(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111285
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】管理装置および管理方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/38 20180101AFI20230803BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20230803BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230803BHJP
F24F 11/58 20180101ALI20230803BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F11/32
F25B49/02 570Z
F24F11/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013070
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 定康
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA31
3L260CB68
3L260CB70
3L260CB86
3L260EA01
(57)【要約】
【課題】耐久部品の交換時期を精度よく予測する。
【解決手段】管理装置210は、空気調和装置110の耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置の定格能力と、耐久部品が故障したときの運転状態と、故障した耐久部品の識別情報とを取得する第1取得部222と、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき、耐久部品の故障が推測される運転状態の限界値を決定する決定部224と、複数の空気調和装置それぞれから、空気調和装置の定格能力と、空気調和装置の運転状態とを取得する第2取得部228と、複数の空気調和装置それぞれから取得した運転状態と、複数の空気調和装置それぞれの定格能力と、運転状態の限界値とに基づいて、複数の空気調和装置それぞれの耐久部品の交換時期を管理する管理部230と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気調和装置とネットワークを介して通信可能に接続され、前記複数の空気調和装置に設けられた少なくとも1種類の耐久部品の交換時期を管理する管理装置であって、
前記複数の空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置の前記耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置から、当該空気調和装置の定格能力と、前記耐久部品が故障したときの当該空気調和装置の運転状態のうち前記耐久部品の故障に関連する運転状態と、前記故障した耐久部品の識別情報と、を取得する第1取得部と、
前記耐久部品の種類および前記空気調和装置の定格能力ごとに、前記耐久部品が故障したときの前記運転状態を分類して蓄積し、蓄積した前記運転状態に基づき、前記耐久部品の故障が推測される前記運転状態の限界値を決定する決定部と、
前記複数の空気調和装置それぞれから、前記空気調和装置の定格能力と、前記空気調和装置の運転状態とを取得する第2取得部と、
前記複数の空気調和装置それぞれから取得した運転状態と、前記複数の空気調和装置それぞれの定格能力と、前記運転状態の限界値とに基づいて、前記複数の空気調和装置それぞれの前記耐久部品の交換時期を管理する管理部と、
を備える、管理装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、前記故障した耐久部品が設けられた空気調和装置の空調負荷を取得し、
前記決定部は、前記耐久部品の種類および前記空気調和装置の定格能力ごとに分類した後に、前記空調負荷ごとに、前記耐久部品が故障したときの前記運転状態を分類して蓄積し、蓄積した前記運転状態に基づき前記限界値を決定する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記空気調和装置は、ガスエンジン本体を備え、
前記第1取得部は、前記故障した耐久部品が設けられた空気調和装置の前記ガスエンジン本体のエンジン負荷を取得し、
前記決定部は、前記耐久部品の種類および前記空気調和装置の定格能力ごとに分類した後に、前記空調負荷ごとに分類し、さらに、前記エンジン負荷ごとに、前記耐久部品が故障したときの前記運転状態を分類して蓄積し、蓄積した前記運転状態に基づき前記限界値を決定する、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記耐久部品の故障に関連する運転状態は、前記ガスエンジン本体の回転数、前記空気調和装置の発停頻度、および、前記空気調和装置の累積運転時間のうちのいずれか1または複数である、請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
前記耐久部品は、前記ガスエンジン本体を起動させるスタータモータであり、
前記耐久部品の故障に関連する運転状態は、クランキング時の前記ガスエンジン本体の回転数、前記スタータモータに印加される電流値、前記スタータモータによる前記ガスエンジン本体の起動時間のうちのいずれか1または複数である、請求項3に記載の管理装置。
【請求項6】
前記耐久部品は、前記ガスエンジン本体に設けられた点火プラグへ電圧を供給するイグニッションコイルであり、
前記耐久部品の故障に関連する運転状態は、前記空気調和装置の累積運転時間である、請求項3に記載の管理装置。
【請求項7】
前記耐久部品の故障に関連する運転状態は、前記空気調和装置の発停頻度、および、前記空気調和装置の累積運転時間のうちのいずれか一方または両方である、請求項1または2に記載の管理装置。
【請求項8】
