(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111236
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 47/08 20060101AFI20230803BHJP
B65D 41/32 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B65D47/08 110
B65D41/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012995
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰地
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084FC07
3E084GA08
3E084GB12
3E084KA12
3E084KA15
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】蓋本体4に対して上蓋6が開封されたことを明確に使用者に認知させることのできる、新規の合成樹脂製容器蓋を提供すること。
【解決手段】被係止片40を装着壁12の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜せしめ、破断可能橋絡部68が破断されると、係止片56は被係止片40に沿って周方向の片側に向かって下方に移動せしめられるようにする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体、及びヒンジ手段を介して該蓋本体に接続され、該蓋本体の上面を覆う閉位置と該蓋本体の上面を露呈させる開位置との間を旋回自在な上蓋を具備し、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状装着壁を、該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を夫々含み、
該スカート壁には破断可能橋絡部を介して下方に延びる係止片が配設されていると共に、該装着壁には、該上蓋が該閉位置に旋回せしめられると、該係止片が係止せしめられる被係止片が配設されており、該上蓋が該閉位置から該開位置に旋回せしめられると、該破断可能橋絡部が破断されて該係止片が該スカート壁から分離される合成樹脂製容器蓋において、
該係止片は該破断可能橋絡部よりも下方において径方向外側に延出するフランジ部を備え、該被係止片は該装着壁の外側面から径方向外側に離隔した位置で該外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜しており、
該破断可能橋絡部が破断されると、該係止片の該フランジ部の下面が該被係止片の上面に係止せしめられて、該係止片は該被係止片に沿って周方向の該片側に向かって下方に移動せしめられる、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
周方向の該片側とは該ヒンジ手段に接近する方向である、請求項1に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該被係止片の上面は、周方向の他側に位置する比較的短い上面水平部と、該上面水平部の周方向片側端から連続して周方向の該片側に向かって下方に傾斜する比較的長い上面傾斜部とに区画される、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該装着壁の外周面の上端部には上方が開放された凹部が形成され、該被係止片は該凹部に配設されており、該被係止片の外周面は該装着壁の外周面と同一円周面上又はこれよりも径方向内側に位置する、請求項1乃至3のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
該被係止片の周方向両側端は、該凹部の周方向両側端面を規定する側面にて該装着壁に接続される、請求項4に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項6】
該装着壁の前記外側面には少なくとも1つの表示が配設されており、該係止片の周方向位置によって該表示が選択的に視認可能となる、請求項1乃至5のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項7】
該係止片は、該破断可能橋絡部よりも下方において径方向外側に延出するフランジ部を備えており、該フランジ部の径方向外側端は該スカート壁の外周面よりも径方向外側に位置し、該フランジ部の下面には、該破断可能橋絡部が破断された後に、該被係止片の上面によって支持される支持下面が形成されている、請求項1乃至6のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項8】
