(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111278
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】冷凍焼成食品の製造装置及び冷凍焼成食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21C 15/00 20060101AFI20230803BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20230803BHJP
A21D 15/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A21C15/00 A
A23L35/00
A21D15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013059
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】714004734
【氏名又は名称】テーブルマーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨原 章弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 健輔
【テーマコード(参考)】
4B031
4B032
4B036
【Fターム(参考)】
4B031CA14
4B031CA19
4B031CA20
4B031CJ13
4B031CJ19
4B032DB10
4B032DB33
4B032DE10
4B032DP40
4B032DP73
4B032DP80
4B036LE08
4B036LF14
4B036LT11
(57)【要約】
【課題】均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品を容易に製造することが可能な冷凍焼成食品の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】冷凍焼成食品10の製造装置100は、加熱板Pで焼成させた板状の焼成体F5の上側板面S2に、上側板面S2を横断する凹溝11を形成する凹溝形成装置7を備え、凹溝形成装置7は、加熱板P上の焼成体F5を掬い上げる一対の掬上部材70a,70bと、一対の掬上部材70a,70bを駆動する掬上部材駆動部であるアクチュエータ71,74と、一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2に凹溝11を形成するブレード77と、ブレード77を駆動するブレード駆動部であるアクチュエータ78と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された冷凍焼成食品の製造装置であって、
加熱板上で焼成させた板状の前記焼成体の板面に、前記板面を横断する凹溝を形成する凹溝形成装置を備え、
前記凹溝形成装置は、
前記加熱板上の前記焼成体を掬い上げる一対の掬上部材と、
前記一対の掬上部材を駆動する掬上部材駆動部と、
前記一対の掬上部材により掬い上げられた前記焼成体の前記板面に前記凹溝を形成するブレードと、
前記ブレードを駆動するブレード駆動部と、を有する
ことを特徴とする冷凍焼成食品の製造装置。
【請求項2】
前記一対の掬上部材は、
前記加熱板上の前記焼成体と前記加熱板との間に対して前記加熱板に沿った所定方向及びその逆方向からそれぞれ挿入されて前記焼成体を保持する一対の保持板と、
前記一対の保持板を前記掬上部材駆動部にそれぞれ連結させる一対の連結板と、を有し、
一方の保持板は、前記所定方向に向かうに従って前記加熱板に接近するよう下方に傾斜して設けられ、
他方の保持板は、前記逆方向に向かうに従って前記加熱板に接近するよう下方に傾斜して設けられ、
前記ブレードは、前記一対の保持板の各先端部の間に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍焼成食品の製造装置。
【請求項3】
前記一対の掬上部材は、前記一対の保持板の各先端部の前記所定方向における間隔が前記焼成体の前記所定方向における長さよりも長い開状態から、前記各先端部が前記焼成体と前記加熱板との間に挿入され、且つ、前記各先端部の前記間隔が前記焼成体の前記長さよりも短い所定距離となる閉状態まで移動することによって、前記焼成体を掬い上げる
ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍焼成食品の製造装置。
【請求項4】
前記ブレードは、前記一対の掬上部材により掬い上げられた前記焼成体の前記板面よりも上方から下降して前記板面に押し付けられることによって、前記凹溝を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍焼成食品の製造装置。
【請求項5】
前記加熱板は、前記加熱板に沿った搬送方向に搬送され、
前記一対の掬上部材及び前記ブレードは、前記搬送方向に直交する前記加熱板の幅方向に沿って複数配置されており、
一方の掬上部材と他方の掬上部材とは、前記搬送方向に沿って並んで配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍焼成食品の製造装置。
【請求項6】
流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された冷凍焼成食品の製造方法であって、
前記材料を加熱板上に供給する工程と、
前記材料を加熱することにより、少なくとも一方の板面が焼成された板状の焼成体を形成する工程と、
前記焼成体を一対の掬上部材により掬い上げ、掬い上げられた前記焼成体の前記板面にブレードを押し付けて前記板面を横断する凹溝を前記板面に形成する工程と、
前記凹溝が形成された前記焼成体を凍結させる工程と、を有する
ことを特徴とする冷凍焼成食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍焼成食品の製造装置及び冷凍焼成食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
お好み焼き又はホットケーキ等の焼成食品を凍結させた冷凍焼成食品が知られている。冷凍焼成食品には、凍結させた状態のまま分割し易い形態にして欲しいという要望が多い。このような要望に応え得る冷凍焼成食品を工業的に製造する製造装置として、例えば、特許文献1に記載の製造装置がある。
【0003】
