(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111364
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】伝送構造体および伝送構造体を備える配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 G
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013186
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA35
5E316AA38
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316CC02
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC32
5E316DD02
5E316DD12
5E316DD22
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スキューを削減し、高周波信号を効率よく伝送する伝送構造体を提供する。
【解決手段】伝送構造体1は、第1面21及び第1面と反対側の第2面22を有する信号用導体2と、第1面上に位置する第1絶縁層部3aと、第2面上に位置する第2絶縁層部と3bを有する。第1絶縁層部は、第1面に接し位置する第1絶縁層31と、第1絶縁層部最外層に位置する第2絶縁層32とを少なくとも含む。第2絶縁層部は、第2面に接し位置する第3絶縁層33と、第2絶縁層部最外層に位置する第4絶縁層34とを少なくとも含む。第1絶縁層は、ガラス繊維束が第1間隔配置の第1ガラスクロス41を含む。第2絶縁層は、ガラス繊維束が第2間隔配置の第2ガラスクロス42を含む。第3絶縁層は、ガラス繊維束が第3間隔配置の第3ガラスクロス43を含む。第4絶縁層は、ガラス繊維束が第4間隔配置の第4ガラスクロス44を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および該第1面と反対側の第2面を有する信号用導体と、
前記第1面上に位置する第1絶縁層部と、
前記第2面上に位置する第2絶縁層部と、
を有し、
前記第1絶縁層部が、前記第1面に接して位置している第1絶縁層と、前記第1絶縁層部の最外層に位置している第2絶縁層とを少なくとも含み、
前記第2絶縁層部が、前記第2面に接して位置している第3絶縁層と、前記第2絶縁層部の最外層に位置している第4絶縁層とを少なくとも含み、
前記第1絶縁層は、ガラス繊維の束が第1間隔で配置された第1ガラスクロスを含み、
前記第2絶縁層は、ガラス繊維の束が第2間隔で配置された第2ガラスクロスを含み、
前記第3絶縁層は、ガラス繊維の束が第3間隔で配置された第3ガラスクロスを含み、
前記第4絶縁層は、ガラス繊維の束が第4間隔で配置された第4ガラスクロスを含み、
前記第1間隔および前記第3間隔は、前記第2間隔および前記第4間隔よりも小さく、
前記第1間隔は、前記第3間隔と異なる大きさを有する、
伝送構造体。
【請求項2】
前記第2絶縁層の最外面および前記第4絶縁層の最外面の少なくとも一方において、平面透視で前記信号用導体と少なくとも一部が重なる領域に接地用導体が位置している、請求項1に記載の伝送構造体。
【請求項3】
前記第1絶縁層部が、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層の2層構造を有するとともに、
前記第2絶縁層部が、前記第3絶縁層および前記第4絶縁層の2層構造を有する、請求項1または2に記載の伝送構造体。
【請求項4】
前記第2間隔は、前記第4間隔と同じである、請求項1~3のいずれかに記載の伝送構造体。
【請求項5】
前記第2絶縁層の厚さおよび前記第4絶縁層の厚さのうち小さい方の厚さが、前記第1絶縁層の厚さおよび前記第3絶縁層の厚さのうち大きい方の厚さよりも大きい、請求項1~4のいずれかに記載の伝送構造体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の伝送構造体を備える配線基板。
【請求項7】
互いに積層された請求項1~5のいずれかに記載の伝送構造体を複数備える配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送構造体および伝送構造体を備える配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板を構成しているコア用絶縁層など絶縁層には、強度を向上させるために、特許文献1に記載のように、補強材としてガラスクロスが含まれることがある。ガラスクロスは、ガラス繊維が縦横に編まれた構造を有しており、ガラス繊維が多い部分(密な部分)と少ない部分(疎な部分)とが存在する。
