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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111203
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012941
(22)【出願日】2022-01-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 南福島総合住宅公園内の福島南展示場において令和3年3月20日からの展示において公開。
(71)【出願人】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】井坂 悠美
(72)【発明者】
【氏名】紀伊 陽子
(72)【発明者】
【氏名】星野 健
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA25
(57)【要約】
【課題】ワークスペースとLDKの一体感を高めることができ、かつ美観に優れたワークスペースを提供する。
【解決手段】住宅は、開口53を通じて隣接するLDK33およびワークスペース50を備える。開口53の一部が造作棚60によって閉塞されている。造作棚60は、枠体61と、枠体61に支持された複数の棚板62とを備える。枠体61が区画する開口は、複数の棚板62によって、複数の開口81~87に分けられている。各開口81~87に仕切板63がそれぞれ配置されている。各開口81~87の一部は、背板64によってそれぞれ閉塞されている。背板64は、LDK33側に配置されている。棚板62のうち、背板64が配置された部分は、ワークスペース50側において本箱として機能し、背板64が配置されていない部分は、ワークスペース50とLDK33との間で視線を通す窓、及び飾り棚として機能する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LDKと、
上記LDKに隣接するワークスペースと、
上記LDKと上記ワークスペースとを出入口を形成して区画する造作棚と、
上記造作棚に沿ってスライドして上記出入口を開閉する引き戸と、を備えており、
上記造作棚は、
支持材と、
上記LDKおよび上記ワークスペースの両方に開口して上下に間隔を空けて上記支持材に支持された複数の棚板と、
上記棚板の間に位置して上記LDK側の開口の一部を塞ぐ複数の背板と、を有しており、
上記複数の背板は、上記引き戸がスライドするスライド方向において少なくとも一部が相互に異なる配置である住宅。
【請求項2】
上記出入口の上記スライド方向に沿った幅は、上記造作棚の上記スライド方向に沿った幅よりも狭く、
上記引き戸の上記スライド方向に沿った幅は、上記造作棚の上記スライド方向に沿った幅よりも狭く、
上記引き戸は、上記出入口を閉塞する第1位置と、上記出入口を開放する第2位置と、上記出入口を開放し、上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置と、にスライド可能である請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
上記引き戸は、
上記スライド方向に沿って延びる鏡面と、
上記鏡面の上記スライド方向の一端側に位置する取っ手と、を有する請求項2に記載の住宅。
【請求項4】
上記造作棚と対向して上記ワークスペースを区画する壁に、本棚および机天板が設けられている請求項1から3のいずれかに記載の住宅。
【請求項5】
上記ワークスペースは、上記スライド方向の寸法が上記スライド方向と直交する方向の寸法よりも大きい請求項1から4のいずれかに記載の住宅。
【請求項6】
上記ワークスペースは、上記LDKより屋外側に位置しており、
上記LDKの屋外側の軒下に位置するテラスを更に備えており、
上記ワークスペースは、上記テラス側に窓を有する請求項1から5のいずれかに記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リビング・ダイニング・キッチン(以下、「LDK」とも称する。)に隣接するワークスペースを備えた住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リビングに隣接するセレクトルームを備えた住宅を開示する。セレクトルームは、例えば書斎として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-101742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の構成では、セレクトルームは、リビングとの出入口以外は外壁または間仕切壁で囲まれている。このような構成のセレクトルームは、籠もって作業する空間としてはよいが、リビングにいる家族の気配が感じ難い。また、小さなスペースにおいてリビングと同じ天井の高さとなるので、縦長な区間になりやすい。