特許文献1には、流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された冷凍焼成食品の製造装置であって、板状の前記焼成体の少なくとも一方の板面に、板面を横断する凹溝を形成する凹溝形成装置を有する冷凍焼成食品の製造装置が記載されている。特許文献1に記載の凹溝形成装置は、焼成体を固定する固定装置と、焼成体に凹溝を形成する加工装置と、を有する。固定装置は、焼成体を支持する複数の支持部材と、支持部材を移動させる支持部材駆動部と、を有する。加工装置は、焼成体に凹溝を形成するブレードと、ブレードを移動させるブレード駆動部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造装置は、固定装置とブレードとの位置ずれによって、焼成体の板面中心を通るような正確な凹溝を容易に形成し難くなることがある。よって、特許文献1に記載の製造装置には、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品を製造するという点において改善の余地がある。また、特許文献1に記載の製造装置は、焼成体の大きさに合わせて複数種類の固定装置及びブレードを用意して、製造装置に付け替える必要がある。よって、特許文献1に記載の製造装置は、異なる大きさの冷凍焼成食品を容易に製造するという点において改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品を容易に製造することが可能な冷凍焼成食品の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る冷凍焼成食品の製造装置は、流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された冷凍焼成食品の製造装置であって、加熱板上で焼成させた板状の前記焼成体の板面に、前記板面を横断する凹溝を形成する凹溝形成装置を備え、前記凹溝形成装置は、前記加熱板上の前記焼成体を掬い上げる一対の掬上部材と、前記一対の掬上部材を駆動する掬上部材駆動部と、前記一対の掬上部材により掬い上げられた前記焼成体の前記板面に前記凹溝を形成するブレードと、前記ブレードを駆動するブレード駆動部と、を有することを特徴とする。
【0008】
更に好ましい態様として、前記一対の掬上部材は、前記加熱板上の前記焼成体と前記加熱板との間に対して前記加熱板に沿った所定方向及びその逆方向からそれぞれ挿入されて前記焼成体を保持する一対の保持板と、前記一対の保持板を前記掬上部材駆動部にそれぞれ連結させる一対の連結板と、を有し、一方の保持板は、前記所定方向に向かうに従って前記加熱板に接近するよう下方に傾斜して設けられ、他方の保持板は、前記逆方向に向かうに従って前記加熱板に接近するよう下方に傾斜して設けられ、前記ブレードは、前記一対の保持板の各先端部の間に配置される。
【0009】
更に好ましい態様として、前記一対の掬上部材は、前記一対の保持板の各先端部の前記所定方向における間隔が前記焼成体の前記所定方向における長さよりも長い開状態から、前記各先端部が前記焼成体と前記加熱板との間に挿入され、且つ、前記各先端部の前記間隔が前記焼成体の前記長さよりも短い所定距離となる閉状態まで移動することによって、前記焼成体を掬い上げる。
【0010】
更に好ましい態様として、前記ブレードは、前記一対の掬上部材により掬い上げられた前記焼成体の前記板面よりも上方から下降して前記板面に押し付けられることによって、前記凹溝を形成する。
【0011】
更に好ましい態様として、前記加熱板は、前記加熱板に沿った搬送方向に搬送され、前記一対の掬上部材及び前記ブレードは、前記搬送方向に直交する前記加熱板の幅方向に沿って複数配置されており、一方の掬上部材と他方の掬上部材とは、前記搬送方向に沿って並んで配置される。
【0012】
また、本発明に係る冷凍焼成食品の製造方法は、流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された冷凍焼成食品の製造方法であって、前記材料を加熱板上に供給する工程と、前記材料を加熱することにより、少なくとも一方の板面が焼成された板状の焼成体を形成する工程と、前記焼成体を一対の掬上部材により掬い上げ、掬い上げられた前記焼成体の前記板面にブレードを押し付けて前記板面を横断する凹溝を前記板面に形成する工程と、前記凹溝が形成された前記焼成体を凍結させる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な大きさの焼成体に対して同一装置で板面中心を通るような正確な凹溝を容易に形成することができるので、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品を容易に製造することが可能な冷凍焼成食品の製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係る冷凍焼成食品を示す斜視図。
【
図2】
図1に示す冷凍焼成食品が分割された状態を示す斜視図。
【
図5】本実施形態に係る冷凍焼成食品の製造装置の模式図。
【
図7】
図6に示す一対の掬上部材が開状態である場合の凹溝形成装置を上方から視た図。
【
図8】
図6に示す一対の掬上部材が閉状態である場合の凹溝形成装置を上方から視た図。
【
図10】
図9に示す凹溝形成装置の動作を説明する図。
【
図11】
図9に示す凹溝形成装置の動作を説明する図。
【
図12】
図9に示す凹溝形成装置の動作を説明する図。
【
図13】
図9に示す凹溝形成装置の動作を説明する図。
【
図14】複数の焼成体が同時に製造される場合における凹溝形成装置を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0016】
[冷凍焼成食品]
図1は、本実施形態に係る冷凍焼成食品10を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す冷凍焼成食品10が分割された状態を示す斜視図である。
図3は、
図1に示す冷凍焼成食品10のA方向矢視図である。
図4は、
図2に示す冷凍焼成食品の切断面を示す図である。なお、各図面は模式図のため、形状や寸法は誇張されている(以下の図面も同様である)。
【0017】
冷凍焼成食品10は、流動性を有する生地を含む材料の焼成体が凍結された焼成食品である。冷凍焼成食品10は、焼成後に冷凍された生地であってもよい。本実施形態では、冷凍焼成食品10の1つであるお好み焼きを例に挙げて説明する。なお、冷凍焼成食品10は、お好み焼きに限定されず、例えばホットケーキ等であってもよい。
【0018】
