(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111575
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】電気検査装置及び電気検査方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H05K3/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013489
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】石井 徹
(72)【発明者】
【氏名】竹山 裕隆
(57)【要約】
【課題】本発明は、電気検査ヘッドをプリント基板に対して素早くかつ容易に位置合わせすることが可能な電気検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る電気検査装置1は、プリント基板Wに法線方向側から接触可能な電気検査ヘッド10と、電気検査ヘッド10を、プリント基板Wの法線方向と平行な回転軸Rを中心として回転させる回転機構11と、プリント基板Wに対して法線方向から正対する光学素子22aを有し、プリント基板Wを撮像可能な撮像部12と、撮像部12を近接位置P1と回避位置P2との間で移動させる移動機構13とを備え、近接位置P1は、電気検査ヘッド10が回転したときに撮像部12が電気検査ヘッド10と接触し得る位置であり、回避位置P2は、電気検査ヘッド10が回転したときに撮像部12が電気検査ヘッド10と接触しない位置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に法線方向側から接触可能な電気検査ヘッドと、
前記電気検査ヘッドを、前記法線方向と平行な回転軸を中心として回転させる回転機構と、
前記プリント基板に対して法線方向から正対する光学素子を有し、前記プリント基板を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部を近接位置と回避位置との間で移動させる移動機構と
を備え、
前記近接位置は、前記電気検査ヘッドが回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触し得る位置であり、
前記回避位置は、前記電気検査ヘッドが回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触しない位置である
電気検査装置。
【請求項2】
前記移動機構が、前記電気検査ヘッドとは独立して前記撮像部を移動させる請求項1に記載の電気検査装置。
【請求項3】
前記回避位置が、前記近接位置から前記プリント基板の法線方向に遠ざかる位置である請求項1又は請求項2に記載の電気検査装置。
【請求項4】
前記プリント基板の法線方向視において、前記近接位置における前記撮像部と前記回転軸との間隔が、前記回避位置における前記撮像部と前記回転軸との間隔と同じである請求項1、請求項2又は請求項3に記載の電気検査装置。
【請求項5】
前記電気検査ヘッドを、前記プリント基板の平面方向に位置決め可能な位置決め機構をさらに備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気検査装置。
【請求項6】
前記位置決め機構が、前記電気検査ヘッドと前記撮像部とを同時に前記平面方向に位置決めする請求項5に記載の電気検査装置。
【請求項7】
プリント基板に法線方向側から接触可能な電気検査ヘッドと、
前記電気検査ヘッドを、前記法線方向と平行な回転軸を中心として回転させる回転機構と、
前記プリント基板に対して法線方向から正対する光学素子を有し、前記プリント基板を撮像可能な撮像部と、
前記撮像部を近接位置と回避位置との間で移動させる移動機構と
を備える電気検査装置を用い、
前記近接位置が、前記電気検査ヘッドを回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触し得る位置であり、前記回避位置が、前記電気検査ヘッドを回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触しない位置であるように前記撮像部を移動させる、