前記決定部によって蓄積された前記運転状態のばらつきが所定範囲外となった場合に、前記蓄積される前記運転状態のばらつきが所定範囲内となるように、前記決定部が分類する前記空気調和装置の空調負荷の範囲を更新する更新部を備える、請求項2から7のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
複数の空気調和装置に設けられた少なくとも1種類の耐久部品の交換時期を管理する管理方法であって、
前記複数の空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置の前記耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置から、当該空気調和装置の定格能力と、前記耐久部品が故障したときの当該空気調和装置の運転状態のうち前記耐久部品の故障に関連する運転状態と、前記故障した耐久部品の識別情報と、を取得する処理と、
前記耐久部品の種類および前記空気調和装置の定格能力ごとに、前記耐久部品が故障したときの前記運転状態を分類して蓄積し、蓄積した前記運転状態に基づき、前記耐久部品の故障が推測される前記運転状態の限界値を決定する処理と、
前記複数の空気調和装置それぞれから、前記空気調和装置の定格能力と、前記空気調和装置の運転状態と、を取得する処理と、
前記複数の空気調和装置それぞれから取得した運転状態と、前記複数の空気調和装置それぞれの定格能力と、前記運転状態の限界値とに基づいて、前記複数の空気調和装置それぞれの前記耐久部品の交換時期を管理する処理と、
を含む、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空気調和装置を管理する管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスエンジンによって駆動される圧縮機を有する室外機を備えた空気調和装置(ガスヒートポンプ(GHP)エアコン)が広く利用されている(例えば、特許文献1)。GHPエアコンには、消耗品(例えば、エンジンオイル、オイルフィルタ、点火プラグ)が含まれる。このため、作業者は、GHPエアコンの消耗品のメンテナンス作業(例えば、エンジンオイルの補充や交換、オイルフィルタの交換、点火プラグの点検や交換等)を定期的に行い、故障前に予め消耗品を交換等している。
【0003】
一方、消耗品以外の部品(以下、「耐久部品」という。)は、空気調和装置のライフスパン中に交換しなくてもよい耐久性を有するように設計されている。しかし、耐久部品は、消耗品よりも故障する頻度は低いものの、使用環境などの偶発的な要因により、空気調和装置のライフスパン中に、稀に故障する場合がある。このため、従来の耐久部品のメンテナンスでは、耐久部品の故障前に定期的に交換するのではなく、耐久部品が実際に故障した後に、故障した耐久部品を作業者によって修理または交換していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、消耗品以外の耐久部品が故障した場合、故障した耐久部品が作業者によって交換されるまで、空気調和装置を利用することができない。このため、空気調和装置の利用者が不便に感じてしまう事態が生じていた。
【0006】
そこで、耐久部品の故障前に耐久部品を交換する方法として、例えば、複数の空気調和装置の過去の運転実績に基づいて、耐久部品の故障が発生するまでの空気調和装置の累積運転時間の平均値を予め求めておき、個々の空気調和装置の累積運転時間が、上記故障が発生する累積運転時間の平均値に到達する直前に、当該耐久部品を交換する方法が考えられる。
【0007】
しかし、耐久部品が故障するまでの時間(寿命)は、上記の累積運転時間のみならず、空気調和装置の定格能力等によって変動する。したがって、累積運転時間のみに基づいて耐久部品の交換時期を一律に判定すると、適切な交換時期を判定できないという問題があった。例えば、耐久部品がさほど劣化していないにも拘わらず、交換時期に到達したと誤判定してしまうと、故障するまでにまだ十分に使用可能な耐久部品を無駄に交換・廃棄し、交換作業コストも増大するという問題がある。一方、判定された交換時期が実際の故障よりも遅れると、故障による空気調和装置の稼働停止を予防することができず、利用者が不便に感じてしまうという問題が生じる。
【0008】
したがって、相異なる使用環境下で稼働している複数の空気調和装置において、耐久部品の不慮の故障に伴う稼働停止を予防しつつ、各空気調和装置の耐久部品の交換時期を適切に判定することが可能な技術の開発が希求されていた。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、空気調和装置の耐久部品の交換時期を精度よく予測することが可能な管理装置および管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の管理装置は、複数の空気調和装置とネットワークを介して通信可能に接続され、複数の空気調和装置に設けられた少なくとも1種類の耐久部品の交換時期を管理する管理装置であって、複数の空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置の耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置から、当該空気調和装置の定格能力と、耐久部品が故障したときの当該空気調和装置の運転状態のうち耐久部品の故障に関連する運転状態と、故障した耐久部品の識別情報と、を取得する第1取得部と、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき、耐久部品の故障が推測される運転状態の限界値を決定する決定部と、複数の空気調和装置それぞれから、空気調和装置の定格能力と、空気調和装置の運転状態とを取得する第2取得部と、複数の空気調和装置それぞれから取得した運転状態と、複数の空気調和装置それぞれの定格能力と、運転状態の限界値とに基づいて、複数の空気調和装置それぞれの耐久部品の交換時期を管理する管理部と、を備える。
【0011】
