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特開2023-111344移動体制御システム、移動体制御装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111344
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】移動体制御システム、移動体制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230803BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013158
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】小杉 篤史
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301AA10
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301DD17
5H301GG07
5H301GG09
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK09
5H301KK18
5H301KK19
(57)【要約】
【課題】移動体運用の稼働率及び利便性を向上させる。
【解決手段】管理センタと、前記管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体と、を含み、前記移動体は、前記移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源残量に関する情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、を備える、移動体制御システム。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理センタと、
前記管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体と、
を含み、
前記移動体は、
前記移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、
前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源残量に関する情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、
を備える、移動体制御システム。
【請求項2】
前記判断部は、前記移動体が前記建築物の内部の充電設備に到達するまでの時間と、前記電源残量に基づく前記移動体の残稼働時間とから算出される稼働マージン時間に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する、請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記稼働マージン時間は、前記電波強度にさらに基づいて算出され、
前記稼働マージン時間は、前記電波強度が低いほど低減される、請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記移動体は、前記建築物の前記所定ルートの周囲の環境をセンシングするセンサ部をさらに備え、
前記移動体は、前記センサ部にてセンシングされたセンシングデータを前記管理センタに送信する、請求項1~3のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記電波強度が前記第2の閾値未満である場合、
前記移動体は、前記センサ部によるセンシングを停止する、請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記建築物の前記モデリング情報は、前記センシングデータに基づいて更新される、請求項4又は5に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
前記復帰ルートは、前記管理センタに登録される、請求項1~6のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項8】
前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動することが判断された場合、
前記管理センタは、前記無線通信の中継機能を有する他の移動体に対して、前記復帰ルートの終点への移動、及び前記中継機能の有効化を指示する、請求項7に記載の移動体制御システム。
【請求項9】
前記復帰ルートが導出されず、かつ前記電波強度が前記第2の閾値未満である場合、
前記移動体は、その場に待機し、
前記管理センタは、前記無線通信の中継機能を有する他の移動体に対して、前記移動体の待機場所への移動、及び前記中継機能の有効化を指示する、請求項7に記載の移動体制御システム。
【請求項10】
前記中継機能を介して前記管理センタと接続された前記移動体は、前記管理センタから遠隔操作される、請求項8又は9に記載の移動体制御システム。
【請求項11】
前記復帰ルートは、前記所定ルートを順方向又は逆方向に移動するルートを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項12】
前記電波強度が前記第2の閾値未満であると共に、前記電波強度が前記第2の閾値未満であることが前記通信状況情報と前記移動体の位置情報とから想定される場合、
前記判断部は、前記所定ルートに沿った移動を継続することを判断する、請求項1~11のいずれか一項に記載の移動体制御システム。
【請求項13】
管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、
