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特開2023-11134電子機器保護箱の衝撃吸収機構および衝撃吸収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011134
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】電子機器保護箱の衝撃吸収機構および衝撃吸収方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/10 20060101AFI20230117BHJP
   H05K 7/12 20060101ALI20230117BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20230117BHJP
   B66C 1/10 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
H02G3/10
H05K7/12 A
H02G3/16
B66C1/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114773
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】堀江 雅人
(72)【発明者】
【氏名】呰上 友希
【テーマコード(参考)】
3F004
4E353
5G361
【Fターム(参考)】
3F004EA24
4E353AA21
4E353BB02
4E353BB11
4E353BB20
4E353CC02
4E353CC16
4E353CC26
4E353DR23
4E353DR49
4E353GG40
5G361AA06
5G361AB12
5G361AC01
5G361AE02
5G361BA07
5G361BC01
5G361BC02
5G361BC03
(57)【要約】
【課題】電子機器保護箱に格納される電子機器が故障するリスクをより低減できる電子機器保護箱の衝撃吸収機構を提供する。
【解決手段】移動体10に互いに上下方向Zに離間して設けた上方支持部4および下方支持部5の間に、電子機器保護箱2の側方に突出した突出部6を配置して、突出部6を上方支持部4および下方支持部5に対して上下移動可能に接続した状態とする。移動体10に衝撃が加わった際には、上方支持部4と突出部6との間に上下方向Zに延在させて配置した上方バネ部材8と、突出部6と下方支持部5との間に上下方向に延在させて配置した下方バネ部材9の収縮および復元によって、電子機器保護箱2に作用する衝撃を吸収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に互いに上下方向に離間して設けられた上方支持部および下方支持部と、電子機器保護箱の側方に突出していて前記上方支持部および前記下方支持部の間に配置された突出部と、前記上方支持部および前記下方支持部に対して前記突出部を上下移動可能に接続するガイド機構と、前記上方支持部と前記突出部との間に上下方向に延在して配置された上方バネ部材と、前記突出部と前記下方支持部との間に上下方向に延在して配置された下方バネ部材とを備えたことを特徴とする電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項2】
前記ガイド機構が、前記上方支持部と前記下方支持部との間に上下方向に延在した棒状部と、突出部に形成されていて前記棒状部が挿通する貫通孔とを有して構成されている請求項1に記載の電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項3】
前記棒状部の上部に前記上方支持部として、前記棒状部に対して着脱可能な留具が取付けられている請求項2に記載の電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項4】
前記上方バネ部材と前記下方バネ部材がそれぞれ前記棒状部に外嵌めされている請求項2または3に記載の電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項5】
前記下方バネ部材のばね定数が、前記上方バネ部材のばね定数よりも大きい請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項6】
前記上方バネ部材が前記突出部に対して常時下向きの付勢力を付与した状態であり、前記下方バネ部材が前記突出部に対して常時上向きの付勢力を付与した状態である請求項1~5のいずれかに記載の電子機器保護箱の衝撃吸収機構。
【請求項7】