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワークスペースとLDKの一体感を高めることができ、かつ美観に優れたワークスペースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る住宅は、LDKと、上記LDKに隣接するワークスペースと、上記LDKと上記ワークスペースとを出入口を形成して区画する造作棚と、上記造作棚に沿ってスライドして上記出入口を開閉する引き戸と、を備える。上記造作棚は、支持材と、上記LDKおよび上記ワークスペースの両方に開口して上下に間隔を空けて上記支持材に支持された複数の棚板と、上記棚板の間に位置して上記LDK側の開口の一部を塞ぐ複数の背板と、を有する。上記複数の背板は、上記引き戸がスライドするスライド方向において少なくとも一部が相互に異なる配置である。
【0007】
造作棚の棚板のうち背板が配置された部分には、ワークスペース側から本などが置かれる。棚板に置かれた本などは、背板によって、LDK側からは見えない。すなわち、造作棚は、ワークスペースにおいて本棚として使用でき、かつLDK側において美観を損なわない。また、棚板間の開口のうち、背板が配置されていない部分は、ワークスペースとLDKとの間で視線を通し、ワークスペースとLDKとの一体感を高める。また、造作棚の棚板のうち背板が配置されていない部分は、小物などを置く飾り棚として使用することができ、美観を高めることができる。その結果、ワークスペースとLDKの一体感およびワークスペースの機能性を高めることができ、かつLDK側の美観を高めることができる。
【0008】
(2) 上記出入口の上記スライド方向に沿った幅は、上記造作棚の上記スライド方向に沿った幅よりも狭く、上記引き戸の上記スライド方向に沿った幅は、上記造作棚の上記スライド方向に沿った幅よりも狭くてもよい。上記引き戸は、上記出入口を閉塞する第1位置と、上記出入口を開放する第2位置と、上記出入口を開放し、上記第1位置と上記第2位置との間の第3位置と、にスライド可能である。
【0009】
第2位置や第3位置にある引き戸は、スライド方向に直交する方向において造作棚と重なり、造作棚の棚板間の開口の一部を覆う。住人は、視線を遮りたい位置に応じて引き戸のスライドの位置を変える。例えば、ワークスペースで作業を行う住人は、作業を行う場所とLDKとの間の視線を遮りたい場合は、視線を遮る位置に引き戸をスライドさせ、視線を遮りたくない場合、すなわち作業中にもLDKを視認したい場合は、視線を遮らない位置に引き戸をスライドさせる。
【0010】
(3) 上記引き戸は、上記スライド方向に沿って延びる鏡面と、上記鏡面の上記スライド方向の一端側に位置する取っ手と、を有していてもよい。
【0011】
引き戸に鏡面が設けられることにより、引き戸が第2位置や第3位置にあったとしても、LDK側の美観が損なわれることが抑制される。
【0012】
(4) 上記造作棚と対向して上記ワークスペースを区画する壁に、本棚および机天板が設けられていてもよい。
【0013】
LDK側から造作棚の棚板間の開口を通じてワークスペースを見た場合、造作棚の棚と本棚および机天板とが重なる。互いに重なる造作棚の棚板、本棚、および机天板は、調和する。その結果、LDK側から見た場合の美観が高められる。
【0014】
(5) 上記ワークスペースは、上記スライド方向の寸法が上記スライド方向と直交する方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0015】
スライド方向におけるワークスペースの寸法(横幅)は、スライド方向と直交する方向の寸法(奥行)よりも大きい。すなわち、ワークスペースは、LDK側から見て横に広く繋がったスペースであり、かつ奥行が小さいスペースである。そのため、ワークスペースとLDKとの一体感がさらに高まる。
【0016】
(6) 上記ワークスペースは、上記LDKより屋外側に位置していてもよい。上記LDKの屋外側の軒下に位置するテラスを更に備える。上記ワークスペースは、上記テラス側に窓を有する。
【0017】
テラスおよび窓を通じて自然光がワークスペースに射し込む。また、ワークスペースから、窓を通じてテラスを視認することができる。その結果、明るくかつ開放的なワークスペースが実現される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る住宅は、ワークスペースとLDKの一体感を高めることができ、かつ美観に優れたワークスペースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、住宅10の1階の平面図である。
図2図2は、引き戸70が開かれて第2位置にある状態においてLDK33側からワークスペース50を見た場合の図である。
図3図3は、引き戸70が閉じられて第1位置にある状態においてLDK33側からワークスペース50を見た場合の図である。
