(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111524
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】木材から機能成分含有液を抽出する方法
(51)【国際特許分類】
C11B 9/02 20060101AFI20230803BHJP
B27K 5/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C11B9/02
B27K5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013409
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】506223750
【氏名又は名称】有限会社森商事
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】森 信行
【テーマコード(参考)】
2B230
4H059
【Fターム(参考)】
2B230AA01
2B230AA04
2B230BA01
2B230EA30
4H059BC12
4H059BC23
4H059CA11
4H059CA19
4H059CA87
4H059DA09
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】木材から機能成分を抽出する方法であって、植物の機能成分を含んだ機能成分含有液を抽出する際に抽出対象とする木材に含まれる機能成分を損なわずに抽出するすると共に、容易に機能成分を抽出できる木材から機能成分含有液を抽出する方法を提供する。
【解決手段】木材の周囲を真空状態にする真空工程と、真空状態から取り出した木材を密閉容器中に収納する収納工程と、木材を収納した密閉容器をマイクロ波による加熱手段を用いて加熱し木材の内水分を気化させる加熱工程と、加熱工程により加熱された密閉容器を冷却させ密閉容器中の内水分を水滴に変化させる冷却工程と、からなることを特徴とすることにより課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に含まれる機能成分を含有した抽出液を木材から得る方法であって、
前記木材の周囲を真空状態にする真空工程と、
前記真空状態から取り出した前記木材を密閉容器中に収納する収納工程と、
前記木材を収納した密閉容器をマイクロ波による加熱手段を用いて加熱し前記木材の内水分を気化させる加熱工程と、
前記加熱工程により加熱された前記密閉容器を冷却させ前記密閉容器中の内水分を水滴に変化させる冷却工程と、
からなることを特徴とする木材から機能成分含有液を抽出する方法。
【請求項2】
前記真空工程は、
前記木材を包装部材中に収納し前記包装部材の内部空気を抜く真空包装により行うことを特徴とする請求項1に記載された木材から機能成分含有液を抽出する方法。
【請求項3】
前記加熱工程と前記冷却工程とを複数回交互に繰り返し行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された木材から機能成分含有液を抽出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が保持する機能成分を木材から得る機能成分含有液を抽出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、精油等の植物の成分抽出方法としては、原料となる植物を蒸気により加熱し発生した蒸気を冷却させる蒸気蒸留法や果実を直接搾ることで得る圧搾法や花に含まれるオイルを動物の油に吸着させ得たポマードをアルコールに溶かし出すアンフルラージュ法等の方法で抽出することができる。
【0003】
上述した抽出方法のうち圧搾法とアンフルラージュ法とは、純度の高い精油を抽出できるものである。
しかしながら、圧搾法は抽出対象が柑橘等の果実であり、アンフルラージュ法は植物の花弁が抽出の対象である。
そのため、ヒノキやスギ等の樹木には、高い純度で成分を抽出する上述の方法では抽出することができない。
【0004】
そこで、ヒノキやスギ等の樹木から精油等の成分を抽出する方法として蒸気蒸留法が広く行われている。
しかしながら、この蒸気蒸留法では、抽出対象となる樹木の枝葉を高温下に晒すことで、構成成分が破壊されたり香りが変質してしまったり、原料の木材が持つ成分の一部が損なわれる虞があった。
さらに、水溶性の構成成分は、精油と同時に得られる芳香蒸留水に溶けた状態で抽出可能としているが、芳香蒸留水の大部分は加熱蒸気が水に変化したものであり場合によっては成分が希釈され過ぎる虞があった。
【0005】
また、樹木の成分抽出の対象の多くが枝葉であり、精油と芳香蒸留水が原料の枝葉に対して少量しか抽出できない欠点があった。
