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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111497
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20230803BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013373
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 奈津子
(72)【発明者】
【氏名】柏 智男
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BA12
5E070CB02
5E070CB13
5E070EB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基体の角の近傍の領域を活用し特性向上したコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1は、基体10と、基体に設けられたコイル導体と、コイル導体に電気的に接続される外部電極と、を備える。一軸方向から見たときの基体の形状は、矩形であってもよい。一軸方向から見たときに、基体は、第1長辺11a1及び第1長辺よりも短い第1短辺を11b1有する。コイル導体は、周回部25aを含む。周回部25aは、一軸方向から見たときに第1短辺に向かって凸に湾曲する第1湾曲部を有する。周回部の長軸は、基体の第1長辺に対して傾斜している。一軸方向から見たときに、周回部は、凸集合の形状を呈する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向から見たときに第1長辺及び前記第1長辺よりも短い第1短辺を有する矩形形状の基体と、
前記一軸方向から見たときに前記第1短辺に向かって凸に湾曲する第1湾曲部を有しており凸集合の形状を呈し、長軸及び前記長軸に直交する短軸を有する周回部を含み、前記周回部の前記長軸が前記第1長辺に対して傾斜するように前記基体内に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体に電気的に接続される外部電極と、
を備えるコイル部品。
【請求項2】
前記一軸方向から見たときに、前記周回部の前記長軸は、前記第1短辺と交差し、前記基体の幾何中心は、前記周回部の幾何中心と一致する、
請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記周回部の前記長軸に沿う長軸方向における寸法に対する前記長軸方向と直交する短軸方向における寸法の比は、前記第1長辺の長さに対する前記第1短辺の長さの比より小さい、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記基体は、前記一軸方向から見たときに、前記周回部よりも内側にあるコア領域と前記周回部よりも外側にあるマージン領域とを有し、
前記マージン領域の面積とコア領域の面積の差が、前記コア領域の面積の10%以下である、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記基体は、前記一軸方向から見たときに前記第1長辺と対向する第2長辺及び前記第1短辺と対向する第2短辺を有し、
前記周回部は、前記一軸方向から見たときに前記第2短辺に向かって凸に湾曲する第2湾曲部を有する、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記周回部は、前記一軸方向から見たときに前記第1長辺に向かって凸に湾曲する第3湾曲部を有する、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイル導体は、前記一軸方向から見たときに前記基体の前記第1長辺と対向し直線状に延びる第1直線部を有する、
請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記一軸方向から見たときに、前記第1短辺、前記第1長辺、及び前記周回部に接する仮想的な第1仮想円の半径は、前記第1短辺、前記第2長辺、及び前記周回部に接する仮想的な第2仮想円の半径よりも小さい、
請求項5に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記コイル導体は、前記第2仮想円内において前記一軸方向に延びる引出部を有し、
前記外部電極は、前記引出部の一端に接続される、
請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記一軸方向から見たときに、前記第1長辺、前記第2短辺、及び前記周回部に接する仮想的な第3仮想円の半径は、前記第2仮想円の半径よりも小さい、
請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
一軸方向から見たときに第1長辺及び前記第1長辺よりも短い第1短辺を有する矩形形状の基体と、
前記一軸方向から見たときに前記基体の前記第1長辺と対向し直線状に延びる第1直線部を有しており凸集合の形状を呈し、長軸及び前記長軸に直交する短軸を有する周回部を含み、前記周回部の前記長軸が前記第1長辺に対して傾斜するように前記基体内に設けられたコイル導体と、
前記コイル導体に電気的に接続される外部電極と、
を備えるコイル部品。
【請求項12】
一軸方向から見たときに第1長辺、前記第1長辺よりも短い第1短辺、前記第1長辺と対向する第2長辺、及び前記第1短辺と対向する第2短辺を有し、前記第1短辺、前記第1長辺、及びコイル導体の周回部に接する仮想的な第1仮想円の半径が、前記第1短辺、前記第2長辺、及び前記周回部に接する仮想的な第2仮想円の半径よりも小さくなるように構成された矩形形状の基体と、
前記基体に設けられた外部電極と、
前記一軸方向から見たときに長軸を有しており凸集合の形状を呈し、前記長軸及び前記長軸に直交する短軸を有する前記周回部と、前記第2仮想円内において前記一軸方向に延び前記外部電極に接続される引出部と、を含み、前記長軸が前記第1長辺に対して傾斜するように前記基体内に設けられたコイル導体と、
を備えるコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、主にコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、電子機器において用いられる受動素子である。コイル部品は、例えば、電源ラインや信号ラインにおいてノイズを除去するために用いられる。コイル部品は、磁性材料から構成される基体と、基体の内部に設けられるコイル導体と、コイル導体に接続される外部電極と、を備える。コイル導体は、コイル軸周りの周方向に沿って延びる周回部と、周回部を外部電極に接続する引出部と、を有する。
【0003】
特開2013-18352号公報(特許文献1)に記載されているように、コイル導体の周回部の外縁は、コイル軸方向から見た視点(図7参照)で滑らかな形状を呈する。コイル導体の周回部は、例えば、楕円形、長円形、又は矩形に構成される。周回部が滑らかな形状を有することにより、コイル導体の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。また、周回部が滑らかな形状を有することにより、コイル導体に流れる電流が変化したときに生じる磁束が磁性基体内の一部の領域に集中しないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-18352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコイル部品の基体は、コイル軸方向から見た視点において矩形を呈する。矩形の基体の角の近傍の領域には、コイル導体に流れる電流が変化したときに生じる磁束が流れにくい。このため、基体の角の近傍の領域は、コイル部品の特性向上への寄与が少ない。コイル部品の特性向上のために、基体の角の近傍の領域を活用することが望まれる。