また、第1取得部は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置の空調負荷を取得し、決定部は、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに分類した後に、空調負荷ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき限界値を決定してもよい。
【0012】
また、空気調和装置は、ガスエンジン本体を備え、第1取得部は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置のガスエンジン本体のエンジン負荷を取得し、決定部は、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに分類した後に、空調負荷ごとに分類し、さらに、エンジン負荷ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき限界値を決定してもよい。
【0013】
また、耐久部品の故障に関連する運転状態は、ガスエンジン本体の回転数、空気調和装置の発停頻度、および、空気調和装置の累積運転時間のうちのいずれか1または複数であってもよい。
【0014】
また、耐久部品は、ガスエンジン本体を起動させるスタータモータであり、耐久部品の故障に関連する運転状態は、クランキング時のガスエンジン本体の回転数、スタータモータに印加される電流値、スタータモータによるガスエンジン本体の起動時間のうちのいずれか1または複数であってもよい。
【0015】
また、耐久部品は、ガスエンジン本体に設けられた点火プラグへ電圧を供給するイグニッションコイルであり、耐久部品の故障に関連する運転状態は、空気調和装置の累積運転時間であってもよい。
【0016】
また、耐久部品の故障に関連する運転状態は、空気調和装置の発停頻度、および、空気調和装置の累積運転時間のうちのいずれか一方または両方であってもよい。
【0017】
また、上記管理装置は、決定部によって蓄積された運転状態のばらつきが所定範囲外となった場合に、蓄積される運転状態のばらつきが所定範囲内となるように、決定部が分類する空気調和装置の空調負荷の範囲を更新する更新部を備えてもよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の管理方法は、複数の空気調和装置に設けられた少なくとも1種類の耐久部品の交換時期を管理する管理方法であって、複数の空気調和装置のうち少なくとも1つの空気調和装置の耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置から、当該空気調和装置の定格能力と、耐久部品が故障したときの当該空気調和装置の運転状態のうち耐久部品の故障に関連する運転状態と、故障した耐久部品の識別情報と、を取得する処理と、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき、耐久部品の故障が推測される運転状態の限界値を決定する処理と、複数の空気調和装置それぞれから、空気調和装置の定格能力と、空気調和装置の運転状態と、を取得する処理と、複数の空気調和装置それぞれから取得した運転状態と、複数の空気調和装置それぞれの定格能力と、運転状態の限界値とに基づいて、複数の空気調和装置それぞれの耐久部品の交換時期を管理する処理と、を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐久部品の交換時期を精度よく予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施形態に係る空気調和システムの接続関係を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る空気調和装置を説明する図である。
【
図4】スタータモータのクランキング時のガスエンジン本体の回転数と運転時間との関係を説明する図である。
【
図5】スタータモータに印加される電流値および起動時間を説明する図である。
【
図6】本実施形態に係る限界値決定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る部品管理処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
[空気調和システム100]
図1は、本実施形態に係る空気調和システム100の接続関係を説明する図である。
図1に示すように、空気調和システム100は、複数の空気調和装置110と、管理装置210とを含む。
【0023】
空気調和装置110は、施設10(1つの建物)に設置される。空気調和装置110は、施設10内(屋内)の空気の温度を調整する。施設10は、ホームセンター、ショッピングセンター等の商業ビル、会社が事業所を構えるオフィスビル、学校等である。1つの施設10には、1または複数の空気調和装置110が設置される。
【0024】
管理装置210は、空気調和システム100に含まれる複数の空気調和装置110とネットワーク12を介して通信可能に接続される。管理装置210は、空気調和システム100に含まれる複数の空気調和装置110を管理する。
【0025】
以下、空気調和装置110および管理装置210について説明する。
【0026】
[空気調和装置110]
図2は、本実施形態に係る空気調和装置110を説明する図である。
図2に示すように、空気調和装置110は、リモートコントローラ112と、室外機114と、室内機116と、冷媒循環路118と、室外制御部120と、室内制御部122とを備える。
【0027】
リモートコントローラ112は、ユーザの操作入力を受け付ける。リモートコントローラ112に入力された情報は、後述する室内制御部122に送信される。
【0028】
室外機114は、屋外に設けられる。室内機116は、屋内に設けられる。本実施形態に係る空気調和装置110は、1または複数の室内機116を備える。
【0029】
冷媒循環路118は、冷媒が循環する流路である。冷媒循環路118は、室外機114および室内機116に冷媒を循環させる。
【0030】
