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特開2023-111168ハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、ハフニア含有膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111168
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、ハフニア含有膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230803BHJP
   C23C 24/10 20060101ALN20230803BHJP
【FI】
H01L21/316 G
C23C24/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012867
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】辻内 直人
【テーマコード(参考)】
4K044
5F058
【Fターム(参考)】
4K044AA02
4K044AA06
4K044AA11
4K044AB02
4K044BA12
4K044BB01
4K044BC02
4K044CA53
5F058BA08
5F058BB01
5F058BB05
5F058BB06
5F058BB07
5F058BC03
5F058BC04
5F058BF46
5F058BH03
5F058BH07
(57)【要約】
【課題】エッチング耐性に特に優れたハフニア含有膜を成膜することが可能なハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたハフニア含有膜を提供する。
【解決手段】溶剤となるアルコールと、ハフニア源となるハフニウム化合物と、を含有するハフニウム化合物含有ゾルゲル液であって、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、金属成分としてHfの含有量WHfと前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内である。ハフニア(HfO)を含有するとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、前記HfOの含有量WHfO2と前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤となるアルコールと、ハフニア源となるハフニウム化合物と、を含有するハフニウム化合物含有ゾルゲル液であって、
Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、金属成分としてHfの含有量WHfと前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内であることを特徴とするハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項2】
溶剤となる前記アルコールは、炭素数が5以下の低級アルコールとされていることを特徴とする請求項1に記載のハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項3】
前記ハフニウム化合物の含有量が0.05wt%以上10wt%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項4】
濡れ性改善剤として分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項5】
前記ポリアルコールの含有量が0.05wt%以上20wt%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項4に記載のハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項6】
さらに安定化剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハフニウム化合物含有ゾルゲル液。
【請求項7】
ハフニア(HfO)を含有するとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、
前記HfOの含有量WHfO2と前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内であることを特徴とするハフニア含有膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面にハフニア(別名:酸化ハフニウム(IV)、化学式:HfO)を含有するハフニア含有膜を成膜する際に用いられるハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたハフニア含有膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上述のハフニア含有膜は、硬度の高いハードコート膜やエッチング用マスクとして、各種基材の表面に成膜されている。
基材の表面にパターン状にハフニア含有膜をエッチング用マスクとして成膜し、基材の表面をエッチング処理することにより、ハフニア含有膜が成膜された部分がエッチングされずに残存し、基材の表面に特定のパターンが形成されることになる。
【0003】
ここで、上述のハフニア含有膜を成膜する方法としては、例えば特許文献1,2に示すように、ハフニア源となるハフニウム化合物を含有するハフニウム化合物含有ゾルゲル液が用いた方法が提案されている。
特許文献1,2においては、基材の表面にハフニウム化合物含有ゾルゲル液を塗布し、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の塗布膜を硬化処理することにより、ハフニア含有膜を成膜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-267822号公報
