(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111150
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】解凍装置および解凍システム
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012842
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108890
【氏名又は名称】株式会社ダイキンアプライドシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 雄治
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LA06
4B022LQ01
4B022LT02
4B022LT07
(57)【要約】
【課題】被解凍物の過剰解凍を抑制する。
【解決手段】解凍装置(D)は、被解凍物(2)を解凍する解凍空間(S1)が形成される本体部(B)を備える。解凍空間(S1)には、水平方向に所定の間隔を空けて配置されるとともに被解凍物(2)が上に載置される一対の支持部(25,25)が設けられる。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような長さである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解凍物(2)を解凍する解凍空間(S1)が形成される本体部(B)を備え、
前記解凍空間(S1)には、水平方向に所定の間隔を空けて配置されるとともに前記被解凍物(2)が上に載置される一対の支持部(25,25)が設けられ、
前記一対の支持部(25,25)の間隔Lは、前記被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような長さである
解凍装置。
【請求項2】
前記一対の支持部(25,25)は、該支持部(25)同士の間隔Lが変更可能に構成される
請求項1に記載の解凍装置。
【請求項3】
前記本体部(B)には、前記解凍空間(S1)の下に設けられて解凍された前記被解凍物(2)が保管される保管空間(S2)が更に形成される
請求項1または2に記載の解凍装置。
【請求項4】
前記保管空間(S2)を構成し、該保管空間(S2)の温度を所定温度に保つ冷蔵ケース(30)を備える
請求項3に記載の解凍装置。
【請求項5】
前記一対の支持部(25,25)の下に配置され、解凍されて前記支持部(25)から落下した前記被解凍物(2)を受けて前記保管空間(S2)に案内するガイド部(26)を更に備える
請求項3または4に記載の解凍装置。
【請求項6】
解凍空間(S1)において、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような間隔を空けて配置される一対の支持部(25,25)の上で該被解凍物(2)を解凍する工程と、
前記支持部(25)から落下した前記被解凍物(2)をガイド部(26)が受けて冷蔵ケース(30)に搬送する工程と、
前記ガイド部(26)によって搬送された前記被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)で保管する工程とを含む
解凍方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1つに記載の解凍装置(D)と、
前記解凍装置(D)が設置される解凍室(4)の温度を調節する温度調節装置(5)とを含む
解凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解凍装置および解凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫や冷凍庫などの庫内に差圧室を設けて、この差圧室内に配置された加工食品などの冷却対象を効率よく冷却する差圧冷却装置が知られている。特許文献1に開示された差圧冷却装置は、差圧室を負圧にするファンと、庫内の冷気が吸い込まれる差圧室と備える。この差圧冷却装置では、冷却対象が差圧室に吸い込まれる冷気にさらされるように該冷却対象を配置することで、冷却対象を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の差圧冷却装置において、例えば冷凍された食品を対象物とし、庫内温度を対象物よりも高くすることにより、冷凍された対象物(被解凍物)を解凍する解凍装置として利用できる。
