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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111195
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】車両用バンパの衝撃吸収構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
B60R19/18 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012932
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 章敏
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収部材によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することにある。
【解決手段】骨格部材10の車両外側がバンパカバー(リヤバンパカバー5)で覆われている車両用バンパの衝撃吸収構造において、骨格部材10には、バンパカバー(リヤバンパカバー5)側から骨格部材10側に加わる衝撃荷重を変形することで吸収する衝撃吸収部材20が設けられており、衝撃吸収部材20には、その変形方向における途中に、骨格部材10に当てられることで衝撃荷重を伝達する伝達部30が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格部材の車両外側がバンパカバーで覆われている車両用バンパの衝撃吸収構造において、
前記骨格部材には、バンパカバー側から骨格部材側に加わる衝撃荷重を変形することで吸収する衝撃吸収部材が設けられており、
前記衝撃吸収部材には、その変形方向における途中に、前記骨格部材に当てられることで衝撃荷重を伝達する伝達部が設けられている車両用バンパの衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記バンパカバーの車両外側の端部と前記骨格部材の間に配置されている請求項1に記載の車両用バンパの衝撃吸収構造。
【請求項3】
前記伝達部は、前記衝撃吸収部材の車両外側を臨む外面又はその反対側の内面の少なくとも一方に設けられている請求項1又は2に記載の車両用バンパの衝撃吸収構造。
【請求項4】
前記伝達部は、衝撃荷重の加えられていない状態において、前記骨格部材に対向するように設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用バンパの衝撃吸収構造。
【請求項5】
車両を一方向から見た平面視において、前記バンパカバーと同一平面内に前記骨格部材よりも車両外側に突出する外装部材が設けられていると共に、前記衝撃吸収部材は、前記外装部材よりも先に衝撃荷重を受けられるように構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用バンパの衝撃吸収構造。
【請求項6】
前記衝撃吸収部材には、前記バンパカバーに対して車両の高さ方向から加わる荷重を受けられる受け部が設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用バンパの衝撃吸収構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格部材の車両外側がバンパカバーで覆われている車両用バンパの衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用バンパの衝撃吸収構造が特許文献1に記載されている。この車両の後面には、リヤドアパネルによって開閉可能に構成されたドア開口部が形成されている。またドア開口部の車両下側には、車幅方向に延びるリヤバンパが車両の骨格部分を覆うように配置されている。即ち、ドア開口部の車両下側には、縦壁状のリヤボディパネルが配設されている。またリヤボディパネルの車両下側には、車両前後方向に延びるシャシーフレームが配設され、更にシャシーフレームの車両外側(後側)の端部には、車幅方向に延びるクロスメンバが固定されている。そして、上記したリヤバンパによって、車両の骨格部分を構成するリヤボディパネルとクロスメンバの車両外側が覆われている。
【0003】