該係止片は、平面視において、該ヒンジ手段の周方向中央角度位置を通過する直径に対して垂直な直径方向の両側に設けられている、請求項1乃至7のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項9】
該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインによって除去領域が規定され、該除去領域の上面には、上方に延出する連結柱が配設されており、該連結柱の上端には引張リングが連結されている、請求項1乃至8のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋本体、及びヒンジ手段を介して蓋本体に接続され、蓋本体を覆う閉位置と蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在な上蓋を具備する容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、蓋本体、及びヒンジ手段を介して蓋本体に接続され、蓋本体の上面を覆う閉位置と蓋本体の上面を露呈させる開位置との間を旋回自在な上蓋を具備する容器蓋の一例として、該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状装着壁を、該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を夫々含み、該スカート壁には破断可能橋絡部を介して下方に延びる係止片が配設されていると共に、該装着壁には、該上蓋が該閉位置に旋回せしめられると、該係止片が係止せしめられる被係止片が配設されており、該上蓋が該閉位置から該開位置に旋回せしめられると、該破断可能橋絡部が破断されて該係止片が該スカート壁から分離される合成樹脂製容器蓋が示されている。かような容器蓋にあっては、該破断可能橋絡部が破断されて該係止片が該スカート壁から分離されることで、蓋本体に対して上蓋が開封されたことが明示される(タンパーエビデント機能)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記特許文献1に示された容器蓋にあっては、破断可能橋絡部が破断された後に係止片は容器蓋から完全に分離されることから、使用者は係止片そのものの存在に気付きにくく、タンパーエビデント機能が充分に発揮されない虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、蓋本体に対して上蓋が開封されたことを明確に使用者に認知させることのできる、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、被係止片を装着壁の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜せしめ、破断可能橋絡部が破断されると、係止片は被係止片に沿って周方向の片側に向かって下方に移動せしめられるようにすることで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する合成樹脂製容器蓋として、蓋本体、及びヒンジ手段を介して該蓋本体に接続され、該蓋本体の上面を覆う閉位置と該蓋本体の上面を露呈させる開位置との間を旋回自在な上蓋を具備し、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状装着壁を、該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を夫々含み、
該スカート壁には破断可能橋絡部を介して下方に延びる係止片が配設されていると共に、該装着壁には、該上蓋が該閉位置に旋回せしめられると、該係止片が係止せしめられる被係止片が配設されており、該上蓋が該閉位置から該開位置に旋回せしめられると、該破断可能橋絡部が破断されて該係止片が該スカート壁から分離される合成樹脂製容器蓋において、
該係止片は該破断可能橋絡部よりも下方において径方向外側に延出するフランジ部を備え、該被係止片は該装着壁の外側面から径方向外側に離隔した位置で該外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜しており、
該破断可能橋絡部が破断されると、該係止片の該フランジ部の下面が該被係止片の上面に係止せしめられて、該係止片は該被係止片に沿って周方向の該片側に向かって下方に移動せしめられる、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0008】
