の経路を指す。終点に標識体を設置しない場合には、標識体の設置した特定個所間の経路及び最後の標識体を設置した特定個所と終点との間の経路を指す。始点に標識体を設置しない場合には、本発明の標識体以外の手段によって走行体の始動を行う。終点に標識体を設置しない場合には、本発明の標識体以外の手段によって走行体の停止を行う。
【0010】
ここで、走行経路の始点及び/または終点を特定個所として対応する標識体を設置した場合は、始点及び/または終点においても標識体による走行動作を行わせることができるので、運用を容易にすることができる。例えば、走行経路をループ状に循環するシステムにする場合、始点及び終点に標識体を設置し、終点を検知したらリセットして始点から走行を始めるようにセッティングする等の設定をすることができる。
【0011】
また、人が視認して判読可能なマーカとは、声に出して読むことができる平仮名,片仮名,漢字,数字等の文字、あるいは、極めて簡単に解読することができる方向を示す矢印記号等の記号を言う。特別に定義づけたバーコード,QRコード(登録商標)等のマトリックス型二次元コード,図形等は含まれない。順番マーカは、始点から終点に向けて、1,2,3,・・・・nの公差が1の等差数列に対応して設定される。人が視認して順番として判読できるマーカとしては、例えば、文字の場合は、「あ,い,う,え・・・」,「ア,イ,ウ,エ・・・」,「い,ろ,は,に・・・」,「イ,ロ,ハ,ニ・・・」等の日本語の50音、「甲,乙,丙,丁・・・」,「壱,弐,参,・・・」,「一,二,三,四・・・」の漢字や漢数字、「A,B,C,D・・・」,「a,b,c,d・・・」のアルファベッド、「I,II,III,IV,V,VI・・・」,「i,ii,iii,iv,v,vi・・・」のローマ数字、「1,2,3,4,5・・・」のアラビア数字等を挙げることができる。人が視認して走行動作として判読できるマーカとしては、例えば、「前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止」等の漢字、「Forward,Rear,Right,Left,Turn,Pause,Stop」等の英語、「↑,↓,→,←」等の方向を示す記号を挙げることができる。
【0012】
この構成において、システムを設定するときは、複数の標識体を該当する走行経路の特定個所内やその近傍に夫々設置する。この場合、例えば、走行経路の始点から終点に向けて、順番の小さい標識体から順に設置していくが、標識体に表示された順番マーカは、人が視認して順番として判読可能なので、標識体の中から設置すべき標識体を即座に取り出すことができ、そのため、設置作業を容易に行うことができる。
【0013】
そして、走行体を走行経路に走行させるときは、走行経路の始点で走行体を始動すると、駆動制御手段が駆動部により走行体に一般走行動作を行わせ、走行体は、標識体のある特定個所へ走行移動していく。この走行過程においては撮像手段により走行経路上の標識体の撮像が行われ、順番マーカ認識特定手段が、撮像手段が撮像した標識体に表示された順番マーカを認識しており、走行動作マーカ認識特定手段が、撮像手段が撮像した標識体に表示された走行動作マーカを認識している。先ず、順番マーカ認識特定手段は、認識した順番マーカが特定すべき正しい順番マーカであるか否かを判定し、正しいと判定した順番マーカを特定する。次に、走行動作マーカ認識特定手段が、順番マーカ認識特定手段が特定した順番マーカが表示された標識体の走行動作マーカを認識して特定する。この順番マーカ認識特定手段が順番マーカを認識して特定し且つ走行動作マーカ認識特定手段が走行動作マーカを認識して特定すると、駆動制御手段は、特定個所において、特定された走行動作マーカに対応した特定走行動作を所定のタイミングで駆動部により走行体に行わせる。走行体による特定走行動作の終了後は、駆動制御手段は、一般走行動作を駆動部により走行体に行わせ、走行体は次の標識体のある特定個所に向かう。即ち、本装置は、走行体が一般部を走行するときは一般走行動作を走行体に行わせ、標識体の順番マーカ及びこれに対応する走行動作マーカを特定する毎に該当する特定走行動作を走行体に行わせる。
【0014】
この場合、走行経路を走行体とともに人が利用する場合があるが、その場合、標識体に表示された走行動作マーカは、人が視認して走行動作として判読できるので、利用する人は、走行体が標識体のあるところでどのような走行動作をするかを即座に知ることができ、そのため、人が走行体と衝突する等の不測の事態を予防することができ、安全を確保することができる。
【0015】
ところで、この走行体の走行経路においては、その経路を変更する場合もある。その際には、必要があれば標識体を新たに作って用意し、あるいは、一度作成した標識体を利用し、上記のシステムの設定当初と同様に、複数の標識体を該当する走行経路の特定個所内やその近傍に夫々設置する。この場合も、例えば、走行経路の始点から終点に向けて、順番の小さい標識体から順に設置していくが、標識体に表示された順番マーカは、人が視認して順番として判読できるので、標識体の中から変更すべき標識体を即座に取り出し、経路の変更を行ことができ、そのため、変更作業を容易に行うことができる。即ち、従来のようにコンピュータ上の地図で経路を決めるのに比較して、設備や障害物等の配置を見ながら現場で走行経路を設置できるので直感的に作業を行うことができる。このため、走行経路の変更に対しても容易に対応できるようになり、システムの設定作業の簡易化を図ることができる。
【0016】
そして、必要に応じ、上記順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段は、予め複数のマーカに係る撮像画像に基づき機械学習手段により学習した学習済みモデルを用いて、上記撮像手段が撮像した標識体の撮像画像から該当するマーカを認識する構成としている。学習済みモデルは記憶手段に記憶しておき、順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段は、学習済みモデルによる特徴に類似する特徴のマーカのサーチをかけてマーカを認識する。これにより、所謂AIによる認識を行うので、認識精度が高くなる。例えば、撮像手段の撮像距離や撮像角度が種々異なっていても、マーカの認識精度が上がり、順番マーカや走行動作マーカの認識を正確に行うことができる。
【0017】
この場合、上記機械学習手段は、深層ニューラルネットワーク(DNN)、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、決定木、ランダムフォレスト、k平均法クラスタリング、自己組織化マップ、遺伝的アルゴリズム、ベイジアンネットワーク、ディープラーニング手法等から選択される1つ若しくは複数の組み合わせで構成することができる。
【0018】
また、必要に応じ、上記順番マーカ認識特定手段は、上記標識体を撮像した撮像画像から順番マーカを認識する順番マーカ認識手段と、該順番マーカ認識手段が認識した順番マーカの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段と、該フレームサイズ判定手段が閾値以上と判定した順番マーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段と、該認識頻度判定手段が閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番の正否を判定する順番正否判定手段と、該順番正否判定手段が正と判定したとき当該順番マーカを特定する一方、否と判定したとき当該順番マーカの特定をキャンセルする順番マーカ特定手段とを備え、
上記走行動作マーカ認識特定手段は、上記標識体を撮像した撮像画像から走行動作マーカを認識する走行動作マーカ認識手段と、該走行動作マーカ認識手段が認識した走行動作マーカの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段と、該フレームサイズ判定手段が閾値以上と判定した走行動作マーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段と、該認識頻度判定手段が閾値以上と判定したとき認識した走行動作マーカを特定する走行動作マーカ特定手段とを備え、
