(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011150
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】運転特性管理システム及び運転特性管理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230117BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20230117BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
G08G1/00 D
B60T7/02 D
B60T7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114814
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】神崎 武彦
【テーマコード(参考)】
3D124
5H181
【Fターム(参考)】
3D124AA33
3D124BB01
3D124CC16
3D124DD43
3D124DD51
5H181AA01
5H181FF10
5H181FF27
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】運転者自身が認識することの難しい運転特性を把握できる。
【解決手段】運転特性管理システムは、ブレーキペダルに設けられ、操作部に対して足裏から伝わる荷重を経時的に測定する荷重測定部と、ブレーキペダルが操作されている状態であるか否かを判定する操作判定部と、荷重測定部により測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得部とを備えている。ブレーキペダルが操作されている区間を本動作区間A1とし、本動作区間A1以外の区間を準備動作区間A2としたとき、特性情報は、準備動作区間A2における測定値に基づく情報である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏を用いて操作する操作部を備える乗物を運転する運転者の運転特性を管理する運転特性管理システムであって、
前記操作部を操作する足の足裏から伝わる荷重を経時的に測定する荷重測定部と、
前記操作部が操作されている状態であるか否かを判定する操作判定部と、
前記荷重測定部により測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得部とを備え、
前記操作部が操作されている区間を本動作区間とし、前記本動作区間以外の区間を準備動作区間としたとき、前記特性情報は、前記準備動作区間における前記測定値に基づく情報であることを特徴とする運転特性管理システム。
【請求項2】
前記操作部は、ブレーキペダルであり、
前記荷重測定部は、足裏から前記ブレーキペダルに伝わる荷重を経時的に測定する請求項1に記載の運転特性管理システム。
【請求項3】
測定された前記特性情報を蓄積して記憶する記憶部と、
蓄積された前記特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する特性評価部とを備える請求項1又は請求項2に記載の運転特性管理システム。
【請求項4】
前記操作部を操作することが想定される操作要因を検出する操作要因検出部を備え、
前記準備動作区間における前記操作要因を検出した時点から次の前記本動作区間までの区間を認知区間としたとき、前記特性情報は、前記認知区間における前記測定値の変化に基づく情報を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の運転特性管理システム。
【請求項5】
前記特性情報は、前記操作要因を検出した時点から前記測定値の立ち上がりの開始点までの時間に関する情報を含む請求項4に記載の運転特性管理システム。
【請求項6】
前記特性情報は、前記認知区間における前記測定値の大きさに関する情報を含む請求項4又は請求項5に記載の運転特性管理システム。
【請求項7】
運転者を識別する識別部と、
前記識別部により識別された運転者ごとに測定された前記特性情報を蓄積して記憶する記憶部とを備える請求項1~6のいずれか一項に記載の運転特性管理システム。
【請求項8】
足裏を用いて操作する操作部を備える車両を運転する運転者の運転特性を管理する運転特性管理方法であって、
前記操作部を操作する足の足裏から伝わる荷重を経時的に測定する測定工程と、