本実施形態において「お好み焼き」という場合、特に断らない限り、生地と具材とを混合して焼成するものをいう。また、本実施形態において「お好み焼き」という場合、特に断らない限り、材料を焼成したお好み焼きの本体を指す。すなわち、食卓に提供される一般的なお好み焼きは、ソース及びトッピング(マヨネーズ、削りかつお節、又は、粉末状若しくは細断状の青のり等)を施された状態であることが多いが、以下では、ソース及びトッピングを施す前の状態ものを指す。お好み焼きの例としては、関西風お好み焼き、広島風お好み焼き、ねぎ焼き、チジミなどを挙げることができる。
【0019】
冷凍焼成食品10は、
図1に示すように、全体として円板状であり、板面(
図1では上側板面)の中心を通って板面を横断する直線状の凹溝11を有する。冷凍焼成食品10は、
図2に示すように、凍結状態であっても、凹溝11に沿って2つに分割することができる。本実施形態の場合、凹溝11は、冷凍焼成食品10の中心を通る直線状であるため、2つの半月状の分割片10a,10bは、略同じ形状であり、略均等な大きさである。また、凹溝11は、本実施形態では1本であるが、これに限定されず、複数本形成されることも可能である。例えば、冷凍焼成食品10には、板面中心において交差する2~4本の凹溝11が形成されてもよい。冷凍焼成食品10は、4~8等分に分割可能な冷凍焼成食品であってもよい。
【0020】
冷凍焼成食品10は、
図3に示すように、本体12と、本体12の上側板面及び下側板面に形成された焼成層13,14と、を有する。焼成層13,14は、加熱により焦げ目の付いた硬い層である。凹溝11は、冷凍焼成食品10の被焼成材料を焼成した後に、上側板面に切れ込みを入れる加工によって形成される。これにより、凹溝11の内側には、上側板面の焼成層13の一部が入り込んでおり、凹溝11の側壁には焼成層13aが存在する。したがって、冷凍焼成食品10を分割した場合の分割片10aの切断面では、
図4に示すように、上部に焼成層13aが位置し、下部に本体12が露出する。
【0021】
凹溝11の底部は、本実施形態の場合、平坦な面である。したがって、冷凍焼成食品10を分割した場合には、それぞれの分割片10a,10bの切断面に対して、段差面11a,11bが形成される。このように凹溝11にある程度の幅を持たせることで、分割する際に凹溝11に沿って割れ易い構造とすることができる。
【0022】
以上のような、本実施形態に係る冷凍焼成食品10によれば、上側板面を横断する凹溝11が形成されていることにより、凍結状態であっても、手作業等により容易に分割することができる。これにより、冷凍焼成食品10は、全体を解凍することなく一部のみを分割して使用することができるので、使い勝手を向上させることができる。
【0023】
また、凹溝11によって冷凍焼成食品10の分割片10a,10bの大きさを調整できる。本実施形態のように冷凍焼成食品10の板面中心を通って横断する凹溝11を形成することで、冷凍焼成食品10を略正確に二等分することができる。これにより、例えば分割片10a,10bを他の食品と組み合わせて販売する場合に、食品毎の分割片10a,10bの大きさを容易に揃えることができる。
【0024】
なお、凹溝11を形成する面は、冷凍焼成食品10の上側板面であっても下側板面であっても構わない。例えば、上側板面に凹溝11を加工し難くする具材(いか又は豚肉等)がある場合には、下側板面に凹溝11が形成されてもよい。冷凍焼成食品10は、本実施形態では略一定の厚さを有する円板状としたが、この形状に特に限定されない。冷凍焼成食品10の形状は、例えば多角形や楕円形であってもよい。
【0025】
[冷凍焼成食品の製造装置及び製造方法]
図5は、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100の模式図である。
図6は、
図5に示す凹溝形成装置7の模式図である。
図7は、
図6に示す一対の掬上部材70a,70bが開状態である場合の凹溝形成装置7を上方から視た図である。
図8は、
図6に示す一対の掬上部材70a,70bが閉状態である場合の凹溝形成装置7を上方から視た図である。
図9は、
図7に示す凹溝形成装置を側方から視た図である。
【0026】
図5に示す冷凍焼成食品10の製造装置100は、冷凍される焼成体F6を製造する装置である。製造装置100は、材料供給工程と、整形工程と、焼成工程と、凹溝形成工程と、を順次実行することにより、凹溝11が形成された焼成体F6を自動的に製造することができる。材料供給工程は、流動性を有する生地を含む被焼成材料F1を供給する工程である。整形工程は、被焼成材料F1を加熱して流動性を低下させた被焼成材料F2の形状を整形して整形体F3を製造する工程である。焼成工程は、加熱により整形体F3の下側板面S1を焼成して焼成体F4を製造し、焼成体F4の上側板面S2を焼成して焼成体F5を製造する工程である。凹溝形成工程は、焼成体F5の上側板面S2に凹溝11を形成して焼成体F6を製造する工程である。製造装置100は、本実施形態に係る冷凍焼成食品の製造方法を実施するための装置の一例である。
【0027】
製造装置100は、材料供給装置1と、整形装置2と、制御装置4と、搬送装置5と、加熱装置6と、凹溝形成装置7と、を備える。
【0028】
搬送装置5は、複数の加熱板Pと、駆動装置と、を有する。複数の加熱板Pは、互いに一定間隔をあけて近接して配置される。複数の加熱板Pのそれぞれには、被焼成材料F1~焼成体F6の何れかが載置される。駆動装置は、複数の加熱板Pを、加熱板Pに沿った搬送方向Mに搬送する。駆動装置は、複数の加熱板Pを、一定ピッチ毎に間欠的に搬送する。例えば、
図5に示すように、複数の加熱板Pは、搬送方向Mに沿って一定ピッチで並んだ各位置p1~p6に配置される。駆動装置は、1回の搬送動作の度に、各加熱板Pを、現在位置から搬送方向Mの先方に隣接する位置まで搬送する。駆動装置は、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0029】
加熱板Pの材質は、被焼成材料F1~整形体F3を焼成可能な温度まで加熱できる材質であれば、特に限定されない。本実施形態の加熱板Pは、鉄板によって構成される。加熱板Pの搬送方向Mに沿った長さは、1つの焼成体F6を製造するために必要な被焼成材料F1を配置可能な長さである。搬送方向Mに直交する加熱板Pの幅方向(
図5では奥行方向)に沿った長さは、加熱板P1枚当たり1つの被焼成材料F1を配置可能な長さであってもよいし、加熱板P1枚当たり複数の被焼成材料F1を配置可能な長さであってもよい。
【0030】