【0006】
そこで、特許文献1に記載されるように、オールステンレスの蒸し器とオールステンレスの6段階冷却器を用いて低温のスチームによる成分抽出を行うエッセンシャルウォーター(芳香蒸留水)及びエッセンシャルオイル(精油)の抽出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたエッセンシャルウォーター及びエッセンシャルオイルの抽出方法は、オールステンレスの蒸し器の内部に予め塩水に30分~1時間浸漬させたヒノキの胴部、ヒノキの葉及びヒノキの実等のヒノキ材料を収納し、低温(57℃~58℃)のスチームで24時間加熱して水蒸気を排出させ、排出した水蒸気をオールステンレスの6段階冷却装置により冷却することでエッセンシャルウォーター及びエッセンシャルを抽出する方法が記載されている。
【0009】
この方法によれば、蒸し器により低温(57℃~58℃)で加熱することで、ヒノキの組織の破壊を最小限に抑え、純粋な成分抽出が行える利点がある。
【0010】
しかしながら、特許文献1の方法では、低温(57℃~58℃)のスチームで加熱を行うため、加熱にかかる時間が24時間と非常に長くなる。また、予めヒノキ材料を塩水に浸漬する工程を含みその工程にも30分~1時間の時間を要する。
【0011】
また、特許文献1の方法は、上述した長時間係る方法に加え、オールステンレスの蒸し器とオールステンレスの6段階冷却装置とを用いており、多くの設備投資が必要であることから、容易な方法であるとは云い難かった。
【0012】
また、抽出対象が葉と実であることから、得られる抽出物の量が少なく効率が良い抽出方法とは云えなかった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、木材の周囲を真空状態にする真空工程と、真空状態から取り出した木材を密閉容器中に収納する収納工程と、木材を収納した密閉容器をマイクロ波による加熱手段を用いて加熱し木材の内水分を気化させる加熱工程と、加熱工程により加熱された密閉容器を冷却させ密閉容器中の内水分を水滴に変化させる冷却工程と、からなることを特徴とする木材から機能成分含有液を抽出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために成された本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法は、木材の周囲を真空状態にする真空工程と、真空状態から取り出した木材を密閉容器中に収納する収納工程と、木材を収納した密閉容器をマイクロ波による加熱手段を用いて加熱し木材の内水分を気化させる加熱工程と、加熱工程により加熱された密閉容器を冷却させ密閉容器中の内水分を水滴に変化させる冷却工程と、からなることを特徴とする。
【0015】
また、真空工程は、木材を包装部材中に収納し包装部材の内部空気を抜く真空包装により行うことにも特徴を有する。
【0016】
また、加熱工程と冷却工程とを複数回交互に繰り返し行うことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法によれば、木材の周囲を真空状態とすることにより木材内部の負圧が高まり細胞壁が劣化し内水分が揮発しやすい状態にすることができる。
【0018】
また、密閉容器中に収納した木材をマイクロ波による加熱を行うことにより、抽出対象の木材に対して全体を均一に加熱し内水分を揮発させ水蒸気として取り出すことができる。さらには、全体を均一に加熱することで加熱時間を短縮でき、無駄な加熱を行わないため熱による成分劣化を防止しより純度の高い機能成分抽出を可能としている。
【0019】
また、抽出対象を木材とすることで、抽出物を得られる量が多く、さらには幹や樹皮に含まれる機能成分も抽出することが可能となる。
【0020】
また、抽出対象を木材とすることで、成分抽出後の木材の二次利用を可能としている。
【0021】
請求項2にかかる木材から機能成分含有液を抽出する方法によれば、真空包装により木材周囲を真空状態とすることにより、次の工程である収納工程まで木材の鮮度を保つことができる。
【0022】
また、真空包装を行うための真空包装機等は、近年家庭用の者が販売されるなど身近なものになりつつあるこのからより簡単に機能成分を抽出することができる。
【0023】
請求項3に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法によれば、加熱工程と冷却工程とを複数回交互に行うことで、木材から無駄なく機能成分を抽出することができる。
【0024】
