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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111423
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】浸透性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20230803BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230803BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D7/62
C09D5/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013274
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】394023975
【氏名又は名称】小島 功
(71)【出願人】
【識別番号】505328672
【氏名又は名称】株式会社 武蔵富装
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 功
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038HA066
4J038HA446
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA03
4J038NA07
4J038PB05
4J038PC01
4J038PC04
4J038PC06
(57)【要約】
【課題】
塗膜を作ることなく、建材の紫外線劣化を抑制でき、建材表面に撥水効果、抗菌効果を付与することが可能な浸透性組成物を提供すること。
【解決手段】
1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散する浸透性組成物であって、該ナノ金属シリカ粒子は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持されている、
建材に塗布又は噴霧するための浸透性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散する浸透性組成物であって、
該ナノ金属シリカ粒子は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持されている、
建材に塗布又は噴霧するための浸透性組成物。
【請求項2】
前記ナノ金属粒子を構成する金属粒子が前記浸透性組成物の固形分の30質量%以下であり、前記非晶質のシリカ粒子が前記浸透性組成物の固形分の70質量%以上である請求項1に記載の浸透性組成物。
【請求項3】
含水率が30質量%以下の平滑な木材の表面から内部に、前記浸透性組成物を浸透させたときの該木材の表面の水滴接触角が100°以上である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性組成物。
【請求項4】
一次粒子径5nm~100nmの前記ナノ金属シリカ粒子が、前記ナノ金属シリカ粒子の全質量に基づいて、80質量%以上である、請求項2に記載の浸透性組成物。
【請求項5】
前記ナノ金属粒子が銀粒子であり、該銀粒子の全質量に基づいて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の銀粒子が、80質量%以上である、請求項2に記載の浸漬性組成物。
【請求項6】
前記建材が、木材、コンクリート、モルタル、スレート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石膏造形物、コンクリートブロック、漆喰、陶器タイル又は焼成レンガである請求項1に記載の浸透性組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の前記液体が、水又は有機溶媒である請求項1に記載の浸透性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸透性組成物に関する。より詳細には、建材に塗布又は噴霧するための、1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散してなる浸透性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、建築物などに、木材、コンクリート、モルタル等の建材が使用されている。このような建材は、温度変化、太陽光、雨、風、雪、傷、虫害などにより劣化しやすい。
例えば、木材は、吸水しやすく乾燥しにくいため、湿った状態が続きやすく、木の膨張等の寸法変化による家のゆがみや、白色腐朽菌や褐色腐朽菌の繁殖による腐食や、カビ、コケ類等の発生、シロアリ・ヒラタキクイムシ等による虫害が生じる。
また、例えばコンクリートは、内部に微細な毛細管や空隙が存在するため水を吸収しやすく、水にコンクリートの主成分の水酸化カルシウムが溶解して白華が生じたり、吸水したコンクリートが二酸化炭素と反応して中性化して強度が低下したり、鉄筋が錆びて表面にクラックや剥落が発生したり、表面にカビやコケ類が生じてしまうという問題がある。
【0003】
そのため、木材やコンクリート等の建材を水分や、菌・カビの繁殖から保護するために、木材やコンクリートの表面をコーティングする方法が採用されている。
例えば、コンクリートなどの無機基材や、木材などの有機基材の表面に抗菌性の被膜を形成することのできる、コロイダルシリカと、有機ケイ素化合物及びその重合体、及び抗菌性化合物とを含むコーティング組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-126555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の表面コーティングは、紫外線の劣化や、雨や風に飛ばされた砂や小石等により徐々に削られて、クラックや塗装の剥がれが生じてしまう。そのため、木材やコンクリートの表面が露出し、雨などで吸水してしまうことになる。木材やコンクリートに含まれた水分は、コーティング層により外部に蒸散できず、木材やコンクリートは高湿度環境下にさらされるため、劣化が促進する原因にもなる。
そのため、コーティング層が劣化する前に3乃至5年ごとにコーティングし直す必要がある。この際、表面のコーティング層を取除いてから、新たにコーティング層を形成し直す必要があるため、非常に手間と費用がかかる。
また、木材にコーティング層を形成してしまうと、木材の有する調湿性、外観、質感、香りなども損なわれてしまうという問題がある。
そこで、木やコンクリートなどの建材の表面にコーティング層を設けることなく、建材を傷、紫外線、湿気、雨水、カビ・菌、コケ類などから保護する方法が求められている。