前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源の残量情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、
を備える、移動体制御装置。
【請求項14】
コンピュータを、
管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、
前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源の残量情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御システム、移動体制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動可能なロボット(以下、移動体とも称する)にオフィス又は公共施設などの建物内を巡回させ、巡回ルートの周囲の環境をセンシングさせることが検討されている。
【0003】
建物内を巡回する移動体は、無線通信によって管理センタと接続されることで、管理センタに周囲の環境のセンシング結果を送信したり、管理センタから遠隔制御信号を受信したりすることができる。これによれば、管理センタは、移動体を介して、建物内の状況を最新の情報に更新することで、建物内の異常等を早期に検出することができる。
【0004】
例えば、下記の特許文献1~4には、無線通信によって遠隔制御される移動体に関する種々の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-234636号公報
【特許文献2】特開2008-090576号公報
【特許文献3】特開2004-260769号公報
【特許文献4】特開2005-025516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、無線通信の電波状況が悪い地点に移動体が移動した場合、無線通信を介した管理センタとの接続が困難となることがあり得る。さらに、無線通信の電波状況が悪い地点に移動した移動体に内蔵された電源の残量が尽きた場合、移動体が無線通信可能な領域に復帰することさえも困難となることがある。このような場合、管理センタによる移動体運用の稼働率及び利便性が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、移動体運用の稼働率及び利便性を向上させることが可能な、新規かつ改良された移動体制御システム、移動体制御装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、管理センタと、前記管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体と、を含み、前記移動体は、前記移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源残量に関する情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、を備える、移動体制御システムが提供される。
【0009】
前記判断部は、前記移動体が前記建築物の内部の充電設備に到達するまでの時間と、前記電源残量に基づく前記移動体の残稼働時間とから算出される稼働マージン時間に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断してもよい。
【0010】
前記稼働マージン時間は、前記電波強度にさらに基づいて算出され、前記稼働マージン時間は、前記電波強度が低いほど低減されてもよい。
【0011】
前記移動体は、前記建築物の前記所定ルートの周囲の環境をセンシングするセンサ部をさらに備え、前記移動体は、前記センサ部にてセンシングされたセンシングデータを前記管理センタに送信してもよい。
【0012】
前記電波強度が前記第2の閾値未満である場合、前記移動体は、前記センサ部によるセンシングを停止してもよい。
【0013】
前記建築物の前記モデリング情報は、前記センシングデータに基づいて更新されてもよい。
【0014】
前記復帰ルートは、前記管理センタに登録されてもよい。
【0015】
前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動することが判断された場合、前記管理センタは、前記無線通信の中継機能を有する他の移動体に対して、前記復帰ルートの終点への移動、及び前記中継機能の有効化を指示してもよい。
【0016】
前記復帰ルートが導出されず、かつ前記電波強度が前記第2の閾値未満である場合、前記移動体は、その場に待機し、前記管理センタは、前記無線通信の中継機能を有する他の移動体に対して、前記移動体の待機場所への移動、及び前記中継機能の有効化を指示してもよい。
【0017】
前記中継機能を介して前記管理センタと接続された前記移動体は、前記管理センタから遠隔操作されてもよい。
【0018】
前記復帰ルートは、前記所定ルートを順方向又は逆方向に移動するルートを含んでもよい。
【0019】