【0005】
このような解凍装置の前方には、被解凍物が載置された台車が配置される。台車には、上下に並ぶ複数の載置部が設けられ、各載置部に被解凍物が載置される。このように配置された解凍装置と台車を備える解凍システムでは、台車における上側寄りの載置部と下側寄りの載置部で解凍速度に差が生じる。そのため、最も遅く解凍される位置の被解凍物に合わせて解凍装置を停止させると、比較的早く解凍される位置の被解凍物は、適温に解凍された後も温かい空気にさらされ続けるので、過剰に解凍されてしまうという問題があった。
【0006】
本開示の目的は、被解凍物の過剰解凍を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、被解凍物(2)を解凍する解凍空間(S1)が形成される本体部(B)を備え、前記解凍空間(S1)には、水平方向に所定の間隔を空けて配置されるとともに前記被解凍物(2)が上に載置される一対の支持部(25,25)が設けられ、前記一対の支持部(25,25)の間隔Lは、前記被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような長さである解凍装置である。
【0008】
第1の態様では、被解凍物(2)は、解凍空間(S1)において一対の支持部(25,25)の上に載置される。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、被解凍物(2)が解凍されたときに落下するような長さになっている。このため、解凍空間(S1)において被解凍物(2)が解凍されると、被解凍物(2)は徐々に柔らかくなり一対の支持部(25,25)の間に落ち込むように変形する。変形した被解凍物(2)は、自重により一対の支持部(25,25)の間を通って落下し、解凍空間(S1)の外に出ていく。
【0009】
これにより、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物が解凍空間(S1)内に残らないので、被解凍物が過剰に解凍されることを抑制できる。ここで、凍結率とは、解凍の進行度合いを示す指標である。
【0010】
第2の態様は、第1の態様において、前記一対の支持部(25,25)は、該支持部(25)同士の間隔Lが変更可能に構成される。
【0011】
第2の態様では、支持部(25)同士の間隔Lを変更することにより、様々な種類、形状、大きさ、および厚さの被解凍物(2)に対応できる。
【0012】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記本体部(B)には、前記解凍空間(S1)の下に設けられて解凍された前記被解凍物(2)が保管される保管空間(S2)が更に形成される。
【0013】
第3の態様では、解凍空間(S1)の下に保管空間(S2)が形成されているので、解凍されて一対の支持部(25,25)の間から落下した被解凍物(2)を保管空間(S2)に収容できる。
【0014】
第4の態様は、第3の態様において、前記保管空間(S2)を構成し、該保管空間(S2)の温度を所定温度に保つ冷蔵ケース(30)を備える。
【0015】
第4の態様では、空間の温度を所定温度に保つ冷蔵ケース(30)によって保管空間(S2)が構成される。このため、解凍された被解凍物が冷蔵ケース(30)に収容されることで、適切な温度に維持されながら保管される。これにより、解凍された被解凍物(2)の鮮度を維持できる。
【0016】
第5の態様は、第3または第4の態様において、前記一対の支持部(25,25)の下に配置され、解凍されて前記支持部(25)から落下した前記被解凍物(2)を受けて前記保管空間(S2)に案内するガイド部(26)を更に備える。
【0017】
第5の態様では、ガイド部(26)を備えることより、一対の支持部(25,25)から落下した被解凍物(2)は、ガイド部(26)によって保管空間(S2)まで案内される。これにより、解凍された被解凍物(2)が確実に保管空間(S2)に収容される。
【0018】
第6の態様は、解凍空間(S1)において、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような間隔を空けて配置される一対の支持部(25,25)の上で該被解凍物(2)を解凍する工程と、前記支持部(25)から落下した前記被解凍物(2)をガイド部(26)が受けて冷蔵ケース(30)に搬送する工程と、前記ガイド部(26)によって搬送された前記被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)で保管する工程とを含む解凍方法である。
