(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111550
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】揚水器、貯留槽、及び液体処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/00 20230101AFI20230803BHJP
【FI】
C02F3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013450
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】591045116
【氏名又は名称】株式会社アールエコ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100199808
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 昌代
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(74)【代理人】
【識別番号】100208708
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100215371
【弁理士】
【氏名又は名称】古茂田 道夫
(74)【代理人】
【識別番号】230116643
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 厳輝
(72)【発明者】
【氏名】岸脇 孝
【テーマコード(参考)】
4D027
【Fターム(参考)】
4D027AB14
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡易に構成され、貯留槽に貯留している液体をその水面より上に汲み上げて容易に吐出させることができる揚水器、及びこの揚水器を備える貯留槽と汚水処理装置とを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様は、液体を水面より上に汲み上げて吐出するための揚水器であって、上記液体中で触媒又は微生物が反応することで発生するガスを収集する傘部、下方に上記液体を導入する液体導入口と、上方に上記傘部が収集したガスがガス供給流路を介して供給される気体供給口と、中間部に連通部とを有する第一流路、及び上記連通部で上記第一流路に連通し、この連通部より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口とを有する第二流路を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を水面より上に汲み上げて吐出するための揚水器であって、
上記液体中で触媒又は微生物が反応することで発生するガスを収集する傘部、
下方に上記液体を導入する液体導入口と、上方に、上記傘部が収集したガスが、ガス供給流路を介して供給される気体供給口と、中間部に連通部とを有する第一流路、及び
上記連通部で上記第一流路に連通し、この連通部より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口とを有する第二流路
を備える揚水器。
【請求項2】
上記傘部が上記液体中に配設されている請求項1に記載の揚水器。
【請求項3】
液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、
請求項1又は請求項2に記載の揚水器を有する貯留槽。
【請求項4】
複数の貯留槽と、請求項1又は請求項2に記載の揚水器とを有する液体処理装置であって、
上記複数の貯留槽のうちの少なくとも一の貯留槽が、液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、
上記一の貯留槽に上記傘部が配設され、
他の貯留槽に上記第一流路及び上記第二流路が配設されている液体処理装置。
【請求項5】
上記揚水器が、上記吐出口から吐出される液体を他の貯留槽に移送するための移送流路をさらに備える請求項4に記載の液体処理装置。
【請求項6】
汚水を浄化するための汚水処理を行う請求項5に記載の液体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚水器、貯留槽、及び液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の浄化槽(貯留槽)を備え、上記汚水を上流側から下流側に上記複数の浄化槽を通過させることで段階的に浄化する汚水処理装置が知られている。このような汚水処理装置では、効率的な汚水の浄化を行うため、下流側の浄化槽に貯留する処理水の一部を上流側の浄化槽に還流しているものがある。
