(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111357
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】自己修復性変色性玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 9/00 20060101AFI20230803BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20230803BHJP
A63H 3/00 20060101ALI20230803BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20230803BHJP
C09K 9/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A63H9/00 R
A63H33/22 K
A63H3/00 V
A63H3/00 Z
C08L101/02
C09K9/02 C
C09K9/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013172
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神戸 靖章
【テーマコード(参考)】
2C150
4J002
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150CA02
2C150DC01
2C150DC17
2C150FC01
4J002AA011
4J002AA021
4J002BG131
4J002EL076
4J002FD096
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】 自己修復性材料と可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる自己修復性変色性玩具であって、熱や光により可逆的に色変化すると共に、応力等により切断された後であっても切断部の再接着が可能な自己修復性を有し、切断された玩具を元の形状に復元させたり、新たな形状に造形したりすることが自在であり、遊びのバリエーションを広げ、長時間使用しても飽きのこない自己修復性変色性玩具を提供する。
【解決手段】 自己修復性材料と、可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる、自己修復性変色性玩具。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己修復性材料と、可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる、自己修復性変色性玩具。
【請求項2】
前記自己修復性材料中に前記可逆変色性材料を含有してなる、請求項1記載の玩具。
【請求項3】
前記自己修復性材料が高分子材料である、請求項1又は2記載の玩具。
【請求項4】
前記高分子材料が少なくとも、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を含んでなる、請求項3記載の玩具。
【請求項5】
前記可逆変色性材料が、可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項6】
前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である、請求項5記載の玩具。
【請求項7】
前記可逆光変色性材料が、フォトクロミック化合物とオリゴマーとからなる、請求項5記載の玩具。
【請求項8】
前記可逆熱変色性材料が、前記自己修復性材料全量に対して0.1~30質量%で配合されてなる、請求項5又は6記載の玩具。
【請求項9】
前記可逆光変色性材料が、前記自己修復性材料全量に対して0.1~30質量%で配合されてなる、請求項5又は7記載の玩具。
【請求項10】
内部に基材を備えてなる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項11】
複数の前記自己修復性変色性成形体から構成される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項12】
基材、及び前記基材の一部又は全面に備えられる前記自己修復性材料からなる玩具構成物と、前記自己修復性変色性成形体とから構成される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の玩具。
【請求項13】
前記玩具が人形又は動物形象玩具であって、前記玩具構成物が前記人形又は動物形象玩具の胴体部又は頭部を備えてなる、請求項12記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性変色性玩具に関する。さらに詳細には、熱や光により可逆的に色変化すると共に、自己修復性を有する玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定のブロック共重合体エラストマーに、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分からなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料を含有した可逆熱変色性エラストマー組成物を利用した玩具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のエラストマー玩具は、熱により可逆的に色変化すると共に、高弾性且つ高強度であり、玩具としての商品性を満たすものである。しかしながら、上記の玩具は応力等により切断されると元の形状に復元させることが困難であり、繰り返し遊ぶことに制限を伴う場合があった。また、熱による色変化や伸縮を繰り返し行うことができるのみであるため、遊戯が単調になりがちで飽きのくることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、熱や光により可逆的に色変化すると共に、応力等により切断された後であっても切断部が再接着する自己修復性を有し、切断された玩具を元の形状に復元させたり、新たな形状に造形したりすることが可能な自己修復性変色性玩具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自己修復性材料と、可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる、自己修復性変色性玩具を要件とする。
さらには、前記自己修復性材料中に前記可逆変色性材料を含有してなること、前記自己修復性材料が高分子材料であること、前記高分子材料が少なくとも、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を含んでなること、前記可逆変色性材料が、可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料であること、前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料であること、前記可逆光変色性材料が、フォトクロミック化合物とオリゴマーとからなること、前記可逆熱変色性材料が、前記自己修復性材料全量に対して0.1~30質量%で配合されてなること、前記可逆光変色性材料が、前記自己修復性材料全量に対して0.1~30質量%で配合されてなることを要件とする。
さらには、前記玩具が内部に基材を備えてなること、複数の前記自己修復性変色性成形体から構成されること、基材、及び前記基材の一部又は全面に備えられる前記自己修復性材料からなる玩具構成物と、前記自己修復性変色性成形体とから構成されること、前記玩具が人形又は動物形象玩具であって、前記玩具構成物が前記人形又は動物形象玩具の胴体部又は頭部を備えてなることを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、自己修復性材料と可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる自己修復性変色性玩具であって、熱や光により可逆的に色変化すると共に、応力等により切断された後であっても切断部の再接着が可能な自己修復性を有し、切断された玩具を元の形状に復元させたり、新たな形状に造形したりすることが自在であり、遊びのバリエーションを広げ、長時間使用しても飽きのこない自己修復性変色性玩具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図4】本発明の自己修復性変色性玩具の一実施例である。
【
図5】本発明の自己修復性変色性玩具の他の実施例である。
【
図6】本発明の自己修復性変色性玩具の他の実施例である。
【
図7】本発明の自己修復性変色性玩具の他の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の自己修復性変色性玩具(以下、「変色性玩具」又は「玩具」と表すことがある)は、自己修復性材料と可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性成形体を用いてなる。以下に、本発明による玩具を構成する各材料について説明する。
【0009】
本発明に適用される自己修復性材料の「自己修復性」とは、材料に損傷が生じても自ら修復する、或いは処理を施すことで修復される性状のことである。
自己修復性を発現させるためには、例えば、材料への可逆的な結合の導入が挙げられ、材料に損傷が生じた場合に原子、分子レベルで再結合することにより、材料の修復が行われる。また、材料へ修復剤を内包したマイクロカプセルを導入することによっても自己修復性を発現させることができ、材料に損傷した場合に修復剤が損傷箇所で反応して、材料の修復が行われる。
【0010】
自己修復性材料に用いられる材料としては、例えば、金属、セラミック、コンクリート、ガラス、高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、軽量で成形加工性に優れ、各種形態の玩具を形成し易いことから、自己修復性材料として高分子材料を用いることが好ましい。
高分子材料による自己修復性材料としては、可逆的な結合である非共有結合を有する高分子材料が用いられる。非共有結合としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、π-π相互作用、配位結合、ホスト-ゲスト相互作用等が挙げられる。これらの中でも、ホスト-ゲスト相互作用による非共有結合を有する高分子材料、即ち、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を少なくとも含んでなる高分子材料が好ましい。
ホスト-ゲスト相互作用とは、ホスト基とゲスト基による比較的弱い結合であり、例えば、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、イオン相互作用、配位結合、π-π相互作用等により相互作用を生じる。相互作用によりホスト基がゲスト基を包接して包接錯体を形成し、また包接錯体は外部応力等で容易に解離し、これが可逆的に生じるため、ホスト-ゲスト相互作用により自己修復性を発現させることができる。よって、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を少なくとも含んでなる高分子材料は、自己修復性材料として適用することができる。
つまり、ホスト-ゲスト相互作用による自己修復性材料は、応力等により材料が切断された場合であっても、切断部を接触させることにより再接着し、切断と修復を繰り返し行うことができる。よって、このような自己修復性材料を用いた玩具は、任意箇所での切断が可能であると共に、切断部どうしを接触させて元の形状へ復元したり、新たな形状に造形したりすることが可能であり、さらに切断と修復を繰り返し行うことができるため、玩具を繰り返し遊ぶことができ、遊戯性に優れるものである。
【0011】
自己修復性材料に適用される、ホスト基及びゲスト基を有する重合体(以下、「重合体」と表すことがある)を少なくとも含んでなる高分子材料としては、側鎖にホスト基及びゲスト基を有する重合体の架橋構造体と、水よりも沸点が高い親水性溶媒とからなる高分子材料を例示できる。この高分子材料は、架橋構造体中に親水性溶媒を包含した高分子ゲルである。
従来の、自己修復性を有するハイドロゲルは、包含する水分が蒸発して乾固すると、自己修復性が低下し易くなるという問題があるが、上記の高分子材料(高分子ゲル)は、水よりも沸点が高い親水性溶媒を包含することにより、時間の経過に伴う溶媒の揮発が生じ難く、長期間に亘って自己修復性が維持された耐久性に優れるものであると共に、高い破断強度と伸縮性を有するものである。
【0012】
架橋構造体は、重合体が架橋されて形成された三次元網目構造を有するものであり、ホスト-ゲスト相互作用により形成された結合を架橋点としている。
【0013】
ホスト基としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、カリックス[6]アレーンスルホン酸、カリックス[8]アレーンスルホン酸、12-クラウン-4,18-クラウン-6,[6]パラシクロファン、[2,2]パラシクロファン、ククルビット[6]ウリル、及びククルビット[8]ウリル等のホスト分子から、1個の水素原子又はヒドロキシ基が除去されることにより形成される一価の基を例示でき、これらのホスト基はさらに置換基を有していてもよい。
上記ホスト基は、後述するゲスト基との相互作用が起こり易く、安定した架橋構造を有する架橋構造体が形成され、また、優れた自己修復性が発揮され易いため、好適である。
【0014】