【0003】
そのため、ガラスクロスを補強材として使用すると、配線導体の近傍で、比誘電率に差が生じる。具体的には、ガラス繊維が多い部分では、絶縁層を形成している樹脂の割合が少なくガラス繊維の割合が多くなるため、比誘電率が高くなる。一方、ガラス繊維が少ない部分では、絶縁層を形成している樹脂の割合が多くガラス繊維の割合が少なくなるため、比誘電率が低くなる。このように、ガラスクロスの疎密によって、配線導体の近傍で比誘電率に差が生じ、信号のズレ(スキュー)が発生する。その結果、高周波信号の伝送に問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の課題は、スキューを低減し、高周波信号を効率よく伝送することができる伝送構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る伝送構造体は、第1面および該第1面と反対側の第2面を有する信号用導体と、第1面上に位置する第1絶縁層部と、第2面上に位置する第2絶縁層部とを有する。第1絶縁層部は、第1面に接して位置している第1絶縁層と、第1絶縁層部の最外層に位置している第2絶縁層とを少なくとも含む。第2絶縁層部は、第2面に接して位置している第3絶縁層と、第2絶縁層部の最外層に位置している第4絶縁層とを少なくとも含む。第1絶縁層は、ガラス繊維の束が第1間隔で配置された第1ガラスクロスを含む。第2絶縁層は、ガラス繊維の束が第2間隔で配置された第2ガラスクロスを含む。第3絶縁層は、ガラス繊維の束が第3間隔で配置された第3ガラスクロスを含む。第4絶縁層は、ガラス繊維の束が第4間隔で配置された第4ガラスクロスを含む。第1間隔および第3間隔は、第2間隔および第4間隔よりも小さく、第1間隔は、第3間隔と異なる大きさを有する。
【0007】
本開示に係る配線基板は、上記の伝送構造体を備える。さらに、本開示に係る他の配線基板は、互いに積層された上記の伝送構造体を複数備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る伝送構造体は、上記のような構成を有することによって、スキューを低減し、高周波信号を効率よく伝送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る伝送構造体の断面を説明するための説明図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る伝送構造体を構成している各絶縁層に含まれるガラスクロスの断面を説明するための説明図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る配線基板の断面を説明するための説明図である。
【
図4】本開示に示すシミュレーションモデルの一例である。
【
図5】本開示に示すシミュレーションモデルの一例である。
【
図6】本開示に示すシミュレーションモデルの一例である。
【
図7】本開示に示すシミュレーションモデルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示に係る伝送構造体は、上記のように信号用導体、第1絶縁層部および第2絶縁層部を含む。このような伝送構造体は、例えば、パッケージ基板などが搭載される配線基板(マザーボード)の一部に採用される。本開示の一実施形態に係る伝送構造体を、
図1および2に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る伝送構造体1の断面を説明するための説明図である。
図1に示す伝送構造体1に含まれる信号用導体2は、信号を伝送する機能を有しており、例えば、銅などの金属で形成されている。信号用導体2の一方の主面を第1面21とし、第1面21と反対側の主面を第2面22とする。
【0012】
信号用導体2の第1面21には、第1絶縁層部3aが位置しており、信号用導体2の第2面22には、第2絶縁層部3bが位置している。第1絶縁層部3aはコア層を構成しており、少なくとも2層の絶縁層が積層された構造を有している。
【0013】
第1絶縁層部3aには、第1面21に接して位置している第1絶縁層31と、第1絶縁層部3aの最外層に位置している第2絶縁層32とを少なくとも含む。
図1では、第1絶縁層部3aは2層構造であるが、第1絶縁層31と第2絶縁層32との間に、少なくとも1層の他の絶縁層が位置していてもよい。