【0006】
本明細書において開示される発明の目的の一つは、基体の角の近傍の領域を活用することで特性が改善されたコイル部品を提供することである。本発明のこれ以外の目的は、明細書全体の記載を通じて明らかにされる。本明細書に開示される発明は、「発明を解決しようとする課題」の欄の記載以外から把握される課題を解決するものであってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るコイル部品は、基体と、基体内に設けられたコイル導体と、コイル導体に電気的に接続される外部電極と、を備える。一実施形態において、一軸方向から見たときの基体の形状は、矩形であってもよい。一軸方向から見たときに、基体は、第1長辺及び第1長辺よりも短い第1短辺を有する。コイル導体は、周回部を含む。周回部は、一軸方向から見たときに第1短辺に向かって凸に湾曲する第1湾曲部を有する。周回部は、長軸と当該長軸に直交する短軸とを有し、この長軸は、基体の第1長辺に対して傾斜している。周回部は、凸集合の形状を呈する。
【0008】
一実施形態において、周回部は、一軸方向から見たときに基体の第1長辺と対向し直線状に延びる第1直線部を有する。
【0009】
一実施形態において、基体は、一軸方向から見たときに第1長辺、第1長辺よりも短い第1短辺、第1長辺と対向する第2長辺、及び第1短辺と対向する第2短辺を有する。第1短辺、第1長辺、及び周回部に接する仮想的な第1仮想円の半径は、第1短辺、第2長辺、及び周回部に接する仮想的な第2仮想円の半径よりも小さい。一実施形態におけるコイル導体は、長軸を有する周回部と、第2仮想円内において一軸方向に延び外部電極に接続される引出部と、を有する。
【0010】
一実施形態において、周回部の長軸は、第1短辺と交差する。一実施形態において、一軸方向から見たときに、基体の幾何中心は、周回部の幾何中心と一致する。
【0011】
一実施形態において、周回部の長軸に沿う長軸方向における寸法に対する長軸方向と直交する短軸方向における寸法の比は、第1長辺の長さに対する第1短辺の長さの比より小さい。
【0012】
一実施形態において、基体は、一軸方向から見たときに、周回部よりも内側にあるコア領域と、周回部よりも外側にあるマージン領域と、を有する。一実施形態において、マージン領域の面積とコア領域の面積との差が、コア領域の面積の10%以下である。
【0013】
一実施形態において、周回部は、一軸方向から見たときに第2短辺に向かって凸に湾曲する第2湾曲部を有する。
【0014】
一実施形態において、周回部は、一軸方向から見たときに第1長辺に向かって凸に湾曲する第3湾曲部を有する。
【0015】
一実施形態において、コイル導体は、一軸方向から見たときに基体の第1長辺と対向し直線状に延びる第1直線部を有する。
【0016】
一実施形態において、一軸方向から見たときに、第1短辺、第1長辺、及び周回部に接する仮想的な第1仮想円の半径は、第1短辺、第2長辺、及び周回部に接する仮想的な第2仮想円の半径よりも小さい。
【0017】
一実施形態において、コイル導体は、第2仮想円内において一軸方向に延びる引出部を有し、外部電極は、引出部の一端に接続される。
【0018】
一実施形態において、一軸方向から見たときに、第1長辺、第2短辺、及び周回部に接する仮想的な第3仮想円の半径は、第2仮想円の半径よりも小さい。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に記載されている発明の実施形態によれば、基体の角の近傍の領域を活用することで特性が改善されたコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態に係るコイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図1のコイル部品の分解斜視図である。
図3図1のコイル部品をI-I線で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図4図1のコイル部品の平面図である。図4においては、基体を透過してコイル導体が図示されている。
図5a】寸法線が記入された図1のコイル部品の平面図である。
図5b】従来のコイル部品の模式的な平面図である。
図6】別の実施形態に係るコイル部品の断面を模式的に示す断面図である。
図7図6のコイル部品の平面図である。図7においては、基体を透過してコイル導体が図示されている。
図8】別の実施形態に係るコイル部品の模式的な平面図である。図8においては、基体を透過してコイル導体が図示されている。
図9】別の実施形態に係るコイル部品の模式的な平面図である。図9においては、基体を透過してコイル導体が図示されている。
図10a】寸法線が記入された図9のコイル部品の平面図である。
図10b】従来のコイル部品の模式的な平面図である。
図11】別の実施形態に係るコイル部品の模式的な平面図である。図11においては、基体を透過してコイル導体が図示されている。
図12a】寸法線が記入された図11のコイル部品の平面図である。
図12b】従来のコイル部品の模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は、必ずしも特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1から図4を参照して一実施形態によるコイル部品1について説明する。図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図であり、図2は、コイル部品1の分解斜視図である。図3は、図1のI-I線に沿ってコイル部品1を切断したコイル部品1の模式的な断面図であり、図4は、コイル部品1の平面図である。図2ないし図4においては、説明の便宜のために、外部電極の図示が省略されている。
【0023】
図1から図4には、コイル部品1の例として、積層インダクタが示されている。図示されている積層インダクタは本発明が適用可能なコイル部品1の一例であり、本発明は積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、コイル部品1は、巻線型のコイル部品であってもよい。
【0024】
図示されているように、コイル部品1は、基体10と、基体10の内部に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。外部電極21は、コイル導体25の一端と電気的に接続されており、外部電極22は、コイル導体25の他端と電気的に接続されている。
【0025】
コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21とランド部3aとを接合し、また、外部電極22とランド部3bとを接続することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0026】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル、インダクタアレイ、及びこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0027】