ゲスト基としては、例えば、炭素数4~18の鎖状又は環状のアルキル化合物及びそのアルコール誘導体、アリール化合物、カルボン酸誘導体、アミノ誘導体、環状アルキル基又はフェニル基を有するアゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、芳香族化合物及びそのアルコール誘導体、アミン誘導体、フェロセン誘導体、アゾベンゼン、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フラーレン等の炭素原子で構成されるクラスター類、ダンシル化合物等のゲスト分子から、1個の水素原子又はヒドロキシ基が除去されることにより形成される一価の基を例示でき、これらのゲスト基はさらに置換基を有していてもよい。
【0015】
炭素数4~18の鎖状又は環状のアルキル化合物としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、アダマンタン等を例示でき、いずれの化合物も直鎖状又は分岐鎖状のいずれであってもよい。
【0016】
側鎖にホスト基及びゲスト基を有する重合体は、ホスト基を有する化合物と、ゲスト基を有する化合物とを少なくとも含んでなる混合物による重合体である。
なお、ホスト基及びゲスト基を有していない重合体と、ホスト分子及びゲスト分子を反応させて、重合体の側鎖にホスト基及びゲスト基を導入する方法により得られる重合体であってもよい。
【0017】
ホスト基を有する化合物〔以下、「単量体(1)」と表すことがある〕としては、例えば、下記式(1a)で示される化合物を例示できる。
【化1】
(式中、R
aは水素原子又はメチル基を示し、R
1はヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基、カルボキシ基のいずれかの一価の基から、1個の水素原子を除去することにより形成される二価の基を示し、R
Aはホスト基を示す)
【0018】
上記式(1a)で示される化合物としては、例えば、6-(メタ)アクリルアミド-α-シクロデキストリン、6-(メタ)アクリルアミド-β-シクロデキストリン、α-シクロデキストリンメタクリレート、β-シクロデキストリンメタクリレート、α-シクロデキストリンアクリレート、β-シクロデキストリンアクリレート等を例示できる。
【0019】
式(1a)において、R1はアミド基、カルボキシ基のいずれかの一価の基から、1個の水素原子を除去することにより形成される基であることが好ましい。即ち、水素原子がRAで置換されたアミド基を側鎖に有する構造、及び水素原子がRAで置換されたカルボキシ基が側鎖に有する構造の少なくともいずれか一方を有していることが好ましい。この場合、重合体の合成が容易であり、また、耐乾燥性、自己修復性、及び強度等の物性に優れた高分子材料を形成しやすいため、好適である。
【0020】
ゲスト基を有する化合物〔以下、「単量体(2)」と表すことがある〕としては、例えば、下記式(2a)で示される化合物を例示できる。
【化2】
(式中、R
aは水素原子又はメチル基を示し、R
2はヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基、カルボキシ基のいずれかの一価の基から、1個の水素原子を除去することにより形成される二価の基を示し、R
Bはゲスト基を示す)
【0021】
上記式(2a)で示される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、1-アクリルアミドアダマンタン、N-(1-アダマンチル)(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、N-(1-ナフチルメチル)(メタ)アクリルアミド等を例示できる。なお、ゲスト基を有する化合物として、スチレンを使用することもできる。
【0022】
式(2a)において、R2がアミド基、カルボキシ基のいずれかの一価の基から、1個の水素原子を除去することにより形成される基であることが好ましい。即ち、水素原子がRBで置換されたアミド基を側鎖に有する構造、及び水素原子がRBで置換されたカルボキシ基を側鎖に有する構造の少なくともいずれか一方を有していることが好ましい。この場合、重合体の合成が容易であり、また、耐乾燥性、自己修復性、及び強度等の物性に優れた高分子材料を形成しやすいため、好適である。
【0023】
ホスト-ゲスト相互作用が起こり易く、自己修復性をより向上させることから、ホスト基としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、又はこれらの誘導体により形成される置換基であることが好ましい。また、ゲスト基としては、n-ブチル基、n-ドデシル基、tert-ブチル基、アダマンチル基が好ましい。
ホスト基とゲスト基の組み合わせとしては、α-シクロデキストリンとn-ドデシル基、又はβ-シクロデキストリンとアダマンチル基が好ましい。
【0024】
ホスト基を有する化合物とゲスト基を有する化合物とを含んでなる混合物はさらに、ホスト基及びゲスト基のいずれも有していない化合物〔以下、「単量体(3)」と表すことがある〕を含んでいてもよく、例えば、下記式(3a)で示される化合物を例示できる。
【化3】
(式中、R
aは水素原子又はメチル基を示し、R
3はハロゲン原子、ヒドロキシ基、チオール基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいカルボキシ基、置換基を有していてもよいアミド基のいずれかを示す)
【0025】
上記式(3a)で示される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0026】
式(3a)において、R3が、アミノ基;アミド基;水素原子がアルキル基、ヒドロキシ基、又はアルコシル基で置換されたアミド基;カルボキシ基;水素原子がアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルコシル基で置換されたカルボキシ基であることが好ましい。この場合、重合体の合成が容易であり、また、耐乾燥性及び強度等の物性に優れた高分子材料を形成しやすいため、好適である。
【0027】
架橋構造体を構成する重合体は、上記のホスト基及びゲスト基を有していれば、主鎖の構造は特に限定されるものではない。
重合体としては上記式(1a)、式(2a)、及び式(3a)の化合物の混合物(以下、「単量体混合物」と表すことがある)を重合することにより得られるものが好ましい。
なお、重合体中の各単量体による繰り返し構成単位は、規則的に配列していてもよいし、或いはランダムに配列していてもよい。
【0028】
重合体が、単量体(1)~(3)により構成される場合、単量体(1)~(3)の配合割合は特に限定されるものではない。得られる重合体のホスト-ゲスト相互作用が生じ易くなり、重合体が安定した架橋構造体を形成し易く、さらに自己修復性に優れる高分子材料が得られやすいことから、単量体(1)~(3)全量に対して、単量体(1)を0.5~10mol%、単量体(2)を0.5~10mol%とすることが好ましい。
高分子材料の自己修復性をより向上させると共に透明性に優れることから、単量体(1)~(3)の全量に対して、単量体(1)を1~5mol%、単量体(2)を1~5mol%とすることがより好ましい。
高分子材料の自己修復性をさらに向上させる共に透明性に優れ、且つ伸縮性を向上させることから、単量体(1)~(3)の全量に対して単量体(1)を2~4mol%、単量体(2)を2~4mol%とすることがさらに好ましい。
【0029】
単量体(1)~(3)により構成される重合体の構成単位は、単量体(1)に由来する構成単位と、単量体(2)に由来する構成単位と、単量体(3)に由来する構成単位とを含んで形成される。つまり、これらの構成単位の割合(モル比)は、重合体の製造に使用される各単量体のモル比に一致するとみなすことができる。
【0030】
単量体混合物の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、所定量の単量体(1)~(3)を、従来知られている任意の方法により混合することにより調製することができる。
【0031】
本発明に適用される上記高分子材料は、上記重合体中の架橋構造体中に水を包含させたハイドロゲルを、水よりも沸点が高い親水性溶媒に浸漬させて、水の一部又は全部を親水性溶媒に置換することにより製造することができ、高分子ゲルとして得られるものである。
なお、上記により製造した高分子材料(高分子ゲル)は、架橋構造体に元々包含される水を含有した状態であってもよい。
【0032】
ハイドロゲルは、上記の単量体混合物を水性媒体中で、従来知られている任意の重合反応により重合させることで製造することができる。
【0033】
水性媒体としては水が挙げられるが、ハイドロゲルの形成が阻害されない程度であれば、水とその他の溶媒の混合溶媒を水性媒体として用いることもできる。
その他の溶媒としては、例えば、後述する水よりも沸点が高い親水性溶媒や、低級アルコール等の水と相溶性のある有機溶媒等を例示できる。
【0034】
単量体混合物中における水性媒体の配合割合は特に限定されるものではないが、水性媒体は単量体混合物の全量に対して、好ましくは50~150質量%、より好ましくは60~99質量%の範囲で配合される。水性媒体の配合割合が上記の範囲内にあることにより、安定なハイドロゲルが形成され、最終的に得られる高分子材料の耐乾燥性に優れると共に、自己修復性等の物性の低下を生じ難くすることができる。
【0035】
単量体混合物を重合させるために、重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(以下、「APS」と表すことがある)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕ジヒドロクロライド、1,1′-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、光重合開始剤等を例示できる。これらの化合物の中でも、APS、2,2′-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕ジヒドロクロライドが好ましい。
重合性開始剤は単量体混合物の全量に対して、好ましくは0.5~5mol%の範囲で配合される。
【0036】
単量体混合物には、その他必要に応じて、重合促進剤、架橋剤等の添加剤を配合させることもできる。
重合促進剤としては、例えば、N,N,N′,N′-テトラメチルエチレンジアミン等を例示できる。
【0037】
高分子ゲルに包含される、水よりも沸点が高い親水性溶媒(以下、「親水性溶媒」と表すことがある)とは、常圧で100℃を超える沸点を有し、且つ親水性を示す溶媒である。
【0038】
親水性溶媒の沸点の上限は特に限定されるものではないが、ハイドロゲルの膨潤性に優れ、物性の悪化を引き起こし難いことから、常圧で300℃以下であることが好ましい。
【0039】
水よりも沸点が高い親水性溶媒としては、架橋構造体との親和性が高く、自己修復性材料の乾燥を生じ難くし、耐久性をより向上させることができることから、ヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。
ヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等を例示できる。
上記親水性溶媒は、一種又は二種以上を併用して用いることができる。
【0040】
親水性溶媒には水を含有させてもよく、水は親水性溶媒全量に対して、好ましくは0~90体積%、より好ましくは0~70体積%、さらに好ましくは0~50体積%の範囲で配合される。水の配合割合が上記の範囲内にあることにより、耐乾燥性を損ない難くすることができる。
【0041】
親水性溶媒としては、より高い破断強度や伸縮性を付与することができることから、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。さらに、自己修復性、耐乾燥性、引張強度、耐久性に優れることから、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。
【0042】
架橋構造体と親水性溶媒の配合割合は特に限定されるものではないが、親水性溶媒は架橋構造体全量に対して、好ましくは50~150質量%、より好ましくは60~99質量%の範囲で配合される。親水性溶媒の配合割合が上記の範囲内にあることにより、耐久性を損ない難くすると共に、長期間経過後の物性の低下を生じ難くすることができる。
【0043】
また、自己修復性材料に適用される、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を少なくとも含んでなる高分子材料としては、ホスト基がシクロデキストリン誘導体であるホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基含有重合性単量体と、(メタ)アクリルエステル化合物を含有する第3の重合性単量体とを含む単量体混合物の重合体であり、ホスト基含有重合性単量体とゲスト基含有重合性単量体は、第3の重合性単量体に溶解する性質を有する高分子材料を例示できる。このような高分子材料は、自己修復性を有すると共に、伸縮性に優れるものである。
【0044】
ホスト基は、シクロデキストリン誘導体から1個の水素原子又はヒドロキシ基が除去されることにより形成される一価の基である。なお、除去される水素原子又はヒドロキシ基は、シクロデキストリン誘導体のどの部位であってもよい。ホスト基を形成し易いことから、シクロデキストリン誘導体から1個のヒドロキシ基が除去されることにより形成される一価の基であることが好ましい。
【0045】
シクロデキストリンとしては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンを例示できる。シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンが有する少なくとも1個のヒドロキシ基の水素原子が、炭化水素基、アシル基、及びCONHR(Rは、メチル基又はエチル基を示す)から選ばれる少なくとも一種の基で置換された構造を有するものである。
