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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111380
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】防水シート体の劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20230803BHJP
   E04D 5/00 20060101ALI20230803BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230803BHJP
   G01M 3/38 20060101ALI20230803BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230803BHJP
   G01N 21/95 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G01N17/00
E04D5/00 Z
E04G23/02 G
G01M3/38 H
G01M99/00 Z
G01N21/95 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013213
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】永野 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】下川床 和尊
(72)【発明者】
【氏名】池田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 正道
【テーマコード(参考)】
2E176
2G024
2G050
2G051
2G067
【Fターム(参考)】
2E176AA05
2E176BB38
2G024AD35
2G024BA12
2G024BA21
2G024BA27
2G024CA02
2G024CA21
2G024CA27
2G024FA02
2G024FA06
2G050AA02
2G050BA03
2G050EB01
2G050EB07
2G051AA90
2G051AB02
2G051EA17
2G051EB05
2G067AA19
2G067BB17
2G067CC02
2G067DD10
(57)【要約】
【課題】 防水シート体の劣化度合を効率よく診断することが可能な方法を提供する。
【解決手段】 第1防水シート5と、第2防水シート6とを含み、かつ、第1防水シート5及び第2防水シート6が、シート厚さ方向に互いに重ねられた重複部7と、第1防水シート5及び第2防水シート6が重ねられていない非重複部8とを含むように敷設された防水シート体1の劣化診断方法である。この方法は、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差を調べる工程と、差に基づいて、防水シート体1の劣化度合を判断する第1診断工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1防水シートと、第2防水シートとを含み、かつ、前記第1防水シート及び前記第2防水シートが、シート厚さ方向に互いに重ねられた重複部と、前記第1防水シート及び前記第2防水シートが重ねられていない非重複部とを含むように敷設された防水シート体の劣化診断方法であって、
前記重複部の外表面の色要素と、前記非重複部の外表面の色要素との差を調べる工程と、
前記差に基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第1診断工程と、
を含む、
防水シート体の劣化診断方法。
【請求項2】
前記第1診断工程は、前記差が大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が小さいと判断する、請求項1に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項3】
前記防水シート体は、前記防水シート体の外表面側に凸の出隅コーナ部を含み、
前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準以上である場合に、前記出隅コーナ部のクラックの有無を調べる工程と、
前記出隅コーナ部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第2診断工程とをさらに含む、請求項1又は2に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項4】
前記第2診断工程は、前記出隅コーナ部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断する、請求項3に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項5】
前記第2診断工程において、前記出隅コーナ部のクラックの大きさが、予め定められた第2基準以上である場合に、前記出隅コーナ部の補修が必要と判断する工程を含む、請求項4に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項6】
前記防水シート体は、前記防水シート体の外表面側に凸の出隅コーナ部を含み、
前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準未満である場合に、前記防水シート体のうち、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックの有無を調べる工程と、
前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第3診断工程を含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項7】
前記第3診断工程は、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断する、請求項6に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項8】
前記第3診断工程において、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックの大きさが、予め定められた第3基準以上である場合に、前記防水シート体の全体を補修する必要があると判断する工程を含む、請求項7に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項9】