室外制御部120(制御部)は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成される。室外制御部120は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。室外制御部120は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して室外機114全体を管理および制御する。
【0031】
室外制御部120は、室内制御部122と通信を確立する。室外制御部120は、室内制御部122を通じて、運転開始の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、後述するスタータモータ154を回転させて、後述するガスエンジン本体152を起動し、後述する室外送風機134を動作させる。また、室外制御部120は、室内制御部122を通じて、運転停止の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、スタータモータ154の動作を停止させて、ガスエンジン本体152の動作を停止させ、室外送風機134の動作を停止させる。
【0032】
また、本実施形態において、室外制御部120は、管理装置210と通信を確立する。
【0033】
室内制御部122は、CPUを含む半導体集積回路で構成される。室内制御部122は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。室内制御部122は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して室内機116全体を管理および制御する。室内制御部122は、室内機116ごとに設けられる。
【0034】
室内制御部122は、リモートコントローラ112が受け付けたユーザの操作入力に対応する信号を取得する。室内制御部122は、運転開始の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、後述する室内送風機182を動作させる。また、室内制御部122は、運転停止の操作入力を受け付けた旨の信号を取得すると、室内送風機182の動作を停止させる。
【0035】
続いて、室外機114および室内機116について具体的に説明する。
【0036】
[室外機114]
室外機114は、四方弁130と、室外熱交換器132と、室外送風機134と、暖房用膨張弁136と、圧縮機140と、アキュムレータ142と、エンジンユニット150とを含む。
【0037】
四方弁130は、冷媒入口130a、冷媒出口130b、第1ポート130c、および、第2ポート130dを有する。四方弁130の第1ポート130cおよび第2ポート130dは、冷媒循環路118に接続される。空気調和装置110を冷房として機能させる場合、四方弁130は、冷媒入口130aと第1ポート130cとを連通させ、冷媒出口130bと第2ポート130dとを連通させる。空気調和装置110を暖房として機能させる場合、四方弁130は、冷媒入口130aと第2ポート130dとを連通させ、冷媒出口130bと第1ポート130cとを連通させる。
【0038】
室外熱交換器132は、冷媒循環路118に設けられる。室外熱交換器132は、冷媒循環路118を流れる冷媒と、屋外の空気とで熱交換を行う。
【0039】
室外送風機134は、室外熱交換器132に空気を送る。室外送風機134は、例えば、ファンで構成される。室外送風機134は、室外熱交換器132による屋外の空気と冷媒との熱交換を促進させる。
【0040】
暖房用膨張弁136は、冷媒循環路118における、室外熱交換器132と、後述する室内機116(室内膨張弁190)との間に設けられる。暖房用膨張弁136は、暖房時、空気調和装置110を暖房として機能させるため、減圧機構として作動する。また、暖房用膨張弁136は、冷房時、全開となり、室内機116へ向かう凝縮した冷媒(液)の抵抗にならないようにしている。
【0041】
圧縮機140は、冷媒を圧縮する。圧縮機140の吐出側は、四方弁130の冷媒入口130aに接続される。圧縮機140の吸入側は、四方弁130の冷媒出口130bに接続される。圧縮機140は、四方弁130の冷媒出口130bから吸入した冷媒を圧縮して、四方弁130の冷媒入口130aに吐出する。したがって、圧縮機140が駆動されることにより、冷媒循環路118を冷媒が循環する。
【0042】
アキュムレータ142は、四方弁130の冷媒出口130bと、圧縮機140の吸入側との間に設けられる。アキュムレータ142は、気液分離装置である。アキュムレータ142は、蒸発器(室外熱交換器132または室内熱交換器180)において蒸発しきれなかった冷媒(液体)を、冷媒(気体)から分離する。
【0043】
エンジンユニット150は、ガスエンジン本体152と、スタータモータ154と、イグニッションコイル156と、点火プラグ158とを含む。
【0044】
ガスエンジン本体152は、燃料ガスを燃焼させ、これにより得られる動力を圧縮機140に出力する。
【0045】
スタータモータ154(耐久部品)は、ガスエンジン本体152の起動時にガスエンジン本体152のクランクシャフトを回転させる(クランキング)。スタータモータ154は、電力によって回転する。
【0046】
イグニッションコイル156(耐久部品)は、点火プラグ158に高電圧を供給する。
【0047】
イグニッションコイル156によって高電圧が供給されることにより、点火プラグ158は、ガスエンジン本体152内の混合気(燃料ガスおよび空気)に点火する。
【0048】
[室内機116]
図2に示すように、1または複数の室内機116は、冷媒循環路118における、室外熱交換器132(暖房用膨張弁136)と、四方弁130の第2ポート130dとの間に設けられる。
【0049】
室内機116は、室内熱交換器180と、室内送風機182と、室内膨張弁190とを含む。
【0050】
室内熱交換器180は、冷媒循環路118における、室外熱交換器132と、四方弁130の第2ポート130dとの間に設けられる。室内熱交換器180は、冷媒循環路118を流れる冷媒と、屋内の空気とで熱交換を行う。室内送風機182は、室内熱交換器180に空気を送る。室内送風機182は、例えば、ファンで構成される。室内送風機182は、室内熱交換器180による屋内の空気と冷媒との熱交換を促進させる。
