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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111463
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】視認範囲推定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0242 20230101AFI20230803BHJP
【FI】
G06Q30/02 382
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013334
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 宜樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】顔データ等の個人情報を取り扱うことなく所定範囲の広告的価値を推定可能な構成を提供する。
【解決手段】赤外線センサ10にて取得される点群データを利用して対象エリアS内にいる人の流れが検出され、移動方向を基準とする人の視認範囲に関する視認範囲情報と人流検出処理の検出結果とに基づいて、対象エリアS内にて人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数が推定される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の計測範囲内にある物体の形状の計測結果として点群データを取得する赤外線センサと、
前記赤外線センサにて取得される前記点群データを利用して前記所定の計測範囲内にいる人の流れを検出する人流検出部と、
移動方向を基準とする人の視認範囲に関する情報と前記人流検出部の検出結果とに基づいて、前記所定の計測範囲内にて人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数を推定する推定部と、
を備えることを特徴とする視認範囲推定システム。
【請求項2】
前記推定部は、前記人流検出部の検出結果から求められる人の密集度に基づいて前記視認範囲度数を推定することを特徴とする請求項1に記載の視認範囲推定システム。
【請求項3】
前記推定部により推定された前記視認範囲度数をマップ化した視認度マップが表示される表示部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の視認範囲推定システム。
【請求項4】
前記所定の計測範囲を複数のエリアに分割した分割エリアごとに当該分割エリアの価値の指標を付与するためのエリア価値指標情報を取得するエリア価値指標情報取得部を備え、
前記表示部では、前記エリア価値指標情報取得部によって取得された前記エリア価値情報を利用して、指定された前記分割エリアに付与される前記価値の指標が前記視認度マップに対して付加表示されることを特徴とする請求項3に記載の視認範囲推定システム。
【請求項5】
前記所定の計測範囲内のうちの前記視認範囲度数を推定不要な推定不要範囲に関する情報が記憶される記憶部を備え、
前記推定部は、前記記憶部に記憶される情報に基づいて前記所定の計測範囲内のうち前記推定不要範囲を除いて前記視認範囲度数を推定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の視認範囲推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサを用いて人の注目を集める範囲を推定する視認範囲推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅構内など、所定のエリア内で人の注目を集める範囲を推定することでその所定のエリア内での広告等の価値を評価する試みがなされている。このため、例えば、下記特許文献1に開示される情報処理システムでは、対象の広告の近くに設置されたカメラなどを用いて撮像した画像等から、その広告に影響を受ける可能性のある位置にいる人の視線情報やその人の歩行速度及び歩行経路の変化等の各種の情報を求めて、これらの情報から上記広告に関する視聴率を生成するための処理を行っている。このように生成された視聴率を利用することで、同じ広告影響位置にいた人のうち広告に興味を示した人に係る情報を収集することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-144841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように視聴率を生成して所定範囲の広告的価値を推定する方法では、対象のエリア内を歩行する不特定多数の人の顔をカメラで順次撮像する必要がある。このように不特定多数の人の顔をカメラで撮像する場合、顔データ等の個人情報の取り扱いには慎重にならなければならず、人によっては自分の顔データが第三者に取得されることに心理的抵抗を感じるという問題もある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、顔データ等の個人情報を取り扱うことなく所定範囲の広告的価値を推定可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に記載の視認範囲推定システム(1)は、