前記第1診断工程の前後のいずれか一方において、前記非重複部のクラックの有無を調べる工程と、
前記非重複部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第4診断工程を含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項10】
前記第4診断工程は、前記非重複部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断する、請求項9に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【請求項11】
前記第4診断工程において、前記非重複部のクラックの大きさが、予め定められた第4基準以上であり、かつ、前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準未満である場合に、前記防水シート体の全体の補修が必要であると判断する工程を含む、請求項10に記載の防水シート体の劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート体の劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、屋上の防水構造が記載されている。この構造は、屋上床の上に、防水シートが敷設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-016557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防水シートは、太陽光や風雨に曝されるため、クラック等の経年劣化が進行する。このような経年劣化は、雨漏り等の原因となるため、防水シートの劣化度合を定期的に診断することが重要である。しかしながら、防水シートは、屋上床の広範囲に亘って敷設されているため、防水シートの劣化度合の診断には、多くの時間を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、防水シート体の劣化度合を効率よく診断することが可能な方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1防水シートと、第2防水シートとを含み、かつ、前記第1防水シート及び前記第2防水シートが、シート厚さ方向に互いに重ねられた重複部と、前記第1防水シート及び前記第2防水シートが重ねられていない非重複部とを含むように敷設された防水シート体の劣化診断方法であって、前記重複部の外表面の色要素と、前記非重複部の外表面の色要素との差を調べる工程と、前記差に基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第1診断工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第1診断工程は、前記差が大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が小さいと判断してもよい。
【0008】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記防水シート体は、前記防水シート体の外表面側に凸の出隅コーナ部を含み、前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準以上である場合に、前記出隅コーナ部のクラックの有無を調べる工程と、前記出隅コーナ部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第2診断工程とをさらに含んでもよい。
【0009】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第2診断工程は、前記出隅コーナ部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断してもよい。
【0010】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第2診断工程は、前記出隅コーナ部のクラックの大きさが、予め定められた第2基準以上である場合に、前記出隅コーナ部の補修が必要と判断する工程を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記防水シート体は、前記防水シート体の外表面側に凸の出隅コーナ部を含み、前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準未満である場合に、前記防水シート体のうち、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックの有無を調べる工程と、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第3診断工程を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第3診断工程は、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断してもよい。
【0013】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第3診断工程は、前記出隅コーナ部、前記重複部及び前記非重複部のクラックの大きさが、予め定められた第3基準以上である場合に、前記防水シート体の全体を補修する必要があると判断する工程を含んでもよい。
【0014】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第1診断工程の前後のいずれか一方で、前記非重複部のクラックの有無を調べる工程と、前記非重複部のクラックに基づいて、前記防水シート体の劣化度合を判断する第4診断工程が含まれてもよい。
【0015】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第4診断工程は、前記非重複部のクラックが大きいほど、前記防水シート体の劣化度合が大きいと判断してもよい。
【0016】
本発明に係る前記防水シート体の劣化診断方法において、前記第4診断工程は、前記非重複部のクラックの大きさが、予め定められた第4基準以上であり、かつ、前記第1診断工程において、前記差が、予め定められた第1基準未満である場合に、前記防水シート体の全体の補修が必要であると判断する工程を含んでもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防水シート体の劣化診断方法は、上記の構成を採用することにより、防水シート体の劣化度合を効率よく診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】劣化診断方法で診断される防水シート体1が敷設された建物2を示す斜視図である。