また、一回の加熱により成分抽出を行わないことで、木材を長時間加熱することを防止し、機能成分の劣化を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法の手順を説明するためのフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る真空工程による内部組織の劣化を説明するための説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る収納工程を説明するための説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る加熱工程を説明するための説明図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る冷却工程を説明するための説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る真空包装することで真空工程を行う方法について説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の要旨は、木材の周囲を真空状態にする真空工程と、真空状態から取り出した木材を密閉容器中に収納する収納工程と、木材を収納した密閉容器をマイクロ波による加熱手段を用いて加熱し木材の内水分を気化させる加熱工程と、加熱工程により加熱された密閉容器を冷却させ密閉容器中の内水分を水滴に変化させる冷却工程と、からなることにある。
【0027】
また、真空工程は、木材を包装部材中に収納し包装部材の内部空気を抜く真空包装により行うことにも特徴を有する。
【0028】
また、加熱工程と冷却工程とを複数回交互に繰り返し行うことにも特徴を有する。
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法の一実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0030】
図1は、本実施形態に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法の手順を説明するフロー図である。
図2は、本実施形態に係る真空工程による内部組織の劣化を説明する説明図であって、(a)は真空工程前の状態、(b)は真空工程中あるいは真空工程後の状態をそれぞれ表す図である。
図3は、本実施形態に係る収納工程を説明するための説明図である。
図4は、本実施形態に係る加熱工程におけるマイクロ波による加熱状態を説明するための説明図であり、
図5は、本実施形態に係る揮発した内水分及び機能成分を液体とする冷却工程の説明するための説明図である。
図6は、真空工程を真空包装によって行った場合を説明する説明図である。
【0031】
本実施形態に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法Mは、
図1のステップ1~ステップ4に示すように、主に抽出対象となる木材10の周囲を真空状態とする真空工程S1と、真空状態から取り出した木材10を密閉容器20内部に収納する収納工程S2と、マイクロ波Wを用いて加熱を行う加熱工程S3と、加熱した木材10を冷却する冷却工程S4とからなる。
【0032】
ステップ1の真空工程S1は、木材10の周囲を真空状態とする工程である。
木材10の周囲を真空状態とする方法としては、所定の内部空間中の空気を除去する真空装置を用いることが考えられる。
【0033】
具体的には、抽出対象となる木材10を真空装置内部に収納し、内部空間中の空気を除去することにより木材10の周囲を真空状態とする。
木材10は、周囲が真空状態になる前では、
図2(a)に示すように、全体に外から圧力P1(大気圧)が加えられた状態であり、木材10の内部組織11は整然と並んだ状態を維持している。
【0034】
それに対して、木材10の周囲を真空状態とした際には、装置内部の空気が減ることで外部からの圧力P1が弱まり、木材10内部では内部組織11が膨張し反対に内部圧力P2は高まることとなる。
真空工程S1により内部圧力P2が高まった木材10は、
図2(b)に示すように、内部組織11が膨張し、一部で微小な破壊や細胞壁の軟化等の劣化を生起することとなる。また、内部組織11内に含まれる内水分は外へ押し出されるようにして木材10の外側へ移動することとなる。
【0035】
したがって、真空工程S1は、木材10の内部組織11の微小な劣化と内水分の移動により、木材10の内水分や機能成分を外部へ揮発しやすい状態にする効果がある。
【0036】
真空工程S1後の木材10は、内水分及び機能成分が揮発しやすい状態であることから、後述する加熱工程S3での加熱時間を短縮させることに寄与することができる。
また、木材10に含まれる内水分や機能成分を揮発しやすい状態にすることで、より低い温度による加熱で内水分及び機能成分を揮発させることができる。
【0037】
