(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111163
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】回転弁の開度ストッパ構造及び回転弁の開閉ロック構造並びに回転弁
(51)【国際特許分類】
F16K 35/00 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
F16K35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012860
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】浅川 芳比古
(72)【発明者】
【氏名】和田 光史
(72)【発明者】
【氏名】中野 陸
【テーマコード(参考)】
3H064
【Fターム(参考)】
3H064AA07
3H064BA06
3H064CA01
3H064CA08
3H064CA19
3H064DA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構造でありながら、グランドなどに全く影響を与えることなく、所定角度の範囲に確実に開度規制を可能にした回転弁の開度ストッパ構造と開閉ロック構造及び回転弁を提供する。
【解決手段】回転弁の開度ストッパ構造は、ボデー2内の弁体8を回転させるステム10と同軸連動可能に回転するストッパ部材40と、ステム10と同軸回転可能な可動部材50と、ボデー2に設けられ可動部材50の回転範囲の始点と終点を所定角度未満の位置関係に規制する位置決め部31と、を備え、ストッパ部材40は、可動部材50に対して相対的な回転範囲が規制されるようになっており、可動部材50の位置決め部31に対する回転範囲とストッパ部材40の可動部材50に対する相対的な回転範囲とを合わせて回転弁の動作範囲を所定角度に回転規制した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデー内の弁体を回転させるステムと同軸連動可能に回転するストッパ部材と、前記ステムと同軸回転可能な可動部材と、前記ボデーに設けられ前記可動部材の回転範囲の始点と終点を所定角度未満の位置関係に規制する位置決め部と、を備え、前記ストッパ部材は、前記可動部材に対して相対的な回転範囲が規制されるようになっており、前記可動部材の前記位置決め部に対する回転範囲と前記ストッパ部材の前記可動部材に対する相対的な回転範囲とを合わせて回転弁の動作範囲を前記所定角度に回転規制したことを特徴とする回転弁の開度ストッパ構造。
【請求項2】
前記ステムに結合状態で軸着したストッパ部材と、前記ステムに非結合状態で軸着した可動部材と、前記ボデーに設けられ前記可動部材の回転範囲の始点と終点を90度未満の範囲に規制する位置決め部と、前記ストッパ部材に前記可動部材の一部を係止するために形成された係止開口部と、を備え、前記ストッパ部材は、前記可動部材の前記一部が前記係止開口部内でのみ移動可能とされることで、前記可動部材に対する相対的な回転範囲が規制されるようになっており、前記可動部材の前記位置決め部に対する回動範囲と前記ストッパ部材の前記可動部材に対する回動範囲によりハンドルの回転動作範囲を90度とするように規制した請求項1に記載の回転弁の開度ストッパ構造。
【請求項3】
前記ストッパ部材はプレート状であり、前記可動部材はプレート状である請求項1又は2に記載の回転弁の開度ストッパ構造。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記ボデーの軸装部に設けたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部に螺着させた位置決め用ストッパ部により構成した請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転弁の開度ストッパ構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の回転弁の開度ストッパ構造において、前記可動部材が前記位置決め部に当接し且つ前記ストッパ部材が前記可動部材との相対的な全閉又は全開位置に規制されることでハンドルが全閉又は全開状態となる際に、前記位置決め部を当該位置決め部に当接する可動部材との間で挟み込むようにロック部材で固定することでハンドルが当該位置から回転しないように規制するようにしたことを特徴とする回転弁の開閉ロック構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の回転弁の開度ストッパ構造を用いたことを特徴とする回転弁。