図2図1の部分断面図である。
図3】防水シート体の劣化診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
図4】本実施形態の第1点検工程の処理手順を示すフローチャートである。
図5】(a)~(f)は、クラック(亀裂)の大きさが異なる非重複部を示す図である。
図6】本実施形態の第2点検工程の処理手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の他の実施形態の防水シート体の劣化診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の他の実施形態の第3点検工程の処理手順を示すフローチャートである。
図9】本発明の他の実施形態の第4点検工程の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0020】
図1は、劣化診断方法で診断される防水シート体1が敷設された建物2を示す斜視図である。本実施形態の建物2は、住宅である場合が例示されているが、ビル等であってもよい。本実施形態では、建物2の屋上床3に、防水シート体1が敷設されているが、特に限定されない。
【0021】
[防水シート体]
本実施形態の防水シート体1は、第1防水シート5と、第2防水シート6とを含んで構成されている。なお、防水シート体1には、第1防水シート5及び第2防水シート6とは別の防水シート(図示省略)が含まれてもよい。
【0022】
第1防水シート5及び第2防水シート6には、従来の防水シートが採用されうる。防水シートの一例としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、及び、エチレン酢酸ビニル樹脂等を用いた合成樹脂シートが挙げられる。本実施形態の第1防水シート5及び第2防水シート6には、塩化ビニル樹脂シートが採用されるが、特に限定されるわけではない。
【0023】
第1防水シート5及び第2防水シート6には、可塑剤が含まれている。このような可塑剤は、第1防水シート5及び第2防水シート6に柔軟性を与えることができ、耐久性が維持される。
【0024】
本実施形態の防水シート体1は、重複部7と、非重複部8とを含むように敷設されている。図2は、図1の部分断面図である。
【0025】
図1及び図2に示されるように、重複部7では、第1防水シート5及び第2防水シート6が、シート厚さ方向に互いに重ねられている。このような重複部7は、例えば、第1防水シート5と第2防水シート6との熱融着によって接着されている。防水シート体1の防水性能を維持するためには、重複部7での接着状態が良好に維持されることが重要である。
【0026】
非重複部8は、第1防水シート5及び第2防水シート6が重ねられていない。本実施形態の非重複部8は、屋上床3に、例えば、円形の固定板(図示省略)を介して固定されている。
【0027】
本実施形態の防水シート体1は、防水シート体1の外表面1s側に凸の出隅コーナ部11を含んでいる。本実施形態の出隅コーナ部11は、排水口12、固定板(図示省略)及び屋上床3の立上がり部等に形成されている。このような出隅コーナ部11は、防水シート体1の外表面1s側において、張力が作用しているため、防水シート体1の他の部分(重複部7や非重複部8)に比べて、劣化しやすい傾向がある。
【0028】
[防水シート体の劣化診断方法(第1実施形態)]
次に、本実施形態の防水シート体1の劣化診断方法が説明される。
【0029】
防水シート体1の劣化に大きな影響を与える因子には、第1防水シート5及び第2防水シート6中に含まれる可塑剤の残存量が含まれる。可塑剤の残存量は、経年とともに少なくなる。この可塑剤の残存量が少なくなると、第1防水シート5及び第2防水シート6の柔軟性が低下し、第1防水シート5及び第2防水シート6が劣化(例えば、クラック(亀裂)を発生)する傾向がある。
【0030】
発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差(以下、単に「色要素の差」ということがある。)と、重複部7での可塑剤の残存量との間に相関があることを知見した。ここで、色要素には、例えば、色相、明度及び彩度が含まれる。
【0031】
図1及び図2に示されるように、重複部7は、第1防水シート5及び第2防水シート6が、シート厚さ方向に互いに重ねられているため、非重複部8に比べて、可塑剤の残存量が少なくなりにくい。これは、下側にある第2防水シート6の可塑剤が、上側にある第1防水シート5に向かって移行するため、重複部7の可塑剤の残存期間が、非重複部8の可塑剤の残存期間に比べて長くなるためである。したがって、重複部7では、可塑剤の粘着による埃などの吸着量が、非重複部8に比べて相対的に高くなり、色要素の差が大きくなると考えられる。
【0032】
そして、色要素の差が大きいほど、重複部7の可塑剤の残存量が大であり、防水シート体1の劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)傾向があることを見出した。さらに、色要素の差が小さいほど、重複部7での可塑剤の残存量が小であり(すなわち、重複部7と非重複部8との可塑剤の残存量に差異がない)、防水シート体1の劣化度合が大きい(防水性能が低下している)傾向があることを見出した。
【0033】
本実施形態の劣化診断方法では、重複部7と非重複部8との色要素の差に着目して、防水シート体1の劣化度合が診断される。本実施形態の診断方法は、検査担当者によって、防水シート体1の劣化度合が診断されているが、検査担当者による調査結果(例えば、色要素の差や、クラックの有無など)に基づいて、防水シート体1の劣化度合が、コンピュータによって診断されてもよい。図3は、防水シート体1の劣化診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0034】
[漏水の有無を診断]
本実施形態の劣化診断方法では、先ず、図1に示した防水シート体1の漏水の有無が診断される(工程S1)。漏水の有無は、適宜調べられる。本実施形態の工程S1では、建物2の最上階の天井(屋上床3の下側)において、漏水(漏水の痕跡)の有無が調べられる。漏水の有無は、検査担当者の目視に基づいて調べられる。
【0035】
工程S1において、防水シート体1に漏水がない場合(工程S1で「Yes」)、防水シート体1の防水性能が維持されており、防水シート体1の劣化度合が小さい可能性がある。この場合、次の工程S2が実施される。
【0036】
一方、工程S1において、防水シート体1に漏水がある場合(工程S1で「No」)、防水シート体1の防水性能が十分に機能しておらず、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1を補修する必要があると判断される(工程S3)。