加熱装置6は、各加熱板Pの下方に配置され、各加熱板Pを加熱する装置である。本実施形態の加熱装置6は、火力が調整されたバーナーを備え、バーナーの火力によって、加熱板Pをその下面側から加熱する。加熱装置6は、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0031】
材料供給装置1は、加熱板P上に、被焼成材料F1を供給する装置である。材料供給装置1は、位置p1に停止する加熱板Pの上方であって当該加熱板Pの中心軸線上に配置されている。材料供給装置1の構成は、流動性を有する生地と具材とを混合した被焼成材料F1を加熱板Pの上方から供給できる構成であれば、特に限定されない。材料供給装置1は、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0032】
整形装置2は、材料供給装置1により加熱板P上に供給された被焼成材料F1を加熱して流動性を低下させた被焼成材料F2の形状を整形して整形体F3を製造する装置である。整形装置2は、位置p2に停止する加熱板Pの上方であって当該加熱板Pの中心軸線上に配置されている。整形装置2の構成は、加熱板P上の被焼成材料F2を所定形状(例えば円板状)に整形できる構成であれば、特に限定されない。整形装置2は、ヘラ又は丸枠等の整形部材を用いて、外周部から中心部に向かって被焼成材料F2を掻き寄せると共に、平板等の整形部材を用いて、上方から被焼成材料F2を押さえ付けることによって、整形体F3を製造することができる。
【0033】
凹溝形成装置7は、加熱板P上で焼成させた焼成体F5の上側板面S2に、当該上側板面S2を横断する凹溝11を形成して、凹溝11が形成された焼成体F6を製造する装置である。凹溝形成装置7は、位置p5に停止する加熱板Pの上方であって当該加熱板Pの中心軸線上に配置されている。
【0034】
凹溝形成装置7は、
図6に示すように、一対の掬上部材70a,70bと、アクチュエータ71と、支持軸72と、昇降板73と、アクチュエータ74と、支持板75と、ブレード77と、アクチュエータ78と、を有する。
【0035】
なお、アクチュエータ71及びアクチュエータ74は、一対の掬上部材70a,70bを駆動する本発明の掬上部材駆動部の一例である。アクチュエータ78は、ブレード77を駆動する本発明のブレード駆動部の一例である。
【0036】
支持板75は、不図示の支持部材に固定され、位置p5に停止する加熱板Pの上方の一定位置に水平に配置された板状部材である。支持板75は、加熱板Pの幅方向全域を覆うように設けられている。
【0037】
昇降板73は、支持板75の下方において、支持板75と平行に配置された板状部材である。昇降板73の上面と支持板75の下面とは、アクチュエータ74によって連結されている。アクチュエータ74は、支持板75に対して昇降板73を上下方向(加熱板Pの法線に沿った方向)に昇降させるアクチュエータによって構成される。本実施形態のアクチュエータ74は、直動型のエアシリンダによって構成される。アクチュエータ74の数は、特に限定されないが、本実施形態では、昇降板73の四隅にそれぞれ1台ずつ設けられている。
【0038】
支持軸72は、昇降板73の下面から下方に延びる管状部材である。支持軸72の上端部は、昇降板73の下面に固定されている。支持軸72の下端部には、アクチュエータ71が固定されている。
【0039】
アクチュエータ71は、一対の掬上部材70a,70bを、加熱板Pに沿った所定方向N1及びその逆方向N2に移動させるアクチュエータである。所定方向N1及びその逆方向N2は、搬送方向Mに沿った方向であり得る。アクチュエータ71は、エアチャックによって構成される。アクチュエータ71は、
図7及び
図8に示すように、所定方向N1及びその逆方向N2に沿って前進又は後退(伸縮)する複数の作動軸71cを有する。各作動軸71cは、不図示のエア供給源から供給されるエア圧によって前進又は後退(伸縮)する。各作動軸71cの前進方向の先端部には、アクチュエータ71の中心部を挟んで互いに対向する作動板71a,71bが固定されている。各作動軸71cの前進又は後退に応じて、作動板71a,71b同士の間隔が変化する。上下方向に延びるアクチュエータ71の中心軸の周りには、支持軸72の内部に連通し上下方向に延びる貫通孔が形成されている。当該貫通孔には、アクチュエータ78が挿入されている。
【0040】
一対の掬上部材70a,70bは、加熱板P上で焼成させた焼成体F5を掬い上げる部材である。一対の掬上部材70a,70bのそれぞれは、焼成体F5を掬い上げる板状部材あり、例えば、ヘラ部材によって構成される。一対の掬上部材70a,70bは、
図6に示すように、アクチュエータ71の作動板71a,71bにそれぞれ連結され、作動板71a,71bと連動して移動する。これにより、一対の掬上部材70a,70b同士の間隔が変化する。
【0041】
一対の掬上部材70a,70bは、一対の連結板70c,70dと、一対の保持板70e,70fと、を有する。
【0042】
一対の連結板70c,70dは、一対の保持板70e,70fを、掬上部材駆動部であるアクチュエータ71の作動板71a,71bにそれぞれ連結させる板状部材である。一対の連結板70c,70dの上端部は、作動板71a,71bにそれぞれ固定されている。一対の連結板70c,70dの下端部には、一対の保持板70e,70fが固定されている。一対の連結板70c,70dは、一対の保持板70e,70fとそれぞれ一体的に形成されていてもよい。
【0043】
一対の保持板70e,70fは、加熱板P上の焼成体F5と加熱板Pとの間に対して、加熱板Pに沿った所定方向N1及びその逆方向N2から挿入されて、焼成体F5を保持する板状部材である。一方の保持板70eは、連結板70cの下端部から所定方向N1に延びる。他方の保持板70fは、連結板70dの下端部から逆方向N2に延びる。一対の保持板70e,70fは、
図9に示すように、連結板70c,70dに連なる各基端部70g,70hよりも各先端部70i,70jが、加熱板Pに接近するよう下方に傾斜して設けられている。すなわち、一方の保持板70eは、加熱板Pに沿った所定方向N1に向かうに従って加熱板Pに接近するよう下方に傾斜して設けられている。他方の保持板70eは、所定方向N1の逆方向N2に向かうに従って加熱板Pに接近するよう下方に傾斜して設けられている。なお、一対の保持板70e,70fは、一対の保持板70e,70fの上面であって焼成体F5を保持する保持面70k,70lが上記のように傾斜していればよく、必ずしも一対の保持板70e,70f全体が傾斜していなくてもよい。
【0044】