所定の計測範囲(S)内にある物体の形状の計測結果として点群データを取得する赤外線センサ(10)と、
前記赤外線センサにて取得される前記点群データを利用して前記所定の計測範囲内にいる人の流れを検出する人流検出部(21)と、
移動方向を基準とする人の視認範囲に関する情報と前記人流検出部の検出結果とに基づいて、前記所定の計測範囲内にて人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数を推定する推定部(21)と、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、赤外線センサにて取得される点群データを利用して所定の計測範囲内にいる人の流れが人流検出部により検出され、移動方向を基準とする人の視認範囲に関する情報と人流検出部の検出結果とに基づいて、上記所定の計測範囲内にて人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数が推定部により推定される。
【0008】
これにより、所定の計測範囲内のうち視認範囲度数が高い範囲ほど広告的価値が高い範囲と推定することができる。特に、カメラによる撮像画像を利用することなく赤外線センサの計測結果を利用するため、顔データ等の個人情報を取り扱うことなく所定範囲の広告的価値を推定することができる。
【0009】
請求項2の発明では、推定部により、人流検出部の検出結果から求められる人の密集度に基づいて視認範囲度数が推定される。例えば、人の密集度が高い範囲では、人の密集度が低い範囲と比較して、周囲を見渡し難くなるため、視認範囲度数を比較的低く推定する。このように人の密集度を考慮することで、より実際の環境に適した視認範囲度数が推定されるので、視認範囲度数の推定精度を高めることができる。
【0010】
請求項3の発明では、推定部により推定された視認範囲度数をマップ化した視認度マップが表示部にて表示されるので、広告的価値が高い視認範囲や広告的価値が低い視認範囲などを一見して把握することができる。
【0011】
請求項4の発明では、所定の計測範囲を複数のエリアに分割した分割エリアごとに当該分割エリアの価値の指標を付与するためのエリア価値指標情報がエリア価値指標情報取得部により取得され、表示部では、エリア価値指標情報取得部によって取得されたエリア価値情報を利用して、指定された分割エリアに付与される価値の指標が視認度マップに対して付加表示される。これにより、エリア価値指標情報として、例えば、分割エリアごとの地価情報が取得される場合には、視認範囲度数が比較的高く地価が比較的安い分割エリア、すなわち、広告的価値がより高い視認範囲を容易に探索することができる。その一方で、所定の計測範囲に関して地価情報を設定する業者等であれば、設定する地価情報の妥当性を事前に確認等することができる。
【0012】
請求項5の発明では、所定の計測範囲内のうちの視認範囲度数を推定不要な推定不要範囲に関する情報が記憶部に記憶され、推定部により、記憶部に記憶される情報に基づいて所定の計測範囲内のうち上記推定不要範囲を除いて視認範囲度数が推定される。これにより、壁を越えた先のエリアなど視認不能な範囲の情報等を上記推定不要範囲に関する情報として記憶部に記憶することで、その推定不要範囲の視認範囲度数が推定されることもないので、推定処理に関する処理負荷を軽減等することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る視認範囲推定システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】移動方向を基準とする人の中心視の範囲と周辺視の範囲との関係を説明する説明図である。
図3】移動速度、密集度及び視野の各要素と重みとの関係を説明する説明図である。
図4図4(A)は、2人いた対象エリアを複数の分割エリアに分割した状態を説明する説明図であり、図4(B)は、図4(A)に対応する視認度マップを説明する説明図である。
図5】第1実施形態において制御部にてなされる視認範囲推定処理の流れを例示するフローチャートである。
図6】視認範囲推定処理が行われる対象エリアの一例を説明する説明図である。
図7図6の対象エリアを複数の分割エリアに分割した状態を説明する説明図である。
図8図7の対象エリアに対して視認範囲度数が分割エリア単位で付与されて表示される視認度マップを説明する説明図である。
図9】第2実施形態に係る視認範囲推定システムの要部となる視認度マップを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の視認範囲推定システムを具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る視認範囲推定システム1は、赤外線センサにて取得される点群データを利用して所定の計測範囲内での人の注目を集めやすい範囲を推定するシステムである。本実施形態では、視認範囲推定システム1は、図1に示すように、上記所定の計測範囲に相当する対象エリアSに配置される複数の赤外線センサ10と、各赤外線センサ10にてそれぞれ取得される点群データを利用して対象エリアS内での人の注目を集めやすい範囲を推定する処理を行う情報処理装置20とを備えるように構成されている。