【0037】
本実施形態の工程S3では、従来と同様の手順に基づいて、防水シート体1の全体補修又は部分補修される。これにより、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0038】
[重複部と非重複部との色要素の差を調べる]
次に、本実施形態の劣化診断方法では、図1に示されるように、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差が調べられる(工程S2)。
【0039】
本実施形態の工程S2では、重複部7の外表面の色相と、非重複部8の外表面の色相との差が調べられるが、このような態様に限定されない。例えば、重複部7の外表面の明度と、非重複部8の外表面の明度との差が調べられてもよいし、重複部7の外表面の彩度と、非重複部8の外表面の彩度との差が調べられてもよい。さらに、色相の差、明度の差及び彩度の差の全てが調べられてもよい。
【0040】
重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差(以下、単に「色要素の差」ということがある。)は、適宜調べられる。本実施形態では、検査担当者の官能によって、色要素の差が調べられる。なお、検査担当者によって色要素の差にバラツキが生じるのを防ぐために、例えば、予め定められた色要素の見本(例えば、写真など)と、実際の重複部7及び非重複部8との色要素とを比較して、色要素の差が調べられてもよい。
【0041】
また、重複部7及び非重複部8のそれぞれの外表面を撮影した画像データを解析して(色要素を数値化して)、色要素の差が調べられてもよい。これにより、検査担当者によって色要素の差にバラツキが生じるのを確実に抑制できる。画像データの解析には、例えば、市販の画像処理ソフトウェア等が用いられる。
【0042】
色要素の差は、例えば、複数段階で評価されるのが好ましい。これにより、色要素の差を詳細に評価することが可能となる。本実施形態では、色要素の差が、以下の5段階(1点~5点)で評価されるが、このような態様に限定されない。なお、画像データが解析される場合には、例えば、各段階に設定された閾値等に基づいて、色要素の差が特定されうる。
1点:明確に差がある
2点:やや明確に差がある
3点:差がある
4点:少し差がある
5点:差がない
【0043】
[第1診断工程]
次に、本実施形態の劣化診断方法では、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差に基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第1診断工程S4)。上述したように、色要素の差が大きいほど、重複部7の可塑剤の残存量が大であり、防水シート体1の劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と考えられる。このため、第1診断工程S4では、色要素の差が大きいほど、防水シート体1の劣化度合が小さいと判断している。
【0044】
防水シート体1の劣化度合は、色要素の差に基づくものであれば、適宜判断される。本実施形態では、色要素の差(本例では、上記の1点~5点のいずれか)が、予め定められた第1基準以上であるか否かが判断される。
【0045】
第1基準は、防水シート体1に求められる防水性能に応じて、適宜設定される。本実施形態の第1基準は、例えば、上記の5段階(1点~5点)のうち、3点(差がある)に設定される。
【0046】
第1診断工程S4において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S4で「Yes」)、重複部7に可塑剤が残存しており、防水シート体1の劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。したがって、防水シート体1の劣化度合を詳細に調べる必要がないため、防水シート体1のうち、相対的に劣化しやすい傾向がある出隅コーナ部11のクラックの有無を調べる工程S53(図4に示す)を含む第1点検工程S5が実施されるのが好ましい。
【0047】
一方、第1診断工程S4において、色要素の差が、第1基準未満である場合(第1診断工程S4で「No」)、重複部7の可塑剤の残存量が少なくなっており、防水シート体1の劣化度合が大きい(防水性能が低下している)と判断される。このため、防水シート体1の劣化度合を詳細に調べることが好ましい。この場合、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S73(図6に示す)を含む第2点検工程S6が実施されるのが好ましい。
【0048】
このように、本実施形態の劣化診断方法では、防水シート体1の全体を対象とした劣化度合を診断しなくても、色要素の差に着目することで、防水シート体1の劣化度合を、大きいか小さいかに大別することができる。これにより、本実施形態の劣化診断方法は、防水シート体1の劣化度合を詳細に診断すべきか否か(大規模補修が必要か否か)を、診断の初期段階で見極めることができるため、防水シート体1の劣化度合を、効率よく診断することができる。
【0049】
また、本実施形態の第1診断工程S4は、色要素との差を調べることで、重複部7の可塑剤の残存量(劣化度合)を判断することができる。このため、例えば、重複部7のクラックの有無を詳細に調べる場合に比べて、重複部7の劣化度合を短時間で判断することが可能となる。
【0050】
[第1点検工程]
[非重複部のクラックを調べる]
図4は、本実施形態の第1点検工程S5の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の第1点検工程S5では、出隅コーナ部11(図1示す)のクラックの有無を調べる工程S53に先立ち、非重複部8(図1に示す)のクラックの有無が調べられる(工程S51)。
【0051】
本実施形態の工程S51では、例えば、検査担当者の目視や、顕微鏡を用いて、非重複部8のクラックの有無が調べられるが、非重複部8を撮影した画像データを解析して、クラックの有無が調べられてもよい。また、非重複部8のクラックの有無を効率よく調べるために、非重複部8のうち、日当たりが良い部分(劣化が進行しやすい部分)において、クラックの有無が調べられるのが好ましい。
【0052】
非重複部8のクラックの有無は、例えば、複数段階で評価されるのが好ましい。本実施形態では、クラックの有無が、11段階(0点~10点)で評価されるが、このような態様に限定されない。11段階のうち、0点、1点、3点、6点、7点及び10点の評価基準の一例は、次のとおりである。点数が大きいほど、クラックが大きいことを示している。
0点:顕微鏡(倍率:100倍)でも亀裂を確認できない