移動体に互いに上下方向に離間して設けた上方支持部および下方支持部の間に、電子機器保護箱の側方に突出した突出部を配置して、前記突出部を前記上方支持部および前記下方支持部に対して上下移動可能に接続した状態とし、前記移動体に衝撃が加わったときに、前記上方支持部と前記突出部との間に上下方向に延在させて配置している上方バネ部材と、前記突出部と前記下方支持部との間に上下方向に延在させて配置している下方バネ部材の収縮および復元により、前記電子機器保護箱に作用する衝撃を吸収することを特徴とする電子機器保護箱の衝撃吸収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器保護箱の衝撃吸収機構および衝撃吸収方法に関し、さらに詳しくは、電子機器保護箱に格納される電子機器が故障するリスクをより低減できる電子機器保護箱の衝撃吸収機構および衝撃吸収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンや車両などの移動体には、複数の電子機器が格納された電子機器保護箱(電気機器箱体)が設けられている(例えば、特許文献1参照)。従来では、移動体を構成する構造体のフレームなどに電子機器保護箱を直接固定している。そのため、電子機器保護箱を固定している構造体に衝撃が加わった場合に、その衝撃が構造体から電子機器保護箱に伝達し易く、電子機器保護箱に格納されている電子機器がダメージを受けることがある。
【0003】
特に、コンテナの荷役を行うクレーンのスプレッダ(荷役具)に設置される電子機器保護箱においては、スプレッダがコンテナに着床した際などに、スプレッダに上下方向の大きな衝撃が加わり、その大きな衝撃が電子機器保護箱に伝達していた。そのため、電子機器保護箱に格納されている電子機器が故障するリスクが比較的高く、電子機器保護箱に格納される電子機器を保護するには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-222297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電子機器保護箱に格納される電子機器が故障するリスクをより低減できる電子機器保護箱の衝撃吸収機構および衝撃吸収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような目的を達成するための本発明の電子機器保護箱の衝撃吸収機構は、移動体に互いに上下方向に離間して設けられた上方支持部および下方支持部と、電子機器保護箱の側方に突出していて前記上方支持部および前記下方支持部の間に配置された突出部と、前記上方支持部および前記下方支持部に対して前記突出部を上下移動可能に接続するガイド機構と、前記上方支持部と前記突出部との間に上下方向に延在して配置された上方バネ部材と、前記突出部と前記下方支持部との間に上下方向に延在して配置された下方バネ部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記のような目的を達成するための本発明の電子機器保護箱の衝撃吸収方法は、移動体に互いに上下方向に離間して設けた上方支持部および下方支持部の間に、電子機器保護箱の側方に突出した突出部を配置して、前記突出部を前記上方支持部および前記下方支持部に対して上下移動可能に接続した状態とし、前記移動体に衝撃が加わったときに、前記上方支持部と前記突出部との間に上下方向に延在させて配置している上方バネ部材と、前記突出部と前記下方支持部との間に上下方向に延在させて配置している下方バネ部材の収縮および復元により、前記電子機器保護箱に作用する衝撃を吸収することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体に衝撃が加わり、上方支持部や下方支持部にその衝撃が伝達された場合にも、その衝撃が上方バネ部材および下方バネ部材の収縮および復元によって効果的に吸収されるので、電子機器保護箱に伝達される衝撃を効果的に低減できる。さらには、上方バネ部材および下方バネ部材の付勢力によって上方支持部および下方支持部に対する突出部および電子機器保護箱の上下方向の振動が効果的に減衰されるので、電子機器保護箱に格納されている電子機器が故障するリスクを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態の電子機器保護箱の衝撃吸収機構を断面視で模式的に示す説明図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1のB-B断面矢視図である。
図4図1の電子機器保護箱の衝撃吸収機構を断面視で模式的に示す説明図であり、図4の(a)は、電子機器保護箱が基準設置位置に位置した状態を示し、図4の(b)は、電子機器保護箱が基準設置位置よりも上方に移動した状態を示し、図4の(c)は、電子機器保護箱が基準設置位置よりも下方に移動した状態を示している。