好ましくは、周方向の該片側とは該ヒンジ手段に接近する方向である。該被係止片の上面は、周方向の他側に位置する比較的短い上面水平部と、該上面水平部の周方向片側端から連続して周方向の該片側に向かって下方に傾斜する比較的長い上面傾斜部とに区画されるのがよい。該装着壁の外周面の上端部には上方が開放された凹部が形成され、該被係止片は該凹部に配設されており、該被係止片の外周面は該装着壁の外周面と同一円周面上又はこれよりも径方向内側に位置するのが好適である。この場合には、該被係止片の周方向両側端は、該凹部の周方向両側端面を規定する側面にて該装着壁に接続されるのがよい。好ましくは、該装着壁の前記外側面には少なくとも1つの表示が配設されており、該係止片の周方向位置によって該表示が選択的に視認可能となる。好適には、該係止片は、該破断可能橋絡部よりも下方において径方向外側に延出するフランジ部を備えており、該フランジ部の径方向外側端は該スカート壁の外周面よりも径方向外側に位置し、該フランジ部の下面には、該破断可能橋絡部が破断された後に、該被係止片の上面によって支持される支持下面が形成されている。該係止片は、平面視において、該ヒンジ手段の周方向中央角度位置を通過する直径に対して垂直な直径方向の両側に設けられているのが好ましい。該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインによって除去領域が規定され、該除去領域の上面には、上方に延出する連結柱が配設されており、該連結柱の上端には引張リングが連結されているのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の容器蓋にあっては、被係止片は装着壁の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜しており、破断可能橋絡部が破断されると、係止片は被係止片に沿って周方向の片側に向かって下方に移動せしめられるため、蓋本体に対して上蓋が開封されたことを明確に使用者に認知させることができ、良好なタンパーエビデント性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の上蓋が開位置にある状態での平面図。
【
図2】
図1に示す容器蓋の上蓋が開位置にある状態での底面図。
【
図3】
図1に示す容器蓋の上蓋が開位置にある状態での正面図。
【
図5】
図1に示す容器蓋の上蓋が開位置にある状態で、上蓋を省略して示す左側面図。
【
図6】
図1に示す容器蓋の上蓋が開位置にある状態で、蓋本体を省略して示す右側面図。
【
図7】
図1に示す容器蓋の上蓋が閉位置にある状態での正面図。
【
図9】
図1に示す容器蓋の上蓋が閉位置から開位置に向かって旋回せしめられる工程の初期段階を示す正面図。
【
図10】
図1に示す容器蓋の上蓋が閉位置から開位置に旋回せしめられた状態での正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。ここで、本明細書における上下方向は、特段の指定がない限り、上蓋が後述する閉位置にある状態を基準とする。従って、上蓋が後述する開位置にある状態にあっては、上下方向は反転する。
【0012】
図1乃至
図4を参照して説明すると、全体を番号2で示す合成樹脂製容器蓋は、蓋本体4及び上蓋6を具備しており、蓋本体4と上蓋6とはヒンジ手段8を介して接続されている。
【0013】
図4と共に
図1乃至
図3を参照して説明すると、蓋本体4は平面視において円形の閉塞壁10及びこの閉塞壁10の周縁から垂下する円筒形状の装着壁12を含んでいる。閉塞壁10は下方に凹んだすり鉢状の中央部14とこの中央部14を囲繞する略円環形状の外周部16とに区画される。中央部14は閉塞壁10の中心に対してヒンジ手段8とは直径方向の反対側に幾分変位して位置する。閉塞壁10の中央部14には無端薄肉破断可能ライン18によって除去領域20が規定されている。無端薄肉破断可能ライン18は閉塞壁10の厚さを局部的に低減せしめることによって形成される所謂スコアから構成される。除去領域20の上面には、上方に延出する連結柱22が配設されており、連結柱22の上端には引張リング24が連結されている。中央部14と外周部16との境界部分には閉塞壁10の上面から上方に延びる円筒形状の注出案内壁26が形成されている。注出案内壁26の延出端部つまり上端部は径方向外側に湾曲せしめられたリップ形状となっている。外周部16の上面、さらに詳しくは閉塞壁10の上面の外周縁部には、上方に向かって径方向外側に延びる筒状の係合壁28が設けられており、係合壁28の外周面の上端部には径方向外側に突出する係合突条30が形成されている。外周部16の下面には、下方に垂下する略円筒形状のシール壁32が形成されている。
【0014】
装着壁12の内周面下端部には係止手段34が配設されている。図示の実施形態においては、
図2に示すとおり、係止手段34は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個(図示の実施形態においては6個)の弧状突条から構成されている。所望ならば、係止手段を周方向に連続して延びる環状突条から構成することもできる。
図4と共に
図1及び
図5を参照することによって理解されるとおり、装着壁12の外周面においてヒンジ手段8とは直径方向反対側には、装着壁12の上部において円弧状に延びる切欠36が形成されており、かかる切欠36の下方には円弧状に延びる浅い凹部38も形成されている。
