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特開2023-111332光ファイバセンサシステムおよび光ファイバセンサ復調方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111332
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】光ファイバセンサシステムおよび光ファイバセンサ復調方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/353 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
G01D5/353 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013140
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 甫
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA10
2F103EB01
2F103EB11
2F103EC09
2F103ED25
2F103FA01
(57)【要約】
【課題】同期ずれの発生を抑えることができる光ファイバセンサシステムおよび光ファイバセンサ復調方法を得る。
【解決手段】検出した物理量に基づいて、通過する光の位相を変化させて戻り信号として周期的に送信する光ファイバセンサ22を複数有し、それぞれの光ファイバセンサ22からの戻り信号を、設定されたパルス順序で通過させるセンサ群2と、戻り信号に基づいて復調処理を行う復調処理部5とを備え、復調処理部5は、基準トリガ信号が送られると、計数値をクリアして、戻り信号に同期したクロックのパルスを計数し、処理対象の光ファイバセンサの戻り信号の先頭となる信号が復調処理部5に送られるタイミングに設定された設定値分のパルスを計数すると、トリガ信号を出力するトリガ信号生成部522と、トリガ信号が送られると復調処理を行う復調回路部525とを備えるものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出した物理量に基づいて、通過する光の位相を変化させて戻り信号として周期的に送信する光ファイバセンサを複数有し、それぞれの前記光ファイバセンサからの前記戻り信号を、設定されたパルス順序で通過させる光ファイバセンサアレイと、
前記戻り信号に基づいて復調処理を行い、前記光の位相変化量のデータを得る復調処理部とを備え、
前記復調処理部は、
前記戻り信号の先頭を規定する基準となる基準トリガ信号が入力されると、計数値をクリアして、前記戻り信号に同期したクロックのパルスを計数し、処理対象の前記光ファイバセンサの前記戻り信号の先頭となる信号が前記復調処理部に送られるタイミングに設定された設定値分の前記パルスを計数すると、トリガ信号を出力するトリガ信号生成部と、
前記トリガ信号が送られると前記復調処理を行う復調回路部と
を備える光ファイバセンサシステム。
【請求項2】
前記トリガ信号生成部は、
前記基準トリガ信号が入力されると、前記計数値をクリアして初期値に戻し、前記クロックのパルスを計数する基準トリガ同期カウンタと、
前記基準トリガ同期カウンタの前記計数値と前記設定値とを比較し、前記計数値と前記設定値とが同じ値になると前記トリガ信号を出力するトリガ信号用比較回路と
を有する請求項1に記載の光ファイバセンサシステム。
【請求項3】
前記復調処理部は、
信号間にずれが発生していると判定すると、ずれ検知信号を出力するトリガ信号監視部をさらに備える請求項1または請求項2に記載の光ファイバセンサシステム。
【請求項4】
前記復調処理部は、
初回動作における前記クロック、前記基準トリガ信号および前記戻り信号の前記タイミングに基づいて設定された前記設定値を記憶する設定値記憶部をさらに備える請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバセンサシステム。
【請求項5】
検出した物理量に基づいて、通過する光の位相を変化させて戻り信号として周期的に送信する複数の光ファイバセンサからの前記戻り信号を、設定されたパルス順序で通過させる工程と、
前記戻り信号の先頭を規定する基準となる基準トリガ信号が入力されると、計数値をクリアして、前記戻り信号に同期したクロックのパルスを計数する工程と、
処理対象の前記光ファイバセンサの前記戻り信号による先頭となる信号が復調処理を行うタイミングに設定された設定値分の前記パルスを計数すると、トリガ信号を出力する工程と、
前記トリガ信号が送られると前記復調処理を行って光の位相変化量のデータを得る工程と