図5】本発明に係る別の実施形態の電子機器保護箱の衝撃吸収機構を断面視で模式的に示す説明図であり、図5の(a)は、電子機器保護箱が基準設置位置に位置した状態を示し、図5の(b)は、電子機器保護箱が基準設置位置よりも上方に移動した状態を示し、図5の(c)は、電子機器保護箱が基準設置位置よりも下方に移動した状態を示している。
図6】本発明に係る別の実施形態の電子機器保護箱の衝撃吸収機構を断面視で模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電子機器保護箱の衝撃吸収機構を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中のX方向は水平面内における任意の一方向である左右方向Xを示し、Y方向は水平面内において左右方向Xと直交する奥行方向Yを示し、Z方向は上下方向Zを示している。
【0011】
図1図4に例示する実施形態の電子機器保護箱2の衝撃吸収機構1は、クレーンや車両などの移動体10に設けられる。この実施形態では、コンテナの荷役を行うクレーンのスプレッダ11(荷役具)に設置した電子機器保護箱2の衝撃吸収機構1を例示している。移動体10における衝撃吸収機構1の設置位置は特に限定されず、例えば、クレーンにおいては脚構造体やブーム、走行装置など、車両においては車体の内部などに衝撃吸収機構1を設けることもできる。
【0012】
図1に例示するように、電子機器保護箱2(ジャンクションボックスともいう)は、移動体10に搭載される電子機器3(電装品)を保護する箱体であり、電子機器保護箱2(以下、保護箱2という)の内部に複数の電子機器3が格納されている。それぞれの電子機器3は保護箱2に対して固定されている。この実施形態では、直方体形状の保護箱2を例示しているが、保護箱2の形状や内部構造は特に限定されない。
【0013】
この実施形態では、保護箱2の内部に設けられた台座の上にそれぞれの電子機器3を固定している。例えば、保護箱2に電子機器3を直接固定することもできる。保護箱2には、それぞれの電子機器3の配線3a(通信ケーブルや電源ケーブル等)が挿通可能な貫通孔が形成されている。この実施形態では、配線4aを通す貫通孔を保護箱2の底部と台座にそれぞれ設けているが、例えば、貫通孔を保護箱2の上部や側部に設けることもできる。
【0014】
図1~3に例示するように、衝撃吸収機構1は、移動体10に互いに上下方向Zに離間して設けられた上方支持部4および下方支持部5と、保護箱2の側方に突出していて上方支持部4および下方支持部5の間に配置された突出部6と、上方支持部4および下方支持部5に対して突出部6を上下移動可能に接続するガイド機構7とを備えている。衝撃吸収機構1はさらに、上方支持部4と突出部6との間に上下方向Zに延在して配置された上方バネ部材8と、突出部6と下方支持部5との間に上下方向Zに延在して配置された下方バネ部材9とを備えている。
【0015】
この実施形態では、スプレッダ11を構成するフレームに電子機器3の配線3aが挿通可能な貫通孔が形成されていて、その貫通孔の上方に保護箱2が配置されている。保護箱2の下部に板状部材が取付けられていて、その板状部材の保護箱2よりも左右方向Xに突出した部分が突出部6を構成している。突出部6は保護箱2の左右方向Xの両側に設けられている。突出部6と保護箱2は一体化されている。
【0016】
保護箱2の左右方向Xの両側の突出部6の下方に、それぞれ板状の下方支持部5が設けられている。それぞれの下方支持部5はスプレッダ11上に固定されていて奥行方向Yに延在している。そして、ガイド機構7を構成する上下方向Zに延在した棒状部7aが下方支持部5上に立設されている。この実施形態では、左右それぞれの下方支持部5上に奥行方向Yに互いに間隔をあけて複数の棒状部7aが配設されている。
【0017】
左右両側の突出部6には、それぞれの棒状部7aに対応する位置に、上下方向Zに貫通する貫通孔6aが形成されている。その突出部6の貫通孔6aに棒状部7aが挿通していて、突出部6は棒状部7aに沿って上下方向Zに移動可能な構成になっている。突出部6の貫通孔6aは、棒状部7aの横断面と略同一寸法に形成されていて、棒状部7aに対して突出部6が水平方向には相対移動し難い構成になっている。この実施形態では、横断面が丸形状の棒状部7aを採用しているが、例えば、横断面が多角形状の棒状部7aや、横断面が環形状の棒状部7aにすることもできる。
【0018】
突出部6よりも上方に位置する棒状部7aの上部には、上方支持部4として、棒状部7aに対して着脱可能な留具が取付けられている。この実施形態では、棒状部7aの周面にネジ溝が切られていて、棒状部7aの上部に上方支持部4を構成する留具としてナットが螺合されている。
【0019】