【0046】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を例示できる。
ホスト基含有重合性単量体が第3の重合性単量体に溶解し易く、重合体がホスト-ゲスト相互作用を形成し易いことから、炭化水素基の炭素数は1~4であることが好ましい。なお、炭化水素基は置換基を有するものであってもよい。
【0047】
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ホルミル基等を例示できる。
ホスト基含有重合性単量体が第3の重合性単量体に溶解し易く、重合体がホスト-ゲスト相互作用を形成し易いことから、アセチル基が好ましい。なお、アシル基は置換基を有するものであってもよい。
【0048】
-CONHR(Rは、メチル基又はエチル基を示す)としては、メチルカルバメート基又はエチルカルバメート基を例示できる。ホスト基含有重合性単量体が第3の重合性単量体に溶解し易く、重合体がホスト-ゲスト相互作用を形成し易いことから、エチルカルバメート基が好ましい。
【0049】
ホスト基含有重合性単量体は、上記のホスト基と、重合性の官能基を有する化合物であり、ホスト基は、ホスト基含有重合性単量体の側鎖に結合している。
重合性の官能基としては、ラジカル重合性を示す官能基が挙げられ、例えば、アクリロイル基〔CH2=CH-C(=O)-〕、メタクリロイル基〔CH2=C(-CH3)-C(=O)-〕、スチリル基、ビニル基、アリル基等の、炭素-炭素二重結合を含む基を例示できる。
【0050】
ホスト基含有重合性単量体の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、ホスト基を有していない重合性単量体と、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体とを反応させることで、ホスト基含有重合性単量体を製造することができる。
【0051】
重合性単量体と、シクロデキストリンとを反応させてホスト基含有重合性単量体を製造する場合、重合性単量体をシクロデキストリンで置換して、シクロデキストリン置換重合性単量体を製造し、このシクロデキストリン置換重合性単量体のシクロデキストリンに存在するヒドロキシ基の水素原子を、炭化水素基、アシル基、又は-CONHR(Rは、メチル基又はエチル基を示す)に置換することでホスト基含有重合性単量体を製造することができる。
シクロデキストリンに存在するヒドロキシ基の水素原子を、炭化水素基、アシル基、又は-CONHR(Rは、メチル基又はエチル基を示す)に置換するには、それぞれ、従来知られているアルキル化反応、アシル化反応、又はアルキルカルバメート化反応を用いることができる。
また、重合性単量体と、シクロデキストリンに存在するヒドロキシ基の水素原子を炭化水素基、アシル基、又は-CONHR(Rは、メチル基又はエチル基を示す)で置換したシクロデキストリン誘導体とを反応させて、ホスト基含有重合性単量体を製造することもできる。
【0052】
ゲスト基としては、例えば、炭素数3~30の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、有機金属錯体等を例示でき、具体的には、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、イソボルニル基、アダマンチル基等を例示できる。なお、ゲスト基は置換基を有するものであってもよく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、保護されていてもよいヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、アミド基等を例示できる。
また、ゲスト基としては、例えば、アルコール誘導体、アリール化合物、カルボン酸誘導体、アミノ誘導体、環状アルキル基又はフェニル基を有するアゾベンゼン誘導体、桂皮酸誘導体、芳香族化合物及びそのアルコール誘導体、アミン誘導体、フェロセン誘導体、アゾベンゼン、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フラーレン等の炭素原子で構成されるクラスター類、ダンシル化合物等のゲスト分子から、1個の原子(例えば、水素原子)が除去されることにより形成される一価の基も例示できる。
【0053】
ゲスト基含有重合性単量体は、上記のゲスト基と、重合性の官能基を有する化合物であり、ゲスト基は、ゲスト基含有重合性単量体の側鎖に結合している。
重合性の官能基は、前述の炭素-炭素二重結合を含む基と同様である。
【0054】
ゲスト基含有重合性単量体の重合性単量体としては、ビニル基を有する化合物が好ましく、従来知られている方法により製造することができる。また、市販品から入手することも可能である。
【0055】
ホスト基とゲスト基とが包接錯体を形成し易く、優れた自己修復性を発現し易いことから、ホスト基とゲスト基の組み合わせとしては、(1)ホスト基がα-シクロデキストリン由来の基であり、ゲスト基がオクチル基、ドデシル基から選ばれる少なくとも一種である組み合わせ、(2)ホスト基がβ-シクロデキストリン由来の基であり、ゲスト基がアダマンチル基、イソボルニル基から選ばれる少なくとも一種である組み合わせ、(3)ホスト基がγ-シクロデキストリン由来の基であり、ゲスト基がシクロドデシル基、アダマンチル基から選ばれる少なくとも一種である組み合わせが好ましい。
【0056】
第3の重合性単量体は、上記のホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体を溶解できる性質を有する単量体であれば、特に限定されるものではない。
ここで、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体が第3の重合性単量体に溶解するとは、温度20℃において第3の重合性単量体100質量部あたり、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体の混合物の全量で1質量部以上溶解することを意味する。温度20℃において第3の重合性単量体100質量部あたり、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体の混合物の全量で10質量部以上溶解することが好ましい。
【0057】
第3の重合性単量体は、(メタ)アクリルエステル化合物を含有するものである。
(メタ)アクリルエステル化合物は、側鎖の炭素数(但し、エステル結合中の炭素原子は含まない)が3~10であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリルエステル化合物の側鎖とは、主鎖である炭素-炭素二重結合の炭素原子に結合している置換基であって、エステル結合を含む置換基のことをいう。
【0058】
第3の重合性単量体としては、一種の非水溶性(メタ)アクリレートのみであってもよいし、二種以上の非水溶性(メタ)アクリレートを併用して用いることもできる。また、一種の水溶性(メタ)アクリレートのみであってもよいし、二種以上の水溶性(メタ)アクリレートを併用して用いることもできる。
さらには、一種又は二種以上の非水溶性(メタ)アクリレートと、一種又は二種以上の水溶性(メタ)アクリレートとの混合物とすることもできる。第3の重合性単量体が、非水溶性(メタ)アクリレートと水溶性(メタ)アクリレートを含むことにより、高分子材料は、自己修復性を有すると共に、優れた伸縮性と柔軟性を有する。
【0059】
第3の重合性単量体は、(メタ)アクリルエステル化合物と共に必要に応じて、水溶性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含んでいてもよい。
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドを例示できる。第3の重合性単量体が水溶性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含むことにより、高分子材料は優れた破断強度及び柔軟性を有する。
第3の重合性単量体が水溶性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む場合、(メタ)アクリルエステル化合物としては、4-ヒドロキシブチルアクリレート、2-メトキシアクリレートから選ばれる一種以上であることが好ましい。この場合、水溶性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0060】
第3の重合性単量体が水溶性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む場合、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体は、第3の重合性単量体の全量に対して、好ましくは1~80質量%、より好ましくは3~60質量%、さらに好ましくは5~50質量%の範囲で配合される。
【0061】
(メタ)アクリルエステル化合物としては、全てアクリレート化合物であることが好ましい。また、第3の重合性単量体に含有される(メタ)アクリルアミド又はその誘導体としては、アクリルアミド又はアクリルアミド誘導体が好ましい。
【0062】
上記した、ホスト基及びゲスト基の好ましい組み合わせにおいて、第3の重合性単量体としては、2-メトキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェニルエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートのいずれか一種以上を含むことが好ましい。この場合において、第3の重合性単量体がN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミドを含むことも好ましい。
【0063】
単量体混合物は、上記のホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基含有重合性単量体と、第3の重合性単量体とを含む。
ホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基含有重合性単量体と、第3の重合性単量体の配合割合は特に限定されるものではないが、第3の重合性単量体に、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体が溶解し易く、自己修復性及び伸縮性に優れる高分子材料が得られ易いことから、ホスト基含有重合性単量体及びゲスト基含有重合性単量体はそれぞれ、ホスト基含有重合性単量体、ゲスト基含有重合性単量体、及び第3の重合性単量体の全量に対して、好ましくは0.01~10mol%、より好ましくは0.05~8mol%、さらに好ましくは0.1~3mol%の範囲で配合される。
【0064】
単量体混合物の調製方法は特に限定されるものではなく、例えば、所定量のホスト基含有重合性単量体と、ゲスト基含有重合性単量体と、第3の重合性単量体とを、従来知られている任意の方法により混合することにより調製することができる。
【0065】
重合体は、上記の重合性単量体の混合物を、従来知られている任意の重合反応により重合させることで製造することができる。
また、重合反応では溶媒を用いることができるが、上記の重合性単量体の混合物は溶液であることから、溶媒の不存在下で重合を行うこともできる。
【0066】
重合性単量体の混合物を重合させるために、重合開始剤を用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム等の過硫酸化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、光重合開始剤等が挙げられる。
重合開始剤は重合性単量体の混合物の全量に対して、好ましくは0.01~10mol%、より好ましくは0.1~5mol%、さらに好ましくは0.2~4mol%の範囲で配合される。
【0067】
重合体は、重合性単量体の混合物を重合して形成されることから、重合体の構成単位はホスト基含有重合性単量体に由来する構成単位と、ゲスト基含有重合性単量体に由来する構成単位と、第3の重合性単量体に由来する構成単位とを含んで形成される。つまり、これらの構成単位の割合(モル比)は、重合体の製造に使用される各単量体のモル比と一致するとみなすことができる。
【0068】
上記した高分子材料には、その他必要に応じて、各種添加剤を配合させることもできる。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、電解質等を例示できる。
【0069】
ホスト基及びゲスト基を有する重合体を含んでなる高分子材料は、ホスト基及びゲスト基によりホスト-ゲスト相互作用が生じるため、自己修復性を発現する。このような高分子材料は、応力が加わるとホスト基とゲスト基の相互作用が解消し材料が切断されるが、ホスト基とゲスト基の結合は可逆的であるため、切断部どうしを接触させることによりホスト基とゲスト基の間で再結合が生じ、切断された材料が再接着して材料の修復が起こる。また、ホスト基とゲスト基の結合は一度解消されても再結合し易いため、再接着後の材料は初期の材料強度を保持し易い。
また、上記の高分子材料は、切断部以外の箇所で接触させてもホスト基とゲスト基の再結合が生じて自己修復性を発現するため、材料どうしを接触させることにより複雑な形状に造形することもできる。つまり、このような高分子材料を用いた玩具は、任意箇所で切断した後に、切断部どうしを接触させて元の形状に戻すことができるだけでなく、切断部以外の箇所で接触させて、より複雑な新しい形状の玩具を造形することができるため、長時間遊んでも飽きることがなく、遊戯性に優れるものである。
【0070】
高分子材料は、目的の用途に応じて種々の形状とすることができ、例えば、フィルム状、ブロック状、シート状、棒状、球状、楕円球状、歪曲状、繊維状等の種々の形状に成形することができる。
【0071】
本発明に適用される可逆変色性材料としては、温度変化により可逆的に色変化する可逆熱変色性材料や、光の照射により可逆的に色変化する可逆光変色性材料が挙げられる。
