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特開2023-111435水垢付着防止組成物および水垢付着防止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111435
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】水垢付着防止組成物および水垢付着防止剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230803BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230803BHJP
   C11D 1/24 20060101ALI20230803BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230803BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230803BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230803BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20230803BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20230803BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20230803BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C11D1/29
C11D1/24
C11D3/37
C09D201/00
C09D7/63
C09D175/04
C09D167/00
C09D5/16
B08B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013295
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】390014856
【氏名又は名称】日本乳化剤株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229874
【氏名又は名称】TOMATEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴▲崎▼ 宏太
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鳥飼 晋也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 祐光
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
4J038
【Fターム(参考)】
3B201AA31
3B201AB52
3B201BB21
3B201BB96
4H003AB18
4H003AB31
4H003BA12
4H003BA20
4H003DA05
4H003DA06
4H003DA07
4H003DA08
4H003DB04
4H003EB28
4H003ED02
4J038DD001
4J038DG001
4J038JC14
4J038KA09
4J038NA05
4J038PA06
4J038PB02
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】塗布回数を減らす手段を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される水垢付着防止剤、および樹脂を含む、水垢付着防止組成物。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

上記式(1)中、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または含窒素化合物であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数を表し、1~200であり、
Yは、単結合または炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、
nは、0または1であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、または下記式(2)で表される基であり、
【化2】

上記式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、*は、連結点を表し、
lは、1~3であり、
pは、Qの原子価を表し、1または2である、
で示される水垢付着防止剤、および樹脂を含む、水垢付着防止組成物。
【請求項2】
前記式(1)中、Qは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン(NH )またはアルキル基を有する含窒素化合物カチオンである、請求項1に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項3】
前記樹脂は熱硬化性樹脂である、請求項1または2に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂である、請求項3または4に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項6】
前記樹脂は熱可塑性樹脂である、請求項1または2に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂である、請求項6に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項8】
全イオン結合性塩における前記水垢付着防止剤の割合が95質量%を超える、請求項1~7のいずれか1項に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項9】
前記水垢付着防止剤は、前記樹脂100質量部に対して、0.01~50質量部の割合で含まれる、請求項1~8のいずれか1項に記載の水垢付着防止組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の水垢付着防止組成物を含む成形体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の水垢付着防止組成物および溶媒を含む混合物を調製し、前記混合物を成形するプロセスを有する、成形体の製造方法。
【請求項12】
下記式(1):
【化3】

上記式(1)中、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または含窒素化合物であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数を表し、1~200であり、
Yは、単結合または炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、
nは、0または1であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、または下記式(2)で表される基であり、
【化4】

上記式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、*は、連結点を表し、
lは、1~3であり、
pは、Qの原子価を表し、1または2である、
で示される水垢付着防止剤。
【請求項13】
前記式(1)中、Qは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン(NH )またはアルキル基を有する含窒素化合物カチオンである、請求項12に記載の水垢付着防止剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水垢付着防止組成物および水垢付着防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ、洗面台、浴室など、水を使用する場所では、水垢汚れが生じる。水垢汚れは、水道水に含まれているマグネシウムやカルシウムなどのミネラル分が原因であり、水分が蒸発した後に水滴に含まれたミネラル分だけが残ることによって生じる。水垢は、放っておくと頑固な汚れになり、日常的な掃除で落とすのは困難である。このため、水垢を除去するための洗剤が様々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、耐水性のある水垢付着防止剤として徐溶性のポリマー被膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-13623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水垢付着防止剤は、水が流れると被膜表層部が溶解することにより付着していた汚れを落とすものであるため、洗浄する毎に水垢付着防止剤を塗布する必要がある。このため、塗布回数を減らすことが求められている。
【0006】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、塗布回数を減らす手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の水垢付着防止剤を使用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、上記目的は、下記式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
上記式(1)中、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または含窒素化合物であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数を表し、1~200であり、
Yは、単結合または炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、
nは、0または1であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、または下記式(2)で表される基であり、
【0011】
【化2】
【0012】
上記式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、*は、連結点を表し、
lは、1~3であり、
pは、Qの原子価を表し、1または2である、
で示される水垢付着防止剤、および樹脂を含む、水垢付着防止組成物によって達成される。
【0013】
また、上記目的は、上記式(1)で示される水垢付着防止剤によって達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗布回数を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下記式(1):
【0016】
【化3】
【0017】
上記式(1)中、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または含窒素化合物であり、
Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数を表し、1~200であり、
Yは、単結合または炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、