【0003】
汚水処理装置に配設され、下流側の浄化槽に貯留する汚水の一部を上流側の浄化槽に還流するための引抜管を含む逆流発生装置が知られている(特開2010-207662号公報)。この逆流発生装置は、上記引抜管と、一端を上向きにし、他端を上記引抜管の途中に接続したU字管と、上記引抜管及びU字管が配設されるケーシングと、このケーシングに空気を供給するためのエア供給装置とを備えている。上記ケーシングには、下流側の浄化槽から処理水の一部が流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報所載の逆流発生装置では、上記エア供給装置が空気を供給し続けることで上記ケーシング内の処理水の水位を低下させ、この水位の低下により上記引抜管内の処理水が上流側の浄化槽に還流するように構成されている。
【0006】
すなわち、上記逆流発生装置は、下流側の浄化槽の処理水を上流側の浄化槽に還流するために、引抜管と、U字管と、処理水及び空気を溜めるケーシングとを設けている。このようにすると、処理水(液体)を還流するための機器として断続的、且つ一時的に多量の処理水を下流側の浄化槽から逆流させて前記ケーシングに貯留させ、上流側の浄化槽へ連続的に返送させるように構成させることができるが、一方で比較的大型で複雑な構成になるため、この機器、ひいてはこの機器を含む装置(汚水処理装置)の小型化、低コスト化が困難になるおそれがある。
【0007】
また、上記エア供給装置は、一般的に電気によって稼働するものであるため、ランニングコストの低減、省エネルギーなどが困難になるおそれがある。
【0008】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、簡易な構成で電気などの動力源を必要としない揚水器と、この揚水器を備える貯留槽及び液体処理装置とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、液体を水面より上に汲み上げて吐出するための揚水器であって、上記液体中で触媒又は微生物が反応することで発生するガスを収集する傘部、下方に上記液体を導入する液体導入口と、上方に、上記傘部が収集したガスが、ガス供給流路を介して供給される気体供給口と、中間部に連通部とを有する第一流路、及び上記連通部で上記第一流路に連通し、この連通部より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口とを有する第二流路を備える。
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の別の一態様は、液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、上記揚水器を有する貯留槽である。
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明のさらに別の一態様は、複数の貯留槽と、上記揚水器とを有する液体処理装置であって、上記複数の貯留槽のうちの少なくとも一の貯留槽が、液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、上記一の貯留槽に上記傘部が配設され、他の貯留槽に上記第一流路及び上記第二流路が配設されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の揚水器は、簡易な構成であるため、電気などの動力源を用いることなく液体を吐出することができる。本発明の貯留槽及び液体処理装置は、上記揚水器を有するため、低コストで液体を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一態様である揚水器とこの揚水器を備える貯留槽とを示す模式的平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の別の一態様である液体処理装置を示す模式的な平面透視図である。
【
図3】
図3は、
図2の汚水処理装置の模式的な上面透視図である。
【
図4】
図4は、
図2の汚水処理装置の模式的な右側面透視図である。
【
図5】
図5は、