【0015】
赤外線センサ10は、投光部が投光した赤外線を揺動ミラーにて外部に向けて偏向して照射する際に揺動ミラーによる偏向方向が上下方向及び左右方向に走査され、この赤外線の照射に応じた外部反射光が揺動ミラーを介して受光部にて受光されることで、所定の計測範囲内にある物体の三次元形状の計測結果として点群データを取得するように構成されている。赤外線センサ10の具体的な詳細構成は、例えば、特許第6772667号公報に開示されるレーザレーダ装置と同等とすることができる。
【0016】
このように構成される各赤外線センサ10は、対象エリアSの全てを計測範囲とするように所定の距離だけ離して、それぞれ対象エリアSの天井等に設置される。各赤外線センサ10は、取得した点群データをそれぞれ所定のタイミングにて情報処理装置20に対して有線又は無線にて出力するように構成されている。
【0017】
情報処理装置20は、例えば、パーソナルコンピュータ等であって、図1に示すように、CPU等からなる制御部21及び半導体メモリ等からなる記憶部22に加えて、制御部21によって表示内容が制御される表示部23、入力操作に応じた操作信号を制御部21に出力する操作部24、外部機器と通信するための通信部25などを備えている。
【0018】
各赤外線センサ10から所定のタイミングにてそれぞれ取得(受信)した点群データは、当該赤外線センサ10の位置情報等とともに対象エリアS内にいる人の流れを検出する人流検出用データとして記憶部22に記憶される。本実施形態では、人の流れを検出するために赤外線センサ10を採用しており、赤外線センサ10を利用して取得される点群データは、カメラ画像から取得される顔データ等のように個人情報となり得るデータとは異なるため、個人情報の観点からデータの取り扱いに注意する必要も無い。
【0019】
情報処理装置20は、記憶部22に一定期間蓄積された人流検出用データを利用して対象エリアS内にいる人の流れ等を検出し、この検出結果や後述する視認範囲情報等に基づいて、人の注目を集めやすい範囲を推定する視認範囲推定処理を行う。
【0020】
赤外線センサ10の計測範囲内に人がいると、その人の形状に応じた点群データが取得され、その人が移動すると、その移動に応じて点群データも変化する。このため、点群データの時間変化に応じて人の流れを検出することができる。このように検出された人の流れに基づいて、人の移動速度Vや混雑している範囲(人の密集度Dが高い範囲)を求めることができる。そして、移動速度Vが速くなる場合や密集度Dが高い範囲にいる場合には、視認性は低くなる。このため、人流検出用データとして記憶部22に記憶される点群データから検出した人の移動速度V及び密集度Dを含めた人の流れ等の結果(以下、人流検出結果ともいう)を、人の注目を集めやすい範囲の推定に利用することができる。
【0021】
さらに、図2に例示するように、移動している人の視認範囲は、移動方向(進行方向)が最も視認しやすい範囲(中心視の範囲E1)となり、移動方向から離れるほど視認しがたくなる範囲(周辺視の範囲E2)となる。本実施形態では、角度及び距離を含む中心視の範囲E1や角度及び距離を含む周辺視の範囲E2に関する情報、すなわち、移動方向を基準とする人の視認範囲に関する情報は、対象エリアS内にいる人全てに共通であるとして、予め記憶部22に視認範囲情報として記憶される。
【0022】
このため、本実施形態では、対象エリアS内での人の注目を集めやすい範囲を推定するため、対象エリアSを複数のエリア(分割エリア)に分割し、これら分割エリア単位で、視認範囲情報と人流検出結果とに基づいて、人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数を推定する。
【0023】
具体的には、本実施形態では、分割エリアごとに、図3に例示するように、人流検出結果である移動速度V及び密集度Dと人流検出結果及び視認範囲情報から求められる視野との3つの要素に関して重みが「大」「中」「小」のいずれであるかについてそれぞれ把握する。移動速度が高い人は、移動速度が低い人と比較して、周囲を見渡し難くなるため、移動速度Vに関しては、閾値V1未満であると重みが「大」、閾値V2を超えると重みが「小」、閾値V1以上であって閾値V2以下であると重みが「中」に設定される。また、人の密集度が高い範囲では、人の密集度が低い範囲と比較して、周囲を見渡し難くなるため、密集度Dに関しては、閾値D1未満であると重みが「大」、閾値D2を超えると重みが「小」、閾値D1以上であって閾値D2以下であると重みが「中」に設定される。そして、分割エリアごとに、各重みを数値化して合算した結果の時間的累積値に応じて、視認範囲度数を3段階で推定する。視認範囲度数は、図3からわかるように、移動速度V及び密集度Dが低い状態が続きやすく中心視の範囲E1となりやすい分割エリアほど重みが大きくなることで高い段階で推定され、移動速度V及び密集度Dが高い状態が続きやすく中心視の範囲E1及び周辺視の範囲E2になり難い分割エリア(視野外となりやすい分割エリア)ほど重みが小さくなることで低い段階で推定される。
【0024】