【請求項7】
請求項5に記載の回転弁の回転弁の開閉ロック構造を用いたことを特徴とする回転弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールバルブやバタフライバルブなどの回転弁の開度ストッパ構造と回転弁の開閉ロック構造及び回転弁に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ボールバルブなどの回転弁には、全閉又は全開となる位置でハンドルの回動を規制するためのストッパ機構が設けられたものが広く実施されている。
このストッパ構造は、国際規格などによって、流体漏れを防止するために、グランドパッキンのシール構造に関わる部品であるグランドボルトやグランドを開度ストッパに関与させてはならない旨の規定が存在している。
【0003】
そこで、この規格に対応させるために、特許文献1には、ボデーに設けた軸装部にストッパプレートを固着し、このプレートに形成した90度範囲の開口を有する開口部に、ステムを共回り状態に固着させたロックプレートをステムと共に回動させて、90度の範囲で回転を規制している開度ストッパ構造が提案されている。
何れにしても、グランドなどには無関係な構造部位にストッパ構造を持たせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、上記の規格には対応できるストッパ構造であっても、ステムの軸装部上面には、90度の範囲の回動が許容されるためのストッパプレートとこのストッパプレートに係止するためのストッパ片をさらに設ける必要がある。
【0006】
一方、グランドには無関係な構造部位をストッパ構造としたとしても、開度規制するための90度の回転で確実に止めることができるような相対的な位置関係となっているとは限らず、よって、そのままでは90度の回転動作のストッパ機構を採用することができない。
【0007】
そこで、グランド等以外のストッパ部位が90度の範囲で停止させることができない部位であっても、回転弁の開度規制構造として採用することができる回転弁の開度ストッパ構造の開発が望まれており、さらには、開度ストッパ構造とともに簡易な構造で開閉ロックを可能とした回転弁の開発も望まれている。
【0008】
本発明は、簡易な構造でありながら、グランドなどに全く影響を与えることなく、所定角度の範囲に確実に開度規制を可能にした回転弁の開度ストッパ構造と開閉ロック構造及び回転弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ボデー内の弁体を回転させるステムと同軸連動可能に回転するストッパ部材と、ステムと同軸回転可能な可動部材と、ボデーに設けられ可動部材の回転範囲の始点と終点を所定角度未満の位置関係に規制する位置決め部と、を備え、ストッパ部材は、可動部材に対して相対的な回転範囲が規制されるようになっており、可動部材の位置決め部に対する回転範囲とストッパ部材の可動部材に対する相対的な回転範囲とを合わせて回転弁の動作範囲を所定角度に回転規制した回転弁の開度ストッパ構造である。
【0010】
請求項2に係る発明は、ステムに結合状態で軸着したストッパ部材と、ステムに非結合状態で軸着した可動部材と、ボデーに設けられ可動部材の回転範囲の始点と終点を90度未満の範囲に規制する位置決め部と、ストッパ部材に可動部材の一部を係止するために形成された係止開口部と、を備え、ストッパ部材は、可動部材の一部が係止開口部内でのみ移動可能とされることで、可動部材に対する相対的な回転範囲が規制されるようになっており、可動部材の位置決め部に対する回動範囲とストッパ部材の可動部材に対する回動範囲によりハンドルの回転動作範囲を90度とするように規制した回転弁の開度ストッパ構造である。
【0011】
請求項3に係る発明は、ストッパ部材はプレート状であり、可動部材はプレート状である回転弁の開度ストッパ構造である。
【0012】
請求項4に係る発明は、位置決め部は、ボデーの軸装部に設けたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部に螺着させた位置決め用ストッパ部により構成した回転弁の開度ストッパ構造である。
【0013】
請求項5に係る発明は、上記の回転弁の開度ストッパ構造において、可動部材が位置決め部に当接し且つストッパ部材が可動部材との相対的な全閉又は全開位置に規制されることでハンドルが全閉又は全開状態となる際に、位置決め部を当該位置決め部に当接する可動部材との間で挟み込むようにロック部材で固定することでハンドルが当該位置から回転しないように規制するようにした回転弁の開閉ロック構造である。
【0014】
請求項6に係る発明は、上記の回転弁の開度ストッパ構造を用いた回転弁である。