【0072】
可逆熱変色性材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)(イ)成分及び(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体から少なくともなる可逆熱変色性組成物を、マイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、又は上記の可逆熱変色性組成物を熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂中に分散させた可逆熱変色性樹脂粒子が挙げられる。
可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることができる(
図1参照)。
【0073】
また、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報、特開2005-1369号公報等に記載されているヒステリシス幅が大きい特性(ΔH=8~70℃)を示し、温度変化による発色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度t
1以下の温度域での発色状態、又は完全消色温度t
4以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔発色開始温度t
2~消色開始温度t
3の間の温度域(実質二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることもできる(
図2参照)。
【0074】
以下に各(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分について具体的に説明する。
【0075】
(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
【0076】
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられる。
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、並びにそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0077】
以下に(イ)成分に用いることができる化合物を例示する。
3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ビス(N-フェニル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-クロロアミノ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジ-n-ペンチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
6-ジエチルアミノ-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-n-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2,4-ジエチルオキシフェニル)-4-〔4-ビス(4-メチルオキシフェニル)アミノフェニル〕ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
【0078】
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物のほか、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0079】
(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、可逆熱変色性成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群〕、及び電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物が挙げられる。上記の(ロ)成分の中でも、活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
【0080】
活性プロトンを有する化合物群としては、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、酸性リン酸エステル及びその誘導体、アゾ-ル系化合物及びその誘導体、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、環状カルボスルホイミド類、炭素数2~5のハロヒドリン類、スルホン酸及びその誘導体、並びに無機酸類等が挙げられる。カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族カルボン酸及びその誘導体、又は、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びその誘導体が好ましい。
偽酸性化合物群としては、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物の金属塩、カルボン酸の金属塩、酸性リン酸エステルの金属塩、スルホン酸の金属塩、芳香族カルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸とスルホン酸の混合無水物、シクロオレフィンジカルボン酸無水物、尿素及びその誘導体、チオ尿素及びその誘導体、グアニジン及びその誘導体、並びにハロゲン化アルコール類等が挙げられる。
電子空孔を有する化合物群としては、硼酸塩類、硼酸エステル類、及び無機塩類等が挙げられる。
【0081】
上記の(ロ)成分の中でも、より有効に熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。
フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物には、モノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、さらに、ビスフェノール化合物及びトリスフェノール化合物、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物は、少なくともベンゼン環を2個以上有することが好ましい。また、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物は、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0082】
フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物等の金属塩が含む金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、及びモリブデン等を例示できる。
【0083】
以下に(ロ)成分に用いることができる化合物を例示する。
フェノール、o-クレゾール、4-n-p-ノニルフェノール、4-n-オクチルフェノール、4-n-ドデシルフェノール、4-n-ステアリルフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、2-フェニルフェノール、4-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、4-tert-ブチルカテコール、2,4-ジヒドロキシ-4′-tert-ブチルベンゾフェノン、没食子酸ドデシル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-イソプロポキシ-4′-ヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4′-[1-{4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル}エチリデン]ビスフェノール、4,4′-〔4-(4-ヒドロキシフェニル)-sec-ブチリデン〕ビス(2-メチルフェノール)
【0084】
(イ)成分及び(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
本発明による可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
【0085】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効である。
【0086】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられる。
【0087】
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールとのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝若しくは置換基を有する飽和脂肪酸と、分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールとのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
【0088】
さらに、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物を例示できる。
【0089】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと、炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
【0090】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類が挙げられる。
【0091】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効である。
【0092】
上記のアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類としては、例えば、特開2020-100710号公報に記載された化合物を例示できる。
【0093】
また、(ハ)成分として下記式(1)で示される化合物であってもよい。
【化4】
〔式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X
1及びX
2のいずれか一方は-(CH
2)
nOCOR
2又は-(CH
2)
nCOOR
2、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、R
2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、r及びpはそれぞれ独立して、1~3の整数を示す〕
式(1)で示される化合物のうち、R
1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好ましく、さらにR
1が水素原子であり、かつ、mが0の場合がより好ましい。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記式(2)で示される化合物である。
【化5】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、好ましくは炭素数10~24のアルキル基であり、より好ましくは炭素数12~22のアルキル基である)
【0094】
さらに、(ハ)成分として下記式(3)で示される化合物であってもよい。
【化6】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ独立して、1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0095】
さらに、(ハ)成分として下記式(4)で示される化合物であってもよい。
【化7】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
【0096】
さらに、(ハ)成分として下記式(5)で示される化合物であってもよい。
【化8】
(式中、Rは炭素数1~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1~3の整数を示す)
【0097】
さらに、(ハ)成分として下記式(6)で示される化合物であってもよい。
【化9】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
【0098】
さらに、(ハ)成分として下記式(7)で示される化合物であってもよい。
【化10】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す)
【0099】
さらに、(ハ)成分として下記式(8)で示される化合物であってもよい。
【化11】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基又は炭素数3~18の脂肪族アシル基を示し、Xは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子又はメチル基を示し、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0100】
さらに、(ハ)成分として下記式(9)で示される化合物であってもよい。
【化12】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す)
【0101】
さらに、(ハ)成分として下記式(10)で示される化合物であってもよい。
【化13】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基、炭素数6~11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5~7のシクロアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0102】