を有する光ファイバセンサ復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この技術は、物理量を検出するセンサとして、光ファイバを用いる光ファイバセンサシステムおよび光ファイバセンサ復調方法に関するものである。特に、複数チャネルの光ファイバセンサで構成される光ファイバセンサアレイを用いたときの復調に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ファイバセンサシステムに関する技術の発展が目覚ましい。光ファイバセンサは、たとえば、音圧(音波)などの物理量を計測、検出などするために、光ファイバを利用したセンサである。センシングを行う光ファイバが物理量によって伸び縮みすると、光の伝搬距離が変わるため、通過する光の位相が変化する。そして、このため、基準となる位相と物理量により変化した位相との位相差に基づいて物理量の検出などを行うことができる。そして、特に、光ファイバセンサを通過して戻ってくる光から位相変化量などを復調する光ファイバセンサシステムの復調方式について、様々な手法が提案されている。
【0003】
PMDI(Path Matched Differential Interferometry)干渉型光ファイバセンサシステムにおける復調方式の一つに、PGC(Phase Generated Carrier)復調方式がある。PGC復調方式は、信号によって伸縮する光ファイバセンサに対し、狭線幅かつ連続パルス波形が出力可能な光源からの光を通過させる。そして、光ファイバセンサ前後からの反射光について、後段の補償コイルにおいて位相変調および干渉させ、得られた位相変化量を復調して、センシングに係る位相信号を得るものである。ここで、PGC復調方式における復調処理量をより抑制するため、3×3カプラ復調方式を用いたPMDI干渉型光ファイバセンサシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4844325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、光ファイバセンサを通過して得られる光に基づいて復調処理を行い、位相信号を得るためには、時分割多重で送られた戻り側の信号(干渉光または非干渉光)から、復調処理を行う対象とする光ファイバセンサからの信号における先頭などの位置(サンプリングなどのタイミング)を特定する必要がある。そこで、システムにおける処理などのタイミングの基となるクロックと戻り信号とを同期させた上で、自走カウンタが、戻り信号の周期に合わせて計数値が循環するようにして、クロックにおけるパルスを自動的に計数する。そして、ある計数値になったタイミングで出力されるトリガ信号に基づき、復調回路は、処理対象となる戻りパルス光信号の目印となる先頭位置を特定して復調処理を行う。
【0006】
しかし、外部から電気的または電磁的雑音などが混入し、クロックが一時的に途切れ、クロックのパルスの個数が減るなどすると、本来の計数値との間にずれが生じる。このため、トリガ信号および戻り信号の位置などの信号において時間的な関係がずれる事象(以下、同期ずれ)が発生する。同期ずれが発生して、カウンタが計数する計数値のずれが継続すると、復調処理において正確なタイミングで戻り信号が得られず、正常に位相変化量を復調することができなくなり、後段における整相処理の工程に影響を与えることになる。
【0007】
そこで、同期ずれの発生を抑えることができる光ファイバセンサシステムおよび光ファイバセンサ復調方法の実現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示に係る光ファイバセンサシステムは、検出した物理量に基づいて、通過する光の位相を変化させて戻り信号として周期的に送信する光ファイバセンサを複数有し、それぞれの光ファイバセンサからの戻り信号を、設定されたパルス順序で通過させる光ファイバセンサアレイと、戻り信号に基づいて復調処理を行い、光の位相変化量のデータを得る復調処理部とを備え、復調処理部は、戻り信号の先頭を規定する基準となる基準トリガ信号が入力されると、計数値をクリアして、戻り信号に同期したクロックのパルスを計数し、処理対象の光ファイバセンサの戻り信号の先頭となる信号が復調処理部に送られるタイミングに設定された設定値分のパルスを計数すると、トリガ信号を出力するトリガ信号生成部と、トリガ信号が送られると復調処理を行う復調回路部とを備えるものである。
【0009】
