(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111529
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電柱の補強方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20230803BHJP
E04H 12/12 20060101ALI20230803BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E04G23/02 F
E04H12/12
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013415
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】504424454
【氏名又は名称】アップコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】松藤 展和
(72)【発明者】
【氏名】川口 宏二
(72)【発明者】
【氏名】小菅 拓朗
【テーマコード(参考)】
2E176
5G352
【Fターム(参考)】
2E176AA04
2E176AA11
2E176BB29
5G352AD04
(57)【要約】
【課題】 スプレーガンを用いることなく、中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法を提供すること。
【解決手段】 少なくとも一方に繊維補強材を添加したポリオールとイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液を電柱の中空部に注入することで、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法であって、少なくとも一方に繊維補強材を添加したポリオールとイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液を電柱の中空部に注入することで、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱の補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や台風などの自然災害によって電柱が折れると、電線が切れて送電や配電が停止されてしまうことなどがあることに加え、建物が折れた電柱によって壊れることがある他、折れた電柱が道路に倒れると、住民が避難する際の障害になったり、緊急車両の通行の妨げとなって地域の復旧作業の遅れの原因になったりする。従って、こうした事態を防ぐために、電柱を折れにくくするための様々な方法が提案されており、本発明者らも、現在の電柱の主流である中空状のコンクリート製電柱の中空部に膨張性樹脂を充填して膨張させることによる補強方法を特許文献1において提案している。本発明者らが特許文献1において提案した方法は、例えば、ポリオールとイソシアネートのそれぞれをスプレーガンに供給し、ガンのノズル先端から両者を電柱の中空部に噴射することで発泡ウレタン樹脂を電柱の中空部に充填して膨張させることにより、電柱を内部から補強でき、施工に手間や時間がかからない優れた方法として評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが特許文献1において提案した方法を、例えば、ポリオールとイソシアネートの少なくとも一方に炭素繊維などの繊維補強材を添加して行おうとすると、スプレーガンの内部で繊維補強材が目詰まりを起こしてしまい、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を電柱の中空部に充填して膨張させることができなくなることがある。
【0005】
そこで本発明は、スプレーガンを用いることなく、中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の点に鑑みてなされた本発明は、請求項1記載の通り、中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法であって、少なくとも一方に繊維補強材を添加したポリオールとイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液を電柱の中空部に注入することで、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中空状のコンクリート製電柱を折れにくくすることを、スプレーガンを用いることなく、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を電柱の中空部に充填して膨張させることで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の電柱の補強方法において用いる、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を電柱の中空部に充填して膨張させるための注入ホースを接続したミキシングヘッドの一例の概略断面模式図である。
【
図2】本発明の電柱の補強方法による施工プロセスの一例の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法は、少なくとも一方に繊維補強材を添加したポリオールとイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液を電柱の中空部に注入することで、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる方法である。
【0010】
本発明の電柱の補強方法において、少なくとも一方に繊維補強材を添加したポリオールとイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液(即ち繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂となるもの)を電柱の中空部に注入することは、例えば、注入ホースを接続したミキシングヘッドを用いて行うことができる。以下、本発明の電柱の補強方法を、ミキシングヘッドに送液されてきた繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートを、空気流に乗せて混合し、両者の混合液を注入ホースの先端から吐出させ、電柱の側面に設けた注入孔から電柱の中空部に注入する方法を例にとって説明する。
【0011】