電気検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気検査装置及び電気検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の電気的な特性を検査するために電気検査装置が用いられている。この電気検査装置は、複数のプローブ(電気接触子)が配置された電気検査ヘッドと、プリント基板を法線方向から撮像可能な撮像部とを備えている。この電気検査装置は、撮像部によってプリント基板を撮像し、電気検査ヘッドをプリント基板の被検査領域に対して位置合わせしたうえで、電気検査ヘッドをプリント基板に法線方向から接触させることで、プリント基板の電気的な特性を検査する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、第4実施形態において、電気検査治具50aのベースプレート51に連結される位置決め機構57を有しており、この位置決め機構57に画像認識用カメラ56が配置された構成が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載されている電気検査装置は、位置決め機構57によって画像認識用カメラ56の位置調節ができるため、画像認識用カメラ56を予め正確な位置に固定しておくことを要しない。
【0006】
一方で、このような電気検査装置では、電気検査ヘッドをプリント基板の被検査領域に位置合わせする際に、電気検査ヘッドをプリント基板の法線方向と平行な軸の周りに回転させることがある。しかしながら、特許文献1に記載されている構成によると、電気検査ヘッドを回転させた場合に、画像認識用カメラが電気検査ヘッドと一緒に回転する。そのため、特許文献1に記載されている電気検査装置は、画像認識用カメラによる撮像と電気検査ヘッドの被検査領域に対する位置合わせとを連続して素早く行う点で、さらなる改良の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、電気検査ヘッドをプリント基板に対して素早くかつ容易に位置合わせすることが可能な電気検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る電気検査装置は、プリント基板に法線方向側から接触可能な電気検査ヘッドと、前記電気検査ヘッドを、前記法線方向と平行な回転軸を中心として回転させる回転機構と、前記プリント基板に対して法線方向から正対する光学素子を有し、前記プリント基板を撮像可能な撮像部と、前記撮像部を近接位置と回避位置との間で移動させる移動機構とを備え、前記近接位置は、前記電気検査ヘッドが回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触し得る位置であり、前記回避位置は、前記電気検査ヘッドが回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触しない位置である。
【0009】
前記移動機構が、前記電気検査ヘッドとは独立して前記撮像部を移動させるとよい。
【0010】
前記回避位置が、前記近接位置から前記プリント基板の法線方向に遠ざかる位置であるとよい。
【0011】
前記プリント基板の法線方向視において、前記近接位置における前記撮像部と前記回転軸との間隔が、前記回避位置における前記撮像部と前記回転軸との間隔と同じであるとよい。
【0012】
当該電気検査装置は、前記電気検査ヘッドを、前記プリント基板の平面方向に位置決め可能な位置決め機構をさらに備えるとよい。
【0013】
前記位置決め機構が、前記電気検査ヘッドと前記撮像部とを同時に前記平面方向に位置決めするとよい。
【0014】