【0051】
室内膨張弁190は、冷媒循環路118における室外熱交換器132と室内熱交換器180との間に設けられる。室内膨張弁190は、冷媒を減圧する。
【0052】
[管理装置210]
図3は、管理装置210の機能ブロック図である。本実施形態において、管理装置210は、複数の空気調和装置110に設けられた少なくとも1種類の耐久部品の交換時期を管理する。耐久部品は、定期的に交換が為される消耗品以外の部品である。耐久部品は、空気調和装置110のライフスパン中に交換しなくてもよい耐久性を有するように設計されている。
【0053】
図3に示すように、管理装置210は、管理制御部220と、メモリ250とを含む。
【0054】
管理制御部220は、CPUを含む半導体集積回路で構成される。管理制御部220は、ROMからCPUを動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出す。管理制御部220は、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働して管理装置210全体を管理および制御する。
【0055】
管理制御部220は、第1取得部222、決定部224、更新部226、第2取得部228、管理部230としても機能する。
【0056】
第1取得部222は、複数の空気調和装置110の室外制御部120と通信を確立する。第1取得部222は、複数の空気調和装置110のうち少なくとも1つの空気調和装置110の耐久部品が故障した場合に、当該空気調和装置110から、当該空気調和装置110の定格能力と、当該空気調和装置110の空調負荷のレベルと、当該空気調和装置110のガスエンジン本体152のエンジン負荷と、故障値と、故障した耐久部品の識別情報と、を取得する。
【0057】
本実施形態において、空調負荷は、定格能力に対する実際の運転容量の割合に当該割合での累積運転時間を乗算した値を、定格能力に対する実際の運転容量の割合ごとに合計した値である。本実施形態において、空調負荷のレベルは、「大」、「中」、「小」に区分けされる。空調負荷「大」は、空調負荷が最も大きく、例えば、ホームセンター、ショッピングセンター等の商業ビルに設置される空気調和装置110の空調負荷を示す。空調負荷「中」は、空調負荷「大」よりも空調負荷が小さく、例えば、会社が事業所を構えるオフィスビルに設置される空気調和装置110の空調負荷を示す。空調負荷「小」は、空調負荷「中」よりも空調負荷が小さく、例えば、学校に設置される空気調和装置110の空調負荷を示す。
【0058】
故障値は、耐久部品が故障しときの空気調和装置110の運転状態である。ここで、運転状態は、耐久部品の故障に関連する運転状態である。
【0059】
例えば、耐久部品がスタータモータ154である場合、運転状態は、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数、スタータモータ154に印加される電流値、および、スタータモータ154によるガスエンジン本体152の起動時間のうちのいずれか1または複数である。クランキング時のガスエンジン本体152の回転数は、スタータモータ154によってガスエンジン本体152がクランキングされる際のガスエンジン本体152の回転数であり、ガスエンジン本体152が起動する前の回転数である。
【0060】
図4は、スタータモータ154のクランキング時のガスエンジン本体152の回転数と運転時間との関係を説明する図である。
図4中、縦軸は、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数を示す。
図4中、横軸は、運転時間を示す。
【0061】
スタータモータ154に設けられた軸受は、運転時間の経過に伴って劣化する。このため、
図4に示すように、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数は、累積運転時間が長くなるほど低下する。
【0062】
図5は、スタータモータ154に印加される電流値、および、電流印加開始からの経過時間を説明する図である。
図5中、縦軸は、スタータモータ154に印加される電流値を示す。
図5中、横軸は、電流印加開始からの経過時間を示す。また、
図5中、実線は、劣化前の電流値の経時変化を示す。破線は、劣化後の電流値の経時変化を示す。
【0063】
図5に示すように、スタータモータ154に印加される電流値は、スタータモータ154の劣化に伴って増加する。また、スタータモータ154によるガスエンジン本体152の起動時間は、スタータモータ154の劣化に伴って長くなる。なお、起動時間は、スタータモータ154に電流が印加されてから(クランキングが開始されてから)ガスエンジン本体152が起動するまでの時間である。
【0064】
本実施形態では、スタータモータ154の運転状態として、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数を例に挙げる。
【0065】
また、耐久部品がイグニッションコイル156である場合、運転状態は、空気調和装置110の累積運転時間である。
【0066】
図3に戻って説明すると、決定部224は、耐久部品の種類(耐久部品の識別情報)および空気調和装置110の定格能力ごとに、故障値を分類する。例えば、空気調和装置110の定格能力が6種類ある場合、決定部224は、故障が生じた空気調和装置110が6種類のうちのどの定格能力であるかを取得する。
【0067】
そして、決定部224は、耐久部品の種類および空気調和装置110の定格能力で分類した後に、故障が生じた空気調和装置110の空調負荷のレベルごとに故障値を分類する。具体的に説明すると、決定部224は、故障が生じた空気調和装置110の空調負荷が「大」、「中」、「小」のうちのいずれかであるかを取得する。例えば、決定部224は、故障が生じた空気調和装置110がどの施設10に設けられているかを取得してもよい。この場合、決定部224は、故障が生じた空気調和装置110が商業ビルに設けられている場合、空調負荷「大」を取得する。また、決定部224は、故障が生じた空気調和装置110がオフィスビルに設けられている場合、空調負荷「中」を取得する。決定部224は、故障が生じた空気調和装置110が学校に設けられている場合、空調負荷「小」を取得する。