一対の保持板70e,70fのそれぞれは、搬送方向Mに直交する加熱板Pの幅方向に対して、略平行である。一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70jは、加熱板Pの幅方向に沿って互いに略平行である。一対の保持板70e,70fは、加熱板Pの幅方向及び上下方向に延びる平面を基準として、互いに対称である。すなわち、一対の保持板70e,70fの各大きさ、各形状、及び、加熱板Pに対する各傾斜角は、互いに略同一である。一対の保持板70e,70fの各大きさは、焼成体F5より大きければ特に限定されない。一対の保持板70e,70fの各形状は、各先端部70i,70jが加熱板Pの幅方向に沿って線状に延びる形状であれば、多角形又は半円形等、特に限定されない。一対の保持板70e,70fの加熱板Pに対する各傾斜角は、特に限定されないが、焼成体F5の厚さが厚いほど大きくすることが好ましい。
【0045】
一対の掬上部材70a,70bは、アクチュエータ71の各作動軸71cの前進によって開状態になり、各作動軸71cの後退によって閉状態になる。一対の掬上部材70a,70bが開状態であるとは、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70j同士の所定方向N1における間隔D2が、焼成体F5の所定方向N1における長さD1よりも長い状態である。一対の掬上部材70a,70bが閉状態であるとは、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70j同士の所定方向N1における間隔D2が、焼成体F5の所定方向N1における長さD1よりも短い状態である。本実施形態では、一対の掬上部材70a,70bが閉状態であるとは、各先端部70i,70j同士の間隔D2が、焼成体F5の長さD1よりも短い所定距離となる状態とする。この所定距離とは、加熱板Pと焼成体F5との間に挿入された一対の保持板70e,70fに保持された焼成体F5が、加熱板Pから離隔する程度に、各先端部70i,70j同士が接近した距離である。
【0046】
ブレード77は、加熱板Pに配置された焼成体F5の上側板面S2に凹溝11を形成する板状部材である。ブレード77は、加熱板Pの幅方向及び上下方向に延びる。ブレード77の下端部は、刃先を構成する。ブレード77の上端部は、アクチュエータ78に固定されている。ブレード77は、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70jの間に配置される。具体的には、ブレード77は、所定方向N1に沿った方向において、各先端部70i,70j同士の間隔D2の中間位置に配置される。ブレード77は、各先端部70i,70jに沿って延びるように配置される。ブレード77は、一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2よりも上方に配置される。例えば、ブレード77は、一対の保持板70e,70fの基端部70g,70hよりも上方に配置される。
【0047】
アクチュエータ78は、昇降板73に対してブレード77を上下方向に昇降させるアクチュエータによって構成される。本実施形態のアクチュエータ78は、直動型のエアシリンダ又は電動シリンダによって構成される。アクチュエータ78は、支持軸72の貫通孔に挿入され、その上端部が昇降板73の下面に固定されている。
【0048】
凹溝形成装置7において、アクチュエータ71及びアクチュエータ74,78は、制御装置4に通信可能に接続され、制御装置4からの制御信号に基づいて動作が制御される。
【0049】
制御装置4は、製造装置100に含まれる各装置の動作を制御する装置である。制御装置4は、少なくとも、材料供給装置1、整形装置2、搬送装置5、加熱装置6及び凹溝形成装置7のそれぞれに通信可能に接続される。制御装置4は、これらの装置にそれぞれ制御信号を送信することにより、これらの装置の動作を制御する。制御装置4は、CPU、メモリ、入出力インターフェース、通信インターフェース及び外部記憶装置等を備えるコンピュータによって構成される。
【0050】
冷凍焼成食品10の製造装置100の動作について、冷凍焼成食品10の製造方法と共に説明する。
【0051】
本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造方法は、上記の材料供給工程と、整形工程と、焼成工程と、凹溝形成工程と、冷凍工程と、有する。冷凍工程は、凹溝11が形成された焼成体F6を凍結させて冷凍焼成食品10を製造する工程である。
【0052】
製造装置100により冷凍焼成食品10の製造を開始するにあたって、まず、加熱装置6によって、加熱板Pが加熱される。加熱板Pの温度は、通常のお好み焼きの調理と同様に、例えば、230℃~250℃に設定することができる。本実施形態の加熱装置6は、
図5に示す位置p1~p6におけるバーナーの火力を個別に調整可能であり、工程によって加熱板Pの温度を変えることができる。例えば、160℃~260℃の範囲で適宜設定すればよい。また、
図5において図示を省略したが、位置p4の加熱板Pの上方に、加熱装置を配置して、上火による加熱を併用することができる。この場合、加熱板Pの温度は、例えば、160℃~220℃に設定することも可能である。
【0053】
制御装置4は、材料供給装置1に制御信号を送信して、材料供給工程を実行させる。材料供給工程では、材料供給装置1は、位置p1に停止する加熱板P上に対して一定量の被焼成材料F1を供給する。被焼成材料F1は、生地及び具材が混ぜ合わされた状態で供給される。生地及び具材は、混ぜ合わせて長時間放置すると、具材から水分が出て生地の物性を変えてしまう。本実施形態では、材料供給装置1は、被焼成材料F1が長時間放置されないよう、生地及び具材が混ぜ合わされると直ちに供給する。被焼成材料F1は、加熱板P上の供給位置から略円状に広がって扁平な形状となる。被焼成材料F1は、全体として上に凸の山高形状となる。
【0054】
被焼成材料F1が供給されてから一定時間が経過すると、制御装置4は、搬送装置5に制御信号を送信して、加熱板Pの搬送動作を実行させる。搬送装置5は、各加熱板Pを搬送方向Mに一定ピッチだけ搬送する。位置p1の加熱板Pは、位置p2に搬送される。被焼成材料F1は、その中心が整形装置2の直下となる位置に移動する。被焼成材料F1は、一定時間が経過する間に加熱されて、被焼成材料F1よりも流動性が低下した被焼成材料F2になる。
【0055】
次に、制御装置4は、整形装置2に制御信号を送信して、整形工程を実行させる。整形工程において、整形装置2は、位置p2に停止する加熱板P上の被焼成材料F2の外形を整形する。整形装置2は、ヘラ又は丸枠等の整形部材を用いて、外周部から中心部に向かって被焼成材料F2を掻き寄せると共に、平板等の整形部材を用いて、上方から被焼成材料F2を押さえ付ける。これにより、整形装置2は、例えば円板状の整形体F3を製造する。