図3に示すとおり、装着壁12の外側面の所要部位には被係止片40も配設されている。被係止片40については後述する。
図1に示すとおり、装着壁12には、上面が開放された有底環状溝42及び軸線方向スリット44を含む公知の分別機構が設けられており(
図3及び
図4も参照されたい)、容器蓋2が後述する容器の口頸部に装着されて使用された後に所要操作をすることで容器蓋2を口頸部から分離して廃棄することが可能となる。かような分別機構の詳細については、例えば本願に先立って本願の出願人によって出願されて既に特許された特許第6326472号公報を参照されたい。装着壁12の下面の外周縁部には周方向に連続して下方に垂下する円筒形状の薄肉壁45が付設されている。
【0015】
図4と共に
図1乃至
図3を参照して説明を続けると、上蓋6は円形の天面壁46及びこの天面壁46の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁48を含んでおり、スカート壁48の外周面下端部が蓋本体4の装着壁12の外周面上端部にヒンジ手段8を介して連結されていて、上蓋6は蓋本体4の閉塞壁10の上面を覆う閉位置と蓋本体4の閉塞壁10の上面を露呈せしめる開位置との間を旋回自在である。天面壁46の下面には下方に垂下する内側円筒壁50及び外側円筒壁52も形成されており、内側円筒壁50及び外側円筒壁52の間には2条の環状浅溝54が形成されている。
図3に示すとおり、スカート壁48の下面の所要部位には下方に延びる係止片56が配設されている。係止片56については被係止片40と共に後述する。
図4と共に
図1及び
図6を参照することによって理解されるとおり、スカート壁48の外周面下端部におけるヒンジ手段8とは直径方向の反対側の部位には、径方向外側に突出する鍔部58が配設されており、上蓋6を旋回開閉動する際に鍔部58に指を掛けることができる。スカート壁48の下面における直径方向に見て上記ヒンジ手段8とは反対側の部位には、下方に突出する薄肉弧状突出片60が形成されている。スカート壁48の内周面下端には環状被係合突条62が配設されている。スカート壁48の内周面には更に上記環状被係合突条62よりも上方に環状当接突条64も配設されている。
【0016】
続いて、蓋本体4の装着壁12に配設された被係止片40及び上蓋6のスカート壁48に配設された係止片56について説明する。係止片56について先に説明すると、図示の実施形態においては、係止片56は、平面視(つまり
図1)において、ヒンジ手段8の周方向中央角度位置を通過する直径に対して垂直な直径方向の両側に1つずつ設けられている。
図3に示すとおり、係止片56が設けられた周方向部位にあっては、スカート壁48の下面が上方に幾分変位されることで、スカート壁48の下端部には周方向に延在する矩形形状の切り欠き66が形成されており、この切り欠き66にて係止片56の上端面が一対の破断可能橋絡部68を介してスカート壁48の下面に接続されている。
図3と共に
図6を参照して説明すると、係止片56は、破断可能橋絡部68よりも下方において径方向外側に延出するフランジ部70を備えており、フランジ部70の径方向外側端はスカート壁48の外周面よりも径方向外側に位置し、フランジ部70の下面には実質上水平な支持下面72が形成されている。係止片56の下端部には突部74が設けられており、この突部74は径方向外側に向かって実質上水平に延在する係止上面76と、この係止上面76の径方向外側端から下方に向かって径方向内側に傾斜して延出する傾斜下面78とを備えており、突部74の周方向幅は下方に向かって漸次低減している。そして、係止上面76とフランジ部70の支持下面72との間には所要程度の隙間が存在する。
【0017】
次いで、被係止片40について説明すると、被係止片40は平面視(つまり
図1)において、装着壁12の正面及び背面に夫々1つずつ設けられている。後述するとおり、上蓋6が閉位置に旋回せしめられると上蓋6に配設された係止片56が被係止片40に弾性的に係止せしめられることから、被係止片40の周方向位置は係止片56の周方向位置と対応する。被係止片40の位置については後に更に言及する。本発明に従って構成される容器蓋にあっては、被係止片40は装着壁12の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜することが重要である。
図3を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態においては、上記周方向の片側とはヒンジ手段8に接近する方向である。被係止片40の上面は、周方向の他側に位置する比較的短い上面水平部80と、上面水平部80の周方向片側端から連続して周方向の片側に向かって下方に傾斜する比較的長い上面傾斜部82とに区画される。被係止片40の下面は、周方向の他側に位置する下面水平部84と、下面水平部84の周方向片側端から連続して周方向の片側に向かって下方に傾斜する下面傾斜部86とに区画され、下面水平部84及び下面傾斜部86の周方向長さは略同一である。そして、上面傾斜部82及び下面傾斜部86は平行である。所望ならば、被係止片40の上面及び下面を全体的に周方向の片側に向かって下方に傾斜するようにしてもよい。