【特許文献2】特開2002-187738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、基材の表面に形成されるパターンが緻密化されており、エッチング処理を精度良く実施することが求められている。また、基材のエッチング処理をさらに効率良く実施することが求められている。
このため、エッチング用マスクとして用いられるハフニア含有膜に対しては、従来にも増して高いエッチング耐性が求められている。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、エッチング耐性に特に優れたハフニア含有膜を成膜することが可能なハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたハフニア含有膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。
ハフニア含有膜においては、その結晶化度を高くすることにより、エッチング耐性が向上する。そして、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mは、Hfよりも結晶化温度が低いため、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液に元素Mを適量含有させることにより、元素Mが速やかに結晶化して種結晶となり、Hfの結晶化が促進され、結晶化度が高くエッチング耐性に優れたハフニア含有膜を成膜可能となる。
【0008】
本発明は、上述の知見を基にしてなされたものであって、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液は、溶剤となるアルコールと、ハフニア源となるハフニウム化合物と、を含有するハフニウム化合物含有ゾルゲル液であって、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、金属成分としてHfの含有量WHfと前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0009】
この構成のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、Hfとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、金属成分として、Hfの含有量WHfと前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内とされているので、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mが結晶化して種結晶となり、Hfの結晶化が促進される。よって、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を乾燥および焼成することで、結晶化度が高くエッチング耐性に優れたハフニア含有膜を成膜可能となる。
【0010】
ここで、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、溶剤となる前記アルコールは、炭素数が5以下の低級アルコールとされていることが好ましい。
この場合、溶剤として、炭素数が5以下の低級アルコールを用いているので、溶媒を比較的容易に溶媒を蒸発させることができ、ハフニア含有膜を安定して成膜することが可能となる。
【0011】
また、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、前記ハフニウム化合物の含有量が0.05wt%以上10wt%以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記ハフニウム化合物の含有量が上述の範囲内とされているので、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を乾燥および焼成することで、ハフニア含有膜を確実に成膜することができる。
【0012】
さらに、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、濡れ性改善剤として分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを含有することが好ましい。
ポリアルコールは、分子内に複数の水酸基(-OH基)を含むことから親水性の表面への親和性が高く、かつ、分子内にエーテル基(-O-)を有していることからハフニウム化合物含有ゾルゲル液との親和性も高い。よって、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液にポリアルコールを含有させることにより、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を親水性の基材表面に均一に塗布することが可能となる。
【0013】
また、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、前記ポリアルコールの含有量が0.05wt%以上20wt%以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記ポリアルコールの含有量が上述の範囲内とされているので、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を、親水性の基材表面にさらに均一に塗布することが可能となる。
【0014】
また、本発明のハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、さらに安定化剤を含有することが好ましい。
この場合、安定化剤を含有しているので、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の劣化を抑制でき、取り扱いが容易となる。
【0015】
本発明のハフニア含有膜は、ハフニア(HfO)を含有するとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、前記HfOの含有量WHfO2と前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内であることを特徴としている。
【0016】