【0056】
前回の搬送動作から一定時間が経過すると、制御装置4は、搬送装置5に制御信号を送信して、加熱板Pの搬送動作を実行させる。搬送装置5は、各加熱板Pを搬送方向Mに一定ピッチだけ搬送する。位置p2の加熱板Pは、位置p3に搬送される。
【0057】
位置p3及び位置p4では、焼成工程が実行される。位置p3に搬送された加熱板P上の整形体F3は、加熱板Pからの加熱を受け続け、下側板面S1が焼成される。これにより、下側板面S1が焼成された焼成体F4が製造される。並行して実行される他の材料供給工程及び整形工程が終了とすると、位置p3の加熱板Pは、位置p4に搬送される。位置p4の加熱板P上の焼成体F4は、上方に配置された加熱装置から加熱を受け続けたり、位置p3と位置p4の間に配置された反転装置により反転され加熱板Pから加熱を受け続けたりして、下側板面S1及び上側板面S2の両面が焼成される。これにより、両面が焼成された焼成体F5が製造される。なお、焼成工程は、下側板面S1及び上側板面S2の少なくとも一方を焼成すればよく、必ずしも当該両面を焼成することに限定されない。また、焼成工程の後に実行される凹溝形成工程においても焼成体F5は、引き続き加熱板Pからの加熱を受け続け、焼成が進行する。よって、焼成工程のタクト時間は、凹溝形成工程での焼成の進行を考慮して設定される。
【0058】
次に、制御装置4は、凹溝形成装置7に制御信号を送信して、凹溝形成工程を実行させる。凹溝形成工程では、凹溝形成装置7は、焼成体F5を一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げ、掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2にブレード77を押し付けて、上側板面S2を横断する凹溝11を上側板面S2に形成する。これにより、凹溝11が形成された焼成体F6が製造される。凹溝形成工程における凹溝形成装置7の動作の詳細については後述する。
【0059】
次に、冷凍工程が実行させる。冷凍工程では、凹溝11が形成された焼成体F6を所定の冷却場所に搬送してある程度冷却させてから、焼成体F6を所定の冷凍室に搬送して凍結させる。冷凍手段としては、スパイラルフリーザー、ワゴンフリーザー、フレキシブルフリーザー等を適用することができる。例えば、本実施形態の冷凍工程では、約-30℃で、スパイラルフリーザーを利用して、焼成体F6を急速に凍結させる。これにより、凹溝11が形成された冷凍焼成食品10が製造される。製造された冷凍焼成食品10は、例えば、電子レンジで解凍調理することにより、焼きたての状態を再現して食卓に提供され得る。
【0060】
[凹溝形成工程における凹溝形成装置の動作]
図10~
図13は、
図9に示す凹溝形成装置7の動作を説明する図である。
【0061】
凹溝形成工程は、
図6に示すように、一対の掬上部材70a,70bが、開状態であり、且つ、加熱板P上の焼成体F5よりも上方に配置された状態から開始される。凹溝形成装置7は、制御装置4からの制御信号に基づいて、アクチュエータ74を前進させて、
図9に示すように、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70jが加熱板Pに接触するまで、一対の掬上部材70a,70bを下降させる。この際、一対の掬上部材70a,70bが開状態でない場合には、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bの下降前にアクチュエータ71の作動軸71cを前進させて、一対の掬上部材70a,70bを開状態としておく。
【0062】
次に、凹溝形成装置7は、制御装置4からの制御信号に基づいて、アクチュエータ71の作動軸71cを後退させて、
図10に示すように、一対の掬上部材70a,70bを互いに接近させる。この際、凹溝形成装置7は、各先端部70i,70jの平行な姿勢を維持したまま、各先端部70i,70jの同士の間隔D2が焼成体F5の長さD1よりも確実に短くなるまで、一対の掬上部材70a,70bを所定方向N1及びその逆方向N2にそれぞれ移動させる。すると、各先端部70i,70jは、加熱板P上を摺動し、所定方向N1及びその逆方向N2から焼成体F5と加熱板Pとの間に挿入される。焼成工程が終了して焼成体F5の少なくとも下側板面S1が固形化しているので、各先端部70i,70jは、焼成体F5を崩すことなく焼成体F5と加熱板Pとの間に円滑に挿入され得る。
【0063】
次に、凹溝形成装置7は、アクチュエータ71の作動軸71cを更に後退させて、
図11に示すように、一対の掬上部材70a,70bを閉状態にする。一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70j同士は、焼成体F5が加熱板Pから離隔する程に接近した状態になる。焼成体F5は、一対の保持板70e,70fの各保持面70k,70lにおいて保持され、加熱板Pから掬い上げられる。一対の保持板70e,70fがそれぞれ上記のように下方に傾斜していることから、焼成体F5は、上側板面S2の中心を通り上側板面S2を横断する谷折りの折り目(以下「中心横断線C」とも称する)にて折れ曲がり、上に凹の形状になる。すなわち、上側板面S2には、中心横断線Cが形成される。
【0064】
ここで、凹溝形成装置7は、焼成体F5と加熱板Pとの間に対する各先端部70i,70jの挿入長さが互いに略等しくなるように、一対の掬上部材70a,70bを移動させる(アクチュエータ71を後退させる)。これにより、一対の掬上部材70a,70bが、互いに略均等に焼成体F5を掬い上げることができるので、凹溝形成装置7は、中心横断線Cを正確に形成することができる。但し、焼成体F5と加熱板Pとの間に対する各先端部70i,70jの挿入長さが等しくない場合であっても、下側板面S1の中心が各先端部70i,70j同士の間隔D2の中間位置に接近するように、焼成体F5は、自重によって各保持面70k,70l上を滑る。すなわち、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bに掬い上げられた焼成体F5の自重によって当該焼成体F5を一対の掬上部材70a,70bの間に滑り込ませることができる。これにより、焼成体F5は、中心横断線Cにて折れ曲がり、上に凹の形状になる。よって、この場合であっても、凹溝形成装置7は、中心横断線Cを形成することができる。
【0065】