図4図4は、引き戸70が開かれて第2位置にある状態においてワークスペース50側からLDK33を見た場合の図である。
図5図5は、ワークスペース50から窓48を通じてテラス14を見た場合の図である。
図6図6(A)は、LDK33側から見た引き戸70の概略斜視図であり、図6(B)は、ワークスペース50側から見た引き戸70の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0021】
本実施形態では、人が居住する建築物である住宅10(図1参照)が説明される。住宅10は、鉄骨造の2階建ての建築物である。ただし、住宅10は、木造の建築物であってもよいし、鉄筋コンクリート製の建築物であってもよいし、平屋や3階以上であってもよい。なお、図1では、住宅10の外構が省略されている。
【0022】
以下では、住宅10の1階の間取りおよび構成について主に説明がされる。本実施形態では、住宅10の2階の間取りは特に限定されないが、例えば寝室や子供部屋やバルコニなどが設けられる。
【0023】
図1に示されるように、住宅10は、平面視において概ね矩形状であって4つの外壁21、22、23、24に囲まれた矩形状本体部11と、この矩形状本体部11から外側へ膨出した2つの膨出部12、13と、テラス14およびペットテラス15と、を備える。
【0024】
膨出部12は、図1における矩形状本体部11の下側から下向きに膨出している。膨出部12は、平面視において概ね矩形状であり、3つの外壁25、26、27に囲まれている。膨出部13は、図1における矩形状本体部11の右側から右向きに膨出している。膨出部13は、平面視において概ね矩形状であり、3つの外壁28、29、30に囲まれている。
【0025】
膨出部13は、図1における矩形状本体部11の右側から右向きに膨出している。膨出部13は、平面視において概ね矩形状であり、3つの外壁28、29、30に囲まれている。
【0026】
テラス14は、膨出部12から、図1における右向きに向かって外壁22に沿って延びており、次いで外壁21に沿って上向きに向かって膨出部13まで延びている。ペットテラス15は、膨出部13から図1における上向きに外壁21に沿って延びている。すなわち、膨出部13は、図1における下側においてテラス14に面しており、上側においてペットテラス15に面している。この膨出部13に、図5に示されるワークスペース50が設けられている。テラス14およびペットテラス15は、軒16の下に設けられており、屋外に位置している。
【0027】
図1に示されるように、矩形状本体部11の1階には、玄関土間31、玄関ホール32、LDK33、通路34、浴室35、洗面所36などが設けられている。玄関土間31、玄関ホール32、LDK33、通路34、浴室35、および洗面所36は、間仕切壁41によって仕切られており、当該間仕切壁41および外壁21、22、23、24によって区画されている。
【0028】
玄関土間31は、図1における矩形状本体部11の左下に位置している。玄関土間31は、膨出部12まで延びている。膨出部12を区画する外壁25には、掃き出し窓42が設けられている。すなわち、玄関ホール32やLDK33を通らずに玄関土間31からテラス14への動線が設けられている。
【0029】
玄関ホール32は、玄関土間31に面しており、図1における矩形状本体部11の左下に位置している。通路34、浴室35、および洗面所36は、図1における矩形状本体部11の左上に位置している。通路34を通じて玄関ホール32から浴室35および洗面所36に出入りすることができる。
【0030】
LDK33は、図1における矩形状本体部11の中央部から右部を占める位置にある。LDK33は、リビング部37、ダイニング部38、およびキッチン部39を有している。
【0031】
リビング部37は、図1において、矩形状本体部11における下側の中央部および右部を占める位置にあって、矩形状本体部11の下側の外壁である外壁22と、矩形状本体部11の右側の外壁である外壁21とによって区画されている。この外壁21、22には、リビング部37からテラス14に出入りし、かつ採光を行うための掃き出し窓43、44が設けられている。すなわち、明るく、かつ開放的なリビング部37が実現されている。リビング部37には、テレビやソファーやテーブルなどが設置される。
【0032】
ダイニング部38は、図1において、矩形状本体部11における右上に位置しており、リビング部37と連続する空間となっている。ダイニング部38は、矩形状本体部11の上側の外壁である外壁24と、矩形状本体部11の右側の外壁である外壁21とによって区画されている。この外壁21には、ダイニング部38からペットテラス15に出入りし、かつ採光を行うための掃き出し窓45が設けられている。すなわち、明るく、かつ開放的なダイニング部38が実現されている。ダイニング部38において、外壁24の内壁面に面してカウンタテーブル46が設けられている。また、ダイニング部38には、ダイニングテーブルや椅子などが設置される。