【0068】
続いて、決定部224は、耐久部品の種類および空気調和装置110の定格能力ごとに分類した後に、空調負荷のレベルごとに分類し、さらに、エンジン負荷ごとに、故障値を分類する。決定部224は、故障が生じた空気調和装置110のエンジン負荷を取得する。
【0069】
そして、決定部224は、耐久部品が故障する度に、耐久部品の識別情報、空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、および、エンジン負荷を取得し、分類先に故障値を蓄積する。
【0070】
決定部224は、蓄積した故障値に基づき、限界値を決定する。限界値は、耐久部品の故障が推測される運転状態である。決定部224は、例えば、蓄積した故障値の平均値を限界値とする。
【0071】
そして、決定部224は、耐久部品の種類、空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、および、エンジン負荷と、限界値とが関連付けられた限界値情報(故障値情報)を作成する。作成された限界値情報は、後述するメモリ250に保持される。
【0072】
更新部226は、決定部224によって蓄積された故障値のばらつきが所定範囲外となった場合に、蓄積される故障値のばらつきが所定範囲内となるように、決定部224が分類する、空調負荷の範囲、および、エンジン負荷の範囲のうちのいずれか1または複数の範囲を更新する。所定範囲は、例えば、平均値の±10%の範囲である。
【0073】
第2取得部228は、複数の空気調和装置110の室外制御部120と通信を確立する。第2取得部228は、複数の空気調和装置110それぞれから、空気調和装置110の定格能力と、空調負荷のレベルとを取得する。また、第2取得部228は、複数の空気調和装置110それぞれから、エンジン負荷と、空気調和装置110の運転状態とを定期的に取得する。換言すれば、第2取得部228は、耐久部品ごとに運転状態を監視する。
【0074】
管理部230は、複数の空気調和装置110それぞれから取得した、複数の空気調和装置110それぞれの定格能力と、空調負荷のレベルと、エンジン負荷と、空気調和装置110の運転状態と、限界値とに基づいて、複数の空気調和装置110それぞれの耐久部品の交換時期を管理する。
【0075】
本実施形態において、管理部230は、取得された空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、エンジン負荷、および、耐久部品の種類に基づき、メモリ250に保持された限界値情報を抽出する。そして、管理部230は、抽出した限界値情報を参照し、取得された運転状態に基づき、耐久部品の交換時期を推定する。
【0076】
例えば、管理部230は、取得された空気調和装置110の運転状態から、運転状態の推移を耐久部品ごとに推定する。管理部230は、取得された空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、エンジン負荷、および、耐久部品の種類に基づき、メモリ250に保持された限界値情報を抽出する。管理部230は、限界値情報を参照し、運転状態の推移に基づき、限界値に到達すると推測される日時(交換時期)を耐久部品ごとに決定する。そして、管理部230は、決定した日時を報知する(例えば、管理装置210に設けられた表示装置に表示させる)。
【0077】
メモリ250は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成される。メモリ250は、管理制御部220に用いられるプログラムや各種データを記憶する。本実施形態において、メモリ250は、限界値情報を記憶する。
【0078】
[管理方法]
続いて、管理装置210による管理方法について説明する。本実施形態に係る管理方法は、限界値決定処理および部品管理処理を含む。以下、限界値決定処理と、部品管理処理とについて詳述する。
【0079】
[限界値決定処理]
図6は、本実施形態に係る限界値決定処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態において、限界値決定処理は、複数の空気調和装置110のうちの、少なくとも1つ空気調和装置110に設けられた耐久部品が故障した場合に開始される。
【0080】
[定格能力取得処理S110]
第1取得部222は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置110の定格能力を取得する。
【0081】
[空調負荷取得処理S112]
第1取得部222は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置110の空調負荷のレベルを取得する。
【0082】
[エンジン負荷取得処理S114]
第1取得部222は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置110のガスエンジン本体152のエンジン負荷を取得する。
【0083】
[識別情報取得処理S116]
第1取得部222は、故障した耐久部品の識別情報を取得する。
【0084】
[故障値取得処理S118]
第1取得部222は、故障値を取得する。例えば、故障した耐久部品がスタータモータ154である場合、第1取得部222は、故障した際の、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数を取得する。また、例えば、故障した耐久部品がイグニッションコイル156である場合、第1取得部222は、故障した際の、空気調和装置110の運転時間を取得する。
【0085】
[故障値蓄積処理S120]
決定部224は、定格能力取得処理S110で取得した、空気調和装置110の定格能力、空調負荷取得処理S112で取得した空調負荷、エンジン負荷取得処理S114で取得したエンジン負荷、および、識別情報取得処理S116で取得した耐久部品の識別情報に基づき、分類先を特定し、特定した分類先に、故障値取得処理S118で取得した故障値を蓄積する。
