(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111215
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】食器手洗い用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/83 20060101AFI20230803BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20230803BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20230803BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C11D1/83
C11D1/75
C11D1/72
C11D1/722
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012959
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小田村 慈英
(72)【発明者】
【氏名】宮島 正樹
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC08
4H003AC09
4H003AC23
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA17
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB08
4H003EB22
4H003ED02
4H003FA16
4H003FA21
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】濯ぎ乾燥後の食器に充分な摩擦感を与え、手に持った食器を滑りにくくすることが可能な食器手洗い用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:アニオン界面活性剤と、(B)成分:アミンオキシド型界面活性剤と、(C)成分:式(c1)で表される(C1)成分と、式(c2)又は(c3)で表される(C2)成分からなるノニオン界面活性剤と、を含有し、比[(A)/(B)]が、0.4~0.8であり、比[(A)/(C)]が、0.5~2.3であり、比[(C1)/(C2)]が0.4~2.7である、食器手洗い用洗浄剤組成物。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:アミンオキシド型界面活性剤と、
(C)成分:(C1)成分と(C2)成分とからなるノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(C1)成分は、下記式(c1)で表される成分から選択される1以上であり、
前記(C2)成分は、下記式(c2)で表される成分及び下記式(c3)で表される成分から選択される1以上であり、
前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量の比[(A)/(B)]が、0.4~0.8であり、
前記(C)成分の質量に対する前記(A)成分の質量の比[(A)/(C)]が、0.5~2.3であり、
前記(C2)成分の質量に対する前記(C1)成分の質量の比[(C1)/(C2)]が0.4~2.7である、食器手洗い用洗浄剤組成物。
【化1】
[式(c1)中、A
1Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m1はA
1Oの平均繰返し数を表し、8~12の数である。xとyはそれぞれ1~6の整数であり、6≦x+y≦12である。m1個のA
1Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(c2)中、A
2Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m2はA
2Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。Rは、炭素数12~18の直鎖の炭化水素基である。m2個のA
2Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(c3)中、A
3Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m3はA
3Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。zは、9~15の整数である。m3個のA
3Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器手洗い用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の生活スタイルの変化からも食器洗い行動、特に食器を手で洗う食器手洗い行動において「手早さ」が重視されている。
食器手洗い行動において、「手早さ」に繋がる重要な要因としては、食器洗浄中及び食器濯ぎ時の「ヌルつきが少ないこと」が挙げられる。食器用洗浄剤組成物において、ヌルつきの低減に関し、種々の検討がなされてきた。
【0003】
特許文献1には、アニオン界面活性剤、アミンオキシド、アルコールのプロピレンオキシド付加物、ノニオン界面活性剤を組み合わせることによって、誤って過度に多量の食器用洗浄剤組成物を使用した場合の洗浄力に優れ、かつヌルつきをより低減できる食器用洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献2には、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ポリグリコシドを組み合わせることによって、洗浄時又は濯ぎ時のヌルツキを低減して食器の滑りを抑制し、洗浄中に、食器が手から落下することを防止できる食器用洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-84054号公報