nは、0または1であり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、または下記式(2)で表される基であり、
【0018】
【化4】
【0019】
上記式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基であり、*は、連結点を表し、
lは、1~3であり、
pは、Qの原子価を表し、1または2である、
で示される水垢付着防止剤、および樹脂を含む、水垢付着防止組成物(第一の態様)を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記式(1)で示される水垢付着防止剤(第二の態様)を提供する。
【0021】
本発明によれば、塗布回数を減らすことができる(水垢付着防止効果を長期間持続できる)。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0023】
また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、「および/または」は、前後に羅列した構成要素のうちの少なくとも一つを含む意味として使用される。例えば、「Aおよび/またはB」は、Aのみ、Bのみ、およびAとBとの組み合わせを包含する。特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0024】
(水垢付着防止剤)
本開示に係る水垢付着防止組成物は、下記式(1)の水垢付着防止剤を含む。また、本開示に係る水垢付着防止剤は、下記式(1)で示される。上記水垢付着防止組成物は、下記式(1)の水垢付着防止剤を1種単独で含んでも、または2種以上の下記式(1)の水垢付着防止剤を含んでもよい。同様にして、上記水垢付着防止剤は、下記式(1)の水垢付着防止剤を1種単独から構成されても、または2種以上の下記式(1)の水垢付着防止剤から構成されてもよい。
【0025】
【化5】
【0026】
上記式(1)において、Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または含窒素化合物である。ここで、Qとしてのアルカリ金属カチオンとしては、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、ルビジウムイオン(Rb)、セシウムイオン(Cs)がある。また、Qとしてのアルカリ土類金属カチオンとしては、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)、バリウムイオン(Ba2+)がある。Qとしての含窒素化合物カチオン(無置換形態)としては、アンモニウムイオン(アンモニウムカチオン)(NH )、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオンがある。上記Qの例示イオンは、単独で存在してもまたは2種以上が組み合わせで存在してもよい。上記Qの例示イオンを構成する含窒素化合物は、上記したような形態(無置換形態)であっても、またはアルキル基、エチレン性不飽和結合基およびアルキレン基からなる群より選択される少なくとも一を有してもよい。ここで、「含窒素化合物がアルキル基、エチレン性不飽和結合基およびアルキレン基からなる群より選択される少なくとも一を有する」としては、上記Qの例示イオンを構成する含窒素化合物の水素原子がアルキル基またはエチレン性不飽和結合基で置換される形態、および上記Qの例示イオンを構成する含窒素化合物の窒素原子にアルキレン基を介してアルキル基またはエチレン性不飽和結合基が連結する形態がある。これらの形態の一方のみを満たす場合であっても、双方の形態を満たす場合であってもよい。アルキル基としては、炭素数1~25の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基がある。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基(t-ペンチル基)、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基(4-t-ブチルシクロヘキシル基)、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2,2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基(t-オクチル基)、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基等の直鎖状または分枝状のアルキル基;例えば、シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~8の直鎖状または分枝状のアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖状または分枝状のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基、が特に好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、アクリロイル基(HC=CH-C(=O)-)、メタクリロイル基(HC=C(CH)-C(=O)-)、アクリロイルオキシ基(HC=CH-C(=O)-O-)、メタクリロイルオキシ基(HC=C(CH)-C(=O)-O-)、アクリルアミド基(HC=CH-C(=O)-NH-)、メタクリルアミド基(HC=C(CH)-C(=O)-NH-)、ビニル基(HC=CH-)、アリル基(HC=CHCH-)がある。アルキレン基は、例えば、上記含窒素化合物イオンとアルキル基またはエチレン性不飽和結合基との間に存在しえる。好ましくは、アルキレン基は、上記含窒素化合物イオンとエチレン性不飽和結合基との間に存在する。アルキレン基としては、炭素数1~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基がある。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基がある。これらのうち、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。アルキレンオキサイド基としては、式:-A’O-で表される基がある。ここで、A’は、炭素数1~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基がある。これらのうち、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0027】
上記Qの例示イオンを構成する含窒素化合物は、アルキル基を有していることが好ましく、アルキル基およびエチレン性不飽和結合基を有していることがより好ましい。
【0028】
含窒素化合物カチオンの具体的な例としては、例えば、アンモニウムイオン(NH )、モノビニルアンモニウムイオン、ジビニルアンモニウムイオン、トリビニルアンモニウムイオン、モノプロペニルアンモニウムイオン、ジプロペニルアンモニウムイオン、トリプロペニルアンモニウムイオン、モノブテニルアンモニウムイオン、ジブテニルアンモニウムイオン、トリブテニルアンモニウムイオン、モノペンテニルアンモニウムイオン、ジペンテニルアンモニウムイオン、トリペンテニルアンモニウムイオン、モノヘキセニルアンモニウムイオン、ジヘキセニルアンモニウムイオン、モノヘプテニルアンモニウムイオン、ジヘプテニルアンモニウムイオン、モノオクテニルアンモニウムイオン、ジオクテニルアンモニウムイオン、モノノネニルアンモニウムイオン、モノデセニルアンモニウムイオン、モノウンデセニルアンモニウムイオン、モノドデセニルアンモニウムイオン、モノトリデセニルアンモニウムイオン、モノテトラデセニルアンモニウムイオン、モノペンタデセニルアンモニウムイオン、モノヘキサデセニルアンモニウムイオン、モノヘプタデセニルアンモニウムイオン、モノオクタデセニルアンモニウムイオン、モノノナデセニルアンモニウムイオン、モノイコセニルアンモニウムイオン、モノヘンイコセニルアンモニウムイオン、モノドコセニルアンモニウムイオン、モノトリコセニルアンモニウムイオン、ジメチル(ビニル)アンモニウムイオン、ジメチル(プロペニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ブテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクテニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノネニル)アンモニウムイオン、ジメチル(デセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ウンデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ドデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(テトラデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ペンタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘキサデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘプタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(オクタデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ノナデセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(イコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(ヘンイコセニル)アンモニウムイオン、ジメチル(トリコセニル)アンモニウムイオン、ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、2-ビニルピリジニウムイオン、4-ビニルピリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオン、2,4,6-トリス(アリルオキシ)-1,3,5-トリアジニウムイオン、1-アリルピペラジニウムイオン、1-(2-メチルアリル)ピペラジニウムイオン、N-(メタ)アクリロイルモルホリニウムイオン、エチルエタノールアンモニウムイオン(NH (C)(COH))、1-(アクリルアミドエチル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドエチル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドエチル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドエチル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニウムイオン、1-(メタクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-イソシアノエチル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(2-シアノプロピル)アンモニウムイオン、ジエチルモノ(1,2-エポキシプロパン)アンモニウムイオンなどが挙げられる。なかでも、アンモニウムイオン(NH )、ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、エチルエタノールアンモニウムイオンが好ましい。アンモニウムイオン(NH )、ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、エチルエタノールアンモニウムイオンがより好ましい。
