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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111519
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】外気処理機
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20230803BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20230803BHJP
   F24F 1/10 20110101ALI20230803BHJP
   F24F 1/16 20110101ALI20230803BHJP
   F24F 1/48 20110101ALI20230803BHJP
【FI】
F24F5/00 L
F24F3/00 A
F24F1/10
F24F1/16
F24F1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013401
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】390001568
【氏名又は名称】昭和鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】久米 光
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA02
3L054BA05
3L054BA06
3L054BA10
3L054BB01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、還気からの熱回収によりエネルギー消費効率を向上させた外気処理機を提供すること。
【解決手段】対象室R内に外気を処理して温湿度を調整した空気を供給する外気処理機1は、第1熱交換器21、第2熱交換器22、第3熱交換器23および圧縮機26を冷媒配管25で接続したヒートポンプ回路20と、第1熱交換器21、第2熱交換器22が配置され、第1熱交換器21および第2熱交換器22のそれぞれを通過させた空気を排気する排気ファン31を有する排気送風部11と、第3熱交換器23が配置され、第3熱交換器を通過させた空気を対象空間に給気する給気ファン32を有する給気送風部12と、排気送風部11に接続され、外気OAを取込む外気取込口36と室内からの還気RAを取込む還気取込口37とが設けられた空気混合部13を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間内に外気を処理して温湿度を調整した空気を供給する外気処理機であって、
第1熱交換器、第2熱交換器、第3熱交換器および圧縮機を冷媒配管で接続したヒートポンプ回路と、
前記第1熱交換器、前記第2熱交換器が配置され、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のそれぞれを通過させた空気を排気する排気ファンを有する排気送風部と、
前記第3熱交換器が配置され、前記第3熱交換器を通過させた空気を対象空間に給気する給気ファンを有する給気送風部と、
を備え、
前記排気送風部に接続され、外気を取込む外気取込口と室内からの還気を取込む還気取込口とが設けられた空気混合部をさらに備えることを特徴とする外気処理機。
【請求項2】
前記空気混合部は、前記排気送風部において互いに離間して対向配置された前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の対向面と逆側の面にそれぞれ隣接して設けられる、
請求項1に記載の外気処理機。
【請求項3】
一端が対象空間の還気排出口に接続され、他端が前記還気取込口に接続された還気ダクトを備え、当該還気ダクトに還気ファンが配置されている、請求項1または請求項2に記載の外気処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機と併せて使用される室内を換気するための外気処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院、老人福祉施設、大型のビル等の大型施設や工場等の生産プロセス用として商品の品質を維持するための空調においては、換気の為の室内からの空気の排気量が外部からの給気量よりも大きいと、室内が負圧となり隙間から汚れた空気が侵入し、室内の空気環境が悪化する恐れがある。このため、大量の換気・排気が必要な大型施設においては、室内への給気量と室内から排気量を調整して施設の用途に応じて室内を正圧や負圧に保つため、室内の温湿度を調整する空調機以外に、新鮮な外気を処理して室内に供給する外気処理機が併用されている。