【0006】
本発明は、塗膜を形成することなく、建材の紫外線劣化を抑制でき、建材表面に撥水効果、抗菌効果を付与することが可能な浸透性組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、木材の腐食や、木材やコンクリート等の建材表面にカビ・菌やコケ類が発生するのを防止することの可能な浸透性組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、簡易に建材に塗布及び噴霧でき、且つ、改修作業時にも、手間や費用を抑えられることが可能な浸透性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記事情を鑑み、鋭意検討した結果、ナノ金属粒子を非晶質のシリカ粒子の表面に担持させたナノ金属微粒子がコロイド状に分散した組成物を用いることで、塗膜を形成せずに、建材の表面を改質できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散する浸透性組成物であって、該ナノ金属シリカ粒子は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持されている、建材に塗布又は噴霧するための浸透性組成物に関する。
前記浸透性組成物は、前記ナノ金属粒子を構成する金属粒子が前記浸透性組成物の固形分の30質量%以下であり、前記非晶質のシリカ粒子が前記液浸透性組成物の固形分の70質量%以上であることが好ましい。
前記浸透性組成物は、含水率が30質量%以下の平滑な木材の表面から内部に、前記浸透性組成物を浸透させたときの該木材の表面の水滴接触角が100°以上であることが好ましい。
前記浸透性組成物は、一次粒子径5nm~100nmの前記ナノ金属シリカ粒子が、前記ナノ金属シリカ粒子の全質量に基づいて、80質量%以上であることが好ましい。
前記浸透性組成物は、前記ナノ金属粒子が銀粒子であり、該銀粒子の全質量に基づいて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の銀粒子が、80質量%以上であることが好ましい。
前記建材が、木材、コンクリート、モルタル、スレート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石膏造形物、コンクリートブロック、漆喰、陶器タイル又は焼成レンガであることが好ましい。
前記液体が、水又は有機溶媒であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗膜を形成することなしに、建材表面に撥水効果及び抗菌効果を付与することができる浸透性組成物を提供することができる。
また、木材に対して、寸法安定性、調湿性、外観、質感及び香り等を損なうことなく、撥水性、抗菌・抗カビ性及び耐虫性を付与することが可能な浸透性組成物を提供することができる。
本発明によれば、紫外線などによる表面劣化が少なく、頻繁なメンテナンスが不要で、且つ、改修作業時に手間と費用が抑えられる木材、コンクリート等の建材の表面を改質できる浸透性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に関して詳細を説明する。
【0011】
[浸透性組成物]
本発明の浸透性組成物は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子等から選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持されている、1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散してなり、建材に塗布又は噴霧して使用される。
【0012】
<ナノ金属粒子>
本発明に使用されるナノ金属粒子は、抗菌性を有する1μm以下の金属粒子であれば特に限定されず、好ましくは銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子等から選択され、より好ましくは銀粒子である。
ナノ金属粒子は、1種だけでもよく、2種以上を混合して使用することができる。また
、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のナノサイズの金属微粒子を含んでいてもよい。
ナノ金属粒子は、硫化金属、硝酸金属等の塩の形態で用いても良いし、金属コロイド又はその塩の形態で使用することもでき、金属コロイドの形態が好ましい。
【0013】
1μm以下のナノ金属粒子の粒子径としては、例えば0.3nm~1μm、例えば0.3nm~500nm、例えば1~100nmであり、例えば、2.5nmより大きく10nm以下である。
好ましくは、ナノ金属粒子の全質量に基いて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の粒子が80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上である。特にナノ金属粒子が銀粒子であることが好ましい。
粒子径が上記範囲であることにより、表面積が大きく、ナノ金属シリカ粒子の抗菌作用及び触媒作用が発揮されると考えられる。
【0014】
<非晶質シリカ粒子>
本発明の使用されるシリカ粒子は、非晶質シリカ粒子であればよく、その粒径としては、例えば、5nm~1000nm、例えば5nm~100nm、例えば5nm~50nm、例えば5nm~20nmである。
【0015】
結晶性シリカは、粒子径が大きく、微細化してもナノサイズの均一な微粒子を製造することが難しいが、非晶質シリカを使用することで、ナノサイズの均一な微粒子を得ることができる。
【0016】
<ナノ金属シリカ粒子>
本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子は、非晶質のシリカ粒子と、ナノ金属粒子とが化学結合により強固に結合しているため、ナノ金属粒子の抗菌効果及び触媒作用を損なうことがない。
本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子の粒径は1μm以下であればよく、例えば、5nm~1000nmである。
【0017】
なお、本明細書において、粒子径は数平均粒子径を意味し、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製、JEM-2100P)を用いて、100個の粒子を観察し、各粒子の最大径の数平均値として算出する。
【0018】
本発明に使用される、ナノ金属粒子は、浸透性組成物の固形分に対して0.1~50質量%であり、好ましくは0.1~30質量%であり、より好ましくは0.5~30質量%である。
また、本発明の浸透性組成物を構成する、非晶質シリカ粒子は、浸透性組成物の固形分に対して70質量%以上であり、好ましくは50質量%であり、より好ましくは30質量%以上である。