なお、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bを閉状態にする際、焼成体F5が加熱板Pから離隔する程に一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70j同士を接近させなくてもよい。この場合、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bを閉状態にする際、アクチュエータ74を後退させて、焼成体F5の下側板面S1が加熱板Pから離隔するまで一対の掬上部材70a,70bを上昇させてもよい。一対の掬上部材70a,70bを上昇させる場合、凹溝形成装置7は、それぞれの掬上部材70a,70bの加熱板Pからの高さ位置及び姿勢を略同一として、略同一のタイミングで上昇させる。これにより、下側板面S1の中心が各先端部70i,70j同士の間隔D2の中間位置に接近し易くなるので、焼成体F5は、中心横断線Cにて折れ曲がり易くなり得る。よって、凹溝形成装置7は、中心横断線Cを更に正確に形成することができる。
【0066】
次に、凹溝形成装置7は、制御装置4からの制御信号に基づいて、アクチュエータ78を前進させて、
図12に示すように、ブレード77を下降させる。この際、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bに掬い上げられた焼成体F5よりも上方に配置されたブレード77を下降させて、当該ブレード77の下端部を当該焼成体F5の上側板面S2に押し付ける。すると、ブレード77は、当該焼成体F5の上側板面S2に形成された中心横断線C上から焼成体F5の内部に向かって切れ込んでいく。ブレード77の下降は、切れ込みの深さが、
図3に示す厚さL2から厚さL1を差し引いた値と同程度になると、停止される。これにより、ブレード77は、上側板面S2の中心を通って上側板面S2を横断する凹溝11を、上側板面S2に形成することができる。なお、
図3に示す厚さL1は、凹溝11が形成された部分である薄肉部10cの厚さである。
図3に示す厚さL2は、凹溝11が形成されていない部分の厚さである。
【0067】
次に、凹溝形成装置7は、制御装置4からの制御信号に基づいて、アクチュエータ78を後退させて、
図13に示すように、ブレード77が上側板面S2から退避するようブレード77を上昇させる。加えて、凹溝形成装置7は、アクチュエータ71の作動軸71cを前進させて、一対の掬上部材70a,70bを開状態にする。一対の掬上部材70a,70bに掬い上げられた焼成体F5は、加熱板P上に載置され、折れ曲がった形状が円板状に戻る。更に、凹溝形成装置7は、アクチュエータ74を後退させて、
図6に示すように、一対の掬上部材70a,70bを凹溝形成工程の開始前の位置まで上昇させる。その後、搬送装置5は、制御装置4からの制御信号に基づいて、各加熱板Pを搬送方向Mに一定ピッチだけ搬送する。位置p5の加熱板Pは、位置p6に搬送される。このようにして、凹溝形成工程では、凹溝11が形成された焼成体F6が製造される。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、加熱板Pで焼成させた板状の焼成体F5の上側板面S2に、上側板面S2を横断する凹溝11を形成する凹溝形成装置7を備える。凹溝形成装置7は、加熱板P上の焼成体F5を掬い上げる一対の掬上部材70a,70bを有する。凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bを駆動する掬上部材駆動部であるアクチュエータ71,74を有する。凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2に凹溝11を形成するブレード77を有する。凹溝形成装置7は、ブレード77を駆動するブレード駆動部であるアクチュエータ78を有する。
【0069】
これにより、凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70bに掬い上げられた焼成体F5の自重によって当該焼成体F5を一対の掬上部材70a,70bの間に滑り込ませることができ、当該焼成体F5の上側板面S2に中心横断線Cを形成することができる。そして、凹溝形成装置7は、形成された中心横断線C上にブレード77を押し付けることで、中心横断線C上に凹溝11を形成することができる。したがって、製造装置100は、焼成体F5の上側板面S2の中心を通るような正確な凹溝11を容易に形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易に製造することができる。
【0070】
その上、製造装置100は、一対の掬上部材70a,70bを用いて焼成体F5を掬い上げるので、異なる大きさの焼成体F5に対しても1種類の掬上部材70a,70bを用意するだけで、正確な凹溝11を形成することができる。すなわち、製造装置100は、従来のように焼成体F5の大きさに合わせて複数種類の固定装置及びブレードを用意し、製造装置に付け替える必要がない。したがって、製造装置100は、様々な大きさの冷凍焼成食品10に対して同一の装置で正確な凹溝11を容易に形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易に製造することができる。
【0071】
しかも、製造装置100は、一対の掬上部材70a,70bを用いて焼成体F5を掬い上げるので、従来から行われていた加熱板P上に付着している焼成体F5を掬上部材で加熱板Pから剥離させる工程(以下「剥離工程」とも称する)と同時に、凹溝形成工程を実行することができる。したがって、製造装置100は、新たな工程を加えることなく、凹溝11を形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易に製造することができる。
【0072】
また、一対の掬上部材70a,70bは、加熱板P上の焼成体F5と加熱板Pとの間に対して加熱板Pに沿った所定方向N1及びその逆方向N2からそれぞれ挿入されて焼成体F5を保持する一対の保持板70e,70fを有する。一対の掬上部材70a,70bは、一対の保持板70e,70fをアクチュエータ71にそれぞれ連結させる一対の連結板70c,70dを有する。一対の保持板70eは、所定方向N1に向かうに従って加熱板Pに接近するよう下方に傾斜して設けられる。他方の保持板70fは、逆方向N2に向かうに従って加熱板Pに接近するよう下方に傾斜して設けられる。ブレード77は、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70jの間に配置される。
【0073】