この構成のハフニア含有膜によれば、前記HfOの含有量WHfO2と、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内とされているので、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mによって結晶化が促進されており、結晶化度が高くエッチング耐性に優れている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エッチング耐性に特に優れたハフニア含有膜を成膜することが可能なハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたハフニア含有膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るハフニウム化合物含有ゾルゲル液の製造方法を示すフロー図である。
図2】本発明の一実施形態に係るハフニア含有膜の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、ハフニア含有膜について説明する。
【0020】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、溶剤となるアルコールと、ハフニア源となるハフニウム化合物と、を含有する。
そして、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、金属成分として、Hfの含有量WHfとZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内とされている。
なお、質量比W/WHfは0.25%以上とされていることが好ましく、0.3%以上とされていることがさらに好ましい。一方、質量比W/WHfは1.0%以下とされていることが好ましく、0.5%以下とされていることがさらに好ましい。
【0021】
また、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、溶剤およびハフニウム化合物に加えて、濡れ性改善剤として、分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを含有してもよい。
さらに、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、安定化剤を含有していてもよい。
【0022】
なお、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液においては、ハフニア源となるハフニウム化合物の含有量が0.05wt%以上10wt%以下の範囲内とされていることが好ましい。
また、濡れ性改善剤であるポリアルコールの含有する場合には、ポリアルコールの含有量が0.05wt%以上20wt%以下の範囲内とされていることが好ましい。
安定化剤を含む場合には、安定化剤の含有量を20wt%以下とすることが好ましい。
【0023】
すなわち、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液の組成は、ハフニウム化合物の含有量が0.05wt%以上10wt%以下の範囲内、ポリアルコールの含有量が0wt%以上20wt%以下の範囲内、安定化剤の含有量が0wt%以上20wt%以下の範囲内、残部が溶剤であることが好ましい。
【0024】
ここで、溶剤となるアルコールとしては、炭素数が5以下の低級アルコールを用いることが好ましい。低級アルコール とは、分子内の炭素数が5以下であり、水酸基(-OH基)の数が2以下のアルコールである。
【0025】
低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、n-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2―メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール等の1価アルコール類、並びにエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、及び1,4-ブタンジオール等の2価アルコール類を挙げることができる。
本実施形態では、溶剤として、低級アルコールであるプロパノールまたはブタノールを用いることが好ましい。
【0026】
ハフニア源となるハフニウム化合物としては、例えば、ハフニウムハロゲン化物、ハフニウム亜ハロゲン酸塩、ハフニウム次亜ハロゲン酸塩、ハフニウムハロゲン酸塩、ハフニウム過ハロゲン酸塩、ハフニウム無機酸塩、ハフニウム有機酸塩、ハフニウムアルコキシド、及びハフニウム錯体からなる群から選択されたハフニウム化合物を挙げることができる。
【0027】
本実施形態では、ハフニア源となるハフニウム化合物として、炭素数が5以下のハフニウムアルコキシドを用いることが好ましく、具体的には、ハフニウム(IV)メトキシド、ハフニウム(IV)エトキシド、ハフニウム(IV)プロポキシド、ハフニウムブトキシドハフニウム(IV)n-ブトキシド、ハフニウム(IV)t-ブドキシド、ハフニウム(IV)ペントキシド、ハフニウム(IV)イソプロポキシドモノイソプロピレート等を用いることが好ましい。
【0028】
元素M(Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素)は化合物として含有されており、ハロゲン化物、亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、無機酸塩、有機酸塩、アルコキシド、及び元素Mの錯体からなる群から選択された元素Mの化合物として含有される。元素Mの化合物として、炭素数が5以下のアルコキシドを用いることが好ましい。
これらのハフニア源となるハフニウム化合物を含むハフニウム化合物含有ゾルゲル液を乾燥および焼成することにより、ハフニア(HfO)が形成され、ハフニア含有膜が形成されることになる。
【0029】
濡れ性改善剤となる分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセロール、ジペンタエリトリトール等を用いることが好ましい。