図1は、本発明の電柱の補強方法において用いる、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を電柱の中空部に充填して膨張させるための注入ホースを接続したミキシングヘッドの一例の概略断面模式図である。このミキシングヘッドは、例えば市販の金属製であってよく、収容タンクから送液されてきた繊維補強材を添加したポリオールが空気流に供給され、そこにさらに収容タンクから送液されてきた繊維補強材を添加したイソシアネートが供給されることにより、両者が空気流に乗って攪拌されることで混合されながら例えばゴム製の注入ホースの先端に向かって導かれ、両者の混合液が注入ホースの先端から吐出される。ポリオールはイソシアネートよりも粘性が高いので、繊維補強材を添加したポリオールを先に空気流に供給して後から繊維補強材を添加したイソシアネートを供給する方が、逆の順序よりも両者を混合させやすい。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートを混合し、両者の混合液を吐出させるための空気流の圧力は、例えば少なくとも0.05MPaとするのがよい。圧力が低すぎると、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合が十分に行われずに注入ホースの先端から吐出される恐れがある。注入ホースは、電柱の側面に設ける注入孔の孔径を考慮し、例えば内径が10~20mmのものを用いるのがよい。その長さは、例えば1~3mとするのがよい。短すぎると、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合が十分に行われずに注入ホースの先端から吐出される恐れがある。長すぎると、電柱の中空部への繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の所定分量の充填が完了するまでに膨張し始めてしまうことで均質な発泡体が形成されない恐れがある。また、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の電柱の中空部への注入を、例えば高所作業車の作業台から行う必要がある場合、作業台の限られたスペースでの作業の支障になる恐れがある。
【0012】
本発明の電柱の補強方法において用いるポリオールとイソシアネートは、例えば両者が30~40℃において1:0.8~1.5の重量割合で混合されることによって調製される発泡ウレタン樹脂が、中空状のコンクリート製電柱の中空部で膨張することで電柱を内部から補強することができるものであれば特段に限定されるものではなく、市販のものであってよい。発泡ウレタン樹脂のゲルタイム(ポリオールとイソシアネートが混合されてから膨張し始めるまでの時間)は、例えば240~480秒(4~8分)がよい。ゲルタイムが短すぎると、電柱の中空部への所定分量の発泡ウレタン樹脂の充填が完了するまでに膨張し始めてしまうことで均質な発泡体が形成されない恐れがある。ゲルタイムが長すぎると、発泡体が形成されるまでに時間がかかりすぎることで施工効率が悪くなる恐れがある。発泡ウレタン樹脂は、発泡体の標準密度(大気中で発泡させた場合の密度)が例えば50~300kg/m3となるものがよい。標準密度が低すぎると、発泡体の強度が不足することで電柱を十分に補強できない恐れがある。標準密度が高すぎると、発泡体の靭性が低下することで脆性破壊されやすくなる恐れがある。ポリオールとイソシアネートの具体例としては、日本パフテム株式会社のノンフロンポリオールFF5020-UCと同社のイソシアネートNP-90の組み合わせ(約35℃において1:1の重量割合で混合した場合に調製される発泡ウレタン樹脂はゲルタイムが約300秒であって形成される発泡体は標準密度が約190kg/m3である)を挙げることができる。
【0013】
本発明の電柱の補強方法において用いる繊維補強材は、東レ株式会社製の炭素短繊維(商品名「トレカカットファイバー」3mm長)に例示される炭素繊維の他、アラミド繊維やガラス繊維など、繊維補強材として市販されているものであってよく、これらを単独または複数種類を組み合わせて用いることができる。繊維補強材は、ポリオールとイソシアネートのいずれか一方だけに添加されてもよいし、両方に添加されてもよいが、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の重量に対して例えば1~4wt%になるように添加するのがよい。添加量が少なすぎると、添加することの効果が得られない恐れがある。添加量が多すぎると、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した発泡体が得られない恐れがある(繊維補強材の塊が発泡体の下方に集積したりしやすくなる)。
【0014】
注入ホースの先端から吐出された繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の、電柱の側面に設けた注入孔からの電柱の中空部への注入は、中空部に充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の下端部から意図する高さまで膨張する分量で行う。この分量は、発泡体の標準密度と電柱の口径(例えば10~50cmである)から算出することができる。中空状のコンクリート製電柱の長さは、通常、5~20mであるが、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液は、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の下端部から上端部まで膨張する分量、即ち、電柱の中空部の全ての空間を発泡体が占める分量を注入する必要はなく、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の下端部から長さの例えば少なくとも2/3の高さまで膨張する分量を注入すればよい。地震や台風などの自然災害によって電柱が折れる場合、地際付近をはじめとする電柱の下端部から長さの1/2の高さまでの位置で折れることが多いからである。
【0015】
補強対象とする中空状のコンクリート製電柱の長さが12mの場合を例にとると、その中空部への繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入を、中空部に充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の下端部から少なくとも8mの高さまで膨張する分量で行う。この分量の繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の中空部への充填は、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1回の注入によって行わずに複数回の注入に小分けして行い、先の注入によって充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が完了した後、次の注入を行って、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を膨張させるのがよい(即ち先に形成された発泡体の上に次に形成される発泡体を積み重ねる)。繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の下端部から少なくとも8mの高さまで膨張する分量の注入を1回で行うと、繊維補強材を含む発泡ウレタンが自重によって電柱の下端部から少なくとも8mの高さまで膨張せず、下方から上方に向かって密度が低く、繊維補強材が下方に集積した、不均質な発泡体が形成されやすくなる。電柱の下端部から少なくとも8mの高さまでの中空部の空間を、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した均一な密度を有する均質な発泡体が占めるようにするためには、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1回の注入によって中空部に充填する繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の分量は、前述した発泡体の標準密度が50~300kg/m3となる発泡ウレタン樹脂の場合、電柱の3~5mの高さまで膨張する分量とし(電柱の口径に依るが概ね15~35Kg程度)、この分量の注入を複数回行うのがよい。