上記順番マーカ特定手段が特定した順番マーカに係り上記走行動作マーカ特定手段が特定した走行動作マーカに対応し該当する特定個所で行うべき特定走行動作を上記順番マーカ特定手段の特定毎に更新して記憶する特定走行動作記憶手段を備え、
上記駆動制御手段は、上記特定走行動作記憶手段に記憶した行うべき走行動作を所定のタイミングで上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御する構成としている。
【0019】
これにより、順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段においては、検出フレームのサイズがある程度大きくなりそのマーカの認識頻度が高くなったところでマーカを特定するので、これによってもマーカの認識精度が上がり、順番マーカや走行動作マーカの認識を正確に行うことができる。即ち、動画像の1フレーム単位にマーカを認識する。走行体がマーカに近づくほどマーカ画面が大きくなり、認識精度が上がる。そのため、連続して認識する数や認識頻度をカウントすることで正確にマーカをとして判定することができる。また、順番マーカ認識特定手段においては、順番正否判定手段により、認識頻度判定手段が閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番が正しいか否かを判定するので、複数の標識体を撮像するような場合に、正しいと判定した順番マーカを特定することができることから、確実に対応することができる。
【0020】
即ち、一般には、各標識体は互いに離れた位置にあることが多く、その場合には、順番マーカ認識特定手段が特定した順番マーカが1つとなり問題がない。ところが、撮像手段が複数の標識体を撮像する場合があると、認識する順番マーカが複数生じ、いずれを選択するかわからなくなることがある。しかしながら、この構成においては、順番マーカ認識特定手段は、正しいと判定した順番マーカを特定するので、誤認識を防止することができ、マーカの認識をより一層正確に行うことができる。特に、走行体に近接する標識体と、その先にある標識体を同時に撮像する場合に有効になる。また、走行体が一度通った経路を二度通り、一度目と二度目の走行動作が異なるような場合、例えば、特定個所が交差路で、一度目が左折で、二度目が右折になる場合、同じ地点に番号の異なる標識体が2つ存在し、撮像手段は、両方を撮像するが、順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段は、優先順に順番及びその特定走行動作を特定するので、誤認識を防止することができるのである。
【0021】
この場合、上記駆動制御手段は、上記順番マーカ認識特定手段の順番マーカ特定手段が順番マーカの特定をキャンセルしたとき、上記走行体の走行状態を維持するとともに、上記順番マーカ特定手段による次の順番マーカの特定がない状態で、所定時間経過し若しくは該走行体が所定距離走行したとき、該走行体の走行を停止するよう上記駆動部を制御することが有効である。これにより、順番マーカ特定手段が順番マーカの特定をキャンセルしたときは、走行体の走行状態が維持され、順番マーカ特定手段による次の順番マーカの特定を待つ。しかし、所定時間経過し若しくは走行体が所定距離走行したとき、走行体は停止させられる。そのため、無用な走行がなくなり、安全が図られる。
【0022】
更に、必要に応じ、上記特定個所で上記走行体が順に行うべき特定走行動作が複数あるとき、上記標識体に、各特定走行動作に対応した複数の走行動作マーカを上記走行体が行うべき特定走行動作順に基づいて予め定めた表示形式で表示し、
上記走行動作マーカ認識特定手段は、上記表示形式に従う特定走行動作順に対応付けて上記複数の走行動作マーカを認識して特定し、
上記特定走行動作記憶手段は、上記走行動作マーカ認識特定手段によって特定された複数の走行動作マーカに対応した特定走行動作を上記表示形式に従う特定走行動作順に対応付けて記憶し、
上記駆動制御手段は、上記特定走行動作記憶手段に記憶された複数の特定走行動作を上記表示形式に従う特定走行動作順に従って順次上記走行体に行わせるよう上記駆動部を制御する構成としている。
【0023】
これにより、特定個所で走行体が順に行うべき特定走行動作が複数あるとき、例えば、一時停止する特定走行動作と、その後行うUターンの特定走行動作を順に行う場合、走行動作マーカ認識特定手段は、この複数の走行動作マーカを認識して特定し、駆動制御手段は、この一時停止する特定走行動作と、その後行うUターンの特定走行動作を順に駆動部により走行体に行わせる。そのため、特定個所での複数の特定走行動作に対応することができる。
【0024】
更にまた、必要に応じ、特定個所における特定走行動作が終了する毎に終了に係る順番マーカを記憶する既出順番マーカ記憶手段を備え、
上記順番正否判定手段は、初回に認識すべき順番マーカのときは順番を1とし、2回目以降に認識すべき順番マーカのときは上記既出順番マーカ記憶手段に記憶された最後の順番マーカの順番に1つ加算した順番として算出する順番算出手段と、上記認識頻度判定手段が閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番が、上記順番算出手段が算出した順番と一致するか否かを照合する順番照合手段と、該順番照合手段の照合結果が一致したとき当該順番マーカを特定すべき順番マーカと認定する順番マーカ認定手段とを備え、
上記順番マーカ特定手段は、上記順番マーカ認定手段の認定に基づいて順番マーカの特定またはキャンセルを行う機能を備えた構成としている。
【0025】
これにより、順番マーカ認識特定手段においては、順番正否判定手段が、順番マーカの順番を、始点から終点に向けて、1,2,3,・・・・nの公差が1の数列の順番に照合してチェックしていくので、順番マーカに対応する順番が正しいか否かの判定を確実に行うことができる。特に、複数の標識体を撮像するような場合に、確実に対応することができる。
【0026】
この場合、必要に応じ、上記順番正否判定手段は、上記認識頻度判定手段が初回に閾値以上と判定した順番マーカを特定すべき順番マーカとして認定するとともに、上記認識頻度判定手段が2回目以降に閾値以上と判定した順番マーカに対応する順番が、上記既出順番マーカ記憶手段に記憶された最後の順番マーカの順番より大きいとき当該順番マーカを特定すべき順番マーカと認定する第2順番マーカ認定手段を備え、
上記順番マーカ特定手段は、上記第2順番マーカ認定手段の認定に基づいて順番マーカの特定またはキャンセルを行う機能を備え、
基本モード及び修正モードの2つのモードの何れかに切換えて設定可能なモード設定手段と、該モード設定手段が基本モードに設定したとき、上記順番正否判定手段の順番算出手段,順番照合手段及び順番マーカ認定手段の機能を有効にし、上記モード設定手段が修正モードに設定したとき、上記第2順番マーカ認定手段の機能を有効にするモード切換え手段とを備えた構成にしている。
【0027】
これにより、基本モード及び修正モードの2つのモードの何れかに切換えて順番マーカ認識特定手段による順番マーカの特定を行うことができる。基本モードにおいては、上記の通り、順番マーカの順番を、始点から終点に向けて、1,2,3,・・・・nの公差が1の数列の順番に照合してチェックしていくので、順番マーカに対応する順番が正しいか否かの判定を確実に行うことができる。一方、修正モードにした場合には、先ず、初回に閾値以上と判定した順番マーカを特定すると、2回目以降は、既出順番マーカ記憶手段に記憶された最後の順番マーカの順番より大きい順番の順番マーカを特定していく。そのため、走行経路において、順番マーカの設置される順番が、始点から終点に向けて、例えば、1→2→5→6等、公差が必ずしも1になっていなくても対応することができる。そのため、予め設置した既存の標識体の位置をほとんど変えずに、走行経路を短縮して変更する場合などに有効になる。
【0028】
また、必要に応じ、上記走行体制御装置は、上記特定走行動作に係り人が視認して特定走行動作として判読できる動作表示を上記走行経路の路面に投影する投影手段と、上記順番マーカ認識特定手段が順番マーカを特定し且つ上記走行動作マーカ認識特定手段が当該順番マーカに対応する走行動作マーカを特定したとき上記走行体が特定走行動作を行う前に、該特定走行動作に係る動作表示を上記投影手段に所定のタイミングで投影させる投影制御手段とを備えた構成としている。
【0029】