【0019】
第6の態様では、被解凍物(2)が解凍されると柔らかくなり変形する。このため、解凍された被解凍物(2)は、自重により一対の支持部(25,25)の間を通って落下する。支持部(25)から落下した被解凍物(2)は、ガイド部(26)に受け止められて、冷蔵ケースに搬送される。冷蔵ケース(30)に到達した被解凍物(2)は、冷蔵ケースにおいて適温で保管される。これにより、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物(2)が解凍空間(S1)において過剰に解凍されることを抑制できるとともに、解凍された被解凍物(2)を適切な温度に維持しながら保管できる。
【0020】
第7の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様の解凍装置(D)と、前記解凍装置(D)が設置される解凍室(4)の温度を調節する温度調節装置(5)とを含む解凍システムである。
【0021】
第7の態様では、解凍装置と温度調節装置とを備える解凍システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態に係る解凍システムの構成を示す概略の縦断面図である。
【
図4】
図4は、解凍システムの空気の流れを示す概略の縦断面図である。
【
図5】
図5は、被解凍物が解凍される様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
《実施形態》
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0024】
(1)解凍システムの概要
解凍システム(1)は、被解凍物(2)を解凍するためのシステムである。ここで、被解凍物(2)とは、解凍システム(1)で解凍される対象物のことであり、例えば冷凍された食品(肉や魚など)である。本実施形態の被解凍物(2)は、袋に収容されて冷凍された鶏肉である。本実施形態の被解凍物(2)の温度は、約-18℃である。
【0025】
本実施形態の解凍システム(1)は、差圧式の解凍システムである。
図1に示すように、解凍システム(1)は、解凍室構造体(3)と、ユニットクーラ(5)と、差圧装置(10)と、台車(20)と、冷蔵ケース(30)とを備える。解凍室構造体(3)の内部には、解凍室(4)が形成される。解凍室(4)には、ユニットクーラ(5)および差圧装置(10)が設置される。解凍室(4)には、台車(20)および冷蔵ケース(30)が配置される。台車(20)は、複数の被解凍物(2)を収容する。
【0026】
(1-1)解凍室構造体
解凍室構造体(3)は、箱状に形成される。解凍室構造体(3)の一側面には、不図示の扉が設けられている。扉は、解凍室(4)に台車(20)および冷蔵ケース(30)を出し入れするためのものである。
【0027】
(1-2)ユニットクーラ
ユニットクーラ(5)は、本開示の温度調節装置に対応する。ユニットクーラ(5)は、解凍室構造体(3)の天井面に取り付けられる。ユニットクーラ(5)は、解凍室(4)の温度を調節する。解凍室(4)の温度は、被解凍物(2)の温度よりも高い。本実施形態の解凍室(4)の温度は、ユニットクーラ(5)によって、約5℃に保たれている。
【0028】
(1-3)差圧装置
差圧装置(10)は、該差圧装置(10)の内部に形成される空間と解凍室(4)との間に差圧を生じさせて空気の流れを発生させ、この空気の流れを用いて複数の被解凍物(2)の間に空気を流すことによって被解凍物(2)を解凍する装置である。
【0029】
解凍室構造体(3)には、複数の差圧装置(10)が配置される。本実施形態では、差圧装置(10)は、解凍室構造体(3)の対向する2つの側面のそれぞれに沿って、複数配置される。なお、差圧装置(10)は、解凍室(4)に1つ配置されてもよい。また、差圧装置(10)は、解凍室構造体(3)の略直交する2つの側面のそれぞれに沿って、L字に配置されてもよい。
【0030】
差圧装置(10)は、ケーシング(11)、ファン(12)、および気流ガイド(14)を有する。なお、以下の説明の「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、差圧装置(10)を正面から見たときの方向である。差圧装置(10)の正面は、気流ガイド(14)が設けられた側面である。