また、開示に係る光ファイバセンサ復調方法は、検出した物理量に基づいて、通過する光の位相を変化させて戻り信号として周期的に送信する複数の光ファイバセンサからの戻り信号を、設定されたパルス順序で通過させる工程と、戻り信号の先頭を規定する基準となる基準トリガ信号が入力されると、計数値をクリアして、戻り信号に同期したクロックのパルスを計数する工程と、処理対象の光ファイバセンサの戻り信号による先頭となる信号が復調処理を行うタイミングに設定された設定値分のパルスを計数すると、トリガ信号を出力する工程と、トリガ信号が送られると復調処理を行って光の位相変化量のデータを得る工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この開示によれば、復調処理部のトリガ信号生成部が、基準トリガ信号が送られてから、設定値に基づくタイミングで、トリガ信号を出力するようにした。このため、外部からのノイズ混入により信号の同期ずれが発生しても、トリガ信号のずれを抑えることができ、復調回路部は、処理対象の光ファイバセンサに係る位相変化量を復調することができる。したがって、復調処理部における同期ずれの影響が整相処理まで及ばす、精度の高いセンシング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100の構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係る復調処理基板52のトリガ信号などの生成に係る回路を中心とする構成の一例を示す図である。
図3】実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100の初回動作における復調処理部5の処理の流れを示す図である。
図4】実施の形態1に係る初回動作時における各信号の関係を示す図である。
図5】実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100のセンシング動作における復調処理部5の処理の流れを示す図である。
図6】実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100のセンシング動作において同期ずれが発生したときの各種信号の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態に係る光ファイバセンサシステムについて、図面などを参照しながら説明する。以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、以下に記載する実施の形態の全文において共通することとする。また、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。そして、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、明細書に記載された形態に限定するものではない。明細書に記載された機器がすべて含まれていなくてもよい場合がある。特に構成要素の組み合わせは、各実施の形態における組み合わせのみに限定するものではなく、他の実施の形態に記載した構成要素を別の実施の形態に適用することができる。また、添字で区別などしている複数の同種の機器などについて、特に区別したり、特定したりする必要がない場合には、符号、添字などを省略して記載する場合がある。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100の構成を示す図である。光ファイバセンサシステム100は、光ファイバを用いて物理量を検出するセンシング処理を行うシステムである。実施の形態1におけるシステムの説明においては、検出対象とする物理量は音波の音圧とし、音波を信号とする音響信号をセンシングするシステムを例に説明する。図1の光ファイバセンサシステム100は、パルス光源部1、センサ群2、遅延補償器3、受光部4、復調処理部5および整相処理部6を有する。
【0014】
パルス光源部1は、後述する復調処理部5が有する基準信号生成部51から送られる送信トリガ信号に同期して、たとえば、変調を施したパルス光(レーザ光)信号を送出する。パルス光源部1が出力したパルス光信号は、往路側伝送ファイバ101を通過して、後述するように光ファイバセンサアレイを構成する複数の光ファイバセンサ22を有するセンサ群2に送られる。
【0015】
センサ群2は、往路側伝送ファイバ101を通過したパルス光信号に、音響信号における音波の音圧に対応して位相が変化したパルス光信号などを含む戻りパルス光信号を復路側伝送ファイバ102に、設定されたパルス順序で通過させる。したがって、戻りパルス光信号には、音響信号に基づく位相変化量がデータとして重畳されることになる。センサ群2は、複数の往路側光カプラ21、複数の光ファイバセンサ22および複数の復路側光カプラ23を有する。ここで、実施の形態1の光ファイバセンサシステム100では、センサ群2における光ファイバセンサ22は、6台で構成されているものとして説明する。ただし、光ファイバセンサ22は6台に限定するものではなく、任意の台数で構成することができる。