【特許文献2】特開2017-190421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手洗いした食器を手から落下させてしまうリスクは、洗浄時又は濯ぎ時に限らず、濯ぎ後に乾燥させた食器を取り扱う際にも生じる。乾燥後の食器が手から落下することを防ぐためには、手指と食器との間に充分な摩擦感があり、手に持った食器が、滑りにくいことが求められる。
【0006】
しかし、特許文献1、2の食器用洗浄剤組成物は、洗浄時又は濯ぎ時のヌルツキを低減することはできるが、乾燥後の食器と手指との間の摩擦感が充分でなかった。
本発明では、上記事情に鑑みて、濯ぎ乾燥後の食器に充分な摩擦感を与え、手に持った食器を滑りにくくすることが可能な食器手洗い用洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(A)成分:アニオン界面活性剤と、
(B)成分:アミンオキシド型界面活性剤と、
(C)成分:(C1)成分と(C2)成分とからなるノニオン界面活性剤と、を含有し、
前記(C1)成分は、下記式(c1)で表される成分から選択される1以上であり、
前記(C2)成分は、下記式(c2)で表される成分及び下記式(c3)で表される成分から選択される1以上であり、
前記(B)成分の質量に対する前記(A)成分の質量の比[(A)/(B)]が、0.4~0.8であり、
前記(C)成分の質量に対する前記(A)成分の質量の比[(A)/(C)]が、0.5~2.3であり、
前記(C2)成分の質量に対する前記(C1)成分の質量の比[(C1)/(C2)]が0.4~2.7である、食器手洗い用洗浄剤組成物。
【0008】
【0009】
式(c1)中、A1Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m1はA1Oの平均繰返し数を表し、8~12の数である。xとyはそれぞれ1~6の整数であり、6≦x+y≦12である。m1個のA1Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(c2)中、A2Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m2はA2Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。Rは、炭素数12~18の直鎖の炭化水素基である。m2個のA2Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式(c3)中、A3Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m3はA3Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。zは、9~15の整数である。m3個のA3Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食器手洗い用洗浄剤組成物は、濯ぎ乾燥後の食器に充分な摩擦感を与え、手に持った食器を滑りにくくすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の食器手洗い用洗浄剤組成物(以下単に「洗浄剤組成物」という場合がある。)は、後述する(A)成分、(B)成分、(C)成分を含む洗浄剤組成物である。
以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0012】
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、各成分の含有量は、溶剤などを含まない純分の含有量である。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分はアニオン界面活性剤である。(A)成分は、(B)成分のアミンオキシド型界面活性剤とコンプレックス形成することにより、ヌルつきを抑制して濯ぎ乾燥後の食器への摩擦感付与に寄与するものと考えられる。
【0014】
(A)成分は、下記式(1)で表されるアニオン性界面活性剤、アルカンスルホン酸塩、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩の何れかであることが好ましい。中でも下記式(1)で表されるアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0015】
R1-O-(EO)n-SO3
-M+ ・・・(1)
式(1)中、R1は炭素数8~18の直鎖アルキル基であり、且つ酸素原子と結合している炭素原子は第一炭素原子である。EOはエチレンオキシ基であり、nはEOの平均付加モル数を示し、0<n≦4である。M+は水素イオン以外の陽イオンである。
【0016】
R1の炭素数は、10~14が好ましく、12~14がより好ましい。また、R1は、油脂原料由来のアルキル基であることが好ましい。
特に好ましい(A)成分は、ポリオキシエチレン(1)直鎖アルキル(C12/14=75/25;天然油脂由来)硫酸エステルナトリウム塩である。
【0017】
(A)成分の含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して1~10質量%が好ましく、4~6質量%がより好ましく、5質量%が特に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、アミンオキシド型界面活性剤である。(B)成分は、(A)成分のアニオン界面活性剤とコンプレックス形成することにより、ヌルつきを抑制して濯ぎ乾燥後の食器への摩擦感付与に寄与するものと考えられる。