測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得工程とを有し、
前記操作部が操作されている区間を本動作区間とし、前記本動作区間以外の区間を準備動作区間としたとき、前記特性情報は、前記準備動作区間における前記測定値に基づく情報であることを特徴とする運転特性管理方法。
【請求項9】
蓄積された前記特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する特性評価工程を有する請求項8に記載の運転特性管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転特性管理システム及び運転特性管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転者による操作の準備動作を検出し、検出された検出情報を用いて車両を制御することにより、運転者の操作に対する車両の応答性の向上及び運転者に与える車両との一体感の向上を図る技術が知られている。例えば、特許文献1には、ブレーキペダルの上方に足を上げる等の運転者によるブレーキ操作の準備動作が検出されたときに車両の加速を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高齢の運転者による車両の誤操作や、誤操作に起因する車両事故が増加している。この原因の一つとして、加齢にともなって運転者の運転特性が低下しており、その運転特性の低下を運転者自身及び保護者などの他者が認識できていないことが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する運転特性管理システムは、足裏を用いて操作する操作部を備える乗物を運転する運転者の運転特性を管理する運転特性管理システムであって、前記操作部を操作する足の足裏から伝わる荷重を経時的に測定する荷重測定部と、前記操作部が操作されている状態であるか否かを判定する操作判定部と、前記荷重測定部により測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得部とを備え、前記操作部が操作されている区間を本動作区間とし、前記本動作区間以外の区間を準備動作区間としたとき、前記特性情報は、前記準備動作区間における前記測定値に基づく情報である。前記操作部は、例えば、ブレーキペダルである。この場合、前記荷重測定部は、足裏から前記ブレーキペダルに伝わる荷重を経時的に測定する。
【0006】
上記構成により取得される特性情報は、操作部が操作されていない準備動作区間に、操作部に伝わる荷重の測定値に基づく情報である。準備動作区間における運転者の動作の傾向は、運転者が意識せずに行っている場合が多く、運転者本人でも把握することが難しい。したがって、上記構成によれば、従来、特定することが難しかった運転特性を運転者本人又は保護者などの他者が把握するための有効な情報を得ることができる。
【0007】
上記運転特性管理システムにおいて、測定された前記特性情報を蓄積して記憶する記憶部と、蓄積された前記特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する特性評価部とを備えることが好ましい。上記構成によれば、特性評価部による評価結果を確認することにより、運転者本人又は保護者などの他者は、運転者の運転特性を容易に把握できる。
【0008】
上記運転特性管理システムにおいて、前記操作部を操作することが想定される操作要因を検出する操作要因検出部を備え、前記準備動作区間における前記操作要因を検出した時点から次の前記本動作区間までの区間を認知区間としたとき、前記特性情報は、前記認知区間における前記測定値の変化に基づく情報を含むことが好ましい。上記構成によれば、運転者の認知能力及び判断能力との関連性が高い特性情報を取得できる。
【0009】
上記運転特性管理システムにおいて、前記特性情報は、前記操作要因を検出した時点から前記測定値の立ち上がりの開始点までの時間に関する情報を含むことが好ましい。上記構成によれば、操作部を直ぐに操作できるようにするための準備動作を早い段階で行う傾向があるか否かを把握することに適した特性情報を取得できる。つまり、所謂、「かもしれない運転」ができているか否かを把握するための有効な情報を得ることができる。
【0010】