1点:顕微鏡で確認可能な小さな亀裂(1~10μnm程度)がある
3点:目視で確認可能な小さな亀裂(0.2~0.7mm程度)がある
6点:防水シートを貫通する亀裂がある
7点:防水シートを貫通する孔がある
10点:防水シートが分解している
【0053】
図5は、クラック(亀裂)の大きさが異なる非重複部8を示す図である。図5(a)は、0点の非重複部8を示す図である。図5(b)は、クラックの大きさが1点の非重複部8を示す図である。図5(c)は、クラックの大きさが3点の非重複部8を示す図である。図5(d)は、クラックの大きさが6点の非重複部8を示す図である。図5(e)は、クラックの大きさが7点の非重複部8を示す図である。図5(f)は、クラックの大きさが10点の非重複部8を示す図である。このように、非重複部8のクラックの有無は、例えば、複数段階で評価されることにより、クラックを詳細に評価することが可能となる。
【0054】
クラックの評価は、調べられた複数のクラックのうち、最も大きいクラックに基づいて評価されもよいし、複数のクラックの大きさの平均値に基づいて評価されてもよい。
【0055】
[第4診断工程]
次に、本実施形態の第1点検工程S5では、図4に示されるように、非重複部8(図1に示す)のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第4診断工程S52)。一般に、非重複部8のクラックが大きくなるほど、非重複部8の劣化が進んでおり、防水シート体1の防水性能が低下している。このため、第4診断工程S52では、非重複部8のクラックが大きいほど、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。
【0056】
本実施形態の第4診断工程S52では、非重複部8のクラックの大きさが、予め定められた第4基準未満であるか否かが判断される。第4基準は、防水シート体1に求められる防水性能に応じて、適宜設定される。本実施形態の第4基準は、例えば、上記の11段階のうち、3点(目視で確認可能な小さな亀裂がある)に設定される。
【0057】
第4診断工程S52において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準未満である場合(第4診断工程S52で「Yes」)、非重複部8の劣化が進んでおらず、防水シート体1の劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。この場合、防水シート体1のうち、相対的に劣化しやすい傾向がある出隅コーナ部11(図1に示す)のクラックの有無を調べる工程S53が実施される。
【0058】
一方、第4診断工程S52において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準以上である場合(第4診断工程S52で「No」)、重複部7に可塑剤が残存している(重複部7の劣化が進んでいない)ものの、非重複部8の劣化が進んでいる。このため、防水シート体1の全体として、劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の劣化度合を詳細に調べることが好ましい。したがって、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S54が実施される。
【0059】
このように、本実施形態の第4診断工程S52では、非重複部8のクラックの有無が調べられることにより、重複部7に可塑剤が残存している(重複部7の劣化が進んでいない)にもかかわらず、非重複部8の劣化が進んでいる防水シート体1を特定できる。したがって、本実施形態の劣化診断方法は、防水シート体1の劣化度合を確実に診断することが可能となる。
【0060】
[出隅コーナ部のクラックを調べる]
次に、本実施形態の第1点検工程S5では、図1に示した出隅コーナ部11のクラックの有無が調べられる(工程S53)。本実施形態の工程S53では、非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51と同様の手順に基づいて、出隅コーナ部11のクラックの有無が、11段階(0点~11点)で評価される。
【0061】
[第2診断工程]
次に、本実施形態の第1点検工程S5では、出隅コーナ部11のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第2診断工程S55)。一般に、出隅コーナ部11のクラックが大きくなるほど、出隅コーナ部11の劣化が進んでおり、防水シート体1の防水性能が低下している。このため、第2診断工程S55では、出隅コーナ部11のクラックが大きいほど、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。
【0062】
本実施形態の第2診断工程S55では、出隅コーナ部11のクラックの大きさが、予め定められた第2基準未満であるか否かが判断される。第2基準は、防水シート体1に求められる防水性能に応じて、適宜設定される。本実施形態の第2基準は、例えば、上記の11段階のうち、3点(目視で確認可能な小さな亀裂がある)に設定される。
【0063】
第2診断工程S55において、出隅コーナ部11のクラックの大きさが、第2基準未満である場合(第2診断工程S55で「Yes」)、重複部7及び非重複部8だけでなく、出隅コーナ部11の劣化も進んでいない。このため、防水シート体1は、全体として防水性能が維持されており、劣化度合が小さいと判断される。この場合、防水シート体1の補修が必要ないと判断される(工程S56)。
【0064】
一方、第2診断工程S55において、出隅コーナ部11のクラックの大きさが、第2基準以上である場合(第2診断工程S55で「No」)、防水シート体1のうち、出隅コーナ部11の劣化が部分的に進んでいる。このため、防水シート体1の全体としては、劣化度合が大きくないと判断される。この場合、防水シート体1の全体を補修する必要はないが、防水シート体1の部分補修(出隅コーナ部11の補修)が必要と判断される(工程S57)。
【0065】
本実施形態の工程S57では、防水シート体1のうち、クラックの大きい出隅コーナ部11が、従来の手順に基づいて補修される。これにより、本実施形態の劣化診断方法では、出隅コーナ部11の部分的な補修のみで、防水シート体1の防水性能が維持されうる。
【0066】
このように、本実施形態の劣化診断方法では、第1診断工程S4において色要素の差が第1基準以上であり、かつ、第4診断工程S52において非重複部8のクラックの大きさが第4基準未満である場合に、重複部7のクラックの有無を詳細に調べる必要がない。したがって、本実施形態の劣化診断方法は、防水シート体1の劣化度合を、効率よくかつ確実に診断することが可能となる。
【0067】
[出隅コーナ部、重複部及び非重複部のクラックを調べる]