このため、例えば、図4(A)に例示するように、2人いた対象エリアSを複数の分割エリアに分割する場合、記憶部22に記憶される視認範囲情報及び人流検出用データを利用することで、分割エリアごとに視認範囲度数を求めることができる。さらに、図4(B)に例示するように、各視認範囲度数をマップ化した視認度マップを表示部23に表示することができる。なお、図4(B)では、視認範囲度数が最も高くなる「大」となる分割エリアについてクロスハッチングを付し、視認範囲度数が中間となる「中」となる分割エリアについてハッチングを付し、視認範囲度数が最も低くなる「小」となる分割エリアについてハッチングを付さない状態で図示している。
【0025】
以下、図6に示す対象エリアSについて視認度マップを表示する際に、制御部21にてなされる視認範囲推定処理について、図5に例示するフローチャートを参照して詳述する。なお、図6に相当する対象エリアSでは、図略の複数の赤外線センサ10がそれぞれ所定の位置に配置されて図7に示すような分割エリアに分割され、所定の期間において各赤外線センサ10にて計測された点群データが人流検出用データとして記憶部22に記憶されている状態で視認範囲推定処理が開始されるものとする。また、対象エリア(所定の計測範囲)S内のうちの視認範囲度数を推定不要な推定不要範囲Snに関する情報が記憶部22に記憶されるものとする。ここで、推定不要範囲Snに関する情報としては、例えば、壁や柱等の位置情報など、対象エリアS内の通路を歩く人が視認できない範囲を示す情報を採用することができる。このように推定不要範囲Snに関する情報が記憶部22に記憶される場合には、図7の推定不要範囲Snでは、分割エリアが設定されない。
【0026】
操作部24に対する所定の操作等に応じて制御部21にて視認範囲推定処理が開始されると、まず、図5のステップS101に示す人流検出用データ取得処理がなされる。この処理では、視認範囲度数を推定すべき期間の対象エリアSに関する人流検出用データが記憶部22から読み出されて取得される。続いて、ステップS103に示す人流検出処理がなされ、取得された人流検出用データのうち人の形状に応じた点群データの時間変化に基づいて、対象エリアS内のいる人の流れが検出される。なお、上記人流検出処理を行う制御部21は、「人流検出部」の一例に相当し得る。
【0027】
続いて、ステップS105に示す重み算出処理がなされる。この処理では、上述のように検出された人の流れから求められる分割エリアごとの移動速度V及び密集度Dの2つの要素のそれぞれについて重みに関する時間的累積値が算出されるとともに、人の流れと視認範囲情報とから求められる視野の要素について重みに関する時間的累積値が算出される。
【0028】
そして、ステップS107に示す視認範囲度数推定処理がなされる。この処理では、上述のように分割エリア単位で算出された各重みを数値化して合算した結果の時間的累積値に応じて、視認範囲度数が推定される。なお、上記視認範囲度数推定処理を行う制御部21は、「推定部」の一例に相当し得る。
【0029】
このように分割エリア単位で視認範囲度数が推定されると、ステップS109に示す視認度マップ表示処理がなされる。この処理では、上述のように推定された視認範囲度数が対象エリアSに対して分割エリア単位で付与されるように表示部23に画面表示される。例えば、図7に示すような分割エリアに分割された対象エリアSに対して、図8に例示するように視認範囲度数が分割エリア単位で付与されるように表示される。視認度マップ表示処理では、カラー表示等で視認範囲度数を識別可能に表示できるが、図8の例では、便宜上、視認範囲度数が最も高くなる「大」となる分割エリアについてクロスハッチングを付し、視認範囲度数が中間となる「中」となる分割エリアについてハッチングを付し、視認範囲度数が最も低くなる「小」となる分割エリアについてハッチングを付さない状態で図示している。
【0030】
このように視認度マップが表示部23に表示されることで、視認範囲度数が高い分割エリアは、視認範囲度数が低い分割エリアよりも人の注目を集めやすいエリアであると認識でき、対象エリアS内から広告の掲示や集客等に効果的なエリア、すなわち、広告的価値が高い範囲を容易に探索することができる。図8の例では、通路R3,R5の壁面等が人の注目を集めやすく、通路R2,R4の壁面等がそれなりに人の注目を集めやすく、通路R1の壁面等が人の注目を集め難いと認識することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る視認範囲推定システム1では、赤外線センサ10にて取得される点群データを利用して対象エリアS内にいる人の流れが検出され、移動方向を基準とする人の視認範囲に関する視認範囲情報と人流検出処理の検出結果とに基づいて、対象エリアS内にて人の注目を集めやすい範囲ほど高くなる視認範囲度数が推定される。
【0032】
これにより、対象エリアS内のうち視認範囲度数が高い範囲ほど広告的価値が高い範囲と推定することができる。特に、カメラによる撮像画像を利用することなく赤外線センサ10の計測結果を利用するため、顔データ等の個人情報を取り扱うことなく所定範囲の広告的価値(広告的価値が高い視認範囲を)推定することができる。
【0033】
そして、上記視認範囲度数推定処理では、上記人流検出処理の検出結果から求められる人の密集度Dをさらに考慮して視認範囲度数が推定される。このように人の密集度を考慮することで、より実際の環境に適した視認範囲度数が推定されるので、視認範囲度数の推定精度を高めることができる。