【0014】
第2絶縁層部3bには、第2面22に接して位置している第3絶縁層33と、第2絶縁層部3bの最外層に位置している第4絶縁層34とを少なくとも含む。
図1では、第2絶縁層部3bは2層構造であるが、第3絶縁層33と第4絶縁層34との間に、少なくとも1層の他の絶縁層が位置していてもよい。
【0015】
第1絶縁層31、第2絶縁層32、第3絶縁層33および第4絶縁層34は、絶縁性を有する素材であれば特に限定されない。絶縁性を有する素材としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
これらの第1~第4絶縁層31、32、33、34は、例えば、20μm以上80μm以下の厚みを有していてもよい。第1~第4絶縁層31、32、33、34は、それぞれ異なる厚みを有していてもよく、同じ厚みを有していてもよい。例えば、第2絶縁層32の厚みL2および第4絶縁層34の厚みL4のうち薄い方が、第1絶縁層31の厚みL1および第3絶縁層33の厚みL3のうち厚い方よりも厚くてもよい。このような構成を有することによって、得られる伝送構造体1は、例えば後述するガラス繊維の束が太く、ガラス繊維の束同士の間隔が大きい場合であっても、ガラス繊維を絶縁層内に確実に収めることが可能になる。第1絶縁層31および第3絶縁層33は、例えば、20μm以上50μm以下の厚みを有していてもよい。第2絶縁層32および第4絶縁層34は、例えば、60μm以上80μm以下の厚みを有していてもよい。
【0017】
さらに、第1~第4絶縁層31、32、33、34には、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機フィラーが、分散されていてもよい。
【0018】
第2絶縁層32および第4絶縁層34の最外面には、接地用導体5が位置している。
図1に示すように、第2絶縁層32の最外面および第4絶縁層34の最外面の少なくとも一方において、平面透視で信号用導体2と少なくとも一部が重なる領域に接地用導体5が位置していてもよい。このような領域に接地用導体5が位置していると、信号用導体2を信号が効率よく伝播することができる。
【0019】
第1~第4絶縁層31、32、33、34には、第1~第4絶縁層31、32、33、34のそれぞれの上下面を電気的に接続するためのビアホール導体7を有していてもよいビアホール導体7は、例えば銅などの金属で形成されている。
【0020】
図1に示すように、伝送構造体1には、第2絶縁層32から第4絶縁層34まで貫通する貫通孔6が設けられている。貫通孔6の内壁面には、伝送構造体1の上下面を電気的に接続するための導体が位置している。このような導体は、例えば銅などの金属で形成されている。貫通孔6は、
図1に示すように、空洞であってもよく、貫通孔6内に、例えば樹脂が充填されていてもよい。
【0021】
第1~第4絶縁層31、32、33、34には、それぞれガラスクロスが含まれている。具体的には、第1絶縁層31には第1ガラスクロス41が含まれ、第2絶縁層32には第2ガラスクロス42が含まれ、第3絶縁層33には第3ガラスクロス43が含まれ、第4絶縁層34には第4ガラスクロス44が含まれる。
【0022】
ガラスクロスは、ガラス繊維の束が縦横に編まれたシート状の部材であり、補強材として使用される。ガラスクロスは、ガラス繊維の束を編む間隔によって、種々のガラスクロスが存在する。
図1に記載の第1ガラスクロス41、第2ガラスクロス42、第3ガラスクロス43および第4ガラスクロス44において、波形で記載されている部分は、ガラス繊維の束の長手方向の切断面を示し、複数の円形で記載されている部分は、ガラス繊維の束の短手方向の切断面を示す。
【0023】
第1ガラスクロス41は、
図2に示すように、ガラス繊維の束が第1間隔41aで配置されている。第2ガラスクロス42は、
図2に示すように、ガラス繊維の束が第2間隔42aで配置されている。第3ガラスクロス43は、
図2に示すように、ガラス繊維の束が第3間隔43aで配置されている。第4ガラスクロス44は、
図2に示すように、ガラス繊維の束が第4間隔44aで配置されている。
図2は、一実施形態に係る伝送構造体1を構成している第1~第4絶縁層31、32、33、34に含まれる第1ガラスクロス41、第2ガラスクロス42、第3ガラスクロス43および第4ガラスクロス44の断面を説明するための説明図である。
【0024】