【0016】
往路側光カプラ21(往路側光カプラ21-1~往路側光カプラ21-6)は、パルス光源部1から送られて往路側伝送ファイバ101を通過したパルス光信号を分岐する。各往路側光カプラ21を通過した光は、複数の光ファイバセンサ22に送られる。ここで、図1には往路側光カプラ21-6が設置されているが、パルス光源部1から見て、パルス光信号の伝送が最も遠い距離に位置する光ファイバセンサ22-6には、往路側光カプラ21-6が設置されなくてもよい。
【0017】
光ファイバセンサ22(光ファイバセンサ22-1~光ファイバセンサ22-6)は、センシングを行うチャネルとなり、音響信号に基づいて位相を変化させたパルス光信号を含む戻り信号である戻りパルス光信号を出力する。光ファイバセンサ22において、センシングを行う光ファイバは、たとえば、弾性円筒に巻かれている。そして、音圧により弾性円筒に歪みが生じると、光ファイバも音響信号の大きさに応じて伸縮する。このとき、光ファイバ内を通過する光の経路長(伝搬距離)が変化することで光の位相が変化して、変化した位相分に対応する音響信号の検出を行うことができる。したがって、音響信号に基づくパルス光信号の位相変化量がデータとして重畳される。
【0018】
復路側光カプラ23(復路側光カプラ23-1~復路側光カプラ23-6)は、対応する光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号を、他の戻りパルス光信号と合流させる。合流した戻りパルス光信号は、復路側伝送ファイバ102を通過して、遅延補償器3に送られる。合流した光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号は、各光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号が時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)された信号となる。したがって、各光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号は時間的に重ならない。ここで、図1には復路側光カプラ23-6が設置されているが、設置されなくてもよい。
【0019】
実施の形態1の遅延補償器3は、各光ファイバセンサ22と同じ遅延時間差をとることで、各光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号(非干渉光)より干渉光を取得する。そして、遅延補償器3は、3×3カプラを通して、パルス光の位相を+1/3πおよび-1/3πずらした2経路の戻り信号パルス光を出力する。
【0020】
受光部4は、遅延補償器3から送られる戻り信号パルス光における干渉光および非干渉光の強度を調整する。さらに、受光部4は、光信号をアナログ電気信号に変換し、復調処理部5へと出力するO/E変換器となる。
【0021】
復調処理部5は、受光部4からのアナログ電気信号を、デジタル電気信号に変換する。また、復調処理部5は、基準トリガ信号および基準クロックを生成する。さらに、復調処理部5は、デジタル電気信号から、処理対象(以下、目標という)とする光ファイバセンサ22における戻りパルス光信号の先頭位置(サンプリングを行う基準となるタイミング)を検出する。そして、復調処理部5は、先頭位置に基づいてサンプリングした信号中のデータ値から位相変化量を取得する復調処理を行う。また、復調処理部5は、位相変化量をデータとして含む位相信号を、後述する整相処理部6に出力する。復調処理部5は、図1に示すように、基準信号生成部51、復調処理基板52、外部インターフェース部53を有する。
【0022】
基準信号生成部51は、送信トリガ信号、基準トリガ信号および基準クロックを生成する。送信トリガ信号は、前述したようにパルス光源部1に送られる。基準クロックは、たとえば、10MHz程度の周波数の信号である。基準トリガ信号は、送信トリガ信号と同期して送られる信号である。基準トリガ信号は、後述する復調回路部525がセンサ群2を通過した戻りパルス光信号に係る戻り信号パルス光の先頭位置を、変換したデジタル電気信号から検出するために用いられる信号である。
【0023】
復調処理基板52は、回路などの装置が搭載された基板であり、復調処理を行う。ここで、復調処理基板52は、DSP(Digital Signal Processor)のようなデジタル信号処理に特化したソフトウェア、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム可能な論理回路を用いたハードウェアなどにより復調処理を実現することができる。
