(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111577
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法、および水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20230803BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20230803BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20230803BHJP
C02F 11/10 20060101ALI20230803BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20230803BHJP
C02F 11/14 20190101ALI20230803BHJP
C02F 11/148 20190101ALI20230803BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230803BHJP
【FI】
C02F11/00 B
B01J3/00 A ZAB
C02F11/04 A
C02F11/10 Z
C02F11/121
C02F11/14
C02F11/148
B09B3/00 302G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013491
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(71)【出願人】
【識別番号】522043552
【氏名又は名称】テラノバ エナジー ゲー エム ベー ハー
【氏名又は名称原語表記】TerraNova Energy GmbH
【住所又は居所原語表記】Schirmerstrasse 61, 40211 Duesseldorf, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】隅 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 博司
(72)【発明者】
【氏名】マーク・バットマン
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AC05
4D004BA03
4D004CA10
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA18
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4D004CB31
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4D059AA01
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4D059BE26
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4D059BE57
4D059BE58
4D059BE59
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4D059DA22
4D059DA23
4D059DA24
4D059DA31
4D059DA33
4D059EB01
4D059EB06
4D059EB16
(57)【要約】
【課題】水熱炭化反応を効率化することができる有機性廃棄物の処理方法および処理設備を提供すること。
【解決手段】有機性廃棄物の処理方法は、有機性廃棄物を消化槽1(メタン発酵槽)の中で嫌気性発酵処理するメタン発酵工程と、メタン発酵工程後の発酵処理汚泥を脱水機2により脱水する第1脱水工程と、第1脱水工程で得られた脱水汚泥を水熱炭化装置3で水熱炭化処理する汚泥炭化工程と、汚泥炭化工程で得られた炭化汚泥スラリーを第2脱水機4により脱水する第2脱水工程と、を備え、汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥に所定量の酸を添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をメタン発酵槽の中で嫌気性発酵処理するメタン発酵工程と、
前記メタン発酵工程後の発酵処理汚泥を脱水する第1脱水工程と、
前記第1脱水工程で得られた脱水汚泥を水熱炭化処理する汚泥炭化工程と、
前記汚泥炭化工程で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する第2脱水工程と、
を備え、
前記汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥に所定量の酸を添加する、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法において、
前記第2脱水工程で前記炭化汚泥スラリーから分離した水熱炭化脱水ろ液を、前記メタン発酵槽に戻すろ液返送工程と、
前記第1脱水工程で前記発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液を、鉄系無機凝集剤を用いて酸性凝集沈殿処理する分離液処理工程と、
をさらに備える、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法において、
前記炭化汚泥スラリーのpHを測定するpH測定工程と、
前記pH測定工程で得られた前記炭化汚泥スラリーのpHの値に基づいて、前記脱水汚泥への前記酸の添加量を調整する酸添加量調整工程と、
をさらに備える、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法において、
前記酸は硫酸である、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法において、
前記第1脱水工程において、鉄系無機凝集剤を用いて前記発酵処理汚泥を脱水する、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
請求項4または5のいずれかに記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法において、
前記汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥への前記硫酸の添加量が20~140g‐H2SO4/kg‐DSである、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、