上方バネ部材8および下方バネ部材9は圧縮コイルばねで構成される。上方バネ部材8は、突出部6の上面部と上方支持部4の下面部との間に上下方向Zに延在して配置されている。下方バネ部材9は、突出部6の下面部と下方支持部5の上面部との間に上下方向Zに延在して配置されている。それぞれの棒状部7aに、上方バネ部材8および下方バネ部材9が外嵌めされている。この実施形態では、上方バネ部材8の下端部は突出部6の上面部に固定されていて、下方バネ部材9の下端部は下部支持部5の上面部に固定されている。突出部6は、上方支持部4と下方支持部5との間の上下方向Zの中途位置に、上方支持部4および下方支持部5と離間した状態で配置されている。
【0020】
図4の(a)に示すように、移動体10(スプレッダ11)に衝撃が加わっていない平常時(以下、平常時という)においては、突出部6に対して下方バネ部材9により上向きの付勢力F1が付与されることで、突出部6および保護箱2(電子機器3を含む)の荷重が下方バネ部材9によって支持された状態となる。平常時においては、上方バネ部材8は自然長になっていて、上方バネ部材8から保護箱2には付勢力が付与されていない状態となる。以下では、平常時において突出部6が位置する下方支持部5に対する相対的な高さ位置を、基準設置位置LRとする。図中では基準設置位置LRを一点鎖線で示している。
【0021】
移動体10に衝撃が加わり、その衝撃が下方支持部5や上部支持部4に伝達されたときには、その衝撃の大部分は上方バネ部材8および下方バネ部材9が緩衝材として機能することで吸収される。ただし、衝撃が加えられた移動体10が上下方向Zに比較的激しく振動した場合には、上方支持部4および下方支持部5に対して突出部6および保護箱2が相対的に小さく上下移動する場合がある。そのような場合には、図4の(b)、(c)に例示するように、保護箱2が基準設置位置LRに対して上方や下方に若干移動する。
【0022】
図4の(b)に例示するように、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRよりも上方に移動したときには、上方バネ部材8が縮むことで突出部6に対して下向きの付勢力F2を付与した状態となる。下方バネ部材9は伸びることで突出部6に対して、突出部6が基準設置位置LRに位置していたときの付勢力F1よりも小さな上向きの付勢力F3を付与した状態、或いは、下方バネ部材9が自然長になったときには突出部6に対して付勢力を付与しない状態となる。上方バネ部材8による下向きの付勢力F2によって、突出部6および保護箱2の上向きの加速度は減衰され、突出部6および保護箱2は基準設置位置LRに戻るように下方移動する。
【0023】
図4の(c)に例示するように、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRよりも下方に移動したときには、下方バネ部材9が縮むことで突出部6に対して、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置していたときの付勢力F1よりも大きな上向きの付勢力F4を付与した状態となる。上方バネ部材9は自然長になり突出部6に対して付勢力を付与しない状態となる。下方バネ部材8による上向きの付勢力F4によって、突出部6および保護箱2の下向きの加速度は減衰され、突出部6および保護箱2は基準設置位置LRに戻るように上方移動する。
【0024】
このように、この衝撃吸収機構1では、移動体10に衝撃が加わり、上方支持部4や下方支持部5にその衝撃が伝達された場合にも、その衝撃が上方バネ部材8および下方バネ部材9の収縮および復元によって吸収されるので、保護箱2に伝達される衝撃を効果的に低減できる。さらには、上方バネ部材8および下方バネ部材9の付勢力によって、上方支持部4および下方支持部5に対する突出部6および保護箱2の上下方向Zの振動が効果的に減衰されるので、保護箱2に格納されている電子機器3が故障するリスクを効果的に低減できる。それ故、従来のように保護箱2を移動体10の構造体に直接固定する場合に比して、保護箱2に格納されている電子機器3が故障するリスクをより低減できる。
【0025】
この実施形態のように、ガイド機構7が、上方支持部4と下方支持部5との間に上下方向Zに延在した棒状部7aと、突出部6に形成されていて棒状部7aが挿通する貫通孔6aとを有する構成にすると、棒状部7aに対して突出部6が棒状部7aに沿って上下移動可能な構造になる。そのため、簡易な構造でありながら、上方支持部4および下方支持部5に対して突出部6を上下移動可能に接続しつつ、上方支持部4および下方支持部5に対する突出部6および保護箱2の水平方向の振動を効果的に抑制できる。それ故、保護箱2に格納されている電子機器3が故障するリスクを低くするにはより有利になる。
【0026】
さらに、棒状部7aの上部に上方支持部4として、棒状部7aに対して着脱可能な留具を取付ける構成にすると、上方支持部4(留具)を棒状部7aから取り外すだけで、上方バネ部材8や、保護箱2(突出部6)、下方バネ部材9を棒状部7aから容易に取り外すことが可能になる。それ故、上方バネ部材8や、下方バネ部材9、保護箱2などの交換やメンテナンス、保護箱2に電子機器3を格納する作業等がより行い易くなる。また、例えば、棒状部7aに対して上方支持部4(留具)を固定する上下位置を変更可能な構成にすると、上方支持部4の上下位置を変更して、下方バネ部材9や上方バネ部材8の縮み具合を変更することで、下方バネ部材9や上方バネ部材8による突出部6に対する付勢力の大きさを調整することが可能になる。