【0003】
外気処理機は、例えば、夏季であれば外気より低温の温度の空気を室内に給気し、冬季であれば外気より高温の温度の空気を室内に給気することで、空調された室内温度との差がなくなり室内の給気口付近が不快にならないようにする役割があり、更に空調機に余計な負担をかけない機能を備えている。また、近年では、省エネのため電気エネルギー以上の大きな熱エネルギーが得られるヒートポンプの技術を採用した外気処理機が提供されている。
【0004】
このような外気処理機(外気処理空調機)としては、ケーシング内に、第1と第2の蒸発器と空調用空気を被空調空間に給気する給気ファンが設けられた給気送風路と、排気ファンを隔てて少なくとも一対の凝縮器が空気出口を対向させて設けられた外気送風路と、を備えた空冷ヒートポンプ式外気処理空調機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上述のような外気処理機では、凝縮器と蒸発器とを内部に冷媒が流れる伝熱管を有する熱交換器によって構成し、冬季運転時には排気送風路(外気送風路)に設けられた熱交換器が蒸発器として機能し、給気送風路に設けられた熱交換器が凝縮器として機能する。また、夏季運転時には、排気送風路に設けられた熱交換器が凝縮器として機能し、給気送風路に設けられた熱交換器が蒸発器として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4016346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の外気処理機は、排気送風路に設けられた熱交換器に外気のみを通過させる構成であり、室内からの還気を取り入れる熱回収が行われていない。このため、外気温と室内温度との差が大きい場合には、運転負荷が増大していた。また、特許文献1のような外気処理機は、還気風量が少ない施設の外気処理用として採用される場合が多く、単純に、排気送風路に導入する空気を室内からの還気に置き換えると、例えば、風量の不足によりヒートポンプでの熱回収が冷凍サイクルとして成り立たないという問題が生じる。すなわち、室内圧力を所定の状態に保ちつつ室内の換気を行う外気処理機としての性能を消失しかねない。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成でありながら、還気からの熱回収によりエネルギー消費効率を向上させた外気処理機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、対象空間内に外気を処理して温湿度を調整した空気を供給する外気処理機であって、第1熱交換器、第2熱交換器、第3熱交換器および圧縮機を冷媒配管で接続したヒートポンプ回路と、前記第1熱交換器、前記第2熱交換器が配置され、前記第1熱交換器および前記第2熱交換器のそれぞれを通過させた空気を排気する排気ファンを有する排気送風部と、前記第3熱交換器が配置され、前記第3熱交換器を通過させた空気を対象空間に給気する給気ファンを有する給気送風部と、を備え、前記排気送風部に接続され、外気を取込む外気取込口と室内からの還気を取込む還気取込口とが設けられた空気混合部をさらに備えることを特徴とする外気処理機とした。
【0010】
また、本発明の一実施形態に係る外気処理機は、前記空気混合部は、前記排気送風部において互いに離間して対向配置された前記第1熱交換器および前記第2熱交換器の対向面と逆側の面にそれぞれ隣接して設けられる。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る外気処理機は、一端が対象空間の還気排出口に接続され、他端が前記還気取込口に接続された還気ダクトを備え、当該還気ダクトに還気ファンが配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外気処理機は、空気混合部を設けて空調負荷の少ない還気に外気を自然混合させ、還気と外気との混合空気が排気送風部に配置した熱交換器を通過する構成としたことから、熱回収を行うヒートポンプのCOP(Coefficient of Performance:成績係数)を向上させることができる。すなわち、夏季は冷たい還気を取込むことで排気送風部に配置された熱交換器による凝縮温度を下げることができ、冬気は暖かい還気を取込み排気送風部に配置された熱交換器による蒸発温度を上げることができることから、冷房COP、暖房COPを向上させることができる。したがって、エネルギー効率が良く、年間を通じて安定した温湿度の外気を室内に供給することができる外気処理機を提供することができる。