上記運転特性管理システムにおいて、前記特性情報は、前記認知区間における前記測定値の大きさに関する情報を含むことが好ましい。運転者による操作部の操作量は、余裕が少ない状況であるほど大きくなる傾向がある。そのため、上記測定値が大きいことは、余裕が少ない状況で操作している可能性があることを意味する。したがって、上記構成によれば、操作要因の認識の遅れ及び操作の必要性の判断の遅れとの関連性が高い特性情報を取得できる。
【0011】
上記運転特性管理システムにおいて、運転者を識別する識別部と、前記識別部により識別された運転者ごとに測定された前記特性情報を蓄積して記憶する記憶部とを備えることが好ましい。上記構成によれば、複数の運転者が使用する車両であっても、運転特性管理システムを適用することができる。
【0012】
上記課題を解決する運転特性管理方法は、足裏を用いて操作する操作部を備える車両を運転する運転者の運転特性を管理する運転特性管理方法であって、前記操作部を操作する足の足裏から伝わる荷重を経時的に測定する測定工程と、測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得工程とを有し、前記操作部が操作されている区間を本動作区間とし、前記本動作区間以外の区間を準備動作区間としたとき、前記特性情報は、前記準備動作区間における前記測定値に基づく情報である。
【0013】
上記運転特性管理方法において、蓄積された前記特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する特性評価工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転者自身が認識することの難しい運転特性を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
<運転特性管理システム>
本実施形態の運転特性管理システムは、足裏を用いて操作する操作部を備える乗物を運転する運転者の運転特性を管理するためのシステムである。上記乗物としては、例えば、車両、船舶、航空機が挙げられる。また、上記乗物は、その乗物の運転シミュレータであってもよい。以下では、上記乗物が車両であり、操作部がブレーキペダルである場合について説明する。
【0017】
図1に示すように、運転特性管理システム10は、荷重測定部11と、操作要因検出部12と、操作判定部13と、識別部14と、情報処理部15とを備えている。
図2に示すように、荷重測定部11は、車両の運転席の下部に配置されているブレーキペダルBPに取り付けられる圧力センサである。荷重測定部11は、ブレーキペダルBPに対して運転者の足裏から伝わる荷重を経時的に測定するとともに、測定された荷重に関する情報である測定情報を情報処理部15に出力する。なお、
図2において、ブレーキペダルBPの右側に位置するペダルは、アクセルペダルであり、ブレーキペダルBPの左側に位置する部位はフットレストである。
【0018】
荷重測定部11としては、圧電素子等を用いた公知の圧力センサを用いることができる。荷重測定部11は、ブレーキペダルBPにかかる荷重を高感度で検出できるものであることが好ましい。具体的には、ブレーキペダルBPに足を乗せている状態、かつブレーキペダルBPを踏み込んでいない状態における荷重を検出できることが好ましい。例えば、荷重の検出限界値(検出下限値)が0.05N以上0.10N以下であることが好ましい。こうした観点から、荷重測定部11は、誘電エラストマーを利用したエラストマー製の静電容量型センサであることが好ましい。上記誘電エラストマーとしては、例えば、架橋されたポリロタキサン、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーが挙げられる。
【0019】
操作要因検出部12は、車両の前方における運転者が視認可能な範囲にブレーキペダルBPを操作することが想定される要因(以下、操作要因と記載する。)を検出する。そして、操作要因検出部12は、操作要因を検出した時間及び検出した操作要因の種類に関する情報である要因情報を情報処理部15に出力する。
【0020】
操作要因としては、例えば、信号機の赤表示又は黄表示、走行中の道沿いにいる人、前方に停止している車両、前方を走行中の車両のブレーキランプの点灯、対向車線における右折待ちの車両、前方の交差点に側方から進入しようとする車両が挙げられる。操作要因検出部12としては、例えば、車両の前方を撮影する撮影装置と、撮影された画像又は映像に基づいて操作要因が存在するか否かを判定する判定部とを備える検出装置を用いることができる。上記判定部は、例えば、操作要因が存在する画像を学習用画像として機械学習により生成された学習モデルを用いた判定部である。