本発明の別の一態様に係る電気検査方法は、プリント基板に法線方向側から接触可能な電気検査ヘッドと、前記電気検査ヘッドを、前記法線方向と平行な回転軸を中心として回転させる回転機構と、前記プリント基板に対して法線方向から正対する光学素子を有し、前記プリント基板を撮像可能な撮像部と、前記撮像部を近接位置と回避位置との間で移動させる移動機構とを備える電気検査装置を用い、前記近接位置が、前記電気検査ヘッドを回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触し得る位置であり、前記回避位置が、前記電気検査ヘッドを回転したときに前記撮像部が前記電気検査ヘッドと接触しない位置であるように前記撮像部を移動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係る電気検査装置は、前記撮像部を近接位置に配置した状態で、この撮像部によって前記プリント基板を法線方向から撮像した後に、前記撮像部を前記電気検査ヘッドが回転したときに前記電気検査ヘッドと接触しない回避位置に移動することができる。そのため、当該電気検査装置は、前記電気検査ヘッドの近傍から前記撮像部によって前記プリント基板を撮像したうえで、前記電気検査ヘッドを前記撮像部とは独立して回転させることができる。その結果、当該電気検査装置は、前記電気検査ヘッドを前記プリント基板に対して素早くかつ容易に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気検査装置を、プリント基板の法線方向に対して垂直な方向から見た模式的側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の電気検査装置における撮像部を回避位置に移動した状態を示す模式的側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の電気検査装置を用いた電気検査方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、
図4の電気検査方法における電気検査ヘッドの回転途中の状態を示す模式的平面図である。
【
図6】
図6は、
図4の電気検査方法における電気検査ヘッドの回転後に撮像部を近接位置に移動した状態を示す模式的側面図である。
【
図7】
図7は、
図4の電気検査方法における電気検査ヘッドをプリント基板に接触させた状態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、本明細書に記載の数値については、記載された上限値と下限値との一方のみを採用すること、或いは上限値と下限値を任意に組み合わせることが可能である。
【0018】
[電気検査装置]
図1及び
図2の電気検査装置1は、プリント基板Wに法線方向(
図1のZ方向)側から接触可能な電気検査ヘッド10と、電気検査ヘッド10を、前記法線方向と平行な回転軸Rを中心として回転させる回転機構11と、プリント基板Wに対して法線方向から正対する光学素子22aを有し、プリント基板Wを撮像可能な撮像部12と、撮像部12を近接位置と回避位置との間で移動させる移動機構13とを備える。また、当該電気検査装置1は、電気検査ヘッド10を、プリント基板Wの平面方向(
図1のXY平面方向)に位置決め可能な位置決め機構14と、電気検査ヘッド10をプリント基板Wの法線方向に昇降させる昇降機構15と、位置決め機構14に接続される筐体16と、回転機構11、移動機構13、位置決め機構14及び昇降機構15の動作を制御する制御部17とを備える。なお、
図1では、プリント基板Wの両面側にそれぞれ電気検査ヘッド10及び撮像部12が配置されている。但し、当該電気検査装置1において、電気検査ヘッド10及び撮像部12の一方又は両方は、プリント基板Wの片面側にのみ配置されていてもよい。また、
図1では、電気検査ヘッド10と制御部17とが1対1対応で設けられた構成を図示している。但し、当該電気検査装置1は、一対の電気検査ヘッド10に共通の制御部17を有していてもよい。
【0019】
〔プリント基板〕
プリント基板Wは、板状又はシート状である。プリント基板Wとしては、薄膜状の基材に回路パターンが配置されたものを用いることができる。プリント基板Wには、複数の被検査領域が存在している。当該電気検査装置1は、各被検査領域に対して電気検査ヘッド10を接触させることで、被検査領域毎に電気検査を行うように構成されている。当該電気検査装置1は、プリント基板Wに配置されている複数の被検査領域に対して連続的に電気検査するよう構成されている。なお、本発明において「板状」と「シート状」との間に明確な区別はないが、自重による撓みを実質的に生じないものを「板状」といい、可撓性を有しており、自重により撓みを生じるものを「シート状」ということができる。また、「シート状」は「フィルム状」を含む概念である。