図1とは異なる揚水器を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一態様は、液体を水面より上に汲み上げて吐出するための揚水器であって、上記液体中で触媒又は微生物が反応することで発生するガスを収集する傘部、下方に上記液体を導入する液体導入口と、上方に、上記傘部が収集したガスが、ガス供給流路を介して供給される気体供給口と、中間部に連通部とを有する第一流路、及び上記連通部で上記第一流路に連通し、この連通部より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口とを有する第二流路を備える。
【0015】
当該揚水器は、液体中で触媒又は微生物が反応することで発生するガスを利用して液体を吐出するため、電気などの動力源を要しない。このため、ランニングコストの低減、省エネルギーを図ることができる。当該揚水器は、上記ガスを収集する傘部、第一流路及び第二流路で構成されているため、簡易な構成とすることができる。上記第一流路は、下方に液体を導入する液体導入口と、上方から上記ガスが供給される気体供給口とを有する。上記第二流路は、上記第一流路の連通部で接続され、上記第一流路と連通している。上記第二流路は、上記連通部より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口とを有する。このような構成とすることで、当該揚水器は、上記液体を容易に吐出することができる。
【0016】
上記傘部が上記液体中に配設されているのがよい。このようにすることで、上記ガスを容易に収集できる。
【0017】
本発明の別の一態様は、液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、上記揚水器を有する貯留槽である。
【0018】
当該貯留槽は、それ自体が貯留する液体中から発生するガスを用いて上記液体を吐出することができる。
【0019】
本発明のさらに別の一態様は、複数の貯留槽と、上記揚水器とを有する液体処理装置であって、上記複数の貯留槽のうちの少なくとも一の貯留槽が、液体と、この液体と反応することでガスを発生する触媒又は微生物とを貯留し、上記一の貯留槽に上記傘部が配設され、他の貯留槽に上記第一流路及び上記第二流路が配設されている。
【0020】
当該液体処理装置は、上記揚水器の傘部が配設される貯留槽と、上記揚水器の第一流路及び第二流路が配設される貯留槽とが異なる。このため、上記第一流路及び第二流路が配設される貯留槽が上記触媒又は微生物を有しないものであっても、この貯留槽中の液体を吐出することができる。また、当該液体処理装置は、上記揚水器を備えるため、低コストで液体処理を行うことができる。
【0021】
当該揚水器が、上記吐出口から吐出される液体を他の貯留槽に移送するための移送流路をさらに備えるとよい。移送流路をさらに備えることで、上記貯留槽内の液体を他の貯留槽に移送することができる。
【0022】
当該液体処理装置が、汚水を浄化するための汚水処理を行うものであるとよい。すなわち、当該液体処理装置が汚水処理装置であるとよい。当該液体処理装置が汚水処理装置であることで、低コストで汚水の浄化を行うことができる。
【0023】
なお、「汚水処理装置」とは、し尿を含む生活系汚水の処理を行う浄化槽、都市などの下水の処理を行う下水処理装置、中規模又は小規模の生活系汚水の処理を行う汚水処理装置、工場排水(廃水)や生活系排水の処理を行う排水(廃水)処理装置などを含む概念である。
【0024】
一例として、現在日本で稼働中の浄化槽は、約750万基(平成30年末時点)であり、そのうちの多数を占める小型の浄化槽であっても、27wから300wの送風機をすべて備えた好気性処理型浄化槽であり、連続的に24時間稼働している。
【0025】
本発明の一態様である汚水処理装置は、従来の好気処理型ではなく、一切の動力を用いない浄化技術の根幹部分にあたる、有機物分解過程で発生するガスの圧力を利用して処理液の循環を可能にした汚水処理装置に関する。
【0026】
[発明を実施するための形態の詳細]
【0027】
<第一実施形態>
以下、図を参照しながら、本発明の一実施形態である揚水器について詳説する。なお、図は、本発明を説明するための模式図であって、実際の構成(部材)の形状、それぞれの縮尺などが異なることがある。
【0028】
〔貯留槽〕
当該貯留槽は、
図1に示すように、貯留する液体Wを水面より上に汲み上げて吐出するための揚水器1を備える。また、貯留槽2は、図示しない触媒又は微生物を水面下に保持する。この触媒又は微生物は、液体Wと反応することでガスを発生する。
【0029】
〔揚水器〕