【0031】
(1-3-1)ケーシング
ケーシング(11)は、上下に長い略直方体状に形成される。ケーシング(11)は、中空の箱状に形成される。ケーシング(11)の前側面(11c)には、開口(17)が形成される。開口(17)は、上下方向に延びる矩形状に形成される。開口(17)の前方には、台車(20)が配置される。台車(20)は、その前後方向がケーシング(11)の前後方向と一致するように配置される。
【0032】
ケーシング(11)の内部には、通風路(18)が形成される。通風路(18)には、解凍室(4)内の空気が流れる。
図1に示すように、通風路(18)は、ケーシング(11)内を上下方向に延びる空間である。通風路(18)の下端(他端)は、ケーシング(11)の下面(11b)によって閉塞される。通風路(18)は、開口(17)と連通する。
【0033】
(1-3-2)ファン
ファン(12)は、解凍室(4)内の空気を循環させる。ファン(12)は、ケーシング(11)の通風路(18)の空気と、台車(20)を通過する空気を搬送する。ファン(12)は、ケーシング(11)の上に取り付けられる。具体的には、ファン(12)は、ケーシング(11)の上面(11a)に取り付けられる。ファン(12)が収容されたファンハウジング(H)の内部は、通風路(18)に連通している。
【0034】
本実施形態では、ファン(12)は、プロペラファンである。なお、ファン(12)は、プロペラファン以外のファンでもよい。ファン(12)のモータ(M)の回転数は可変である。モータ(M)は、制御回路により回転数が調節されるDCファンモータである。ファン(12)は、その風量が可変に構成される。
【0035】
(1-3-3)気流ガイド
気流ガイド(14)は、台車(20)を通過する空気の流れを整えるためのものである。気流ガイド(14)は、互いに対向する一対の平板で構成される。
図1に示すように、気流ガイド(14)は、解凍室(4)に台車(20)が配置された状態において、台車(20)の左右側方に設けられる。言い換えると、台車(20)は、気流ガイド(14)に挟まれてるように配置される。
【0036】
気流ガイド(14)は、ケーシング(11)の前側面(11c)に取り付けられる。気流ガイド(14)は、ケーシング(11)の前側面(11c)から前方に突出するように配置される。気流ガイド(14)は、ケーシング(11)の開口(17)の外側に設けられる。
【0037】
(1-4)台車
解凍システム(1)は、複数の台車(20)を備える。台車(20)の数は、差圧装置(10)と同じ数であり、各差圧装置(10)に対応して配置される。
図2および
図3に示すように、台車(20)は、いわゆる棚台車である。台車(20)は、移動可能に構成される。台車(20)は、枠体(21)と、車輪(22)と、載置部(23)と、ガイド部(26)とを有する。
【0038】
(1-4-1)枠体
枠体(21)は、略直方体状に形成される。枠体(21)は、前後方向、左右方向、および上下方向のそれぞれに延びる棒状の部材を組み合わせて形成される。枠体(21)の上部は、平板によって閉塞されている。枠体(21)の内部には、空間が形成される。この枠体(21)の内部空間が、本開示の解凍空間(S1)に対応する。
【0039】
(1-4-2)車輪
台車(20)は、4つの車輪(22)を有する。車輪(22)は、枠体(21)の下端における四隅のそれぞれに取り付けられる。
【0040】
(1-4-3)載置部
台車(20)は、複数(本実施形態では、6つ)の載置部(23)を有する。載置部(23)は、枠体(21)の内部空間に設けられる。載置部(23)の上には、被解凍物(2)が載置される。複数の載置部(23)は、上下方向に間隔を空けて配置される。
【0041】
載置部(23)同士の間には、通風空間(24)が形成される。言い換えると、載置部(23)に載置された複数の被解凍物(2)は、上下に間隔を空けて配置され、該被解凍物(2)同士の間には通風空間(24)が形成される。
図4に示すように、ケーシング(11)の前方に台車(20)が配置されると、通風路(18)と通風空間(24)とが連通する。
【0042】
図2に示すように、各載置部(23)は、一対の支持部(25,25)で構成される。各支持部(25)は、台車(20)の前後方向に延びる。各支持部(25)は、固定部材を介して枠体(21)に固定される。本実施形態の各支持部(25)は、断面がL字状のアングル材で構成される。被解凍物(2)は、アングル材の上縁部の上に載置される。