【0013】
本発明の外気処理機は、排気送風部に配置された熱交換器に通過させる外気に還気を混合させることで、特に冬季の外気処理機の熱交換器のデフロストを抑制することができる。外気処理機内の蒸発器への着霜を抑制することができるので、デフロスト(除霜)による能力低下や室内の冷風感等の不快を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の外気処理機の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態の外気処理機の構成および外気処理機が対象室に接続されている状態を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態の外気処理機における夏季冷房運転時のヒートポンプの冷凍サイクルを説明する図である。
図4】本発明の一実施形態の外気処理機の定格運転時における還気回収割合毎の消費電力、圧縮機COPの変化シミュレーション結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、室内に温湿度を調整した外気を供給する外気処理機であって、ヒートポンプ回路と、室内からの還気と外気とを混合して排気送風部に配置した熱交換器に供給する構成を備えたことを特徴とする外気処理機に関する。
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る外気処理機1について、図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態の外気処理機1の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態の外気処理機1の構成および外気処理機1が対象室Rに接続されている状態を示す模式図である。なお、図1(a)は、外気処理機1の本体部10の外観構成を示し、図1(b)は、本体部10にさらに還気ダクト38を取り付けた状態を示している。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態の外気処理機1の本体部10は、金属製(例えば、鉄、アルミ)の上下の箱型の上段ケーシングKH、下段ケーシングKLから成り、内部に各種機器をユニット化して構成されている。上段ケーシングKHの上部壁には排気ファン31が設けられ、左右壁には開口部34が設けられている。上段ケーシングKH内の左右開口部34近傍には、当該開口部34を覆うように第1熱交換器21および第2熱交換器22がそれぞれ配置されている。上段ケーシングKHは、第1熱交換器21および第2熱交換器22が配置され、排気ファン31を備えた排気送風部11を構成する。
【0018】
第1熱交換器21および第2熱交換器22は、排気送風部11において、排気ファン31を挟んで互いに左右に離間して対向配置されている。第1熱交換器21および第2熱交換器22は、夏季冷房運転時に凝縮器として機能するものであり、内部の高圧・高温の冷媒ガスを外気OA等により冷却し、凝縮液化させる。ここで凝縮液化された冷媒ガスは、冷媒配管25を経由して、後述の第3熱交換器23に循環される。
【0019】
上段ケーシングKHの左右には、左右開口部34を覆うフード35が設けられている。フード35は、排気送風部11において互いに離間して対向配置された第1熱交換器21および第2熱交換器22の対向面と逆側の面に隣接して設けられている。フード35の下方は、外気OAを取込むための外気取込口36となっている。フード35の側面部には、還気RAを取込むための還気取込口37が設けられている。還気取込口37には、図1(b)に示すように対象室Rの換気排出口からフード35に還気RAを取り込むための還気ダクト38が接続されている。還気取込口37には、還気ダクト38への虫等の侵入を防止するための防虫金網(図示せず)が配設されている。なお、還気ダクト38を接続しない場合には、図1(a)に示すように、還気取込口37にはカバーが取り付けられる。左右の還気取込口37の開口面積は、左右の風量を均一化させる観点から同じ大きさとしている。左右の還気取込口37からの風量を均一化させることで、第1熱交換器21および第2熱交換器22への熱負荷が均一化され、より省エネで安定した冷凍サイクルの運転継続が可能となる。還気取込口37は左右のフード35において、装置の前側を向く側面に設けてもよく、装置の後ろ側を向く側面に設けてもよい。還気ダクト38の延設方向に応じて、還気取込口37の形成位置は変更される。