次に、本実施形態の第1点検工程S5では、防水シート体1のうち、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無が調べられる(工程S54)。本実施形態の工程S54では、非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51と同様の手順に基づいて、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無が、11段階(0点~11点)でそれぞれ評価される。なお、非重複部8のクラックの有無は、工程S51で調べられた非重複部8のクラックの有無が用いられてもよい。
【0068】
[第3診断工程]
次に、本実施形態の第1点検工程S5では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第3診断工程S58)。出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックが大きくなるほど、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8の劣化が進んでおり、防水シート体1の防水性能が低下している。このため、第3診断工程S58では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックが大きいほど、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。
【0069】
本実施形態の第3診断工程S58では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさが、予め定められた第3基準未満であるか否かが判断される。本実施形態において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさは、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8の合計点で特定される。第3基準は、防水シート体1に求められる防水性能に応じて、適宜設定される。本実施形態の第3基準は、例えば、9点に設定される。
【0070】
第3診断工程S58において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさ(合計点)が、第3基準未満である場合(第3診断工程S58で「Yes」)、非重複部8の劣化が進んでいるものの、その他の部分の劣化は進んでいない。このため、防水シート体1の防水性能が維持されており、防水シート体1の全体としては、劣化度合が大きくないと判断される。この場合、防水シート体1の部分補修が必要と判断される(工程S59)。
【0071】
本実施形態の工程S59では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のうち、クラックが大きい部分(例えば、クラックの大きさが3点以上の部分)の補修が実施される。これにより、本実施形態の劣化診断方法では、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0072】
一方、第3診断工程S58において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさ(合計点)が、第3基準以上である場合(第3診断工程S58で「No」)、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8の劣化が進んでいる。このため、防水シート体1の防水性能が低下しており、防水シート体1の全体として、劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の全体を補修する必要があると判断される(工程S60)。本実施形態の工程S60では、従来と同様の手順に基づいて、防水シート体1の全体が補修される。これにより、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0073】
このように、本実施形態の第1点検工程S5では、第1診断工程S4において、重複部7の可塑剤が残存していると判断された場合に、出隅コーナ部11等のクラックなどの劣化度合に応じて、防水シート体1の各部分の劣化度合が、段階的に診断される。したがって、本実施形態の劣化診断方法では、防水シート体1の全体の劣化度合が詳細に診断されていた従来の方法に比べて、防水シート体1の劣化度合を、効率よくかつ確実に診断することができる。
【0074】
[第2点検工程]
[非重複部のクラックを調べる]
図6は、本実施形態の第2点検工程S6の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態の第2点検工程S6では、図1に示した出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S73に先立ち、非重複部8のクラックの有無が調べられる(工程S71)。本実施形態の工程S71では、第1点検工程S5の非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51(図4に示す)と同様の手順に基づいて、非重複部8のクラックの有無が、11段階(0点~11点)でそれぞれ評価される。
【0075】
[第4診断工程]
次に、本実施形態の第2点検工程S6では、非重複部8のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第4診断工程S72)。第4診断工程S72では、第1点検工程S5の第4診断工程S52と同様の手順に基づいて、非重複部8のクラックの大きさが、予め定められた第4基準未満であるか否かが判断される。本実施形態の第4基準は、例えば、上記の11段階のうち、3点(目視で確認可能な小さな亀裂がある)に設定される。
【0076】
第4診断工程S72において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準未満である場合(第4診断工程S72で「Yes」)、重複部7の可塑剤の残存量が少なくなっている(重複部7の劣化が進んでいる)ものの、非重複部8の劣化は進んでいない。このため、防水シート体1の全体としては、劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。この場合、防水シート体1の劣化度合を詳細に調べるために、防水シート体1のうち、防水シート体1のうち、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S73が実施される。
【0077】