【0029】
これらのうち、本発明による効果のさらなる向上の観点から、Qは、アルカリ金属カチオン(Q=アルカリ金属)、アンモニウムカチオン(NH )またはアルキル基を有する含窒素化合物カチオンであることが好ましい。より好ましくは、Qは、アルカリ金属カチオン(Q=アルカリ金属)、アンモニウムカチオン(NH )またはアルキル基およびエチレン性不飽和結合基を有する含窒素化合物カチオンである。さらに好ましくは、Qは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムカチオン(NH )、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アクリレートピペリジニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、エチルエタノールアンモニウムイオンである。特に好ましくは、Qは、ナトリウムイオン、アンモニウムカチオン(NH )、N,N-ジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、N,N-ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオン、エチルエタノールアンモニウムイオンである。
【0030】
上記式(1)において、Aは、炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレン基である。炭素数2~4の直鎖状または分枝状のアルキレンとしては、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基がある。これらのうち、本発明による効果のさらなる向上の観点から、Aは、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0031】
上記式(1)において、mは、AOの平均付加モル数を表し、1~200である。本発明による効果のさらなる向上の観点から、mは、1~150であることが好ましく、2~100であることがより好ましく、5~50であることがより好ましく、8~15であることが特に好ましい。
【0032】
上記式(1)において、Yは、単結合または炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基である。炭素数1~5の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ブチレン基などがある。これらのうち、本発明による効果のさらなる向上の観点から、Yは、単結合、メチレン基であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0033】
上記式(1)において、nは、0または1であり、1であることが好ましい。
【0034】
上記式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、メチル基であることが好ましい。
【0035】
上記式(1)において、pは、Qの原子価を表し、1または2であり、好ましくは1である。
【0036】
上記式(1)において、Rは、水素原子、置換もしくは非置換の炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、または下記式(2)で表される基である。ここで、Rが複数存在する(lが2または3である)場合には、各Rは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。RおよびRの少なくとも一方は水素原子以外であることが好ましい。
【0037】
【化6】
【0038】
炭素数1~25の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基(R)としては、上記したのと同様のアルキル基が例示される。アルキル基は、置換されてもよい。ここで、アルキル基が置換される場合の、置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、フェニル基、p-トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基などのアリール基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、p-トリルオキシ基などのアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基などのアシル基、メチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基などのアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p-トリルスルファニル基などのアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基などのジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p-トリルアミノ基等のアリールアミノ基などの他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p-トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基などが挙げられる。
【0039】
上記式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。ここで、RおよびRは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、*は、連結点を表す。本発明による効果のさらなる向上の観点から、RおよびRの一方が水素原子でありかつ他方がメチル基であることが好ましい。
【0040】
本発明による効果のさらなる向上の観点から、Rは、置換もしくは非置換の炭素数1~8の直鎖状または分枝状のアルキル基、上記式(2)で表される基であることが好ましく、非置換の炭素数2~5の直鎖状または分枝状のアルキル基、RおよびRの少なくとも一方がメチル基である上記式(2)で表される基であることがより好ましく、非置換のイソプロピル基、RおよびRの一方が水素原子でありかつ他方がメチル基である上記式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0041】
上記式(1)において、lは、1~3である。上記式(1)で示される水垢付着防止剤(イオン結合性塩)は、単独の化合物として存在しても、またはlが1である化合物(1モル付加体)、lが2である化合物(2モル付加体)、およびlが3である化合物(3モル付加体)の2種以上の混合物の形態として存在してもよい。例えば、下記製造方法による場合には、上記式(2)で示される水垢付着防止剤(イオン結合性塩)は、通常、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物の形態として存在する。式(1)の水垢付着防止剤が1種のみの化合物である場合には、lはRのベンゼン環への付加モル数を示す。一方、式(1)の水垢付着防止剤が混合物である場合には、lはRのベンゼン環への平均付加モル数を表す。なお、「l」は、式(1)の水垢付着防止剤を製造する際の式:R-Ph-Y-O-(Ph=ベンゼン環由来の基)を有する原料(例えば、クレゾール)の仕込み量(モル)に対するRを構成する原料(例えば、スチレン、メチルスチレン)の仕込み量(モル)の割合と実質的に同等である。ここで、水垢付着防止剤(イオン結合性塩)における1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体存在、ならびに1モル付加体/2モル付加体/3モル付加体の割合(モル比)は、下記条件によるガスクロマトグラフィー(GC)分析によって確認・測定できる。
【0042】
(各付加体の存在の確認方法および各付加体の割合(モル比)の測定方法)
測定条件
GC:GC-14B(島津製作所株式会社製)
カラム:SE-30
カラム温度:100℃→(20℃/min)→300℃
INJ、DET:320℃
サンプル量:0.4μl(50%メタノール溶液)。
【0043】
上記したような水垢付着防止剤の具体例としては、下記構造を有する化合物がある。なお、下記構造において、アニオン部分およびカチオン部分の組み合わせは、下記組み合わせに制限されず、適宜組み合わせてもよい。また、下記化合物は、(a)1モル付加体、2モル付加体または3モル付加体として単独で存在する形態;および(b)1モル付加体、2モル付加体及び3モル付加体の2種以上の混合物として存在する形態、双方を包含する。
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】
本開示に係る水垢付着防止剤は、上記式(1)に示されるようなイオン結合性塩である。本開示に係る水垢付着防止組成物は、上記式(1)に示されるイオン結合性塩以外のイオン結合性塩を含んでもよいが、実質的に上記式(1)に示されるイオン結合性塩で構成されることが好ましい。ここで、「水垢付着防止組成物が実質的に上記式(1)に示されるイオン結合性塩で構成される」とは、全イオン結合性塩における上記式(1)に示されるイオン結合性塩の割合が95質量%を超える(上限:100質量%)ことを意味し、98質量%を超える(上限:100質量%)ことが好ましい。
【0047】
本開示に係る水垢付着防止剤は、公知の方法によって製造できる。具体的には、特開2016-69523号に記載される方法および下記実施例に記載される方法を、そのまままたは適宜修飾して使用できる。例えば、下記式(3)の化合物に、常法に従って、スチレンまたはメチルスチレンを反応させてスチレン化アルキルフェノール誘導体を得、これを出発物質として使用して公知の方法に従って製造できる。具体的には、まず、上記手法により得られるスチレン化アルキルフェノール誘導体のフェノール性水酸基に、例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの塩基触媒の存在下でアルキレンオキシドを所望のモル数付加する。次いで、無水硫酸、クロロスルホン酸、スルファミン酸、硫酸等の硫酸化剤を用いて硫酸エステル化し、この硫酸エステル化体を塩基を用いて中和することによりカチオン(Q)との塩に変換することにより、式(1)の水垢付着防止剤(イオン結合性塩)を得ることができる。
【0048】
【化9】
【0049】
本開示に係る水垢付着防止剤の含有量は、例えば、組成物を構成する樹脂100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~30質量部であることがより好ましく、5~15質量部であることが特に好ましい。このような割合であれば、水垢付着防止剤は十分な水垢付着防止効果を発揮できる。また、このような割合であれば、成形した後の外観・表面状態(例えば、透明性、タックや白化の抑制)を良好な状態にできる。
【0050】
(樹脂)
本開示に係る水垢付着防止組成物は、上記式(1)の水垢付着防止剤に加えて、樹脂を含む。
【0051】
本発明の一実施形態では、樹脂は熱硬化性樹脂である。本発明の一実施形態では、樹脂は熱可塑性樹脂である。
【0052】