これにより、走行経路を走行体とともに人が利用する場合があるが、その場合、利用する人は、上記もした、判読可能な標識体の特定走行動作の走行動作マーカの視認に加えて、投影手段により走行経路の路面に投影された動作表示を視認して特定走行動作として判読できるので、これによっても、走行体が標識体のあるところでどのような走行動作をするかを即座に知ることができ、人が走行体と衝突する等の不測の事態を予防することができ、より一層安全を確保することができる。
【0030】
この場合、上記投影手段は、上記一般走行動作に係り人が視認して一般走行動作として判読できる動作表示を上記走行経路の路面に投影する機能を備え、上記投影制御手段は、該一般走行動作に係る動作表示を上記投影手段に所定のタイミングで投影させる機能を備えたことが有効である。走行体が一般部を走行しているときもその一般走行動作を走行体の動きのみならず動作表示においても知ることができ、より一層安全を確保することができる。
【0031】
また、この場合、上記動作表示は、動画であることが有効である。動画で視認できるので、注意喚起を大きく引き出すことができ、より一層確実に安全を確保することができる。
【0032】
そしてまた、必要に応じ、上記特定走行動作が、直進動作の場合、直進動作を示す走行動作マーカに直進距離を表示する距離表示を付加した構成としている。これにより、特定走行動作に直進運動を加え、その直進距離を指示できるので、例えば、特定走行動作に右折の動作がある場合、右折する点のまでの距離を指示できることから、右折動作のタイミング調整を行うことができる。
【0033】
また、必要に応じ、上記特定走行動作が、角度のある曲がり動作の場合、当該角度のある曲がり動作を示す走行動作マーカに角度を表示する角度表示を付加した構成としている。これにより、直角に曲がる場合の他、直角以外の曲がりにも対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0034】
更に、必要に応じ、上記一般走行動作は、直進する所定走行と、該所定走行の過程で上記撮像手段が1つの標識体を検知したときに当該検知した標識体を目標にして走行する目標誘導走行とからなる構成としている。撮像手段が1つの標識体を検知したときは、例えば、所定走行を前進(直進)とし、その後目標誘導走行にすることができる。撮像手段が複数の標識体を検知したときは、一般走行動作は、直進する所定走行となる。これにより、蛇行を防止して、確実に標識体のある特定個所に走行体を誘導させることができる。尚、一般走行動作を、予め定めた所定走行のみに設定してよい。この場合、例えば、壁に沿って走行する自律走行にすることができる。
【0035】
更にまた、必要に応じ、上記走行体制御装置は、上記走行経路の路面上の物体を検知する物体検知手段を備え、上記駆動制御手段は、上記物体検知手段が検知した物体に対して所定距離を保持して走行するように上記駆動部を制御する構成としている。物体検知手段として、レーザ距離計,深度カメラやステレオカメラを用いて構成し、所謂オドメトリ法によって実現することができる。これにより、物体と一定の距離を保って走行できるので、物体が例えば障害物の場合、障害物に対して一定の距離を保って走行させることができ、障害物を回避して走行させることができる。また、物体が壁の場合には、壁に沿って走行できるので、蛇行を防止することができる。
【0036】
そしてまた、上記課題を解決するための本発明の走行体制御装置は、走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体に搭載され、上記駆動部を制御する走行体制御装置において、上記の何れかに記載の走行体制御装置にある。上記と同様の作用,効果を奏する。
【0037】
また、上記課題を解決するための本発明の走行体は、走行経路において駆動部により各種の走行動作を行う走行体において、上記の走行体制御装置を搭載した走行体にある。上記と同様の作用,効果を奏する。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、システムを設定するとき、あるいは、走行体の走行経路を変更するとき、複数の標識体を該当する走行経路の特定個所内やその近傍に夫々設置する。この場合、例えば、走行経路の始点から終点に向けて、順番の小さい標識体から順に設置していくが、標識体に表示された順番マーカは、人が視認して判読可能なので、標識体の中から設置すべき標識体を即座に取り出すことができ、そのため、設置作業を容易に行うことができる。このため、走行経路の変更に対しても容易に対応できるようになり、システムの設定作業の簡易化を図ることができる。また、走行体を走行経路に走行させるときは、走行経路を走行体とともに人が利用する場合があるが、その場合、標識体に表示された走行動作のマーカは、人が視認して判読可能なので、利用する人は、走行体が標識体のあるところでどのような走行動作をするかを即座に知ることができ、そのため、人が走行体と衝突する等の不測の事態を予防することができ、安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて走行経路上の走行体及び標識体の関係の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて走行経路上の走行体及び標識体の関係の一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置において順番マーカ認識特定手段及び走行動作マーカ認識特定手段の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置において順番マーカ認識特定手段の順番正否判定手段の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて用いる標識体に表示する走行動作マーカの一例を示す表図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて走行経路の路面に投影する動作表示の一例を示す表図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて走行経路の路面に投影する動作表示の別の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて走行経路の路面に投影する動作表示のまた別の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置の制御処理を示す別のフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態に係る走行体制御装置の制御処理を示すまた別のフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいて別の走行経路上の走行体及び標識体の関係の一例を示す平面図である。
【
図14】
図13に示す別の走行経路上において、本発明の実施の形態に係る走行体制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施の形態に係る走行体システムにおいてまた別の走行経路上の走行体及び標識体の関係の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る走行体システム,走行体制御装置及び走行体について詳細に説明する。本発明の実施の形態に係る走行体制御装置及び走行体は、本発明の実施の形態に係る走行体システムを構成するので、本システムにおいて説明する。
【0041】
図1乃至
図12には、本発明の実施の形態に係る走行体システムSを示している。本システムSは、製造や組立等の各種工場やオフィス等の壁のある建物内で使用されるシステムであり、走行経路Rにおいて例えば電動モータ等からなる周知の駆動部2により各種の走行動作を行う無人搬送車としての走行体1が備えられている。走行動作は、例えば、前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止等から選択される。右折及び左折の場合には、直角(90°)の他、直角以外の角度のある曲がり動作も含む。この走行体1には、走行体1の駆動部2を制御する走行体制御装置Tが搭載されている。
【0042】