【0033】
キッチン部39は、図1において、矩形状本体部11の中央部の上側を占める位置にあって、リビング部37の上側かつダイニング部38の左側かつ洗面所36の右側に位置している。キッチン部39は、ダイニング部38と連続する空間となっている。また、キッチン部39と洗面所36とを仕切る間仕切壁41には、出入口47が設けられている。
【0034】
以下、LDK33に隣接するワークスペース50について詳しく説明がされる。
【0035】
ワークスペース50は、膨出部13に設けられている。すなわち、ワークスペース50は、LDK33よりも屋外側(図1における右方)に位置しており、図1における下側においてテラス14に面しており、図1における上側においてペットテラス15に面している。
【0036】
図1におけるワークスペース50の下側に位置する外壁28および上側に位置する外壁29には、窓51、52が設けられている。窓51、52は、例えばワークスペース50の床から天井まで亘る縦長の窓である。また、窓51は、例えば開閉できない嵌め殺しの窓であってもよい。窓51、52を通じて自然光がワークスペース50に射し込む。また、ワークスペース50にいる住人の視線は、窓51、52を通じてテラス14およびペットテラス15まで通る。すなわち、明るくかつ開放的なワークスペース50が実現されている。
【0037】
ワークスペース50は、開口53を通じてLDK33と連続する空間となっている。この開口53は、LDK33のリビング部37およびダイニング部38に面している。具体的には、図1において、開口53の概ね下半分はリビング部37に面しており、開口53の概ね上半分はダイニング部38に面している。すなわち、リビング部37やダイニング部38にいる住人がワークスペース50にいる他の住人の気配を感じることができ、ワークスペース50にいる他の住人がリビング部37やダイニング部38にいる住人の気配を感じることができる間取りでワークスペース50は設けられている。
【0038】
本実施形態では、鉛直方向を上下方向7と称し、開口53が延びる方向(図1における上下方向)を幅方向8と称し、膨出部13が膨出する方向(図1における左右方向)を奥行方向9と称する。幅方向8は、「スライド方向」の一例である。奥行方向は、「スライド方向と直交する方向」の一例である。また、本実施形態では、幅方向8における膨出部13や後述の造作棚60等の寸法を幅寸法と称し、奥行方向9における寸法を奥行寸法と称し、上下方向7における寸法を高さ寸法と称する。
【0039】
ワークスペース50の幅寸法は、ワークスペース50の奥行寸法よりも大きい。すなわち、ワークスペース50は、幅方向8に沿って延びる長尺なスペースとして区画されている。
【0040】
ワークスペース50の床面の高さ位置と、LDK33の床面の高さ位置とは同一である。また、ワークスペース50の天井面の高さ位置と、LDK33の天井面の高さ位置とは同一である。ワークスペース50とLDK33とは、床および天井が面一でそれぞれ連続することにより、連続した空間として住民に認識される。その結果、ワークスペース50とLDK33との一体感が高められている。
【0041】
造作棚60および引き戸70が、開口53に設けられている。
【0042】
造作棚60は、住宅10に固定された家具である。造作棚60は、開口53において床、天井、および外壁28の内壁面に固定されている。造作棚60は、開口53の一部を住民が通過できないように塞いでおり、開口53において造作棚60に塞がれていない部分が出入口54となる。したがって、造作棚60は、出入口54を区画している。また、造作棚60は、本などを収容する機能と、飾り棚として美観を高める機能と、LDK33とワークスペース50との間で相互に気配を感じさせる機能とを有する。以下、詳しく説明がされる。
【0043】
造作棚60の高さ寸法は、LDK33或いはワークスペース50の床から天井までの距離と概ね同じである。すなわち、床に固定された造作棚60の上端は、LDK33或いはワークスペース50の天井にも固定されている。なお、造作棚60は、床のみに固定されていてもよい。
【0044】
造作棚60は、開口53に配置されて開口53の一部を住民が通れないように塞いでいる。開口53のうち、造作棚60によって塞がれてない部分がワークスペース50の出入口54である。すなわち、造作棚60は、出入口54を区画する。具体的には、造作棚60は、図1における開口53の下側を塞いでおり、出入口54の下側を区画している。図1における出入口54の上側は、外壁21によって区画されている。
【0045】
造作棚60の幅寸法は、開口53の幅寸法よりも狭く、かつ開口53の幅寸法の半分よりも大きい。したがって、出入口54の幅寸法は、造作棚60の幅寸法よりも小さい。すなわち、出入口54の幅は、造作棚60の幅よりも狭い。
【0046】
図2から図4に示されるように、造作棚60は、枠体61と、複数の棚板62と、複数の仕切板63と、複数の背板64とを備える。枠体61は、「支持材」の一例である。或いは、枠体61および仕切板63は、「支持材」の一例である。