【0020】
還気ダクト38は、金属製(例えば、鉄、アルミ)の角形管であり、一端が対象室Rの換気排出口に接続される主管38aと、主管38aから分岐され端部が左右のフード35の還気取込口37のそれぞれに接続される枝管38b,38cから成る。還気ダクト38の一端が対象室Rの換気排出口に接続され、他端が還気取込口37に接続されることにより、還気RAがフード35内に供給される。
【0021】
還気ダクト38には、対象室Rから還気取込口37へ還気RAを送風するための還気ファン33が設けられている。還気ダクト38および還気取込口37を介してフード35に供給された還気RAは、フード35内に取り込まれた外気OAと混和される。すなわち、フード35内は、取り込んだ外気OAと還気RAとを混和する空気混合部13である。外気OAと還気RAとの混合空気は、上段ケーシングKHの左右開口部34から第1熱交換器21および第2熱交換器22のそれぞれに送風される。
【0022】
なお、本実施形態の外気処理機1が外気を処理して温湿度を調節した空気(給気SA)を供給する対象空間としての対象室Rとしては、病院、老人福祉施設、ビル等の大型施設や工場等の生産プロセス用施設等が例示できる。また、対象室Rには、還気ダクト38が取り付けられる還気排出口、外気処理機1からの給気SAを取込む給気取込口、室内換気を補助する局所排気ファン等が設けられている。還気ダクト38を局所排気ファンによる排気口に接続することで、捨てられている排気を還気として利用することも可能である。
【0023】
下段ケーシングKLは、上段ケーシングKHと同様に左右開口部44を有して構成されている。下段ケーシングKLの右側には右開口部44aを覆うフード45が設けられている。フード45の下方は、外気OAを取込むための外気取込口46となっている。外気取込口46から取り込まれた外気OAは、右開口部44aを通過して下段ケーシングKL内に供給される。下段ケーシングKLの左開口部44bは、取り入れた外気OAの温湿度を調整して給気SAとして対象室Rの室内に供給する給気口である。左開口部44bには、対象室Rに給気SAを送風するための給気ダクト(図示せず)が接続される。
【0024】
下段ケーシングKL内の右開口部44a近傍には、第3熱交換器23が配設されている。第3熱交換器23は、夏季冷房運転時に蒸発器として機能するものであり、内部を循環する凝縮液化された冷媒の蒸発潜熱を利用して、図2に示す下段ケーシングKLの右から左に流通する外気OAを熱交換する。このため、第3熱交換器23は、冷媒配管25により凝縮器として機能する第1熱交換器21および第2熱交換器22と連結され、凝縮液化された冷媒が第1熱交換器21および第2熱交換器22から第3熱交換器23に供給される構成としている。
【0025】
第1熱交換器21、第2熱交換器22および第3熱交換器23を接続する冷媒配管25には、圧縮機26と膨張弁27が介装されている。圧縮機26は、蒸発器で蒸発された冷媒を圧縮し昇圧するものである。また、膨張弁27は、凝縮器で凝縮された冷媒の圧力を下げ冷媒温度を下げるものである。本実施形態においては、圧縮機26は、下段ケーシングKLに配置されている。
【0026】
上段ケーシングKHの左右開口部34近傍にそれぞれ設置された第1熱交換器21および第2熱交換器22と、下段ケーシングKLに設置された第3熱交換器23、第1熱交換器21、第2熱交換器22および第3熱交換器23の間を連結する冷媒配管25、冷媒配管25に介装された圧縮機26および膨張弁27により、本実施形態におけるヒートポンプ回路20が構成されている。なお、ヒートポンプ回路を構成する第1熱交換器21、第2熱交換器22および第3熱交換器23は、季節に応じて蒸発器または凝縮器の機能を発揮するように動作する。つまり、冬季の暖房運転時には、第1熱交換器21、第2熱交換器22は蒸発器として機能し、第3熱交換器23は、凝縮器として機能する。
【0027】
上述した構成の外気処理機1によれば、夏季においては、上段ケーシングKHに配置された第1熱交換器21および第2熱交換器22を凝縮器として機能させ、高温の外気OA(例えば、35℃)および空調により外気OAよりも低い温度(例えば、25℃)に調整された対象室Rからの還気RAが混合された空気を利用して凝縮器から外部に放熱させる。一方で、下段ケーシングKLに配置された第3熱交換器23を蒸発器として機能させることにより、高温の外気OAが冷却され対象室Rに給気SAとして供給される。また、冬季においては、上段ケーシングKHに配置された第1熱交換器21および第2熱交換器22を蒸発器として機能させ、低温の外気OA(例えば、5℃)および空調により外気OAよりも高い温度(例えば、20℃)に調整された対象室Rからの還気RAが混合された空気を利用して蒸発器により熱量を吸収する。一方で、下段ケーシングKLに配置された第3熱交換器23を凝縮器として機能させることにより、低温の外気OAが加熱され対象室Rに給気SAとして供給される。