一実施形態において、基体10は、磁性材料から直方体形状に構成される。本発明の一実施形態において、基体10は、L軸方向における寸法(長さ寸法)がW軸方向における寸法(幅寸法)及びT軸方向における寸法(高さ寸法)よりも大きくなるように構成されている。例えば、長さ寸法は、1.0mm~6.0mmの範囲にあり、幅寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にあり、高さ寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にある。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0028】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外表面が画定されている。第1主面10aと第2主面10bとはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10cと第2端面10dとはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成し、第1側面10eと第2側面10fとはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成している。図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」又は「底面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の長さ寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の幅寸法だけ離間している。
【0029】
基体10は、磁性材料から作製される。この磁性材料として、フェライト材料、軟磁性合金材料、樹脂に磁性粒子を分散させた複合磁性材料、又はこれら以外の任意の公知の磁性材料を用いることができる。
【0030】
基体10用のフェライト材料には、Ni-Zn系フェライト、Ni-Zn-Cu系フェライト、Mn-Zn系フェライト、又はこれら以外の任意のフェライトが含まれる。
【0031】
基体10用の磁性材料に含まれる金属磁性粒子は、例えば、(1)Fe、Ni等の金属粒子、(2)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Ni合金等の結晶合金粒子、(3)Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等の非晶質合金粒子、または(4)これらが混合された混合粒子である。基体10に含まれる金属磁性粒子の組成は、前記のものに限られない。例えば、基体10に含まれる金属磁性粒子は、Co-Nb-Zr合金、Fe-Zr-Cu-B合金、Fe-Si-B合金、Fe-Co-Zr-Cu-B合金、Ni-Si-B合金、又はFe-AL-Cr合金であってもよい。金属磁性粒子の各々の表面には、絶縁膜が形成されてもよい。この絶縁膜は、上記の金属又は合金が酸化してできる酸化膜であってもよい。一又は複数の実施形態において、基体10に含まれる金属磁性粒子は、1.0~20μmの平均粒径を有する。基体10は、互いに平均粒径の異なる2種類以上の金属磁性粒子を含んでもよい。
【0032】
基体10において、金属磁性粒子同士は、製造工程で金属磁性粒子に含有される元素が酸化して形成される酸化膜によって結合されてもよい。基体10は、金属磁性粒子に加えて結合材を含んでいてもよい。基体10が結合材を含む場合には、金属磁性粒子同士は結合材により互いに結合される。基体10に含まれる結合材は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂を硬化させることで形成されてもよい。結合材の材料として、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)樹脂、フェノール(Phenolic)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、又はポリベンゾオキサゾール(PBO)樹脂が用いられ得る。
【0033】
図2に示すように、基体10は、磁性体層20と、磁性体層20の下面に設けられた下側カバー層19と、磁性体層20の上面に設けられた上側カバー層18と、を有する。
【0034】
磁性体層20は、磁性膜11~17を備える。磁性体層20においては、T軸方向のマイナス側からプラス側に向かって、磁性膜17、磁性膜16、磁性膜15、磁性膜14、磁性膜13、磁性膜12、磁性膜11の順に積層されている。
【0035】
磁性膜11~17の上面には、導体パターンC11~C17がそれぞれ形成されている。複数の導体パターンC11~C17の各々は、コイル軸Ax1に直交する平面(LW平面)内でコイル軸Ax1周りに延びている。導体パターンC11~C17は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターンC11~C17は、これ以外の材料及び方法により形成されてもよい。導体パターンC11~C17、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0036】
磁性膜11~磁性膜16の所定の位置には、ビアV1~V6がそれぞれ形成される。ビアV1~V6は、磁性膜11~磁性膜16の所定の位置に、磁性膜11~磁性膜16をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電材料を埋め込むことにより形成される。
【0037】
導体パターンC11~C17の各々は、隣接する導体パターンとビアV1~V6を介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11~C17及びビアV1~V6が、スパイラル状のコイル導体25を形成する。すなわち、コイル導体25は、導体パターンC11~C17及びビアV1~V6を有する。
【0038】
導体パターンC11のビアV1に接続されている端部と反対側の端部は、外部電極22に接続される。導体パターンC17のビアV6に接続されている端部と反対側の端部は、外部電極21に接続される。
【0039】
上側カバー層18は、磁性材料から成る磁性膜18a~18dを備え、下側カバー層19は、磁性材料から成る磁性膜19a~19dを備える。本明細書においては、磁性膜18a~18d及び磁性膜19a~19dを総称して「カバー層磁性膜」と呼ぶことがある。
【0040】
図3に示されているように、コイル導体25は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Ax1の周りに巻回されている周回部25aと、周回部25aの一端から基体10の第1端面10cまで延伸する引出部25b1と、周回部25aの他端から基体10の第2端面10dまで延伸する引出部25b2と、を有する。
【0041】
複数の導体パターンC11~C17の各々は、コイル軸Ax1の方向から見たときに、所定の閉じた図形パターンに沿って設けられる。この閉じた図形パターンには、例えば、楕円形、長円形、及び矩形が含まれるが、これらには限られない。複数の導体パターンC11~C17の各々は、LW平面内においてコイル軸Ax1の周りに沿って1ターン未満だけ延びているので単独では閉じた図形パターンを構成しないが、複数の導体パターンC11~C17の各々が共通の閉じた図形パターンに沿って配置されるため、コイル軸Ax1に垂直な平面に複数の導体パターンC11~C17の各々を投影することにより、閉じた図形パターンを定めることができる。そして、複数の導体パターンC11~C17の各々が配置される閉じた図形パターンをコイル軸Ax1の方向から見た周回部25aの形状とすることができる。例えば、複数の導体パターンC11~C17の各々が楕円に沿って設けられている場合、この楕円がコイル軸Ax1の方向から見た周回部25aの形状となる。