【0027】
突出部6と保護箱2とを分離可能な構成にすると、衝撃吸収機構1から保護箱2を容易に取り外せるので、保護箱2に電子機器3を格納する作業や電子機器3の交換作業、メンテナンスなどをより行い易くなる。なお、例えば、保護箱2に突出部6が溶接等で接合されている構成や、保護箱2の構成部材の一部分を突出部6として利用する構成にすることもできる。
【0028】
上方バネ部材8と下方バネ部材9をそれぞれ棒状部7aに外嵌めした構成にすると、棒状部7aにより上方バネ部材8と下方バネ部材9の水平方向の歪みが抑制され、上方バネ部材8と下方バネ部材9が非常に安定した状態で上下方向Zに伸縮する。それ故、保護箱2に伝達される衝撃や、保護箱2の上下方向Zの振動をより効果的に低減するには有利になる。なお、上方バネ部材8および下方バネ部材9を棒状部7aに外嵌めせずに、例えば、上方バネ部材8や下方バネ部材9をガイド機構7と離間した位置に配置することもできる。
【0029】
上方バネ部材8および下方バネ部材9のそれぞれのばね定数は、電子機器3が格納された状態の保護箱2の重量や上方バネ部材8および下方バネ部材9の設置数などに応じて適宜決定できるが、下方バネ部材9のばね定数を上方バネ部材8のばね定数よりも大きくすることが好ましい。保護箱2には重力が働くため、保護箱2が上下方向Zに振動する際には、上向きの加速度よりも下向きの加速度の方が比較的大きくなる。それ故、下方バネ部材9のばね定数を上方バネ部材8のばね定数よりも大きくすることで、下方バネ部材9および上方バネ部材8により、保護箱2の上下方向Zの振動をより短時間で効果的に減衰させることができる。具体的には、例えば、下方バネ部材9のばね定数を上方バネ部材8のばね定数の1.1倍以上2.0倍以下の範囲内、より好ましくは1.3倍以上1.7倍以下の範囲内に設定するとよい。
【0030】
衝撃吸収機構1は図5に例示する別の実施形態のような構成にすることもできる。この実施形態では、先に例示した実施形態と上方バネ部材8および下方バネ部材9によって保護箱2に付勢力が付与される条件が異なっている。その他の構成は図1~4に例示した実施形態と同じである。
【0031】
図5の(a)~(c)に例示するように、この実施形態では、上方バネ部材8が保護箱2に対して常時下向きの付勢力を付与した状態となり、下方バネ部材9が保護箱2に対して常時上向きの付勢力を付与した状態となる構成にしている。より具体的には、図5の(a)に例示するように、平常時において、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置しているときに、上方バネ部材8が突出部6に対して下向きの付勢力F5を付与した状態となり、下方バネ部材9が突出部6に対して上向きの付勢力F6を付与した状態となる。即ち、上方バネ部材8および下方バネ部材9はそれぞれ自然長よりも縮んだ状態となり、突出部6および保護箱2(電子機器3を含む)の荷重と上方バネ部材8による下向きの付勢力F5とによる突出部6に作用する下向きの合力と、下方バネ部材9により突出部6に作用する上向きの付勢力F6とが均衡した状態となる。
【0032】
図5の(b)に例示するように、下方支持部5および上方支持部4に対して突出部6および保護箱2が基準設置位置LRよりも上方に移動したときには、上方バネ部材8がより縮むことで突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置しているときの付勢力F5よりも、上方バネ部材8が突出部6に対してより大きな下向きの付勢力F7を付与した状態となる。下方バネ部材9は伸びることで突出部6に対して、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置していたときの付勢力F6よりも小さな上向きの付勢力F8を付与した状態となる。即ち、下方バネ部材9は自然長にはならず、常時縮んだ状態で保護箱2に対して常時上向きの付勢力F8を付与した状態となる。
【0033】
これにより、上方バネ部材8の下向きの付勢力F7によって、突出部6および保護箱2の上向きの加速度は減衰され、突出部6および保護箱2は基準設置位置LRに戻るように下方移動する。さらに、突出部6に下方バネ部材9による上向きの付勢力F8が作用していることで、保護箱2が基準設置位置LRに向かって下方移動するときの下向きの加速度も減衰される。
【0034】