【0024】
外部インターフェース部53は、外部装置とのデータなどの入出力のインターフェースとなる装置である。外部インターフェース部53は、入力インターフェース部531および出力インターフェース部532を有する。入力インターフェース部531は、外部から復調処理部5に信号が入力されるインターフェースとなる。入力インターフェース部531は、システム利用者が後述する設定値などのデータに係る信号を入力する入力装置701と接続するインターフェースである。また、出力インターフェース部532は、復調処理部5から外部に信号を出力する際のインターフェースとなる。出力インターフェース部532は、後述するトリガ信号、クロックおよびデジタル電気信号によって示される戻りパルス光信号の位置関係を確認するためのオシロスコープ702などの表示装置と接続するインターフェースである。また、出力インターフェース部532は、復調処理部5と信号の通信が可能な外部制御装置703と接続するインターフェースである。
【0025】
整相処理部6は、復調処理部5からの位相信号に基づいて、所望の到来方位からの音を強調する整相処理を行って、音の到来方位などを検出する。
【0026】
図2は、実施の形態1に係る復調処理基板52のトリガ信号などの生成に係る回路を中心とする構成の一例を示す図である。復調処理基板52は、位相同期部521、トリガ信号生成部522、トリガ信号監視部523、設定値記憶部524および復調回路部525を有する。
【0027】
位相同期部521は、PLL回路を有し、基準信号生成部51が生成した基準クロックを逓倍したクロックを信号として生成する処理を行う。位相同期部521が基準クロックを逓倍してクロックを生成することで、戻りパルス光信号における数十nsオーダのパルス幅の中心付近を正確に検出することができる。
【0028】
設定値記憶部524は、入力装置701および入力インターフェース部531を介してシステム利用者が入力した設定値のデータを記憶する。設定値は、センサ群2を通過した戻りパルス光信号における先頭位置を規定するデータである。設定値は、オシロスコープ702に表示された波形などに基づき、パルス光源部1から復調処理部5までの伝送路を通過したパルス光信号内のパルスの伝搬遅延時間を考慮して設定される。
【0029】
トリガ信号生成部522は、復調の目標とする光ファイバセンサ22の戻りパルス光信号における先頭位置を特定するトリガ信号を生成する処理を行う。トリガ信号生成部522は、基準トリガ同期カウンタ522Aおよびトリガ信号用比較回路522Bを有する。基準トリガ同期カウンタ522Aは、クロックを計数(カウントアップ)してトリガ用計数値として出力する。基準トリガ同期カウンタ522Aは、0~nまでの計数値を循環させる。nの値は、たとえば、パルス光源部1が送出するパルス光信号の周期(センサ群2からの時分割多重された戻りパルス光信号の時間。各光ファイバセンサ22のセンシングの周期にもなる)に対応するクロックの計数分とする。したがって、基準信号生成部51が生成した基準トリガ信号の周期と基準トリガ同期カウンタ522Aの0~nまでの計数とが同期する。このため、基本的には、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数値nを計数した後、基準信号生成部51からの基準トリガ信号と位相同期部521からのクロックとが同期して入力され、次周期における計数が、初期値である計数値「0」から始まる。ただし、実施の形態1における基準トリガ同期カウンタ522Aは、基準トリガ信号が入力されると、計数値をクリアし、初期値である計数値「0」に戻して計数を再開する。したがって、実施の形態1における基準トリガ同期カウンタ522Aは、基準トリガ信号を、計数値をクリアして初期値に戻す信号として用いることになる。また、トリガ信号用比較回路522Bは、基準トリガ同期カウンタ522Aから出力された計数値が設定値記憶部524に記憶された設定値と同じ値になると、トリガ信号を出力する。ここでは、初期値となる計数値は計数値「0」とするが、任意の計数値であってもよい。
【0030】