【0020】
プリント基板Wは例えば平面視矩形状である。プリント基板Wは、把持具31によって4つの角部を把持された状態で水平に保持されている。プリント基板Wは、その周縁部が把持具31によって部分的に把持されることで空中に保持されている。
【0021】
プリント基板Wには、撮像部12による撮像対象となる基準位置マーカー(不図示)が設けられている。この基準位置マーカーは、プリント基板Wの被検査領域と電気検査ヘッド10との相対的な位置関係を求めるために用いられる。前記基準位置マーカーは、例えば回路パターンそのものであってもよく、回路パターンとは別個に設けられた位置決め用のマークであってもよい。
【0022】
(電気検査ヘッド)
電気検査ヘッド10は、複数のプローブ21aと、複数のプローブ21aが通過可能な貫通孔を有する一対の支持板(プリント基板Wに法線方向から接触可能な底板21b、及びプリント基板Wから法線方向に離れる方向において底板21bと対向して配置される天板21c)と、天板21cに固定される基台21dとを有する。複数のプローブ21aは、プリント基板Wの回路パターンに接触可能に設けられている。
【0023】
プリント基板Wの法線方向視(以下、「平面視」ともいう)において、電気検査ヘッド10は角部を有している。より詳しくは、電気検査ヘッド10は、4つの角部を有する平面視矩形状である。また、基台21dは、平面視で角部を有している。基台21dの平面形状は、電気検査ヘッド10の平面形状と等しい。基台21dの具体的な形状としては、プリント基板Wの法線方向を厚さ方向とする直方体が挙げられる。なお、「直方体」とは、完全な直方体に限定されず、部分的に凹凸を有する形状や、角部が丸められている形状等を含む。
【0024】
基台21dの厚さT1は、必要な強度を維持しつつ複数のプローブ21aを適切に保持できる範囲で設定可能である。このような観点から、基台21dの厚さT1の下限としては、30mmが好ましく、40mmがより好ましい。一方、基台21dの厚さT1の上限としては、100mmが好ましく、80mmがより好ましく、60mmがさらに好ましい。前記厚さT1が前記上限を超えると、移動機構13による撮像部12の移動距離を十分に小さくし難くなるおそれがある。
【0025】
電気検査ヘッド10の厚さT2(底板21bの底面と基台21dの天面とによって画定される厚さ)は、必要な強度を維持しつつ、複数のプローブ21aによってプリント基板Wの電気検査を適切に行える範囲で設定可能である。電気検査ヘッド10の厚さT2の下限としては、例えば50mmが好ましく、60mmがより好ましい。一方、電気検査ヘッド10の厚さT2の上限としては、例えば150mmが好ましく、120mmがより好ましく、90mmがさらに好ましい。
【0026】
(回転機構)
回転機構11は、撮像部12(より詳しくは、後述の撮像端末22)とは独立して、電気検査ヘッド10を回転可能に構成されている。回転機構11は、電気検査ヘッド10に直交する回転軸Rを回転中心として電気検査ヘッド10を回転させる。回転軸Rは、平面視における電気検査ヘッド10の中心部分に配置されている。回転機構11の具体的な構成としては、特に限定されるものではないが、筐体16に配置された軸受(不図示)によって電気検査ヘッド10を直接的又は間接的に回転可能に保持する構成が挙げられる。
【0027】
(撮像部)
撮像部12は、プリント基板Wに法線方向から正対する前述の光学素子22aを含む撮像端末22と、画像処理部とを有する。撮像端末22はデジタル画像を撮像可能に設けられている。撮像端末22は、プリント基板Wに設けられている前述の基準位置マーカーを前記法線方向から撮像する。光学素子22aとしては、例えばレンズが挙げられる。前記画像処理部は、撮像端末22が撮像したデジタル画像を処理する。
【0028】
撮像端末22は、電気検査ヘッド10の側方から前記基準位置マーカーを撮像可能に設けられている。このように構成されることで、撮像時における撮像端末22とプリント基板Wとの間隔を小さくすることができる。その結果、撮像端末22に取り込む光量を大きくし、撮像端末22で撮像される画像の認識精度を高めることができる。
【0029】