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1回の注入によって中空部に充填する繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の分量を電柱の3m未満の高さまで膨張する分量とすると、注入回数が増えてしまい施工効率が悪くなる恐れがある。例えば、長さが12mの電柱の下端部から8mの高さまでの中空部の空間を、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した均一な密度を有する均質な発泡体が占めるようにする場合、電柱の中空部への繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入は、1回の注入によって中空部に充填する繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の分量を、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の4mの高さまで膨張する分量とし、この分量の注入を2度行えばよい。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の電柱の中空部への注入流量は、例えば少なくとも2kg/分とするのがよい。注入流量が少なすぎると、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の所定分量の充填が完了するまでに膨張し始めてしまうことで均質な発泡体が形成されない恐れがある。注入流量の上限に制限はないが、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートのそれぞれをミキシングヘッドに圧送するための注入機の一般的な性能などに鑑みれば、例えば6kg/分である。
【0016】
長さが12mの電柱の中空部への繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1回の注入を、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の4mの高さまで膨張する分量とし、この分量の注入を2度行うことで、電柱の下端部から8mの高さまでの中空部の空間を、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した均一な密度を有する均質な発泡体が占めるようにするための施工プロセスの一例を、
図2を用いて説明する。
【0017】
図2において、孔1は、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1度目の注入孔であり、孔径は例えば20~30mmである。孔1を設けた位置は、電柱の下端部から3mの高さであって、図略のステップ取付穴が設けられている縦のライン上である(このライン上には削孔に干渉する鉄筋が存在しないので削孔を行うにあたって鉄筋の存在箇所を確認する必要がない)。電柱は、長さが15m以下の場合は長さの1/6以上、長さが15mを超える場合は2.5m以上を地中に根入れすることが定められており、
図2に示す電柱では根入れ深さを2mとしているので、電柱の下端部から3mの高さは、地際から1mの高さである。孔1を設ける高さは、地面を掘り起こして設ける必要がなく、また、高所作業車の作業台から設ける必要がない、地際から2mまでの高さがよい。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の孔1からの注入は、
図1に示したミキシングヘッドに接続された注入ホースの先端を、孔1に差し込み、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液を吐出させることで行えばよい。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の所定分量の注入が完了した後は、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が孔1から外部に起こらないようにするため、養生テープを貼って孔1を塞ぐのがよい。繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が完了すれば、養生テープを剥がし、孔1からはみ出している発泡体があれば削り落とした後、孔1をセメントで埋めて補修することで、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の孔1からの注入による一連の工程を終了するのがよい。
【0018】
図2において、孔2は、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の2度目の注入孔であり、孔径は孔1の孔径と同じ例えば20~30mmであって、孔1を設ける時にあわせて設けたものである。孔2を設けた位置は、電柱の下端部から7mの高さ(地際から5mの高さ)であって、図略のステップ取付穴が設けられている縦のライン上である。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の孔2からの注入を、孔1からの注入によって充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が完了してから行うと、電柱の下端部から4mの高さまでの中空部の空間はすでに均質な発泡体が占めている。従って、孔2を設けた高さは、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が膨張する高さ(4m)の3/4の高さである(孔1と同じ)。孔2を設ける高さを、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が膨張する高さの1/3の高さよりも高くすることで、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の所定分量の注入が完了するまでに、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が孔2の高さに到達してしまい、孔2から漏れ出してしまうことを避けることができる。繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の孔2からの注入の方法、所定分量の注入が完了した後の孔2の処置の方法は、孔1についての方法と同じでよい。孔2の設置、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の孔2からの注入、所定分量の注入が完了した後の孔2の処置は、高所作業車の作業台から行えばよい。
【0019】