さらに、(ハ)成分として下記式(11)で示される化合物であってもよい。
【化14】
(式中、Rは炭素数3~8のシクロアルキル基又は炭素数4~9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1~3の整数を示す)
【0103】
さらに、(ハ)成分として下記式(12)で示される化合物であってもよい。
【化15】
(式中、Rは炭素数3~17のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキルアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは1~3の整数を示す)
【0104】
式(2)~(12)で示される化合物としては、例えば、特開2020-100710号公報に記載された化合物を例示できる。
【0105】
また、電子受容性化合物として没食子酸エステル(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)等を用いた加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を適用することもできる(
図3参照)。
【0106】
可逆熱変色性組成物は、上記の(イ)成分、(ロ)成分、及び(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分5~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~100の範囲である(上記した割合はいずれも質量部である)。
【0107】
可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、「マイクロカプセル顔料」と表すことがある)を形成したり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させて可逆熱変色性樹脂粒子を形成したりして使用することができるが、可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料とすることが好ましい。これは、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができ、さらに、種々の使用条件において、可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0108】
マイクロカプセル化は、公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン-ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。さらにマイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供したりすることもできる。
なお、マイクロカプセル化の際に、一般の染料や顔料等の非変色性着色剤を配合することにより、有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすこともできる。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
【0109】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μm、さらに好ましくは1~3μmの範囲が実用を満たす。平均粒子径が10μmを超えると、自己修復性材料中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
なお、平均粒子径は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔(株)マウンテック製、製品名:マックビュー〕を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕を用いて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記のソフトウェア又はコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA-300〕を用いて、体積基準の粒子径及び平均粒子径を測定してもよい。
【0110】
可逆光変色性材料としては、太陽光、紫外光、又はピーク発光波長が400~495nmの範囲にある青色光を照射すると発色し、照射を止めると消色する従来公知のスピロオキサジン誘導体、スピロピラン誘導体、及びナフトピラン誘導体等のフォトクロミック化合物が挙げられ、例えば、特開2021-120493号公報、国際公開第2020/137469号パンフレットに記載された化合物を例示できる。
【0111】
さらに、フォトクロミック化合物としては、光メモリー性(色彩記憶性光変色性)を有する化合物を用いることもできる。このようなフォトクロミック化合物としては、ジアリールエテン誘導体等が挙げられ、例えば、特開2021-120493号公報に記載された化合物を例示できる。
【0112】
フォトクロミック化合物としてジアリールエテン系フォトクロミック化合物を用いる場合、ピーク波長が400~495nmの範囲にある光源により化合物を発色させると、化合物が発色状態を維持するため、可逆光変色性材料としてジアリールエテン系フォトクロミック化合物を用いた本発明による玩具は、光源による光を照射することによって発色状態で維持させることができる。
また、発色状態の玩具は、発色状態のジアリールエテン系フォトクロミック化合物を消色させる消色具によって消色させることができる。
消色具としては、例えば、主発光領域が500nm以上の可視光領域にある光源を備えた消色具や、紫外線を含む500nm未満の波長の光を遮蔽する光遮蔽性顔料及び/又は染料、必要により紫外線吸収剤を含み、紫外線を含む500nm未満の波長の光をカットして500nm以上の波長の可視光を照射することにより発色状態にあるジアリールエテン系フォトクロミック化合物を消色させ、消色状態に変位させて維持させる消色具が挙げられる。
また、汎用の紫外線吸収剤、光遮蔽性顔料及び/又は染料を熱可塑性プラスチックに一体的にブレンドして成形したシート状、フィラメント状、その他任意形象の成形体であってもよい。また、透明乃至半透明性のシートや任意形象の造形体等からなる支持体に、紫外線を含む500nm未満の波長の光を遮蔽する光遮蔽性顔料及び/又は染料、必要により紫外線吸収剤を、バインダー樹脂を含むビヒクルに溶解又は分散状態に固着させた印刷乃至塗布層(像を含む)を設けたものであってもよい。また、紫外線を含む500nm未満の波長の光を遮蔽する光遮蔽性顔料及び/又は染料、必要により紫外線吸収剤を配合したペースト状乃至ジェル等の塑性乃至流動体形態のものであってもよい。
バインダー樹脂を含むビヒクル中に、紫外線を含む500nm未満の波長の光を遮蔽する光遮蔽性顔料及び/又は染料、必要により紫外線吸収剤を配合する場合、バインダー樹脂に対して、好ましくは0.05~40質量%、より好ましくは0.1~30質量%の割合で配合され、紫外線を含む500nm未満の波長の光をカットする効果を発現し易くなる。
消色具は、分光光度計(Gretag Macbeth社製、製品名:Spectro Eye)を用いて、未照射時の反射スペクトルを基準にして光照射時の反射スペクトルを測定し、各波長のスペクトル差を率に換算して強度とし、500nm以下の各波長の光強度が500nm以上にあるピーク波長の光強度最大値の5%以下であることが好ましく、ジアリールエテン系フォトクロミック化合物を消色させる機能に優れる。
【0113】
また、可逆光変色性材料として、上記のフォトクロミック化合物を各種オリゴマーに溶解した可逆光変色性組成物を用いることもできる。
オリゴマーとしては、スチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、又はテルペンフェノール系オリゴマー等が挙げられる。
フォトクロミック化合物を各種オリゴマーに溶解させることにより耐光性と共に発色濃度を向上させることができ、さらには変色感度を調整することができる。
【0114】
スチレン系オリゴマーとしては、質量平均分子量が200~6000、好ましくは200~4000のものが用いられる。スチレン系オリゴマーの質量平均分子量が6000を超えると、光照射により色残りが発生すると共に発色濃度が低くなり易く、また、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が200未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性が損なわれ易くなる。
スチレン系オリゴマーは、スチレン骨格を有する化合物又はその水添物であり、例えば、低分子量ポリスチレン、スチレン-α-メチルスチレン共重合体、α-メチルスチレン重合体、α-メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体等を例示できる。
【0115】
アクリル系オリゴマーとしては、質量平均分子量が12000以下、好ましくは1000~8000、より好ましくは1500~6000のものが用いられる。アクリル系オリゴマーの質量平均分子量が12000を超えると、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が1000未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易くなると共に、耐光性が損なわれ易くなる。
アクリル系オリゴマーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等を例示できる。
【0116】
テルペン系オリゴマーとしては、質量平均分子量が250~4000、好ましくは300~4000のものが用いられる。テルペン系オリゴマーの質量平均分子量が4000を超えると、光照射により色残りが発生すると共に発色濃度が低くなり易く、また、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が250未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性を損ない易くなる。
テルペン系オリゴマーは、テルペン骨格を有する化合物であり、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、d-リモネン重合体等を例示できる。
【0117】
テルペンフェノール系オリゴマーとしては、質量平均分子量が200~2000、好ましくは500~1200のものが用いられる。テルペンフェノール系オリゴマーの質量平均分子量が2000を超えると、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が200未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易くなる。
テルペンフェノール系オリゴマーは、環状テルペンモノマーとフェノール類とを共重合させた化合物又はその水添物であり、例えば、α-ピネン-フェノール共重合体等が挙げられる。
【0118】
上記のスチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、テルペンフェノール系オリゴマーの質量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定した値である。
また、上記のオリゴマーは、一種又は二種以上を併用して用いることができる。
【0119】
可逆光変色性組成物における、フォトクロミック化合物:スチレン系オリゴマー、又は、フォトクロミック化合物:アクリル系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:10000、より好ましくは1:5~1:500である。
また、フォトクロミック化合物:テルペン系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:5000、より好ましくは1:5~1:500である。
また、フォトクロミック化合物:テルペンフェノール系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:50、より好ましくは1:2~1:30である。
フォトクロミック化合物とオリゴマーの質量比が上記の範囲内にあることにより、フォトクロミック化合物が発消色機能を満たすと共に、十分な発色濃度を示し易くなる。
【0120】
上記の可逆光変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆光変色性マイクロカプセル顔料(以下、「マイクロカプセル顔料」と表すことがある)や、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させて可逆光変色性樹脂粒子を形成して、可逆光変色性材料として使用することもできるが、可逆光変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させてマイクロカプセル顔料として使用することが好ましい。これは、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができ、種々の使用条件において、可逆光変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0121】
マイクロカプセル化は、前述の方法から用途に応じて適宜選択される。さらにマイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下が防止される。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