撮像端末22は、電気検査ヘッド10に近接する位置(近接位置P1)から前記基準位置マーカーを撮像する。より詳しくは、撮像端末22は、電気検査ヘッド10を回転させた際に電気検査ヘッド10の角部と接触し得る位置から前記基準位置マーカーを撮像する。このように撮像端末22を電気検査ヘッド10に近接して配置することで、前記基準位置マーカーの撮影後に、電気検査ヘッド10をプリント基板Wの被検査領域に位置合わせする際の電気検査ヘッド10の移動距離を小さくすることができる。その結果、電気検査処理の効率化を図りつつ、電気検査ヘッド10の移動に起因する誤差を抑制することができる。
【0030】
前記画像処理部は、制御部17に含まれていてもよく、制御部17とは別個に設けられていてもよい。前記画像処理部が制御部17に含まれる場合、前記画像処理部は、制御部17によって処理されるプログラムの一部であってもよい。
【0031】
(移動機構)
移動機構13は、撮像端末22を保持している。
図1及び
図3に示すように、移動機構13は、撮像端末22を近接位置P1と回避位置P2との間で移動させる。近接位置P1は、電気検査ヘッド10が回転したときに撮像部12(より詳しくは撮像端末22)が電気検査ヘッド10と接触し得る位置である。また、回避位置P2は、電気検査ヘッド10が回転したときに撮像部12(より詳しくは撮像端末22)が電気検査ヘッド10と接触しない位置である。
【0032】
前述のように、当該電気検査装置1は、近接位置P1から撮像端末22によって前記基準位置マーカーを撮像することによって電気検査処理の効率化等を図ることができる。一方で、撮像端末22が近接位置P1に配置されていると、電気検査ヘッド10の回転が制限されることになり、電気検査ヘッド10を被検査領域に位置合わせし難くなることがある。そのため、当該電気検査装置1では、移動機構13によって撮像端末22を回避位置P2に移動できるよう構成している。
【0033】
移動機構13は、電気検査ヘッド10とは独立して撮像部12を移動させることが好ましい。換言すると、移動機構13は、電気検査ヘッド10が回転及び昇降した際に、撮像端末22が電気検査ヘッド10に追随して移動しないように設けられていることが好ましい。この構成によると、プリント基板Wに対する光学素子22aの焦点距離を保ちつつ、プリント基板Wに対して電気検査ヘッド10を位置合わせし、かつこの位置合わせ後に電気検査ヘッド10によって電気検査を行うことができる。その結果、電気検査をより効率的かつ安定的に行うことができる。
【0034】
図3に示すように、回避位置P2は、近接位置P1からプリント基板Wの法線方向に遠ざかる位置であることが好ましい。このように構成されることで、当該電気検査装置1は、撮像端末22を電気検査ヘッド10の側方で、かつ電気検査ヘッド10と近接して配置した場合でも、撮像端末22の移動距離が増加することを防止できる。その結果、電気検査処理の効率化を促進しつつ、電気検査ヘッド10の移動に起因する誤差をより容易に抑制することができる。
【0035】
プリント基板Wの法線方向視において、近接位置P1における撮像部12(より詳しくは撮像端末22)と回転軸Rとの間隔は、回避位置P2における撮像部12(より詳しくは撮像端末22)と回転軸Rとの間隔と同じであることが好ましい。このように構成されることで、撮像端末22の移動距離を容易に小さくすることができる。
【0036】
移動機構13は、撮像端末22を直動させるように設けられていることが好ましい。この構成によると、撮像端末22の移動距離をより容易に小さくすることができる。
【0037】
近接位置P1と回避位置P2との間における撮像部12の移動距離としては、電気検査ヘッド10の厚さT2以下が好ましく、基台21dの厚さT1以下がより好ましい。当該電気検査装置1は、例えば基台21dの側方から撮像端末22によって前記基準位置マーカーを撮像するように構成することで、撮像部12の移動距離を基台21dの厚さT1以下に制御することができる。この構成によると、近接位置P1におけるプリント基板Wに対する光学素子22aの焦点距離を適切に維持しつつ、撮像端末22の移動距離を容易に小さくすることができる。
【0038】