【0015】
請求項7に係る発明は、上記の回転弁の開閉ロック構造を用いた回転弁である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、位置決め部のみでは所定角度未満の回転範囲の規制しかできない場合でも、ストッパ部材と可動部材の組み合わせにより回転弁の回転範囲を一方のみの場合より拡張して、所定角度での回転規制を行うことが可能となるため回転弁の開度ストッパを簡易な構成で所定角度の範囲に回転規制することが可能となる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、例えば90度で開度を規制する回転弁に好適に適用可能であり、また係止開口部に係止させる構造により、ストッパ部材と可動部材との相対的な回転角度の規制を行いやすい。
すなわち、始点と終点が90度未満の位置決め部を回転弁の開度ストッパ構造に採用した場合でも、ハンドル操作時には、ストッパ部材がステムと共回りに回動し、可動部材が所定の範囲まで回動すると、可動部材が位置決め部に当接して可動部材が位置決め部により回動範囲を規制され、これにともなってストッパ部材の回動範囲が規制されるように構成したので、可動部材の位置決め部に対する回動範囲とストッパ部材の可動部材に対する回動範囲によりハンドルの回転動作範囲を90度とするように規制することができるから、ボデーに設けられた位置決め部が90度未満の範囲であってもグランドなどに当接させることなく簡易な構成でありながら、精度よく開度を規制することができる。
また、位置決め部をボデーに設けることができるから、グランドなどには無関係な構造部位にストッパ部位を設けることが可能であり、グランド関係部品をストッパに用いることができないことが定められた国際規格に対応可能なストッパ構造を提供できる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、ストッパ部材及び可動部材がそれぞれプレート状であるから、上下に組み合わせて配置させやすく、スペースに余裕がない軸装部への設置が一層容易となる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、位置決め部は、ボデーの軸装部に設けたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部を用いて、位置決め用のストッパにすることにより、始点と終点を精度よく定めることができるから、ハンドルの回転を適切に精度よく90度に規制することができる。
また、アクチュエータ搭載用の雌ねじ部は、手動操作のバルブにおいても、自動操作のバルブとの構造の共通化の為に設けられていることが多く、その場合も規格によって精度よく所定の間隔で設けられているから、バルブの大きさが異なる場合であっても、新たに雌ねじ部を加工することなく、そのまま利用することが可能となり、位置決めが確実に行われる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、可動部材が位置決め部に当接して全閉又は全開状態となる際に、位置決め部を当該位置決め部に当接する可動部材とロック部材との間で挟み込むことで、ロック部材の施錠によりロック部材が位置決め部に当接して全閉又は全開位置から戻る方向にストッパ部材が回動することができなくなり、可動部材とストッパ部材を固定して、ハンドルの回転動作を規制することができるから、全閉状態又は全開状態のときに位置決め部を挟んで施錠する簡易な構造により、全閉又は全開状態で安定した状態で誤作動を防ぐことが可能となる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、簡易な構造でありながら、グランドに全く影響を与えることなく、所定の開度に規制可能な開度ストッパ構造を備えた回転弁を提供することができる。
【0022】
請求項7に係る発明によると、簡易な構造でありながら、グランドに全く影響を与えることなく、開度ストッパ構造、さらには開閉ロック構造を備えた回転弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明におけるボールバルブの開度ストッパ構造を分離して示した分離斜視図である。
【
図5】同上の開度ストッパ構造の部分拡大断面図である。
【
図6】同上の開度ストッパ構造の拡大平面図である。
【
図7】同上の開度ストッパ構造の拡大平面図である。
【
図8】
図7の開度ストッパ構造を示した斜視図である。
【
図9】(a)はストッパプレートの平面図、(b)は可動プレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に回転弁の開度ストッパ構造及び回転弁の開閉ロック構造並びに回転弁の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