なお、マイクロカプセル化の際に、一般の染料や顔料等の非変色性着色剤を配合することにより、有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすこともできる。
【0122】
可逆光変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μm、さらに好ましくは1~3μmの範囲が実用を満たす。平均粒子径が10μmを超えると、自己修復性材料中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
なお、平均粒子径は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔(株)マウンテック製、製品名:マックビュー〕を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕を用いて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記のソフトウェア又はコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA-300〕を用いて、体積基準の粒子径及び平均粒子径を測定してもよい。
【0123】
上記した可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料には、必要により紫外線吸収剤、光安定剤、或いは酸化防止剤等の添加剤を配合させて耐光性を向上させることもできる。
耐光性を向上させる上記の添加剤は、一種又は二種以上を併用して用いることもできる。
【0124】
本発明による自己修復性変色性玩具は、自己修復性材料と可逆変色性材料により自己修復性変色性組成物を調製し、この組成物を従来知られている成形手段により成形して任意の形態とした自己修復性変色性成形体を用いるものである。
自己修復性変色性玩具は、自己修復性材料中に可逆変色性材料を含有させた自己修復性変色性組成物を成形した自己修復性変色性成形体を用いるほか、自己修復性材料を成形した自己修復性成形体上に、可逆変色性材料を含有する層(可逆変色層)を設けた自己修復性変色性積層体を用いるものであってもよい。
【0125】
成形手段としては、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形、注型成形、溶融紡糸等が挙げられる。
自己修復性変色性玩具の形態としては、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、ブロック、フィラメント、棒状物、球状物、楕円球状物等が挙げられる。
【0126】
自己修復性材料として、上記の、ホスト基及びゲスト基を有する重合体を含んでなる高分子材料を用いる場合、単量体混合物(重合性単量体の混合物)に可逆変色性材料を分散させて重合することにより自己修復性変色性組成物を調製し、この組成物を、例えば注型成形により成形して自己修復性変色性成形体とすることで、本発明による玩具に用いることができる。
【0127】
本発明による自己修復性変色性玩具は、玩具内部に基材を備えてなるものであってもよい。
基材としてはプラスチック、金属、木材、石材等を例示できる。
内部に基材を備えさせることによって、玩具自体の形態安定性に優れ、玩具を繰り返し遊んだ場合であっても初期の形態が保持され易く、優れた耐久性を付与した玩具とすることができる。
【0128】
本発明による自己修復性変色性玩具は、任意の形態に成形した自己修復性変色性成形体自体を用いるものであってもよいが、複数の自己修復性変色性成形体から構成されるものであってもよい。
複数の自己修復性変色性成形体から構成される玩具は、複数の自己修復性変色性成形体からなるパーツの中から所望のパーツを選択し、任意の箇所で接着させることにより種々の形態に造形することができると共に、各パーツは可逆的に色変化させることが可能であるため、遊びのバリエーションを広げることのできる商品性に優れたものである。さらに、切断と再接着が繰り返し可能であるため、玩具の切断により形成されるパーツを色変化させ、その後、再接着させて元の形状に復元させたり、別の新たな形状に造形したりすることを繰り返し、自在に行うことができる。
【0129】
本発明による自己修復性変色性玩具は、基材、及び基材の一部又は全面に備えられる自己修復性材料からなる玩具構成物と、上記の自己修復性変色性成形体とから構成されるものであってもよい。
玩具構成物としては、基材に自己修復性材料を備えさせたものであればいずれも用いることができる。
玩具構成物の形態としては、例えば、基材の一部又は全面に自己修復性材料からなる層を設けたものや、基材の一部に凹部を設け、凹部に自己修復性材料を埋め込んだもの等を例示できる。
玩具構成物と自己修復性変色性成形体とから構成される玩具は、基材の自己修復性材料が備えられる箇所に自己修復性変色性成形体を接着させたり、分離させたりすることを自在に行うことができるものであり、自己修復性変色性成形体からなるパーツを接着させる位置を変更したり、接着させるパーツの種類を変更したりすることにより、種々の形態を繰り返し造形することができる。さらに、各パーツは可逆的に色変化させることが可能であるため、遊びのバリエーションを広げることのでき、長時間使用しても飽きることがない商品性に優れた玩具である。さらに、切断と再接着が繰り返し可能であるため、自己修復性変色性成形体を切断して形成されるパーツを色変化させ、その後、再接着させて元の形状に復元させたり、別の新たな形状に造形したりすることを繰り返し、自在に行うことができる。
【0130】
玩具構成物としては、人形又は動物形象玩具を構成するものが好適であり、例えば、人形又は動物形象玩具の胴体部又は頭部を備えてなる玩具構成物や、人形玩具の頭部と、首部と、肩から上の胴体部とを備えてなる玩具構成物(マネキン)等を例示できる。
玩具構成物は、それ自体で遊ぶことができるものであってもよい。
【0131】
可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料は、自己修復性材料全量に対して、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1~10質量%の範囲で配合される。可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料の配合割合が30質量%を超えると、自己修復性材料への分散に際して分散安定性や加工適性に欠け易くなり、また発色濃度の顕著な向上は認められ難く、さらに消色状態において残色を生じ易くなる。一方、配合割合が0.1質量%未満では、所望の発色濃度を示し難くなり、変色機能を十分に満たし難くなる。
【0132】
可逆変色性材料と共に一般の染料や顔料等の非変色性着色剤を配合することにより、有色(1)から有色(2)への互変的色変化を呈する自己修復性変色性玩具とすることもできる。
【0133】
本発明による自己修復性変色性玩具は、手による熱、或いは、加熱具又は冷却具等の変色手段により変色させることができる。
加熱具としては、PTC素子等の抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等の媒体を充填した加熱変色具、スチームやレーザー光を用いた加熱変色具、ヘアドライヤー等が挙げられる。
冷却具としては、ペルチエ素子を利用した通電冷熱変色具、冷水或いは氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、畜冷剤、冷蔵庫や冷凍庫等が挙げられる。
上記の変色手段と、本発明による自己修復性変色性玩具とを組み合わせて、自己修復性変色性玩具セットとすることもできる。
【0134】
本発明による自己修復性変色性玩具として具体的には、人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、及び靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具、知育玩具、並びに乗物、動物、植物、建築物、及び食品等を模した玩具等を例示できる。
【0135】
また、自己修復性材料と可逆変色性材料とからなる自己修復性変色性組成物や、この組成物を成形することによって得られる自己修復性変色性成形体は、玩具以外の用途にも応用することができる。自己修復性変色性組成物又はそれを用いた成形体を備えた製品として、具体的に以下のものを例示することができる。
(1)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被
服、靴及び靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、風呂敷等の布製身の回り品、手袋、ネクタ
イ、帽子、スカーフ、マフラー等、
(2)屋内装飾品
カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、カーペット、ラグ、椅子張
り地、シート、マット、額縁、造花、写真立て等、
(3)家具
布団、枕、マットレス等の寝具、照明器具、冷暖房器具等、
(4)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ、時計、眼鏡
等、
(5)文房具類
筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、手帳、粘着テープ等、
(6)日用品
口紅、アイシャドー、ファンデーション、アイライナー、アイブロウ、マニキュア、染
毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、歯ブラシ等、
(7)台所用品
コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等、
(8)その他
カレンダー、ラベル、カード、記録材、偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、鞄、
包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、コースター、楽器、カイロ、蓄冷剤、財布等の
袋物、傘、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、教習具等。
【実施例0136】
以下に実施例を示す。なお、特に断らない限り、実施例中の「部」は、「質量部」を示
す。
【0137】
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、2-アニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン3部と、(ロ)成分として、4,4′-(2-メチル-プロピリデン)ビスフェノール6部と、(ハ)成分として、ステアリン酸ネオペンチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを得た。
上記のマイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が15℃、完全消色温度t4が32℃であり、温度変化により黒色から無色に可逆的に変化した。
【0138】
自己修復性変色性組成物の調製
ホスト基を有する化合物〔単量体(1)〕として、6-アクリルアミド-β-シクロデキストリンと、ゲスト基を有する化合物〔単量体(2)〕として、N-(1-アダマンチル)アクリルアミドと、ホスト基及びゲスト基のいずれも有していない化合物〔単量体(3)〕として、アクリルアミドをそれぞれ、0.12mol/kg、0.12mol/kg、3.76mol/kg(全量4mol/kg)の濃度となるように混合し、この混合溶液に5分間超音波を照射して攪拌し、単量体混合物を調製した。
上記の単量体混合物64部に、マイクロカプセル顔料A2部と、白色の一般顔料0.1部と、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.15部(全単量体に対して0.25mol%)と、重合促進剤(N,N,N′,N′-テトラメチレンジアミン)1.5部(全単量体に対して5mol%)と、水を加えて混合し、自己修復性変色性組成物を調製した。なお、水は組成物全量に対して70質量%となるように加えた。
【0139】
自己修復性変色性玩具の作製(
図4参照)
上記組成物をクマの形状を模した型に入れると共に、プラスチックからなる基材を入れ、これを室温(25℃)で30分間静置させて重合反応を行った。反応後、型から成形体(ハイドロゲル)を取り出し、この成形体をグリセリン中に完全に浸漬させ、室温(25℃)で12時間静置させることにより溶媒置換を行い、ハイドロゲルに含まれる水をグリセリンに置換した。これにより、高分子ゲルからなるクマ形態の自己修復性変色性玩具(動物形象玩具)(1)を得た。なお、上記クマ形態の玩具は、胴体部の内部にプラスチックからなる基材を備えてなるものであった。
【0140】
上記玩具を一旦15℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して黒色が視認され、32℃の温水に浸漬させると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して、一般顔料による白色が視認された。また、温水から取り出して15℃の冷水に浸漬させると再び黒色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色性組成物が完全に消色状態である玩具〔シロクマを模した玩具(11)〕を、
図4に示される点線部で切断し、切断後のパーツ(11a、11b、11c)を15℃以下に冷却して完全に発色させた。次いで、切断部で各パーツを再接着させて元の形状に復元させると、白色と黒色が混在してパンダを模した玩具(11′)を得ることができた。この玩具は、各パーツの再接着後であっても初期と同等の材料強度を保持しており、遊戯の最中に破断し難いものであった。