図2に示すように、走行体1が走行する走行経路Rは、実施の形態では、始点Ps(Start)から終点Pg(Goal)に至るループ状のルートになっている。走行経路Rは複数の特定個所(P)を有する。この特定個所(P)は、走行体1が走行動作を行う所定の面積を有したエリアを指す。実施の形態では、始点Psを除き、曲がり角や交差路等、6か所の特定個所(P1~P6)を設けている。終点Pgは最後の特定個所(P6)として設定されている。始点Psと最初の特定個所(P1)との間、後述の標識体Mの設置した特定個所間との間は、走行経路Rの一般部を構成する。一般部は、直線状になっている。また、走行経路Rの途中にある1つの特定個所(P3)には、作業ロボットWRが設置された作業地Pwとなっており、走行体1はこの作業ロボットWRが行う作業のための部品(図示せず)を始点Psにおいて載せ、作業地Pwまで搬送し、この作業地Pwで一時停止してこの部品を作業ロボットWRに受け渡し、それから同じルートを通って終点Pg(=始点Ps)に戻ってくる。別ルートを戻るように設定することもできる。走行体1が一般部を走行するときは、走行動作としての一般走行動作を行い、特定個所においては、走行動作としての特定走行動作を行う。
【0043】
本システムSにおいては、走行経路Rの複数の特定個所(P)内やその近傍に夫々標識体Mが設置される。各標識体Mは矩形板状に形成され、建物の壁等に設置される。実施の形態においては、走行経路Rの始点Psにおいては、標識体Mがなく、走行体1のスタートは、作業員が操作し、走行開始の開始マーカMkが表示された表示板Hを用いる。
【0044】
各標識体Mには、夫々、走行経路Rの始点Psから終点Pgに向かって設置される順番に対応した順番マーカMaが表示されるとともに、設置される特定個所における走行体1が行うべき特定走行動作に対応した走行動作マーカMbが表示される。特定個所(P)において、走行体1が順に行うべき特定走行動作が複数あるときは、標識体Mに、各特定走行動作に対応した複数の走行動作マーカMbを走行体1が行うべき特定走行動作順に基づいて予め定めた表示形式で表示する。実施の形態では、
図2に示すように、複数の走行動作マーカMbをこれらに対応する特定走行動作の順に従って上から下に向けて順に表示する表示形式としている。
【0045】
順番マーカMaは、人が視認して順番として判読できるマーカで構成され、走行動作マーカMbは、人が視認して特定走行動作として判読できるマーカで構成されている。人が視認して判読可能なマーカとは、声に出して読むことができる平仮名,片仮名,漢字,数字等の文字、あるいは、極めて簡単に解読することができる方向を示す矢印記号等の記号を言う。特別に定義づけたバーコード,QRコード(登録商標)等のマトリックス型二次元コード,図形等は含まれない。
【0046】
順番マーカMaは、始点Psから終点Pgに向けて、1,2,3,・・・・nの公差が1の等差数列に対応して設定される。人が視認して順番として判読できるマーカとしては、例えば、文字の場合は、「あ,い,う,え・・・」,「ア,イ,ウ,エ・・・」,「い,ろ,は,に・・・」,「イ,ロ,ハ,ニ・・・」等の日本語の50音、「甲,乙,丙,丁・・・」,「壱,弐,参,・・・」,「一,二,三,四・・・」の漢字や漢数字、「A,B,C,D・・・」,「a,b,c,d・・・」のアルファベッド、「I,II,III,IV,V,VI・・・」,「i,ii,iii,iv,v,vi・・・」のローマ数字、「1,2,3,4,5・・・」のアラビア数字等を挙げることができる。実施の形態では、ローマ数字、「1,2,3,4,5・・・」のアラビア数字を用いている。ローマ数字は「〇(マル)」で囲繞されている。
【0047】
人が視認して特定走行動作として判読できるマーカとしては、例えば、「前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止」等の漢字、「Forward,Rear,Right,Left,Turn,Pause,Stop」等の英語、「↑,↓,→,←」等の方向を示す記号を挙げることができる。実施の形態では、
図6に示すように、前進,後進,右折,左折,反転はこれらに対応する「↑,↓,→,←」等の方向を示す一般的な記号を用い、一時停止,停止は、そのまま漢字を用いている。
【0048】
また、特定個所における特定走行動作が、直進動作の場合、直進動作を示す走行動作マーカMbに直進距離を表示する距離表示を付加している。距離表示はローマ数字及びローマ字で構成される。この場合の走行動作マーカMbは、例えば、「↑3m」(直進3mの意味)になる。更に、特定個所における特定走行動作が、角度のある曲がり動作の場合、この角度のある曲がり動作を示すマーカ(「→,←」)に角度を表示する角度表示を付加している。角度表示は、ローマ数字で構成される。即ち、この場合の走行動作マーカMbは、例えば、「→90」(直角に右折の意味)、「←45」(45°左折の意味)等になる。これにより、直角に曲がる場合の他、直角以外の曲がりにも対応することができ、汎用性を向上させることができる。
【0049】
走行体制御装置Tは、
図3に示すように、進行方向前方を撮像し特に標識体Mを撮像するカメラからなる撮像手段10と、CPU等の機能によって実現される制御部20とを備えている。制御部20は、駆動部2を制御する駆動制御手段21と、各種の必要な情報を記憶する記憶手段22と、撮像手段10が撮像した標識体Mに表示された順番マーカMaを認識するとともにこの認識した順番マーカMaが特定すべき正しい順番マーカか否かを判定し、正しいと判定した順番マーカMaを特定する順番マーカ認識特定手段23と、撮像手段10が撮像し順番マーカ認識特定手段23が特定した順番マーカMaが表示された標識体Mの走行動作マーカMbを認識して特定する走行動作マーカ認識特定手段24とを備えて構成されている。
【0050】
詳しくは、駆動制御手段21は、走行体1が一般部を走行するとき一般走行動作を駆動部2により走行体1に行わせるとともに、順番マーカ認識特定手段23が順番マーカMaを特定し且つ走行動作マーカ認識特定手段24が当該順番マーカMaに対応する走行動作マーカMbを特定したときこの走行動作マーカMbに対応した特定走行動作を駆動部2により走行体1に行わせる。実施の形態では、例えば、駆動部2を構成するモータにはエンコーダ(図示せず)が付設されており、駆動制御手段21は、このエンコーダからのフィードバックに基づいて、特定走行動作及び一般走行動作を順に駆動部2により走行体1に行わせる。
【0051】
順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24は、記憶手段22に記憶され予め複数のマーカに係る撮像画像に基づき機械学習手段により学習した学習済みモデルを用いて、撮像手段10が撮像した標識体Mの撮像画像から該当するマーカを認識する。機械学習手段は、深層ニューラルネットワーク(DNN)、サポートベクターマシン(SVM:Support Vector Machine)、決定木、ランダムフォレスト、k平均法クラスタリング、自己組織化マップ、遺伝的アルゴリズム、ベイジアンネットワーク、ディープラーニング手法等から選択される1つ若しくは複数の組み合わせで構成することができる。
【0052】
即ち、順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24は、記憶手段22に記憶された学習済みモデルによる特徴に類似する特徴のマーカのサーチをかけてマーカを認識する。これにより、所謂AIによる認識を行うので、認識精度が高くなる。例えば、撮像手段10の撮像距離や撮像角度が種々異なっていても、マーカの認識精度が上がり、順番や走行動作の特定を正確に行うことができる。
【0053】
詳しくは、
図4に示すように、順番マーカ認識特定手段23は、標識体Mを撮像した撮像画像から順番マーカMaを認識する順番マーカ認識手段30と、順番マーカ認識手段30が認識した順番マーカMaの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段31と、フレームサイズ判定手段31が閾値以上と判定した順番マーカMaの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段32と、認識頻度判定手段32が閾値以上と判定した順番マーカMaに対応する順番の正否を判定する順番正否判定手段33と、順番正否判定手段33が正と判定したとき当該順番マーカMaを特定する一方、否と判定したとき当該順番マーカMaの特定をキャンセルする順番マーカ特定手段34とを備えて構成されている。ここで、検出フレームのサイズとは検出した順番マーカMaの矩形枠の面積や縦、横の画素値の数をいう。また、記憶手段22は、