移動機構13は、筐体16に連結された状態で撮像端末22を保持している。移動機構13は、撮像端末22を筐体16に対してプリント基板Wの法線方向にスライド可能に設けられている。このように構成されることで、移動機構13は、電気検査ヘッド10とは独立して、撮像端末22をプリント基板Wの法線方向に移動することができる。移動機構13の具体的な構成としては、例えば筐体16に配置されるレール部材と、このレール部材にスライド可能に配置され、撮像端末22を固定可能な可動部材とを有する構成が挙げられる。
【0039】
(位置決め機構)
位置決め機構14は、電気検査ヘッド10の向きを維持した状態で、この電気検査ヘッド10をプリント基板Wの平面方向に位置決めする。当該電気検査装置1は、位置決め機構14を備えることで、前記基準位置マーカーを撮像部12によって撮像した後に、電気検査ヘッド10を被検査領域に容易に位置合わせすることができる。
【0040】
位置決め機構14の具体的な構成としては、電気検査ヘッド10をプリント基板Wの平面方向に位置決めできる限り、特に限定されるものではないが、例えば
図1及び
図2に示す直交座標型システムが挙げられる。位置決め機構14は、プリント基板Wの平面方向と平行な一方向(
図1及び
図2のY方向)に並行に延びる一対の固定レール14aと、プリント基板Wの平面方向と平行に延び、一対の固定レール14a間に掛け渡される可動レール14bと、可動レール14bに配置される移動体14cとを有する。移動体14cには、筐体16が固定されている。
【0041】
位置決め機構14は、一対の固定レール14aの延在方向(
図1及び
図2のY方向)に沿って可動レール14bが移動し、かつ可動レール14bの延在方向(
図1及び
図2のX方向)に沿って移動体14cが移動するように構成されている。このように構成されていることで、筐体16は、プリント基板Wの平面方向における向きを維持しつつ、この平面方向に移動可能に設けられる。その結果、電気検査ヘッド10も、筐体16と共に、プリント基板Wの平面方向における向きを維持しつつ、この平面方向に移動する。
【0042】
また、位置決め機構14は、電気検査ヘッド10と撮像部12とを同時にプリント基板Wの平面方向に位置決め可能に設けられている。より詳しく説明すると、撮像端末22は、移動機構13を介して筐体16に連結されていることで、筐体16と共に、プリント基板Wの平面方向に移動するよう構成されている。その結果、電気検査ヘッド10と撮像端末22とは、筐体16を介して、位置決め機構14によって同時にプリント基板Wの平面方向に位置決めされるよう構成されている。このように構成されていることで、当該電気検査装置1は、電気検査処理の効率化を促進しつつ、電気検査ヘッド10の移動に起因する誤差をより容易に抑制することができる。
【0043】
(昇降機構)
昇降機構15は、電気検査ヘッド10の基台21dに固定される固定部材18を昇降可能に設けられている。昇降機構15は、固定部材18を昇降させることで、電気検査ヘッド10をプリント基板Wの法線方向に移動させる。
【0044】
固定部材18は、筐体16に対してスライド可能に配置されている。固定部材18は、筐体16とは独立して昇降するよう構成されている。このように構成されることで、昇降機構15は、移動機構13による撮像部12の移動とは独立して電気検査ヘッド10を昇降させるように設けられている。
【0045】
(筐体)
筐体16は、前述のように移動体14cに固定されている。これにより、筐体16は、プリント基板Wの平面方向における向きを維持しつつ、プリント基板Wの平面方向に移動可能に構成されている。
【0046】
(制御部)
制御部17は、例えばデータ処理を行うCPU(Central Processing Unit)や各種情報を一時的或いは恒久的に記憶する半導体メモリ等の記憶部を有するコンピュータを含んで構成される。
【0047】
制御部17による制御手順の一例について説明する。制御部17は、まず、撮像端末22によって近接位置P1からプリント基板Wの前記基準位置マーカーを撮像させる。次に、制御部17は、撮像端末22を回避位置P2に移動させ、この状態で電気検査ヘッド10を回転軸Rを回転中心として90°回転させると共に、電気検査ヘッド10をプリント基板Wの被検査領域に位置合わせする。また、制御部17は、電気検査ヘッド10の回転後に、撮像端末22を近接位置P1に移動させる。さらに、制御部17は、撮像端末22を近接位置P1に維持しつつ、電気検査ヘッド10をプリント基板Wに法線方向側から接触させ、プリント基板Wの被検査領域における電気検査を行う。制御部17は、電気検査ヘッド10による電気検査が終わった後に、電気検査ヘッド10をプリント基板Wから離間させる。制御部17は、プリント基板Wの各被検査領域に対して、必要に応じて一部の手順を変更しつつ前述の手順を行うよう、回転機構11、移動機構13、位置決め機構14及び昇降機構15の動作を制御する。当該電気検査装置1は、制御部17が前述の制御を行うことで、電気検査ヘッド10をプリント基板Wに対して素早くかつ容易に位置合わせしつつ、プリント基板Wの電気検査を適切に行うことができる。