【0019】
(B)成分は、式(2)で表されるアミンオキシド型界面活性剤であることが好ましい。
R2-(A)p-N(-R3)(-R4)→O ・・・(2)
式(2)中、R2は炭素数8~18の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基を表す。R3及びR4はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を表す。Aは-C=O(-NH-R5)-を表し、R5は炭素数1~4のアルキレン基を表す。pは0~1の整数である。
【0020】
式(2)において、R2の炭素数は、10~14が好ましく、12~14がより好ましい。また、R2は、油脂原料由来のアルキル基であることが好ましい。
R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい、R3及びR4は、いずれもメチル基であることがさらに好ましい。
pは0が好ましい。
特に好ましい(B)成分は、ラウリルジメチルアミンオキシドである。
【0021】
(B)成分の含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して6~12質量%が好ましく、8~12質量%がより好ましく、12質量%が特に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0022】
<(C)成分>
(C)成分は、後述する(C1)成分及び(C2)成分からなるノニオン界面活性剤である。(C)成分を適切に含有することにより、ヌルつきを抑制して濯ぎ乾燥後の食器に摩擦感を付与できる。
【0023】
(C1)成分は、下記式(c1)で表される成分から選択される。(C1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0024】
【0025】
式(c1)において、A1Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m1はA1Oの平均繰返し数を表し、8~12の数である。xとyはそれぞれ1~6の整数であり、6≦x+y≦12である。m1個のA1Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0026】
A1Oはオキシエチレン基であることが好ましい。m1は6~12であることが好ましく、10が特に好ましい。
xとyは、各々独立に、3~5であることが好ましい。x+yは、6~10であることが好ましく、8であることがより好ましい。xとyは、x=3,y=5の組み合わせ、又はx=5,y=3の組み合わせが好ましい。
特に好ましい(C1)成分は、x=5,y=3のゲルベアルコールエトキシレート(XP100)である。
【0027】
(C1)成分の含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して0.6~8質量%が好ましく、1.2~5.5質量%がより好ましく、2.4~4質量%が特に好ましい。(C1)成分の含有量が上記範囲内であると、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0028】
(C2)成分は、下記式(c2)で表される成分及び下記式(c3)で表される成分から選択される。(C2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0029】
【0030】
式(c2)において、A2Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m2はA2Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。Rは、炭素数12~18の直鎖の炭化水素基である。m2個のA2Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
A2Oはオキシエチレン基であることが好ましい。Rの炭素数は12であることが特に好ましい。
【0031】
【0032】
式(c3)において、A3Oはオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表す。m3はA3Oの平均繰返し数を表し、3~5の数である。zは、9~15の整数である。m3個のA3Oは、互いに同一でも異なっていてもよい。
A3Oはオキシエチレン基であることが好ましい。m3は5であることが好ましい。zは、10であることが好ましい。
【0033】
(C2)成分は、式(c3)で表される成分であることが好ましい。
特に好ましい(C2)成分は、炭素数13のオキソアルコールエトキシレート(TO5)である。
【0034】
(C2)成分の含有量は、洗浄剤組成物の総質量に対して1.6~8質量%が好ましく、3.2~8質量%がより好ましく、6.4~8質量%が特に好ましい。(C2)成分の含有量が上記範囲内であると、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0035】
(C)成分全体の含有量((C1)成分と(C2)成分の合計含有量)は、洗浄剤組成物の総質量に対して2~11質量%が好ましく、4~11質量%がより好ましく、9~11質量%が特に好ましい。(C)成分全体の含有量が上記範囲内であると、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0036】
(C2)成分の質量に対する(C1)成分の質量の比[(C1)/(C2)]が0.4~2.7である。[(C1)/(C2)]は0.4~1.0であることが好ましく、0.4~0.6であることがより好ましい。
[(C1)/(C2)]が0.4~2.7であることにより、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0037】