揚水器1は、液体W中で上記触媒又は微生物が反応することで発生するガスを収集する傘部9、下方に上記液体Wを導入する液体導入口31と、上方に、傘部9が収集したガスが、ガス供給流路5を介して供給される気体供給口32と、中間部に連通部33とを有する第一流路3、及び上記連通部33で上記第一流路3に連通し、この連通部33より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分41と、この湾曲部分より上方で上記液体を吐出する吐出口42とを有する第二流路4を備える。なお、「下」とは、貯留槽2に貯留されている液体Wの水面における液体W側の法線方向であり、「上」とは、その反対方向を意味する。
【0030】
傘部9は、板状部材で形成され、略円錐状をなしている。傘部9は、底部と頂部とが開口している。ガス供給流路5は、傘部9の頂部で接続され、傘部9と第一流路3の気体供給口32とを連通している。傘部9は、液体W中で発生したガスを底部の開口で取り込む。傘部9内に取り込まれたガスは、頂部の開口からガス供給流路5内を通じて第一流路3内に供給される。
【0031】
ガス供給流路5、第一流路3及び第二流路4は、管状部材である。第一流路3及び第二流路4は、一体で形成されてもよいし、別体で形成されて接合されたものであってもよい。ガス供給流路5、第一流路3及び第二流路4のそれぞれは、複数の管状部材を接合して形成されたものであってもよい。
【0032】
本実施形態の第一流路3は、略直線状に形成されている。第一流路3は、一端が液体W内に位置し、他端が液体W外に位置するように配設される。上記他端は、液体W中に位置してもよい。本実施形態の第一流路3は、その軸方向が液体Wの水面に対して略垂直になるように配設されている。上記一端(下端)は、液体Wを内部に導入するための液体導入口31であり、上記他端(上端)は、気体が供給される気体供給口32である。
【0033】
第二流路4は、第一流路3の中間部分に設けられている連通部33で接続され、第一流路3と連通している。第二流路4は、連通部33より下方で下向きから上向きに湾曲する湾曲部分41を有する。本実施形態の第二流路4は、連通部33と湾曲部分41とを連通する中間部分43を有する。本実施形態では、中間部分43は、その軸方向が液体Wの水面と平行になるように配設されている。
【0034】
湾曲部分41は、中間部分43から連続して、連通部33より下方で下向きから上向きに湾曲している。本実施形態では、湾曲部分41は、中間部分43から連続して貯留槽2の底面に向かう下降部分41aと、この底面に向かう部分から反転して水面に向かう上昇部分41bとで構成されている。すなわち、湾曲部分41は、略U字型になるように形成されている。
【0035】
第二流路4は、湾曲部分41より上方で液体Wを吐出する吐出口42を有する。本実施形態では、吐出口42が液体Wの水面より上方に位置するように、湾曲部分41に延長部分44が接続され、この延長部分44の終端を吐出口42としている。延長部分44は、湾曲部分41から連続し、液体Wの水面に略垂直に延出する垂直部分44aと、この垂直部分44aから連続し、液体Wの水面に略平行に延出する水平部分44bとを有し、この水平部分44aの終端が吐出口42となっている。
【0036】
液体Wを貯留している貯留槽1に当該揚水器1を配設すると、第一流路3内及び上記第二流路4内に液体導入口31から液体Wが導入される。液体Wは、貯留槽1の水位と、第一流路内3の水位及び第二流路4内の水位とが同一になるまで導入される。第一流路3の気体供給口32から上記ガスが供給されると、その圧力で第一流路3内の液体Wの水位が低下し、第二流路4内の液体Wの水位が上昇する。第二流路4内の液体Wは、場合によっては、一部が吐出口42から吐出される。第一流路3内に上記ガスがさらに供給されると、第一流路3内の液体Wの水位がさらに低下して連通部33に到達し、上記ガスの一部が第二流路4に流れ込む。続けて上記ガスが供給されると、上記ガスは湾曲部分41に到達する。上記気体が湾曲部分41を超えると、第二流路4内で上昇していた液体Wによる圧力と、供給される上記ガスによる圧力との均衡が破れ、第一流路3内のガスが一気に第二流路4内に流れ込む。このため、第二流路4内の液体Wが一気に上昇して吐出口42から吐出されると共に、貯留槽2内の液体Wが第一流路3内に流れ込み、その一部が第二流路4内に導入される。さらに第一流路3内に上記ガスが供給され続けることで、第二流路4内に導入された液体Wが断続的に繰り返し吐出される。
【0037】
ガス供給流路5、第一流路3及び第二流路4の内径としては、特に限定されるものでなく、発生するガスの量、液体Wを吐出する量、吐出する間隔(時間)等に応じて、適宜決定することができる。第一流路3及び第二流路4の内径は、同一としてもよいし、異なっていてもよい。第一流路3及び第二流路4それぞれの内径は、一定になるように形成してもよいし、部分的に異なるように形成してもよい。例えば、第二流路4における中間部分43、湾曲部分41及び延長部分44の内径がそれぞれ異なっていてもよい。湾曲部分41と液体Wの水面との距離としては、特に限定されるものでなく、吐出する量、吐出する間隔(時間)等に応じて、適宜決定することができる。