【0086】
[ばらつき判定処理S122]
更新部226は、蓄積された故障値のばらつきが、所定範囲内であるか否かを判定する。その結果、所定範囲内ではないと判定した場合(S122におけるNO)、更新部226は、分類更新処理S124に処理を移す。一方、所定範囲内であると判定した場合(S122におけるYES)、更新部226は、限界値決定処理S126に処理を移す。
【0087】
[分類更新処理S124]
更新部226は、蓄積された故障値のばらつきが所定範囲内となるように、分類する空気調和装置110の空調負荷の範囲、および、エンジン負荷の範囲のうちのいずれか1または複数を更新する。
【0088】
[限界値決定処理S126]
決定部224は、蓄積した故障値に基づき、限界値を決定する。
【0089】
[限界値情報作成処理S128]
決定部224は、空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、エンジン負荷、および、耐久部品の識別情報(分類先)と、限界値とが関連付けられた限界値情報を作成する。また、決定部224は、作成した限界値情報をメモリ250に上書きして、当該限界値決定処理を終了する。
【0090】
[部品管理処理]
図7は、本実施形態に係る部品管理処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって部品管理処理が繰り返し遂行される。
【0091】
[現在運転状態取得処理S210]
第2取得部228は、複数の空気調和装置110それぞれから、空気調和装置110の定格能力と、空調負荷のレベルと、エンジン負荷と、空気調和装置110の運転状態と、を取得する。
【0092】
[推移推定処理S212]
管理部230は、現在運転状態取得処理S210において取得した空気調和装置110の現在の運転状態に基づき、空気調和装置110の運転状態の推移を耐久部品ごとに推定する。
【0093】
[交換時期推定処理S214]
管理部230は、取得された空気調和装置110の定格能力、空調負荷のレベル、エンジン負荷、および、耐久部品の種類に基づき、メモリ250に保持された限界値情報を抽出する。そして、管理部230は、限界値情報を参照し、推移推定処理S212において推定した運転状態の推移と、限界値とを比較して、交換時期を耐久部品ごとに推定する。
【0094】
[報知処理S216]
管理部230は、交換時期推定処理S214において推定された、耐久部品ごとの交換時期を表示装置に表示させ、当該部品管理処理を終了する。
【0095】
以上説明したように、本実施形態に係る管理装置210およびこれを用いた管理方法は、耐久部品の種類、空気調和装置110の定格能力、空調負荷、および、エンジン負荷に基づき、故障値を蓄積する分類先を異ならせる。
【0096】
空気調和装置110の累積運転時間のみに基づいて一律に交換時期を判定する比較例では、適切な交換時期を判定できないという問題がある。例えば、耐久部品がさほど劣化していないにも拘わらず、交換時期に到達したと誤判定してしまうと、故障するまでにまだ十分に使用可能な耐久部品を無駄に交換・廃棄し、交換作業コストも増大するという問題がある。一方、判定された交換時期が実際の故障よりも遅れると、故障による空気調和装置110の稼働停止を予防することができず、利用者が不便に感じてしまうという問題が生じる。
【0097】
これに対し、本実施形態に係る管理装置210は、耐久部品ごとに、故障値を蓄積する分類先を異ならせる。これにより、管理装置210は、限界値を耐久部品ごとに高精度に算出することができる。したがって、管理装置210は、耐久部品の交換時期を精度よく予測することが可能となる。
【0098】
また、本実施形態に係る管理装置210は、同じ耐久部品であっても、空気調和装置110の定格能力ごと、空調負荷ごと、および、エンジン負荷ごとに、故障値を蓄積する分類先を異ならせる。そして、決定部224は、分類先において蓄積された故障値に基づき、限界値を決定する。これにより、決定部224は、限界値を高精度に決定することができる。
【0099】
例えば、耐久部品としてスタータモータ154を例に挙げる。スタータモータ154の劣化度合いは、空気調和装置110の定格能力によって異なる。具体的に説明すると、スタータモータ154の劣化は、空気調和装置110の定格能力、つまり、圧縮機140の定格容量が大きいほど進行する。圧縮機140の定格容量が大きいほど、エンジン負荷(トルク)が大きくなるためである。
【0100】
このため、スタータモータ154の発停回数のみに基づいて一律に限界値を決定する比較例では、スタータモータ154が劣化していないにも拘わらず、限界値に到達したと誤判定したり、スタータモータ154が故障しているにも拘わらず、限界値には到達していないと誤判定したりするという問題が生じる。
【0101】
そこで、管理装置210は、空気調和装置110の定格能力、空調負荷、および、エンジン負荷に基づき、スタータモータ154の故障値を蓄積する分類先を異ならせる。これにより、決定部224は、スタータモータ154の限界値を高精度に決定することができる。したがって、管理部230は、スタータモータ154の交換時期を精度よく予測することが可能となる。
【0102】
また、耐久部品としてイグニッションコイル156を例に挙げると、イグニッションコイル156の劣化度合いは、点火プラグ158による点火回数や、点火時の供給電圧によって異なる。具体的に説明すると、イグニッションコイル156の劣化は、点火回数が多いほど進行し、点火時の供給電圧が高いほど進行する。供給電圧は、ガスエンジン本体152の回転数が低いほど高くなる(回転数が高いほど低くなる)。また、供給電圧は、空気調和装置110の定格能力、つまり、圧縮機140の定格容量が大きいほど高くなる。圧縮機140の定格容量が大きいほど、エンジン負荷(トルク)が大きくなるためである。
【0103】
このため、空気調和装置110の累積運転時間のみに基づいて一律に限界値を決定する比較例では、イグニッションコイル156が劣化していないにも拘わらず、限界値に到達したと誤判定したり、イグニッションコイル156が故障しているにも拘わらず、限界値には到達していないと誤判定したりするという問題が生じる。