本発明に係る開度ストッパ構造及び開閉ロック構造が適用可能な回転弁は、特に限定はなく、ボールバルブやバタフライバルブなどの回転弁などに装着可能であり、本例では、ボールバルブに適用した実施形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明におけるボールバルブの開度ストッパ構造を分離して示した分離斜視図であり、
図2は、同上の開状態を示した斜視図であり、
図3は、同上の中間開度を示した斜視図であり、
図4は、同上の閉状態を示した斜視図であり、
図5は、同上の開度ストッパ構造の部分拡大断面図を示している。
【0027】
図5に示すように、回転弁(バルブ本体1)には流体の流入口1aと流出口1bが設けられると共に、ボデー2上部には軸装部3が延設され、この軸装部3の内部に挿通孔3aを設けている。この挿通孔3aには、作動伝達部材であるステム10を挿通させている。なお、流入出口は非使用時には蓋で被覆している。
【0028】
同図に示すように、軸装部3の上端面にはフランジ状の載置部4が設けられ、この載置部4にアクチュエータを搭載可能にする雌ねじ部6を形成して、この雌ねじ部6に位置決め部31を螺着している。また、ステム10の上部にはストッパ部材(ストッパプレート)40と可動部材(可動プレート)50を装着して後述する開度ストッパ構造を構成している。
バルブ本体1は、ステム10にハンドル28を装着することによって手動操作が可能であり、ステム10を90度回転させることによりボール弁体8の内部流路8aを開閉させる。
【0029】
ボデー2には、キャップ5を固着ボルトによって固着され、これらは一体に設けられている。ボデー2内には、2つのシートリング7に挟持された状態でボール弁体8を設け、このボール弁体8にステム10を取付けることにより、ステム10を介してボール弁体8を回転自在に設けている。挿通孔3aにはシール部材であるグランドパッキン21を装着している。
【0030】
ステム10の上端部には、座金27を介在させてハンドル固定用ボルト26を螺着するためのネジ部11を形成していると共に、平行二面部12を形成して、ハンドル28の平行二面部と係止させて、ハンドル28をステム10と一体に回動可能に取り付けている。
また、ステム10の上端部にはC型止め輪29を装着するための溝部を設け、C型止め輪29によりストッパプレート40及び可動プレート50を抜け止めすることができる。
【0031】
グランド20は、固定部材(グランドボルト)22で固定しており、グランド20の固定時には、このグランド20に形成したボルト挿入孔からグランドボルト22を挿入し、このグランドボルト22の先端側の一部をボデー2側に形成したメネジに螺着することによりグランド20でグランドパッキン21をボデー2側に押圧し、このグランドパッキン21をボデー2とステム10の間に設けたパッキン室内に充填してステム回りをシールしている。
【0032】
本例の開度ストッパ構造は、ストッパ部材40と、可動部材50と、位置決め部31により構成している。このため、バルブボデーの軸装部など限られたスペースに設置可能であり、かつ、少ない部品点数で開度ストッパ構造を構成することができる。
【0033】
位置決め部31は、位置決め用ストッパ部(ネジ部材)32とスペーサ33よりなり、位置決め部31は、ボデー2の軸装部3に形成されたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部6に螺着され、本例では、ボデー2の載置部4に形成された4つ雌ねじ部6のうち2つの雌ねじ部6に位置決め部31を螺着している。なお、位置決め部は、ピン部材により構成してもよい。
位置決め部31は、可動部材50の回動範囲の始点と終点を規制するように設けており、始点と終点とが所定角度未満(例えば90度未満)の位置関係となるように設けている。ここで、所定角度は、90度でもよく180度でもよく、回転弁の動作範囲を規制するのに適切な開度範囲に応じて適宜選択可能である。
なお、位置決め部31は、始点と終点を規定する2つの部材によって構成される必要はなく、可動部材50との関係で当該可動部材50の回転範囲の始点と終点を規定できるものであればよい。例えば、位置決め部が一つの部材(例えば、一本のピン)であり、可動部材50側にスリット状の開口などが設けられて、位置決め部31であるピンとの係合により可動部材50の回転範囲が規制されるような関係であってもよい。
【0034】