一実施形態に係る伝送構造体1において、第1間隔41aおよび第3間隔43aは、第2間隔42aおよび第4間隔44aよりも小さい。すなわち、内側に位置している第1絶縁層31および第3絶縁層33に含まれるガラスクロス(第1ガラスクロス41および第3ガラスクロス43)の間隔(第1間隔41aおよび第3間隔43a)が、最外層に位置している第2絶縁層32および第4絶縁層34に含まれるガラスクロス(第2ガラスクロス42および第4ガラスクロス44)の間隔(第2間隔42aおよび第4間隔44a)よりも小さい。
【0025】
さらに、一実施形態に係る伝送構造体1において、第1間隔41aは第3間隔43aと異なる大きさを有している。第1間隔41a、第2間隔42a、第3間隔43aおよび第4間隔44aが上記のような関係を満たすことによって、一実施形態に係る伝送構造体1に含まれるガラスクロスの疎密差を小さくすることができる。すなわち、伝送構造体1の断面を上下方向に見た場合に、絶縁層を形成している樹脂の割合が多い部分や、ガラスクロスの割合が多い部分などのバラツキが小さくなる。その結果、スキューを低減することができ、高周波信号の伝送を向上させることができる。
【0026】
第1間隔41a、第2間隔42a、第3間隔43aおよび第4間隔44aは、上記のような関係を満たせば限定されない。第1間隔41aは、例えば350μm以上410μm以下であってもよい。第2間隔42aは、例えば440μm以上500μm以下であってもよい。第3間隔43aは、例えば300μm以上340μm以下であってもよい。第4間隔44aは、例えば440μm以上500μm以下であってもよい。
【0027】
第2間隔42aおよび第4間隔44aの大きさは、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、第1間隔41aが第3間隔43aよりも大きい場合、第2間隔42aは第4間隔44aよりも大きくてもよい。第1間隔41a、第2間隔42a、第3間隔43aおよび第4間隔44aが、それぞれ異なっている方が、ガラスクロスの疎密差をより小さくすることができる。
【0028】
本開示に係る伝送構造体は、上述のような構造を有するように製造できれば、特に限定されない。以下、本開示に係る伝送構造体の製造方法の一実施形態を説明する。
【0029】
まず、ガラスクロスを含む絶縁樹脂層の両面に銅などの金属箔が積層された金属張積層板を準備する。例えば、この金属張積層板の下面の金属箔を信号用導体2とし、上面の金属箔を全面エッチングで除去する。この絶縁樹脂層は第1絶縁層31に相当し、この絶縁樹脂層に含まれるガラスクロスは第1ガラスクロス41に相当する。絶縁樹脂層を形成している樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。さらに、絶縁樹脂層には、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機フィラーが、分散されていてもよい。
【0030】
次いで、第1絶縁層31に相当する絶縁樹脂層の上面側に、第2ガラスクロス42に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層、第1絶縁層31に相当する絶縁樹脂層の下面側に、第3ガラスクロス43に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層、および第4ガラスクロス44に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層を積層させる。第2ガラスクロス42に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層は、第2絶縁層32に相当する。第3ガラスクロス43に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層は、第3絶縁層33に相当する。第4ガラスクロス44に相当するガラスクロスを含む絶縁樹脂層は、第4絶縁層34に相当する。
【0031】
第1絶縁層31に相当する絶縁樹脂層および第2絶縁層32に相当する絶縁樹脂層との間、第3絶縁層33に相当する絶縁樹脂層および第4絶縁層34に相当する絶縁樹脂層との間には、導体層が形成されず、積層させた絶縁樹脂層の両表面には、導体層が形成されている。これらの導体層は、例えば、接地用導体51および電源用導体52に相当する。これらの導体層は、金属箔を積層させて形成してもよく、めっきによって形成してもよい。必要に応じて、第2絶縁層32に相当する絶縁樹脂層の最外面および第4絶縁層34に相当する絶縁樹脂層の最外面の少なくとも一方において、平面透視で信号用導体2と少なくとも一部が重なる領域に接地用導体51を形成していてもよい。
【0032】