【0104】
そこで、管理装置210は、空気調和装置110の定格能力、空調負荷、および、エンジン負荷に基づき、イグニッションコイル156の故障値を蓄積する分類先を異ならせる。これにより、決定部224は、イグニッションコイル156の限界値を高精度に決定することができる。したがって、管理部230は、イグニッションコイル156の交換時期を精度よく予測することが可能となる。
【0105】
また、上記したように、決定部224は、耐久部品の識別情報および空気調和装置110の定格能力ごとに分類した後に空調負荷ごとに分類し、さらに、エンジン負荷ごとに故障値を分類する。これにより、決定部224は、故障値のばらつきを抑えることができる。したがって、決定部224は、限界値を高精度に決定することが可能となる。
【0106】
また、上記したように、管理装置210は、更新部226を備える。これにより、決定部224は、故障値のばらつきをさらに抑えることができる。したがって、決定部224は、限界値をより高精度に決定することが可能となる。
【0107】
また、上記したように、管理装置210は、管理部230を備える。これにより、管理部230は、作業者に耐久部品の交換時期を報知することができる。したがって、作業者は、耐久部品が故障する直前に耐久部品を交換することが可能となる。このため、故障によって空気調和装置110が利用できない期間をなくすことができる。これにより、空気調和装置110の利用者が不便に感じてしまう事態を回避することが可能となる。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0109】
例えば、上述した実施形態において、耐久部品として、ガスエンジン本体152に設けられる耐久部品、具体的には、スタータモータ154およびイグニッションコイル156を例に挙げた。しかし、耐久部品は、これらに限定されない。耐久部品は、スタータモータ154およびイグニッションコイル156に加えて、または、代えて、例えば、燃料調整弁、スロットル弁、ガスエンジン本体152の吸気弁、および、ガスエンジン本体152の排気弁のうちのいずれか1または複数の機械部品であってもよい。燃料調整弁は、ガスエンジン本体152への燃料ガスの供給量を調整するための弁である。スロットル弁は、ガスエンジン本体152への空気の供給量を調整するための弁である。耐久部品が、燃料調整弁、スロットル弁、ガスエンジン本体152の吸気弁、および、ガスエンジン本体152の排気弁のうちのいずれか1または複数である場合、運転状態は、圧縮機140の回転数、圧縮機140の吐出圧、圧縮機140の吐出温度、および、圧縮機140の効率のうちのいずれか1または複数である。
【0110】
また、耐久部品は、室外送風機134の回転数を変更するためのインバータ等の電気部品であってもよい。また、空気調和装置が、電動機と、電動機によって駆動される圧縮機とを有する室外機を備えるEHPエアコンである場合、耐久部品は、室外送風機134の回転数を変更するためのインバータ、圧縮機の駆動を制御するインバータ等の電気部品であってもよい。インバータは雰囲気温度が高くなるとコンデンサ等の電子部品の劣化が進む。このため、耐久部品がインバータである場合、運転状態は、雰囲気温度である。例えば、故障した耐久部品がインバータである場合、第1取得部222は、故障した際の、雰囲気温度が所定温度以上となった時間の累積値を取得する。
【0111】
また、上記実施形態において、決定部224が、耐久部品の種類および空気調和装置110の定格能力ごとに分類した後に、空調負荷ごとに分類し、さらに、エンジン負荷ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき限界値を決定する場合を例に挙げた。しかし、決定部224は、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに分類した後に、空調負荷ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき限界値を決定してもよい。この場合、第1取得部222は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置110の定格能力に加えて、空調負荷を取得する。また、決定部224は、耐久部品の種類および空気調和装置の定格能力ごとに、耐久部品が故障したときの運転状態を分類して蓄積し、蓄積した運転状態に基づき、耐久部品の故障が推測される運転状態の限界値を決定してもよい。この場合、第1取得部222は、故障した耐久部品が設けられた空気調和装置110の定格能力を取得する。
【0112】
また、上記実施形態において、決定部224が空調負荷のレベルごとに故障値を分類する場合を例に挙げた。しかし、決定部224は、空調負荷ごとに故障値を分類してもよい。
【0113】
また、上記実施形態において、決定部224は、蓄積した故障値の平均値を限界値とする場合を例に挙げた。しかし、決定部224は、他の方法で限界値を決定してもよい。
【0114】
また、上記実施形態において、スタータモータ154の運転状態として、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数を例に挙げた。しかし、スタータモータ154の運転状態として、クランキング時のガスエンジン本体152の回転数に加えて、スタータモータ154に印加される電流値、および、スタータモータ154によるガスエンジン本体152の起動時間を用いてもよい。これにより、決定部224は、限界値をさらに高精度に決定することができる。
【0115】
また、運転状態は、耐久部品の故障に関連する運転状態であればよく、例えば、ガスエンジン本体152の回転数、単位時間あたりのガスエンジン本体152の起動回数(発停頻度)、および、空気調和装置110の累積運転時間のうちのいずれか1または複数であってもよい。
【符号の説明】
【0116】
110 空気調和装置
152 ガスエンジン本体
154 スタータモータ(耐久部品)
156 イグニッションコイル(耐久部品)
210 管理装置
222 第1取得部
224 決定部
226 更新部
228 第2取得部
230 管理部