可動部材50のストッパとなる位置決め部31はグランド20とは関係のない部位のいずれでもよいが、ボデー2の軸装部3に形成されるアクチュエータ搭載用のネジ穴6は、通常、所定の位置関係に設けられているから、このネジ穴を利用することにより位置決め部31の相対的な位置関係を定めやすく、可動部材50の回動範囲の始点と終点を適切に規制可能である。
なお、位置決め部31は本例の場合以外にボデーやその他の部位を用いて位置決め部とすることができる。位置決め部31としてはグランド20やグランドボルト22を用いても良いが、API608、API6D、ISO17292などの規格では、グランド、グランドフランジ、グランドボルトなどのシール性への影響を及ぼすグランド関係の部材を位置決めとして使用すべきでない旨が定められており、それらの規格に適合させる場合には、それらグランド関係以外の部材を位置決め部31として用いる。
【0035】
ここで、アクチュエータ搭載用のネジ穴を位置決めに使用した際に、そのまま、位置決め部の間で所定の部材を当接させて開度を規制するストッパ機構としたとき、始点となる位置決め部と、終点となる位置決め部の間の角度が90度未満となる位置関係のため、ハンドルの開閉動作を精度よく90度に規制することができない。
そこで、本例では、ストッパ部材(ストッパプレート)40と可動部材(可動プレート)50を組合わせて構成することにより、回転弁の動作範囲を適切に90度に調整できるようにしている。
【0036】
図9(a)より、ストッパ部材40は薄板状の金属製材料より成り、基部41とこの基部41より延出している突設部42を有している。
ストッパ部材40はプレート状であり、基部41には、ステム10に結合状態で軸着するための嵌合部43を形成しており、この嵌合部43にはステム10の平行二面部12に嵌合可能な二面係止部44を設けている。二面係止部44とステム10の平行二面部12の係合によりステム10とストッパプレート40が共回り可能となり、ストッパプレート40がステム10と同軸連動可能に回転する。
【0037】
突設部42には、可動プレート50が係止する係止開口部45を形成しており、後述する可動プレート50の係止部54が係止可能に設けられ回動範囲を案内してストッパ部材40の回動範囲を規制するようにしている。
具体的には、係止開口部45の当接部46(第1当接部46a、第2当接部46b)に可動プレート50の係止部54が当接することで、ストッパプレート40の可動プレート50に対する回動範囲が規制される。また、ストッパプレート40は、位置決め部材31により回動規制されず、可動プレート50との関係によって回動範囲が規制される。このため、可動プレート50を介したストッパプレート40の回動範囲規制によって、ストッパプレート40と連動して回転するステム10の回転範囲が規制されて、結果、ステム10の回転を操作するハンドル28の回動範囲が規制される。
なお、ストッパプレート40の係止開口部45は、プレス加工などにより容易に形成することができるから、簡易な構成でありながら低コストで製造可能である。
【0038】
係止開口部45の近傍には、ロック部材(例えば南京錠など)61を挿通する孔部(キーロック孔)47を形成しており、
図2及び
図6に示すように、例えば、バルブ本体1が、全開状態となる際にこの孔部47にロック部材61で施錠することで、ハンドルの誤作動を防止する。
本例では、全閉又は全開状態を固定できるように、突設部42の外周側に2つの孔部47を設けている。なお、孔部47は内周側に設けてもよく、係止開口部45に一体化した孔部としてもよく、さらには、孔部が複数あってもよい。
【0039】
図9(b)より、可動部材50は、例えば金属製材料より成り、可動部材50はプレート状であり、円形形状の基部51とこの基部51より突出した突出部52を有する。基部51には、ステム10に非結合状態で軸着し同軸回転可能にするための取付孔53を形成しており、可動プレート50はステム10の回転と共回りしないで、ステム10の軸周りに回動自在にステム10に装着される。なお、可動プレート50は、上記のストッパ部材40と同軸回転可能であるが、ステム10と連動回転する必要はないので、ステムに軸着する必要はなく同軸回転可能であるかぎり、他の部材に固定してもよい。
【0040】
図8に示すように基部51より突出した突出部52には、下方に延びた係止部54を形成しており、ハンドル操作の際にこの係止部54が位置決め部31に当接することで、可動プレート50の回動が規制される。これにより可動プレート50の位置決め部31に対する回動範囲を規制可能にしている。
同図より、ストッパプレート40と可動プレート50をステム10に装着すると、この係止部54は、ストッパプレート40の係止開口部45内に挿入されるように構成されており、ストッパプレート40の可動プレート50に対する回動範囲を規制可能にしている。
【0041】