分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールは、分子内に複数の水酸基(-OH基)を含むことから親水性の表面への親和性が高く、かつ、分子内にエーテル基(-O-)を有していることからハフニウム化合物含有ゾルゲル液との親和性も高い。よって、このポリアルコールを含有したハフニウム化合物含有ゾルゲル液は、親水性の基材表面に均一に塗布することが可能となる。
【0030】
ここで、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液における、分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールの含有量を0.05wt%以上20wt%以下の範囲内とすることにより、十分に濡れ性を改善でき、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を親水性の基材表面に均一に塗布することが可能となる。
なお、分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールの含有量の下限は、0.1wt%以上とすることがさらに好ましく、0.2wt%以上とすることがより好ましい。一方、分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールの含有量の上限は、10wt%以下とすることがさらに好ましく、5wt%以下とすることがより好ましい。
【0031】
安定化剤としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、アセトイン、ヒドロキシアセトン、マロン酸、酢酸、無水酢酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等を用いることが好ましい。
ハフニウム化合物含有ゾルゲル液に安定化剤を添加することで、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の劣化を抑制でき、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の取り扱い性を向上させることができる。よって、安定化剤を、必要に応じて適宜添加してもよい。
【0032】
ここで、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液における、安定化剤の含有量は0wt%以上10wt%以下の範囲内とすることが好ましい。
なお、安定化剤の含有量の下限は、0.05wt%以上とすることがさらに好ましく、0.1wt%以上とすることがより好ましい。一方、安定化剤の上限は、8wt%以下とすることがさらに好ましく、5wt%以下とすることがより好ましい。
【0033】
次に、上述した本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液を製造する方法について、図1のフロー図を参照して説明する。
【0034】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液の製造方法においては、図1に示すように、溶媒となるアルコールに、ハフニウム化合物を添加するハフニウム化合物添加工程S01と、ハフニア源となるハフニウム化合物を添加した溶媒を還流する還流工程S02と、を備えている。なお、組成を調整するために、溶媒添加工程S03を有していてもよい。
また、濡れ改善剤となるポリアルコールを添加する場合には、ポリアルコール添加工程S04を有する。さらに、安定化剤を添加する場合には、安定化剤添加工程S05を有することになる。
【0035】
ハフニウム化合物添加工程S01においては、溶媒となるアルコールを加温・撹拌した状態で、ハフニウム化合物を溶媒に添加する。
ここで、金属成分として、Hfの含有量WHfとZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内となるよう元素Mの化合物をさらに添加する。元素Mの化合物としては、ハロゲン化物、亜ハロゲン酸塩、次亜ハロゲン酸塩、ハロゲン酸塩、過ハロゲン酸塩、無機酸塩、有機酸塩、アルコキシド、及び元素Mの錯体からなる群から選択された元素Mの化合物を挙げることができる。元素Mの化合物として、炭素数が5以下のアルコキシドを用いることが好ましい。
なお、添加する際の雰囲気は、非酸化雰囲気とすることが好ましく、本実施形態では窒素雰囲気としている。
また、ハフニウム化合物および元素Mの化合物を添加する際のアルコールの温度は、5℃以上40℃以下の範囲内とすることが好ましい。
【0036】
還流工程S02においては、ハフニウム化合物および元素Mの化合物を添加した溶媒を、攪拌しながら加熱して還流処理する。
この還流工程S02における加熱温度は80℃以上200℃以下の範囲内とすることが好ましい。また、加熱温度での保持時間は0.5時間以上5時間以下の範囲内とすることがこのましい。
なお、安定化剤を添加する場合には、この還流工程S02の前に、安定化剤添加工程S05を実施することが好ましい。
【0037】
また、ポリアルコールを添加する場合には、この還流工程S02の後に、ポリアルコール添加工程S04を実施することが好ましい。
このポリアルコール添加工程S04においては、還流工程S02を実施した溶媒を室温(例えば、20℃以上30℃以下の範囲内)にまで冷却した後、分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを添加して、攪拌混合する。
【0038】
溶媒添加工程S03においては、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の組成を調整するために、溶媒となるアルコールを追加する。
【0039】
以上の各工程によって、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液が製造されることになる。
【0040】
本実施形態であるハフニア含有膜は、上述の本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたものである。