ここで、固形分とは、浸透性組成物から液体を除いた成分を云う。
【0019】
ナノ金属粒子が、浸透性組成物中の固形分に対して30質量%よりも多く、非晶質のシリカ粒子の含有量が70質量%未満であると、ナノ金属粒子がシリカ粒子表面に均一に分散できず、菌や酸素にふれるナノ金属粒子の表面積が低下し、十分な抗菌性や、金属の触媒作用が発揮されないおそれがある。
【0020】
<液体>
本発明に使用される液体としては、ナノ金属シリカ粒子をコロイド状に分散させることができればよく、水及び有機溶媒を使用することができる。
有機溶媒としては、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、イソアミルアルコール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、ハイドロフルオロカーボン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテルなどのエチレングリコールのモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテルなどのエチレングリコールのジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類などが挙げられる。
溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として使用しても良い。
好ましくは、安全性の観点から、水、エタノール及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0021】
<建材>
本明細書において、建材とは、建材又は面構成材をいう。
建材としては、例えば、無垢材、集成材、単板積層材、合板、パーティクルボード、ファイバーボード及び配向性ストランドボードなどの木材、コンクリート、モルタル、スレート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石膏造形物、コンクリートブロック、漆喰、陶器タイル、焼成レンガ、織布、不織布、ガラスクロス及び合成紙などが挙げられる。
また、本明細書において、建材としては、建築用途に限らず、土木用、机、テーブル、タンス等の家具を含む一般工業製品、食品包装材なども含むものとする。
好ましくは無垢材、ベニヤ板などの合板、パーティクルボード等の木質材料を含む木材、コンクリート、モルタル、スレート、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、石膏造形物、コンクリートブロック、漆喰、陶器タイル及び焼成レンガ等の石質材料が挙げられる。
【0022】
本発明の浸透性組成物の塗布又は噴霧方法としては、特に限定は無く、公知の方法を使用でき、例えば、刷毛、スポンジ、ローラー、コテ又はレーキなどで塗布する方法や、エアースプレー、エアレススプレーなどで噴霧する方法により行うことができる。均一に塗布できることから、エアレススプレーを使用することが好ましい。
塗布方法により、浸透性組成物に含まれるナノ金属シリカ粒子の濃度を調節することができる。
【0023】
塗布量としては、本発明の効果を発揮する量を塗布すればよく、建材の乾燥状態や表面状態により適宜調整でき、例えば1~300mg/m、例えば5~100mg/m、例えば5~80mg/m、例えば5~50mg/mである。
例えば、木材では20~80mg/m塗布することが好ましく、乾燥され、表面カンナ加工や研磨加工した木材表面には10~30mg/m塗布することが好ましい。
型枠コンクリートやプレストレストコンクリート等では5~20mg/m塗布することが好ましく、粗い表面を有するモルタル等では10~50mg/m塗布することが好ましい。
【0024】
好ましい木材としては、含水率が50%以下、好ましくは含水率が30質量%以下のも
のが挙げられる。含水率が50%を超える場合、本発明の浸透性組成物が木材の細胞間に均一に浸透することができず、十分に表面を改質できない場合がある。
【0025】
一方、コンクリート等の石質材料に塗布又は噴霧する場合、表面が濡れていても構わない。湿潤したコンクリート表面に対して、本発明の浸透性組成物のぬれ性が高くなるので、コンクリートの表面から内部に均一に浸透でき、石質材料の表面を均一に改質できる。
【0026】
本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子が1μm以下であることにより、本発明の浸透性組成物が木材に塗布又は噴霧されると、毛細管現象により木の表面から内部に浸透し、リグニン、セルロース及びヘミセルロース等の木の成分と非晶質シリカ粒子表面とが反応して化学結合を形成して強固に結合する。すなわち、木の表面でリグニン、セルロース、ヘミセルロースの細胞組成変更が行われて、高い撥水性を発現することができる。
高い撥水機能により、雨等の水がかかっても、木材は水を吸水して膨張することはなく、また、汚れや菌・バクテリアが洗い流されるので表面汚染を抑制できる。
また、表面改質により、虫食いを防止できる。
本発明の浸透性組成物は、木材表面にコーティング層を設けるものではなく、木の表面から内部に浸透して木の表面に機能を発揮するため、日光や風等で砂や石等により破壊されるものではないので、長期間にわたって美観の維持や、劣化防止に効果を発揮する。
また、ナノ金属シリカ粒子は、非晶質のシリカ粒子が窒素酸化物(NOx)や、ホルムアルデヒド等のシックハウスの原因となる揮発物質を吸着し、ナノ金属粒子の触媒効果により揮発物質を分解できる。特に溶液として水やアルコールを使用した浸透性組成物は、室内の壁や床への塗布や、家具等に塗布により、室内に飛散する人体に害の与える揮発物質の濃度を低下させることができる。
【0027】
また、本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子が1μm以下であることにより、本発明の浸透性組成物をコンクリートやモルタル等の石質材料に塗布又は噴霧すると、コンクリートの表面から内部の毛細管や空隙に浸透し、シリカと、石質材料中の石灰成分とが飯能して化学結合を形成し強固に結合する。すなわち、石質材料の表面が改質され、高い撥水性を発現することができる。
撥水機能により、コンクリート内部に水分が浸透して、クラックの発生や鉄筋に錆びを生じさせることを抑制することができる。
また、石質材料のクラックや剥落が生じた面は強度が低下して更に剥落が生じやすくなるが、本発明の浸透性組成物を塗布又は噴霧した場合、表面が改質されて、表面強度が増加するので、クラックや剥落の進行を抑制できる。
さらに、クラックが生じたような劣化コンクリートに対して塗布又は噴霧した場合、クラック面に浸透し、クラック部分の中性化を抑制して、浸水することを防止できるので、鉄筋の錆びの進行を抑制することができる。