上記樹脂の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリエチレングリコール(PEG)樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリプロピレンオキサイド樹脂、多糖類系樹脂、その他の光重合性樹脂などが挙げられる。上記樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、熱硬化性樹脂としてウレタン樹脂およびポリエステル樹脂(より好ましくは、不飽和ポリエステル樹脂)を使用することが好ましい。また、熱可塑性樹脂として(メタ)アクリル樹脂を使用することが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、樹脂は熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。本発明のより好ましい形態では、樹脂は熱硬化性樹脂であり、当該熱硬化性樹脂は不飽和ポリエステル樹脂である。また、本発明の好ましい形態では、樹脂は熱可塑性樹脂であり、当該熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂である。
【0053】
(メタ)アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシルなどの炭素数1~10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど]、(メタ)アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル単量体の単独重合体または共重合体;(メタ)アクリル単量体と他の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0054】
前記(メタ)アクリル単量体の単独重合体または共重合体の具体例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリロニトリルなどが挙げられる。前記(メタ)アクリル単量体と他の単量体との共重合体の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル-スチレン共重合体(AAS樹脂)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS樹脂)などが挙げられる。
【0055】
ウレタン樹脂は、ウレタン結合を介して形成される樹脂である。ウレタン樹脂としては、例えば、(メタ)アクリルウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂などを用いることができる。例えば、(メタ)アクリルウレタン樹脂は、上記(メタ)アクリル樹脂をイソシアネート硬化することによって得られる。
【0056】
スチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド共重合体、スチレン-N-フェニルマレイミド-アクリロニトリル共重合体、ゴム強化ポリスチレン樹脂(HIPS樹脂)等が挙げられる。
【0057】
オレフィン樹脂としては、オレフィン単量体の単独重合体の他、オレフィン単量体の共重合体、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン単量体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン[エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどの炭素数2~20のα-オレフィンなど]、環状オレフィン[例えば、シクロペンテンなどの炭素数4~10のシクロアルケン;シクロペンタジエンなどの炭素数4~10のシクロアルカジエン;ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの炭素数7~20のビシクロアルケンまたは炭素数7~20のビシクロアルカジエン;ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの炭素数10~25のトリシクロアルケンまたはトリシクロアルカジエンなど]などが挙げられる。これらのオレフィン単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。上記オレフィン単量体のうち、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの炭素数2~4のα-オレフィンなどの鎖状オレフィンが好ましい。
【0058】
前記オレフィン単量体と共重合可能な他の共重合性単量体の具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)など];ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。
【0059】
前記オレフィン樹脂のさらに具体的な例としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン(ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなど)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体などの鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)の(共)重合体などが挙げられる。また、オレフィン単量体と他の共重合性単量体との共重合体の具体例としては、例えば、鎖状オレフィン(特に、エチレン、プロピレンなどの炭素数2~4のα-オレフィン)と脂肪酸ビニルエステル単量体との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピオン酸ビニル共重合体など);鎖状オレフィンと(メタ)アクリル単量体との共重合体[鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)と(メタ)アクリル酸との共重合体(例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなど);鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)とアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(例えば、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体など);など];鎖状オレフィン(特に炭素数2~4のα-オレフィン)とジエンとの共重合体(例えば、エチレン-ブタジエン共重合体など);エポキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)、カルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-無水マレイン酸共重合体)、エポキシおよびカルボキシ変性ポリオレフィン(例えば、エチレン-無水マレイン酸-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体)などの変性ポリオレフィン;オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレンゴムなど)などが挙げられる。
【0060】
ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、(イ)ジカルボン酸またはその誘導体およびジオールまたはその誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸またはその誘導体、ならびに(ハ)ラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を重縮合してなる重合体または共重合体が挙げられる。
【0061】
上記ジカルボン酸またはその誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、5-テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。上記ジオールまたは誘導体としては、例えば、炭素数2~20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200~100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物、すなわち4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸およびこれらの誘導体などが挙げられる。上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オンなどが挙げられる。また、前記ポリエステル樹脂には、ポリエステルエラストマーも含まれる。
【0062】
また、ポリエステル樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂を使用してもよい。ここで、不飽和ポリエステル樹脂としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸などの2塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物などの2価アルコールとから得られる不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂としては、2価アルコールとしてビスフェノールA付加物を用いた不飽和ポリエステル樹脂(ビスフェノールA型不飽和ポリエステル樹脂)が好ましい。エポキシアクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ポリフェノール型、ハロゲン化ビスフェノール型、多価グリシジルエステル型などの多官能性エポキシ樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸-無水マレイン酸、メタクリル酸-無水マレイン酸などで、変性したものが挙げられる。ポリエステルアクリレート樹脂としては、無水マレイン酸、フマル酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸と、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールA、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2’-ジ(ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンなどの多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステル樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸などで変性したものが挙げられる。なお、上記α,β-不飽和ジカルボン酸には、必要に応じて、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸が含まれていてもよい。上記ポリエステルアクリレート樹脂のなかでも、ビスフェノールA付加物および他の多価アルコールとを、不飽和ジカルボン酸およびジカルボン酸と重縮合して得られる、ビスフェノールA型ポリエステル樹脂をアクリル酸、メタクリル酸などで変性したビスフェノールA型ポリエステルアクリレート樹脂が好ましい。