ステップ2の収納工程S2は、真空工程S1により内部組織11の微小な劣化が生起した木材10を真空状態から取り出し、外部との空気流通を遮断することのできる密閉容器20の内部に収納する工程である。
【0038】
収納工程S2は、次の工程である加熱工程S3により発生する木材10の機能成分含有の水蒸気41を外部に漏らすことなく閉じ込めるための工程である。そのため、用いられる密閉容器20は、容器内部を外部から遮断し密閉状態にできる容器であればどのようなものであってもよいが、例えば、
図3に示すように、木材10を出し入れするための出入口22を備えた容器本体21と、出入口22を塞ぐ蓋体23を備えたものを用いることが好ましい。
【0039】
使用される密閉容器20の素材に関しては、特に限定しないものの、マイクロ波Wによる加熱を行うため金属製以外のものを用いる。また、以降の工程である加熱工程S3と冷却工程S4とを行うにあたって上手く木材10から機能成分を抽出できているかを目視できる透明な容器であることが好ましい。
【0040】
ステップ3の加熱工程S3は、
図4に示すように、抽出対象となる木材10を収納した密閉容器20ごとマイクロ波Wにより加熱させる工程である。
【0041】
マイクロ波Wによる加熱は、電子レンジ等のマイクロ波発生装置によって行う。
加熱にマイクロ波Wを用いることにより、加熱される木材10は表面のみならず内部から均一に温められることとなる。
【0042】
従来の蒸気蒸留法のような表面から徐々に加熱される方法では、木材10の中心部が加熱され内水分や機能成分が揮発するまでに時間がかかってしまう。そのため、中心部に保有する内水分や機能成分が揮発し始めるころには表面温度が高くなりすぎ表面付近から得られる成分が変質する虞がある。
【0043】
しかしながら、本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法Mでは、加熱にマイクロ波Wを用いることで、木材10の表面から中心部までを一定の温度で加熱することができ不用意な温度上昇を防止することができる。
【0044】
この加熱工程S3により木材10より揮発した内水分と機能成分は、水蒸気41として密閉容器20中に存在することとなる。
【0045】
ステップ4の冷却工程S4は、前工程である加熱工程S3により加熱した木材10収納の密閉容器20をマイクロ波発生装置から取り出し常温で30分ほど置き冷却する工程である。
【0046】
加熱工程S3により密閉容器20の内部に水蒸気41として存在する内水分と機能成分は、この冷却工程S4により水滴に変化し機能成分含有液40として取り出すことが可能となる。
【0047】
ただし、一度の加熱工程S3及び冷却工程S4では、原料となる木材10から得られる機能成分含有液40の量が少ない場合がある。そのため、加熱工程S3と冷却工程S4とは交互に複数回繰り返し行うことが望ましい。
加熱工程S3と冷却工程S4とを繰り返し行うことで、木材10から最大限に機能成分含有液40を抽出することが可能となる。
【0048】
抽出された機能成分含有液40は、内部圧力P2の増大による木材10の内部組織11の劣化を生起させる真空工程S1とマイクロ波Wを用い全体を均一に加熱する加熱工程S3との効果により短時間且つ従来の蒸気蒸留法に比して低い温度帯で抽出されることで、木材10が保持する機能成分を損なうことなく含有した状態となる。
【0049】
また、本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法Mでは、従来抽出対象とはなりにくかった木材10から機能成分を抽出することを可能としているため、幹や樹皮に含まれる成分を得ることができる。
【0050】
また、従来の枝葉から成分を抽出する方法では得られる抽出物の量がわずかであったのに対して、内水分の多い木材10を抽出対象とすることで、より多くの抽出物を得ることができる。
【0051】
本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法Mに用いられる木材10の種類は特定の種類に限定されるものではない。
ただし、使用する木材10は10月~3月に伐採されたものを使用することが好ましい。
その理由としてヒノキやスギ等の樹木は、冬の時期になると冬を越すため成長を一時的に止めることが知られている。この時期の樹木は、成長に必要なデンプンを防虫や抗菌等に働くフェノール類へ変換させる。
【0052】
このフェノール類はいわゆる芳香成分であり、10月~3月が最も多く幹に含んでいる時期となる。そのため、使用する木材10は10月~3月の時期に伐採した木材10を用いることが望ましい。
【0053】
また、抽出された機能成分含有液40は、抽出する木材10の樹齢が長いほど強い芳香を発する。そのため、機能成分含有液40の使用用途に応じて適宜抽出を行う木材10の樹齢を選択するとよい。
【0054】