前記電波強度が前記第2の閾値未満であると共に、前記電波強度が前記第2の閾値未満であることが前記通信状況情報と前記移動体の位置情報とから想定される場合、前記判断部は、前記所定ルートに沿った移動を継続することを判断してもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源の残量情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、を備える、移動体制御装置が提供される。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、管理センタと無線通信によって接続された状態で建築物の内部を所定ルートで自律的に移動する移動体の自己位置を示す位置情報と、前記無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、前記自己位置から前記電波強度が第1の閾値以上となる通信可能領域への復帰ルートを導出する復帰ルート導出部と、前記電波強度が前記第1の閾値よりも低い第2の閾値未満である場合、前記移動体の前記位置情報、前記移動体の電源の残量情報、及び前記建築物のモデリング情報に基づいて、前記所定ルートに沿った移動を継続するか、又は前記復帰ルートに沿って前記通信可能領域へ移動するかを判断する判断部と、として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、移動体運用の稼働率及び利便性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る移動体制御システムの概要構成を説明する模式図である。
図2】同実施形態に係る移動体制御システムの詳細構成を示すブロック図である。
図3】管理データベースに記憶される移動体データテーブルの一例を示すテーブル図である。
図4】BIMデータベースに記憶されるBIMデータの一例を示す模式図である。
図5】通信不調領域に位置する移動体が通信可能領域に移動するための復帰ルートのバリエーションを説明する説明図である。
図6】通信不調領域に位置する移動体が通信可能領域に移動するための復帰ルートのバリエーションを説明する説明図である。
図7】通信不調領域に位置する移動体が通信可能領域に移動するための復帰ルートのバリエーションを説明する説明図である。
図8】同実施形態に係る移動体の制御の流れを説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
<1.移動体制御システム>
(1.1.概要)
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る移動体制御システムの概要について説明する。図1は、本実施形態に係る移動体制御システム1の概要構成を説明する模式図である。
【0026】
図1に示すように、移動体制御システム1は、例えば、N台の移動体100-1,100-2、…100-Nと、管理センタ200とを含む。N台の移動体100-1,100-2、…100-Nと、管理センタ200とは、ネットワーク10に接続されており、ネットワーク10を介して互いに通信可能に接続される。なお、Nは、任意の1以上の整数である。
【0027】
N台の移動体100-1,100-2、…100-N(各々を区別しない場合にまとめて移動体100と称する)は、所定ルートに沿って建築物の内部を自律移動にて巡回するロボットである。移動体100は、移動体100の周囲の環境をセンシングすることで、移動体100が巡回する建築物内の構造及び状況に関する情報を管理センタ200に送信することができる。移動体100は、無線通信を用いることで、任意の位置でネットワーク10に接続することができる。
【0028】
また、移動体100は、管理センタ200内の遠隔操作端末210から遠隔操作されて移動することも可能である。例えば、移動体100は、自律制御による移動が困難になった場合などに、遠隔操作端末210による遠隔操作を依頼する接続要求を管理センタ200に送信してもよい。その後、移動体100は、遠隔操作端末210と接続されることで、遠隔操作端末210からの操作入力に基づいて移動することができる。
【0029】
ここで、ロボットとは、いわゆる「人造人間」、「人間に類似した動作、又は作業を行う装置」、又は「指示に基づいてコンピュータ制御されることで動作、又は作業を行う装置」などと定義される機械装置である。例えば、ロボットは、「自動制御によるマニピュレーション機能、又は移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行でき、産業に使用される機械」(JIS B 0134-1998)、「人間にサービスするロボット」(JIS B 0187:2005)、又は「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」(経済産業省ロボット政策研究会)にて定義される機械装置であってもよい。
【0030】
管理センタ200は、業務管理部220と、遠隔操作端末210と、BIMデータベース230とを含む。管理センタ200は、ゲートウェイ装置を介してネットワーク10に接続される。管理センタ200に含まれる業務管理部220、遠隔操作端末210、及びBIMデータベース230は、管理センタ200内の有線LAN通信を用いて互いに接続されてもよい。
【0031】
遠隔操作端末210は、オペレータが移動体100を監視又は遠隔操作するために使用する装置である。例えば、遠隔操作端末210は、パーソナルコンピュータ(Personal Computer: PC)、タブレット装置、又はスマートフォンなどの端末と、これらの端末に接続される周辺機器とを含んでもよい。
【0032】
遠隔操作端末210は、移動体100の状態に関する情報の表示、移動体100からの通知の表示、オペレータの入力操作に基づく移動体100への移動指示、又はオペレータの状態に関する監視等を行う。例えば、遠隔操作端末210は、移動体100に関する情報と、移動体100の周囲の環境画像とをオペレータに提示することで、オペレータに移動体100の移動を指示させてもよい。なお、遠隔操作端末210は、オペレータの人数に応じて複数設けられてもよい。
【0033】
業務管理部220は、移動体100の各種業務を制御及び管理する。また、業務管理部220は、遠隔操作のための接続要求を移動体100から受信した場合、該接続要求を適切なオペレータが操作する遠隔操作端末210に振り分ける。
【0034】