また、コンクリート等の石質材料はアルカリ性であるため、下水等から生じる硫化水素ガスと石質材料表面の硫黄酸化細菌の働きにより生じた硫酸により、中性化してコンクリートの強度の低下が生じることが知られている。本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子は、非晶質のシリカ粒子が硫化水素ガスを吸着し、ナノ金属粒子の触媒効果で硫化水素ガスを分解できるので、硫化水素ガスによるコンクリートの劣化を抑制することができる。そのため硫化水素ガスが生じやすい、下水管やトンネル等に使用される建材への使用に適している。
【0028】
本発明の浸透性組成物中の、シリカ粒子の表面に担持された抗菌性を有するナノ金属粒子は、酸素ラジカルにて抗菌効果を発揮することから臭いが少なく、人体に対する刺激性も低いため、抗菌剤として有用性が高いと考えられる。
そして、ナノ金属シリカ粒子は、従来の結晶質シリカを用いた抗菌剤よりも粒径及びナノ金属粒子の分散性が均一化し、ナノ金属粒子の表面積の巨大化が図れ、空気及び菌に接
触する面積が最大化するため、抗菌性能を高くすることができる。
また、ナノメートルサイズの金属粒子は、空気中又は液体中の酸素を、原子状の酸素(酸素ラジカル)に変化させることができ、この酸素ラジカルが菌に作用して抗菌作用を示すと考えられている。
本発明に使用されるナノ金属シリカ粒子は、ナノ金属粒子をナノサイズに粒径を調整可能な非晶質シリカ粒子に担持されているため、ナノ金属シリカ粒子の表面積が、結晶性シリカを使用したものよりも非常に大きくなる。これにより、酸素ラジカルの発生が増加し、ナノ金属シリカに直接接触していない好気性のカビ、ウイルス、菌、コケ類等の繁殖を抑制できるからと考えられる。
また、カビやコケ類の生えた建材に本発明の浸透性組成物を塗布した場合、カビやコケ類等を死滅させることができ、これはカビやコケ類周囲の酸素を酸素ラジカルに変化させることができるからと考えられる。
【0029】
本発明の浸透性組成物は、建材の表面に塗膜を形成するのではなく、建材の表面成分と結合を形成した建材表面を改質するものであるため、紫外線による劣化や、雨や風により削られにくいものである。そのため、塗膜を形成する方法よりも長期間、撥水効果や抗菌効果等の表面改質効果が持続する。
また、改修する際にも、表面コーティングの場合は、建材表面からコーティングを剥がしてから再施工する必要があるが、本発明の浸透性組成物は、表面を洗浄するのみで、再施工可能である。そのため、改修の際に手間と費用を抑えることができる。
【0030】
<浸透性組成物の製造方法>
ナノ金属シリカ粒子の製造方法としては、溶媒に、上記ナノ金属粒子と非晶質シリカ粒子を加えて撹拌してもよいし、ナノ金属粒子が均一に分散した溶媒と、非晶質シリカ粒子が均一に分散した溶媒とを混合して得ることができる。
使用する溶媒としては、原料であるナノ金属微粒子及び非晶質シリカ粒子、並びに製造物であるナノ金属シリカ粒子が均一に分散できればよく特に限定されないが、水及び上記有機溶媒が挙げられる。
溶媒は単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として使用しても良い。
好ましくは、安全性の観点から、水、エタノール及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0031】
浸透性組成物は、ナノ金属シリカ粒子を製造した溶液をそのまま使用しても良いし、溶液を濃縮若しくは希釈したもの、若しくは公知の方法で溶媒置換したものを使用できるし、また、製造したナノ金属シリカ粒子を液体に加えて混合したものでもよい。
【0032】
本発明の浸透性組成物中のナノ金属シリカ粒子の濃度は特に限定されず、使用する建材の種類や表面状態により適宜調整できる。
例えば、10ppm~10000ppm、例えば100ppm~5000ppm、例えば、300ppm~3000ppmである。
ナノ金属シリカ粒子の濃度が10ppmより低いと、塗布量が多くなり、建材表面を均一に表面改質ができない恐れがある。また10000ppmより高いと、ナノ金属シリカ粒子が溶液中に均一に分散せず凝集や沈降が生じやすくなる恐れがある。
【0033】
<その他>
本発明の浸透性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加物を添加することができる。その他の添加物としては、アルキルケイ酸塩、紫外線吸収剤、耐火剤、酸化チタンなどの光触媒、白色発光機能材を含有することができる。
【0034】
本発明の浸透性組成物にはアルキルケイ酸塩を添加することができる。本発明の浸透性組成物と共に建材に浸透したアルキルケイ酸塩は、二酸化炭素及び水の存在下で、炭酸塩
と、疎水性のアルキルシリコーンを生じるため、建材表面の撥水性を増加することができる。
アルキルケイ酸塩としては、特に限定されるものではないが、メチルケイ酸カリウムが挙げられる。
【実施例0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限
り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
<ナノ銀シリカ粒子含有水溶液(ナノメタルシルバーシリカ水溶液)の調製>
平均1.0nmのナノメタルシルバーを0.002質量%で含むコロイド水溶液と、平均粒子径1.0nmの非晶質シリカ粒子を0.02質量%で含むコロイド水溶液と、水とを、室温で1時間撹拌し、濃縮して、非晶質シリカ表面にナノメタルシルバーが担持したナノメタルシルバーシリカを2000ppmで含むナノメタルシルバーシリカ水溶液を調製した。
【0037】
<耐候性試験>
(実施例2)
質量を測定したモルタル板(70×70×20mm)を1分間水浸漬し、取り出して10分後に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を20mg/mとなる量でスプレー塗布して1週間乾燥させた。乾燥後の試験体の質量を測定し、塗布前の質量から塗布後の質量の差から、塗布量を求めた。
乾燥後の試験体の質量の測定後、水に24時間浸漬した。試験体を水から取り出して、キムワイプで表面の水をふき取って質量を測定した。乾燥後の質量から乾燥前の質量の差から、浸水量を求めた。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量と浸水量を下記表1に示す。
【0038】
(実施例3)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量を30mg/mとした以外は、実施例2と同様に試験した。
【0039】
(実施例4)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量を50mg/mとした以外は、実施例2と同様に試験した。
【0040】
(比較例1)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例2と同様に試験した。