【0048】
[電気検査方法]
次に、各図を参照して、
図1及び
図2の電気検査装置1を用いた電気検査方法について説明する。
【0049】
当該電気検査方法は、プリント基板Wに法線方向側から接触可能な電気検査ヘッド10と、電気検査ヘッド10を、前記法線方向と平行な回転軸Rを中心として回転させる回転機構11と、プリント基板Wに対して法線方向から正対する光学素子22aを有し、プリント基板Wを撮像可能な撮像部12と、撮像部12を近接位置P1と回避位置P2との間で移動させる移動機構13とを備える電気検査装置1を用いて行う。
図4に示すように、当該電気検査方法は、近接位置P1で撮像部12によってプリント基板Wを撮像し(S1)、撮像部12を回避位置P2に移動し(S2)、電気検査ヘッド10を回転し(S3)、撮像部12を近接位置P1に移動し(S4)、電気検査ヘッド10をプリント基板Wに接触させる(S5)。なお、当該電気検査方法は、S5の後に、電気検査ヘッド10をプリント基板Wから離間する手順を備える。当該電気検査方法は、プリント基板Wの各被検査領域に対して、必要に応じて一部の手順を変更しつつ前述の手順を繰り返し行うことで、電気検査ヘッド10をプリント基板Wに対して素早くかつ容易に位置合わせしつつ、プリント基板Wの電気検査を適切に行うことができる。
【0050】
(S1)
S1では、
図1に示すように、撮像端末22が近接位置P1に配置されている状態で、撮像端末22によってプリント基板Wの基準位置マーカーを撮像する。
【0051】
(S2)
S2では、
図3に示すように、撮像端末22を回避位置P2に移動する。S2では、近接位置P1が、電気検査ヘッド10を回転したときに撮像部12(より詳しくは撮像端末22)が電気検査ヘッド10に接触し得る位置であり、回避位置P2が、電気検査ヘッド10を回転したときに撮像部12(より詳しくは撮像端末22)が電気検査ヘッド10と接触しない位置であるように撮像部12を移動させる。
【0052】
(S3)
S3では、
図5に示すように、撮像端末22が回避位置P2にある状態で、回転軸Rを回転中心として電気検査ヘッド10を回転させる。より詳しくは、S3では、プリント基板Wの法線方向視において、撮像端末22が電気検査ヘッド10と重なり合わない位置まで電気検査ヘッド10を回転させる。電気検査ヘッド10の回転角度としては、特に限定されるものではないが、典型的には90°とすることができる。
【0053】
(S4)
S4では、
図6に示すように、S3で電気検査ヘッド10を回転した後に、撮像端末22を近接位置P1に移動する。より詳しくは、S4では、S2で撮像端末22を近接位置P1から回避位置P2に移動させたのと同じ経路を通って撮像端末22を回避位置P2から近接位置P1に移動する。なお、当該電気検査方法では、S1の終わりからS5の開始までの任意のタイミングで、位置決め機構14によって電気検査ヘッド10をプリント基板Wの被検査領域に位置合わせするとよい。
【0054】
(S5)
S5では、
図7に示すように、電気検査ヘッド10をプリント基板Wに法線方向側から接触させ、複数のプローブ21aによって被検査領域の電気検査を行う。
【0055】
<利点>
当該電気検査装置1は、撮像部12を近接位置P1に配置した状態で、この撮像部12によってプリント基板Wを法線方向から撮像した後に、撮像部12を電気検査ヘッド10が回転したときに電気検査ヘッド10と接触しない回避位置P2に移動することができる。そのため、当該電気検査装置1は、電気検査ヘッド10の近傍から撮像部12によってプリント基板Wを撮像したうえで、電気検査ヘッド10を撮像部12とは独立して回転させることができる。その結果、当該電気検査装置1は、電気検査ヘッド10を前記プリント基板Wに対して素早くかつ容易に位置合わせすることができる。このため、当該電気検査装置1は、プリント基板Wの電気検査を素早くかつ安定的に行うことができる。