図5の(c)に例示するように、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRよりも下方に移動したときには下方バネ部材9が縮むことで、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置していたときの付勢力F6よりも、下方バネ部材9が突出部6に対してより大きな上向きの付勢力F10を付与した状態となる。上方バネ部材9は自然長よりも縮んだ状態となり、突出部6および保護箱2が基準設置位置LRに位置していたときの付勢力F5よりも、上方バネ部材8が突出部6に対して小さな下向きの付勢力F9を付与した状態となる。即ち、上方バネ部材8は自然長にはならず、常時縮んだ状態で、突出部6に対して常時下向きの付勢力F9を付与した状態となる。
【0035】
これにより、下方バネ部材9の上向きの付勢力F10によって、突出部6および保護箱2の下向きの加速度は減衰され、突出部6および保護箱2は基準設置位置LRに戻るように上方移動する。さらに、保護箱2に上方バネ部材8の下向きの付勢力F9が作用していることで、保護箱2が基準設置位置LRに向かって上方移動するときの上向きの加速度も減衰される。
【0036】
このように、突出部6に対して上方バネ部材8が常時下向きの付勢力を付与し、下方バネ部材9が常時上向きの付勢力を付与する構成にすると、上方バネ部材8および下方バネ部材9によって突出部6に常時付与される対向する付勢力により、保護箱2が基準設置位置LRに対してより上下移動し難くなるので、保護箱2の上下方向Zの振動を抑制するにはより有利になる。さらに、保護箱2が上下方向Zに振動した場合にも、突出部6が基準設置位置LRに向かって上方移動または下方移動する際の加速度をより効果的に減衰させることができるので、保護箱2の揺り戻しをより効果的に低減でき、保護箱2の上下方向Zの振動を減衰させるにはより有利になる。
【0037】
衝撃吸収機構1は図6に例示する別の実施形態のような構成にすることもできる。この実施形態の衝撃吸収機構1は先に例示した実施形態の衝撃吸収機構1と、突出部6、上方支持部4、および下方支持部5の構成が異なっている。その他の構成は先に例示した実施形態と同じである。
【0038】
この実施形態では、スプレッダ11上に上方支持部4および下方支持部5を有するフレームユニットを固定している。このフレームユニットは、スプレッダ11上に固定された下方支持部5と、下方支持部5から上方向に延在する柱体と、柱体の上部に固定された上方支持部4とを有して構成されている。上方支持部4および下方支持部5はそれぞれ水平方向に延在する板状部材で構成されている。下方支持部5には、電子機器3の配線3aが挿通可能な上下方向Zに挿通する貫通孔が設けられている。平面視における上方支持部4および下方支持部5の四隅にそれぞれ柱体が配置されている。
【0039】
この実施形態では、保護箱2の左右方向Xにおいて対向する一対の側面にそれぞれ、左右方向Xおよび奥行方向Yに延在する板状の突出部6が着脱可能に連結されている。それぞれの突出部6には、奥行方向Yに互いに間隔をあけて複数の貫通孔6aが形成されていて、それぞれの貫通孔6aに棒状部7aが挿設されている。その他の構成は先に例示した実施形態と同じである。突出部6、上方支持部4、および下方支持部5をこのような構成にした場合にも、先に例示した実施形態と概ね同じ効果を奏することができる。
【0040】
なお、上方支持部4、下方支持部5、突出部6、ガイド機構7、上方バネ部材8、および下方バネ部材9のそれぞれの構造や形状、サイズ、設置数、配置などは上記で例示した実施形態に限定されず、衝撃吸収機構1の設置位置や、保護箱2(電子機器3を含む)のサイズや重量などに応じて適宜決定できる。突出部6は平面視で保護箱2の側方に突出している構造であればよく、例えば、保護箱2の上端部などに突出部6を設けることもできる。また、例えば、突出部6(貫通孔6a)、ガイド機構7(棒状部7a)、上方バネ部材8、および下方バネ部材9を、保護箱2の水平方向の四方(左右方向Xおよび奥行方向Y)にそれぞれ設けることもできる。
【0041】
また、上方支持部4および下方支持部5は、少なくともいずれかが移動体10と一体化されていて、互いに上下方向Zに離間して配置されていればよく、例えば、移動体10を構成する既存の構造体(骨組み等)を上方支持部4や下方支持部5とすることもできる。また、ガイド機構7は、上方支持部4および下方支持部5に対して突出部6を上下移動可能に接続する構造であれば、上記で例示した実施形態に限定されず、異なる構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 衝撃吸収機構
2 電子機器保護箱
3 電子機器
3a 配線
4 上方支持部
5 下方支持部
6 突出部
6a 貫通孔
7 ガイド機構
7a 棒状部
8 上方バネ部材
9 下方バネ部材
10 移動体
11 スプレッダ
LR 基準設置位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6