【0041】
(比較例2)
モルタル板(70×70×20mm)に、アクアシール50E(大同塗料株式会社製)を100mg/m塗布して1時間乾燥した後、更に100mg/m塗布して24時間乾燥させた試験体を用いて、実施例2と同様に試験した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2乃至4、比較例1及び2より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液は、モルタル板の表面改質し、水の浸透を防止することができることが示された。
【0044】
(実施例5)
実施例3と同様に作製した資料を、スーパーUVウェザーメーターを使用したスーパーUV超劣化加速試験500時間の耐久試験を行い、24時間乾燥させた。
乾燥後の試験体の質量の測定後、水に24時間浸漬した。試験体を水から取り出して、キムワイプで表面の水をふき取って質量を測定した。乾燥後の質量から乾燥前の質量の差から、浸水量を求めた。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量と浸水量を下記表2に示す。
【0045】
(比較例3)
比較例1と同様に試験体を作製し、実施例5と同様に試験を行った。
【0046】
(比較例4)
比較例2と同様に試験体を作製し、実施例5と同様に試験を行った。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例5と、比較例3及び4より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布したモルタル板は、未処理のモルタル板や従来使用されている吸水防止剤よりも、耐候性試験後の吸水性が少ないことが示された。
【0049】
<撥水性試験>
(実施例6)
木材に本発明の浸透性組成物を30mg/mとなるようにエアレススプレーで噴霧し乾燥後、スーパーUVウェザーメーターを使用したスーパーUV超劣化加速試験100時間の耐久試験を行い、乾燥させた。
試験体に1μmの純水を滴下し、1秒後の接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製、CAX-150)を使用して、JIS R3257(1999)に記載された方法に準拠して、θ/2法によって測定した。接触角を表3に示す。
【0050】
(実施例7)
スーパーUV超劣化加速試験を250時間とした以外は、実施例6と同様に接触角を測
定した。
【0051】
(実施例8)
平均1.0nmのナノメタルシルバーを0.002質量%で含むコロイド水溶液と、平均粒子径1.0nmの非晶質シリカ粒子を0.02質量%で含むコロイド水溶液と、エタノールとを、室温で1時間撹拌し、濃縮して、非晶質シリカ表面にナノメタルシルバーが担持したナノメタルシルバーシリカを2000ppmで含むナノメタルシルバーシリカエタノール溶液を調製した。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液に代えて、ナノメタルシルバーシリカエタノール溶液を使用し、スーパーUV超劣化加速試験を500時間とした以外は、実施例6と同様に接触角を測定した。
【0052】
(実施例9)
モルタル板に、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるようにエアレススプレーで噴霧した資料を用いた以外は、実施例6と同様に接触角を測定した。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例6乃至9より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材及びモルタルは、スーパーUV超劣化加速試験後であっても水の接触角が100°を超えるため、撥水性を有することが示された。
【0055】
<吸湿試験>
(実施例10)
120mm×120mm×15mmの無塗装スギ無垢材の裏面と側面にアルミテープを張りつけて断湿し、そして表面に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるように塗布して72時間乾燥させた。
JIS A 1470-10(2014)に準拠して、試験体を23℃75%の恒温槽に12時間入れて吸湿させ、吸湿後の試験体の質量と、吸湿前の試験体の質量の差から吸湿量(g/m)を算出した。
次いで、試験体を23℃50%の恒温槽に12時間入れ放湿させて、放湿前の試験体の質量と、方湿後の試験体の質量の差から放湿量(g/m)を算出した。
算出した吸湿量、放湿量及び吸放湿率(放湿量/吸湿量×100)を表4に示す。
【0056】
(比較例5)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例10と同様にして試験を行い、算出した吸湿量、放湿量及び吸放湿率(放湿量/吸湿量×100)を表4に示す。
【0057】
(比較例6)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液に代えて、浸透性塗料であるオスモカラー外装用クリアー(オスモアンドエデル社製)を85mL/m塗布した以外は、実施例10と同様にして試験を行い、算出した吸湿量、放湿量及び吸放湿率(放湿量/吸湿量×100)を表
4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例10と比較例5及び6の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材は、浸透性塗料よりも優れ、未塗付の木材と同等の吸湿性及び放湿性を有するものであり、木材の調湿性能を損なわないことが示された。
【0060】
<ガス吸着拡散試験>
(実施例11)
実施例10と同様に試験体を作製した。
JIS A 1901-1(2015)に準拠し、試験体を密閉した容量20Lのテドラーバッグを2袋用意した。それぞれの袋内を、4ppmアンモニアを含む空気20L又は0.4ppmのホルムルアルデヒドを含む空気で充填し、封止した。
ガスの吸着性能を確認するために、1時間、2時間、3時間、6時間、10時間、24時間放置後におけるテドラーバッグ内のアンモニアガス濃度及びホルムアルデヒド濃度を測定した。その後、ガスの拡散性能を確認するために、試験体が封入されたテドラーバッグを45度の恒温槽で3時間放置後におけるテドラーバッグ内のアンモニアガス濃度及びホルムアルデヒド濃度を測定した。結果を、アンモニアの吸着放散試験の結果を下記表5に、ホルムアルデヒドの吸着放散試験の結果を下記表6に示す。
【0061】
(実施例12)
無塗装スギ無垢材の代わりに無塗装のヒノキ無垢材を使用した以外は実施例11と同様にアンモニア吸着効果を測定した。
【0062】