【0028】
図3を参照して、夏季の外気処理機1におけるヒートポンプの冷凍サイクルについて説明する。図3は、外気処理機1の夏季冷房運転時におけるヒートポンプの冷凍サイクルを説明する図である。図3においては、夏季のヒートポンプの冷凍サイクルを表したp-h線図を示し、(a)は、還気RAを混合せずに外気OAのみを第1熱交換器21および第2熱交換器22に供給した場合(以下、熱回収なしの比較例と呼称する)、(b)は、還気RAと外気OAとを混合して第1熱交換器21および第2熱交換器22に供給した場合(以下、熱回収ありの実施例と呼称する)をそれぞれ示している。
【0029】
p-h線図は、縦軸に圧力p、横軸に比エンタルピーhをとり、冷媒の気相と液相の境界である飽和曲線を示したものであり、図3においては、そのp-h線図上に冷凍サイクルを太線で描いている。図中の点1-2間は圧縮機26での冷媒の状態変化、点2-3間は凝縮器での冷媒の状態変化、点3-4間は膨張弁での冷媒の状態変化、点4-1間は蒸発器での冷媒の状態変化をそれぞれ示している。すなわち、冷凍サイクルでは、冷媒は点1-2-3-4-1の順に状態変化を繰り返している。なお、図3(b)においては、熱回収なしの比較例の冷凍サイクルを破線で示し、熱回収ありの実施例を実線で示している。
【0030】
図3に示す冷凍サイクルにおいて、圧縮機26の冷媒の状態変化に着目すると、点1-2間の比エンタルピーhの差から読み取られる圧縮機26の動力は、熱回収なしの比較例の圧縮機動力Aよりも、熱回収ありの実施例の圧縮機動力Bのほうが小さくなっている。すなわち、還気RAを外気に混合させた熱回収により圧縮機26の動力を下げ、ヒートポンプのCOPが向上したことが理解される。
【0031】
さらに、図4を参照して、還気RA回収割合とCOPの向上との関係について説明する。図4は、外気処理機1の定格運転時における還気RA回収割合毎の消費電力、圧縮機COPの変化シミュレーション結果を説明する図である。
【0032】
シミュレーション条件を表1に示す。なお、このシミュレーションでは、COPの計算を、給気ファン32、排気ファン31の消費電力を含まない圧縮機26単体の消費電力の値を使用して行った。
【0033】
【表1】
【0034】
図4中紙面右側(a)は、夏季の冷房運転の場合を示し、紙面左側(b)は、冬季の暖房運転の場合を示す。図中の各グラフにおいて、横軸は熱回収風量比(RA/SA)(%)である。熱回収風量比0%は排気送風部11に供給される還気RAが0CMH(cubic meter per hour)、熱回収風量比100%は、排気送風部11に供給される還気RAが10000CMHの場合を指す。また、図中の上段のグラフの縦軸は圧縮機26の消費電力(kW)、中段のグラフの縦軸は、第1熱交換器21および第2熱交換器22を、凝縮器または蒸発器として機能させたときの凝縮温度(℃)、蒸発温度(℃)である。さらに、下段のグラフの縦軸は、夏季の冷房COP、冬季の暖房COPである。
【0035】
圧縮機26の消費電力(kW)は、下記式(1)により求められる。また、冷房COPは、下記式(2)により求められ、暖房COPは、下記式(3)により求められる。
消費電力(kW)=入力電力(kW)・・・(1)
冷房COP=冷房能力(kW)/冷房消費電力(kW)・・・(2)
暖房COP=暖房能力(kW)/暖房消費電力(kW)・・・(3)
【0036】
図4の上段に示すように、圧縮機26への入力電力は、還気RAの割合が増えるほど低下している。図4の中段に示すように、夏季の凝縮温度は還気RAの割合が増えるほど下がっており、冬季の蒸発温度は還気RAの割合が増えるほど上がっている。また、図4の下段に示すように、冷却COPおよび加熱COPは、還気RAの割合が増えるほど上がっている。以上のことから、本実施形態に係る外気処理機1では、還気RAからの熱回収により冷房効率および暖房効率のどちらも向上することが理解される。
【0037】