【0021】
操作判定部13は、操作部であるブレーキペダルBPが実質的に操作されている状態であるか否かを判定するとともに、その判定結果に関する情報である判定情報を情報処理部15に出力する。操作判定部13の判定に関して、ブレーキペダルBPが実質的に操作されている状態は、車両において、ブレーキペダルBPの操作に基づく制動が行われている状態を意味する。したがって、ブレーキペダルBPに足を置いているが、遊びの範囲内にでしかブレーキペダルBPが踏み込まれていない場合には、操作判定部13は、ブレーキペダルBPが操作されていないと判定する。
【0022】
識別部14は、車両の運転者を識別するとともに、識別した運転者を示す情報である識別情報を情報処理部15に出力する。識別部14としては、運転者を特定可能なものであれば特に限定されるものではなく、公知の識別装置を用いることができる。公知の識別装置としては、例えば、運転者の手入力に基づいて識別する識別装置、指紋、声紋、及び静脈等を用いた生体認証に基づいて識別する識別装置が挙げられる。
【0023】
図1に示すように、情報処理部15は、荷重測定部11、操作要因検出部12、操作判定部13、及び識別部14から出力された各種の情報を処理する。情報処理部15は、特性取得部21と、記憶部22と、特性評価部23とを備えている。情報処理部15は、CPU、記憶部22としての記憶装置、各種インターフェース回路等により構成された電子回路ユニットである。CPUは、記憶装置に保持された情報処理部15の制御用プログラムを実行することにより、特性取得部21及び特性評価部23として機能する。情報処理部15としては、例えば、車両ECU等の乗物に備えられる構成、運転者又はその保護者が所有する携帯端末を用いることができる。
【0024】
特性取得部21は、荷重測定部11、操作要因検出部12、操作判定部13、及び識別部14から出力された各種の情報に基づいて、運転者の運転特性を示す特性情報を取得する。以下、特性取得部21により特性情報を取得するプロセスについて説明する。
【0025】
図3及び
図4に示すように、荷重測定部11から出力された測定情報に基づいて、荷重の測定値の時間変化を表す波形データを作成する。
図3及び
図4は共に、車両の走行中に操作要因を認識した後、操作要因に対処するためにブレーキペダルBPを踏み込んだ場合の波形データの一例である。なお、
図3は、20代の若年者が運転者である場合の波形データであり、
図4は、60代の高齢者が運転者である場合の波形データである。
【0026】
次に、操作判定部13から出力された操作情報に基づいて、上記波形データが作成された区間を本動作区間A1と準備動作区間A2とに区分けする。本動作区間A1は、操作判定部13により、ブレーキペダルBPの操作に基づく制動が行われていると判定されている期間である。準備動作区間A2は、本動作区間A1以外の区間である。次に、操作要因検出部12から出力された要因情報に基づいて、準備動作区間A2から認知区間A3を抽出する。認知区間A3は、準備動作区間A2における操作要因を検出した時点である検出点t1から次の本動作区間A1の開始点t2までの区間である。
【0027】
次に、検出点t1を含む準備動作区間A2における上記波形データから特性情報として、以下に記載する第1~第3特性情報を取得する。
第1特性情報は、上記波形データにおいて、検出点t1の前に荷重が上昇する変化点P1が存在するか否かを示す情報である。変化点P1が存在することは、操作要因検出部12により操作要因が検出される前に、ブレーキペダルBPに足が乗せられていること、つまり、ブレーキペダルBPを直ぐに操作できるようにする準備動作を運転者が行っていたことを意味する。
【0028】
第2特性情報は、上記波形データにおいて、検出点t1から、検出点t1後の荷重が上昇する変化点P2までの時間taを示す情報である。上記時間taが短いことは、操作要因に対して余裕をもってブレーキペダルBPを操作できていることを意味する。上記時間taは、特許請求の範囲の記載における、操作要因を検出した時点から測定値の立ち上がりの開始点までの時間に相当する。
【0029】
第3特性情報は、上記波形データにおいて、認知区間A3における荷重の最大値F1を示す情報である。運転者によるブレーキペダルBPの踏み込みは、余裕が少ない状況であるほど強くなる傾向がある。上記最大値F1が大きいことは、ブレーキペダルBPを強く踏み込んでいること、つまり、余裕が少ない状況で操作している可能性があることを意味する。
【0030】
第1特徴量に関して、