(比較例6)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例11と同様にアンモニア吸着効果を測定した。
【0063】
(比較例7)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液に代えて、浸透性塗料であるオスモカラー外装用クリアー(オスモアンドエデル社製)を85mL/m塗布した以外は、実施例11と同様にアンモニア吸着効果を測定した。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
実施例11及び12と、比較例6及び7の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材は、悪臭の原因となるアンモニアや、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドの吸着性能及が、浸透性塗料を塗布した木材よりも優れており、無塗装の無垢材とほぼ同程度であることが分かった。そのため、本発明の浸透性組成物は、室内の建材や家具にも安全に使用することができる。
また、本発明の浸透性組成物を塗布した木材は、アンモニア及びホルムアルデヒドの拡散量が無塗装の木材及び浸透性塗料を塗布した木材よりも低いのは、ナノメタルシルバーシリカ粒子の触媒効果により分解されている可能性がある。
【0067】
<ガス放散試験>
(実施例13)
実施例12と同様に試験体を作製した。
20mL容量のテトラ―バッグに、試験体と空気5Lを入れて封止した。
ヒノキの揮発性芳香成分であるαピネンの放散量を測定するために、試験体を封止したテトラ―バックを、45℃の恒温槽に静置し、72時間、120時間及び168時間放置後におけるテドラーバッグ内のαピネン濃度及びホルムアルデヒド濃度を測定した。結果を、下記表7に示す。
【0068】
(比較例8)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例13と同様に試験してαピネン濃度を測定した。
【0069】
(比較例9)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液に代えて、浸透性塗料であるオスモカラー外装用クリアー(オスモアンドエデル社製)を85mL/m塗布した以外は、実施例13と同様に試験してαピネン濃度を測定した。
【0070】
【表7】
【0071】
実施例13と、比較例8及び9の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布したヒノキ材は、浸透性塗料を塗布したヒノキ材よりも優れたαピネンの放散特定を有し、且つ、無塗装のヒノキ材と同等のαピネンの放散性能を有していることが分かった。つまり、本発明の浸透性組成物は、木の香りを損なわないことが示された。
【0072】
<ぬれ性試験>
(実施例14)
120mm×120mm×15mmの無塗装スギ無垢材の表面に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるように塗布して72時間乾燥させた。
水平器を用いて表面が水平になるように台の上に試験体を乗せ、シリンジを用いて試験体表面から1cmの高さから水滴(55mL)を落とし、30秒後に撮影した。撮影写真から、水の接触角を測定した。測定結果を下記表8に示す。
【0073】
(比較例10)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例14と同様に試験して水の接触角を測定した。
【0074】
(比較例11)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液に代えて、浸透性塗料であるオスモカラー外装用クリアー(オスモアンドエデル社製)を85mL/m塗布した以外は、実施例14と同様に試験して水の接触角を測定した。
【0075】
【表8】
【0076】
実施例14の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布したスギ材は、無塗装のスギ材や浸透性塗料の塗布されたスギ材と比較して大きい、100°以上の接触角を有しており、非常に優れた撥水性を有することが示された。
【0077】
<防汚性試験>
(実施例15)
120mm×120mm×15mmの無塗装スギ無垢材の表面に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるように塗布して72時間乾燥させた。
試験体表面を、3cm×3cmの9つの升目に分けて、3か所に醤油1mL、3か所に中濃ソース1mL、3か所にケチャップ1mLを付着させた。
試験体に醤油、中濃ソース及びケッチャプを付着させてから、5分後、30分後及び60分後に1か所ずつキムワイプでふき取り、表面を目視で観察した。観察結果を、下記表9に示す。
防汚性試験の評価は以下の通りである。
A:ふき取った部分にシミが全く観察されない
B:ふき取った部分にわずかにシミが観察された
C:ふき取った部分に濃いシミが観察された。
【0078】
(比較例12)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例14と同様に試験して、表面を目視で観察した。観察結果を、下記表9に示す。
【0079】
【表9】
【0080】
実施例14及び比較例12の試験結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布したスギ材は、水分及び油分を吸収せず、無塗装のスギ材と比べて防汚性に優れることが示された。
【0081】
<屋外暴露試験>
(実施例16)
300mm×600mm×50mmの木材全面に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるようにエアレススプレーで塗布した。72時間養生して、屋外暴露試験用の試験体とした。
試験体を千葉県銚子市で南面に向かって、塗面を水平面から上に60度に傾けて6ヶ月屋外暴露試験に供し、試験後の汚れを目視で評価した。また、試験後の試験体に、水をかけて吸水するかの試験を行った。試験後、さらに6か月屋外暴露試験を続けた。その結果を下記表10に示す。
屋外暴露試験の評価は以下の通りである。
A:木の表面に変色(黒ずみ)がなく、水をはじき、水ジミが観察されない。
B:木の表面変色(黒ずみ)があり、吸水して水ジミが観察される。
C:木の表面にカビが生えており、吸水して水ジミが観察される。
【0082】
(比較例13)
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例14と同様に6ヶ月の屋外曝露試験をおこない、試験体の評価を行った。
試験後、木の表面をたわしでこすって表面のぬめりとカビを取除き、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/mとなるようにエアレススプレーで塗布し、さらに6ヶ月屋外暴露試験に供し、試験体の評価を行った。