図5に示すように、特定個所における特定走行動作が終了する毎に終了に係る順番マーカMaを記憶する既出順番マーカ記憶手段40を備えている。
【0054】
即ち、順番マーカ認識特定手段23は、例えば、撮像画像を所定サンプリング周期(例えば30msec)で取得し、これらの、画像についてサイズ判定とマーカ認識の認識頻度判定を行う。認識頻度の閾値は、同じマーカが連続して認識される回数が設定され、例えば、連続認識回数が10回に設定される。また、連続していなくても例えば連続する10枚フレームの内5枚以上検出できる回数に設定することもできる。
【0055】
この順番マーカ特定手段34において、
図5に示すように、順番正否判定手段33は、初回に認識すべき順番マーカMaのときは順番を1とし、2回目以降に認識すべき順番マーカMaのときは既出順番マーカ記憶手段40に記憶された最後の順番マーカMaの順番に1つ加算した順番として算出する順番算出手段41と、認識頻度判定手段32が閾値以上と判定した順番マーカMaに対応する順番が、順番算出手段41が算出した順番と一致するか否かを照合する順番照合手段42と、順番照合手段42の照合結果が一致したとき当該順番マーカMaを特定すべき順番マーカと認定する順番マーカ認定手段43とを備えている。順番マーカ特定手段34は、順番マーカ認定手段43の認定に基づいて順番マーカMaの特定またはキャンセルを行う機能を備えている。
【0056】
また、順番正否判定手段33は、
図5に示すように、認識頻度判定手段32が初回に閾値以上と判定した順番マーカMaを特定すべき順番マーカとして認定するとともに、認識頻度判定手段32が2回目以降に閾値以上と判定した順番マーカMaに対応する順番が、既出順番マーカ記憶手段40に記憶された最後の順番マーカMaの順番より大きいとき当該順番マーカMaを特定すべき順番マーカと認定する第2順番マーカ認定手段44を備えている。順番マーカ特定手段34は、第2順番マーカ認定手段44の認定に基づいて順番マーカMaの特定またはキャンセルを行う機能を備えている。
【0057】
制御部20においては、
図5に示すように、基本モード及び修正モードの2つのモードの何れかに切換えて設定可能なモード設定手段45と、モード設定手段45が基本モードに設定したとき、順番正否判定手段33の順番算出手段41,順番照合手段42及び順番マーカ認定手段43の機能を有効にし、モード設定手段45が修正モードに設定したとき、第2順番マーカ認定手段44の機能を有効にするモード切換え手段46とを備えている。
【0058】
更に、
図4に示すように、走行動作マーカ認識特定手段24は、標識体Mを撮像した撮像画像から走行動作マーカMbを認識する走行動作マーカ認識手段35と、走行動作マーカ認識手段35が認識した走行動作マーカMbの検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定するフレームサイズ判定手段36と、フレームサイズ判定手段36が閾値以上と判定した走行動作マーカMbの認識頻度が閾値以上か否かを判定する認識頻度判定手段37と、認識頻度判定手段37が閾値以上と判定したとき認識した走行動作マーカMbを特定する走行動作マーカ特定手段38とを備えて構成されている。
【0059】
即ち、走行動作マーカ認識特定手段24は、順番マーカ認識特定手段23と同様に、例えば、撮像画像を所定サンプリング周期(例えば30msec)で取得し、これらの、画像についてサイズ判定とマーカ認識の認識頻度判定を行う。認識頻度の閾値は、同じマーカが連続して認識される回数が設定され、例えば、連続認識回数が10回に設定される。また、連続していなくても例えば連続する10枚フレームの内5枚以上検出できる回数に設定することもできる。
【0060】
また、上述もしたが、
図2に示すように、特定個所において、走行体1が順に行うべき特定走行動作が複数あるときは、標識体Mに、各特定走行動作に対応した複数の走行動作マーカMbが上から下に向けてこれらの対応する特定走行動作順に表示されており、これにより、走行動作マーカ認識特定手段24は、この表示形式(上から下)に従う特定走行動作順に対応付けて複数の走行動作マーカMbを認識して特定する。
【0061】
制御部20において、記憶手段22は、
図4に示すように、順番マーカ特定手段34が特定した順番マーカMaに係り走行動作マーカ特定手段38が特定した走行動作マーカMbに対応し該当する特定個所で行うべき特定走行動作を、順番マーカ特定手段34の特定毎に更新して記憶する特定走行動作記憶手段47を備えている。特に、特定走行動作記憶手段47は、走行動作マーカ認識特定手段24によって特定された複数の走行動作マーカMbに対応した特定走行動作を表示形式に従う特定走行動作順に対応付けて記憶する。
【0062】
駆動制御手段21は、特定走行動作記憶手段47に記憶した行うべき走行動作を所定のタイミングで走行体1に行わせるよう駆動部2を制御する。特に、駆動制御手段21は、特定走行動作記憶手段47に記憶された複数の特定走行動作を表示形式に従う特定走行動作順に従って順次走行体1に行わせるよう駆動部2を制御する。
【0063】
また、駆動制御手段21は、順番マーカ認識特定手段23の順番マーカ特定手段34が順番マーカMaの特定をキャンセルしたとき、走行体1の走行状態を維持するとともに、順番マーカ特定手段34による次の順番マーカMaの特定がない状態で、所定時間経過し若しくは走行体1が所定距離走行したとき、走行体1の走行を停止するよう駆動部2を制御する機能を備えている。
【0064】
また、本システムSの駆動制御手段21は、特定個所における特定走行動作が終わり次第、一般走行動作を駆動部2により走行体1に行わせる。実施の形態においては、一般走行動作は、走行体1による特定走行動作の終了後に行う予め定めた所定走行と、所定走行の過程で撮像手段10が1つの標識体Mを検知したときに、検知した標識体Mを目標にして走行する目標誘導走行とからなる。所定走行は、一般部は、実施の形態では、直線状なので前進に係る一般走行動作が行われる。目標誘導走行は、例えば、駆動制御手段21が、標識体Mを目標として走行するように走行ベクトル値を計算し、走行ベクトル制御を行う。
【0065】
撮像手段10が複数の標識体Mを検知したときは、一般走行動作は、直進する所定走行となる。これにより、蛇行を防止して、確実に標識体のある特定個所に走行体1を誘導させることができる。尚、一般走行動作を、予め定めた所定走行のみに設定してよい。この場合、例えば、壁に沿って走行する自律走行にすることができる。また、上記の修正モードにおいては、撮像手段10が複数の標識体Mを検知したときは、駆動制御手段21は、走行体1の走行を停止するよう駆動部2を制御する機能を備えている。
【0066】
また、走行経路Rの始点Psにおいては、標識体Mがなく、走行体1のスタートは、走行開始の開始マーカMkが表示された表示板Hを用いる。走行動作マーカ認識特定手段24は、撮像手段10が撮像した画像から開始マーカMkを認識する機能を備えている。駆動制御手段21は、走行動作マーカ認識特定手段24が開始マーカMkを認識したとき、この開始マーカMkに対応した走行動作を駆動部2により走行体1に行わせる。実施の形態では、走行動作マーカ認識特定手段24が開始マーカMkを認識すると、前進に係る走行動作になる。
【0067】
そしてまた、走行体制御装置Tは、特定走行動作に係り人が視認して走行動作として判読できる動作表示Dを走行経路Rの路面に投影するプロジェクタから構成される投影手段50を備えている。また、投影手段50は、一般走行動作に係り人が視認して走行動作として判読できる動作表示Dを走行経路Rの路面に投影する機能を備えている。人が視認して特定走行動作として判読できる動作表示Dとしては、上記特定動作のマーカと同様に、例えば、「前進,後進,右折,左折,反転,一時停止,停止」等の漢字、「Forward,Rear,Right,Left,Turn,Pause,Stop」等の英語、「↑,↓,→,←」等の方向を示す記号を挙げることができる。例えば、
図7に示すように、「前進,後進,右折,左折,反転」に対応した「白抜きの矢印記号」の静止画を用いることができる。
【0068】
また、動作表示Dは動画で表示することができる。例えば、
図8に示すように、直進表示の動作表示Dにおいて、(a)~(i)の順に表示される動画で表示することができる。この動画での動作表示Dは、矢印と「直進」の文字から構成されている。また、例えば、