また、熱回収風量比(RA/SA)40%の場合について見ると、熱回収風量比(RA/SA)0%と比較して、圧縮機26への入力電力は、夏季の冷房運転時で約3~4%減少し、冬季の暖房運転時で約4~5%減少している。夏季の凝縮温度は約1℃低下し、冬季の蒸発温度は約1.8℃上昇している。さらに、夏季の冷却COPは約0.1上がり、冬季の暖房COPは約0.3上がっている。排気送風部11に供給する全送風量の40%を外気OAから還気RAに置き換えるだけでも、省エネルギー効果が得られることが示された。
【0038】
以上のような本実施形態に係る外気処理機1は、以下の構成を備えていると言える。すなわち、対象空間(対象室R)内に外気を処理して温湿度を調整した空気を供給する外気処理機1であって、第1熱交換器21、第2熱交換器22、第3熱交換器23および圧縮機26を冷媒配管25で接続したヒートポンプ回路20と、第1熱交換器21、第2熱交換器22が配置され、第1熱交換器21および第2熱交換器22のそれぞれを通過させた空気を排気する排気ファン31を有する排気送風部11と、第3熱交換器23が配置され、第3熱交換器を通過させた空気を対象空間に給気する給気ファン32を有する給気送風部12と、を備え、排気送風部11に接続され、外気OAを取込む外気取込口36と室内からの還気RAを取込む還気取込口37とが設けられた空気混合部13をさらに備えるものである。
【0039】
本実施形態における外気処理機1は、還気RAの風量が少ない場合でも、空気混合部13において外気OAと混合した空気を排気送風部11に供給できることから、風量不足を生じることがなく、外気処理機1を従来よりも少ないエネルギーで稼働させることができる。すなわち、省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態における外気処理機1は、還気RAの供給が停止しても、外気OAを取り込むことができることから、還気RAの排出が少ない施設でも、ヒートポンプを停止させることなく外気処理を行うことができる。
【0041】
また、冬季においては、外気処理機1が取込む外気OAに還気RAが混合されることで、外気温よりも高い温度の空気が第1熱交換器21および第2熱交換器22を通過する。これにより、蒸発温度が上昇し加熱能力不足を補うことで、蒸発器としてて機能する第1熱交換器21および第2熱交換器22は着霜しにくい状態になりデフロスト(除霜)が抑制される。このように、デフロスト発生頻度が減少することにより、対象室Rでのデフロスト中の冷風感を低減することができ、冬季においても外気処理機1を効率的に可動させることが可能となる。
【0042】
以上、本発明における実施形態の一例を説明してきたが、本発明の具体的な構成は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0043】
図4に示したように、還気RAが多いほど省エネルギー化は向上するが、外気処理機を設置する施設の大きさや使用目的等の性質によって、還気RAの排出量は異なる。還気取込口37の大きさ(最大開口面積)を静圧0Paとなる大きさに調整し、還気取込口37の開口面積を変更する絞り機構(例えば、風量調整用のスリット)を還気取込口37に設けることで、外気処理機1を設置する施設に応じて、還気RAの取り込み量を任意の風量に変更させるようにしてもよい。また、調整用のダンパを還気ダクト38に配置して還気RAの風量を調整するようにしてもよい。
【0044】
また、例えば、蒸発器として機能する第3熱交換器23の下流側に、中間期(春・秋)の冷房除湿時の冷え過ぎを防ぐための再熱器を配置し、蒸発器で冷却除湿した後に再熱器で加熱した空気を給気SAとして対象空間に供給するようにしてもよい。さらに、凝縮器として機能する第3熱交換器23の下流側に、暖房時の乾燥を防ぐための気化式加湿器を追加して設け、気化式加湿器で加湿した空気を給気SAとして対象空間に供給するようにしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、還気ファン33を設けたが、排気ファン31により還気RAの送風量を確保できる場合には、還気ファン33を省略してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 外気処理機
10 本体部
11 排気送風部
12 給気送風部
13 空気混合部
20 ヒートポンプ回路
21 第1熱交換器
22 第2熱交換器
23 第3熱交換器
25 冷媒配管
26 圧縮機
27 膨張弁
31 排気ファン
32 給気ファン
33 還気ファン
34 開口部
35 フード
36 外気取込口
37 還気取込口
38 還気ダクト
44 開口部
45 フード
46 外気取込口
KH 上段ケーシング
KL 下段ケーシング
OA 外気
SA 給気
RA 還気
EA 排気
R 対象室
図1
図2
図3
図4