図8の本例では、ストッパプレート40に係止開口部45を設け、可動プレート50を係止可能にしているが、ストッパプレート40には突部、凸部、、凹部、窪み部、段差部などを形成し、可動プレート50には開口部、切欠部、凸部、凹部、窪み部、段差部などを形成してもよく、これらは複数設けてもよい。例えば、ストッパプレート40に形成した凸部を可動プレート50に設けた切欠きに係止して、ストッパプレート40を可動プレートに係止させてもよい。
また、
図8ではストッパプレート40の上方に可動プレート50を設けているが、可動プレート50の上方にストッパプレート40を設けてもよく、ストッパプレート40と可動プレート50が同軸上で離間していてもよく、このとき、介在する部材を設けて構成してもよい。
すなわち、ストッパプレート40と可動プレート50が同軸に回動して、一方のプレートの回動規制によって他方のプレートが回動規制(相対的な回転範囲が規制)されて、各プレートの回動規制によって、回転弁の動作範囲を適切に設定することができれば、各プレートの形状や係止手段などは適宜設定することが可能である。
【0042】
また、本例では、可動プレート50の係止部54を位置決め部31に当接して、可動プレートを位置決めして可動プレートを回動規制しているが、可動プレート50に、突部、凸部、突出部、凹部、窪み部、開口部、切欠部、段差部などを形成してもよく、これらは複数設けてもよい。例えば、可動プレート50に開口部を形成し、この開口部に当接する位置決め部31により始点と終点を規定した構成でもよい。可動プレート50に切欠部を形成し、切欠部に当接する位置決め部31によりの始点と終点を規定した構成でもよい。
すなわち、位置決め部31に当接する可動プレート50が、ステム10と同軸に回転してステム10に無関係で、位置決め部31によって可動プレート50の始点と終点が定められ、可動プレート50の回動範囲を規制できればよい。
さらには、ストッパプレート40と可動プレート50が、位置決め部で開度規制されてもよいし、同一の位置決め部或いは複数の位置決め部で開度規制する構成であってもよい。
【0043】
ここで、可動プレート50の位置決め部31に対する回動範囲とは、係止部54が位置決め部31に当接するまで可動プレート50が回動可能な範囲(位置決め部31と位置決め部31の間で回動可能な範囲)である。
ストッパプレート40の可動プレート50に対する回動範囲とは、係止部54がストッパプレート40の係止開口部45内の第1当接部46aから第2の当接部46b(又は第2の当接部46bから第1当接部46a)に係止するまでストッパプレート40が回動可能な範囲(係止開口部45内で係止部54が当接するまでストッパプレート40が回動する範囲)である。
このため、可動部材(可動プレート)50の位置決め部31に対する回動範囲とストッパ部材(ストッパプレート)40の可動部材(可動プレート)50に対する相対的な回動範囲を合わせて、所定角度(例えば90度)とすることで回転弁の動作範囲を所定角度(例えば90度)に規制して、回転弁の開度を規制するように構成している。例えば、両者の回動範囲を合わせて90度とすれば、回転弁においてハンドル28の回転範囲が90度となる。
【0044】
また、本例のストッパ構造を回転弁に取付けする際には、先ずストッパプレート40の嵌合部43をステム10の平行二面部12に嵌合させて、ストッパプレート40をステム10に装着する。次いで、可動プレート50の取付穴53にステム10を挿通して、可動プレート50をステム10に装着する。
その後、ストッパプレート40と可動プレート50をステム10に装着した状態で、ステム10の溝部にC型止め輪29を装着して、ストッパプレート40と可動プレート50を抜け止め防止する。以上のようにして、ストッパ構造を回転弁に装着する。
【0045】
このように、ストッパプレート40と可動プレート50という2つの部材を組み合わせ、それらの回転範囲の合計で所定の回転角度に規制することが可能となるので、一つの部材のみで大きな回転角度を確保しようとする場合に比べて、個別の部材をコンパクトにすることができ、バルブボデーの軸装部など限られたスペースにストッパ構造を設けることが可能であり、グランドフランジ、グランドボルトなどのシール性への影響を及ぼすグランド関係の部材を位置決めとして使用することなく、かつ、少ない部品点数で開度ストッパ構造を構成することができる。
【0046】
また、本例の開閉ロック構造は、上記の開度ストッパ構造において、可動プレート50が位置決め部31に当接してバルブ本体1が全閉又は全開状態となったときに、ストッパプレート40の孔部47にロック部材61を貫通させて施錠すると、位置決め部31がロック部材61と係止部54に挟まれた状態となるように構成されている。
【0047】