一方、第4診断工程S72において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準以上である場合(第4診断工程S72で「No」)、重複部7の劣化(第1診断工程S4において、色要素の差が第1基準未満)と、非重複部8の劣化とが進んでいる。このため、防水シート体1の防水性能が低下しており、防水シート体1の全体としての劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の全体の補修が必要であると判断される(工程S74)。工程S74では、従来と同様の手順に基づいて、防水シート体1の全体が補修される。これにより、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0078】
[出隅コーナ部、重複部及び非重複部のクラックを調べる]
次に、本実施形態の第2点検工程S6では、図1に示した防水シート体1のうち、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無が調べられる(工程S73)。本実施形態の工程S73では、非重複部8のクラックの有無を調べる工程S71と同様の手順に基づいて、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無が、11段階(0点~11点)でそれぞれ評価される。非重複部8のクラックの有無の評価結果は、工程S71の評価結果が用いられてもよい。
【0079】
[第3診断工程]
次に、本実施形態の第2点検工程S6では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第3診断工程S75)。本実施形態の第3診断工程S75では、第1点検工程S5の第3診断工程S58と同様に、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックが大きいほど、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。
【0080】
本実施形態の第3診断工程S75では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさが、予め定められた第3基準未満であるか否かが判断される。本実施形態において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさは、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8の合計点で特定される。第3基準は、防水シート体1に求められる防水性能に応じて、適宜設定される。本実施形態の第3基準は、例えば、9点に設定される。
【0081】
第3診断工程S75において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさ(合計点)が、第3基準未満である場合(第3診断工程S75で「Yes」)、重複部7の劣化が進んでいるものの、その他の部分の劣化は進んでいない。このため、防水シート体1の防水性能が維持されており、防水シート体1の全体としては、劣化度合が大きくないと判断される。この場合、防水シート体1の部分補修が必要と判断される(工程S76)。
【0082】
本実施形態の工程S76では、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のうち、クラックが大きい部分(例えば、クラックの大きさが3点以上の部分)の補修が実施される。これにより、本実施形態の劣化診断方法では、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0083】
一方、第3診断工程S75において、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの大きさ(合計点)が、第3基準以上である場合(第3診断工程S75で「No」)、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8の劣化が進んでいる。このため、防水シート体1の防水性能が低下しており、防水シート体1の全体として、劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の全体を補修する必要があると判断される(工程S77)。本実施形態の工程S77では、従来と同様の手順に基づいて、防水シート体1の全体が補修される。これにより、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0084】
このように、本実施形態の第2点検工程S6では、第1診断工程S4において、重複部7の可塑剤の残存量が少なくなっていると判断された場合、出隅コーナ部11等のクラックなどの劣化度合に応じて、防水シート体1の各部分の劣化度合が、段階的に診断される。したがって、本実施形態の劣化診断方法では、重複部7や出隅コーナ部11等の各部分の劣化度合を詳細に調べることができるため、防水シート体1の劣化度合を確実に診断することができる。
【0085】
[防水シート体の劣化診断方法(第2実施形態)]
これまでの実施形態の劣化診断方法では、第1診断工程S4の後に、第1点検工程S5及び第2点検工程S6が実施されたが、このような態様に限定されない。例えば、第1点検工程S5及び第2点検工程S6が省略されてもよい。
【0086】
この実施形態の劣化診断方法では、第1診断工程S4において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S4で「Yes」)、防水シート体1の劣化度合が小さいと判断される。一方、第1診断工程S4において、色要素の差が第1基準未満である場合(第1診断工程S4で「No」)、防水シート体1の劣化度合が大きいと判断される。このように、この実施形態の劣化診断方法では、防水シート体1の劣化度合を簡易的に診断することが可能となる。
【0087】
[防水シート体の劣化診断方法(第3実施形態)]
これまでの実施形態の劣化診断方法では、第1診断工程SS4の後に、非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51、S71と、第4診断工程S52、S72とが行われたが、このような態様に限定されない。例えば、第1診断工程S4の前に、非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51、S71と、第4診断工程S52、S72とが行われてもよい。図7は、本発明の他の実施形態の防水シート体1の劣化診断方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0088】
この実施形態の劣化診断方法では、工程S1において、防水シート体1に漏水がないと判断された場合に(工程S1で「Yes」)、非重複部8のクラックの有無が調べられる(工程S7)。