図2において、孔3は、孔2からの繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入の際に繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液とともに電柱の中空部に流入する空気の排気孔であり、孔径は例えば10~20mmであって、孔1を設ける時にあわせて設けたものである。孔3を設けた位置は、電柱の上端部から2m低い高さ(地際から8mの高さ)であって(電柱の上端部から1~3m低い高さに設けるのがよい)、図略のステップ取付穴が設けられている縦のライン上である。孔1からの繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入の際に繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液とともに電柱の中空部に流入する空気は、孔2から排気されることができるが、孔2からの繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入の際に繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液とともに電柱の中空部に流入する空気は、孔3がなければ排気されることができず、繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が膨張するにつれて中空部の空間の圧力が高まり、この圧力によって電柱の先端を封止しているキャップ(ポールキャップ)が吹き飛んでしまうといった事態を引き起こす恐れがある。孔3は、孔2から充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が完了した後、セメントで埋めて補修するのがよい。孔3の設置、孔2からの繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入によって充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の膨張が完了した後の孔3の処置は、高所作業車の作業台から行えばよい。
【0020】
なお、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液を、
図1に示した注入ホースを接続したミキシングヘッドを用いて電柱の中空部に注入する場合、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートを混合し、両者の混合液を吐出させるための空気流の圧力は、例えば少なくとも0.05MPaとするのがよいことは前述の通りであるが、この圧力が高すぎると、孔1から繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液を注入した際、電柱の中空部において下方から上方に向かう強い空気流が発生し、空気流を構成する空気が孔2や孔3から勢いよく排気されるとともに、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂までもが空気流に乗って孔2や孔3から噴出する現象が起こる恐れがあり、孔2から繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液を注入した際にも同様に、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が孔3から噴出する現象が起こる恐れがある。従って、こうした現象を避けるため、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートを混合し、両者の混合液を吐出させるための空気流の圧力は、上限を例えば0.15MPaとするのがよい。
【0021】
また、孔1を設けた高さや孔2を設けた高さよりも例えば25~75cm高い高さに、孔1や孔2からの繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入によって中空部に充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の様子を内視鏡を用いて調べるための確認孔を設けてもよい。
【0022】
以上においては、長さが12mの中空状のコンクリート製電柱を補強する場合を例にとって説明したが、長さが異なる電柱であっても、繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の1回の注入によって中空部に充填する繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂の分量や、この分量に応じて必要な注入孔の個数と設ける位置などを適切に設定することで、電柱を補強することができる。
【0023】
例えば、長さが9mの中空状のコンクリート製電柱を、その中空部に前述した発泡体の標準密度が50~300kg/m3となる発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることで補強する場合、中空部への繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入を2回に小分けして行い、1回の注入を、充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の3mの高さまで膨張する分量とし、この分量の注入を2度行うことで、電柱の下端部から6mの高さまでの中空部の空間を、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した均一な密度を有する均質な発泡体が占めるようにすればよい。1度目の注入孔は、例えば、電柱の下端部から3mの高さ(根入れ深さを1.5mとすると地際から1.5mの高さ)であって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。2度目の注入孔は、例えば、電柱の下端部から6mの高さであって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。排気孔は、例えば、電柱の上端部から2m低い高さであって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。
【0024】
例えば、長さが15mの中空状のコンクリート製電柱を、その中空部に前述した発泡体の標準密度が50~300kg/m3となる発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることで補強する場合、中空部への繊維補強材を添加したポリオールと繊維補強材を添加したイソシアネートの混合液の注入を3回に小分けして行い、1回の注入を、1度目の注入においては充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の4mの高さまで膨張する分量とし、2度目の注入と3度目の注入においては充填された繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂が電柱の3mの高さまで膨張する分量とすることで、電柱の下端部から10mの高さまでの中空部の空間を、全体にわたって繊維補強材が均一に分散した均一な密度を有する均質な発泡体が占めるようにすればよい。1度目の注入孔は、例えば、電柱の下端部から4mの高さ(根入れ深さを2.5mとすると地際から1.5mの高さ)であって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。2度目の注入孔は、例えば、電柱の下端部から7mの高さであって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。3度目の注入孔は、例えば、電柱の下端部から10mの高さであって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。排気孔は、例えば、電柱の上端部から2m低い高さであって、ステップ取付穴が設けられている縦のライン上に設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、スプレーガンを用いることなく、中空状のコンクリート製電柱の中空部に繊維補強材を含む発泡ウレタン樹脂を充填して膨張させることによる電柱の補強方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。