【表10】
【0083】
実施例16の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材は、無塗装の木材でカビの生える環境下においても撥水性を維持し、カビの発生や、変色が生じないことが示された。
また、比較例13の結果より、本発明の組成物は、新しい木材だけでなく、一度カビの生えた木材に対しても、防カビ性及び撥水性を付与でき、リフォーム用途に使用できることが示された。
【0084】
<コケ類の除去効果>
(実施例17)
市販の園芸用軽石を、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液に入れて1
0分間攪拌した後、取り出して乾燥させ、表面改質軽石を作製した。
植木鉢の表層土として表面改質軽石を撒いたものと、未処理の軽石を撒いたものを用意し、屋外で鉢植えを育てた。
6か月後、表面改質軽石の変色は無く、コケ類の発生は観察されなかった。また、水をかけたところ、水をはじき、軽石に濡れジミは観察されなかった。
それに対し、未処理の軽石は黒ずんでおり、わずかにコケ類の発生が観察された。また、水をかけたところ、水を吸収し、軽石表面に濡れジミが観察された。
実施例17の結果より、本発明の浸透性組成物は、撥水効果を維持でき、表面に汚染が防止されていることが示された。
【0085】
(実施例18)
コケ類の生えた庭石を用意し、10cm×10cmの範囲に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を50mg/mとなるように塗布し、10日間放置した。
10日後、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分のコケ類が茶色い死骸となっており、竹ぼうきではいたところ、茶色い部分のみ除去されて岩肌が露出した。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布していない緑色のコケ類部分をたわしでこすり、岩肌を露出させたところ、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分の方が白くなっていた。そして、露出させた岩肌にジョウロで水をかけたところ、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分は水をはじいて岩肌に水が浸透しなかった(水ジミができなかった)のに対し、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布していない部分は岩肌に水がしみこみ水ジミができた。
このことから、本発明の浸透性組成物を塗布した部分では、ナノメタルシルバーの酸素分解作用により光合成できずコケ類が枯れたものと考えられる。
また、ナノメタルシルバーの中性化機能により、岩肌表面の酸化汚染物質や窒素汚染物質の付着力が弱まり、岩肌が白くなったものと考えられる。
また、本発明の浸透性組成物が岩肌に浸透して石質の表面が改質されて、撥水機能を発揮したものと考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1μm以下のナノ金属シリカ粒子が液体中にコロイド状に分散する浸透性組成物であって、
該ナノ金属シリカ粒子は、1μm以下の銀粒子、銅粒子、金粒子及び鉄粒子からなる群より選択される1種以上のナノ金属粒子が非晶質のシリカ粒子の表面に担持されており、
含水率が30質量%以下の木材の表面から内部に、該浸透性組成物を浸透させたときの該木材の表面の水滴接触角が100°以上である、
木材に塗布又は噴霧するための浸透性組成物。
【請求項2】
前記ナノ金属粒子を構成する金属粒子が前記浸透性組成物の固形分の30質量%以下であり、前記非晶質のシリカ粒子が前記浸透性組成物の固形分の70質量%以上である請求項1に記載の浸透性組成物。
【請求項3】
粒子径5nm~100nmの前記ナノ金属シリカ粒子が、前記ナノ金属シリカ粒子の全質量に基づいて、80質量%以上である、請求項2に記載の浸透性組成物。
【請求項4】
前記ナノ金属粒子が銀粒子であり、該銀粒子の全質量に基づいて、粒子径2.5nmより大きく10nm以下の銀粒子が、80質量%以上である、請求項2に記載の浸透性組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の前記液体が、水又は有機溶媒である請求項1に記載の浸透性組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
<耐候性試験>
例2
質量を測定したモルタル板(70×70×20mm3)を1分間水浸漬し、取り出して10分後に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を20mg/m2となる量でスプレー塗布して1週間乾燥させた。乾燥後の試験体の質量を測定し、塗布前の質量から塗布後の質量の差から、塗布量を求めた。
乾燥後の試験体の質量の測定後、水に24時間浸漬した。試験体を水から取り出して、キムワイプで表面の水をふき取って質量を測定した。乾燥後の質量から乾燥前の質量の差から、浸水量を求めた。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量と浸水量を下記表1に示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
例3
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量を30mg/m2とした以外は、例2と同様に試験した。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
例4
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量を50mg/m2とした以外は、例2と同様に試験した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
(比較例1)
ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、例2と同様に試験した。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
(比較例2)
モルタル板(70×70×20mm3)に、アクアシール50E(大同塗料株式会社製)を100mg/m2塗布して1時間乾燥した後、更に100mg/m2塗布して24時間乾燥させた試験体を用いて、例2と同様に試験した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
【表1】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