【0089】
この本実施形態の工程S7では、図4に示した第1点検工程S5の非重複部8のクラックの有無を調べる工程S51と同様の手順に基づいて、非重複部8のクラックの有無が、11段階(0点~11点)でそれぞれ評価される。
【0090】
[第4診断工程]
次に、この実施形態の劣化診断方法では、非重複部8のクラックに基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第4診断工程S8)。第4診断工程S8では、これまでの実施形態の第4診断工程S52(図4に示す)及び第4診断工程S72(図6に示す)と同様の手順に基づいて、非重複部8のクラックの大きさが、予め定められた第4基準未満であるか否かが判断される。
【0091】
第4診断工程S8において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準未満である場合(第4診断工程S8で「Yes」)、非重複部8の劣化が進んでおらず、防水シート体1の劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。この場合、第3点検工程S9が実施される。
【0092】
一方、第4診断工程S8において、非重複部8のクラックの大きさが、第4基準以上である場合(第4診断工程S8で「No」)、非重複部8の劣化が進んでいるため、防水シート体1の劣化度合が大きい(防水性能が低下している)と判断される。この場合、第4点検工程S10が実施される。
【0093】
[第3点検工程]
[重複部と非重複部8との色要素の差を調べる]
図8は、本発明の他の実施形態の第3点検工程S9の処理手順を示すフローチャートである。この実施形態の第3点検工程S9では、先ず、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差が調べられる(工程S81)。この実施形態の工程S81では、これまでの実施形態の工程S2と同様の手順に基づいて、色要素との差が調べられる(5段階で評価される)。
【0094】
[第1診断工程]
次に、この実施形態の第3点検工程S9では、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差に基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第1診断工程S82)。この実施形態の第1診断工程S82では、これまでの実施形態の第1診断工程S4と同様の手順に基づいて、色要素の差(本例では、上記5段階のいずれか)が、第1基準(例えば、3点)以上であるか否かが判断される。
【0095】
第1診断工程S82において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S82で「Yes」)、重複部7に可塑剤が残存しており、さらに、非重複部8の劣化も進んでいない。このため、防水シート体1の全体として、劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。この場合、防水シート体1のうち、相対的に劣化しやすい傾向がある出隅コーナ部11のクラックの有無が調べられる(工程S53)。
【0096】
一方、第1診断工程S82において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S82で「No」)、非重複部の劣化が進んでいないものの、重複部7の可塑剤の残存量が少なくなっている。このため、防水シート体1の全体として、劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の劣化度合を詳細に調べるために、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S54が実施される。
【0097】
この実施形態の第3点検工程S9では、これまでの実施形態の第1点検工程S5と同様に、工程S53~工程S60が実施される。これにより、この実施形態の劣化診断方法では、防水シート体の劣化度合を効率よく診断することができ、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0098】
[第4点検工程]
[重複部と非重複部8との色要素の差を調べる]
図9は、本発明の他の実施形態の第4点検工程S10の処理手順を示すフローチャートである。この実施形態の第4点検工程S10では、先ず、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差が調べられる(工程S91)。この実施形態の工程S91では、これまでの実施形態の工程S2と同様の手順に基づいて、色要素との差が調べられる(5段階で評価される)。
【0099】
[第1診断工程]
次に、この実施形態の第4点検工程S10では、重複部7の外表面の色要素と、非重複部8の外表面の色要素との差に基づいて、防水シート体1の劣化度合が判断される(第1診断工程S92)。この実施形態の第1診断工程S92では、これまでの実施形態の第1診断工程S4と同様に、色要素の差(本例では、上記5段階のいずれか)が、第1基準(例えば、3点)以上であるか否かが判断される。
【0100】
第1診断工程S92において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S92で「Yes」)、非重複部8の劣化が進んでいるものの、重複部7に可塑剤が残存している。このため、防水シート体1の全体として、劣化度合が小さい(防水性能が維持されている)と判断される。この場合、防水シート体1のうち、出隅コーナ部11、重複部7及び非重複部8のクラックの有無を調べる工程S73が実施される。
【0101】
一方、第1診断工程S92において、色要素の差が、第1基準以上である場合(第1診断工程S92で「No」)、非重複部8だけでなく、重複部7の劣化も進んでいる。このため、防水シート体1の防水性能が低下しており、防水シート体1の全体として、劣化度合が大きいと判断される。この場合、防水シート体1の全体の補修が必要であると判断する工程S74が実施される。
【0102】
この実施形態の第4点検工程S10では、第2点検工程S6と同様に、工程S73~工程S77が実施される。これにより、この実施形態の劣化診断方法では、防水シート体の劣化度合を効率よく診断することができ、防水シート体1の防水性能が維持される。
【0103】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0104】
1 防水シート体
5 第1防水シート体
6 第2防水シート体
7 重複部
8 非重複部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9