【0063】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、2価以上のフェノール化合物と、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸ジエステル化合物とを反応させて得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0064】
前記2価以上のフェノール化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-(4-イソプロピルフェニル)メタン、ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-ナフチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2-メチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1-エチル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4-メチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、1,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなどのジヒドロキシジアリールアルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロデカンなどのジヒドロキシジアリールシクロアルカ
ン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンなどのジヒドロキシジアリールケトン類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィド類、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどのジヒドロキシアリールフルオレン類などが挙げられる。また、上記2価フェノール化合物以外に、ヒドロキノン、レゾルシノール、メチルヒドロキノンなどのジヒドロキシベンゼン類、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン類などが2価のフェノール化合物として使用できる。
【0065】
これら2価以上のフェノール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。また、共重合成分として、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの直鎖状脂肪族2価カルボン酸を用いても良い。
【0066】
ポリアミド樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド46、ポリアミド5、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド6/11などの脂肪族ポリアミド;ポリ-1,4-ノルボルネンテレフタルアミド、ポリ-1,4-シクロヘキサンテレフタルアミドポリ-1,4-シクロヘキサン-1,4-シクロヘキサンアミドなどの脂環式ポリアミド;ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド;これらのポリアミドのうち少なくとも2種の異なったポリアミド形成成分により形成されるコポリアミドなどが挙げられる。なお、前記ポリアミド樹脂には、ポリアミドエラストマーも含まれる。
【0067】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,5-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレンエーテル)などの単独重合体、これらの単独重合体をベースとして構成された変性ポリフェニレンエーテル共重合体、ポリフェニレンエーテル単独重合体またはその共重合体にスチレン重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体などが挙げられる。
【0068】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の具体例としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどが挙げられる。
【0069】
なお、上記樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0070】
樹脂は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。樹脂を合成するための重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、ラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法、カチオン重合法、リビングカチオン重合法、付加重合法、縮合重法合、開環重合法等を挙げることができる。また、重合に使用する触媒も特に制限はなく、例えば、過酸化物触媒、アゾ系触媒、チーグラー-ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。樹脂を合成する際には、樹脂を合成した後、本開示に係る水垢付着防止剤を混合して、本開示に係る水垢付着防止組成物を製造してもよい。または、樹脂を構成する単量体、重合開始剤、および本開示に係る水垢付着防止剤を混合して、本開示に係る水垢付着防止組成物を製造してもよい。
【0071】
また、市販品としては、ゲルコート(TOMATEC株式会社製、例えば、「3Z-0006PI」)、トップコート(TOMATEC株式会社製)等の不飽和ポリエステル樹脂系材料(TOMATEC株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
これらのうち、汎用性、本発明による効果のさらなる向上、水垢付着防止剤との相溶性、加熱加工時の安定性などの観点から、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂、ビスフェノールA型ポリエステル樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型ポリエステル樹脂がさらに好ましく、ビスフェノールA型不飽和ポリエステル樹脂が特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態では、樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。本発明のより好ましい実施形態では、樹脂は、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルウレタン樹脂およびビスフェノールA型ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。本発明のさらに好ましい実施形態では、樹脂は、ビスフェノールA型ポリエステル樹脂である。本発明の特に好ましい実施形態では、樹脂は、ビスフェノールA型不飽和ポリエステル樹脂である。
【0073】
(他の添加剤)
本開示に係る水垢付着防止組成物は、上記式(1)の水垢付着防止剤および樹脂から構成されてもよいが、上記に加えて、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、硬化剤、架橋剤、溶媒、酸化防止剤、充填剤、滑剤、染料、有機顔料、無機顔料、可塑剤、加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、ワックス、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、艶消し剤、艶出し剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、ハジキ防止剤、ラジカル捕捉剤、防曇剤、防徽剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、硬化促進剤、硬化触媒、擦り傷防止剤、消泡剤、粘度調製剤、表面調製剤、可塑剤、pH調整剤、着色防止剤、消臭剤、耐候剤、糸摩擦低減剤、スリップ剤等が挙げられる。本開示に係る水垢付着防止組成物が他の添加剤を含む場合の、他の添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲であればよく、通常使用される量と同様の量が使用できる。または、本開示に係る水垢付着防止組成物は、上記式(1)の水垢付着防止剤以外の公知の水垢付着防止剤を含んでもよい。公知の水垢付着防止剤としては、親水剤、撥水剤などが挙げられる。また、公知の水垢付着防止剤の含有量は、特に制限されず、所望の効果に応じて、適宜選択できる。
【0074】
溶媒は、水垢付着防止剤および樹脂を均一に溶解または分散できるものであれば特に制限されない。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、酢酸エチル、トルエン、メチルプロピレングリコールなどが使用できる。これらのうち、水垢付着防止剤および溶媒双方が重合性基を有することが好ましい。このような場合には、溶媒自身も樹脂(基材)と共重合するため、成形後の乾燥工程にて成形体中の残存溶媒量を少なくできる。このため、成形体(特に樹脂)の劣化を抑制、防止できる。ゆえに、本開示に係る水垢付着防止剤による効果をより有効に発揮できる。このため、水垢付着防止効果をさらに長期間発揮できる。
【0075】
すなわち、本発明の好ましい実施形態では、水垢付着防止剤はQがエチレン性不飽和結合基を有する含窒素化合物カチオンである前記式(1)で示され、かつ溶媒がエチレン性不飽和結合基を有する。ここで、エチレン性不飽和結合基としては、アクリロイル基(HC=CH-C(=O)-)、メタクリロイル基(HC=C(CH)-C(=O)-)、アクリロイルオキシ基(HC=CH-C(=O)-O-)、メタクリロイルオキシ基(HC=C(CH)-C(=O)-O-)、ビニル基(HC=CH-)、アリル基(HC=CHCH-)がある。ゆえに、本発明のより好ましい実施形態では、水垢付着防止剤はQがジメチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、メチルエチルモノアクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジメチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、ジエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、メチルエチルモノメタクリル酸エチルアンモニウムイオン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アクリレートピペリジニウムイオン、または1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-メタクリレートピペリジニウムイオンである前記式(1)で示され、かつ溶媒がアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、またはアクリル酸ブチルである。
【0076】