そしてリヤボディパネルには、リヤバンパ側からリヤボディパネル側に加わる衝撃荷重を吸収する波形状部材(衝撃吸収部材)が取付けられている。この波形状部材は、側面視において波形状に曲げられた板材であり、リヤボディパネルから車両外側(後側)に延びるように配置されている。そして上記した構成では、リヤバンパ側に衝突物が衝突した際に、先ず、波形状部材がリヤボディパネル側に座屈変形して衝撃荷重を吸収する。また大きな衝撃荷重が加えられた際にはクロスメンバが変形するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-235958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでこの種の車両用バンパの衝撃吸収構造では、衝突時のバンパの変形を極力抑制したいとの要請がある。即ち、バンパが過度に変形して衝突物が車両側に大きく入り込んだ場合、この衝突物が車両の外装部分、特に、車両外側に張り出した外装部材に強く当てられるおそれがある。しかし上記した構成では、大きな衝撃荷重を波形状部材(衝撃吸収部材)で受け止めきれず、リヤバンパが過度に変形するおそれがあった。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、衝撃吸収部材によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、骨格部材の車両外側がバンパカバーで覆われている車両用バンパの衝撃吸収構造である。そして骨格部材には、バンパカバー側から骨格部材側に加わる衝撃荷重を変形することで吸収する衝撃吸収部材が設けられている。この種の構成では、衝撃吸収部材によってバンパの過度の変形をより確実に抑制できることが望ましい。そこで本発明の衝撃吸収部材には、その変形方向における途中に、骨格部材に当てられることで衝撃荷重を伝達する伝達部が設けられている。本発明では、比較的大きな衝撃荷重が衝撃吸収部材に加えられた場合、この衝撃吸収部材の変形途中で伝達部が骨格部材に当てられるようになる。これにより、加えられた衝撃荷重を衝撃吸収部材と骨格部材とで分散して受けられるようになり、バンパの過度の変形を抑制するように衝突物を受け止めることができる。
【0007】
第2発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、第1発明の車両用バンパの衝撃吸収構造において、衝撃吸収部材は、バンパカバーの車両外側の端部と骨格部材の間に配置されている。本発明では、衝撃吸収部材がバンパカバー側から骨格部材側に向けて適切に変形できるようになり、衝撃吸収部材に設けられた伝達部を骨格部材により確実に当てられるようになる。
【0008】
第3発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、第1発明又は第2発明の車両用バンパの衝撃吸収構造において、伝達部は、衝撃吸収部材の車両外側を臨む外面又はその反対側の内面の少なくとも一方に設けられている。本発明では、衝撃吸収部材の変形態様に応じて、衝撃吸収部材の内外面の少なくとも一方に伝達部を設けることで、この伝達部を骨格部材により確実に当てられるようになる。
【0009】
第4発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、第1発明~第3発明のいずれかの車両用バンパの衝撃吸収構造において、伝達部は、衝撃荷重の加えられていない状態において、骨格部材に対向するように設けられている。本発明の衝撃吸収部材では、その変形前の状態を基準として、伝達部を骨格部材に対向するように設けている。これにより、衝撃吸収部材の変形時において、伝達部を骨格部材に更に確実に当てられるようになる。
【0010】
第5発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、第1発明~第4発明のいずれかの車両用バンパの衝撃吸収構造において、車両を一方向から見た平面視において、バンパカバーと同一平面内に骨格部材よりも車両外側に突出する外装部材が設けられていると共に、衝撃吸収部材は、外装部材よりも先に衝撃荷重を受けられるように構成されている。本発明では、車両の外装部材を考慮して、バンパカバー側から加わる衝撃荷重を衝撃吸収部材で真っ先に受けられるようになっている。
【0011】