【0056】
当該電気検査方法は、撮像部12を近接位置P1に配置した状態で、この撮像部12によってプリント基板Wを法線方向から撮像した後に、撮像部12を電気検査ヘッド10が回転したときに電気検査ヘッド10と接触しない回避位置P2に移動することができる。そのため、当該電気検査方法は、電気検査ヘッド10の近傍から撮像部12によってプリント基板Wを撮像したうえで、電気検査ヘッド10を撮像部12とは独立して回転させることができる。その結果、当該電気検査方法は、電気検査ヘッド10を前記プリント基板Wに対して素早くかつ容易に位置合わせすることができる。このため、当該電気検査方法は、プリント基板Wの電気検査を素早くかつ安定的に行うことができる。
【0057】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0058】
前記実施形態では、移動機構が撮像部をプリント基板の法線方向に移動させる構成について説明した。但し、当該電気検査装置において、前記撮像部の移動方向は前記プリント基板の法線方向に限定されない。例えば前記移動機構は、前記撮像部を前記プリント基板の平面方向に移動させてもよい。また、前記移動機構は、前記撮像部を直動させなくてもよい。例えば前記移動機構は、前記撮像部を前記プリント基板の平面方向に旋回移動させてもよい。
【0059】
前記実施形態では、前記プリント基板が水平方向に保持される構成について説明した。但し、前記プリント基板の保持方向は、装置の仕様に応じて変更可能である。また、前記実施形態では、把持具によって前記プリント基板の角部を把持する構成について説明したが、当該電気検査装置におけるプリント基板の把持方法は前記構成に限定されるものではない。
【0060】
前記電気検査ヘッドの具体的な構成は、前述の実施形態の構成に限定されない。例えば前記電気検査ヘッドは、前述の支持板を有しない構成を採用することも可能である。前記支持板を有しない構成としては、前記底板及び前記天板の一方又は両方を有しない構成が挙げられる。例えば前記電気検査ヘッドが前記底板を有しない場合、前記電気検査ヘッドの厚さは、前記基台と前記プローブとの合計厚さによって求めることができる。なお、ここでいうプローブの厚さとは、電気検査前の状態におけるプローブの突出長さを意味する。
【0061】
前述のように、前記移動機構は、前記電気検査ヘッドとは独立して前記撮像部を移動できることが好ましい。但し、当該電気検査装置は、前記撮像部を前記電気検査ヘッドの回転にあわせて回転しないように保持できる場合であれば、前記撮像部が前記電気検査ヘッドにあわせて昇降する構成を採用することも可能である。
【0062】
前記実施形態では、前記電気検査ヘッドと前記撮像部とが、前記位置決め機構によって前記プリント基板の平面方向に同時に位置決めされる構成について説明した。但し、当該電気検査装置は、前記電気検査ヘッドと前記撮像部とが、前記プリント基板の平面方向に別々に位置決めされる構成を採用することも可能である。
【0063】
前記実施形態では、前記電気検査ヘッドが、前記位置決め機構によって前記プリント基板の平面方向に位置決めされる構成について説明した。但し、当該電気検査装置は、前記プリント基板が平面方向に移動することで、前記電気検査ヘッドが前記プリント基板の平面方向に位置決めされるよう構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明の一態様に係る電気検査装置は、電気検査ヘッドをプリント基板に対して素早くかつ容易に位置合わせするのに適している。
【符号の説明】
【0065】
1 電気検査装置
10 電気検査ヘッド
11 回転機構
12 撮像部
13 移動機構
14 位置決め機構
14a 固定レール
14b 可動レール
14c 移動体
15 昇降機構
16 筐体
17 制御部
18 固定部材
21a プローブ
21b 底板
21c 天板
21d 基台
22 撮像端末
22a 光学素子
31 把持具
R 回転軸
W プリント基板
P1 近接位置
P2 回避位置
T1 基台の厚さ
T2 電気検査ヘッドの厚さ