本開示に係る水垢付着防止組成物によると、塗布回数を減らすことができる。本開示に係る水垢付着防止組成物および水垢付着防止剤は、噴霧により基材に適用されてもよい(コーティング剤として使用されてもよい)。または、本開示に係る水垢付着防止組成物は、水垢付着防止剤及び樹脂を含むため、所定の形状(例えば、浴槽、トイレ、洗面台、台所の洗い場)に成形することができる。本開示に係る水垢付着防止組成物を用いてなる成形体は、それ自体が水垢付着防止効果を発揮し、その水垢付着防止効果を持続できる(長期間水垢付着防止効果を奏することができる)。その理由は不明であるが、以下のように推測される。なお、以下のメカニズムは推測であり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本開示に係る水垢付着防止剤のアニオン構造(式(1)中の左側の部分)は、分散剤として作用する。この分散剤としての効果により、材料表面での水垢の凝集が抑制・防止され、これにより水垢の付着を抑制・防止できる(凝集して大きな塊になりにくい)。また、本開示に係る水垢付着防止組成物を用いて成形する場合、成形体表面に水垢付着防止剤が偏析する。このため、水垢付着防止剤の分散剤としての効果により、水垢の凝集、ゆえに水垢の成形体への付着が抑制・防止できる。水垢付着防止剤は成形体(樹脂)中に配置されるため、長期間使用しても成形体(樹脂)から離脱しないもしくは離脱しにくい、または長期間使用しても全ての水垢付着防止剤が成形体から離脱することはない。このため、本開示に係る水垢付着防止組成物を用いた成形体は、水垢付着防止効果を長持間発揮し、洗浄後に別途水垢付着防止剤を塗布する必要が少ないまたはない(塗布回数を減少することができる)。なお、従来では、基材(成形体)表面を親水化または撥水化することにより、水垢の付着を防止することが一般的に行われていた。これに対して、上述したメカニズムによるため、本開示に係る水垢付着防止組成物または水垢付着防止剤は、基材表面の親水性/撥水性に関係なく水垢付着防止効果または水垢除去性を発揮できる。また、当該成形体は、それ自体が水垢付着防止剤を含むため、別途噴霧などにより塗布する必要がない。
【0077】
ゆえに、本発明は、本開示に係る水垢付着防止組成物を用いて成形される成形体をも提供する。また、本発明は、本開示に係る水垢付着防止組成物および溶媒を含む混合物(または混合液)を調製し、前記混合物(または混合液)を成形することを有する、成形体の製造方法をも提供する。
【0078】
(成形体の製造方法)
本発明は、本開示に係る水垢付着防止組成物および溶媒を含む混合物(または混合液)を調製し、前記混合物(または混合液)を成形すること(プロセス)を有する、成形体の製造方法(第三の態様)に関する。また、本発明は、本開示に係る水垢付着防止組成物を含む成形体(第四の態様)に関する。
【0079】
上記態様の一実施形態では、水垢付着防止組成物および溶媒を混合して、混合物(または混合液)を調製し(混合工程);前記混合物(または混合液)を成形して、成形体を製造する(成形工程)。以下、詳細に説明する。
【0080】
(混合工程)
本工程では、水垢付着防止剤および樹脂を混合して、混合物(または混合液)を調製する。ここで、水垢付着防止剤および樹脂は、それぞれ、上記(水垢付着防止剤)および(樹脂)における定義と同様であるため、ここでは説明を省略する。水垢付着防止剤または樹脂は、溶媒との混合物の形態で使用されてもよい。
【0081】
なお、樹脂を硬化させることを目的として、硬化剤をさらに混合してもよい。この際使用できる樹脂としては、上記(樹脂)の項で記載したのと同様の樹脂が使用できる。好ましくは、ポリエステル樹脂(特に不飽和ポリエステル樹脂)、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂などが使用できる。上記樹脂は、単独で使用されてもまたは2種以上を併用してもよい。また、樹脂は、市販品を使用してもよく、例えば、ゲルコート(TOMATEC株式会社製、例えば、「3Z-0006PI」)、トップコート(TOMATEC株式会社製)等の不飽和ポリエステル樹脂系材料(TOMATEC株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、硬化剤は、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択できる。例えば、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエートなどの過酸化物などが用いられる。好ましくは、メチルエチルケトンパーオキサイドなどが挙げられる。硬化剤の配合量は、通常と同様の量が使用でき、例えば、樹脂100質量部に対して、例えば、0.5~20質量部、好ましくは1~10質量部程度である。
【0082】
上記に代えてまたは上記に加えて、樹脂を架橋(硬化)させることを目的として、架橋剤をさらに混合してもよい。この際使用できる樹脂としては、アミノ硬化性樹脂、イソシアネート硬化性樹脂(例えば、イソシアネート硬化型アクリル樹脂)、酸エポキシ硬化性樹脂、加水分解性シラン硬化性樹脂、水酸基エポキシ基硬化性樹脂、ヒドラジン硬化性樹脂、酸化重合型硬化性樹脂、光(熱)ラジカル重合型樹脂、光(熱)カチオン重合型樹脂などが使用できる。上記樹脂は、単独で使用されてもまたは2種以上を併用してもよい。また、樹脂は、市販品を使用してもよく、例えば、アクリディックシリーズ(DIC株式会社製)、ユピカコートシリーズ(日本ユピカ株式会社製)などが使用できる。また、架橋剤(硬化剤)は、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択できる。例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物などが使用できる。ポリイソシアネート化合物としてはフリーのイソシアネート化合物であってもよいし、ブロックされたイソシアネート化合物でもよい。フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、もしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、キシレンジイソシアネート、もしくはイソホロンジイソシアネート等の環状脂肪族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネートもしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類等の有機ジイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の重合体、更にはイソシアネート・ビゥレット体等が挙げられる。上記架橋剤は、市販品を使用してもよく、例えば、バーノックシリーズ(DIC株式会社製)、ディスモジュールシリーズ(バイエル社製)、タケネートシリーズ(三井化学株式会社製)、コロネートシリーズ(日本ポリウレタン工業株式会社製)、デュラネートシリーズ(旭化成株式会社製)等が挙げられる。ブロックされたイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、上記フリーのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物をオキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、マロン酸エステル、メルカプタン等の公知のブロック剤でブロックしたものが挙げられる。上記架橋剤は、市販品を使用してもよく、例えば、バーノックシリーズ(DIC株式会社製)、タケネートシリーズ(武田薬品工業株式会社製)、アディトールシリーズ(ヘキスト社製)、コロネートシリーズ(日本ポリウレタン工業株式会社製)、デュラネートシリーズ(旭化成株式会社製)等が挙げられる。上記架橋剤は、単独で使用されてもまたは2種以上を併用してもよい。上記架橋剤の配合割合は、塗膜が硬化し十分な性能を有するように配合すればよい。例えば、樹脂と架橋剤との混合比(樹脂:架橋剤(質量比))が80:20~50:50程度である。なお、必要であれば触媒(例えば、ジブチルスズジラウレ-ト)をさらに追加してもよい。
【0083】
(成形工程)
本工程では、上記にて調製した混合物(または混合液)を成形して、成形体を製造する。
【0084】
混合物(または混合液)の成形方法は、特に制限されず、所望の形状に応じて適宜選択できる。本発明の一実施形態では、混合物(または混合液)を所定の型に流し込んだ後、乾燥または加圧成形する方法などが使用できる。当該方法によれば、最終製品の形状に簡便に成形できる。得られた成形品表面に本開示に係る水垢付着防止剤が選択的に配置されている(偏在している)。また、水垢付着防止剤は、成形体(樹脂)中に存在し、擦ったくらいでは簡単には脱離しない。このため、成形品は優れた水垢付着防止効果を長時間発揮できる。
【0085】
または、本発明の一実施形態では、シルク印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等のアナログ印刷方法、電子写真印刷方式等のデジタル印刷方法、ロールコート、ロッドコート、キスコート、ナイフコート、エアーナイフコート、ダイコート、リップコート、フローコート、ディップコート、スピンコート、リバースコート、刷毛塗り、スポンジ塗り、バーコート、スプレーコート等のコーティング方法等により、基材上にコート層を形成して成形体を製造する方法などが使用できる。コート層の厚み(ウェット膜厚)は、例えば、10~750μm、好ましくは50~500μmであるが、これらに限定されない。
ここで、コート層表面に本開示に係る水垢付着防止剤が選択的に配置されている(偏在している)。また、水垢付着防止剤は、コート層(樹脂)中に存在し、擦ったくらいでは簡単には脱離しない。このため、成形品は優れた水垢付着防止効果を長時間発揮できる。なお、上記塗布工程は、1回行われてもまたは繰り返し行ってもよい。
【0086】
このようにして成形した後は、乾燥することにより、所望の成形体を得てもよい。この場合の、乾燥条件は、成形品の大きさなどに応じて適切に選択できる。例えば、乾燥温度は、例えば、20~160℃、好ましくは40~130℃、より好ましくは60~110℃であるが、これらに限定されない。また、乾燥時間は、例えば、1分以上12時間以下、好ましくは5分以上6時間以下、より好ましくは10~120分であるが、これらに限定されない。上記乾燥工程は、1回行われてもまたは繰り返し行ってもよい。
【実施例0087】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0088】
合成例1
原料としてm,p-クレゾールを用い、これにスチレンを、m,p-クレゾール1モルに対しスチレンを2モルの量添加、反応させて、スチレン化クレゾール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化クレゾール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体をN,N-ジメチルアミノエチルアクリレートを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物1(水垢付着防止剤1)であるポリオキシエチレン(12)[ジスチレン化(メチルフェニルエーテル)]硫酸エステルN,N-ジメチルアミノエチルアクリレート塩を得た。本例で得られた化合物を「化合物1」または「水垢付着防止剤1」とも称する。なお、化合物1(水垢付着防止剤1)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0089】
【化10】
【0090】
合成例2
原料としてm,p-クレゾールを用い、これにスチレンを、m,p-クレゾール1モルに対しスチレンを2モルの量添加、反応させて、スチレン化クレゾール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化クレゾール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体をN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物2(水垢付着防止剤2)を得た。本例で得られた化合物を「化合物2」または「水垢付着防止剤2」とも称する。なお、化合物2(水垢付着防止剤2)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0091】