例2乃至4、比較例1及び2より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液は、モルタル板の表面改質し、水の浸透を防止することができることが示された。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
例5
例3と同様に作製した資料を、スーパーUVウェザーメーターを使用したスーパーUV超劣化加速試験500時間の耐久試験を行い、24時間乾燥させた。
乾燥後の試験体の質量の測定後、水に24時間浸漬した。試験体を水から取り出して、キムワイプで表面の水をふき取って質量を測定した。乾燥後の質量から乾燥前の質量の差から、浸水量を求めた。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液の塗布量と浸水量を下記表2に示す。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
(比較例3)
比較例1と同様に試験体を作製し、例5と同様に試験を行った。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
(比較例4)
比較例2と同様に試験体を作製し、例5と同様に試験を行った。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
【表2】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
例5と、比較例3及び4より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布したモルタル板は、未処理のモルタル板や従来使用されている吸水防止剤よりも、耐候性試験後の吸水性が少ないことが示された。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
例9
モルタル板に、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を30mg/m2となるようにエアレススプレーで噴霧した資料を用いた以外は、実施例6と同様に接触角を測定した。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
【表3】
表3:撥水性試験
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
実施例6乃至8及び例9より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材及びモルタルは、スーパーUV超劣化加速試験後であっても水の接触角が100°を超えるため、撥水性を有することが示された。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
(比較例14
表面にナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布しない以外は、実施例11と同様にアンモニア吸着効果を測定した。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
【表5】
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
【表6】
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
実施例11及び12と、比較例14及び7の結果より、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した木材は、悪臭の原因となるアンモニアや、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドの吸着性能及が、浸透性塗料を塗布した木材よりも優れており、無塗装の無垢材とほぼ同程度であることが分かった。そのため、本発明の浸透性組成物は、室内の建材や家具にも安全に使用することができる。
また、本発明の浸透性組成物を塗布した木材は、アンモニア及びホルムアルデヒドの拡散量が無塗装の木材及び浸透性塗料を塗布した木材よりも低いのは、ナノメタルシルバーシリカ粒子の触媒効果により分解されている可能性がある。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
<コケ類の除去効果>
例17
市販の園芸用軽石を、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液に入れて10分間攪拌した後、取り出して乾燥させ、表面改質軽石を作製した。
植木鉢の表層土として表面改質軽石を撒いたものと、未処理の軽石を撒いたものを用意し、屋外で鉢植えを育てた。
6か月後、表面改質軽石の変色は無く、コケ類の発生は観察されなかった。また、水をかけたところ、水をはじき、軽石に濡れジミは観察されなかった。
それに対し、未処理の軽石は黒ずんでおり、わずかにコケ類の発生が観察された。また、水をかけたところ、水を吸収し、軽石表面に濡れジミが観察された。
例17の結果より、本発明の浸透性組成物は、撥水効果を維持でき、表面に汚染が防止されていることが示された。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
例18
コケ類の生えた庭石を用意し、10cm×10cmの範囲に、実施例1で製造したナノメタルシルバーシリカ水溶液を50mg/m2となるように塗布し、10日間放置した。
10日後、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分のコケ類が茶色い死骸となっており、竹ぼうきではいたところ、茶色い部分のみ除去されて岩肌が露出した。
ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布していない緑色のコケ類部分をたわしでこすり、岩肌を露出させたところ、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分の方が白くなっていた。そして、露出させた岩肌にジョウロで水をかけたところ、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布した部分は水をはじいて岩肌に水が浸透しなかった(水ジミができなかった)のに対し、ナノメタルシルバーシリカ水溶液を塗布していない部分は岩肌に水がしみこみ水ジミができた。
このことから、本発明の浸透性組成物を塗布した部分では、ナノメタルシルバーの酸素分解作用により光合成できずコケ類が枯れたものと考えられる。
また、ナノメタルシルバーの中性化機能により、岩肌表面の酸化汚染物質や窒素汚染物質の付着力が弱まり、岩肌が白くなったものと考えられる。
また、本発明の浸透性組成物が岩肌に浸透して石質の表面が改質されて、撥水機能を発揮したものと考えられる。