【0043】
一対の支持部(25,25)は、略水平方向(左右方向)に所定の間隔を空けて配置される。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、載置された被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような長さに設定される。これにより、被解凍物(2)が適切な凍結率の状態まで解凍されると、被解凍物(2)は軟化するとともに変形して、自重により、一対の支持部(25,25)の間から落下する。
【0044】
ここで、凍結率とは、解凍の進行度合いを示す指標のことである。具体的には、凍結率は、対象物における凍結状態にある水分の重量割合である。凍結率が低いほど、解凍が進行していることを示す。適切な凍結率は、場合によって異なる。例えば、唐揚げ用の鶏肉を解凍する場合には、調理がしやすいように、冷凍された鶏肉を凍結率が低い全解凍状態まで解凍する。一方、加工用の牛肉を解凍する場合には、例えばスライスしやすいように、冷凍されたブロック状の牛肉を凍結率が中程度の半解凍状態まで解凍する。
【0045】
一対の支持部(25,25)の間隔Lは、被解凍物(2)が適切な凍結率の状態に解凍された時点(以下、解凍完了時点という)で、支持部(25)から滑り始めるような長さに設定される。詳細には、一対の支持部(25,25)の間隔Lは、解凍進行中では被解凍物(2)と支持部(25)との接点に静止摩擦力が作用して被解凍物(2)が滑らない一方、解凍完了時点では上記接点における摩擦のバランスが崩れて被解凍物(2)が滑り出すような長さである。
【0046】
図2および
図5に示すように、一対の支持部(25,25)の間隔Lは、左側の支持部(25)の内側の端部と、右側の支持部(25)の内側の端部との間の長さである。本実施形態では、一対の支持部(25,25)の間隔Lは、約200mmである。
【0047】
この一対に支持部(25)の間隔Lは、被解凍物(2)の種類、形状、大きさ、または厚さによって異なる。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、変更可能に構成される。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、被解凍物(2)に応じて予め設定される。一対の支持部(25,25)の間隔Lは、130mm~260mmの間で変更可能である。なお、本実施形態の一対の支持部(25,25)の間隔Lは、全ての載置部(23)において同じである。各載置部(23)における一対の支持部(25,25)の間隔Lは、それぞれ異なってもよい。
【0048】
(1-4-4)ガイド部
図2および
図3に示すように、一対の支持部(25,25)の直下には、ガイド部(26)が配置される。ガイド部(26)は、解凍されて支持部(25)から落下した被解凍物(2)を受ける。ガイド部(26)は、受けた被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)に案内する。
【0049】
台車(20)は、複数(本実施形態では、6つ)のガイド部(26)を有する。ガイド部(26)は、一対の支持部(25,25)に対応して設けられる。言い換えると、ガイド部(26)の数は、一対の支持部(25,25)(載置部(23))の数と同じである。
【0050】
ガイド部(26)は、平板状の鋼板で構成される。
図3に示すように、ガイド部(26)は、台車(20)の前端へ向かうに従って床面に近づくように下方に傾斜している。ガイド部(26)の傾斜角度(水平方向に対する角度)は、約10°である。
【0051】
ガイド部(26)の幅(左右方向の長さ)は、一対の支持部(25,25)の間隔よりも長い。ガイド部(26)の幅は、枠体(21)の内部空間の幅と概ね同じである。ガイド部(26)の奥行(前後方向の長さ)は、一対の支持部(25,25)の前後方向の長さよりも長い。ガイド部(26)の前端は、枠体(21)から突出している。
【0052】
(1-5)冷蔵ケース
解凍システム(1)は、複数の冷蔵ケース(30)を備える。冷蔵ケース(30)は、台車(20)の前方に配置される。具体的には、冷蔵ケース(30)は、その前後方向が台車(20)の前後方向と一致するように配置される。解凍室(4)に配置される冷蔵ケース(30)の数は、台車(20)の数と同じである。言い換えると、冷蔵ケース(30)は、台車(20)に対応して設けられる。