また、パンダを模した玩具は、32℃以上の加温によって全体を白色に、或いは15℃以下の冷却によって全体を黒色に変色させることができた。また、玩具を初期状態に戻すことも可能であることから、任意箇所で切断し、切断後の各パーツを変色させて元の形状に復元して所望の模様を付与することを繰り返し行うことができた。さらに、胴体部に備えられる基材により玩具の形態安定性に優れ、繰り返し遊戯を行っても形態が変形し難く、耐久性に優れるものであった。
【0141】
実施例2
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン6部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、ステアリン酸ネオペンチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを得た。
マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が13℃、完全消色温度t4が33℃であり、温度変化により緑色から無色に可逆的に変化した。
【0142】
自己修復性変色性組成物の調製
実施例1において、マイクロカプセル顔料Aをマイクロカプセル顔料Bに、白色の一般顔料を赤色の一般顔料に変更して、実施例1と同様の手順により自己修復性変色性組成物を調製した。
【0143】
自己修復性変色性玩具の作製
上記組成物を直径5mmの棒状の型に入れ、これを室温(25℃)で30分間静置させて重合反応を行った。反応後、型から成形体(ハイドロゲル)を取り出し、この成形体をグリセリン中に完全に浸漬させ、室温(25℃)で12時間静置させることにより溶媒置換を行い、ハイドロゲルに含まれる水をグリセリンに置換した。これにより、高分子ゲルからなる棒状の自己修復性変色性成形体を得た。
上記の成形体を長さ5mm程度に切断し、これらを手で押し固めて平たい楕円形状とすることにより、ハンバーグを模した自己修復性変色性玩具(模擬食品玩具)を得た。
【0144】
上記玩具を一旦13℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して、可逆熱変色性組成物による緑色と一般顔料による赤色が混色となったこげ茶色が視認され、33℃の温水に浸漬させると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して、一般顔料による赤色が視認された。また、温水から取り出して13℃の冷水に浸漬させると再びこげ茶色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
また、上記玩具を、10℃の冷水を入れたフライパンを模した模擬調理器具に入れ、フライ返しを模した模擬調理器具により玩具を押さえつけたり、或いは裏返したりする等の操作を行うことにより、玩具と冷水の接地面から次第に玩具全体に冷熱が伝わり、可逆熱変色性組成物が発色して玩具が赤色からこげ茶色に変色して、あたかも、調理前のハンバーグが焼かれて調理済みとなる様相が視認された。
また、ハンバーグを模した玩具はナイフを模した模擬食事用具により切断が可能であった。上記玩具は、模擬調理器具、模擬食事用具を用いて調理や食事の動作を再現することができ、従来の模擬食品玩具より商品性に優れるものであった。
また、切断後の各パーツは、切断部で再接着させて元の形状に復元させることができ、各パーツの接着後であっても初期と同等の材料強度を保持しており、遊戯の最中に破断し難く、さらに、任意箇所での切断と元の形状への復元を繰り返し行うことができるものであった。
切断した玩具を元の形状に復元した後で33℃以上に加温にすることよって、可逆熱変色性組成物を消色させて、初期の調理前のハンバーグを模した玩具に戻すことも可能であり、繰り返し玩具を色変化させて遊ぶことができると共に、調理前のハンバーグを模した玩具に戻した際に、手などの外力により別の形状に変形させることも可能であった。
【0145】
実施例3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Cの調製
(イ)成分として、3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン3部と、(ロ)成分として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン3部と、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、カプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Cを得た。
マイクロカプセル顔料Cは、完全発色温度t1が-20℃、完全消色温度t4が60℃であり、温度変化により青色から無色に可逆的に変化した。
【0146】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Dの調製
(イ)成分として、2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン2部と、(ロ)成分として、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン3部と、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、カプリン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Dを得た。
マイクロカプセル顔料Dは、完全発色温度t1が-20℃、完全消色温度t4が58℃であり、温度変化により桃色から無色に可逆的に変化した。
【0147】
自己修復性変色性組成物の調製
ホスト基含有重合性単量体として、N-β-シクロデキストリン-アクリルアミドのヒドロキシ基の水素原子が全てアセチル化された化合物12.4部と、ゲスト基含有重合性単量体として、N-(1-アダマンチル)アクリルアミド1.2部と、第3の重合性単量体として、4-ヒドロキシブチルアクリレート84.1部とを混合し、30分攪拌して単量体混合物を調製した。
上記の単量体混合物97.7部に、マイクロカプセル顔料C2部と、黄色の一般顔料0.1部と、重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名:IRGACURE184)0.3部とを加えて混合し、自己修復性変色性組成物3Aを調製した。
また、マイクロカプセル顔料Cをマイクロカプセル顔料Dに、黄色の一般顔料を青色の一般顔料に変更して、上記と同様の手順により自己修復性変色性組成物3Bを調製した。
【0148】
自己修復性変色性玩具の作製(
図5参照)
上記組成物3A、3Bをそれぞれ、直径0.5cm、長さ10cmの輪状の型に入れ、紫外線照射装置〔(株)アイテックシステム製、製品名:MUVBA-0.3×0.3×0.5(波長:365nm)〕を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、型から成形体を取り出し、輪状の自己修復性変色性玩具2個〔1(12、13)〕を得た。
【0149】
組成物3Aからなる玩具を一旦-20℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して、可逆熱変色性組成物による青色と一般顔料による黄色が混色となった緑色が視認され、60℃以上に加温すると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して、一般顔料による黄色が視認された。また、再度-20℃以下に冷却すると再び緑色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
組成物3Bからなる玩具を一旦-20℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して、可逆熱変色性組成物による桃色と一般顔料による青色が混色となった紫色が視認され、58℃以上に加温すると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して、一般顔料による青色が視認された。また、再度-20℃以下に冷却すると再び紫色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
上記玩具はそのままの形態でブレスレットとして身に着けて遊ぶことができるが、任意箇所での切断と切断後のパーツの接着が可能であり、切断後の各パーツを色変化させて、これを再接着させることにより、ブレスレットの色のパターンを自在に変更することが可能である。
例えば、
図5に示すように、-20℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を発色状態とした玩具12(緑色)、玩具13(紫色)を点線部で四分割に切断し、切断したパーツのうち、12bを60℃以上に、13bを60℃以上に加温して可逆熱変色性組成物を消色状態とし(12b′、13b′)、パーツ12a、12b′、13a、及び13b′を順に、各パーツの端面で接着させることにより、緑色、黄色、紫色、青色のパターンを有するブレスレットを作製することができた。この玩具は、各パーツの再接着後であっても初期と同等の材料強度を保持しており、装着の最中に破断し難いものであった。
また、全体を60℃以上に加温する、或いは-20℃以下に冷却することによって全体を変色させて、異なる色のパターンに変色させたり、変色させたパーツを接着させる順番を変えて、さらに別の色のパターンを有するブレスレットを作製したりすることを繰り返し行うことができた。
【0150】
実施例4
自己修復性組成物の調製
ホスト基含有重合性単量体として、N-β-シクロデキストリン-アクリルアミドのヒドロキシ基の水素原子が全てアセチル化された化合物12.6部と、ゲスト基含有重合性単量体として、N-(1-アダマンチル)アクリルアミド1.2部と、第3の重合性単量体として、4-ヒドロキシブチルアクリレート85.9部とを混合し、30分攪拌して単量体混合物を調製した。
上記の単量体混合物99.7部に、緑色の一般顔料0.1部と、重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名:IRGACURE184)0.3部とを加えて混合し、自己修復性組成物4Aを調製した。
また、緑色の一般顔料を黄色の一般顔料に変更して、上記と同様の手順により自己修復性組成物4Bを調製した。
また、緑色の一般顔料を桃色の一般顔料に変更して、上記と同様の手順により自己修復性組成物4Cを調製した。
【0151】
可逆光変色性マイクロカプセル顔料aの調製
3,3,9,9-テトラフェニル-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン1部を、スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)50部中に均一に加温溶解した可逆光変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー20部と、酢酸エチル20部とからなる混合溶液に投入した後、15%ゼラチン水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆光変色性マイクロカプセル顔料aを得た。
上記のマイクロカプセル顔料aは、光照射により橙色から無色に可逆的に変化した。
【0152】
可逆光変色性マイクロカプセル顔料bの調製
3,3-ジメチル-1-エチル-8′-シアノ-スピロ[ベンゾ[e]インドリン-2,3′[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]1部を、スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)50部中に均一に加温溶解した可逆光変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー20部と、酢酸エチル20部とからなる混合溶液に投入した後、15%ゼラチン水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆光変色性マイクロカプセル顔料bを得た。
上記のマイクロカプセル顔料bは、光照射により青色から無色に可逆的に変化した。
【0153】
自己修復性変色性組成物の調製
実施例3において、マイクロカプセル顔料C2部を、マイクロカプセル顔料a1.5部とマイクロカプセル顔料b0.5部に、黄色の一般顔料を白色の一般顔料に変更して、実施例3と同様の手順により自己修復性変色性組成物4Dを調製した。
【0154】
自己修復性変色性玩具の作製
上記組成物4A~4Dをそれぞれ、レタス、スライスチーズ、ハム、薄切り食パンを模した形状の型に入れ、上記の紫外線照射装置を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、型から成形体を取り出し、レタス、スライスチーズ、ハムを模した自己修復性成形体各1個と、食パンを模した自己修復性変色性成形体2個を得た。そして、レタス、スライスチーズ、ハムを模した成形体を、食パンを模した成形体の間に挟んで接着させることにより、サンドイッチを模した自己修復性変色性玩具(模擬食品玩具)を得た。
【0155】
組成物4Dからなる成形体は、光源として青色LED(ピーク波長:430nm)を備えた照射具により光を照射すると、フォトクロミック化合物が完全に発色して、各フォトクロミック化合物による橙色と青色が混色となった茶色が視認され、光の照射を止めると、フォトクロミック化合物が完全に消色して、一般顔料による白色が視認された。また、再度照射具により光を照射すると再び茶色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
上記サンドイッチを模した玩具を、光源として青色LED(ピーク波長:430nm)を内部に備えたオーブンレンジを模した模擬調理器具に入れ、食パンを模した成形体に光を照射すると、フォトクロミック化合物が発色して成形体が白色から茶色に変色して、あたかも、サンドイッチに焼き目が付く様相が視認された。また、サンドイッチを模した玩具を模擬調理器具から取り出してしばらく放置させると、フォトクロミック化合物が消色して、食パンを模した成形体が茶色から白色に戻る様相が視認され、初期状態に戻すことが可能であった。この玩具は、各成形体の接着後の材料強度に優れるため、遊戯の最中に各成形体が分離し難いものであった。