図4に示す高齢者の波形データでは、検出点t1の前に荷重が上昇する変化点P1が存在していない。このことは、ブレーキペダルBPを直ぐに操作できるようにする準備動作を運転者が行っていないことを意味する。また、第2特徴量に関して、
図4に示す波形データでは、
図3に示す若年者の波形データと比較して、検出点t1から荷重が上昇する変化点P2までの時間が長くなっている。このことは、運転者が操作要因を認識するタイミングが遅い、操作要因を認識してからブレーキペダルBPを操作するまでに時間がかかっている、又はそれらの両方であることを意味する。
【0031】
記憶部22は、荷重測定部11から出力された測定情報、操作要因検出部12から出力された要因情報、操作判定部13から出力された操作情報、識別部14から出力された識別情報、特性取得部21により取得された特性情報、及び後述する評価用データを記憶するように構成されている。これらの各情報は、識別情報に基づいて運転者ごとに記憶部22に記憶される。また、記憶部22には、情報処理部15における各処理の実行を制御するための実行プログラムが記憶されている。
【0032】
特性評価部23は、記憶部22に蓄積されている特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する。特性評価部23は、記憶部22に蓄積されている同一の運転者の特性情報から評価用データを作成する。評価用データは、直近の過去の一定期間に取得された第1~第3特性情報に基づくパラメータ又はその集合である。上記パラメータは、例えば、第1~第3特性情報の各平均値や各標準偏差等の分析値である。なお、上記分析値は、操作要因検出部12から出力された操作要因ごとに作成することが好ましい。次に、特性評価部23は、今回作成した評価用データと前回作成した評価用データとを比較する。そして、今回作成した評価用データと前回作成した評価用データとの間に予め設定された範囲を超える変化があるか否か示す変化情報を作成する。
【0033】
図1に示すように、運転特性管理システム10は、表示部16を備えている。表示部16としては、例えば、車両に搭載されているナビゲーション装置、運転者又はその保護者が所有する携帯端末に備えられる液晶ディスプレイ等の公知の表示デバイスが挙げられる。運転特性管理システム10は、特定タイミングにおいて、特性評価部23により作成された評価用データ及び変化情報の一方又は両方を表示する。
【0034】
上記特定タイミングとしては、例えば、特性評価部23により評価用データ及び変化情報が作成された直後、運転者等の操作者による表示用の操作がなされたタイミングが挙げられる。表示部16に表示される変化情報としては、例えば、「運転特性に変化はありません。」、「運転特性が向上しています。」、「運転特性が低下している。」などの文字情報、及びグラフなどの図形情報が挙げられる。
【0035】
<運転特性管理方法>
次に、本実施形態の運転特性管理システムを用いた運転特性管理方法について、説明する。運転特性管理方法は、識別工程と、測定工程と、特性取得工程と、特性評価工程とを有する。
【0036】
(識別工程)
まず、識別工程として、これから車両を運転する運転者は、識別部14に応じた処理を実施する。識別部14は、上記処理に基づいて識別した運転者を示す識別情報を情報処理部15に出力する。
【0037】
(測定工程)
次に、測定工程として、荷重測定部11による荷重の測定、操作要因検出部12による操作要因の検出、及び操作判定部13によるブレーキペダルBPの操作状態の判定が行われる。測定工程において、荷重測定部11は、ブレーキペダルBPに対して運転者の足裏から伝わる荷重を所定時間ごと、例えば、5~30ミリ秒ごとに経時的に測定し、測定された荷重に関する測定情報を情報処理部15に出力する。操作要因検出部12は、所定時間ごと、例えば、10~25ミリ秒ごとに操作要因を検出し、検出された操作要因に関する操作要因情報を情報処理部15に出力する。操作判定部13は、所定時間ごと、例えば、10~25ミリ秒ごとにブレーキペダルBPが操作されている状態であるか否かを判定し、その判定結果に関する情報である判定情報を情報処理部15に出力する。情報処理部15に出力された測定情報、操作要因情報、及び判定情報は、識別工程にて得られた識別情報により特定される運転者に紐づけた状態として記憶部22に記憶及び蓄積される。
【0038】
(特性取得工程)
次に、特性取得工程として、特性取得部21は、測定工程にて得られた測定情報、操作要因情報、及び判定情報に基づいて運転者の運転特性を示す第1~第3特性情報を取得する処理を実行する。特性取得工程では、まず、特性取得部21は、上記の各情報に基づいて荷重の測定値の時間変化を表す波形データ(