【0038】
傘部9の大きさ(容量)、配設する位置(高さ)は、特に限定されるものでなく、発生するガスの量、液体Wを吐出する量、吐出する間隔(時間)等に応じて、適宜決定することができる。
【0039】
本実施形態では、貯留槽2に液体Wを供給する液体供給管6が設けられている。液体供給管6から供給される液体Wの量を、当該揚水器1が吐出する液体Wの吐出量と同一にすることで貯留槽2における水位を一定にすることができる。
【0040】
図1では、液体Wを貯留槽2の外に吐出するように、吐出口42を貯留槽2の外側に設けているが、液体Wを貯留槽2の中に吐出するように、吐出口42を貯留槽2の内側に設けてもよい。このようにすることで、貯留槽2内の液体Wを循環させることができる。また、吐出口42を他の貯留槽(不図示)上に配設することで、貯留槽2の液体Wを上記他の貯留槽に移送することができる。
【0041】
<利点>
当該揚水器1は、傘部9、第一流路3及び第二流路4で簡易に構成されているため、低コストで生産することができる。また、当該揚水器1は、配設される貯留槽2内の液体Wで発生するガスを用いることで液体Wを吐出するため、液体Wを吐出するための動力源が不要であり、低コストで液体Wの吐出をすることができる。
【0042】
[第二実施形態]
以下、本発明の別の一実施形態である液体処理装置について説明する。本実施形態では、当該液体処理装置を汚水処理装置として説明する。なお、上述の第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
<汚水処理装置>
当該汚水処理装置10は、
図2、
図3及び
図4で示すように、液体(汚水)Wを貯留して処理する複数の貯留槽(処理槽)と揚水器20とを有する。当該汚水処理装置10は、嫌気処理と、固液分離とで処理をする第一処理槽11と、第一処理槽11が処理をした汚水Wに嫌気処理をする二つの中間処理槽12,13と、中間処理槽12,13が処理をした汚水に沈殿分離をする最終処理槽14とを備える。第一処理槽11及び二つの中間処理槽12,13は、嫌気処理をするための嫌気性微生物(不図示)を保持する。上記嫌気性微生物は、複数の担体(不図示)に担持されている。汚水処理装置1は、第一処理槽11側の上部に汚水Wが流入する流入口15を有し、最終処理槽14側の上部に処理された汚水Wを水質基準に適合する処理水として流出させる流出口16を有する。
【0044】
第一処理槽11、中間処理槽12,13及び最終処理槽14は汚水処理装置1内で隔壁11a,12a,13aによって区分され、この順で汚水Wが通過する。第一処理槽11の隔壁11aと上流側の中間処理槽12の隔壁12aとには、汚水Wが通過するための流路11b,12bと、上部に開口部11c,12cとが設けられている。下流側の中間処理槽13の隔壁13aの下部には、汚水Wが通過するための開口部13cが設けられている。
【0045】
なお、汚水処理装置1には上部に点検口が設けられ、第一処理槽11及び中間処理槽12,13は、上記担体が浮上及び沈殿することを防止する上面スクリーン及び下面スクリーン、点検時に使用される逆洗用散気管などを有するが、これらの詳細な構成は、図では省略している。
【0046】
最終処理槽14には、揚水器20が配設されている。この揚水器20は、吐出口から吐出する汚水Wを第一処理槽11に移送する移送流路7を有する。移送流路7は、管状部材である。移送流路7は、第一処理槽11上で開口している排出口71を有する。
【0047】
本実施形態の汚水処理装置10は、第一流路23にガスを供給するガス供給流路8と、第一処理槽11及び中間処理槽12,13で発生するガスを収集し、このガスをガス供給流路8に供給する傘部29とを有する。ガス供給流路8は、第一流路23の気体供給口に接続され、第一流路23と傘部29とを連通している。傘部29は、第一処理槽11及び中間処理槽12,13の汚水W中に配されている。ガス供給流路8と傘部29とは、連結管8aを介して連通している。
【0048】
本実施形態の傘部29は、板状部材で形成され、略円錘状をなしている。傘部29の頂部及び底部は、開口している。傘部29は、連結管8aと上記頂部で接続され、発生するガスを上記底部側で取り込む。
【0049】
汚水処理装置10は、第一処理槽11及び中間処理槽12,13で上記嫌気性微生物による汚水Wの処理を行う。この処理過程でメタン等を含むガスが発生する。傘部29は、このガスを収集する。上記ガスは、傘部29の上記頂部の開口から連結管8aを介してガス供給流路8に導入される。ガス供給流路8に導入された上記ガスは、最終処理槽14に設けられた揚水器1の第一流路23内に供給される。