第6発明の車両用バンパの衝撃吸収構造は、第1発明~第5発明のいずれかの車両用バンパの衝撃吸収構造において、衝撃吸収部材には、バンパカバーに対して車両の高さ方向から加わる荷重を受けられる受け部が設けられている。本発明では、車両の高さ方向からバンパカバーに加わる荷重を衝撃吸収部材の受け部で受けられるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る第1発明によれば、衝撃吸収部材によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することができる。また第2発明によれば、バンパの過度の変形を更に確実に抑制することができる。また第3発明によれば、バンパの過度の変形を一層確実に抑制することができる。また第4発明によれば、衝撃吸収部材によってバンパに加わる衝撃荷重を更に確実に受けられるようになる。また第5発明によれば、車両の外装部材の配置位置を考慮して、衝撃吸収部材によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することができる。そして第6発明によれば、衝撃吸収部材の衝撃吸収性を多面的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の後部右下側の斜視図である。
図2】車両の後部の模式縦断面図である。
図3】車両用バンパの衝撃吸収構造を一部透視して示す斜視図である。
図4】車両用バンパの衝撃吸収構造を一部透視して示す横断面図である。
図5】衝撃吸収部材の骨格部材側(裏側)を斜め下側から見た斜視図である。
図6】衝撃荷重の加えられた衝撃吸収部材と骨格部材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図6を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向(車幅方向)と上下方向(車両の高さ方向)を示す矢線を適宜図示する。また図3では、便宜上、リヤバンパカバーを透視して、その内部の衝撃吸収部材と骨格部材を図示する。そして図4では、衝撃吸収部材を部分的に透視して、その内部に設けられた伝達部を図示する。
【0015】
[車両の後部構造]
車両用バンパの衝撃吸収構造について説明する前に、先ず、図1に示す車両2の後部構造について説明する。この車両2の後面にはドア開口部3が設けられており、このドア開口部3が、上下回動式のバックドア4によって開閉可能に構成されている。またドア開口部3の車両下側には、車幅方向に延びるリヤバンパカバー5が取付けられている。このリヤバンパカバー5は、ドア開口部3の車両下側に設けられた本体部6と、本体部6の車幅方向外側(図1の右側)に設けられたコーナー部7(詳細後述)とを有している。ここで本体部6は、車幅方向に延びるように形成されていると共に、その本体部6の上面に、溝部の設けられたステップ部位60が形成されている。そして、リヤバンパカバー5のコーナー部7の車両上側には、外装部材としてのリヤランプ8がドア開口部3の外側縁に沿うように設けられている。このリヤランプ8は、比較的大型のリヤコンビネーションランプであり、図2に示すように車両外側(図2の後側)に張り出すように設けられている。
【0016】
[車両用バンパの衝撃吸収構造]
また図3を参照して、ドア開口部3の車両下側には、車両2の骨格部材10として、車両前後方向に延びる左右のサイドメンバ11と、左右のサイドメンバ11間に渡されて車幅方向に延びるクロスメンバ12とが設けられている(図3では、便宜上、右側のサイドメンバのみ図示する)。そして、車両用バンパの衝撃吸収構造は、車両2の骨格部材10と、この骨格部材10の車両外側を覆うリヤバンパカバー5と、骨格部材10とリヤバンパカバー5のコーナー部7間に配設された衝撃吸収部材20とから構成されている。この車両用バンパの衝撃吸収構造では、図2に示すように、リヤバンパカバー5側に衝突物(後述する打撃子40等)が衝突した際に、その衝撃荷重を衝撃吸収部材20が変形することで吸収する。この種の構成では、上記したリヤランプ8が車両外側に張り出していること等を考慮して、衝撃吸収部材20によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することが望まれる。そこで本実施例では、後述する衝撃吸収部材20の構成(伝達部)によって、バンパの過度の変形をより確実に抑制することとした。以下、車両用バンパの衝撃吸収構造の各構成を、リヤランプ8の配置位置と共に詳述する。
【0017】
[リヤバンパカバー]
先ず、図1に示すリヤバンパカバー5では、そのコーナー部7が、本体部6から車幅方向外側(図1の右側)に延びるように形成されている。このコーナー部7は、上記したリヤランプ8の車両下側に配置されていると共に、車幅方向外側に向かうにつれて次第に車両前側に湾曲している。そしてコーナー部7の車幅方向外側の端部は、車両上側に略直角に曲げられていると共に、そのコーナー部7の上端が、車両2の右側面に設けられたサイドパネル9に接合されている。またコーナー部7は、図2に示すように車両前側が解放された縦断面略横U字形に形成されている。そしてコーナー部7によって、上記した骨格部材10の車両外側(図2の後側)が被覆されていると共に、そのコーナー部7の後面71が、リヤバンパカバー5の車両外側の端部を構成している。なおコーナー部7の上面70は、図1に示す本体部6のステップ部位60と概ね同じ高さ位置に設けられている。