BIMデータベース230は、移動体100が巡回する建築物の二次元又は三次元モデルを示すBIM(Building Information Modeling)データを記憶するデータベースである。具体的には、BIMデータベース230は、移動体100が巡回する建築物の二次元又は三次元構造、建築物の内部のオブジェクトの配置、又は建築物の各空間に対するラベリングに関する情報を含むBIMデータを記憶してもよい。また、BIMデータベース230に記憶されたBIMデータは、建築物を巡回する移動体100によるセンシング結果に基づいて随時更新されてもよい。これによれば、管理センタ200は、移動体100によるセンシング結果に基づいて更新されるBIMデータを用いて、建築物をより適切に管理することが可能である。
【0035】
ネットワーク10は、移動体100と管理センタ200とを接続し、移動体100と管理センタ200との間でのデータ送受信を可能とする通信網である。ネットワーク10は、インターネット、衛星通信網、移動通信網、LAN(Local Area Network)、又はWAN(Wide Area Network)などであってもよい。
【0036】
(1.2.詳細構成)
続いて、図2を参照して、本実施形態に係る移動体制御システム1の詳細構成について説明する。図2は、本実施形態に係る移動体制御システム1の詳細構成を示すブロック図である。
【0037】
(移動体100)
図2に示すように、移動体100は、例えば、通信部110と、移動体制御部120と、BIMデータベース130と、センサ部140と、AI部150と、電源部160と、移動部170とを備える。
【0038】
通信部110は、ネットワーク10に接続可能な無線通信インターフェースである。例えば、通信部110は、ネットワーク10に直接接続可能な無線通信インターフェースであってもよい。また、通信部110は、携帯電話通信網、又は無線LANなどの他のネットワークを介してネットワーク10に接続可能な無線通信インターフェースであってもよく、中継装置又は基地局を介してネットワーク10に接続可能な無線通信インターフェースであってもよい。
【0039】
移動体制御部120は、移動体100にて取得された種々のデータを処理すると共に、移動体100の動作全般を制御する。移動体制御部120は、例えば、移動体100の動作全般を制御するソフトウェア、及び該ソフトウェアをインストールしたハードウェアによって構成される。ハードウェアとしては、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Read Only Memory)、及びROM(Read Only Memory)を例示することができる。また、CPUに替えて、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロプロセッサ、又はIC(Integrated Circuit)などを用いることも可能である。なお、復帰ルート導出部121及び判断部122については、後述する。
【0040】
BIMデータベース130は、管理センタ200のBIMデータベース230と同様に、移動体100が巡回する建築物のBIMデータを記憶するデータベースである。BIMデータベース130は、BIMデータベース230に記憶されたBIMデータのうち、移動体100が巡回するルートに関連する領域又はフロアのBIMデータを記憶してもよい。
【0041】
センサ部140は、移動体100の周囲の環境画像を取得可能な撮像装置、又は移動体100の周囲の環境のパラメータをセンシング可能な各種センサを含む。
【0042】
例えば、センサ部140は、撮像装置として、RGBカメラ、ステレオカメラ、360度カメラ、サーモグラフィカメラ、又は赤外線カメラなどを含んでもよい。また、センサ部140は、各種センサとして、温度、湿度、照度、気圧、振動、又はオブジェクトまでの距離をセンシング可能なセンサを含んでもよい。さらに、センサ部140は、煙、におい、化学物質、又は静電気等の発生をセンシング可能なセンサを含んでもよい。
【0043】
AI部150は、センサ部140にて収集した周囲の環境画像、及びセンシング情報を数値化又は文字化し、数値化又は文字化された情報に基づいて、移動体100における各種判断を行う。例えば、AI部150は、機械学習アルゴリズムを用いた画像認識、パターン認識、又は情報解析を行うことで環境画像及びセンシング情報を数値化又は文字化し、数値化又は文字化された情報に基づいて、移動体100における各種判断を行ってもよい。
【0044】
電源部160は、移動体100に内蔵され、移動体100の各部に電力を供給する。電源部160は、例えば、リチウムイオン二次電池などの二次電池であってもよい。
【0045】
移動部170は、移動体制御部120による制御に基づいて、移動体100を任意の位置に移動させることが可能な移動機構である。移動部170は、例えば、車輪式、脚式、クローラ式、又はエアクッション式などの種々の方式の移動機構であってもよい。また、移動部170は、回転翼などにより空中を移動可能な移動機構であってもよく、スクリューなどにより水上又は水中を移動可能な移動機構であってもよい。
【0046】
(管理センタ200)
管理センタ200は、通信装置250と、遠隔操作端末210と、業務管理部220と、管理データベース240と、BIMデータベース230とを含む。
【0047】
通信装置250は、ゲートウェイ装置であり、移動体100と、管理センタ200に含まれる各構成(遠隔操作端末210、業務管理部220、管理データベース240、及びBIMデータベース230)との間の通信を中継する。また、管理センタ200に含まれる各構成(遠隔操作端末210、業務管理部220、管理データベース240、及びBIMデータベース230)は、例えば、有線又は無線のLANで互いに接続されてもよい。
【0048】