【0042】
コイル軸Ax1の方向から見た周回部25aの形状は、周回部25aの内周縁の形状であってもよく、外周縁の形状であってもよい。複数の導体パターンC11~C17の各々は、コイル軸Ax1の方向から見た場合に、電流が流れる方向に直交する方向の寸法(つまり、幅及び厚さ)が概ね一定となるように形成される。このため、周回部25aの内周縁と外周縁とは概ね相似である。周回部25aの形状がその内周縁の形状か外周縁の形状かを選択する必要がある場合には、その外周縁の形状を周回部25aの形状とすることができる。
【0043】
一実施形態において、コイル軸Ax1の方向から見たときに、周回部25aは、凸集合(convex set)の形状を呈する。コイル軸Ax1の方向から見た視点で周回部25aが凸集合の形状を呈する場合、コイル軸Ax1の方向から見た視点において、周回部25aの外周縁に含まれる任意の二点を結ぶ線分上の任意の点が周回部25aに含まれる。コイル軸Ax1の方向から見た視点で周回部25aが凸集合の形状を呈する場合には、周回部25aの外周縁上の任意の二点間において、周回部25aは、コイル軸Axを中心とする径方向において外側に膨出しているか又は直線状に延びている。逆に、周回部25aの外周縁上のいずれかの二点を結ぶ線分が周回部25aの外周縁の外にはみ出す場合には、周回部25aは、凸集合ではない。より具体的には、周回部25aの外周縁が楕円、長円、又は矩形のいずれかの形状を呈する場合、周回部25aは、凸集合の形状を取ることができる。周回部25aの外周縁の形状は、楕円、長円、及び矩形には限られない。
【0044】
周回部25aが凸集合の形状を呈することにより、周回部25aが非凸形状を取る場合と比べて周回部の長さを短縮することができるので、コイル導体25の直流抵抗(Rdc)を小さくすることができる。また、周回部25aが凸集合の形状を取ることにより、コイル導体25に流れる電流が変化したときに生じる磁束が基体10内の一部の領域に集中することを抑制できる。
【0045】
次に、図4を参照して、コイル部品1についてさらに説明する。図4は、コイル部品1の平面図である。図4においては、基体10を透過して周回部25aが図示されている。図示されているように、平面視において(すなわち、コイル軸Ax1の方向から見た視点において)、基体10は、矩形形状を呈する。図示の実施形態において、矩形の基体10の外縁は、L軸方向に延びる第1長辺11a1と、第1長辺11a1に対向する第2長辺11a2と、W軸方向に延びる第1短辺11b1と、第1短辺11b1に対向する第2短辺11b2と、により画定される。
【0046】
図示の実施形態においては、周回部25aは、楕円形状に構成されている。図4には、磁性膜11上に形成されている導体パターンC11と、磁性膜12に形成されている導体パターンC12の一部が示されている。このように、導体パターンC11及び導体パターンC12をコイル軸Ax1に垂直な投影面(図4では、磁性膜11)に投影し、この投影面に現れる導体パターンC11及び導体パターンC12の投影像に基づいてコイル軸Ax1の方向から見たときの周回部25aの形状を定めることができる。周回部25aの形状は、導体パターンC11及び導体パターンC12の投影像ではなく、別の導体パターンの投影像に基づいて定めてもよい。周回部25aの形状は、導体パターンC11~C17のうちから合計のターン数が1ターン以上となる連続する複数の導体パターンを選択し、この選択された複数の導体パターンをコイル軸Ax1に垂直な投影面に投影した投影図に基づいて定められ得る。このような投影像に基づいて、周回部25aの外周縁及び内周縁も定められる。
【0047】
基体10のうち周回部25aの内周縁よりも内側の領域をコア領域31と呼び、周回部25aの外周縁よりも外側の領域をマージン領域32と呼ぶ。一実施形態において、コア領域31の外縁は、周回部25aの内周縁によって画定されている。上述のとおり、周回部25aが凸集合の形状を呈し、また、周回部25aの幅が電流の流れる方向に沿って一定であるため、コア領域31も凸集合の形状を呈する。
【0048】
一実施形態において、マージン領域32の面積とコア領域31の面積との差は、コア領域31の面積の10%以下である。
【0049】
周回部25aは、コイル軸Ax1の方向から見た視点において、長軸Ax2及び短軸Ax3を有する。長軸Ax2は、周回部25aの幾何中心を通り周回部25aの外周縁上の1点から別の点まで延びる線分のうち最も長い線分が延びる方向に沿って延びる軸線である。短軸Ax3は、周回部25aの幾何中心を通り長軸Ax2と直交する軸線である。図示の実施形態のように周回部25aが楕円形状を有する場合には、その楕円の長軸が周回部25aの長軸Ax2となり、その楕円の短軸が周回部25aの短軸Ax3となる。
【0050】
周回部25aは、コイル軸Ax1の方向から見た視点において、基体10の中心に位置していても良い。つまり、コイル軸Ax1の方向から見た視点において、周回部25aの中心は、基体10の中心と一致していてもよい。これにより、周回部25aの中心が基体10の中心からずれている場合と比較して、基体10における磁束の分布をより均一にすることができる。基体10及び周回部25aはそれぞれ幾何中心を有する。基体10の中心は、コイル軸Ax1の方向から見た視点における基体10の幾何中心を意味していても良い。基体10は矩形形状であるから、基体10の中心は、コイル軸Ax1の方向から見た視点における基体10の2本の対角線の交点であってもよい。周回部25aの中央部は、周回部25aの幾何中心を意味していても良い。周回部25aが長軸Ax2及び短軸Ax3にそれぞれ対称な場合には、周回部25aの中心は、長軸Ax2と短軸Ax3の交点であってもよい。一実施形態では、コイル軸Ax1の方向から見た視点において、基体10の中心(例えば、幾何中心)と周回部25aの中心(例えば、幾何中心)との間の距離が周回部25aの短軸Ax3の長さの20%以内、10%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内である場合に、基体10の中心と周回部25aの中心とが一致しているといえる。基体10の中心と周回部25aの中心とは、厳密に一致していてもよい。
【0051】
一実施形態において、長軸Ax2は第1長辺11a1に対して傾斜している。図示の実施形態では、長軸Ax2は、第1長辺11a1に対して約20°傾いている。つまり、長軸Ax2と第1長辺11a1に沿って延びる直線とは、約20°の角度を為す。長軸Ax2の第1長辺11a1に対する傾斜角度、すなわち、長軸Ax2と第1長辺11a1に沿って延びる直線とが為す角度は、5°以上であってもよい。一実施形態において、長軸Ax2は、第1短辺11b1と交差する。長軸Ax2は、第1短辺11b1及び第2短辺11b2の両方と交差してもよい。一実施形態において、長軸Ax2は、第1長辺11a1及び第2長辺11a2のいずれとも交差しない。一実施形態において、短軸Ax3は、第1長辺11a1と交差する。短軸Ax3は、第1長辺11a1及び第2長辺11a2の両方と交差してもよい。
【0052】
周回部25aは、長軸Ax2に対して対称であってもよい。周回部25aは、短軸Ax3に対して対称であってもよい。周回部25aは、長軸Ax2及び短軸Ax3の各々に対して対称であってもよい。図示の実施形態においては、周回部25aは、楕円形状を有している。楕円形状に形成された周回部25aは、長軸Ax2及び短軸Ax3の各々に対して対称である。周回部25aは、長軸Ax2に対して非対称であってもよい。周回部25aは、短軸Ax3に対して非対称であってもよい。
【0053】