【0053】
冷蔵ケース(30)は、その上部が開放されている。冷蔵ケース(30)の内部には、冷蔵空間(31)が形成される。冷蔵ケース(30)は、冷蔵空間(31)の温度を所定の温度に保つ。冷蔵ケース(30)は、冷蔵空間(31)を冷却する冷凍機を有する。冷凍機は、図示していないが冷凍サイクルを行う冷媒回路を有し、該冷媒回路の蒸発器で冷蔵空間(31)の空気を冷却する。本実施形態の冷蔵ケース(30)では、冷蔵空間(31)の温度を約-2℃に維持している。
【0054】
本実施形態の冷蔵ケース(30)は、移動可能に構成される。冷蔵ケース(30)の下面の四隅には、それぞれ車輪(32)が取り付けられる。これにより、冷蔵ケース(30)を解凍室(4)から搬出入しやすい。
【0055】
(2)解凍装置
本実施形態では、台車(20)および冷蔵ケース(30)が解凍装置(D)を構成する。
【0056】
解凍装置(D)は、本体部(B)を備える。本体部(B)には、被解凍物(2)を解凍する解凍空間(S1)と、解凍された被解凍物(2)を保管する保管空間(S2)とが形成される。なお、ここでいう保管空間(S2)では、被解凍物(2)の解凍が行われない。
【0057】
本実施形態の本体部(B)は、台車(20)の枠体(21)と冷蔵ケース(30)のケーシングで構成される。解凍空間(S1)は、枠体(21)の内部空間で構成される。保管空間(S2)は、冷蔵ケース(30)の冷蔵空間(31)で構成される。
【0058】
ここで、台車(20)と冷蔵ケース(30)から構成される解凍装置(D)を上から見たとき、台車(20)のガイド部(26)の前端は、冷蔵空間(31)と重なっている。このため、ガイド部(26)で受けた被解凍物を確実に冷蔵空間(31)に搬送できる。
【0059】
(3)運転動作
次に、解凍システム(1)の運転動作について説明する。
【0060】
解凍システム(1)の運転が開始されると、まずユニットクーラ(5)が作動する。ユニットクーラ(5)が作動すると、解凍室(4)の温度が所定の温度に調節され、維持される。
【0061】
次に、差圧装置(10)のファン(12)が回転する。ファン(12)が回転すると、解凍室(4)内の空気が循環する。詳細には、
図4に示すように、ファン(12)が回転すると、被解凍物(2)よりも温度の高い解凍室(4)内の空気がファン(12)から押し出されて、通風路(18)内を下方に向かって流れる。
【0062】
通風路(18)に流入した空気は、ケーシング(11)の開口(17)を介して、台車(20)の各通風空間(24)に流入する。通風空間(24)に流入した空気は、被解凍物(2)同士の間を前方に流れる。その際に、通風空間(24)を通過する空気と被解凍物(2)との間で熱交換がされる。これにより、被解凍物(2)が徐々に解凍される。同時に、通風空間(24)を通過する空気の温度が低下する。通風空間(24)を通過して温度が低下した空気は、解凍室(4)内に流出し、ユニットクーラ(5)によって温度が調節される。
【0063】
(4)解凍方法
次に、解凍装置(D)における被解凍物(2)の解凍方法について説明する。この解凍方法では、以下に述べる第1工程、第2工程、および第3工程が順に行われる。
【0064】
(4-1)第1工程
第1工程は、解凍空間(S1)の一対の支持部(25,25)の上で被解凍物(2)を解凍する工程である。詳細には、第1工程では、解凍システム(1)の運転に伴って、通風空間(24)を通過する空気と、一対の支持部(25,25)の上に載置された被解凍物(2)との間で熱交換されて、被解凍物(2)が解凍される。被解凍物(2)は、解凍されるに従って徐々に軟化する。
【0065】
ここで、一対の支持部(25,25)は、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような間隔を空けて配置されている。そのため、
図5に示すように、一対の支持部(25,25)の上で解凍された被解凍物(2)は、一対の支持部(25,25)の間に落ち込むように変形する。軟化して変形した被解凍物(2)は、その自重により一対の支持部(25,25)の間を通って落下する。
【0066】
このように、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物(2)が、自動的に一対の支持部(25,25)から落下するので、解凍された被解凍物(2)を個別に回収する作業がなくなる。
【0067】