図8に示すとおり、被係止片40の上面は、その全体が径方向内側に向かって下方に傾斜せしめられて案内面88を構成している。装着壁12の上記「外側面」については後に言及する。
【0018】
図1、
図3、
図5及び
図8を参照してさらに説明を続けると、図示の実施形態においては、装着壁12の外周面の上端部には上方が開放された凹部90が形成され、被係止片40は凹部90に配設されている。従って、上記「被係止片40は装着壁12の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜する」における、装着壁12の上記「外側面」とは、図示の実施形態においては、凹部90の底面91のことである。そして、被係止片40の外周面は装着壁12の外周面と同一円周面上に位置し、被係止片40の周方向両側端は、凹部90の周方向両側端面を規定する側面92にて装着壁12に接続されている。上記側面92は上下方向に直線状に延びている。凹部90の下面94は周方向他側端から周方向片側に向かって幾分水平に延びた後に、被係止片40の上面傾斜部82及び下面傾斜部86に沿って周方向片側に向かって下方に傾斜している。
図3に示すとおり、凹部90における装着壁12の外側面には少なくとも1つの表示が配設されている。かかる表示は、図示の実施形態においては、漢字「開」(これを符号96aで示す)及び「閉」(これを符号96bで示す)であって、これらは適宜の印字方法によって容器蓋2の成形後に装着壁12の外側面に印字される。表示96a及び表示96bは共に被係止片40よりも下方において、表示96aは凹部90の周方向他側端部に、表示96bは凹部90の周方向片側端部に配設され、表示96a及び表示96bは周方向において離隔している。
【0019】
所望ならば、被係止片40の外周面は装着壁12の外周面よりも径方向内側に位置してもよい。また、上記凹部90を省略して被係止片40を装着壁12の外周面に配設し、被係止片40の外周面が装着壁12の外周面よりも径方向外側に位置するようにすることもできる。この場合には、係止片56は破断可能橋絡部68を介してスカート壁48の下面ではなく外周面に接続され、被係止片40全体がスカート壁48の外周面よりも径方向外側に配置されることとなる。
【0020】
上述した容器蓋2は、上蓋6が蓋本体4に対して開位置にある状態で成形機によって成形され、成形された容器蓋2は成形機から取り出された後に、所要折り曲げ機により上蓋6が開位置から閉位置に旋回せしめられる折り曲げ工程を経て完成する。折り曲げ工程の最終段階においては、上蓋6に形成された係止片56の突部74が蓋本体4に形成された被係止片40を弾性的に乗り越え、かくして係止片56は被係止片40に弾性的に係止せしめられる。係止片56が被係止片40に係止せしめられる際には、被係止片40の上面に形成された案内面88と、係止片56の突部74に形成された傾斜下面78との協働によって、突部74は被係止片40を充分円滑に乗り越えることができる。折り曲げ工程の詳細については、本願の出願人が本願に先立って出願した特願2021-175414の明細書の記載を参照されたい。
【0021】
図7に示すとおり、図示の実施形態においては、係止片56が被係止片40に弾性的に係止せしめられた状態にあっては、被係止片40の下面水平部84は係止片56の係止上面76と上下方向に対向して位置する。被係止片40の周方向他側端は係止片56よりも周方向他側に幾分離隔して位置するが、被係止片40の周方向片側端は係止片56よりも周方向片側に充分離隔して位置する。そして、係止片56は装着壁12の外側面に配設された漢字「開」なる表示96aを覆うことでこれを視認不可にして、漢字「閉」なる表示96bのみが視認可能となる。
【0022】
このとき更に、
図8に示すとおり、上蓋6の環状被係合突条62が蓋本体4の係合突条30の外周面乃至下面に係合され、上蓋6の環状当接突条64が蓋本体4の係合壁28の上面に当接され、上蓋6の内側円筒壁50の外周面が蓋本体4の注出案内壁26の内周面に密接せしめられると共に、
図7に示すとおり、上蓋6の薄肉弧状突出片60が蓋本体4の切欠36に位置せしめられる。
【0023】
図7及び
図8には、本発明に従って構成された容器蓋2と共にかかる容器蓋2が適用される容器の口頸部も二点鎖線で図示されている。適宜の合成樹脂又はガラスから形成することができる容器の口頸部100は上面が開放された円筒形状であり、その外周面上端部には被係止突条102が形成されている。口頸部100の外周面には、更に、被係止突条102の下方に位置するサポートリング104(このサポートリング104は容器を搬送する際に利用される)も形成されている。
【0024】