トリガ信号監視部523は、トリガ信号を監視し、トリガ信号にずれが生じたかどうかを判定する処理を行う。トリガ信号監視部523は、トリガ信号監視用自走カウンタ523A、監視比較回路523Bおよびトリガ信号ずれ検知回路523Cを有する。トリガ信号監視用自走カウンタ523Aは、基準トリガ同期カウンタ522Aと同様に、クロックを0~nまで計数する。そして、トリガ信号監視用自走カウンタ523Aは、計数値を監視用計数値として出力する。ただし、実施の形態1のトリガ信号監視用自走カウンタ523Aは、初期状態以外においては、基準トリガ信号が入力されても、計数値を0にクリアせずに計数値nまで計数を行う点が基準トリガ同期カウンタ522Aと異なる。また、監視比較回路523Bは、トリガ信号監視用自走カウンタ523Aからの監視計数値が設定値記憶部524に記憶された設定値と同じ値になると、監視信号を出力する。そして、トリガ信号ずれ検知回路523Cは、XOR回路を有し、トリガ信号と監視信号との間にずれが生じているときにはずれ検知信号を出力する。ここで、実施の形態1では、復調処理基板52がトリガ信号監視部523を有するものとして説明するが、トリガ信号監視部523は必須ではない。
【0031】
復調回路部525は、トリガ信号に基づいて、デジタル電気信号に含まれる戻りパルス光信号における先頭位置を検出し、目標とする光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号に対応するデジタル電気信号を得る。また、復調回路部525は、目標とする光ファイバセンサ22からの戻りパルス光信号に対応するデジタル電気信号に基づく復調処理を行う。そして、復調回路部525は、復調処理して得られた目標とする光ファイバセンサ22におけるセンシングによる検出光の位相変化量をデータとして含む位相信号を出力する。
【0032】
図3は、実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100の初回動作における復調処理部5の処理の流れを示す図である。ここで、初回動作とは、システム設置時だけでなく、光ファイバセンサ22の追加など、システムの機器などに変更があって再設定を行うような場合も含むものとする。また、ここでは、入力装置701およびオシロスコープ702が復調処理部5の外部インターフェース部53に接続されているものとする。
【0033】
たとえば、システム利用者が光ファイバセンサシステム100を起動させると、復調処理部5の基準信号生成部51は、送信トリガ信号、基準トリガ信号および基準クロックを生成する(ステップS1)。基準信号生成部51が生成した信号に基づき、光ファイバセンサシステム100は動作を開始する。
【0034】
光ファイバセンサシステム100の初回動作時には、復調処理部5は、出力インターフェース部532を介して、表示に係る信号をオシロスコープ702に送り、クロック、トリガ信号および戻りパルス光信号を表示させる(ステップS2)。システム利用者は、オシロスコープ702に表示された各信号の関係に基づいて、トリガ信号生成部522がトリガ信号を出力するタイミングを設定し、入力装置701に設定値を入力する。設定値を含む信号は、入力インターフェース部531を介して、復調処理部5に入力される。復調処理部5の設定値記憶部524は、入力された設定値をデータとして記憶する(ステップS3)。そして、光ファイバセンサシステム100は、初回動作を終了する。
【0035】
図4は、実施の形態1に係る初回動作時における各信号の関係を示す図である。ここでは、システム利用者による設定値の決定について説明する。前述したように、光ファイバセンサシステム100の動作においては、復調処理部5の基準信号生成部51から送られた送信トリガ信号に基づいて、パルス光源部1はパルス光信号を送出する。ここで、初回の起動時においては、パルス光源部1は、パルス光信号を送出しない時間を設け、送信パルス間隔を広げる。これにより、戻りパルス光信号がない「歯抜け状態」となる時間ができる。デジタル電気信号におけるセンサ群2からの戻りパルス光信号の先頭位置を明確に判別することができる。そして、パルス光源部1から送出されたパルス光信号がセンサ群2の各光ファイバセンサ22を通過し、戻りパルス光信号として遅延補償器3に入力する。そして、遅延補償器3および受光部4が戻りパルス光信号を処理して得られたアナログ電気信号が復調処理部5に送られる。ここで、図4に示すデジタル電気信号に係る戻りパルス光信号について説明する。たとえば、光ファイバセンサ22-1における戻りパルス光信号のうち、参照ファイバによる参照光(非干渉光)をp11、センシングファイバによる検出光(非干渉光)をp12、遅延補償器3によって得られた干渉光をI1とする。他の光ファイバセンサ22-2~光ファイバセンサ22-6からの戻りパルス光信号についても、同様の方法で示している。
【0036】
復調処理部5においては、前述したように、基準信号生成部51が、送信トリガ信号とともに、基準トリガ信号および基準クロックを生成する。復調処理基板52は、基準トリガ信号および基準クロックに基づいて、トリガ信号およびクロックを生成する。ここで、クロックは、戻りパルス光信号におけるパルスのパルス幅の中心付近となるタイミングにパルスが立上がるように生成される。また、トリガ信号は、クロックの立下りエッジと立上りエッジが同期するように生成される。