【0018】
[リヤバンパカバー(コーナー部)とリヤランプの配置位置]
ここでリヤバンパカバー5のコーナー部7とリヤランプ8の位置関係について説明する。先ず、図1を参照して、車両2を後側(一方向)から見た平面視において、上記したリヤバンパカバー5のコーナー部7とリヤランプ8とは同一平面状に配置されている。そしてリヤバンパカバー5のコーナー部7は、図2に示すように、骨格部材10から張出寸法L1で車両外側(図2の後側)に張り出している。またリヤランプ8も、優れた意匠の確保の観点から、骨格部材10から車両外側に張り出しているが、その張出寸法L2は、上記したリヤバンパカバー5の張出寸法L1よりも小さくなっている。
【0019】
[衝撃吸収部材]
次に、衝撃吸収部材20は、図2図4を参照して、リヤバンパカバー5側から骨格部材10側に加わる衝撃荷重を変形することで吸収する部材である。この衝撃吸収部材20は、図2に示すように、リヤバンパカバー5のコーナー部7の後面71と骨格部材10間に配設されている。そして衝撃吸収部材20の車両上側には、図2及び図4に示すように弾性的に伸縮可能なアブソーバ25が配置されている。このアブソーバ25は、図4に示すリヤバンパカバー5の本体部6内で車幅方向に延びるように配置されており、そのアブソーバ25の車幅方向外側(図4の右側)の部分が衝撃吸収部材20上に配置されるようになっている。
【0020】
そして衝撃吸収部材20は、図3及び図4に示すように、左側壁部21及び右側壁部22と、両側壁部21,22間に渡された上壁部23とから略台形柱状に形成されている(図4では、衝撃吸収部材20を部分的に透視するため、その上壁部23を破線で図示する)。ここで左側壁部21と右側壁部22とは、車両前後方向に延びる縦壁状に形成されており、骨格部材10に向かうにつれて次第に互いに離れる方向に傾斜している。そして左側壁部21は、その後端部が車幅方向(各図の右側)に曲げられており、この曲げられた左側壁部21の後端部210が、衝撃吸収部材20の頂側20Aを構成するように右側壁部22の後端部に固定されている。また左側壁部21の前端部には、その外側(各図の左側)に張り出す左フランジ部211が形成されており、この左フランジ部211がクロスメンバ12に締結して固定されている。また右側壁部22の前端部にも、その外側(各図の右側)に張り出す右フランジ部221が形成されており、この右フランジ部221が右側のサイドメンバ11に締結して固定されている。そして図3に示す上壁部23が両側壁部21,22間に概ね水平に渡されて固定されることで、衝撃吸収部材20が略台形柱状に形成される。こうして衝撃吸収部材20は、その幅狭な頂側20Aをコーナー部7に向けた状態で、その幅広な底側20Bがクロスメンバ12及びサイドメンバ11(骨格部材10)に固定されるようになる。そして衝撃吸収部材20は、その左側壁部21と右側壁部22とから剛性に優れるハット形状に形成されることで、リヤバンパカバー5側から加わる衝撃荷重を受けられるようになっている(図6を参照)。
【0021】
[受け部]
また図2に示す衝撃吸収部材20では、その上壁部23によって上記したアブソーバ25が支持されるようになっている。即ち、上壁部23は、リヤバンパカバー5に対して車両の高さ方向上側から加わる荷重Fを受けるための受け部230となっており、当該荷重Fをアブソーバ25と共に受けられるようになっている(図2では、荷重の加わる向きを示す矢線に符号Fを付す)。これにより、コーナー部7に乗員が乗りあがった際、その乗員の荷重Fを衝撃吸収部材20の受け部230とアブソーバ25とで受けられるようになり、バンパの人乗り剛性の確保に資する構成となる。また、コーナー部7の車両高さ方向の剛性が確保されることで、このコーナー部7を所望の形状に形成することができる。
【0022】
[衝撃吸収部材の配置位置]