容器内に内容物を収容した後に口頸部100に容器蓋2を装着して口頸部100を密封する際には、容器蓋2さらに詳しくは蓋本体4に対して上蓋6が閉位置にせしめられた状態の容器蓋2を口頸部100に被嵌して下方に強制し、蓋本体4の装着壁12を弾性的に変形せしめて装着壁12の内周面に形成されている係止手段34を口頸部100の被係止突条102の下方に係止せしめる。
【0025】
容器の内容物を消費する際には、上蓋6の鍔部58の下面に指をかけ、鍔部58にヒンジ手段8を旋回中心とした上向きの力を加えて、上蓋6を閉位置から開位置へ旋回つまり旋回開動させる。
図8を参照して説明すると、かかる旋回開動の初期段階にあっては、上蓋6に設けられた係止片56と蓋本体4に設けられた被係止片40とが係止、更に詳しくは係止片56に設けられた突部74の係止上面76と被係止片40の下面水平部84とが係止することで、上記上向きの力は係止片56とスカート壁48とを接続する破断可能橋絡部68に上下方向の引張力を作用せしめてこれを破断する。ここで、本発明に従って構成される容器蓋にあっては、破断可能橋絡部68が破断されると、係止片56が被係止片40に沿って周方向の片側に向かって下方に移動せしめられることが重要である。破断可能橋絡部68が破断せしめられると、係止片56はスカート壁48から分離され、係止片56(フランジ部70)の支持下面72が被係止片40の上面傾斜部82に係止せしめられ、この上面傾斜部82に沿って重力により周方向の片側に移動(滑動)せしめられる。そして、係止片56が周方向の片側端まで滑動せしめられると、
図9(c)に示すとおり、係止片56は装着壁12の外側面に配設された漢字「閉」なる表示96bを覆うことでこれを視認不可にして、漢字「開」なる表示96aのみが視認可能となる。
【0026】
本発明の容器蓋にあっては、被係止片40は装着壁12の外側面から径方向外側に離隔した位置で上記外側面に沿って周方向の片側に向かって下方に傾斜しており、破断可能橋絡部68が破断されると、係止片56は被係止片40に沿って周方向の片側に向かって下方に移動せしめられるため、蓋本体4に対して上蓋6が開封されたことを明確に使用者に認知させることができ、良好なタンパーエビデント性を有する。また、
破断可能橋絡部68が破断して係止片56が上蓋6から分離せしめられた後にあっては、フランジ部70の下面が被係止片40の上面傾斜部82に係止せしめられて、係止片56が被係止片40に対して下方へ移動することは規制される。係止片56が被係止片40に対して上方へ移動することは、係止片56の係止上面76が被係止片40の下面傾斜部86に係止することで規制される。そして、係止片56が被係止片40に対して周方向へ移動することは、係止片56の周方向側面が側面92と当接することで制限される。それ故に、図示の実施形態の容器蓋にあっては、破断可能橋絡部68が破断して係止片56が上蓋6から分離せしめられたとしても、係止片56は被係止片40つまり容器蓋2から分離することはなくこれに継続して保持されるため、係止片56それ自身が廃棄物となることはない。
【0027】
破断可能橋絡部68が破断せしめられた後にあっては、上蓋6が閉位置から開位置へ旋回開動せしめられ、
図10に示すとおり、蓋本体4の閉塞壁10の上面が露呈せしめられる。その後に、蓋本体4の引張リング24に指を掛けて上方に強制し、無端薄肉破断可能ライン18を破断して閉塞壁10から除去領域20を除去し、かくして排出開口を生成する。しかる後においては、容器を適宜に傾動することによって、容器の内容物が排出開口を通して排出される。内容物の排出を終了した後においては、上蓋6は閉位置に向かって旋回閉回動せしめられて蓋本体4に再装着される。
【0028】
以上添付した図面を参照して本発明の合成樹脂製容器蓋について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲内において種々の変形例が考えられる。例えば、図示の実施形態においては、被係止片40はヒンジ手段8に向かって下方に傾斜、つまり周方向の片側とはヒンジ手段に接近する方向であったが、傾斜角を適宜に選定すれば、被係止片をヒンジ手段から離隔する方向に向かって下方に傾斜させることもできる。また、図示の実施形態においては、装着壁の外側面には表示96a及び表示96bが配設されていたが、いずれか一方又はその両方を省略してもよい。更にまた、図示の実施形態においては、引張リング24によって無端薄肉破断可能ライン18を破断せしめて閉塞壁10に排出開口を生成したが、閉塞壁に排出開口を生成する方法は引張リングによらず適宜の方法であってよい。例えば本願に先立って本出願人が出願した特願2021-137189号に示されているとおり、蓋本体の閉塞壁と上蓋の天面壁とを適宜の接続手段によって接続し、上蓋が閉位置から旋回開動すると同時に無端薄肉破断可能ラインが破断されるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0029】
2:容器蓋
4:蓋本体
6:上蓋
8:ヒンジ手段
10:閉塞壁
12:装着壁
40:被係止片
46:天面壁
48:スカート壁
56:係止片
68:破断可能橋絡部
70:フランジ部
72:支持下面