【0047】
枠体61は、概ね矩形枠状であり、底板66、天板67、および一対の側板68、69を有している。なお、枠体61は脚を有していてもよい。
【0048】
底板66および天板67は、幅方向8および奥行方向9に沿って拡がる矩形の木質板であって、概ね同形状である。一対の側板68、69は、上下方向7および奥行方向9に沿って拡がる矩形の木質板であって、概ね同形状である。底板66と一対の側板68、69とは、ネジなどの固定具によって相互に固定されている。また、天板67と一対の側板68、69とは、ネジなどの固定具によって相互に固定されている。
【0049】
棚板62は、幅方向8および奥行方向9に沿って拡がる矩形の木質板であって、底板66および天板67と概ね同形状である。複数の棚板62が、底板66と天板67との間に位置している。複数の棚板62は、上下方向7において相互に概ね等間隔で離間している。棚板62は、ネジなどの固定具によって一対の側板68、69にそれぞれ固定されている。
【0050】
枠体61によって区画された大開口は、複数の棚板62によって複数の開口81~87に仕切られている。図2に示す例では、造作棚60は、6枚の棚板62を有しており、大開口は、7つの開口81、82、83、84、85、86、87に分けられている。
【0051】
仕切板63は、上下方向7および奥行方向9に沿って延びる矩形の木質板である。仕切板63は、各開口81、82、83、84、85、86、87に少なくとも1つずつ配置されている。
【0052】
仕切板63の高さ寸法は、上下方向7において離間する2つの棚板62間の離間距離と概ね同じである。仕切板63は、上下方向7において離間する2つの棚板62間に位置している。仕切板63の下端は、下側の棚板62の上面に当接しており、仕切板63の上端は、上側の棚板62の下面に当接している。各棚板62は、各開口81、82、83、84、85、86、87にそれぞれ配置された複数の仕切板63にも支持されている。すなわち、仕切板63によって、幅方向8において棚板62が下向きまたは上向きに湾曲することが防止されている。
【0053】
仕切板63は、ネジなどの固定具によって棚板62に固定されている。なお、仕切板63は、幅方向8における複数の取付位置に取付可能とされていてもよい。その場合、仕切板63は、住人が選択した取付位置に固定される。隣り合う仕切板63の間隔は任意である。したがって、本実施形態のように、仕切板63の配置がランダムであり、各開口81、82、83、84、85、86、87において上下方向7に揃っていなくてもよいし、配置が適宜変更されて、仕切板63が上下方向7に揃っている箇所があってもよい。
【0054】
背板64は、上下方向7および幅方向8に沿って拡がる矩形の木質板である。背板64の高さ寸法は、上下方向7において離間する2つの棚板62間の離間距離と概ね同じであって、仕切板63の高さ寸法と概ね同じである。背板64の幅寸法は、棚板62の幅寸法より小さく、かつ隣り合う2つの仕切板63間の離間距離と概ね同じである。仕切板63の配置がランダムなので、背板64の幅寸法も、背板64の配置によって異なる。背板64は、側板68と仕切板63との間や、側板69と仕切板63との間や、2つの仕切板63間に位置しており、開口81、82、83、84、85、86、87の一部をそれぞれ閉塞している。
【0055】
背板64は、奥行方向9における棚板62の一方の端部であって、LDK33側の端部と当接する位置に配置されている。すなわち、ワークスペース50から造作棚60を見た場合、背板64は造作棚60の背面側に位置している。背板64と、背板64の両隣に位置する一対の仕切板63と、背板64の上下に位置する一対の棚板62により、ワークスペース50側に開口する箱部91が形成されている。箱部91は、ワークスペース50側から本などを載置される本棚として利用される。箱部91は、ワークスペース50における収容機能を高めている。
【0056】
箱部91に収容された本は、背板64、背板64の両隣に位置する一対の仕切板63(或いは側板68、69)、および背板64の上下に位置する一対の棚板62により、LDK33側から隠されており、LDK33にいる住人から当該本は見えない。すなわち、箱部91に収容された本などによってLDK33側の美観が損なわれることがない。
【0057】
背板64の一対の主面のうち、LDK33側の面である背面は、美観を損なわないデザインとされる。すなわち、背板64は、ワークスペース50側において本箱としての箱部91の背板として機能し、LDK33側において化粧板として機能する。なお、背板64の他方の主面であって、ワークスペース50側の面である主面も、美観を損なわないデザインとされてもよい。
【0058】
背板64は、一番上に位置する棚板62と天板67との間、および一番下に位置する棚板62と底板66との間には配置されておらず、一番上に位置する棚板62と一番下に位置する棚板62との間に配置されている。すなわち、住人の視線の高さ位置となる可能性の低く、住人の視線の一部を遮る必要のない一番上の開口81と一番下の開口87とには、背板64は配置されていない。