(4-2)第2工程
第2工程では、支持部(25)から落下した被解凍物(2)をガイド部(26)が受けて冷蔵ケース(30)に搬送する工程である。詳細には、第2工程では、解凍されて支持部(25)から落下した被解凍物(2)がガイド部(26)の上に落ちる。ガイド部(26)の上に載った被解凍物(2)は、ガイド部(26)に沿って、斜め下方に滑りながら案内される。ガイド部(26)の前端に到達した被解凍物(2)は、ガイド部(26)から落下して、台車(20)の前方に配置された冷蔵ケース(30)の冷蔵空間(31)に搬送される。
【0068】
このように、解凍された被解凍物(2)がガイド部(26)によって冷蔵ケース(30)に搬送されることにより、解凍された被解凍物(2)が確実に冷蔵ケース(30)に収容される。
【0069】
(4-3)第3工程
第3工程では、ガイド部(26)によって搬送された被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)で保管する工程である。詳細には、第3工程では、ガイド部(26)から落下した被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)の冷蔵空間(31)で受けて、冷蔵保管する。冷蔵ケース(30)は冷蔵空間(31)の温度を所定の温度に保てるので、冷蔵空間(31)に収容された被解凍物(2)は、適切な温度に維持されながら保管される。これにより、解凍された被解凍物の鮮度を維持できる。
【0070】
以上のように、解凍装置(D)において第1工程から第3工程が行われることにより、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物(2)が解凍空間(S1)に長時間置かれて温かい空気にさらされることがなくなるので、被解凍物(2)が過剰に解凍されるのを抑制できる。
【0071】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態の解凍装置(D)では、一対の支持部(25,25)の間隔Lは、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような長さである。
【0072】
このため、解凍空間(S1)において被解凍物(2)が解凍されると、被解凍物(2)は徐々に柔らかくなり一対の支持部(25,25)の間に落ち込むように変形する。変形した被解凍物(2)は、自重により一対の支持部(25,25)の間を通って落下し、解凍空間(S1)の外に出ていく。
【0073】
これにより、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物が解凍空間(S1)内に残らないので、被解凍物が過剰に解凍されることを抑制できる。ここで、凍結率とは、解凍の進行度合いを示す指標のことである。
【0074】
(5-2)
本実施形態の一対の支持部(25,25)は、該支持部(25)同士の間隔Lが変更可能に構成される。これにより、様々な種類、形状、大きさ、および厚さの被解凍物(2)に対応できる。
【0075】
(5-3)
本実施形態の本体部(B)には、解凍空間(S1)の下に設けられて解凍された被解凍物(2)が保管される保管空間(S2)が更に形成される。これにより、解凍されて一対の支持部(25,25)の間から落下した被解凍物(2)を保管空間(S2)に収容できる。
【0076】
(5-4)
本実施形態の解凍装置(D)は、保管空間(S2)を構成し、該保管空間(S2)の温度を所定温度に保つ冷蔵ケース(30)を備える。このため、解凍された被解凍物が冷蔵ケース(30)に収容されることで、適切な温度に維持されながら保管される。これにより、解凍された被解凍物(2)の鮮度を維持できる。
【0077】
(5-5)
本実施形態の解凍装置(D)は、一対の支持部(25,25)の下に配置され、解凍されて支持部(25)から落下した被解凍物(2)を受けて保管空間(S2)に案内するガイド部(26)を更に備える。このため、一対の支持部(25,25)から落下した被解凍物(2)は、ガイド部(26)によって保管空間(S2)まで案内される。これにより、解凍された被解凍物(2)が確実に保管空間(S2)に収容される。
【0078】
(5-6)