一実施形態において、周回部25aは、第1短辺11b1と対向する第1部分C11aと、第2短辺11b2と対向する第2部分C11bと、第1長辺11a1と対向する第3部分C11cと、第2長辺11a2と対向する第4部分C11dと、を有する。図示の実施形態において、第1部分C11aは、第1短辺11b1に向かって凸に湾曲しており、第2部分C11bは、第2短辺11b2に向かって凸に湾曲している。また、第3部分C11cは、第1長辺11a1に向かって凸に湾曲しており、第4部分C11dは、第2長辺11a2に向かって凸に湾曲している。長軸Ax2と短軸Ax3とが為す角を二等分する二本の直線によって、第1部分C11aと第3部分C11c、第1部分C11aと第4部分C11d、第2部分C11bと第3部分C11c、及び第2部分C11bと第4部分C11dにそれぞれ区画される。
【0054】
周回部25aは、その長軸Ax2が第1長辺11a1に対して傾斜するように基体10内に配置されているので、コイル軸Ax1の方向から見た場合に矩形の基体10の4つの角の近傍の領域のうち、第1長辺11a1と第1短辺11b1とが交わる第1の角40aの近傍にある領域は、第2長辺11a2と第1短辺11b1とが交わる第2の角40bの近傍にある領域よりも小さい。基体10の第1の角40aの近傍の領域と第2の角40bの近傍の領域について、図4に示されている第1仮想円IC1及び第2仮想円IC2に基づいて説明する。図4において、第1長辺11a1、第1短辺11b1、及び周回部25aに接する仮想的な第1仮想円IC1、及び、第2長辺11a2、第1短辺11b1、及び周回部25aに接する仮想的な第2仮想円IC2を想定すると、第1仮想円IC1の半径は、第2仮想円IC2の半径よりも小さくなる。
【0055】
同様に、第1仮想円IC1の半径は、第1長辺11a1、第2短辺11b2、及び周回部25aに接する仮想的な第3仮想円IC3の半径よりも小さい。また、第2長辺11a2、第2短辺11b2、及び周回部25aに接する仮想的な第4仮想円IC4は、第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3のいずれよりも小さい。
【0056】
続いて、図5a及び図5bを参照し、従来のコイル部品と比較して一実施形態に係るコイル部品1を説明する。図5aは、一実施形態に係るコイル部品1の平面図であり、図5bは、平面視において楕円形状の周回部75aを有する従来のコイル部品51の平面図である。図5aにおいては、図4に示されている平面図に寸法線が記入されている。
【0057】
図5bに示されているように、平面視された従来のコイル部品51においては、周回部75aの長軸Ax52が矩形の基体60内の長辺と平行な方向に延び、また、短軸Ax53が矩形の基体60内の短辺と平行な方向に延びている。つまり、従来のコイル部品51においては、平面視したときに、周回部75aの長軸が基体60の長辺に対して傾斜していない。このため、基体10の4つの角60a、60b、60c、60dの各々と周回部75aとの間の距離(最短距離を意味する。以下、同じ。)D61、D62、D63、D64は、互いに等しい。
【0058】
他方、図5aに示されているように、一実施形態に係るコイル部品1においては、周回部25aの長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜しているので、基体10の第1長辺11a1と第1短辺11b1とが交わる第1の角40aと周回部25aとの距離D11は、第2長辺11a2と第1短辺11b1とが交わる第2の角40bと周回部25aとの距離D12よりも短い。同様に、距離D11は、第1長辺11a1と第2短辺11b2とが交わる第3の角40cと周回部25aとの距離D13よりも短い。距離D11は、第2長辺11a2と第2短辺11b2とが交わる第4の角40dと周回部25aとの距離D14と同じであってもよい。距離D14は、距離D12及び距離D13のいずれよりも短い。
【0059】
従来のコイル部品51においては、周回部75aを流れる電流の変化によって生じる磁束は、周回部75aからの距離が大きい4つの角60a~60dの近傍の領域を通りにくい。このため、基体60のうち4つの角60a~60dの近傍の領域は、コイル部品51の特性向上への寄与が少ない。これに対して、一実施形態に係るコイル部品1においては、周回部25aの長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜しているため、基体10の右上の角40aと周回部25aとの距離D11が、従来のコイル部品51における基体60の右上の角60aと周回部75aとの距離D61と比べて小さい。同様に、基体10の左下の角40dと周回部25aとの距離D13が、従来のコイル部品51における基体60の左下の角60dと周回部75aとの距離D64と比べて小さい。このため、コイル部品1においては、従来のコイル部品51に比べて、コイル導体25を流れる電流が変化したときに発生する磁束が、基体10の4つの角40a~40dのうち第1の角40a及び第4の角40dの近傍の領域を通過しやすくなっている。よって、周回部75aと周回部25aとの形状が同じであっても、コイル部品1のインダクタンスを、従来のコイル部品51のインダクタンスよりも向上させることができる。コイル部品1における基体10の左上の角40bと周回部25aとの距離D12は、従来のコイル部品51における基体60の左上の角60bと周回部75aとの距離D62及びと比べて大きく、コイル部品1における基体10の右下の角40cと周回部25aとの距離D13は、従来のコイル部品51における基体60の右下の角60cと周回部75aとの距離D623と比べて大きいが、従来のコイル部品51においても左上の角60b及び右下の角60cの近傍の領域は、インダクタンスの向上への寄与がほとんどないので、コイル部品1において距離D12及び距離D13が従来より大きくなってもインダクタンス劣化の要因とはならない。このように、コイル部品1によれば、長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜するように周回部25aを配置することにより、基体10の角の近傍の領域を活用してインダクタンスを向上させることができる。
【0060】
一実施形態において、周回部25aの長軸Ax2に沿う長軸方向における寸法L11(長径L11)に対する長軸方向と直交する短軸方向における寸法L12(短径L12)の比L12/L11は、基体10の第1長辺11a1の長さL21に対する第1短辺11b1の長さL22の比L22/L21より小さい。すなわち(L12/L11)/(L22/L21)は、1よりも小さい。(L12/L11)/(L22/L21)が1に近いとマージン領域32が狭くなるため、マージン領域32において磁気飽和が起こりやすくなる。逆に、(L12/L11)/(L22/L21)が小さすぎるとマージン領域32が広くなるため、マージン領域32において磁束密度が低い領域が生じ、磁気特性を獲得するための基体10の利用効率が悪化する。このため、一実施形態において、(L12/L11)/(L22/L21)は0.65以上0.9以下である。(L12/L11)/(L22/L21)は、より好ましくは、0.75以上から0.85以下である。
【0061】
続いて、図6及び図7を参照して、別の実施形態に係るコイル部品101を説明する。図6は、別の実施形態に係るコイル部品101の断面を模式的に示す断面図であり、図7は、コイル部品101の平面図である。コイル部品101の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。コイル部品101は、外部電極121、122を備えており、周回部25aは、引出部125b1及び接続部125c1を介して外部電極121に接続され、また、引出部125b2及び接続部125c2を介して外部電極122に接続されている。