(B)成分の質量に対する(A)成分の質量の比[(A)/(B)]は、0.4~0.8である。[(A)/(B)]は、0.4~0.6であることがより好ましく、0.4~0.5であることがさらに好ましい。
[(A)/(B)]が0.4~0.8であることにより、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0038】
(C)成分の質量に対する(A)成分の質量の比[(A)/(C)]が、0.5~2.3である。[(A)/(C)]は、0.5~1.1であることがより好ましく、0.5~0.6であることがさらに好ましい。
[(A)/(C)]が0.5~2.3であることにより、濯ぎ乾燥後の食器に、摩擦感を付与できる。
【0039】
<その他の界面活性剤>
本発明の洗浄剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、台所用洗浄剤に通常使用されるその他の界面活性剤((A)成分、(B)成分、(C)成分以外の界面活性剤)を目的に応じ使用してもよい。
その他の界面活性剤としては、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び(C)成分以外のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては特に限定されず公知のものを使用することができる。両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型のもの、硫酸エステル塩型のもの、スルホン酸塩型のもの、および、リン酸エステル塩型のものからなる群から選択されるものが挙げられる。
カルボン酸塩型のものとして具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤としては特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジヒドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジ牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(パルミトイルオキシエチル)ジメチルアンモニウムメトサルフェート、ジ(ステアロイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシイソプロピル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(オレオイルオキシブチル)ジメチルアンモニウムクロライド、ジ(ステアロイルオキシエチル)メチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート、トリ(ステアロイルオキシエチル)メチルメトサルフェート等が挙げられる。なお、「牛脂アルキル」基の炭素数は14~18である。
【0042】
(C)成分以外のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグリコシドが挙げられる。
ノニオン界面活性剤全体の質量に対する(C)成分の質量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0043】
界面活性剤全体の質量に対する(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計質量の割合は、50~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0044】
<ハイドロトロープ剤>
本発明の洗浄剤組成物は、ハイドロトロープ剤を含有してもよい。ハイドロトロープ剤としては、炭素数2~4の1価アルコール、炭素数4~10のグリセリルエーテル、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸塩、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸塩、安息香酸、安息香酸塩が挙げられる。ハイドロトロープ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
炭素数2~4の1価アルコールはとしては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャルブタノールが挙げられる。
炭素数4~10のグリセリルエーテルとしてはグリセリンやヘキシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0046】
ハイドロトロープ剤としては、溶解効果、及び使用感の点から、エタノール、パラトルエンスルホン酸塩、又はこれらの併用が好ましい。
ハイドロトロープ剤の含有量は、洗浄剤組成物の全量を基準として1~30質量%とするのが好ましく、さらに好ましくは、1~20質量%とするのが望ましい。
【0047】
<防腐剤>
本発明の洗浄剤組成物は、防腐剤を含有してもよい。防腐剤としては、例えば、ベンズイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、ブチルベンズイソチアゾリノン、クロロメチルイソチアゾリノン、オクチルイソチアゾリノン、ジクロロオクチルイソチアゾリノン等のイソチアゾリン系防腐剤が挙げられる。防腐剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防腐剤としては、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、又はこれらの併用が好ましい。
【0048】
<pH調整剤>