【0037】
システム利用者は、基準トリガ信号が入力され、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数値を0にして計数を再開した後に、目標とする光ファイバセンサ22の戻りパルス光信号における先頭位置が確認されるまでのクロックのパルス数を判断する。ここで、光ファイバセンサ22-1の戻りパルス光信号に対応するデジタル電気信号が復調処理の目標であるとする。このとき、図4に示すように、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数値「6」のときに、光ファイバセンサ22-1における戻りパルス光信号の先頭となる参照光p11のデジタル電気信号が入力される。そこで、システム利用者は、入力装置701に設定値「6」を入力し、復調処理部5の設定値記憶部524は、設定値「6」をデータとして記憶する。これにより、設定値「6」が設定される。
【0038】
図5は、実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100のセンシング動作における復調処理部5の処理の流れを示す図である。たとえば、システム利用者が光ファイバセンサシステム100を起動させると、復調処理部5の基準信号生成部51は、復調処理基板52の送信トリガ信号、基準トリガ信号および基準クロックを生成する(ステップS11)。基準信号生成部51が生成した信号に基づき、光ファイバセンサシステム100は動作を開始する。
【0039】
トリガ信号生成部522は、位相同期部521が基準クロックを逓倍したクロックを計数した計数値に基づいて、トリガ信号を出力する(ステップS12)。前述したように、トリガ信号生成部522の基準トリガ同期カウンタ522Aは、クロックを計数する。基準トリガ同期カウンタ522Aは、基準トリガ信号をクリア信号として用い、基準トリガ信号が入力されると計数値「0」にクリアして計数を再開する。そして、トリガ信号用比較回路522Bは、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数した計数値が設定値記憶部524が記憶する設定値と同じ値になると、トリガ信号を出力する。
【0040】
また、トリガ信号監視部523は、信号に同期ずれが発生したかどうかを判定する(ステップS13)。トリガ信号監視部523は、同期ずれが発生したと判定すると、ずれ検知信号を出力する(ステップS14)。トリガ信号監視部523のトリガ信号監視用自走カウンタ523Aは、計数値「0」~計数値「n」まで循環させつつ、クロックを計数する。監視比較回路523Bは、トリガ信号監視用自走カウンタ523Aが計数した計数値が設定値記憶部524が記憶する設定値と同じ値になると、監視信号を出力する。そして、トリガ信号ずれ検知回路523Cは、トリガ信号と監視信号との間にずれが生じている場合にずれ検知信号を出力する。
【0041】
そして、復調回路部525は、トリガ信号に基づいて、目標とする光ファイバセンサ22に対応するデジタル電気信号に係る値をサンプリングし、復調処理を行って得られた位相変化量をデータとして含む位相信号を出力する(ステップS15)。光ファイバセンサシステム100のセンシング動作が終了すると判定するまで(ステップS16)、処理を行う。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る光ファイバセンサシステム100のセンシング動作において同期ずれが発生したときの各種信号の関係を示す図である。ここでは、前述したように、光ファイバセンサ22-1の戻りパルス光信号に対応するデジタル電気信号が復調処理の目標であるとし、設定値記憶部524には、設定値「6」のデータが記憶されているものとする。
【0043】
センシング動作において同期ずれが発生してなければ、基準トリガ信号が入力され、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数値「6」を計数したときに、トリガ信号生成部522からトリガ信号が出力される。
【0044】
ここで、図6に示すように、クロックに外部からのノイズが重畳して、本来、計数値「10」および計数値「11」として計数される2つのパルスが抜けることで、それらのパルスは計数されなくなる。このため、前述した図4のように、干渉光I1の入力に対応する計数値は、本来は計数値「12」になるはずであるが、図6では、計数値「10」となっており、ずれが生じることになる。
【0045】