遠隔操作端末210は、通信部211と、入力部212と、表示部213とを含む。オペレータは、遠隔操作端末210によって、移動体100の状態の監視、及び移動体100の遠隔操作を行うことができる。通信部211は、管理センタ200内のLANに接続するための通信インターフェースであり、移動体100との間でのデータの送受信、又は管理センタ200の業務管理部220からのレポートの受信を行うことができる。入力部212は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックパッド、十字キー、操作レバー、又はマイク等の入力装置であり、オペレータからの操作を受け付けることができる。表示部213は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display: LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ装置、又はタッチパネルディスプレイ装置などの表示装置であり、移動体100の周囲の環境画像、又は移動体100に関する情報を含む管理画面を表示することができる。
【0049】
業務管理部220は、上述したように、移動体100の各種業務を制御及び管理する。また、業務管理部220は、遠隔操作のための接続要求を移動体100から受信した場合、該接続要求を適切なオペレータが操作する遠隔操作端末210に振り分ける。
【0050】
管理データベース240は、移動体100の各種情報を管理する移動体データテーブルを記憶するデータベースである。例えば、管理データベース240は、図3に示すような移動体データテーブルを記憶してもよい。図3は、管理データベース240に記憶される移動体データテーブルの一例を示すテーブル図である。
【0051】
図3に示すように、移動体データテーブル241は、移動体100の各々について、ID、名称、位置、搭載センサ、通信状況、GW(ゲートウェイ)装置、電源残量、及び残稼働時間の各種情報を管理してもよい。移動体データテーブル241にて管理される移動体100の各種情報は、移動体100の各々から管理センタ200に送信された情報に基づいて随時更新される。
【0052】
IDは、移動体100の各々を一意に識別するための番号又は文字列を示す。名称は、移動体100の各々の名称を示す。位置は、移動体100の各々の現在位置を示す三次元座標を示す。搭載センサは、移動体100の各々に搭載された各種センサの種類及び状態を示す。通信状況は、移動体100の各々の現在位置における無線通信の電波強度を示す。通信状況は、例えば、電波強度が最も良好な状態を100として表現され、電波強度が低く圏外と判断される状態を0として表現されてもよい。GW装置は、移動体100の各々が無線通信を中継可能なゲートウェイ装置を搭載しているか否かを示す。電源残量は、移動体100の各々に内蔵される電源部160の電源残量を示す。残稼働時間は、電源部160の電源残量から算出される移動体100の各々の稼働可能時間を示す。すなわち、残稼働時間は、移動体100の各々が現在時刻からさらにどのくらいの時間、稼働することができるかを示す。
【0053】
BIMデータベース230は、上述したように、移動体100が巡回する建築物の二次元又は三次元モデルを示すBIMデータを記憶するデータベースである。具体的には、BIMデータベース230は、移動体100が巡回する建築物の二次元又は三次元の構造に関する情報、建築物の内部のオブジェクトの配置に関する情報、又は建築物の各空間に対するラベリングに関する情報を含むBIMデータを記憶してもよい。また、BIMデータベース230に記憶されたBIMデータは、建築物を巡回する移動体100によるセンシング結果に基づいて随時更新されてもよい。
【0054】
例えば、BIMデータベース230は、図4に示すようなデータを記憶してもよい。図4は、BIMデータベース230に記憶されるBIMデータの一例を示す模式図である。
【0055】
図4に示すように、BIMデータは、移動体100が巡回する建築物30のフロア31の二次元構造を示すデータであってもよい。フロア31の二次元構造を示すデータとしては、移動体100が移動可能な領域と、移動不可な領域とが判別された移動体マップ310を例示することができる。移動体100が移動可能な領域と、移動不可な領域とは、例えば、移動体100の移動履歴、及び移動履歴における移動体100のセンシング結果に基づいて判別されてもよい。また、移動体マップ310には、移動体マップ310に対応するフロア31に存在する移動体100A,100B,100Cの各々の位置が示されてもよい。
【0056】
さらに、移動体マップ310には、移動体100のセンシング結果に基づく各種情報のラベリングが施される。移動体マップ310にラベリングされる各種情報としては、例えば、移動体マップ310における無線通信の通信状況(すなわち、電波強度)を示す情報、又は移動体マップ310に存在しない障害物又は迂回路に関する情報を例示することができる。下記の表1に移動体マップ310にラベリングされる各種情報の一例を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示すように、ラベリングされる各種情報は、ラベリング範囲、ラベリング日時、及び内容を含む。ラベリング範囲は、移動体マップ310においてラベリングが有効な範囲を示す。ラベリング日時は、ラベリングが付与された日時を示す。内容は、ラベリングの具体的な内容を示す。
【0059】
(1.3.本発明の特徴構成)
本実施形態に係る移動体100は、無線通信にて管理センタ200と接続された状態で自律移動する。そのため、移動体100と管理センタ200との無線通信が不調となった場合、管理センタ200による移動体100の管理が不安定となり、移動体制御システム1の稼働率及び利便性が低下することがあり得る。
【0060】