そして衝撃吸収部材20は、図2を参照して、骨格部材10から張出寸法L3で車両外側(図2の後側)に張り出すように設けられており、その張出寸法L3は、上記したリヤランプ8の張出寸法L2よりも大きくなっている。これにより、衝撃吸収部材20は、その頂側20Aでリヤバンパカバー5側から加わる衝撃荷重を真っ先に受けられるようになる。また図4を参照して、衝撃吸収部材20は、各種の衝突試験を想定して、車両前後方向に延びる仮想線VLに対して角度θで車幅方向外側(外向き)に傾かせて配置することができる。例えばペンデュラム衝突試験の場合、その振り子状の打撃子40が、車両2の長手方向(仮想線VL)に対して角度30°で外向きに傾斜した向きから車両2に衝突する。このような場合には、打撃子40に対して衝撃吸収部材20が対向するように外向きに傾かせておく。これにより、リヤバンパカバー5側に当てられた打撃子40を衝撃吸収部材20の頂側20Aで受けられるようになり、更に衝撃吸収部材20が打撃子40から加わる衝撃荷重で骨格部材10側に変形するようになる。
【0023】
[伝達部]
そして図4に示す衝撃吸収部材20には、その変形方向(リヤバンパカバー5から骨格部材10に向かう方向)における途中に伝達部30が設けられている。この伝達部30は、図4及び図5を参照して、横断面コ字形に曲げられた板材で形成されており、衝撃吸収部材20の左側壁部21からその内側(各図の右側)且つ車両前側に張り出すように取付けられている。即ち、伝達部30では、そのコ字形の先端に形成された当接部31が車両前側を向いて配置されていると共に、その当接部31の両端から車両後側に延びる脚部32,33が左側壁部21の内面に固定されている。これにより、衝撃吸収部材20に衝撃荷重の加えられていない状態において、伝達部30の当接部31が骨格部材10の後面に車両前後方向から対向するようになる。ここで衝撃吸収部材20に対する伝達部30の配設位置、即ち、伝達部30と骨格部材10の離間寸法Dは、衝撃吸収部材20の過度の変形を抑制できる限り特に限定しない。例えば図2及び図4を参照して、衝突物(40)がリヤバンパカバー5側に衝突した際、この衝突物(40)とリヤランプ8とが接触する前に、伝達部30が骨格部材10に当てられるように設定することができる。
【0024】
[衝撃吸収部材(伝達部)の働き]
図2に示す車両2では、リヤバンパカバー5側に衝突物(40)が衝突した際に、衝撃吸収部材20が変形することで衝撃荷重を吸収するように構成されている。この種の車両用バンパの衝撃吸収構造では、上記したように衝突物(40)が車両側に大きく入り込まないように、バンパの過度の変形を抑制したいとの要請がある。そこで本実施例の衝撃吸収部材20には、その変形方向における途中に、骨格部材10に当てられることで衝撃荷重を伝達する伝達部30が設けられている。上記した構成によると、比較的大きな衝撃荷重が加えられた場合、衝撃吸収部材20が変形する途中でその伝達部30が骨格部材10に当てられるようになる。そこで以下に、ペンデュラム衝突試験を想定して、衝撃吸収部材20と伝達部30の働きを説明する。
【0025】
ここでペンデュラム衝突試験では、図2及び図4を参照して、リヤバンパカバー5のコーナー部7に対して斜め後方から振り子状の打撃子40が当てられる。そして衝撃吸収部材20は、上記したように打撃子40に対向するように外向きに傾いていると共に、その頂側20Aが、上記したリヤランプ8よりも車両外側(各図の後側)に突出している。このため、衝撃吸収部材20は、打撃子40の衝撃荷重を真っ先に受けて、骨格部材10に向けて変形(潰れ変形)していくようになる。
【0026】
そして図6を参照して、衝撃吸収部材20に対して打撃子40から比較的大きな衝撃荷重が加えられた場合を説明する(図6では、衝撃荷重の加わる向きを示す矢線に符号40を付す)。この場合には、衝撃吸収部材20が骨格部材10側に変形する過程で、その変形方向途中に設けられた伝達部30が骨格部材10に当てられるようになる。特に衝撃吸収部材20では、その伝達部30の当接部31が、衝撃荷重の加えられていない状態においても骨格部材10に対向するように配置されている(図4を参照)。このため衝撃吸収部材20が骨格部材10側に変形することで、その伝達部30の当接部31が自ずと骨格部材10に当てられる。これにより、衝撃子40から加えられた衝撃荷重を衝撃吸収部材20と骨格部材10とで分散して受けられるようになる。この結果、衝撃吸収部材20が過度に潰れ変形することなく打撃子40を受け止められるようになり、バンパの過度の変形、即ち、図2及び図4に示す打撃子40の車両側への侵入量IAを抑制できる。
【0027】
上記した構成によれば、図2に示すようにリヤランプ8が骨格部材10よりも車両外側に張り出していたとしても、打撃子40がリヤバンパカバー5に過度に入り込まないため、このリヤランプ8に打撃子40が当たり難くなる。このため、上記した構成によれば、車両2の形状選択の自由度が広がるなどして、リヤランプ8を骨格部材10よりも車両外側に張り出させておくことが可能となり、優れた意匠性の確保に資する構成となる。
【0028】