この本実施形態であるハフニア含有膜においては、ハフニア(HfO)を含有するとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、前記HfOの含有量WHfO2と前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内とされている。
なお、質量比W/WHfO2は3.0%以下とされていることが好ましく、1.0%以下とされていることがさらに好ましい。
【0041】
次に、上述した本実施形態であるハフニア含有膜の製造方法について、図2のフロー図を参照して説明する。
【0042】
本実施形態であるハフニア含有膜の製造方法においては、図2に示すように、基材の表面に、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液を塗布するハフニウム化合物含有ゾルゲル液塗布工程S11と、塗布したハフニウム化合物含有ゾルゲル液を乾燥させてハフニウム化合物含有ゲル膜を形成する乾燥工程S12と、ハフニウム化合物含有ゲル膜を焼成してハフニア含有膜を形成する焼成工程S13と、を備えている。
【0043】
ここで、本実施形態においては、ハフニア含有膜を成膜する基材は、金属基材とされているが、金属に限定されるものではない。基材の表面に酸化膜等の親水性の皮膜が形成されているものが好ましい。
また、この基材表面には、ブラスト処理やエッチング処理等によって凹凸が形成されていてもよい。
基材としては、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、銅などの単金属や、それらの合金、酸化物、シリコン、ガリウムなどの元素半導体、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、リン化インジウム、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、酸化ガリウムなどの化合物半導体を用いることができる。
【0044】
ハフニウム化合物含有ゾルゲル液塗布工程S11においては、基材の表面に本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液を塗布する。このとき、塗布方法に特に制限はなく、スプレー法、ディップ法などを用いてもよいが、本実施形態においては、スピンコートによりハフニウム化合物含有ゾルゲル液を塗布する。
ここで、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液が、濡れ改善剤として分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを含有している場合には、親水性の基材表面にも均一に塗布することが可能となる。
【0045】
乾燥工程S12においては、基材表面に塗布したハフニウム化合物含有ゾルゲル液を乾燥させることで、ハフニウム化合物含有ゲル膜を形成する。ここで、本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液が、溶媒として炭素数が5以下の低級アルコールを用いている場合には、乾燥工程S12によって溶媒を比較的容易に蒸発させることができる。
この乾燥工程S12における加熱条件は、大気もしくは酸素雰囲気、加熱温度を100℃以上400℃以下の範囲内、加熱温度での保持時間を0.5分以上10分以下の範囲内、とすることが好ましい。
なお、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液塗布工程S11と乾燥工程S12とを繰り返し実施することで、所定の厚さのハフニウム化合物含有ゲル膜を形成してもよい。
【0046】
焼成工程S13においては、ハフニウム化合物含有ゲル膜を加熱して焼成することにより、ハフニア含有膜を形成する。
この焼成工程S13における加熱条件は、大気もしくは酸素雰囲気、加熱温度を400℃以上1000℃以下の範囲内、加熱温度での保持時間を0.5分以上10分以下の範囲内、とすることが好ましい。
なお、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液塗布工程S11と乾燥工程S12とを繰り返し実施する場合には、毎回の乾燥工程S12後に焼成工程S13を行ってもよい。
【0047】
上述の各工程により、基材の表面に、本実施形態であるハフニア含有膜が製造されることになる。
【0048】
以上のような構成とされた本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液によれば、ハフニア源となるハフニウム化合物を含有しており、金属成分として、Hfの含有量WHfと前記元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内とされているので、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mが結晶化して種結晶となってHfの結晶化が促進されることになり、結晶化度が高くエッチング耐性に優れたハフニア含有膜を成膜可能となる。
【0049】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液において、溶剤となる前記アルコールは、炭素数が5以下の低級アルコールとされている場合には、乾燥工程S12において、比較的容易に溶媒を蒸発させることができ、ハフニア含有膜を安定して成膜することが可能となる。
【0050】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液において、前記ハフニウム化合物の含有量が0.05wt%以上10wt%以下の範囲内とされている場合には、ハフニア含有膜を確実に成膜することができる。
【0051】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液において、濡れ性改善剤として分子内にエーテル基を1つ以上有するポリアルコールを含有している場合には、ポリアルコールが親水性の表面への親和性が高く、かつ、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液との親和性も高いことから、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を、親水性の基材表面に均一に塗布することが可能となる。