図3及び
図4参照)を作成する。そして、波形データが作成された区間を本動作区間A1と準備動作区間A2とに区分けし、準備動作区間A2から認知区間A3を抽出する。
【0039】
次に、特性取得部21は、操作要因を検出した時点である検出点t1を含む準備動作区間A2において、検出点t1の前に荷重が上昇する変化点P1が存在するか否かを判定し、その結果を第1特性情報として記憶部22に記憶させる。また、検出点t1から、検出点t1後の荷重が上昇する変化点P2までの時間taを算出し、その結果を第2特性情報として記憶部22に記憶させる。さらに、認知区間A3における荷重の最大値F1を抽出し、その結果を第3特性情報として記憶部22に記憶させる。取得された第1~第3特性情報は、識別工程にて得られた識別情報により特定される運転者に紐づけた状態として記憶部22に記憶及び蓄積される。特性取得工程を実行するタイミングは特に限定されない。特性取得工程を実行するタイミングとしては、例えば、操作判定部13の判定結果が、ブレーキペダルBPが操作されていない状態から操作されている状態に切り替わったタイミングが挙げられる。
【0040】
(特性評価工程)
次に、特性評価工程として、特性評価部23は、記憶部22に蓄積されている特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する処理を実行する。当該処理は、所定時間ごと、例えば、3~6ヶ月ごとに実行される、又は運転者などの操作者による所定の操作がなされた場合に実行される。
【0041】
特性評価部23は、記憶部22に蓄積されている特性情報に基づいて評価用データを作成し、識別工程にて得られた識別情報により特定される運転者に紐づけた状態として記憶部22に記憶させる。次いで、特性評価部23は、今回作成した評価用データと、記憶部22に記憶されている同一の運転者に関する前回作成した評価用データとの比較に基づいて変化情報を作成する。特性評価部23により作成された評価用データ及び変化情報は、表示部16に表示される。運転者又はその保護者は、表示部16に表示された評価用データ及び変化情報を確認することにより、運転者の運転特性の一種である、ブレーキペダルBPの操作の傾向の変化を定量的に把握できる。
【0042】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)運転特性管理システムは、操作部であるブレーキペダルBPに設けられ、操作部に対して足裏から伝わる荷重を経時的に測定する荷重測定部11と、ブレーキペダルBPが操作されている状態であるか否かを判定する操作判定部13と、荷重測定部11により測定された荷重の測定値に基づいて運転者の運転特性を示す特性情報を取得する特性取得部21とを備えている。ブレーキペダルBPが操作されている区間を本動作区間A1とし、本動作区間A1以外の区間を準備動作区間A2としたとき、特性情報は、準備動作区間A2における測定値に基づく情報である。
【0043】
上記構成により取得される特性情報は、ブレーキペダルBPの操作に基づく制動が行われていない準備動作区間A2におけるブレーキペダルBPに対する荷重の測定値に基づく情報である。準備動作区間A2における運転者の動作の傾向は、運転者が意識せずに行っている場合が多く、運転者本人でも把握することが難しい。そのため、特性情報は、従来、特定することが難しかった運転者の運転特性、特に、認知能力及び判断能力に基づく運転特性を示す情報になる。したがって、上記構成によれば、従来、特定することが難しかった運転特性を運転者本人又は保護者などの他者が把握するための有効な情報を得ることができる。
【0044】
(2)測定された特性情報を蓄積して記憶する記憶部22と、蓄積された特性情報に基づいて運転者の運転特性を評価する特性評価部23とを備える。上記構成によれば、特性評価部23による評価結果を確認することにより、運転者本人又は保護者などの他者は、運転者の運転特性を容易に把握できる。
【0045】
(3)特性評価部23は、同一の運転者の過去の評価用データとの比較に基づいて運転者の運転特性を評価する。上記構成によれば、加齢等による運転特性の低下を容易に把握できる。また、ブレーキペダルBP等の車両の操作部を操作する強さ及び操作するタイミングには、運転者の個人差がある。上記構成によれば、上記個人差が運転特性の評価に及ぼす影響を低減できる。
【0046】