【0059】
複数の背板64は、幅方向8において少なくとも一部が相互に異なる配置で設けられている。すなわち、少なくとも2枚の背板64が、上下方向7において並ばないようにランダムに配置されている。このように配置された複数の背板64は、背板64が上下方向7に並ぶ場合に比べ、LDK33側から見た場合の美観を高めることができる。また、背板64が上下に並んでいると、例えばLDK33にいる住人が上下に並ぶ背板64によって隠れてしまい、ワークスペース50にいる住人がLDK33にいる住人の気配を感じることができない場合が生じてしまう。背板64が上下に並ばないように設けられることにより、LDK33にいる住人の少なくとも一部が開口81、82、83、84、85、86、87を通じてワークスペース50にいる住人から見ることがきる。その結果、ワークスペース50にいる住人は、LDK33にいる住人の気配を感じることができる。また、2枚の背板64が上下方向7において並がなから、ワークスペース50にいる住人から、LDK33にいる住人の全部が見えることがなく、ワークスペース50にいる住人がLDK33にいる住人の気配を感じ過ぎることが抑制される。
【0060】
背板64は、ネジなどの固定具によって棚板62と仕切板63との少なくとも一方に固定されている。ただし、背板64は、造作棚60に着脱自在とされていてもよい。住人は、嗜好や気分や状況などに応じて造作棚60の所定位置に背板64を取り付ける。
【0061】
棚板62のうち、背板64が配置されていない部分であって、LDK33側およびワークスペース50側から視認可能な部分には、美観を高め得る小物や本が飾られる。当該本は、例えばLDK33側に背表紙を向けて載置される。すなわち、当該部分は、飾り棚として機能する。すなわち、棚板62のうち、背板64が配置された部分(箱部91)は、ワークスペース50において本棚としての機能を有し、背板64が配置されていない部分は、ワークスペース50およびLDK33に通ずる窓として相互に住人の気配を感じさせる機能と、美観を高める飾り棚としての機能とを有する。
【0062】
引き戸70は、造作棚60におけるワークスペース50側に、造作棚60に近接して位置している。ワークスペース50の床および天井には、引き戸70をスライド可能に支持するレール48がそれぞれ設けられている。レール48は、幅方向8に沿って延びている。他方、引き戸70の高さ寸法は、ワークスペース50の床から天井までの高さと概ね同じである。引き戸70は、幅方向8に沿ってスライド可能に、上下両端部においてレール48に支持されている。
【0063】
引き戸70の幅寸法は、出入口54の幅寸法と概ね同じである。上述のように、出入口54の幅寸法は、造作棚60の幅寸法よりも小さい。したがって、引き戸70の幅寸法は、造作棚60の幅寸法よりも小さい。すなわち、引き戸70の幅は、造作棚60の幅よりも狭い。図1に示す例では、引き戸70の幅寸法は、造作棚60の幅寸法の概ね半分である。
【0064】
引き戸70は、出入口54を閉塞する第1位置(図3参照)と、出入口54を開放する第2位置(図4参照)と、第1位置および第2位置の間の第3位置との間でスライドする。なお、図3においては、各開口81、82、83、84、85、86、87を通じて見えるワークスペース50の内装や家具などが省略されている。また、図4においては、各開口81、82、83、84、85、86、87を通じて見えるLDK33の内装や家具などが省略されている。
【0065】
例えば、第2位置は、図4が示すように、ワークスペース50側から見て引き戸70が左端までスライドされて、造作棚60の左部と奥行方向9において重なる位置である。第3位置は、ワークスペース50側から見て引き戸70が造作棚60の右部と奥行方向9において重なる位置である。ワークスペース50において作業を行う住人は、作業の内容や、気分や、LDK33にいる住人の人数や、来客の有無などに応じて、引き戸70を第1位置や第2位置や第3位置にスライドさせる。例えば、ワークスペース50において作業を行う住人は、ダイニング部38からの視線を遮りたい場合、引き戸70を第3位置にする。また、ワークスペース50において作業を行う住人は、リビング部37側からの視線を遮りたい場合、引き戸70を第2位置にする。また、ワークスペース50において作業を行う住人は、LDK33側からの入室を制限した場合、引き戸70を第1位置にする。なお、第3位置は、ワークスペース50側から見た造作棚60の右部を覆う位置でなくてもよく、第1位置と第2位置との間の位置であればよい。
【0066】
図6が示すように、引き戸70は、引き戸本体71と、引き戸本体71に取り付けられた鏡体72、73とを備える。
【0067】