しかしながら、図6に示すように、実施の形態1の光ファイバセンサシステム100では、基準トリガ同期カウンタ522Aは、計数値「n-2」であっても、基準トリガ信号が入力されると、計数値「0」にクリアして計数を再開する。このため、次の周期における参照光p11に対応する計数値は計数値「6」となる。したがって、ある周期におけるクロック(計数値)とトリガ信号とのずれによる影響は、次の周期には及ばない。また、図6では示していないが、基準トリガ同期カウンタ522Aが計数値「0」から計数値「6」までを計数する間に、クロックのパルス抜けがあった場合には、その周期におけるトリガ信号には出力のずれが発生するが、次の周期には及ばない。このため、最大1周期でトリガ信号の出力タイミングが修正されることになる。
【0046】
一方、トリガ信号監視部523のトリガ信号監視用自走カウンタ523Aは、自走しており、計数値「n-2」で計数値をクリアすることなく、計数値「n」まで計数した後に、計数値「0」に戻って計数を始める。このため、次の周期において、トリガ信号監視用自走カウンタ523Aが計数値「6」を計数したときに出力される監視信号は、トリガ信号より遅く出力される。このため、トリガ信号と監視信号との間にはずれが生じるため、ずれ検知信号が出力される。ずれ検知信号は、出力インターフェース部532を介して、外部制御装置703に送られる。たとえば、外部制御装置703は、ずれが発生した旨の警報を発生する。
【0047】
以上のように、実施の形態1における光ファイバセンサシステム100によれば、復調処理部5の復調処理基板52がトリガ信号生成部522を有する。そして、トリガ信号生成部522は、基準トリガ信号が送られてから初回のシステム動作時に設定された設定値に基づくタイミングで、トリガ信号を出力するようにした。このため、外部からのノイズ混入により信号の同期ずれが発生しても、トリガ信号と戻りパルス光信号とは、最大でも1周期のずれだけですむ。そして、次の周期には、トリガ信号生成部522に基準トリガ信号が入力されてからトリガ信号生成部522がトリガ信号を出力するタイミングを同じにし、トリガ信号と戻りパルス光信号とを同期させることができる。そして、復調処理部5の復調回路部525は、目標とする光ファイバセンサ22に係る位相変化量を復調することができる。したがって、実施の形態1における光ファイバセンサシステム100は、トリガ信号のずれを最大1周期に抑え、次周期には再同期することができるので、復調処理部5における同期ずれの影響が整相処理部6まで及ばす、精度の高いセンシングを行うことができる。
【0048】
また、実施の形態1の光ファイバセンサシステム100では、復調処理部5の復調処理基板52がトリガ信号監視部523を有する。そして、トリガ信号監視部523が信号間の同期ずれが発生したと判定すると、ずれ検知信号を出力するようにしたので、システムの状態監視を行うことができる。このため、監視に基づき外部雑音低減などの対策を行うことができ、光ファイバセンサシステム100の精度向上をはかることができる。
【0049】
実施の形態2.
上述した実施の形態1における光ファイバセンサシステム100は、トリガ信号監視部523が出力したずれ検知信号を、外部制御装置703に出力するものとしたが、これに限定するものではない。たとえば、音、表示などにより同期ずれの旨を報知する報知装置を、外部インターフェース部53に接続してもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態1では、PMDI干渉方式を用いた光ファイバセンサシステム100について説明したが、これに限定するものではない。たとえば、同期式且つTDM出力される構造の干渉型光ファイバセンサシステム全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 パルス光源部
2 センサ群
3 遅延補償器
4 受光部
5 復調処理部
6 整相処理部
21,21-1~21-6 往路側光カプラ
22,22-1~22-6 光ファイバセンサ
23,23-1~23-6 復路側光カプラ
51 基準信号生成部
52 復調処理基板
53 外部インターフェース部
100 光ファイバセンサシステム
101 往路側伝送ファイバ
102 復路側伝送ファイバ
521 位相同期部
522 トリガ信号生成部
522A 基準トリガ同期カウンタ
522B トリガ信号用比較回路
523 トリガ信号監視部
523A トリガ信号監視用自走カウンタ
523B 監視比較回路
523C トリガ信号ずれ検知回路
524 設定値記憶部
525 復調回路部
531 入力インターフェース部
532 出力インターフェース部
701 入力装置
702 オシロスコープ
703 外部制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6