そこで、本実施形態に係る移動体100は、無線通信の通信状況が不調となった場合、通信状況が良好ではない領域で移動体100が動けなくなることを回避するように、無線通信の通信状況が良好な領域に復帰するか、所定ルートを巡回するタスクを続行するのかを判断する。これによれば、移動体100は、所定ルートを巡回するタスクを可能な限り続行しつつも、管理センタ200と接続されない状態(すなわち、管理センタ200との無線通信が不調な状態)で停止してしまうことを抑制することができる。
【0061】
具体的には、図2に示すように、本実施形態に係る移動体100の移動体制御部120は、復帰ルート導出部121と、判断部122とを含む。
【0062】
復帰ルート導出部121は、移動体100の現在位置から無線通信の状況が良好な領域への復帰ルートを導出する。具体的には、復帰ルート導出部121は、移動体100の自己位置を示す位置情報と、BIMデータベース130に記憶された無線通信の電波強度に関する通信状況情報とに基づいて、移動体100の自己位置から無線通信の状況が良好な通信可能領域への復帰ルートを導出する。これによれば、移動体100は、無線通信の状況が不調となった場合に、導出された復帰ルートに沿って移動することで無線通信の状況が良好な通信可能領域へ復帰することができる。
【0063】
復帰ルート導出部121にて導出された復帰ルートは、移動体100ごとに管理センタ200に登録されてもよい。このような場合、管理センタ200は、無線通信による移動体100との接続が途切れた場合、登録された復帰ルートの終点に無線通信の中継機能を有する他の移動体を移動させることができる。これによれば、無線通信による管理センタ200との接続が途切れた移動体100は、通信可能領域311に復帰する前であっても、他の移動体の無線通信の中継機能を介して管理センタ200と接続することができる。したがって、管理センタ200は、無線通信による接続が途切れた移動体100との接続をより早く、かつ確実に回復することが可能である。
【0064】
無線通信の電波強度に関する通信状況情報は、例えば、移動体100の先の巡回時に無線通信が不調になった領域に関する情報、又は無線通信の電波強度をモニタリングした結果に関する情報などであり、移動体マップ310にラベリングされた情報の1つである。また、通信可能領域とは、例えば、無線通信の電波強度が通信の不安定さを感じさせない閾値(第1の閾値と定義する)以上となる領域である。
【0065】
図5図7を参照して、復帰ルート導出部121にて導出される復帰ルートについて説明する。図5図7は、通信不調領域312に位置する移動体100が通信可能領域311に移動するための復帰ルートのバリエーションを説明する説明図である。
【0066】
図5図7では、ラベリング情報として通信不調領域312及び通信可能領域311が設定された移動体マップ310がBIMデータベース130に記憶されているとする。移動体マップ310は、移動体100が移動可能な領域と、移動不可な領域とが判別された建築物のフロアの二次元構造を示すデータである。また、通信不調領域312は、移動体100と管理センタ200との無線通信が不調となるとラベリングされた領域である。一方、通信可能領域311は、無線通信の電波強度が通信の不安定さを感じさせない第1の閾値以上となる(移動体100と管理センタ200との無線通信が良好となる領域)である。
【0067】
所定ルートPRを巡回する移動体100Aが通信不調領域312に進入した場合、移動体100Aは、管理センタ200との無線通信が不調となったことを検知する。このとき、復帰ルート導出部121は、移動体100Aの自己位置と、移動体100Aが移動する所定ルートPRと、通信不調領域312及び通信可能領域311が設定された移動体マップ310とを参照することで、通信可能領域311へ復帰するための復帰ルートを導出する。
【0068】
例えば、図5に示すように、通信可能領域311へ復帰するために移動体100Aが所定ルートPRの逆方向に戻ることが困難である場合、復帰ルート導出部121は、所定ルートPRを順方向に移動することで移動体100Aを通信可能領域311へ復帰させる復帰ルートを導出してもよい。また、図6に示すように、通信可能領域311へ復帰するために移動体100が所定ルートPRの順方向に進むことが困難である場合、復帰ルート導出部121は、所定ルートPRを逆方向に移動することで移動体100Aを通信可能領域311へ復帰させる復帰ルートを導出してもよい。
【0069】
ただし、図7に示すように、通信可能領域311へ復帰するために移動体100Aが所定ルートPRの順方向及び逆方向のどちらに進むことも困難である場合があり得る。このような場合、復帰ルート導出部121は、移動体100Aをその場に待機させることを復帰ルートとして導出してもよい。復帰ルートとして移動体100Aがその場に待機することが登録されている場合、管理センタ200は、移動体100Aが待機している位置に、無線通信の中継機能を有する移動体100Bを移動させることができる。これによれば、移動体100Aは、移動体100Bの無線通信の中継機能の範囲TAに入ることで、通信不調領域312内であっても、無線通信による管理センタ200との接続を回復することができる。
【0070】
なお、復帰ルート導出部121は、移動体100が巡回する所定ルートとは無関係に、移動体100の現在位置から通信可能領域311への復帰ルートを導出してもよいことはいうまでもない。
【0071】
判断部122は、無線通信の状況が不調となった場合、通信状況が不調である領域で移動体100が動けなくなる可能性の程度を考慮して、所定ルートに沿った移動を継続するか、又は復帰ルートに沿って通信可能領域へ移動するかを判断する。
【0072】
無線通信の状況が不調である場合とは、無線通信の電波強度が移動体100と管理センタ200との接続を維持可能な閾値(第2の閾値と定義する。なお、第2の閾値は第1の閾値よりも低い閾値である)未満となる場合である。
【0073】