【化11】
【0092】
合成例3
原料としてm,p-クレゾールを用い、これにスチレンを、m,p-クレゾール1モルに対しスチレンを2モルの量添加、反応させて、スチレン化クレゾール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化クレゾール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体を1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレートを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物3(水垢付着防止剤3)を得た。本例で得られた化合物を「化合物3」または「水垢付着防止剤3」とも称する。なお、化合物3(水垢付着防止剤3)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0093】
【化12】
【0094】
合成例4
原料としてm,p-クレゾールを用い、これにスチレンを、m,p-クレゾール1モルに対しスチレンを2モルの量添加、反応させて、スチレン化クレゾール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化クレゾール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体を苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物4(水垢付着防止剤4)を得た。本例で得られた化合物を「化合物4」または「水垢付着防止剤4」とも称する。なお、化合物4(水垢付着防止剤4)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0095】
【化13】
【0096】
合成例5
原料であるクメンスルホン酸を、エチルエタノールアミンを用いて中和することにより、下記構造を有する化合物5(水垢付着防止剤5)を得た。本例で得られた化合物を「化合物5」または「水垢付着防止剤5」とも称する。
【0097】
【化14】
【0098】
合成例6
原料としてフェノールを用い、これにスチレンを、フェノール1モルに対しスチレンを3モルの量添加、反応させて、スチレン化フェノール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化フェノール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体をアンモニアを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物6(水垢付着防止剤6)を得た。本例で得られた化合物を「化合物6」または「水垢付着防止剤6」とも称する。なお、化合物6(水垢付着防止剤6)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0099】
【化15】
【0100】
合成例7
原料としてm,p-クレゾールを用い、これにスチレンを、m,p-クレゾール1モルに対しスチレンを2モルの量添加、反応させて、スチレン化クレゾール誘導体を得た。次いで、得られたスチレン化クレゾール誘導体のフェノール性水酸基に、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でエチレンオキシドを12モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体をアンモニアを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物7(水垢付着防止剤7)を得た。本例で得られた化合物を「化合物7」または「水垢付着防止剤7」とも称する。なお、化合物7(水垢付着防止剤7)は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)である。
【0101】
【化16】
【0102】
合成例8
原料であるイソトリデカノールに、塩基触媒としての水酸化ナトリウムの存在下でブチレンオキシドを3モル(平均)、次いでエチレンオキシドを5モル(平均)付加した。そして、硫酸化剤としてスルファミン酸を用いて硫酸エステル化し、得られた硫酸エステル化体をN,N-ジメチルアミノエチルアクリレートを用いてカチオン交換することにより、下記構造を有する化合物Aを得た。本例で得られた化合物を「化合物A」とも称する。
【0103】
【化17】
【0104】
実施例1-1
人工大理石用不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社製、「ユピカ6424」)を100質量部に対し、硬化剤としてビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(日油株式会社製、「パーロイルTCP」)を1質量部、ガラスフィラー(TOMATEC株式会社製、「M-80-S」)を200質量部添加して、人工大理石層用コンパウンドを調製した。
【0105】
別途、上記合成例1で得られた化合物1(水垢付着防止剤)をメタクリル酸メチルに50質量%濃度となるように添加し、水垢付着防止剤溶液1-1を調製した。
【0106】
95質量部のビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコート(TOMATEC株式会社製、「3Z-0006PI」)に、1質量部の硬化剤としてのメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、「パーメックN」)および2.5質量部の化合物1(化合物1量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約2.6質量部)を添加・混合して、コート液1-1を調製した。
【0107】
得られたコート液1-1を、離型処理したガラス板にスプレー塗布し、0.3~0.4mmの塗膜を形成した後、この塗膜付きのガラス板を60℃の乾燥炉に入れて1時間加温して、塗膜を硬化させ、コート層をガラス板上に形成した。
【0108】
次いで、このコート層の上に、シリコーンゴム製の型枠を取り付け、上記にて調製した人工大理石層用コンパウンドを真空脱泡してから型に流し込み、室温で30分放置後、60℃で2時間加温して、人工大理石層を硬化させた。これによって、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層を人工大理石層上に形成した(コート材1-1)。
【0109】
実施例1-2
実施例1-1において、ビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコートの量を90質量部に変更し、化合物1の添加量を5質量部(化合物1量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約5.5質量部)に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、コート材を得た(コート材1-2)。
【0110】
実施例1-3
実施例1-1と同様にして、人工大理石層用コンパウンドを調製した。
【0111】
90質量部のビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコート(TOMATEC株式会社製、「3Z-0006PI」)に、1質量部の硬化剤としてのメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、「パーメックN」)、2.5質量部の上記水垢付着防止剤2(化合物2量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約2.8質量部)および2.5質量部の化合物A(化合物A量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約2.8質量部)を添加・混合して、コート液1-3を調製した。
【0112】
得られたコート液1-3を、離型処理したガラス板にスプレー塗布し、0.3~0.4mmの塗膜を形成した後、この塗膜付きのガラス板を60℃の乾燥炉に入れて1時間加温して、塗膜を硬化させ、コート層をガラス板上に形成した。
【0113】
次いで、このコート層の上に、シリコーンゴム製の型枠を取り付け、上記にて調製した人工大理石層用コンパウンドを真空脱泡してから型に流し込み、室温で30分放置後、60℃で2時間加温して、人工大理石層を硬化させた。これによって、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層を人工大理石層上に形成した(コート材1-3)。
【0114】
比較例1-1
実施例1-1と同様にして、人工大理石層用コンパウンドを調製した。
【0115】
99質量部のビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコート(TOMATEC株式会社製、「3Z-0006PI」)に、1質量部の硬化剤としてのメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、「パーメックN」)を添加・混合して、コート液1-4を調製した。
【0116】
得られたコート液1-4を、離型処理したガラス板にスプレー塗布し、0.3~0.4mmの塗膜を形成した後、この塗膜付きのガラス板を60℃の乾燥炉に入れて1時間加温して、塗膜を硬化させ、コート層をガラス板上に形成した。次いで、このコート層の上に、シリコーンゴム製の型枠を取り付け、上記にて調製した人工大理石層用コンパウンドを真空脱泡してから型に流し込み、室温で30分放置後、60℃で2時間加温して、人工大理石層を硬化させた。これによって、人工大理石層をガラス板上に形成した(比較コート材1-1)。
【0117】
比較例1-2
実施例1-1と同様にして、人工大理石層用コンパウンドを調製した。
【0118】
98質量部のビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコート(TOMATEC株式会社製、「3Z-0006PI」)に、1質量部の硬化剤としてのメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、「パーメックN」)、1質量部の化合物A(化合物A量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約1.0質量部)を添加・混合して、比較コート液1-2を調製した。
【0119】
得られた比較コート1-2液を、離型処理したガラス板にスプレー塗布し、0.3~0.4mmの塗膜を形成した後、この塗膜付きのガラス板を60℃の乾燥炉に入れて1時間加温して、塗膜を硬化させ、コート層をガラス板上に形成した。
【0120】
次いで、このコート層の上に、シリコーンゴム製の型枠を取り付け、上記にて調製した人工大理石層用コンパウンドを真空脱泡してから型に流し込み、室温で30分放置後、60℃で2時間加温して、人工大理石層を硬化させた。これによって、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層を人工大理石層上に形成した(比較コート材1-2)。
【0121】
比較例1-3