引き戸本体71は、上下方向7および幅方向8に拡がる矩形板状である。引き戸本体71は、例えば矩形板状の板材の両主面に化粧板をそれぞれ貼り付けることによって製造される。板材の一部において化粧板が貼り付けられないことにより、鏡体72が嵌め込まれる嵌込凹部75が、引き戸本体71におけるLDK33側の主面である第1主面77に形成され、鏡体73が嵌め込まれる嵌込凹部76が引き戸本体71におけるワークスペース50側の主面である第2主面78に形成されている。
【0068】
鏡体72、73は、矩形板状である。鏡体72は、引き戸本体71の嵌込凹部75に嵌め込まれ、接着剤や取付金具などによって引き戸本体71に固定されている。鏡体73は、引き戸本体71の嵌込凹部76に嵌め込まれ、接着剤や取付金具などによって引き戸本体71に固定されている。
【0069】
鏡体72、73の高さ寸法は、引き戸本体71の高さ寸法よりも小さい。鏡体72の幅寸法は、引き戸本体71の幅寸法よりも若干小さい。鏡体73の幅寸法は、引き戸本体71の幅寸法よりも若干小さい。鏡体72、73は、奥行方向9において、引き戸本体71を挟んで相互に向かい合っている。筐体72,73の幅方向8の両端は、引き戸本体71の幅方向8の端102のそれぞれよりも内側に位置する。筐体72,73の両端には、化粧板74がそれぞれ貼り付けられている。
【0070】
化粧板74と、引き戸本体71の端102との間はそれぞれ空間79である。引き戸70の幅方向8の端が壁面に当接しても、空間79により化粧板74は壁面と当接しない。空間79は、引き戸70をスライドさせるときに、住民が手を差し入れる空間となる。
【0071】
ワークスペース50の床からの鏡体72、73の高さ位置は、化粧板74が概ね住人の腰の高さとなるような高さ位置とされている。
【0072】
また、鏡体72、73の高さ寸法は、上下方向7における棚板62間の離間距離と同じとされている。そして、ワークスペース50の床からの鏡体72、73の高さ位置は、鏡体72が2つ棚板62の間に位置する高さ位置とされている。図3に示す例では、鏡体72、73の高さ位置は、下から2つ目の棚板62と下から3つ目の棚板62との間となる開口85の高さ位置とされている。このような高さ位置に配置された鏡体72は、第2位置や第3位置にあって奥行方向9において造作棚60と重なっている場合に、図4に示されるようにワークスペース50側から見ると開口85と鏡体73とが左右に並ぶので美観がよい。他方、LDK33側から見ると、鏡体72が開口85の背板のように機能して、鏡体72に映ったLDK33側の景観が映るので美観がよい。図3に示されるように、引き戸70が第1位置にあるとき、鏡体73と開口85とが左右に並ぶので美観がよい。各図には現れていないが、ワークスペース50側から見ても鏡体73と開口85とが左右に並ぶので美観がよい。
【0073】
住宅10は、ワークスペース50に設けられた机天板110および本棚111をさらに備える。
【0074】
机天板110は、幅方向8および奥行方向9に沿って拡がる矩形板状である。机天板110は、出入口54からワークスペース50を見た場合に奥の壁となる外壁30に当接し、かつ出入口54から見て左右の壁である外壁28と外壁29とに亘って設けられている。机天板110は、天面が床から概ね70cmとなる高さ位置に配置され、外壁28、29、30に固定されている。すなわち、机天板110の一部は、奥行方向9において造作棚60と重なっている。すなわち、開口81、82、83、84、85、86、87を通じてLDK33側からワークスペース50を見た場合、机天板110と棚板62とが概ね重なって見える。したがって、開口81、82、83、84、85、86、87を通じてLDK33側からワークスペース50を見た場合に、机天板110と棚板62とが調和し、住人が違和感を持つことがない。すなわち、奥行方向9において机天板110を造作棚60と重ねることにより、LDK33側における美観の低下を抑制することができる。
【0075】
本棚111は、机天板110の上に位置している。本棚111は、底板112、中板113、および天板114を備える。図5に示す例では、本棚111は、1枚の中板113を備えるが、本棚111は、複数枚の中板113を備えていてもよい。また、本棚111は、底板112、中板113、および天板114を連結する背板を備えていてもよい。
【0076】
底板112、中板113、および天板114は、幅方向8および奥行方向9に沿って拡がる矩形板状である。底板112、中板113、および天板114の幅寸法は、机天板110の幅寸法と同じである。すなわち、底板112、中板113、および天板114は、出入口54から見て左右の壁である外壁28と外壁29とに亘って設けられている。また、底板112、中板113、および天板114は、出入口54から見て奥の壁である外壁30に当接して配置されている。そして、底板112、中板113、および天板114は、外壁28、29、30に固定されている。したがって、本棚111の一部は、奥行方向9において造作棚60と重なっている。すなわち、開口81、82、83、84、85、86、87を通じてLDK33側からワークスペース50を見た場合、本棚111と棚板62とが概ね重なって見える。したがって、開口81、82、83、84、85、86、87を通じてLDK33側からワークスペース50を見た場合に、本棚111と棚板62とが調和し、住人が違和感を持つことがない。すなわち、奥行方向9において本棚111を造作棚60と重ねることにより、LDK33側における美観の低下を抑制することができる。