【0062】
外部電極121、122は、基体10の底面10bに設けられている。引出部125b1は、コイル軸Ax1に沿って(すなわち、T軸方向に沿って)延びており、その下端において外部電極121と接続されている。引出部125b2も同様に、コイル軸Ax1に沿って延びている。引出部125b2の下端は、外部電極122と接続されている。
【0063】
接続部125c1は、磁性膜17上に設けられている。接続部125c1の一端は、磁性膜17上に設けられている導体パターンC17の一端に接続されている。接続部125c1の他端は、引出部125b1の上端に接続されている。
【0064】
接続部125c2は、磁性膜11上に設けられている。接続部125c2の一端は、磁性膜11上に設けられている導体パターンC11の一端に接続されている。接続部125c2の他端は、引出部125b2の上端に接続されている。
【0065】
基体10内に引出部125b1を設けるために、磁性膜17及び磁性膜19a~19dには、接続部125c1を受け入れる貫通孔が形成されている。また、基体10内に引出部125b2を設けるために、磁性膜11~17及び19a~19dには、接続部125c2を受け入れる貫通孔が形成されている。
【0066】
外部電極121、122の形状は図示されたものには限られない。外部電極121は、基体10の底面10bだけでなく、第1端面10c、上面10a、第1側面10e、及び第2側面10fの少なくとも一つに接していてもよい。外部電極122は、基体10の底面10bだけでなく、第2端面10d、上面10a、第1側面10e、及び第2側面10fの少なくとも一つに接していてもよい。外部電極121、122の形状は、外部電極21、22の形状と同じであってもよい。
【0067】
図7に示されているように、引出部125b1は、第2長辺11a2、第1短辺11b1、及び周回部25aに接する第2仮想円IC2内においてコイル軸Ax1に沿って、外部電極121から接続部125c1の一端まで延びている。平面視において、引出部125b1の全部が第2仮想円IC2内に配置されていてもよく、その一部だけが第2仮想円IC2内に配置されていてもよい。また、引出部125b2は、第1長辺11a1、第2短辺11b2、及び周回部25aに接する仮想的な第3仮想円IC3内においてコイル軸Ax1に沿って、外部電極122から接続部125c2の一端まで延びている。平面視において、引出部125b2の全部が第3仮想円IC3内に配置されていてもよく、その一部だけが第2仮想円IC3内に配置されていてもよい。
【0068】
コイル部品101において、第2仮想円IC2が配置されている角40bの近傍の領域及び第3仮想円IC3が配置されている角40cの近傍の領域は、角40aの近傍の領域及び角40dの近傍の領域と比べて周回部25aからの距離から大きいので、周回部25aを流れる電流の変化によって生じる磁束は、第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3の内側の領域を通過しにくい。磁束は、引出部125b1及び引出部125b2を通過することができないので、基体10内で延伸する引出部125b1及び引出部125b2はコイル部品1のインダクタンスを劣化させる要因となる。第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3の内側の領域は、引出部125b1及び引出部125b2が配置されていなくても磁束が通過しにくい領域であるため、引出部125b1及び引出部125b2を第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3の内側の領域にそれぞれ設けても、コイル部品101のインダクタンスの劣化度合いは小さい。つまり、引出部125b1及び引出部125b2を第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3の内側の領域にそれぞれ配置することにより、基体10内の第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3以外の領域に引出部125b1及び引出部125b2を配置する場合と比べて、コイル部品1のインダクタンスの劣化を抑制することができる。このように、コイル部品101においては、周回部25aの長軸Ax2を第1長辺11a1に対して傾斜させることによって第1仮想円IC1及び第4仮想円IC4の近傍の領域の磁束密度を向上させるとともに、インダクタンス向上への寄与が小さい第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3内の領域に引出部125b1及び引出部125b2を配置することで引出部125b1、125b2によるインダクタンスの劣化を抑制することができる。
【0069】
続いて、図8を参照して、さらに別の実施形態に係るコイル部品201を説明する。図8は、別の実施形態に係るコイル部品201の平面図である。コイル部品201の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。コイル部品201は、周回部25aと異なる経常を有する周回部225aを有する。具体的には、周回部25aが長軸Ax2に対して対称な形状を有するのに対して、周回部225aは、長軸Ax2に対して非対称な形状を有している。より具体的には、周回部225aのうち長軸Ax2よりも第1長辺11a1側にある部位のコイル軸Ax1周りの周方向における周長は、長軸Ax2よりも第2長辺11a2側にある部位の周長よりも長い。つまり、周回部225aは、第3の角40cとの距離が第2の角40bとの距離よりも小さくなるように、第3の角40cに向かって張り出している。このため、コイル部品201において、第3仮想円IC3は、第2仮想円IC2よりも小さい。
【0070】
周回部225aは、第1短辺11b1と対向する第1部分C211aと、第2短辺11b2と対向する第2部分C211bと、第1長辺11a1と対向する第3部分C211cと、第2長辺11a2と対向する第4部分C211dと、を有する。一実施形態において、第2部分C211bと第2短辺11b2との間の間隔は、第1部分C211aと第1短辺11b1との間の間隔より短くてもよい。一実施形態において、第3部分C211cと第1長辺11a1との間の間隔は、第4部分C211dと第2長辺11a2との間の間隔より短くてもよい。
【0071】
コイル部品201においては、周回部225aと第3の角40cとの距離が周回部225aと第2の角40bとの距離よりも小さいので、コイル部品1と比べてコイル導体25を流れる電流の変化によって生じる磁束が第3の角40cの近傍を通りやすくなっている。よって、コイル部品201によれば、コイル部品1と比べてさらにインダクタンスを向上させることができる。
【0072】
図8においては、外部電極の図示が省略されているが、コイル部品201は、例えば、コイル部品1と同様に外部電極21、22を備えることができる。図示の実施形態において、コイル部品201の周回部225aの一端は、周回部225aの一端は、引出部125b1及び接続部125c1を介して外部電極21に接続され、また、周回部225aの他端は、引出部25b2を介して外部電極21に接続されている。このように、コイル部品201においては、インダクタンス向上への寄与が小さい第2仮想円IC2内の領域に、コイル軸Ax1に沿って延びる引出部125b1を配置することで引出部125b1によるインダクタンスの劣化を抑制することができる。
【0073】
周回部225aの一端は、引出部125b1の代わりに、磁性膜11上に設けられた引出部25b1によって外部電極21に接続されてもよい。
【0074】