次いで、積層させた絶縁樹脂層の上下面を貫通する貫通孔6を形成する。貫通孔6の内壁面には、伝送構造体1の上下面を電気的に接続するための導体を、例えばめっきによって形成する。貫通孔6内は、必要に応じて樹脂が充填されていてもよい。さらに、各絶縁樹脂層には、絶縁樹脂層の上下面を電気的に接続するために、ビアホール導体7が形成されていてもよい。
【0033】
このようにして、一実施形態に係る伝送構造体1が得られる。一実施形態に係る伝送構造体1は、例えば、配線基板に少なくとも1つ備えられ、配線基板の一部あるいは全部として機能する。具体的には、一実施形態に係る伝送構造体1は、配線基板にそのままの形態で用いられていてもよく、
図3に示すように、2つ以上が積層された状態で用いられていてもよい。このような配線基板としては、例えば、スイッチ、ルーターといった用途の高速通信が必要なパッケージ基板やマザーボードなどが挙げられる。
【0034】
次に、本開示に係る実装構造体に関して、ガラスクロススタイルの違いおよび層構成の違いによるスキューのシミュレーション結果を示す。これらの結果は、下記の表1に示すガラスクロスのIPC規格IPC-4412に記載のガラスクロスを用いて、下記の表2に示す条件にて行ったものである。
図4~7における各々の上側には、ガラスクロスを含む絶縁層と信号用導体を含む導体層との模式的な測定モデルの断面図を示しており、下側には、所定の基準点(スキューが0psの点)から120μm毎の目盛りによるシミュレーション結果の曲線グラフである。
【0035】
【0036】
【0037】
図4は、IPC規格のガラスクロススタイル1078のガラスクロスを含む絶縁層を二層積層しており、絶縁層間に240μmピッチで信号用導体が位置しており、各絶縁層の最外面には接地用導体が位置している測定モデルの測定結果を示すものである。
【0038】
シミュレーション結果から、
図4に示すモデルでは基準点とのスキュー差が最大でおよそ160psみられ、大きなスキュー差が生じていることが確認できる。
【0039】
図5は、絶縁層におけるガラスクロスの分布の疎密の差を解消すべく、
図4に示す測定モデルの絶縁層の上面側に、IPC規格のガラスクロススタイル1035のガラスクロスを含む絶縁層を配置し、下面側にIPC規格のガラスクロススタイル1027のガラスクロスを含む絶縁層を配置した測定モデルを示したものである。絶縁層の最外面には接地用導体が位置している。
【0040】
シミュレーション測定の結果から、
図5に示す測定モデルでは基準点とのスキュー差が最大でおよそ110psとなっている。
図4に示す測定モデルに比べて、基準点とのスキュー差は改善されているものの、比較的スキュー差が大きいことが確認できる。
【0041】
図6は、絶縁層において信号用導体により近い場所におけるガラスクロスの分布の疎密の差を解消すべく、信号用導体を挟んで上面側に、IPC規格のガラスクロススタイル1035のガラスクロスを含む絶縁層を配置し、下面側にIPC規格のガラスクロススタイル1027のガラスクロスを含む絶縁層を配置した測定モデルを示したものである。絶縁層の最外層面には接地用導体が位置している。
【0042】
シミュレーション測定の結果から、
図6に示すモデルでは基準点とのスキュー差が最大でおよそ80psとなっている。
図4に示すモデルおよび
図5に示すモデルに比べて、スキュー差はさらに改善されていることが確認できる。
【0043】
図7は、
図6に示す測定モデルの絶縁層の上面側および下面側に、それぞれIPC規格のガラスクロススタイル1078のガラスクロスを含む絶縁層を配置した、本開示の一例を示す測定モデルである。
【0044】
シミュレーション測定の結果から、本開示の一例を示す測定モデルでは、基準点とのスキュー差が最大でおよそ50psとなっている。
図4~6示す測定モデルに比べて、スキュー差は最も改善されていることが確認できる。
【0045】
このように、
図7に示す測定モデルより、信号用導体を挟む上面側および下面側にガラス繊維の束の間隔が異なるガラスクロスを含む絶縁層を配置し、更にこれらの絶縁層の外側にガラス繊維の束の間隔がより大きいガラスクロスを含む絶縁層を配置することで、スキュー差が低減されることがわかる。
【符号の説明】
【0046】
1 伝送構造体
2 信号用導体
21 第1面
22 第2面
3a 第1絶縁層部
3b 第2絶縁層部
31 第1絶縁層
32 第2絶縁層
33 第3絶縁層
34 第4絶縁層
41 第1ガラスクロス
42 第2ガラスクロス
43 第3ガラスクロス
44 第4ガラスクロス
41a 第1間隔
42a 第2間隔
43a 第3間隔
44a 第4間隔
51 接地用導体
52 電源用導体
6 貫通孔
7 ビアホール導体