実施例1-1と同様にして、人工大理石層用コンパウンドを調製した。
【0122】
95質量部のビスフェノールA系不飽和ポリエステル樹脂系ゲルコート(TOMATEC株式会社製、「3Z-0006PI」)に、1質量部の硬化剤としてのメチルエチルケトンパーオキサイド(日油株式会社製、「パーメックN」)、2.5質量部の化合物A(化合物A量=ポリエステル樹脂系ゲルコート100質量部に対して約2.6質量部)を添加・混合して、比較コート液1-3を調製した。
【0123】
得られた比較コート1-3液を、離型処理したガラス板にスプレー塗布し、0.3~0.4mmの塗膜を形成した後、この塗膜付きのガラス板を60℃の乾燥炉に入れて1時間加温して、塗膜を硬化させ、コート層をガラス板上に形成した。
【0124】
次いで、このコート層の上に、シリコーンゴム製の型枠を取り付け、上記にて調製した人工大理石層用コンパウンドを真空脱泡してから型に流し込み、室温で30分放置後、60℃で2時間加温して、人工大理石層を硬化させた。これによって、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層を人工大理石層上に形成した(比較コート材1-3)。
【0125】
<性能評価1>
実施例1-1~1-3のコート材1-1~1-3および比較例1-1~1-3の比較コート材1-1~1-3に対し、下記方法により、水垢付着防止性(水垢除去性)、外観、親水性および耐熱水性を評価した。結果を下記表1に示す。
【0126】
[水垢付着防止性(水垢除去性)]
各コート材のコート層側表面に水道水を一滴落とし、乾燥させる。乾燥後、水滴を落とした表面にさらに一滴落とし、乾燥させる。当該操作を1週間繰り返して、水垢をコート材表面に堆積させた。この水垢をペーパータオルで拭き取り、水垢の付着度合いを目視で確認し、下記基準で評価する。
【0127】
×:比較コート材1-1と同等の水垢が表面に残っている
〇:比較コート材1-1に比して少ない水垢が表面に残っている
◎:水垢が完全に除去されている。
【0128】
[外観]
各コート材のコート層(コーティング直後)表面の状態を目視で確認し、下記基準にて評価する。
【0129】
(外観評価基準)
×:化合物のブリードアウト、ピン、ワニ肌および白化の少なくとも1つの現象が観察される
〇:上記のような現象は観察されず、平滑で透明である。
【0130】
[親水性]
各コート材のコート層側表面に水道水を1滴落としたときの水滴の広がり具合を目視にて確認する。
【0131】
[耐熱水性]
コート材のコート層側表面に90℃の熱水を暴露した後の色変化、表面状態の変化を目視にて確認し、下記基準にて評価する。
【0132】
(耐熱水性評価基準)
×:ブリスターが観察される
〇:ブリスターは観察されないが、白化が観察される
◎:ブリスターが観察されず、ごく僅かな白化が観察されるまたは白化が観察されない
【0133】
【表1】
【0134】
表1の結果から、実施例のコート材1-1~1-3は、比較コート材1-1~1-3に比して、有意に優れた水垢付着防止性(水垢除去性)を発揮できることが分かる。
【0135】
実施例2-1
冷却管、窒素導入管、温度計、テフロン(登録商標)半月攪拌翼を備えた四つ口フラスコに、トルエン100質量部、n-ブチルアクリレート35質量部、メチルメタクリレート65質量部を仕込み、重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1質量部添加し、90℃で3時間重合を行い、固形分50質量%の(メタ)アクリル樹脂トルエン溶液を得た。
【0136】
上記で作製した(メタ)アクリル樹脂溶液200質量部に、上記合成例4で得られた化合物4(水垢付着防止剤) 5質量部を混合して、コート液2-1を得た。
【0137】
得られたコート液2-1をガラス板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層をガラス板上に形成した(コート材2-1)。
【0138】
実施例2-2~2-5
実施例2-1において、化合物4の代わりに、上記合成例1で得られた化合物1(実施例2-2)、上記合成例3で得られた化合物3(実施例2-3)、上記合成例5で得られた化合物5(実施例2-4)、および上記合成例6で得られた化合物6(実施例2-5)を使用する以外は、実施例2-1と同様にして、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層をガラス板上に形成した(コート材2-2~2-5)。
【0139】
比較例2-1
実施例2-1と同様にして、固形分50質量%の(メタ)アクリル樹脂トルエン溶液を得た。
【0140】
この(メタ)アクリル樹脂トルエン溶液200質量部をガラス板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、樹脂のみを含むコート層をガラス板上に形成した(比較コート材2-1)。
【0141】
比較例2-2~2-5
実施例2-1において、化合物4の代わりに、上記合成例8で得られた化合物A(比較例2-2)、下記化合物9(比較例2-3)、下記化合物10(比較例2-4)、および下記化合物11(比較例2-5)を使用する以外は、実施例2-1と同様にして、コート層をガラス板上に形成した(比較コート材2-2~2-5)。なお、以下では、下記化合物9、10および11を、それぞれ、単に「化合物9」、「化合物10」および「化合物11」と称する。下記化合物10は、1モル付加体、2モル付加体および3モル付加体の混合物(下記構造中のl=1~3)であり、エチレンオキシドが12モル(平均)付加した構造を有する。
【0142】
【化18】
【0143】
比較例2-6
実施例2-1と同様にして、固形分50質量%の(メタ)アクリル樹脂トルエン溶液を得た。
【0144】
上記で作製した(メタ)アクリル樹脂溶液200質量部に、化合物9を10質量部の量混合して、比較コート液2-6を得た。
【0145】
得られた比較コート液2-6をガラス板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、110℃の乾燥機にて10分間乾燥し、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層をガラス板上に形成した(比較コート材2-6)。
【0146】
実施例3-1
イソシアネート硬化型アクリル樹脂(DIC株式会社製、アクリディックWFU-580)122質量部、トルエン60質量部、および上記合成例7で得られた化合物7(水垢付着防止剤)5質量部を混合する。塗膜直前にイソシアヌレート(旭化成株式会社製、デュラネートTMTPA-100)21質量部およびジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)2質量部を添加し、再度混合して、コート液3-1を得た。
【0147】
得られたコート液3-1をアクリル板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、80℃の乾燥機にて30分間乾燥し、水垢付着防止剤及びウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂)を含むコート層をアクリル板上に形成した(コート材3-1)。
【0148】
実施例3-2~3-6
実施例3-1において、化合物7の代わりに、上記合成例4で得られた化合物4(実施例3-2)、上記合成例1で得られた化合物1(実施例3-3)、上記合成例3で得られた化合物3(実施例3-4)、上記合成例5で得られた化合物5(実施例3-5)、および上記合成例6で得られた化合物6(実施例3-6)を使用する以外は、実施例3-1と同様にして、水垢付着防止剤及びウレタン樹脂(アクリルウレタン樹脂)を含むコート層をアクリル板上に形成した(コート材3-2~3-6)。
【0149】
比較例3-1
アクリディックWFU-580(DIC株式会社製)122質量部、およびトルエン60質量部を混合する。塗膜直前にデュラネートTPA-100(旭化成株式会社製)21質量部およびジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)2質量部を添加し、再度混合して、比較コート液3-1を得た。
【0150】
得られた比較コート液3-1をアクリル板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、80℃の乾燥機にて30分間乾燥し、樹脂のみを含むコート層をアクリル板上に形成した(比較コート材3-1)。
【0151】
比較例3-2~3-5
実施例3-1において、化合物7の代わりに、上記合成例8で得られた化合物A(比較例3-2)、化合物9(比較例3-3)、化合物10(比較例3-4)、および化合物11(比較例3-5)を使用する以外は、実施例3-1と同様にして、コート層をアクリル板上に形成した(比較コート材2-2~2-5)。
【0152】
比較例3-6
アクリディックWFU-580(DIC株式会社製)122質量部、トルエン60質量部、および化合物9 10質量部を混合する。塗膜直前にデュラネートTPA-100(旭化成株式会社製)21質量部およびジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)2質量部を添加し、再度混合して、比較コート液3-6を得た。
【0153】
得られた比較コート液3-6をアクリル板上にウェット膜厚75μmとなるようにバーコータにより塗布した後、80℃の乾燥機にて30分間乾燥し、水垢付着防止剤及び樹脂を含むコート層をアクリル板上に形成した(比較コート材3-6)。
【0154】
<性能評価2>
実施例2-1~2-5のコート材2-1~2-5および比較例2-1~2-6の比較コート材2-1~2-6に対し、下記方法により、水垢付着防止性(水垢除去性)、水接触角、および表面状態を評価した。結果を下記表2に示す。
【0155】
また、実施例3-1~3-6のコート材3-1~3-6および比較例3-1~3-6の比較コート材3-1~3-6に対し、下記方法により、水垢付着防止性(水垢除去性)、水接触角、および表面状態を評価した。結果を下記表3に示す。
【0156】
[水垢付着防止性(水垢除去性)]
各コート材のコート層側表面に水道水を一滴落とし、乾燥させる。乾燥後、水滴を落とした表面にさらに一滴落とし、乾燥させる。当該操作を、水垢を0.5g堆積させるまで繰り返した。堆積させた水垢をペーパータオルで2往復させて拭き取り、水垢の付着度合いを目視で確認し、下記基準で評価する。
【0157】
(水垢除去性評価基準)
×:水垢がかなり表面に残っている
〇:水垢が一部表面に残っている
◎:水垢が完全に除去されている
[親水性]
乾燥状態(25℃/50%RH)で、純水を使用して約2μLの液滴を針先に作り、この水滴を各コート材のコート層側表面に接触させて、コート層上に液滴を作る。コート層と液滴とが接する点における、液滴表面に対する接線と塗膜表面がなす角度を、接触角計(協和界面科学株式会社製、型番:CA-XP)を用いて測定し、この角度を接触角とする。接触角が50°以下の場合、親水性がある(下記表中の「あり」)と評価し、接触角が50°を超える場合、親水性がない(下記表中の「なし」)と評価する。
【0158】
[表面状態]
各コート材のコート層側表面の透明性、タックの有無を目視にて確認する。
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
表2および表3の結果から、実施例のコート材は、比較コート材に比して、有意に優れた水垢付着防止性(水垢除去性)を発揮できることが分かる。なお、表1と、表2および表3とは、水垢付着防止性の評価方法が異なるが、表1の実施例のコート材と、表2および表3の実施例のコート材とは、同等の水垢付着防止性を発揮していると考えられる。