図9に示すように、右折表示の動作表示Dにおいて、(a)~(o)の順に表示される動画で表示することができる。この動画での動作表示Dは、矢印と「右折します」の文字から構成されている。
【0069】
制御部20は、駆動制御手段21が特定走行動作を駆動部2により走行体1に行わせる前に、記憶手段22に記憶され特定走行動作に係る動作表示Dを投影手段50に投影させる投影制御手段51を備えて構成されている。この投影制御手段51は、走行体1が一般部を走行する際、順番マーカ認識特定手段23が順番マーカMaを特定し且つ走行動作マーカ認識特定手段24が特定マーカを特定するまでは、記憶手段22に記憶された一般走行動作に係る動作表示Dを投影手段50に投影させる機能を備えている。
【0070】
また、走行体制御装置Tは、走行経路Rの路面上の物体を検知する物体検知手段60を備えている。物体検知手段60としては、例えば、進行方向前方の物体を検知する深度カメラ,LIDARやステレオカメラを用いることができる。駆動制御手段21は、物体検知手段60が検知した物体に対して所定距離を保持して走行するように駆動部2を制御する。この制御は、物体との距離を測りながら行う所謂オドメトリ法によって実現することができる。これにより、物体と一定の距離を保って走行できるので、物体が例えば障害物の場合、これを回避して走行させることができる。
【0071】
従って、実施の形態に係る走行体システムSを設定するときは、
図2に示すように、複数の標識体Mを該当する走行経路Rの特定個所(P1~P6)の中若しくはその近傍に夫々設置する。この場合、例えば、走行経路Rの始点Psから終点Pgに向けて、順番の小さい標識体Mから順に設置していくが、標識体Mに表示された順番マーカMaは、人が視認して順番として判読可能なので、標識体Mの中から設置すべき標識体Mを即座に取り出すことができ、そのため、設置作業を容易に行うことができる。
【0072】
この場合、走行経路Rを走行体1とともに人が利用する場合があるが、標識体Mに表示された走行動作マーカMbは、人が視認して走行動作として判読できるので、利用する人は、走行体1が標識体Mのあるところでどのような走行動作をするかを即座に知ることができ、そのため、人が走行体1と衝突する等の不測の事態を予防することができ、安全を確保することができる。
【0073】
そして、走行体1を走行経路Rに走行させるときは、
図2の走行経路Rを示す図を用いるとともに、
図10乃至
図12に示すフローチャートを用いて説明すると以下のようになる。ここでは、基本モードに設定した場合を示す。走行経路Rの始点Psで、走行体1に作業地PwでロボットWRが行う作業のための部品を載せ、撮像手段10による撮像を開始し、作業員が、撮像手段10に対して開始マーカMkが表示された表示板Hを撮像させる。これにより、走行動作マーカ認識特定手段24が、撮像手段10が撮像した画像から開始マーカMkを認識すると、駆動制御手段21が一般走行動作である前進(直進)に係る所定走行を駆動部2により走行体1に行わせる(S1)。
【0074】
これにより、走行体1は、最初の特定個所(P1)に向かう。また、投影制御手段51により投影手段50から一般走行動作に係る動作表示Dが路面上に投影される。動作表示Dは、例えば、
図8に示す直進の動画になる。これにより、走行経路Rを走行体1とともに人が利用する場合があるが、その場合、利用する人は、一般走行動作を走行体1の動きのみならず動作表示Dにおいても知ることができ、安全を確保することができる。
【0075】
この、走行体1の走行過程においては、撮像手段10は標識体Mの撮像を行って標識体Mの検知を行っており(S2,S10)、標識体Mを1個検知するまでは所定走行を行うようにし(S2No,S10No)、標識体Mを1個検知すると(S2Yes)、駆動制御手段21は、走行体1が検知した標識体Mを目標にして走行する目標誘導走行を行うように駆動部2を制御する(S3)。蛇行を防止して、確実に標識体Mのある特定個所に走行体1を誘導させることができる。一方、標識体Mを複数検知すると(S2No,S10Yes)、駆動制御手段21は、走行体1が所定走行を維持するように駆動部2を制御する(S11)。
【0076】
この走行過程においては、順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24による順番マーカMa及び走行動作マーカMbの認識及び特定が行われる。先ず、順番マーカ認識特定手段23においては、順番マーカ認識手段30が順番マーカMaを認識し(S4)、この認識した順番マーカMaにおいて、フレームサイズ判定手段31により検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定する(S5)。このフレームサイズ判定手段31が閾値以上と判定すると(S5Yes)、認識頻度判定手段32が認識したマーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する(S6)。
【0077】
そして、順番正否判定手段33においては、順番算出手段41が、初回に認識すべき順番マーカMaのときは順番を1とし、2回目以降に認識すべき順番マーカMaのときは既出順番マーカ記憶手段40に記憶された最後の順番マーカMaの順番に1つ加算した順番として算出しており、認識頻度判定手段32が閾値以上と判定すると(S6Yes)、順番照合手段42が、この認識頻度判定手段32が閾値以上と判定した順番マーカMaに対応する順番が、順番算出手段41が算出した順番と一致するか否かを照合する(S7)。特定個所(P1)は初回になるので、順番マーカMaが1のときは、順番照合手段42の照合結果が一致するので、順番マーカ認定手段43がこの順番マーカMaを認定し(S7Yes)、順番マーカ特定手段34がこの順番マーカMaを特定する(S8)。特定個所(P2)~特定個所(P6)は2回目以降になるので、順番マーカMaが、「直前の特定個所における順番マーカMaの順番+1」のときは、順番照合手段42の照合結果が一致するので、順番マーカ認定手段43がこの順番マーカMaを認定し(S7Yes)、順番マーカ特定手段34がこの順番マーカMaを特定する(S8)。ここでは、特定個所(P1)に向け走行しているので、初回の照合及び特定が行われる。
【0078】
一方、順番照合手段42の照合結果が一致しないときは(S7No)、順番マーカ特定手段34は順番マーカMaの特定をキャンセルし、走行体1の走行状態が維持され次の順番マーカMaの認識を待つ(S9No、S1~S7,S10,S11)。この間、順番マーカ特定手段34による次の順番マーカMaの特定がない状態で、所定時間経過し若しくは走行体1が所定距離走行したときは(S9Yes)、走行体1の走行は停止される。そのため、無用な走行がなくなり、安全が図られる。
【0079】
順番マーカ特定手段34が順番マーカMaを特定すると(S8)、走行動作マーカ認識特定手段24における走行マーカの認識特定が行われる。
図11のフローチャートを参照し、先ず、特定した走行マーカMa直下の走行動作マーカMbを認識する(S12)。この認識した走行動作マーカMbにおいて、フレームサイズ判定手段36により検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定する(S13)。このフレームサイズ判定手段36が閾値以上と判定すると(S13Yes)、認識頻度判定手段37が認識したマーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する(S14)。
【0080】
そして、認識頻度判定手段37が閾値以上と判定すると(S14Yes)、特定走行動作記憶手段47に、順番マーカ特定手段34が特定した順番マーカMaに係り走行動作マーカ特定手段38が特定した走行動作マーカMbに対応し該当する特定個所で行うべき特定走行動作を記憶する(S15)。この特定した走行動作マーカMbの直下に更に走行動作マーカMbがあるか否かが判断され(S16)、あるときは、この直下の走行動作マーカMbの認識特定を行う(S16No、S12~S15)。複数の走行動作マーカMbがあるときは、特定走行動作記憶手段47は、走行動作マーカ認識特定手段24によって特定された複数の走行動作マーカMbに対応した特定走行動作を表示形式(上から下)に従う特定走行動作順に対応付けて記憶する。特定した走行動作マーカMbの直下にないときは(S16Yes)、次の制御に移行する。ここでは、特定個所(P1)に向け走行しているので、順番マーカMa「1」が認識され、「→90(右折90°)」の1つの走行動作マーカMbが認識されて特定されて記憶される。