(4)ブレーキペダルBPを操作することが想定される操作要因を検出する操作要因検出部12を備えている。特性情報は、準備動作区間A2における操作要因を検出した時点である検出点t1から次の本動作区間A1までの区間である認知区間A3の測定値の変化に基づく情報である。上記構成によれば、運転者の認知能力及び判断能力との関連性が高い特性情報を取得できる。
【0047】
(5)特性情報は、検出点t1の前に荷重が上昇する変化点P1が存在するか否かを示す第1特性情報を含む。上記構成によれば、ブレーキペダルBPを直ぐに操作できるようにするための準備動作を早い段階で行う傾向があるか否かを把握することに適した特性情報を取得できる。つまり、所謂、「かもしれない運転」ができているか否かを把握するための有効な情報を得ることができる。
【0048】
(6)特性情報は、操作要因を検出した検出点t1から検出点t1の後の荷重が上昇する変化点P2までの時間taを示す第2特性情報を含む。
上記構成によれば、操作要因の認識及び操作の必要性の判断を早期に行う認知能力及び判断能力と、実際にブレーキペダルBPを踏み込む動作に移る速さに関する身体能力との総合した運転特性との関連性が高い特性情報を取得できる。
【0049】
(7)特性情報は、認知区間A3における荷重の最大値F1を示す第3特性情報を含む。運転者によるブレーキペダルBPの踏み込みは、余裕が少ない状況であるほど強くなる傾向がある。そのため、上記最大値F1が大きいことは、余裕が少ない状況で操作している可能性があることを意味する。したがって、上記構成によれば、操作要因の認識の遅れ及び操作の必要性の判断の遅れとの関連性が高い特性情報を取得できる。
【0050】
(8)運転者を識別する識別部14と、識別部14により識別された運転者ごとに測定された特性情報を蓄積して記憶する記憶部22とを備えている。上記構成によれば、複数の運転者が使用する車両であっても、本実施形態の運転特性管理システムを適用することができる。
【0051】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、操作部がブレーキペダルBPである場合について説明したが、操作部はブレーキペダルBPに限定されない。ブレーキペダルBP以外の操作部としては、例えば、アクセルペダル、クラッチペダルが挙げられる。また、操作判定部13は、アクセルペダル、クラッチペダル等の操作部が操作されている状態であるか否かを判定する。
【0052】
・足裏から伝わる荷重を経時的に測定する部位は、操作部に限定されるものではなく、操作部を操作する足裏が置かれる範囲内の部位であればよい。上記部位としては、例えば、
図2に示すように、運転席の床又はフロアマットにおける操作部を操作する足の踵が置かれる部分Aが挙げられる。また、操作部等の車両側に荷重測定部11を配置する構成に代えて、運転者の靴底又は靴内に荷重測定部11を配置してもよい。
【0053】
・特性取得部21により取得される特性情報は、第1~第3特性情報に限定されない。例えば、第1~第3特性情報のうちのいずれか一つ又はいずれか二つであってもよいし、第1~第3特性情報以外のその他の特性情報を含むものであってもよい。
【0054】
その他の特性情報としては、例えば、
図2に示すように、運転席の床又はフロアマットに設定される上記部分A内における足の踵が置かれる範囲の広さ、足の踵から運転席の床又はフロアマットに伝わる荷重の大きさが挙げられる。足の踵を床に付けた状態で足の角度を変化させることにより、ブレーキペダルBP及びアクセルペダルの踏み替え行う運転者は一定の割合で存在する。このような運転者は、加齢による足腰の衰えにより、操作部を操作する足の踵が置かれる位置、及び足の踵から運転席の床又はフロアマットに伝わる荷重の大きさが安定せず、前後左右にぶれやすくなる。上記特性情報は、こうした運転者の衰えを把握するための有効な情報になる。
【0055】
・第3特性情報は、認知区間A3における荷重の最大値F1に限定されるものではなく、認知区間A3における荷重の測定値の大きさに関する情報であればよい。例えば、認知区間A3における荷重の上昇幅を第3特性情報としてもよい。
【0056】
・特性評価部23による評価方法は、同一の運転者の過去の評価用データとの比較に基づく評価に限定されない。例えば、予め設定された基準データとの比較に基づく評価であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
A1…動作区間
A2…準備動作区間
A3…認知区間
BP…ブレーキペダル
10…運転特性管理システム