また、本発明では、抽出対象を木材10としていることにより、従来の枝葉から抽出する方法では困難であった抽出後の二次利用を可能としている。すなわち、機能成分含有液40抽出のために10月~3月に伐採した木材10から機能成分含有液40を抽出し、その後木材10を使用した小物や家具等へ利用することが可能である。
【0055】
次に、実際に発明者がヒノキ材10aから機能成分含有液40を抽出した内容を例にして具体的に説明する。
【0056】
ヒノキ材10aは質量200gとなるように成形した木塊を使用した。
ステップ1の真空工程S1として、
図6に示すように、ヒノキ材10aを袋体31の内部に収納し、真空包装機30を用いてヒノキ材10aを真空包装32することによりヒノキ材10aの周囲を真空状態とした。
【0057】
ヒノキ材10aの周囲を真空状態としたのち、ステップ2の収納工程S2として袋体31からヒノキ材10aを取り出し密閉容器20内に収納した。
【0058】
次に、ステップ3となる加熱工程S3として、ヒノキ材10aを密閉容器20ごと電子レンジにいれ600W(ワット)で30秒の加熱を行った。この加熱により、ヒノキ材10aの内水分及び機能成分は揮発し水蒸気41として密閉容器20内部に存在することとなる。
【0059】
加熱工程S3として電子レンジによる加熱を行ったのち、ステップ4の冷却工程S4として電子レンジからヒノキ材10aを密閉容器20ごと取り出し常温下で30分放置し密閉容器を冷却した。
【0060】
冷却工程S4を終えた密閉容器20の中にはヒノキ材10aとヒノキ材10aから抽出された機能成分含有液40が水滴として収納された状態となる。
【0061】
上述した加熱工程S3として行った電子レンジによる30秒の加熱は、抽出対象のヒノキ材10aを完全に熱することなくそれでいて内水分と機能成分とを十分揮発させることができる。
この加熱時間を長くしてしまうと、ヒノキ材10aを熱しすぎ機能成分が熱による変化を生じる虞がある。また、熱しすぎるとヒノキ材10aの表面が焦げ付いてしまい得られた機能成分含有液40の芳香が悪くなる虞もある。
【0062】
しかしながら、電子レンジによる30秒の加熱では、ヒノキ材10aの中に含まれる内水分と機能成分は完全に抽出しきることができない。
そのため、発明者は加熱工程S3と冷却工程S4とを交互に10回繰り返した。
【0063】
そうすることで、ヒノキ材10aに含まれる内水分と機能成分とを従来の成分抽出方法と比して低温で徐々に内水分と機能成分とを揮発させ抽出することを可能とし機能成分の熱による性質変化を可及的に抑えることができる。
【0064】
加熱工程S3と冷却工程S4とを繰り返し行ったことで、200gのヒノキ材10aから100ccの機能成分含有液40を得ることができた。すなわち、上述した条件と方法を用いることで原料となる木材10の質量の約半分の量の機能成分含有液40を抽出することができる。
【0065】
また、200gのヒノキ材10aを加熱する際に電子レンジによって600W(ワット)で30秒としているが、抽出対象の木材10の質量に応じて加熱時間は変更され100gの木材10を加熱する際には電子レンジにより600Wで15秒の加熱を行うとよい。
【0066】
上述した方法により、ヒノキ木材10から純粋な機能成分を抽出したことで、従来のヒノキ精油と比較してもより鮮烈な香りを有した機能成分含有液40を得ることができる。
【0067】
また、真空工程S1を真空包装機30による真空包装32とすることで、抽出対象として最適な10月~3月に伐採した木材10を長期保存可能とし、伐採時期以外でも新鮮な状態を維持し機能成分含有液40を抽出することが可能となる。
【0068】
また、上述した方法のように真空工程S1に用いる真空包装機30は家庭用のものでもよく、マイクロ波発生装置も電子レンジであればよいことから、従来の精油等の成分抽出方法に比して容易であり、且つ大掛かりな設備投資が不要となる効果がある。
【0069】
以上、上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る木材から機能成分含有液を抽出する方法は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、使用する装置等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、あくまで例示に過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
S1 真空工程
S2 収納工程
S3 加熱工程
S4 冷却工程
10 木材
10a ヒノキ材
11 内部組織
20 密閉容器
21 容器本体
22 出入口
23 蓋体
30 真空包装機
31 袋体
32 真空包装
40 機能成分含有液
41 水蒸気
W マイクロ波
P1 圧力(大気圧)
P2 内部圧力