【0050】
第一処理槽11及び中間処理槽12,13では、連続的に上記ガスが発生するため、ガス供給流路8及び第一流路23内の上記ガスの圧力が上昇する。第一流路23内の上記ガスの圧力上昇により、第一流路23内の汚水Wの水位が低下すると共に、第二流路24内の汚水Wの水位が上昇する。第一流路23内の上記ガスが第二流路24の湾曲部分241に達すると、第二流路24内の汚水Wが吐出され、移送流路7を介して第一処理槽11に移送される。
【0051】
<利点>
当該汚水処理装置10は、揚水器20を備えるため、最終処理槽14の汚水Wを第一処理槽11に容易に還流することができる。また、当該汚水処理装置1は、ガス供給流路8と傘部29とを有するため、第一流路23に気体を供給するための気体供給装置を準備する必要がなく、設置費用を低減することができると共に、汚水処理のランニングコストを低減することができる。
【0052】
[その他の実施形態]
上記開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0053】
上述の揚水器1は、第一流路3の上端が気体供給口32を構成しているもので説明したが、
図5で示すように、揚水器110の気体供給口115は、第一流路113の上端を封止して第一流路113の上方で側部に形成されてもよい。第一流路113の上端は、液体Wの水面下に位置するようにしてもよい。
【0054】
揚水器120の第二流路124における湾曲部分121は、
図6で示すように、第一流路123から離間する方向に、斜め下方に傾斜する第一ストレート部分121aと、この第一ストレート部分121aに垂直で斜め上方に傾斜する第二ストレート部分121bとを有してもよい。
【0055】
また、揚水器1の中間部分43は、必ずしも液体Wの水面と平行である必要はなく、
図7で示すように、第二流路134の中間部分135は、揚水器130における第一流路133の連通部131から離間するにつれて下方に下がるように傾斜し、湾曲部分132の一部をなすように設けてもよい。この場合、湾曲部分132は、下方に向けて湾曲する下降部分を有しなくてもよい。
【0056】
第一流路は、略直線状に形成される必要はなく、
図8及び
図9で示すように、揚水器140、150における第一流路143、153が、屈曲部分141,151を有し、この屈曲部分141,151に連通部142,152が設けられてもよい。
【0057】
上述の汚水処理装置は、好気性処理(曝気処理)を行う槽を有しないもので説明したが、好気性処理を行う槽を有してもよい。
【0058】
また、汚水処理装置は、中間処理槽の数を一又は三以上としてもよく、中間処理槽を有しないものであってもよい。さらに、汚水処理装置は、処理槽が一つのものであってもよい。
【0059】
液体処理装置は、汚水を生物処理する汚水処理に限定されず、例えば、触媒を用いて工場排水を浄化するものであってもよい。
【0060】
上述の傘部は、板状部材で略円錘状に形成されたもので説明したが、形状は、上昇する気体を収集できるものであれば特に限定されるものでなく、三角錐状、四角錐状、多角錘状、半球状などとしてもよい。
【0061】
当該揚水器は、貯留槽及び汚水処理装置に用いられることに限定されず、各産業分野における水槽、タンク等、液体を貯留し、又は液体を貯留して処理するものであれば、利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の揚水器は、上述のように、簡易な構成であるため、低コストで、容易に貯留槽内の液体を汲み上げて吐出することができる。このため、液体を貯留する各種貯留槽、特に汚水処理装置に好適に使用される。
【符号の説明】
【0063】
1,20,110,120,130,140,150 揚水器
2 貯留槽
3,23,113,123,133,143,153 第一流路
31 液体導入口
32,115 気体供給口
33,131,142,152 連通部
4,24,124,134 第二流路
41,121,132,241 湾曲部分
41a 下降部分
41b 上昇部分
42 吐出口
43,135 中間部分
44 延長部分
44a 垂直部分
44b 水平部分
5,8 ガス供給流路
6 液体供給管
7 移送流路
71 排出口
8a 連結管
9,29 傘部
10 汚水処理装置
11 第一処理槽
12,13 中間処理槽
11a,12a,13a 隔壁
11b,12b 流路
11c,12c,13c 開口部
14 最終処理槽
15 流入口
16 流出口
121a 第一ストレート部分
121b 第二ストレート部分
141,151 屈曲部分
W 液体(汚水)