具体的には、判断部122は、移動体100の位置情報、移動体100の電源部160の電源残量に関する情報、及びBIMデータベース130に記憶されたBIMデータに基づいて、所定ルートに沿った移動を継続するか、又は復帰ルートに沿って通信可能領域へ移動するかを判断してもよい。例えば、判断部122は、移動体100が建築物の内部の充電設備に到達するまでの時間と、電源残量に基づく移動体100の残稼働時間とから算出される稼働マージン時間に基づいて、所定ルートに沿った移動を継続するか、又は復帰ルートに沿って通信可能領域へ移動するかを判断してもよい。
【0074】
稼働マージン時間は、例えば、下記の数式1に基づいて算出されてもよい。下記の数式1において、残稼働時間、及び通信状況は、図3で示した移動体データテーブル241の通信状況及び残稼働時間を用いてもよい。移動体100の速度は、移動体100の内部情報から取得され、充電設備までの距離は、BIMデータベース130に記憶されたBIMデータから取得される。
【0075】
【数1】
【0076】
すなわち、稼働マージン時間は、移動体100が電源部160の電源残量がなくなる前に電源部160の充電設備に到達可能なタイミングまでの残時間である。移動体100は、稼働マージン時間が大きいほど、充電設備に向かうまでに、より長い時間移動することができる。
【0077】
なお、「通信状況/100」に対する係数「0.5」は、管理センタ200に対する無線通信接続の試行によって消費される電力を考慮するための係数である。すなわち、電波強度が低く、通信状況が良好ではない(すなわち通信状況の値が0に近い)ほど、稼働マージン時間は減少する。「通信状況/100」に対する係数「0.5」は、管理センタ200に対する無線通信接続の試行の頻度、及び試行で消費される電力に基づいて適宜変更されてもよい。
【0078】
また、判断部122は、無線通信の状況が不調となった(無線通信の電波強度が移動体100と管理センタ200との接続を維持可能な閾値未満となった)ものの、無線通信の不調が想定済みである場合、所定ルートに沿った移動を継続することを判断してもよい。
【0079】
具体的には、判断部122は、BIMデータベース130に記憶された無線通信の電波強度に関する通信状況情報と、移動体100の位置情報とから移動体100の無線通信の状況が不調となることが想定される場合、所定ルートに沿った移動を継続することを判断してもよい。これは、無線通信の状況が不調となることが通信状況情報から想定済みである場合、将来的に無線通信の状況が改善するタイミングも通信状況情報から同様に想定されるためである。そのため、判断部122は、無線通信の不調は一時的なものであると判断して、所定ルートに沿った移動を継続することを判断してもよい。
【0080】
なお、移動体制御部120は、無線通信の状況が不調となった場合(無線通信の電波強度が移動体100と管理センタ200との接続を維持可能な閾値未満となった場合)、センサ部140による移動体100の周囲環境の撮像及びセンシングを停止してもよい。これによれば、移動体制御部120は、移動部170による移動以外での電力消費を低減することで、移動体100の移動可能な時間をより長くすることが可能である。
【0081】
<2.制御例>
続いて、図8を参照して、本実施形態に係る移動体100の制御例について説明する。図8は、本実施形態に係る移動体100の制御の流れを説明するフローチャート図である。
【0082】
図8に示すように、移動体100は、移動部170を駆動させることで巡回ルートを移動している(S101)。また、移動体100は、管理センタ200から無線通信の電波強度に関する通信状況情報を取得し、BIMデータベース130に記憶させる(S102)。
【0083】
次に、移動体100は、現在位置における無線通信の電波強度を確認する(S103)。例えば、移動体100は、無線通信が最も良好となる電波強度を「100」、無線通信が繋がらない(圏外となる)電波強度を「0」として0~100の範囲で無線通信の電波強度を表現してもよい。なお、移動体100は、移動体100の周囲の無線通信の状況が良好ではないと通信状況情報から判断される場合、確認した無線通信の電波強度をより低く補正してもよい。
【0084】
続いて、移動体100(詳細には判断部122)は、確認した電波強度が第2の閾値以上か否か判断する(S104)。第2の閾値とは、移動体100と管理センタ200との接続を維持可能な電波強度の目安となる閾値である。
【0085】
電波強度が第2の閾値以上である場合(S104/Yes)、移動体100は、管理センタ200に通信状況を送信する(S105)。また、移動体100は、巡回ルートの周囲の環境を撮像及びセンシングし(S106)、撮像画像及びセンシングデータなどを管理センタ200に送信する(S107)。なお、移動体100は、撮像画像に替えて、又は撮像画像に加えて、周囲の環境の三次元データを管理センタ200に送信してもよい。
【0086】
ここで、管理センタ200では、送信された撮像画像及びセンシングデータに基づいてBIMデータへのラベリングを行う。BIMデータへのラベリングは、オペレータ又は管理者による判断ベースで行われてもよく、ルールベースで行われてもよく、機械学習ベースで行われてもよい。その後、管理センタ200は、送信された撮像画像及びセンシングデータと、ラベリングとを用いて、BIMデータベース230に記憶されたBIMデータの更新を行う。BIMデータの更新は、例えば、BIMデータの内の数値情報又は画像情報に対して行われてもよい。
【0087】
一方、移動体100は、これから移動する巡回ルートを管理センタ200から取得し(S108)、取得した巡回ルートと、BIMデータベース130に記憶されたBIMデータとを照合する(S109)。次に、移動体100(詳細には復帰ルート導出部121)は、移動体100の現在位置から通信可能領域への復帰ルートを導出し、導出した復帰ルートを管理センタ200の登録する(S110)。
【0088】