【0081】
この順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24のマーカ認識においては、検出フレームのサイズがある程度大きくなりそのマーカの認識頻度が高くなったところでマーカを認識するので、マーカの認識精度が上がり、順番や走行動作の特定をより一層正確に行うことができる。
【0082】
また、一般には、各標識体Mは互いに離れた位置にあることが多く、その場合には、順番マーカ認識特定手段23が確定した順番マーカMaが1つとなり問題がない。ところが、撮像手段10が複数の標識体Mを撮像する場合があると、認識した順番マーカMaが複数生じ、いずれを選択するかわからなくなることがある。しかしながら、この構成においては、順番マーカ認識特定手段23は、正しいと判定した順番マーカMaを特定するので、誤認識を防止することができ、マーカの認識をより一層正確に行うことができる。特に、走行体1に近接する標識体Mと、その先にある標識体Mを同時に撮像する場合に有効になる。
【0083】
図12のフローチャートに示すように、順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24が標識体Mの順番マーカMa及び走行動作マーカMbを特定すると、投影制御手段51により所定のタイミングで投影手段50から特定走行動作に係る動作表示Dが投影される。ここでは、「→90(右折90°)」が認識されるので、動作表示Dは、例えば
図9に示す右折の動画になる。これにより、走行経路Rを走行体1とともに人が利用する場合があるが、その場合、利用する人は、判読可能な標識体Mの特定走行動作の走行動作マーカMbの視認に加えて、投影手段50により走行経路Rの路面に投影された動作表示Dを視認して特定走行動作として判読できるので、これによっても、走行体1が標識体Mのあるところでどのような走行動作をするかを即座に知ることができ、人が走行体1と衝突する等の不測の事態を予防することができ、より一層安全を確保することができる。
【0084】
そして、順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24のマーカの特定後、特定個所(P1)において、駆動制御手段21は、所定のタイミングで(S17Yes)、特定走行動作記憶手段47に記憶された複数の走行動作マーカMbに対応した特定走行動作があるか否かを判断し(S18)、複数でないときは(S18No)、特定された走行動作マーカMbに対応した1つの特定走行動作を駆動部2により走行体1に行わせる(S22)。一方、複数あるときは(S18Yes)、駆動制御手段21は、特定走行動作記憶手段47に記憶された複数の特定走行動作を表示形式に従う特定走行動作順に従って順次走行体1に行わせるよう駆動部2を制御する(S19、S20)。この特定個所(P1)においては、90°の右折が行われる(S22)。
【0085】
走行体1による特定走行動作が終了すると、終点Pgでの停止か否かが判断され、即ち、停止の走行動作マーカMbを認識したか否かが判断され(S21)、認識していないときは(S21No)、再び、駆動制御手段21により一般走行動作が駆動部2により行われる(S1)。認識したときは(S21Yes)、走行体1は停止されて作業を終了する。この特定個所(P1)においては、停止が否となって(S21No)、再び、駆動制御手段21により一般走行動作が駆動部2により行われる(S1)。走行体1は次の標識体Mのある特定個所(P2)に向かう。
【0086】
ここで、
図2に示すように、途中に障害物がある場合について説明する。駆動制御手段21は、物体検知手段60が検知した物体に対して走行体1が所定距離を保持して走行するように駆動部2を制御しているので、例えば、物体検知手段60が例えば物体としての障害物を検知すると、これを回避して走行させることができる。
【0087】
そして、上記と同様に、特定個所(P2)での標識体Mが検知されると、順番マーカ認識特定手段23による順番マーカMaの認識及び特定が行われる(S1~S11)。また、走行動作マーカ認識特定手段24において、走行動作マーカMbの認識及び特定が行われる(S12~S16)。ここでは、順番マーカMaとして「2」が表示され、標識体Mには、走行動作マーカMbとして、「↑3m」及び「→90(右折90°)」が上から下に向けて順に表示されているので、これらが認識及び特定される。
【0088】
順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24が標識体Mの順番マーカMa及び走行動作マーカMbを特定すると、投影制御手段51により所定のタイミングで投影手段50から特定走行動作に係る動作表示Dが投影される。ここでは、動作表示Dとして、先ず、例えば、
図8に示す直進の動画が投影され、次に、例えば、
図9に示す右折の動画が投影される。そして、順番マーカ認識特定手段23及び走行動作マーカ認識特定手段24のマーカの特定後、特定個所(P2)において、駆動制御手段21は、走行動作マーカ認識特定手段24によって特定された複数の走行動作マーカMbに対応した特定走行動作を、標識体Mの表示形式の規定に従って所定のタイミングで順に走行体1に行わせるよう駆動部2を制御する(S17~S22)。
【0089】
即ち、駆動制御手段21は、所定のタイミングで(S17Yes)、特定された走行動作マーカMbに対応した最初の特定走行動作である3m直進を駆動部2により走行体1に行わせる(S18Yes,S19)。走行体1によるこの最初の特定走行動作としての3mの直進が終了すると(S19Yes)、特定個所(P2)における特定走行動作が最後か否かを判断する(S20)。この場合、特定された走行動作マーカMbは、次に行うべき走行動作に係る「→90(右折90°)」があるので(S20No)、引き続き、駆動制御手段21は、特定された走行動作マーカMbに対応した右折90°を駆動部2により走行体1に行わせる(S19)。それから、走行体1による特定走行動作が終了すると、特定個所(P2)における特定走行動作が最後か否かを判断する(S20)。この場合、右折90°が最後なので(S20Yes)、終点Pgでの停止か否かが判断され(S21)、停止の走行動作マーカMbは認識していないので(S21No)、再び、駆動制御手段21により一般走行動作が駆動部2により行われる(S1)。走行体1は次の標識体Mのある特定個所(P3)に向かう。
【0090】
そして、上記と同様に、標識体Mが検知されると、順番マーカMa及び走行動作マーカMbの認識及び特定が行われ、ここでは、順番マーカMaとして、「3」が認識されて特定され、走行動作マーカMbとして、「一時停止,反転矢印」が認識されて特定される(S1~S16)。そして、駆動制御手段21は、「一時停止,反転矢印」の走行動作を順に駆動部2により走行体1に行わせる(S17~S20)。即ち、特定個所(P3)においては、走行体1は、先ず、一時停止する。この特定個所(P3)は作業地Pwであるので、ロボットWRが走行体1が載せて搬送した部品の荷降ろしを行う。そして作業が終了し、所定時間が経ったならば、走行体1は走行動作マーカMbの指示通りの反転を行う。尚、反転は停止前でも良く、また、停止直後であっても良く、適宜変更して差支えない。
【0091】
それから、走行体1による特定走行動作としての反転が終了すると(S20Yes)、終点Pgでの停止か否かが判断され(S21)、この場合、停止の走行動作マーカMbは認識していないので(S21No)、再び、駆動制御手段21により一般走行動作が駆動部2により行われる(S1)。走行体1は次の標識体Mのある特定個所(P4)に向かう。以下、特定個所(P5)を通って特定個所(P6)としての終点Pg(Ps)に到達するまで同様の制御が行われる(S1~S21)。
【0092】
特定個所(P6)としての終点Pg(Ps)においては、走行体1は、停止して反転する。この場合、終点Pgでの停止か否かが判断され(S21)、特定動作は終点の停止なので(S21Yes)、一連の作業を終了する。再開するときは、上記と同様に行う。
【0093】
ところで、この走行体1の走行経路Rにおいては、例えば、