これにより、一対の掬上部材70a,70bは、焼成体F5を掬い上げる際に、一対の保持板70e,70fにおいて焼成体F5を、上に凹の形状に折り曲げた状態で確実に保持することができる。一対の掬上部材70a,70bは、当該焼成体F5の上側板面S2に中心横断線Cを確実に形成することができる。そして、凹溝形成装置7は、形成された中心横断線C上にブレード77を確実に押し付けることができる。したがって、製造装置100は、焼成体F5の上側板面S2の中心を通るような正確な凹溝11を容易且つ確実に形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易且つ確実に製造することができる。
【0074】
また、一対の掬上部材70a,70bは、一対の保持板70e,70fの各先端部70i,70jの所定方向N1における間隔D2が、焼成体F5の所定方向N1における長さD1よりも長い開状態から、各先端部70i,70jが焼成体F5と加熱板Pとの間に挿入され、且つ、各先端部70i,70jの間隔D2が焼成体F5の長さD1よりも短い所定距離となる閉状態まで移動することによって、焼成体F4を掬い上げる。
【0075】
これにより、一対の掬上部材70a,70bは、焼成体F5の下側板面S1全体を加熱板Pから確実に剥離させることができるので、焼成体F5を崩すことなく焼成体F5を確実に掬い上げることができる。したがって、製造装置100は、焼成体F5の上側板面S2の中心を通るような正確な凹溝11を容易且つ更に確実に形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易且つ更に確実に製造することができる。
【0076】
また、ブレード77は、一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2よりも上方から下降して上側板面S2に押し付けられることによって、凹溝11を形成する。
【0077】
これにより、ブレード77は、掬い上げられた焼成体F5の側方からブレード77を投入する場合よりも、製造装置100の小型化に貢献できる共に、当該焼成体F5に形成された中心横断線C上に対して確実に凹溝11を形成することができる。したがって、製造装置100は、焼成体F5の上側板面S2の中心を通るような正確な凹溝11を更に容易且つ更に確実に形成することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を更に容易且つ更に確実に製造することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造方法は、被焼成材料F1を加熱板P上に供給する材料供給工程と、被焼成材料F1を加熱することにより、少なくとも一方の板面が焼成された板状の焼成体F5を形成する焼成工程と、を有する。冷凍焼成食品10の製造方法は、焼成体F5を一対の掬上部材70a,70bにより掬い上げ、掬い上げられた焼成体F5の上側板面S2にブレード77を押し付けて上側板面S2を横断する凹溝11を上側板面S2に形成する凹溝形成工程を有する。冷凍焼成食品10の製造方法は、凹溝11が形成された焼成体F6を凍結させる冷凍工程を有する。
【0079】
これにより、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造方法は、焼成体F5の上側板面S2の中心を通るような正確な凹溝11を容易に形成することができ、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を容易に製造することができる。
【0080】
図14は、複数の焼成体F6が同時に製造される場合における凹溝形成装置7を説明する図である。
【0081】
なお、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、加熱板Pの幅方向に沿って複数の被焼成材料F1を配置して、複数の焼成体F6を同時に製造することができる。この場合、加熱板Pの幅方向に沿った長さは、加熱板P1枚当たり複数の被焼成材料F1を配置可能な長さとする。材料供給装置1及び整形装置2は、同時に製造される焼成体F6の数に合わせて、加熱板Pの幅方向に沿って複数配置される。凹溝形成装置7は、材料供給装置1及び整形装置2と同様に、加熱板Pの幅方向に沿って複数配置されてもよいし、
図14に示すように構成されてもよい。
【0082】
凹溝形成装置7の下方に位置する加熱板Pには、加熱板Pの幅方向Wに沿って複数の焼成体F5が配置される。
図14に示す凹溝形成装置7では、アクチュエータ71と、支持軸72と、昇降板73と、アクチュエータ74と、支持板75と、アクチュエータ78とが、焼成体F6を同時に製造可能で且つ装置の簡素化のため、加熱板P上の複数の焼成体F5に対して共通化された構成となっている。
図14に示す凹溝形成装置7は、一対の掬上部材70a,70b及びブレード77が、同時に製造される焼成体F6の数に合わせて、加熱板Pの幅方向Wに沿って複数配置される。複数対の掬上部材70a,70bのそれぞれにおいて、一方の掬上部材70aと他方の掬上部材70bとは、搬送方向Mに並んで配置される。
【0083】
これにより、複数対の掬上部材70a,70bのそれぞれは、搬送方向Mに沿って開閉動作を行うことができるので、加熱板Pの幅方向Wに沿って開閉動作を行う場合よりも、隣接する他の掬上部材70a,70bと干渉し難くなる。したがって、製造装置100は、複数対の掬上部材70a,70bが幅方向Wに沿って開閉動作を行う場合よりも多くの焼成体F6を同時に製造することができる。よって、本実施形態に係る冷凍焼成食品10の製造装置100は、均等な大きさに分割可能な冷凍焼成食品10を更に容易に製造することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、
図14に示すように、一方の掬上部材70aと他方の掬上部材70bとが、搬送方向Mに並んで配置されているが、搬送方向Mに並んで配置されていなくてもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0086】
7…凹溝形成装置、10…冷凍焼成食品、11…凹溝、70a,70b…掬上部材、70c,70d…連結板、70e,70f…保持板、70i,70j…先端部、71…アクチュエータ(掬上部材駆動部)、74…アクチュエータ(掬上部材駆動部)、77…ブレード、78…アクチュエータ(ブレード駆動部)、100…製造装置、D1…焼成体の長さ、D2…間隔、F1,F2…被焼成材料(材料)、F4~F6…焼成体、M…搬送方向、N1…所定方向、N2…逆方向、P…加熱板、S2…上側板面(板面)、W…幅方向