図6に示す全開状態の平面図において、可動プレート50の係止部54、位置決め部31、ストッパプレート40の孔部47が近接して並んだ状態となる。この状態(全閉又は全開状態)でストッパプレート40に形成した孔部47にロック部材(南京錠など)61で施錠すると、位置決め部31を可動プレート50の係止部54とロック部材61との間で挟み込むことができる。
開閉ロック構造においては、バルブ本体1が全閉又は全開状態のときに、孔部47にロック部材61を貫通させて施錠すると、ロック部材61が位置決め部31に当接して全閉又は全開位置から戻る方向にストッパプレート40が回動することができなくなり、その結果、ハンドル28の回転動作が規制されて全閉又は全開状態が固定される。
【0048】
次いで、本発明の回転弁の開度ストッパ構造及び回転弁のロック構造並びに回転弁の上記実施形態における動作及び作用を述べる。
【0049】
開閉時の動作の例として、バルブ本体1の全開状態から全閉状態に操作する場合を説明する。なお、全閉から全開の状態に回転する場合も同様の作用を有するから詳細な説明は省略する。
【0050】
図6はバルブ本体1の全開状態、
図7はバルブ本体1の全閉状態を示している。ハンドル28を手動操作し、ボール弁体8を全開から全閉の状態に回転させるとき、ストッパプレート40はステム10の回転により共回りして、
図6においてストッパプレート40は回転弁を全閉とする方向に向かって回動する。
【0051】
可動プレート50は、非結合状態でステム10に装着されるからステム10の回転とは無関係に回転可能である。このため、ハンドル28を操作したとき、可動プレート50がストッパプレート40と同時に回転する場合、可動プレート50がストッパプレート40の回動に遅れて回動する場合、可動プレート50がストッパプレート40より先に回動する場合などがある。そして、可動プレート50は、ストッパプレート40とは無関係に回動する場合もある。
【0052】
可動プレート50が所定の位置まで回動すると、可動プレート50の係止部54が位置決め部31に当接して、位置決め部31がストッパとなり可動プレート50が位置決めされて、可動プレート50が所定の方向には回動できないため、可動プレート50の回動範囲が規制される。
一方、ストッパプレート40は位置決め部材31に当接しないから、可動プレート50の回動規制とは無関係にストッパプレート40は回動可能であり、さらにハンドル28を全閉状態とする方向に回動する。
【0053】
始点となる位置決め部31と終点となる位置決め部材31との間で、可動プレート50が回動するが、可動プレート50の回動範囲は、90度未満である。このため、可動プレート50のみでは、ハンドル28の回転動作範囲を90度に規制することはできない。しかし、本例では、可動プレート50の回動範囲を規制した後、さらにストッパプレート40が可動プレート50に対して所定範囲で回動できることにより、可動プレート50の回動範囲よりもハンドル28を回転させることができる。
【0054】
ここで、ストッパプレート40の可動プレート50に対する回動範囲(回転範囲)は、次のように定められる。すなわち、ストッパプレート40の係止開口部45に可動プレート50の係止部54が係止しているが、この係止部54が第1当接部部46aに当接した状態から離間して、第2係止部46bに接近し、さらに、係止するまでの回動範囲においてストッパプレート40は回動可能である。
ストッパプレート40と可動プレート50は、それぞれステム10の軸周りに回動するが、互いに連動せず独立に回動可能である。可動プレート50が止まった状態でストッパプレート40が回動する場合、ストッパプレート40が止まった状態で可動プレート50が回動する場合、両プレートが相互に一致して回動する場合や、両プレートとも回動するものの回動動作が一致していない場合のいずれもがあり得る。
しかしながら、ストッパプレート40が可動プレート50に係止する部位を設けたことにより、互いに独立して同軸回転可能であっても、一方のプレートの回転規制を介して他方のプレートの回転規制に関与することが可能である。
【0055】
本例においては、
図7より、可動プレート50の係止部54がストッパプレート40の第2係止部46bに係止すると、ストッパプレート40は回動方向への回転が規制されて、これによりステム10の回転も規制することができ、回転弁の動作範囲を所定の開度に回転規制して、結果ハンドル28の回転を規制することができる。
すなわち、全閉状態となるときには、可動プレート50の係止部54が位置決め部31に当接した状態であり、かつ、可動プレート50の係止部54はストッパプレートの係止開口部45の当接部46bに係止している状態となっている。この状態では、可動プレート50の回動範囲が制限された状態であり、かつ、ストッパプレート40の回動範囲が制限された状態であり、すべてのプレートが回動規制されて、ようやく回転弁の動作範囲を所定の開度に回転範囲が規制される。