通信可能領域とは、無線通信の状況が良好な領域であり、例えば、無線通信の電波強度が通信の不安定さを感じさせない閾値(第1の閾値と定義する)以上となる領域である。復帰ルートとしては、例えば、巡回ルートを順方向に進む前方帰還、巡回ルートを逆方向に戻る後方帰還、又は巡回ルートを順方向又は逆方向のいずれにも進むことが困難である場合にその場で待機する帰還困難の3パターンを例示することができる。
【0089】
電波強度が第2の閾値未満である場合(S104/No)、移動体100又は管理センタ200は、BIMデータに通信不調ラベルを追加する(S121)。移動体100から管理センタ200への通信が不調ながらも可能である場合、移動体100は、追加した通信不調ラベルを管理センタ200に送信してもよい。一方、移動体100から管理センタ200への通信が困難である場合、管理センタ200は、移動体100からの通信が所定時間無かった場合に通信不調ラベルをBIMデータに追加してもよい。
【0090】
続いて、移動体100は、周囲の環境の撮像及びセンシングを停止することで(S122)、管理センタ200との通信を抑制する。その後、移動体100(詳細には判断部122)は、帰還マージン時間を算出する(S123)。帰還マージン時間は、例えば、上述した数式1に従って算出することが可能である。なお、移動体100が帰還困難である場合、帰還マージン時間は、「充電設備までの距離」を無限大に設定して算出される。ただし、移動体100が一定時間待機すれば帰還可能となる場合、帰還マージン時間は、「充電設備までの距離」を有限の値に設定して算出される。
【0091】
さらに、移動体100(詳細には判断部122)は、帰還マージン時間が十分か否かを判断する(S124)。帰還マージン時間が閾値以上であり、十分である場合(S124/Yes)、移動体100は、ステップS108の動作に移行し、これからの巡回ルートを管理センタ200から取得することで(S108)、巡回ルートの移動を継続する。
【0092】
一方、帰還マージン時間が閾値未満であり、十分ではない場合(S124/No)、移動体100は、移動体100の存在するフロアを特定した(S125)後、巡回ルートを移動するタスクを停止する(S126)。移動体100の存在するフロアは、例えば、周囲の環境の気圧、又はフロアに存在する表示プレートなどから特定することが可能である。
【0093】
タスクの停止後、移動体100は、自己位置がエレベータ内であるか否かを判断する(S127)。自己位置がエレベータ内である場合(S127/Yes)、移動体100は、エレベータ外に出るためにその場で待機し(S131)、エレベータ外に出た後、再度、巡回ルートの移動を継続する(S101)。一方、自己位置がエレベータ内でない場合(S127/No)、移動体100は、復帰ルートに沿って移動することで(S128)、管理センタ200との通信が可能な通信可能領域に復帰することができる。
【0094】
なお、移動体100がその場で待機する場合、管理センタ200は、無線通信のゲートウェイ機能を備える他の移動体に、その場待機している移動体100の近傍への移動、及びゲートウェイ機能の有効化を指示してもよい。これによれば、移動体100は、他の移動体が備えるゲートウェイ機能を介して、管理センタ200との無線通信の接続を回復することができる。その後、管理センタ200は、オペレータに遠隔操作端末210を介した移動体100の遠隔操作を指示することで、移動体100を通信可能な領域に遠隔操作で移動させることができる。
【0095】
<3.効果>
以上にて説明したように、本実施形態に係る移動体制御システム1によれば、移動体100は、周囲の環境の撮像画像及びセンシングデータを管理センタ200に送信することで、管理センタ200におけるBIMデータを更新することができる。移動体100は、更新されたBIMデータを共有することで、より最適な巡回ルートを作成することができる。
【0096】
また、移動体制御システム1によれば、移動体100は、あらかじめ復帰ルートを登録すると共に、帰還マージン時間を算出することで、管理センタ200との無線通信が不調である場合でもタスクを可能な限り継続することができる。さらに、移動体100は、管理センタ200との無線通信が不調である場合に、周囲の環境の撮像及びセンシングを停止させ、消費電力を削減することで、帰還マージン時間を延長することができる。
【0097】
また、移動体制御システム1によれば、移動体100と管理センタ200との無線通信が不調である場合、移動体100は、移動体100の位置情報と、通信状況情報とを照らし合わせることで、無線通信の不調が想定済みであるのか否かを判断することができる。
【0098】
例えば、無線通信の不調が想定済みである場合、無線通信の不調がいずれ回復することも同様に想定される。そのため、移動体100は、無線通信の不調は一時的なものであると判断して、所定ルートの巡回を停止することなく継続することができる。一方で、無線通信の不調が想定済みではなかった場合、無線通信の不調がいずれ回復することが見込めない。そのため、移動体100は、無線通信の不調は継続的なものであると判断して、所定ルートの巡回を停止して、通信可能領域へ移動することができる。これによれば、移動体制御システム1は、移動体100の稼働率、及び移動体100の運用の利便性を向上させることが可能である。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0100】
1 移動体制御システム
10 ネットワーク
100 移動体
110 通信部
120 移動体制御部
121 復帰ルート導出部
122 判断部
130 BIMデータベース
140 センサ部
150 AI部
160 電源部
170 移動部
200 管理センタ
210 遠隔操作端末
220 業務管理部
230 BIMデータベース
240 管理データベース
250 通信装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8