本発明の洗浄剤組成物は、pHを調整するためのpH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ジエチレントリアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、塩酸、硫酸、クエン酸、シュウ酸などが挙げられる。
中でも、洗浄剤組成物の保存安定性とコスト面から、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、硫酸、クエン酸が好ましい。pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0049】
<その他の成分>
本発明の洗浄剤組成物には、任意成分として、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、酸化亜鉛等の無機ビルダー;香料、色素、ラジカルトラップ剤等を含有してもよい。
【0050】
<pH>
洗浄剤組成物のpH(25℃)は、6~8が好ましい。洗浄剤組成物のpHが上記範囲内であれば、(A)成分と(B)成分のコンプレックス形成が十分に進行し、濯ぎ乾燥後の食器の摩擦感が高まる。
本明細書において、洗浄剤組成物のpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値を示す。
【0051】
<製造方法>
本発明の洗浄剤組成物は、従来公知の洗浄剤組成物の製造方法に準じて製造することができる。例えば、水の一部に、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、必要に応じて任意成分とを加えて溶解させ、必要に応じてpH調整剤でpHを調整し、残りの水を加えることにより調製される。
【0052】
<使用方法>
本発明の洗浄剤組成物は、食器手洗い用として用いることができる。本発明の洗浄剤組成物の洗浄対象である「食器」には、皿、箸、スプーン等、直接食事に使用する器具の他、鍋、包丁等の調理器具が含まれる。
【0053】
食器を手洗いする方法としては、任意の量の洗浄剤組成物を洗浄具に付着させ、この洗浄具を用いて洗浄対象を擦り洗い(擦り洗い操作)をし、その後濯ぐ方法、及び洗浄剤組成物を水に分散して洗浄液とし、洗浄液に洗浄対象を任意の時間浸漬(浸漬操作)をし、その後濯ぐ方法、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
擦り洗い操作に用いる洗浄具としては、スポンジ、たわし、ブラシ等の可撓性材料を好適に使用できる。洗浄具に付着させる洗浄剤組成物の量は、例えば、1~10gとすることができる。
洗浄具に付着させる洗浄剤組成物は、予め水で希釈した洗浄液であってもよい。
【0055】
浸漬操作を行う場合、洗浄液の総量に対する洗浄剤組成物の含有量は、例えば、0.01~50質量%(即ち、2~10000倍希釈)が好ましく、0.05~20質量%がより好ましく、0.1~5質量%がさらに好ましい。
浸漬操作における浸漬時間は、洗浄対象の汚れの程度等を勘案して決定され、例えば、5分間以上が好ましく、5分間~10時間がより好ましく、15分間~1時間がさらに好ましい。浸漬時間が上記下限値以上であれば、洗浄力のさらなる向上を図れる。浸漬時間が上記上限値以下であれば、食器の洗浄時間が過剰に長くなるのを防止できる。
浸漬操作においては、必要に応じて、洗浄液内で洗浄対象を洗浄具で擦り洗いしてもよい。
【0056】
擦り洗い操作又は浸漬操作の後、洗浄対象をすすぎ水ですすぎ、洗浄対象に付着している洗浄剤組成物を洗い流し(すすぎ操作)、その後乾燥させる。
乾燥は、布巾その他によって、水分を拭き取ることによって行ってもよいし、自然乾燥させてもよい。
乾燥後の食器は、手指との間に充分な摩擦感があるため、手から滑りにくい。そのため、食器棚等への移動を、安全かつ迅速に行うことができる。
【実施例0057】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は、下記の<使用原料>に示す通りである。
【0058】
<使用原料>
[(A)成分]
a-1:AES(1EO)、下記調製例1で調製したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、前記式(1)におけるR1が炭素数12から14の直鎖状のアルキル基、nが1、M+がナトリウムである化合物。
【0059】
(調製例1)
4Lオートクレーブ中に原料アルコールとしてP&G社製の商品名CO1270アルコール(C12/C14=75/25,質量比)を400g、及び反応用触媒として水酸化カリウム触媒0.8gを仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した後、攪拌しながら昇温した。
なお、「C12」は炭素数12のアルコール、「C14」は炭素数14のアルコールを意味し、「C12/C14」は、炭素数12のアルコールと炭素数14のアルコールの比率を意味する。
【0060】
続いて、温度を180℃、圧力を0.3MPa以下に維持しつつ、エチレンオキサイド91gを導入し、反応させた。得られたポリオキシアルキレンエーテルの平均エチレンオキサイド付加モル数は1であった。次に、このようにして得たアルコールエトキシレート237gを攪拌装置付の500mLフラスコに採り、窒素置換後、液体無水硫酸(サルファン)96gを、反応温度40℃に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間攪拌を続け(硫酸化反応)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸を得た。次いで、これを水酸化ナトリウム水溶液で中和することによりa-1を得た。
【0061】
a-2:SAS、炭素数14~17の第2級アルカンスルホン酸ナトリウム、クラリアントジャパン株式会社製「HOSTAPUR(登録商標)SAS30A」。