以上説明した通り、本実施例では、比較的大きな衝撃荷重が衝撃吸収部材20に加えられた場合、この衝撃吸収部材20の変形途中で伝達部30が骨格部材10に当てられるようになる。これにより、加えられた衝撃荷重を衝撃吸収部材20と骨格部材10とで分散して受けられるようになり、バンパの過度の変形を抑制するように衝突物(40)を受け止めることができる。このため本実施例によれば、衝撃吸収部材20によってバンパの過度の変形をより確実に抑制することができる。
【0029】
さらに本実施例では、衝撃吸収部材20がリヤバンパカバー5側から骨格部材10側に向けて適切に変形するようになり、衝撃吸収部材20に設けられた伝達部30を骨格部材10により確実に当てられるようになる。また本実施例では、衝撃吸収部材20の変形態様に応じて、衝撃吸収部材20の内面に伝達部30を設けることで、この伝達部30を骨格部材10により確実に当てられるようになる。また本実施例の衝撃吸収部材20では、その変形前の状態を基準として、伝達部30を骨格部材10に対向するように設けている。これにより、衝撃吸収部材20の変形時において、伝達部30を骨格部材10に更に確実に当てられるようになる。また本実施例では、リヤランプ8(車両2の外装部材)を考慮して、リヤバンパカバー5側から加わる衝撃荷重を衝撃吸収部材20で真っ先に受けられるようになっている。そして本実施例では、車両2の高さ方向からリヤバンパカバー5に加わる荷重を衝撃吸収部材20の受け部230で受けられるようになる。
【0030】
本実施形態の車両用バンパの衝撃吸収構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、衝撃吸収部材の構成を例示したが、衝撃吸収部材の構成を限定する趣旨ではない。例えば衝撃吸収部材は、リヤバンパカバーのコーナー部のほか、本体部に設けることもできる。また衝撃吸収部材の形状や傾き角度(θ)も、実際の衝突物や各種衝突試験を想定して適宜設定可能である。また衝撃吸収部材の受け部となる上壁部は、アブソーバを支持可能な各種の形状に形成でき、必ずしも平坦である必要はなく、また完全に水平に配置する必要もない。また衝撃吸収部材は、受け部によってバンパカバーに加わる荷重を直接受けられるように構成することもできる。なお衝撃吸収部材に下壁部を設け、この下壁部(受け部)によって、車両の高さ方向下側から加わる荷重を受けられるように構成してもよい。
【0031】
また本実施形態では、伝達部の構成を例示したが、伝達部の構成を限定する趣旨ではない。伝達部は、衝撃吸収部材の変形態様を考慮して、車両外側を臨む外面とその反対側の内面との少なくとも一方に設けることができ、左右の側壁部がある場合にはそのいずれに設けてもよい。例えば衝撃荷重の加えられた衝撃吸収部材が車幅方向や車両の高さ方向に傾くように変形する場合、衝撃吸収部材の外面から突出する伝達部が骨格部材に当てられるようになる。また伝達部は、衝撃吸収部材が変形する過程で骨格部材に当てられればよく、必ずしも衝撃荷重の加えられていない状態において骨格部材に対向させる必要はない。また伝達部は、衝撃吸収部材に後付してもよく(別体でもよく)、衝撃吸収部材の一部で構成されていてもよい(一体でもよい)。例えば衝撃吸収部材の各側壁部にリブ形状や肉厚な部分(突出部分)を設け、当該突出部分にて伝達部を構成することもできる。そして伝達部の形状も適宜変更可能であり、板状のほか、中空又は稠密な柱状の部材等で構成することもできる。
【0032】
そして車両用バンパの衝撃吸収構造は、車両の後部のほか、車両の前部等の各種の位置に設けることができる。また外装部材として、リヤランプのほか、ドアのアウタパネルなどの各種の外装部材を想定できる。そして外装部材が車両外側に過度に張り出していない場合には、車両用バンパの衝撃吸収構造の配設に際して必ずしも外装部材の配置位置を考慮する必要はない。
【符号の説明】
【0033】
2 車両
3 ドア開口部
4 バックドア
5 リヤバンパカバー(本発明のバンパカバー)
6 本体部
7 コーナー部
70 (コーナー部の)上面
71 (コーナー部の)後面(本発明のバンパカバーの車両外側の端部)
8 リヤランプ
9 サイドパネル
10 骨格部材
11 サイドメンバ
12 クロスメンバ
20 衝撃吸収部材
20A (衝撃吸収部材の)頂側
20B (衝撃吸収部材の)底側
21 左側壁部
210 (左側壁部の)後端部
211 (左側壁部の)左フランジ部
22 右側壁部
221 (右側壁部の)右フランジ部
23 上壁部
230 受け部
25 アブソーバ
30 伝達部
31 当接部
32,33 脚部
40 打撃子
60 ステップ部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6