【0052】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液において、前記ポリアルコールの含有量が0.05wt%以上20wt%以下の範囲内とされている場合には、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を、親水性の基材表面にさらに均一に塗布することが可能となる。
【0053】
本実施形態であるハフニウム化合物含有ゾルゲル液において、さらに安定化剤を含有する場合には、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の劣化を抑制することができ、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液の取り扱いが容易となる。
【0054】
本実施形態であるハフニア含有膜は、ハフニア(HfO)を含有するとともに、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mを含有しており、HfOの含有量WHfO2と、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内とされているので、Zr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mによって結晶化が促進されており、結晶化度が高くエッチング耐性に優れている。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例0056】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
【0057】
ハフニウム原料として、ハフニウムブトキシドを用い、溶媒として1-ブタノールを用い、安定化剤としてアセチルアセトンを用いた。また、ジルコニウムブトキシド,チタニウムイソプロポキシド、ニオブエトキシドを用いて、Zr,Ti,Nbが表1に示す比率となるように添加した。これらを混合して1時間還流し、その後フィルターでろ過することにより、ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を合成した。安定化剤としてはアセチルアセトンを用い、濡れ性改善剤としてはジエチレングリコールを用いた。
【0058】
得られたハフニウム化合物含有ゾルゲル液を、シリコン基板上に滴下し、スピンコートによって塗布した。
ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を塗布したシリコン基板を、ホットプレートを用いて100~250℃に加熱した後、600℃のマッフル炉に装入し、5分間加熱することにより、ハフニア含有膜を成膜した。
【0059】
本発明例および比較例のハフニウム化合物含有ゾルゲル液およびハフニア含有膜について、以下のように評価した。
【0060】
(ハフニウム化合物含有ゾルゲル液中のZr,Ti,Nb)
ハフニウム化合物含有ゾルゲル液を1g分取し、60wt%硝酸(2.5mL) と50wt%フッ酸(2.5mL) の混合溶液中に投入した。
その混合溶液を加熱した。加熱した混合溶液を50mLになるまで超純水で薄めて、その溶液をICP-OESを用いて、Hf,Zr,Ti,Nbの含有量を測定し、Hfを100wt%とした時のZr,Ti,Nbの含有割合を算出した。
【0061】
(ハフニア含有膜中のZr,Ti,Nb)
ハフニア含有膜を成膜したシリコン基板を1wt%フッ化水素酸に浸漬させ、ハフニア含有膜が溶けるまで加熱を続けた後、シリコン基板を取り出して測定溶液とした。
この測定溶液を適宜希釈し、ICP-OES によってHf,Zr,Ti,Nbの溶出量を求めた。
Hfが全てHfOであるとして換算した後、HfOに対するZr,Ti,Nbの含有比率を求めた。
【0062】
(エッチングレート)
攪拌している25℃の1wt%HF溶液中に、あらかじめハフニア含有膜の膜厚を測定しておいたハフニア含有膜を成膜したシリコン基板を浸漬した。一定時間浸漬後の膜厚を測定し、浸漬前後の膜厚変化より、エッチングレートを算出した。なお、ハフニア含有膜の膜厚は、エリプソメータ(堀場製作所社製UVISEL-HR320 AGMS)を用いて測定した。測定は3か所で行い、その平均値を膜厚とした。
エッチングレート が2nm/分以下の場合を「〇」、2nm/分を超える場合を「×」と評価した。
【0063】
【表1】
【0064】
比較例1においては、Hfの含有量WHfとZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.01%とされており、エッチングレートの評価が「×」となった。元素Mの含有量が少なく、ハフニア含有膜の結晶化が促進されなかったためと推測される。
【0065】
比較例2においては、Hfの含有量WHfとZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが10%とされており、エッチングレートの評価が「×」となった。元素Mの含有量が多く、ハフニア含有膜の元素Mが存在する部分が局所的にエッチングされ、ハフニア含有膜の膜厚が薄くなったためと推測される。
【0066】
これに対して、本発明例1-9においては、Hfの含有量WHfとZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfが0.2%以上5.0%以下の範囲内とされており、成膜されたハフニア含有膜において、HfOの含有量WHfO2とZr,Ti,Nbから選択される一種又は二種以上の元素Mの含有量Wとの質量比W/WHfO2が0.05%以上5.0%以下の範囲内となった。また、成膜されたハフニア含有膜のエッチングレートの評価が「〇」となった。元素Mによって、ハフニア含有膜の結晶化が十分に促進されたためと推測される。
【0067】
以上のことから、本発明例によれば、エッチング耐性に特に優れたハフニア含有膜を成膜することが可能なハフニウム化合物含有ゾルゲル液、および、このハフニウム化合物含有ゾルゲル液を用いて成膜されたハフニア含有膜を提供可能であることが確認された。
図1
図2