【0077】
机天板110における住人の作業を阻害しないように、すなわち本棚111が、椅子115に座って作業を行う住人の頭に当たらないように、底板112、中板113、および天板114の奥行寸法は、机天板110の奥行寸法よりも小さくされている。
【0078】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、造作棚60は、開口81、82、83、84、85、86、87の一部が背板64によって閉塞されることにより、ワークスペース50において、本棚として使用することができ、かつLDK33側において、載置された本による美観の低下を抑制することができる。また、背板64によって閉塞されていない部分は、ワークスペース50とLDK33との間で視線を通し、ワークスペース50とLDK33との一体感を高める。また、造作棚60の棚板62のうち、背板64が配置されていない部分は、飾り棚として機能する。その結果、ワークスペース50とLDK33との一体感およびワークスペース50の機能性を高めることができ、かつLDK33側の美観を高めることができる。
【0079】
本実施形態では、第2位置や第3位置にある引き戸70は、奥行方向9において造作棚60と重なり、開口81、82、83、84、85、86、87の一部を覆う。したがって、住人は、引き戸70の位置を調整することにより、視線を遮りたい位置を自由に変えることができる。例えば、ワークスペース50で作業を行う住人は、リビング部37からの視線を遮りたい場合と、ダイニング部38からの視線を遮りたい場合とで、引き戸70の位置を変える。また、ワークスペース50においてパソコンのカメラを使用してweb会議などを行っている場合に、パソコンのカメラを通じてリビング部37やダイニング部38の様子が撮影されることが引き戸70により防止できる。
【0080】
本実施形態では、引き戸70に鏡体72が設けられることにより、引き戸70が第2位置や第3位置にあったとしても、LDK33側の美観が損なわれることが抑制される。
【0081】
本実施形態では、LDK33側から開口81、82、83、84、85、86、87を通じてワークスペース50を見た場合、造作棚60の棚板62と本棚111および机天板110とが重なって見える。互いに重なる造作棚60の棚板62、本棚111、および机天板110は、調和する。その結果、LDK33側から見た場合の美観が高められる。
【0082】
本実施形態では、ワークスペース50は、幅寸法が奥行寸法よりも大きい。すなわち、ワークスペース50は、LDK33側から見て横に広く繋がったスペースであり、かつ奥行が小さいスペースである。そのため、ワークスペース50とLDK33との一体感がさらに高まっている。
【0083】
本実施形態では、テラス14およびペットテラス15に面する窓51、52がワークスペース50に設けられており、窓51、52を通じて自然光がワークスペース50に射し込む。また、ワークスペース50から、窓51、52を通じてテラス14およびペットテラス15を視認することができる。その結果、明るくかつ開放的なワークスペース50が実現される。
【0084】
[変形例]
上述の実施形態では、鏡体72の高さ寸法は、上下に隣り合う2つの棚板62間の離間距離と同じである例が説明された。しかしながら、鏡体72の高さ寸法は、当該離間寸法の2倍や3倍とされていてもよい。或いは、鏡体72の高さ寸法は、引き戸70の下端から上端に亘たる長さであってもよい。
【0085】
上述の実施形態では、引き戸70が、LDK33側を向く鏡体72およびワークスペース50側を向く鏡体73の2つの鏡体を備える例が説明された。しかしながら、引き戸70は、LDK33側を向く鏡体72のみを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0086】
7・・・上下方向
8・・・幅方向(スライド方向)
9・・・奥行方向
10・・・住宅
14・・・テラス
15・・・ペットテラス
21、22、23、24、25、26、27、28、29、30・・・外壁
33・・・LDK
37・・・リビング部
38・・・ダイニング部
39・・・キッチン部
50・・・ワークスペース
51、52・・・窓
53・・・開口
54・・・出入口
60・・・造作棚
61・・・枠体(支持材)
62・・・棚板
63・・・仕切板
64・・・背板
70・・・引き戸
72、73・・・鏡体
74・・・取っ手部材
81、82、83、84、85、86、87・・・開口
91・・・箱部
110・・・机天板
111・・・本棚
図1
図2
図3
図4
図5
図6