図13に示すように、その経路を変更する場合もある。その際には、必要があれば標識体Mを新たに作って用意し、あるいは、一度作成した標識体Mを利用し、上記のシステムSの設定当初と同様に、複数の標識体Mを該当する走行経路Rの特定個所内やその近傍に夫々設置する。この
図13の例では、作業地Pwが特定個所(P2)に設けられ、走行体1が、P1→P2→P5→P6(P1)からなる走行経路Rに変更した場合を示す。そのため、この場合は、特定個所(P2)の標識体Mを新たに作って用意して設置するだけで済む。このため、走行経路Rの変更に対しても容易に対応できるようになり、システムSの変更作業の簡易化を図ることができる。
【0094】
この
図13の例では、基本モードから変更して修正モードに設定して走行体1を制御する。
図14に示すフローチャートを参照して説明する。基本モードと異なって、標識体Mの検知が単数検知に限定されている。即ち、走行体1が走行を開始すると(S31)、撮像手段10は標識体Mの撮像を行って標識体Mの検知を行っており(S32,S40)、標識体Mを1個検知するまでは所定走行を行うようにし(S32No,S40No)、標識体Mを1個検知すると(S32Yes)、駆動制御手段21は、走行体1が検知した標識体Mを目標にして走行する目標誘導走行を行うように駆動部2を制御する(S33)。一方、標識体Mを複数検知すると(S32No,S40Yes)、駆動制御手段21は、走行体1を停止させるように駆動部2を制御する(S40Yes)。
【0095】
この走行過程においては、先ず、順番マーカ認識特定手段23による順番マーカMaの認識及び特定が行われる。先ず、順番マーカ認識特定手段23においては、順番マーカ認識手段30が順番マーカMaを認識し(S34)、この認識した順番マーカMaにおいて、フレームサイズ判定手段31により検出フレームのサイズが閾値以上か否かを判定する(S35)。このフレームサイズ判定手段31が閾値以上と判定すると(S35Yes)、認識頻度判定手段32が認識したマーカの認識頻度が閾値以上か否かを判定する(S36)。
【0096】
そして、順番正否判定手段33においては、修正モードの第2順番マーカ認定手段44が機能し、初回は、認識頻度判定手段32が閾値以上と判定した順番マーカMaを特定すべき順番マーカとして認定し、2回目以降は、認識頻度判定手段32が閾値以上と判定した順番マーカMaに対応する順番が、既出順番マーカ記憶手段40に記憶された最後の順番マーカの順番より大きいとき当該順番マーカMaを特定すべき順番マーカと認定する(S37)。特定個所(P1)は初回であり、順番マーカMaが1なので、順番マーカ認定手段43がこの順番マーカMaを認定し(S37Yes)、順番マーカ特定手段34がこの順番マーカMaを特定する(S38)。特定個所(P2),特定個所(P5)及び特定個所(P6)は2回目以降になるので、順番マーカMaが、「認識した順番マーカMaの順番>直前の特定個所における順番マーカMaの順番」のとき、順番マーカ認定手段43がこの順番マーカMaを認定し(S37Yes)、順番マーカ特定手段34がこの順番マーカMaを特定する(S38)。
【0097】
一方、初回を除き、「認識した順番マーカMaの順番>直前の特定個所における順番マーカMaの順番」の条件を満たさないときは(S37No)、順番マーカ特定手段34は順番マーカMaの特定をキャンセルし、走行体1の走行状態が維持され次の順番マーカMaの認識を待つ(S39No、S31~S37,S40)。この間、順番マーカ特定手段34による次の順番マーカMaの特定がない状態で、所定時間経過し若しくは該走行体1が所定距離走行したときは(S39Yes)、走行体1の走行は停止される。
【0098】
順番マーカ特定手段34による順番マーカMaの特定が行われると、その後は、上記と同様に、走行動作マーカ認識特定手段24による走行動作マーカMbの認識及び特定を経て、走行体1の所要の走行動作が行われる(
図11及び
図12のS12~S22)。この例では、特定個所(P2)に設置する標識体Mにおいて、走行動作マーカMbは3つ表示されている。そのため、特定個所(P2)においては、「5m直進→一時停止→反転」の特定走行動作が順に行われる。また、この例においては、
図2の走行経路Rに戻すこともあるので、特定個所(P3)の標識体Mと特定個所(P4)の標識体Mは撤去せずにそのままにしてある。そのため、特定個所(P2)における走行体1の特定走行動作が終了した後は、順番マーカMaの「3」及び「4」は撮像手段10の死角となり撮像できないため、走行体1は次の標識体Mのある特定個所(P5)に向かう。この際、順番マーカ認識特定手段23は、次に認識して特定する標識体Mの順番マーカMaが「3」ではなく、2つ飛んだ「5」になるが、順番正否判定手段33においては、修正モードの第2順番マーカ認定手段44は、「認識した順番マーカMaの順番>直前の特定個所における順番マーカMaの順番」の条件に合致するか否かを判断するので、「5」を正しい順番として認定することから、対応する走行動作が行われる。その後の動作も同様に行われる。
【0099】
また、
図15には、別の走行経路Rの変更例を示す。この
図15の例では、作業地Pwが特定個所を別なところに設け、
図2に示す走行経路Rの一部を共用している。この場合にも、必要があれば標識体Mを新たに作って用意し、あるいは、一度作成した標識体Mを利用し、上記のシステムSの設定当初と同様に、複数の標識体Mを該当する走行経路Rの特定個所内やその近傍に夫々設置する。この場合も、例えば、走行経路Rの始点Psから終点Pgに向けて、順番の小さい標識体Mから順に設置していくが、標識体Mに表示された順番マーカMaは、人が視認して順番として判読できるので、標識体Mの中から設置すべき標識体Mを即座に取り出すことができ、そのため、設置作業を容易に行うことができる。このため、走行経路Rの変更に対しても容易に対応できるようになり、システムSの設定作業の簡易化を図ることができる。この場合の走行体1の制御は、基本モードで行うことができる。
【0100】
尚、上記実施の形態において、特定個所(P1~P6)は6個所の場合であったが、必ずしもこれに限定されるものではなく、何か所あっても良く、適宜変更して差支えない。また、標識体Mの順番マーカMaや走行動作マーカMbの形態は、図に示した形態に限らず、どのような形態のマーカであっても良く、要するに、人が視認して判読できるマーカであればどのような形態のマーカであっても良く、適宜変更して差支えない。更に、路面に表示する動作表示Dにおいても、どのような形態の表示であっても良く、要するに、人が視認して判読できる表示であればどのような形態の表示であっても良く、適宜変更して差支えない。
【0101】
また、上記実施の形態では、標識体Mとして、矩形板状に形成されたものを用いたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、走行経路Rに設置される消火器等の物体を用いても良く、適宜変更して差支えない。更に、上記実施の形態においては、撮像手段10としてのカメラを前方を撮像するように1台設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、複数台設けても良い。特に、後進動作を行う場合には、後方を撮像するカメラを別に設けると良い。当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
S 走行体システム
T 走行体制御装置
R 走行経路
1 走行体
2 駆動部
Ps 始点
Pg 終点
Pw 作業地
P(P1~P6) 特定個所
M 標識体
Ma 順番マーカ
Mb 走行動作マーカ
H 表示板
Mk 開始マーカ
10 撮像手段
20 制御部
21 駆動制御手段
22 記憶手段
23 順番マーカ認識特定手段
24 走行動作マーカ認識特定手段
30 順番マーカ認識手段
31 フレームサイズ判定手段
32 認識頻度判定手段
33 順番正否判定手段
34 順番マーカ特定手段
35 走行動作マーカ認識手段
36 フレームサイズ判定手段
37 認識頻度判定手段
38 走行動作マーカ特定手段
40 既出順番マーカ記憶手段
41 順番算出手段
42 順番照合手段
43 順番マーカ認定手段
44 第2順番マーカ認定手段
45 モード設定手段
46 モード切換え手段
47 特定走行動作記憶手段
D 動作表示
50 投影手段
51 投影制御手段
60 物体検知手段