続いて、図9を参照して、さらに別の実施形態に係るコイル部品301を説明する。図9は、別の実施形態に係るコイル部品301の平面図である。コイル部品301の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。コイル部品301は、周回部25aと異なる形状の周回部325aを有している。図示されているように、周回部325aは、長円形状を有する。周回部325aの長軸Ax2は、基体10の第1長辺11a1に対して約20°傾斜している。
【0075】
一実施形態において、周回部325aは、第1短辺11b1と対向する第1部分C311aと、第2短辺11b2と対向する第2部分C311bと、第1長辺11a1と対向する第3部分C311cと、第2長辺11a2と対向する第4部分C311dと、を有する。図示の実施形態において、第1部分C311aは、第1短辺11b1に向かって凸に湾曲しており、第2部分C311bは、第2短辺11b2に向かって凸に湾曲している。また、第3部分C311c及び第4部分C311dは、直線状に延びている。第3部分C311c及び第4部分C311dは、長軸Ax2と平行に延びていてもよい。コイル部品301においても、第1仮想円IC1及び第4仮想円IC4の半径は、第2仮想円IC2及び第3仮想円IC3の半径よりも小さい。図示の実施形態においては、周回部325aは、引出部25b1、25b2により外部電極21、22にそれぞれ接続されているが、コイル部品301は、引出部25b1、25b2に代えて引出部125b1、125b2を備え、外部電極21、22に代えて外部電極121、122を備えてもよい。この場合、周回部325aは、引出部125b1、125b2を介して外部電極121、122に接続される。
【0076】
図10a及び図10bを参照して、従来のコイル部品351と比較してコイル部品301を説明する。図10aは、一実施形態に係るコイル部品301の平面図であり、図10bは、平面視において長円形状の周回部375aを有する従来のコイル部品350の平面図である。図10aにおいては、図9に示されている平面図に寸法線が記入されている。
【0077】
図10bに示されているように、従来のコイル部品351においては、平面視において、コイル導体の周回部375aの長軸Ax352が矩形の基体360内の長辺と平行な方向に延び、また、短軸Ax353が矩形の基体60内の短辺と平行な方向に延びている。つまり、従来のコイル部品351においては、平面視において周回部375aの長軸が基体360の長辺に対して傾斜していない。このため、基体60の4つの角360a、360b、360c、360dの各々と周回部375aとの間の距離(直線距離を意味する。以下、同じ。)D361、D362、D363、D364は、互いに等しい。
【0078】
他方、図10aに示されているように、コイル部品301においては、周回部325aの長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜しているので、基体10の第1の角40aと周回部325aとの距離D311は、第2の角40bと周回部325aとの距離D312よりも短い。同様に、距離D311は、第3の角40cと周回部325aとの距離D13よりも短い。距離D311は、第4の角40dと周回部325aとの距離D314と同じであってもよい。距離D314は、距離D312及び距離D313よりも短い。
【0079】
従来のコイル部品351においては、周回部375aを流れる電流の変化によって生じる磁束は、周回部375aからの距離が大きい4つの角360a~360dの近傍の領域を通りにくい。このため、基体360のうち4つの角360a~360dの近傍の領域は、コイル部品351の特性向上への寄与が少ない。これに対して、一実施形態に係るコイル部品301においては、周回部325aの長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜しているため、基体10の右上の角40aと周回部325aとの距離D311が、従来のコイル部品351における基体360の右上の角360aと周回部375aとの距離D361と比べて小さい。同様に、基体10の左下の角40dと周回部325aとの距離D313が、従来のコイル部品351における基体360の左下の角360dと周回部375aとの距離D364と比べて小さい。このため、コイル部品301においては、従来のコイル部品351に比べて、コイル導体25を流れる電流が変化したときに発生する磁束が、基体10の4つの角40a~40dのうち第1の角40a及び第4の角40dの近傍の領域を通過しやすくなっている。よって、周回部375aと周回部325aとの形状が同じであっても、コイル部品301のインダクタンスを従来のコイル部品351のインダクタンスよりも向上させることができる。このように、コイル部品1によれば、長軸Ax2が基体10の第1長辺11a1に対して傾斜するように周回部25aを配置することにより、基体10の角の近傍の領域を活用してインダクタンスを向上させることができる。
【0080】
コイル部品においては、コイル導体の外周縁と基体の表面との間の距離(マージン)が小さい領域において磁気飽和が発生しやすい。図10bに示されている従来のコイル部品351において、周回部375aと基体360の各長辺及び各短辺との間の距離はいずれもM1とされている。この場合、マージン領域のうち周回部375aの直線状に延びる部位と基体360の表面との間にある第1領域365a及び第2領域365bにおいて磁気飽和が起こりやすい。
【0081】
これに対して、一実施形態に係るコイル部品301においては、長円形状の周回部325aの長軸Ax2が第1長辺11a1に対して傾いているため、図10aに示されているように、周回部325aと基体10の表面との間の距離がM1以下となる第1領域315aの面積及び第2領域315bの面積が、従来のコイル部品351における第1領域365aの面積及び第2領域365bの面積よりもそれぞれ小さくなる。このため、コイル部品301においては、同形状の周回部を有しており長軸Ax352が基体360の長辺に対して傾いていない従来のコイル部品351よりも磁気飽和が起こりにくい。このように、直線状に延びる部位(第3部分C311c及び第4部分C311d)を有する周回部325aの長軸Ax2を基体10の第1長辺11a1に対して傾斜させることにより、コイル部品301の直流重畳特性を改善することができる。
【0082】
続いて、図11を参照して、さらに別の実施形態に係るコイル部品401を説明する。図11は、さらに別の実施形態に係るコイル部品401の平面図である。コイル部品401の構成要素のうちコイル部品1の構成要素と同じ又は類似するものについては適宜説明を省略する。コイル部品401は、周回部25aと異なる形状の周回部425aを有している。図示されているように、周回部425aは、角が面取りされた矩形形状を有する。周回部425aの長軸Ax2は、基体10の第1長辺11a1に対して約20°傾斜している。
【0083】
一実施形態において、周回部425aは、第1短辺11b1と対向する第1部分C411aと、第2短辺11b2と対向する第2部分C411bと、第1長辺11a1と対向する第3部分C411cと、第2長辺11a2と対向する第4部分C411dと、を有する。第1部分C411a、第2部分C411b、第3部分C411c、及び第4部分C411dはいずれも、直線状に延びている。よって、周回部425aは矩形形状を有する。周回部425aの四角はいずれも面取りされている。周回部425aの四角が面取りされているため、周回部425aの近傍の領域における磁束の集中を抑制することができる。
【0084】