a-3:LAS、炭素数10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テイカ製「テイカパワー(登録商標)L121」を水酸化ナトリウムにて中和したもの。
【0062】
[(B)成分]
b-1:AX、ラウリルジメチルアミンオキシド、ライオンスペシャリティケミカルズ製「カデナックス(登録商標)DM12D-W」。
【0063】
[(C)成分]
c-1:XP-100、C10ゲルベアルコールエトキシレート(EO:10)、前記式(c1)におけるA1Oがオキシエチレン基、m1が10、xが5、yが3、HLBが15.0である化合物、BASF製「Lutensol(登録商標)XP-100」。
【0064】
c-2:TO-5、C13オキソアルコールエトキシレート(EO:5)、前記式(c3)におけるA3Oがオキシエチレン基、m3が5、zが10、HLBが10.5である化合物、BASF製「Lutensol(登録商標)TO-5」。
【0065】
c-3:EMALEX705、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:5)、前記式(c2)におけるRが炭素数12の直鎖の炭化水素基、A2Oがオキシエチレン基、m2が5、HLBが10.0である化合物、日本エマルジョン株式会社製「EMALEX(登録商標)705」。
【0066】
c-4:EMALEX1805、ポリオキシエチレンイソアルコールエーテル(EO:5)、前記式(c3)におけるA3Oがオキシエチレン基、m3が5、zが15、HLBが8.0である化合物、日本エマルジョン株式会社製「EMALEX(登録商標)1805」。
【0067】
c-5:EMALEX703、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO:3)、前記式(c2)におけるRが炭素数12の直鎖の炭化水素基、A2Oがオキシエチレン基、m2が3、HLBが8.0である化合物、日本エマルジョン株式会社製「EMALEX(登録商標)703」。
【0068】
[(CX)成分:(C)成分以外のノニオン界面活性剤]
cx-1:XL-140、C10ゲルべアルコールアルコキシレート(EO:14)、前記式(c1)におけるA1Oがオキシエチレン基、m1が14、xが5、yが3、HLBが16.0である化合物、BASF製「Lutensol(登録商標)XL-140」。
【0069】
cx-2:XP-70、C10ゲルべアルコールアルコキシレート(EO:7)、前記式(c1)におけるA1Oがオキシエチレン基、m1が7、xが5、yが3、HLBが13.0である化合物、BASF製「Lutensol(登録商標)XP-70」。
【0070】
cx-3:TO-2、C13オキソアルコールエトキシレート(EO:2)、前記式(c3)におけるA3Oがオキシエチレン基、m3が2、zが10、HLBが7.0である化合物、BASF製「Lutensol(登録商標)TO-2」。
【0071】
[(D)成分:その他]
d-1:エタノール、日本アルコール販売製。
d-2:パラトルエンスルホン酸ナトリウム、関東化学製。
d-3:MIT、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(ローム アンド ハース製「ネオロン(登録商標)M-10」。
d-4:クエン酸、扶桑化学株式会社製、商品名「クエン酸(無水)」。
【0072】
<実施例1~18、比較例1~15>
表1~4の配合(単位:質量%)に従い、水に、各成分とpH調整剤を溶解することにより、各例の洗浄剤組成物をそれぞれ調製した。各表において、いずれの成分も純分換算であり、空欄とされている成分及び記載のない成分は配合されていない(配合量:0質量%)。
【0073】
具体的には、1Lビーカー内に、水の一部と(A)成分、(B)成分、(C)成分又は(CX)成分を投入した。この時の水の量は、水と(A)成分、(B)成分、(C)成分又は(CX)成分との合計質量が洗浄剤組成物の総質量の約60質量%となる量とした。
マグネチックスターラー(製品名:F-606N、Fine製)で充分に攪拌した後、(D)成分を入れ、さらに、充分に撹拌して混合した後、25℃でのpHが6~8の範囲になるように、必要に応じpH調整剤を適量添加した。その後、全体量が100質量%になるように水を入れ、さらによく攪拌して、各例の洗浄剤組成物を得た。
【0074】
なお、pHは、25℃にて、ガラス電極式pHメーター(HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)を用い、ガラス電極を洗浄剤組成物に直接に浸漬し、1分間経過後に示す値を測定した。測定方法は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠して行った。
各例で得られた洗浄剤組成物で洗浄した食器の摩擦感を以下の評価方法により評価した。結果を表1~4に示す。
【0075】
<食器の摩擦感評価>
縦11.5cm×横7.5cm×高さ3cmの食器洗い用スポンジ(商品名:スコッチブライト、住友スリーエム社製)に、水道水38gと各例の洗浄剤組成物2gをとり、5回手で揉んだ。直径12cm×高さ5.0cmの茶碗を10周こすり洗い、流量100mL/秒の流水で5秒間すすぎ、自然乾燥させた。15分後、手で食器を触った時の感触を以下の評価基準にて評価した。
【0076】
[評価基準]
◎◎:かなり摩擦感があり、皿と指がしっかりと密着し、全く滑らない。
◎:摩擦感があり、皿と指が密着し、滑らない。
〇:やや摩擦感があり、皿と指が密着し、滑りにくい。
×:摩擦感がなく、皿と指が密着せず、滑る。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
表1、2に示すように、実施例1~18の洗浄剤組成物は、いずれも濯ぎ乾燥後の食器に充分な摩擦感を与えることができた。
これに対して、表3、4に示すように、比較例1~15の洗浄剤組成物は、いずれも濯ぎ乾燥後の食器に充分な摩擦感を与えることができなかった。