本実施形態の解凍方法は、解凍空間(S1)において、被解凍物(2)が解凍されたときに該被解凍物(2)が落下するような間隔を空けて配置される一対の支持部(25,25)の上で該被解凍物(2)を解凍する工程と、前記支持部(25)から落下した前記被解凍物(2)をガイド部(26)が受けて冷蔵ケース(30)に搬送する工程と、前記ガイド部(26)によって搬送された前記被解凍物(2)を冷蔵ケース(30)で保管する工程とを含む。
【0079】
被解凍物(2)は解凍されると柔らかくなり変形する。このため、解凍された被解凍物(2)は、自重により一対の支持部(25,25)の間を通って落下する。支持部(25)から落下した被解凍物(2)は、ガイド部(26)に受け止められて、冷蔵ケースに搬送される。冷蔵ケース(30)に到達した被解凍物(2)は、冷蔵ケースにおいて適温で保管される。これにより、適切な凍結率の状態に解凍された被解凍物(2)が解凍空間(S1)において過剰に解凍されることを抑制できるとともに、解凍された被解凍物(2)を適切な温度に維持しながら保管できる。
【0080】
(5-7)
本実施形態の解凍システム(1)は、解凍装置(D)と、解凍装置(D)が設置される解凍室(4)の温度を調節する温度調節装置(5)とを含む。これにより、解凍装置(D)と温度調節装置(5)とを備える解凍システム(1)を提供できる。
【0081】
(6)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0082】
(6-1)変形例1
各支持部(25)は、アングル材以外のもので構成されてもよい。例えば、各支持部(25)は、パイプ、丸棒、または角材で構成されてもよい。また、各支持部(25)は、台車(20)の枠体(21)と一体に成形され、該枠体(21)から突出する突出部であってもよい。
【0083】
(6-2)変形例2
一対の支持部(25,25)は、台車(20)以外の場所に設けられてもよい。例えば、一対の支持部(25,25)は、差圧装置(10)に設けられてもよい。この場合、一対の支持部(25,25)は、差圧装置(10)の前側面(11c)に固定され、前側面(11c)から前方に延びる。この場合には、解凍装置(D)は、差圧装置(10)と冷蔵ケース(30)によって構成される。
【0084】
(6-3)変形例3
解凍装置(D)は、台車(20)に代わって、車輪を有さない棚を備えてもよい。この場合には、被解凍物(2)は、解凍室(4)内において作業者によって載置部(23)に載置される。そして、解凍された被解凍物(2)は、冷蔵ケース(30)に収容された状態で、冷蔵ケース(30)ごと解凍室(4)から搬出される。
【0085】
(6-4)変形例4
本実施形態の解凍システム(1)は、保管空間(S2)を形成する冷蔵ケース(30)を備えたが、解凍システム(1)は、保管空間(S2)を備えていなくてもよい。この場合には、例えば、冷蔵ケース(30)に代わって、台車(20)の前方にベルトコンベアが設置されてもよい。解凍された被解凍物(2)はガイド部(26)から落下した後、ベルトコンベアの上に着地し、ベルトコンベアによって解凍室(4)の外へ搬出される。
【0086】
(6-5)変形例5
本実施形態の解凍システム(1)は、空気の押し込みによる差圧式以外の方式の解凍システムであってもよい。例えば、ファン(12)の送風方向を逆向きにすることによって解凍室(4)の空気を、通風空間(24)を介して通風空間(24)に流入させる吸い込みによる差圧式の解凍システムであってもよい。
【0087】
また、近赤外線、遠赤外線、マイクロ波、もしくは高周波の照射、または加湿によって被解凍物(2)の表面で水分を凝縮させて伝熱する方式を用いた解凍システムであってもよい。このような解凍システムにおいて冷蔵ケース(30)を用いた場合には、解凍された被解凍物(2)が冷蔵ケース(30)に収容されることにより、被解凍物(2)を解凍するために照射される赤外線、マイクロ波、もしくは高周波、または放出される水分から、解凍された被解凍物(2)が遮蔽される。これにより、被解凍物(2)の鮮度をより維持できる。
この場合にも、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0088】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本開示は、解凍装置および解凍システムについて有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 解凍システム
2 被解凍物
4 解凍室
5 ユニットクーラ(温度調節装置)
25 支持部
26 ガイド部
30 冷蔵ケース
B 本体部
D 解凍装置
S1 解凍空間
S2 保管空間