【0034】
さらに、視認範囲度数推定処理により推定された視認範囲度数をマップ化した視認度マップが表示部23にて表示されるので、広告的価値が高い視認範囲や広告的価値が低い視認範囲などを一見して把握することができる。
【0035】
特に、対象エリア(所定の計測範囲)S内のうちの視認範囲度数を推定不要な推定不要範囲に関する推定不要範囲Snが記憶部22に記憶される場合に、上記視認範囲度数推定処理では、記憶部22に記憶される情報に基づいて対象エリアS内のうち上記推定不要範囲Snを除いて視認範囲度数が推定される。
【0036】
これにより、壁を越えた先のエリアなど視認不能な範囲の情報等を推定不要範囲Snに関する情報として記憶部22に記憶することで、その推定不要範囲Snの視認範囲度数が推定されることもないので、上記視認範囲度数推定処理に関する処理負荷を軽減等することができる。特に、視認度マップにおいて、上記推定不要範囲Snを、視認範囲度数が推定された分割エリアと区別して表示することで、視認度マップが見やすくなり、視認範囲度数に関する視認性の低下を防止することができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る視認範囲推定システムについて、図面を参照して説明する。
本第2実施形態では、別途取得したエリア価値情報を利用して視認度マップに対して価値指標を付加表示する点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
本実施形態において制御部21にてなされる視認範囲推定処理では、上記ステップS109の視認度マップ表示処理時に、指定された分割エリアに付与される価値の指標が視認度マップに対して付加表示可能となる。本実施形態では、上記価値の指標として、広告掲示に関する壁面等の地価の情報(以下、単に、地価情報ともいう)が採用される。
【0039】
このため、本実施形態では、対象エリア(所定の計測範囲)Sを複数のエリアに分割した分割エリアごとに当該分割エリアの地価情報(価値の指標)を付与するためのエリア価値指標情報が予め取得されて、記憶部22に記憶される。エリア価値指標情報は、例えば、通信部25を介して外部機器から受信することで取得でき、このようにエリア価値指標情報を取得するための処理を行う制御部21及び通信部25は、「エリア価値指標情報取得部」の一例に相当し得る。なお、エリア価値指標情報は、外部機器から受信することで取得することに限らず、例えば、操作部24に対する入力操作等に応じて取得されてもよい。
【0040】
このようにエリア価値指標情報が記憶部22に記憶されている状態で視認度マップが表示部23に表示なされた際に、ユーザが操作部24に対して所定の操作を行って所望の分割エリアを指定することで、図9に例示するように、その分割エリアに付与される地価情報が視認度マップに対して付加表示される。
【0041】
これにより、視認範囲度数が比較的高く地価が比較的安い分割エリア、すなわち、広告的価値がより高い視認範囲を容易に探索することができる。その一方で、対象エリア(所定の計測範囲)Sに関して地価情報を設定する業者等であれば、設定する地価情報の妥当性を事前に確認等することができる。
【0042】
なお、エリア価値指標情報は、広告掲示に関する壁面等の地価の情報に限らず、例えば、テナント賃貸料に関する情報であってもよいし、祭事や行事等の来場者数、出店数等のイベント開催情報であってもよい。
【0043】
なお、本発明は上記各実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)上記視認範囲推定処理における推定すべき期間は、例えば、平日朝や土日昼、週末夜等であってもよいし、規定時間帯の数日分であってもよく、ユーザが任意に設定することができる。
【0044】
(2)重みを設定すべき要素は、上述した移動速度V、密集度D、視野の3つに限らず、例えば、移動速度Vと視野との2つであってもよいし、上述した移動速度V、密集度D、視野の少なくともいずれか1つにさらに他の要素を加えてもよい。また、各要素に関して重みが「大」「中」「小」の3段階に設定されることに限らず、例えば、「大」「小」の2段階に設定されてもよいし、4段階以上に設定されてもよい。
【0045】
(3)視認範囲度数は、各重みを数値化して合算した結果の時間的累積値に応じて3段階で推定されることに限らず、2段階又は4段階以上で推定されてもよい。また、視認範囲度数は、各重みを数値化して合算した結果の時間的累積値に応じて推定されることに限らず、他の統計的手法を用いた各重み等の時間的累積値に応じて推定されてもよい。
【0046】
(4)分割エリアの分割数は、対象エリア(所定の計測範囲)Sに対して予め決められてもよいし、ユーザがその都度任意に設定してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…視認範囲推定システム
10…赤外線センサ
20…情報処理装置
21…制御部(人流検出部,推定部,エリア価値指標情報取得部)
22…記憶部
23…表示部
S…対象エリア(所定の計測範囲)
Sn…推定不要範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9