また、サンドイッチを模した玩具は、食パン、レタス、スライスチーズ、ハムの各接着面で切断することにより分離させることが可能であり、食パンの間に挟む具材(レタス、スライスチーズ、ハム)を変更して、異なる形態のサンドイッチを模した玩具を造形することも可能であった。
上記玩具は各種成形体を接着させたり、分離させたりすることを自在に行うことができ、使用する成形体を変更することにより種々の形態を繰り返し造形することができると共に、可逆的に色変化させることができるため、遊びのバリエーションが広く、長時間使用しても飽きることがない商品性に優れるものであった。
【0156】
実施例5
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Eの調製
(イ)成分として、3,3-ビス(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-4-アザフタリド1部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、ステアリン酸ネオペンチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Eを得た。
マイクロカプセル顔料Eは、完全発色温度t1が13℃、完全消色温度t4が33℃であり、温度変化により青色から無色に可逆的に変化した。
【0157】
自己修復性変色性組成物の調製
実施例1と同様の手順により自己修復性変色性組成物5Aを調製した。
また、実施例1において、マイクロカプセル顔料Aをマイクロカプセル顔料Eに、白色の一般顔料を桃色の一般顔料に変更して、実施例1と同様の手順により自己修復性変色性組成物5Bを調製した。
【0158】
自己修復性変色性玩具の作製(
図6参照)
上記組成物5Aを立方体形状(3cm四方)の型に入れ、これを室温(25℃)で30分間静置させて重合反応を行った。反応後、型から成形体(ハイドロゲル)を取り出し、この成形体をグリセリン中に完全に浸漬させ、室温(25℃)で12時間静置させることにより溶媒置換を行い、ハイドロゲルに含まれる水をグリセリンに置換した。これにより、高分子ゲルからなる立方体形状の自己修復性変色性成形体(21)を3個得た。
さらに、上記組成物5Bを円柱体形状(直径3cm、高さ3cm)の型に入れ、これを室温(25℃)で30分間静置させて重合反応を行った。反応後、型から成形体(ハイドロゲル)を取り出し、この成形体をグリセリン中に完全に浸漬させ、室温(25℃)で12時間静置させることにより溶媒置換を行い、ハイドロゲルに含まれる水をグリセリンに置換した。これにより、高分子ゲルからなる円柱体形状の自己修復性変色性成形体(22)を3個得た。
さらに、
図6に記載されるような、特定の色を有する四角形、三角形、丸形等を組み合わせて形成された形象物が印刷された見本(23)を複数(2枚)作製した。
上記の自己修復性変色性成形体と、見本とからなる、セット形態の自己修復性変色性玩具(自己修復性変色性玩具セット)(2)を得た。
【0159】
組成物5Aからなる成形体を一旦15℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して可逆熱変色性組成物による黒色が視認され、32℃の温水に浸漬させると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して一般顔料による白色が視認された。また、温水から取り出して15℃の冷水に浸漬させると再び黒色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
組成物5Bからなる玩具を一旦15℃以下に冷却すると、可逆熱変色性組成物が完全に発色して、可逆熱変色性組成物による青色と一般顔料による桃色が混色となった紫色が視認され、33℃の温水に浸漬させると、可逆熱変色性組成物が完全に消色して、一般顔料による桃色が視認された。また、温水から取り出して15℃の冷水に浸漬させると再び紫色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
上記の玩具セットは、自己修復性変色性成形体をそのまま用いたり、或いは切断したり、又は成形体を温度変化により色変化させたりして、見本と同じ形と色の形象物を作製して遊ぶものであり、知育玩具として用いることができるものであった。
例えば、
図6に示される見本には、三角形や半円形があるが、これらは立方体形状や円柱体形状の成形体を切断することによって得られ、これらの成形体を接着させたり、色変化させたりすることにより、見本と同じ形と色の形象物を完成させることができた。
見本と同じ形象物を完成させた後は、切断により得られたパーツを切断部で再接着させて元の形状に復元させることにより、同じ見本、或いは異なる見本を用いて繰り返し遊ぶことができた。なお、各成形体はパーツの接着後であっても初期と同等の材料強度を保持しており、遊戯の最中に破断し難いものであった。
【0160】
実施例6
可逆光変色性マイクロカプセル顔料cの調製
3,3,10,10-テトラフェニル-3H,10H-ナフト[2,1-b:7,8-b′]-ジピラン1部を、スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)50部中に均一に加温溶解した可逆光変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー20部と、酢酸エチル20部とからなる混合溶液に投入した後、15%ゼラチン水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆光変色性マイクロカプセル顔料cを得た。
上記のマイクロカプセル顔料cは、光の照射により黄色から無色に可逆的に変化した。
【0161】
自己修復性組成物の調製
実施例4において、緑色の一般顔料を白色の一般顔料に変更して、実施例4と同様の手順により自己修復性組成物6Aを調製した。
【0162】
自己修復性変色性組成物の調製
実施例3において、マイクロカプセル顔料Cをマイクロカプセル顔料cに、黄色の一般顔料を白色の一般顔料に変更して、実施例3と同様の手順により自己修復性変色性組成物6Bを調製した。
【0163】
自己修復性変色性玩具の作製(
図7参照)
上記組成物6Aと同色の、汎用のABS樹脂を用いて、胴体部(背部)に2箇所、頭部に1箇所の凹部を有する馬を模した形状の成形体(基材)を、射出成形により成形した。この成形体の3箇所の凹部に、上記組成物6Aを入れ、上記の紫外線照射装置を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、基材の一部に自己修復性材料を備えた玩具構成物(動物形象玩具)(33)を得た。
次いで、上記組成物6Bを、翼を模した形状の型、及び角を模した形状の型に入れ、上記の紫外線照射装置を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、それぞれの型から成形体を取り出し、翼を模した自己修復性変色性成形体(31)2個と、角を模した自己修復性変色性成形体(32)1個を得た。
上記の自己修復性変色性成形体と玩具構成物により自己修復性変色性玩具(3)を得た。
【0164】
上記成形体は、光源として青色LED(ピーク波長:430nm)を備えた照射具により光を照射すると、フォトクロミック化合物が完全に発色して黄色が視認され、光の照射を止めると、フォトクロミック化合物が完全に消色して、一般顔料による白色が視認された。また、再度照射具により光を照射すると再び黄色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
上記玩具構成物は動物形象玩具(馬を模した玩具)であるため、それ自体を用いて遊ぶことができるが、玩具構成物の自己修復性材料が備えられる箇所には、上記の自己修復性変色性成形体を接着させることができ、玩具構成物の背部の2箇所に翼を模した成形体を接着させることで、ペガサスを模した自己修復性変色性玩具(3′)を得ることができた。この玩具は、各成形体の接着後の材料強度に優れるため、遊戯の最中に破断し難いものであった。また、翼を模した成形体は照射具を用いた光の照射により、可逆的に色変化させることができた。成形体を接着させた箇所は切断可能であるため、玩具構成物の背部と翼を模した成形体の接着部分で切断することにより、初期の馬を模した玩具に復元することもできた。
次いで、玩具構成物の頭部に角を模した成形体を接着させることで、ユニコーンを模した自己修復性変色性玩具(3″)を得ることができた。この玩具は、ペガサスを模した玩具と同様に、成形体の接着後の材料強度に優れるため、遊戯の最中に破断し難く、また、角を模した成形体は、照射具を用いた光の照射により、可逆的に色変化させることができた。成形体を接着させた箇所は切断可能であるため、玩具構成部の頭部と角を模した成形体の接着部分で切断することにより、初期の馬を模した玩具に復元することもできた。
また、ペガサスを模した玩具において、玩具構成物の背部と翼を模した成形体の接着部で切断し、玩具構成物の頭部に角を模した成形体を接着させることにより、ペガサスを模した玩具からユニコーンを模した玩具を造形することが可能であった。同様に、ユニコーンを模した玩具において、玩具構成物の頭部と角を模した成形体の接着部で切断し、玩具構成物の背部に翼を模した成形体を接着させることにより、ユニコーンを模した玩具からペガサスを模した玩具を造形することも可能であった。これらの変化は可逆的に行うことができた。
上記玩具は、玩具構成物に各種成形体を接着させたり、分離させたりすることを自在に行うことができ、使用する成形体を変更することにより種々の形態を繰り返し造形することができると共に、可逆的に色変化させることができるため、遊びのバリエーションが広く、長時間使用しても飽きることがない商品性に優れるものであった。
【0165】
実施例7
自己修復性組成物の調製
実施例4において、緑色の一般顔料0.1部を、白色の一般顔料0.08部と橙色の一般顔料0.02部に変更して、実施例4と同様の手順により自己修復性組成物7Aを調製した。
【0166】
玩具構成物の作製
上記組成物7Aと同色の、汎用のPVC樹脂を用いて、人形玩具の頭部(耳部を除く)を射出成形により成形した。
次いで、上記組成物7Aを、耳を模した形状の型に入れ、上記の紫外線照射装置を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、型から成形体を取り出し、耳を模した自己修復性成形体(人形玩具の耳部)を得た。
成形した人形玩具の頭部と耳部とを組み付け、耳部が自己修復性成形体からなる頭部を得た。この頭部と、胴体部、脚部、腕部等のパーツを組み付け、頭部に自己修復性材料を備えた玩具構成物(人形玩具)を得た。
【0167】
自己修復性変色性組成物の調製
実施例3において、マイクロカプセル顔料Cをマイクロカプセル顔料bに、黄色の一般顔料を桃色の一般顔料に変更して、実施例3と同様の手順により自己修復性変色性組成物7Bを調製した。
また、実施例3において、マイクロカプセル顔料Cをマイクロカプセル顔料cに変更し、黄色の一般顔料を配合せずに、実施例3と同様の手順により自己修復性組成物7Cを調製した。
【0168】
自己修復性変色性成形体の作製
上記組成物7B、7Cをそれぞれ、「C」字型形状の型、及び星型形状の型に入れ、上記の紫外線照射装置を用いて、5分間紫外線を照射して重合反応を行った。反応後、それぞれの型から成形体を取り出し、「C」字型形状の自己修復性成形体2個と、星型形状の自己修復性変色性成形体2個を得た。
上記の自己修復性成形体と玩具構成物により自己修復性変色性玩具を得た。
【0169】
上記「C」字型形状の成形体は、屋外で太陽光を照射させると、フォトクロミック化合物が完全に発色して、フォトクロミック化合物による青色と一般顔料による桃色が混色となった紫色が視認され、太陽光の当たらない日陰或いは屋内で静置させると、フォトクロミック化合物が完全に消色して、一般顔料による桃色が視認された。また、再度太陽光を照射させると再び紫色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
また、上記星型形状の成形体は、屋外で太陽光を照射させると、フォトクロミック化合物が完全に発色して黄色が視認され、太陽光の当たらない日陰或いは室内で静置させると、フォトクロミック化合物が完全に消色して、透明な状態が視認された。また、再度太陽光を照射させると再び黄色が視認された。この変化は繰り返し行うことができた。
なお、これらの成形体は、光源として青色LED(ピーク波長:430nm)を備えた照射具により光を照射した際にも、同様の可逆的な色変化が視認された。
【0170】
上記玩具構成物は人形玩具であるため、それ自体を用いて遊ぶことができるが、玩具構成物の自己修復性材料が備えられる箇所には、上記の自己修復性変色性成形体を接着させることができ、玩具構成物の耳部に成形体を接着させることで、成形体をアクセサリーとして、人形玩具に装着させることができた。この玩具は、各成形体の接着後の材料強度に優れるため、遊戯の最中に成形体が脱落し難いものであった。また、この人形玩具を室内から屋外に移動させて太陽光に照射させることにより、成形体を可逆的に色変化させることができた。
また、耳部と成形体を装着させた箇所は切断可能であることから、玩具構成物の耳部と成形体の接着部分で切断して、別の成形体を人形玩具に接着させることも可能であった。
上記玩具は、玩具構成物に各種成形体を接着させたり、分離させたりすることを自在に行うことができ、使用する成形体を変更することにより、人形玩具に装着させるアクセサリーを繰り返し変更することができると共に、各成形体は可逆的に色変化させることができるため、遊びのバリエーションが広く、長時間使用しても飽きることがない商品性に優れるものであった。