図12a及び図12bを参照して、従来のコイル部品451と比較してコイル部品401を説明する。図12aは、一実施形態に係るコイル部品401の平面図であり、図12bは、平面視において矩形の周回部475aを有する従来のコイル部品450の平面図である。図12aにおいては、図11に示されている平面図に寸法線が記入されている。
【0085】
図12bに示されているように、従来のコイル部品451においては、コイル導体の周回部475aの長軸Ax452が矩形の基体460内の長辺と平行な方向に延び、また、短軸Ax453が矩形の基体60内の短辺と平行な方向に延びている。つまり、従来のコイル部品451においては、平面視において周回部475aの長軸が基体460の長辺に対して傾いていない。図12bに示されている従来のコイル部品451において、周回部475aと基体460の各長辺及び各短辺との間の距離はいずれもM1とされている。この場合、周回部475aの直線状に延びる部位と基体460の表面との間にある第1領域465a、第2領域465b、第3領域465c、及び第4領域365dにおいて磁気飽和が起こりやすい。
【0086】
これに対して、一実施形態に係るコイル部品401においては、矩形の周回部425aの長軸Ax2が第1長辺11a1に対して傾いているため、図12aに示されているように、周回部425aと基体10の表面との間の距離がM1以下となる第1領域415a、第2領域415b、第3領域415c、及び第4領域415dの面積が、従来のコイル部品451における第1領域465a、第2領域465b、第3領域465c、及び第4領域365dの面積よりもそれぞれ小さくなる。このため、一実施形態に係るコイル部品401においては、同形状の周回部を有しており長軸Ax452が基体460の長辺に対して傾いていない従来のコイル部品451よりも磁気飽和が起こりにくい。このように、直線状に延びる部位を有する周回部425aの長軸Ax2を基体10の第1長辺11a1に対して傾斜させることにより、コイル部品401の直流重畳特性を改善することができる。
【0087】
上記の実施形態を適宜組み合わせることで実現される態様も、矛盾を生じさせない限り、本発明の実施形態となる。例えば、図7に示されている楕円形状の周回部25aに代えて、長円形状の周回部325a又は矩形の周回部425aを用いることができる。つまり、図7に示されている実施形態において、周回部25aが楕円形状の周回部325a又は矩形の周回部425aで置き換えられた態様も、本明細書で開示される発明の一態様である。
【0088】
上述したように、本明細書に開示される発明は、積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、本発明は、コアに導線が巻回された巻線型コイル部品にも適用され得る。
【0089】
次に、コイル部品1の製造方法の一例を説明する。コイル部品1は、例えば積層プロセスによって製造することができる。以下では、シート積層法によるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0090】
まず、基体10を構成する各磁性膜(上側カバー層18を構成する磁性膜18a~18d、磁性体層20を構成する磁性膜11~磁性膜17、及び下側カバー層19を構成する磁性膜19a~19d)の前駆体である磁性体シートを作製する。磁性体シートは、例えば、金属磁性粒子を樹脂と混練してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法又はこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させ、この乾燥後のスラリーを所定サイズに切断することで作製される。
【0091】
次に、磁性膜11~磁性膜16の前駆体である各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11~磁性膜17となる磁性体シートの各々の上面に、導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに導体パターンを形成するとともに、各磁性体シートに形成された貫通孔に導電ペーストを埋め込む。このようにして磁性膜11~磁性膜17の前駆体である磁性体シートに形成された導体パターンは、加熱後にそれぞれ導体パターンC11~導体パターンC17となり、各貫通孔に埋め込まれた金属は、加熱後にそれぞれビアV1~V6となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0092】
次に、磁性膜11~磁性膜17の前駆体である各磁性体シートを積層してコイル積層体を得る。磁性膜11~磁性膜17の前駆体である各磁性体シートは、当該各磁性体シートに形成されている導体パターンC11~C17の各々が隣接する導体パターンとビアV1~Va6を介して電気的に接続されるように積層される。
【0093】
次に、複数の磁性体シートを積層して上側カバー層18となる上側積層体を形成する。また、複数の磁性体シートを積層して下側カバー層19となる下側積層体を形成する。
【0094】
次に、下側積層体、コイル積層体、上側積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層し、この積層された各積層体をプレス機により熱圧着することで本体積層体が得られる。本体積層体は、下側積層体、コイル積層体、及び上側積層体を形成せずに、準備した磁性体シート全てを順番に積層して、この積層された磁性体シートを一括して熱圧着することにより形成しても良い。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0095】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を熱処理することで基体10が得られる。この熱処理により、金属磁性粒子の表面に酸化物相40が形成され、隣り合う金属磁性粒子30同士が酸化物相40を介して結合する。また、熱処理の間に基体10の表面に酸化膜が形成される。チップ積層体の熱処理は、600℃~900℃で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われる。
【0096】
次に、このチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22には、必要に応じて、半田バリア層及び半田濡れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。以上により、コイル部品1が得られる。
【0097】
コイル部品1は、圧縮成型法、薄膜プロセス法、スラリービルド法、又はこれら以外の公知の方法で作製されてもよい。
【0098】
上記の製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。コイル部品1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0099】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。
【0100】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0101】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0102】
1、101、201、301、401 コイル部品
10 基体
21、22、121、122 外部電極
25 コイル導体
25a、225a、325a、425a 周回部
25b1、25b2、125b1、125b2 引出部
Ax1 コイル軸
Ax2 長軸
Ax3 短軸
IC1、IC2、IC3、IC4 仮想円
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12a
図12b