よって、可動部材(可動プレート)50の位置決め部31に対する回転範囲とストッパ部材(ストッパプレート)40の可動部材50に対する相対的な回転範囲とを合わせて回転弁の動作範囲を所定角度に回転規制することができる。
【0056】
このように位置決め用ストッパ部32の始点と終点が90度未満でも、可動プレート50が位置決め部31に当接した後、さらに、ストッパプレート40を回動させることができ、可動プレート50の位置決め部31に対する回動範囲とストッパプレート40の可動プレート50に対する回動範囲により回転弁の動作範囲を所定角度(例えば90度)に調整することができる。このため、ストッパとなる位置決め部31の始点と終点に影響を受けることなく、回転弁の動作範囲を所定角度(例えば90度)に調整することができる。
【0057】
可動プレート50の位置決め部31に対する回動範囲は、係止部54が位置決め部31に当接するまで可動プレート50が回動可能な範囲であり、ストッパプレート40の可動プレー50に対する回動範囲は、係止部54がストッパプレート40の係止開口部45内の第1当接部46aから第2当接部46bに係止するまでストッパプレート40が回動可能な範囲であるから、回転弁を操作するハンドル28の回転範囲を例えば90度に設定する際には、両者の回動範囲を合わせて90度となるようにすればよいので、簡易な構成でありながら容易に回転弁の動作範囲を90度に調整することができる。
【0058】
また、可動プレート50の回動範囲の始点と終点となる位置決め部31は、アクチュエータ搭載用のネジ穴6を利用しているから、位置決め部31の相対的な位置関係を定めやすく、位置決め部は、ボデー2の載置部4に設けたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部6を用いて、位置決め用のストッパにすることにより、始点と終点を精度よく定めることができるから、精度よく回転弁の回転動作範囲を所定角度(例えば90度)に調整することができる。
また、アクチュエータ搭載用の雌ねじ部6は、規格によって精度よく所定の間隔で設けられているから、バルブの大きさが異なる場合であっても、新たに雌ねじ部を加工することなく、そのまま利用することが可能となり、位置決めが確実に行われる。
【0059】
加えて、ボデー2に設けたアクチュエータ搭載用の雌ねじ部6に位置決め部31を螺着しているから、ストッパ構造において、グランド部位とは関係のない部位をストッパにすることが可能であり、開度規制時おいてもグランド部位に当接することはないので、国際規格に対応可能である。
【0060】
開度ストッパ構造において、可動プレート50が位置決め部31に当接してバルブ本体1が全閉状態又は全開状態となる際には、可動プレート50の係止部54、位置決め部31、ストッパプレート40の孔部47が近接して並んだ状態となる。
この状態(全閉又は全開状態)でストッパプレート40に形成した孔部47にロック部材(南京錠など)61で施錠すると、位置決め部31を可動プレート50の係止部54とロック部材61との間で挟み込むことができ、簡易な構成により開閉ロック構造を構成することができる。
【0061】
このように、各部材が所定の位置関係にあるときに、ストッパプレート40に形成した孔部47にロック部材61を挿通すると、位置決め部31を可動プレート50の係止部54とロック部材61との間で挟み込むことで、可動プレート50を位置固定すると共にストッパプレート40も位置固定されて、ロック部材(例えば南京錠など)61の施錠によって、ストッパプレート40と可動プレート50の位置固定によってハンドル28を全閉又は全開状態の位置に固定することができ、安定状態でハンドルの誤作動を確実に防止できる。
【0062】
このように、ストッパプレート40にキーロック用の孔部47を形成するだけで、開度ストッパ構造に開閉ロック機能を備えた構成にすることができる。
そして、簡易な構造でありながら、グランドに全く影響を与えることなく、開度ストッパ構造、さらには開閉ロック構造を備えた回転弁を提供することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 バルブ本体(回転弁)
2 ボデー
3 軸装部
6 雌ねじ部
8 弁体(ボール弁体)
10 ステム
20 グランド
28 ハンドル
31 位置決め部
32 位置決め用ストッパ部
40 ストッパ部材(ストッパプレート)
45 係止開口部
46 当接部
46a 第1当接部
46b 第2当接部
47 孔部
50 可動部材(可動プレート)
54 係止部
61 ロック部材