前記メタン発酵槽から排出された発酵処理汚泥を脱水する第1脱水機と、
前記第1脱水機で得られた脱水汚泥を水熱炭化処理する水熱炭化装置と、
前記水熱炭化装置で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する第2脱水機と、
を備え、
前記水熱炭化装置は、前記脱水汚泥に所定量の酸を添加する酸添加装置を有する、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備。
【請求項8】
請求項7に記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備において、
前記水熱炭化装置は、
前記脱水汚泥を、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて高温高圧処理するリアクターを備え、
前記脱水汚泥は、断続的に脱水汚泥供給ポンプにより前記リアクターに供給され、
前記酸添加装置は、前記脱水汚泥供給ポンプの運転中に前記脱水汚泥に前記酸を添加する、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかに記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備において、
前記水熱炭化装置は、前記炭化汚泥スラリーのpHを測定するpH測定手段をさらに有し、
前記酸添加装置は、前記pH測定手段で得られた前記炭化汚泥スラリーのpHの値に基づいて、前記脱水汚泥への前記酸の添加量を調整する、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備において、
前記酸は硫酸である、
水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法、および水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃棄物の処理方法に関する技術として、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載の有機性廃棄物の処理方法は、有機廃棄物が、有機廃棄物源から湿潤廃棄物タンク、および湿潤廃棄物混合タンクに供給され、その後、混合湿潤廃棄物の第1のバッチが、第1の熱反応器へ供給されて加熱および加圧を受け、混合湿潤廃棄物の第2のバッチが、第2の熱反応器に供給されて加熱および加圧を受け、加水分解プロセスバイオチャースラッジ(BCS)が、第1の熱反応器(5)または第2の熱反応器(6)からバイオチャー冷却器へ交互に排出される。
【0003】
特許文献1の明細書の段落0041には、「この配置により、システム自体の中でのエネルギーの使用を最適化するコンパクトなシステムを実現することができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の有機性廃棄物の処理方法において、混合湿潤廃棄物のバッチが、熱反応器へ供給されて加熱および加圧を受ける熱加水分解プロセスは、200~250℃、20~25バール、3~5時間の条件下で行われ、高温高圧かつ長時間のプロセスであることから、熱加水分解するためのコストがかかるとともに、処理に時間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、水熱炭化反応を効率化することができる有機性廃棄物の処理方法および処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示する有機性廃棄物の処理方法は、水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理方法であって、有機性廃棄物をメタン発酵槽の中で嫌気性発酵処理するメタン発酵工程と、前記メタン発酵工程後の発酵処理汚泥を脱水する第1脱水工程と、前記第1脱水工程で得られた脱水汚泥を水熱炭化処理する汚泥炭化工程と、前記汚泥炭化工程で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する第2脱水工程と、を備え、前記汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥に所定量の酸を添加する。
【0008】
第1脱水工程で得られた脱水汚泥に所定量の酸を添加して水熱炭化処理することで、酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能することから、反応温度を低下させたり、処理時間を短縮させたりしても、水熱炭化反応が進行し、水熱炭化処理を効率化することができる。
【0009】
また、前記第2脱水工程で前記炭化汚泥スラリーから分離した水熱炭化脱水ろ液を、前記メタン発酵槽に戻すろ液返送工程と、前記第1脱水工程で前記発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液を、鉄系無機凝集剤を用いて酸性凝集沈殿処理する分離液処理工程と、をさらに備えてもよい。
【0010】
この構成によると、pHの低い水熱炭化脱水ろ液をメタン発酵槽に戻すことで、第1脱水工程で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液のpHが低くなることから、分離液処理工程において、発酵処理脱水ろ液への酸添加量を削減することができる。また、水熱炭化脱水ろ液に含まれる有機物がメタン発酵の原料となることからエネルギー回収量が増える。有機物はその分、処理系から減少するので、処理水のCOD上昇が抑制される。さらに、発酵処理脱水ろ液を、鉄系無機凝集剤を用いて酸性凝集沈殿処理することによって、リンや重金属類が除去され、処理水のCOD上昇も抑制される。その結果、放流水質の悪化を抑制することができる。
【0011】
また、前記炭化汚泥スラリーのpHを測定するpH測定工程と、前記pH測定工程で得られた前記炭化汚泥スラリーのpHの値に基づいて、前記脱水汚泥への前記酸の添加量を調整する酸添加量調整工程と、をさらに備えてもよい。
【0012】
この構成によると、酸の添加不足により水熱炭化反応が十分に進行しなかったり、酸の過剰投入によりコストが増大したり、後段の処理への悪影響が生じたりすることを回避することができる。
【0013】
また、前記酸は硫酸であってもよい。
【0014】
この構成によると、酸として硫酸を使用することで、炭化汚泥中の塩素濃度が上昇することがないため、炭化汚泥を固形燃料として利用する場合、燃料品質の低下を防ぐことができる。また、処理水の窒素濃度やCOD(化学的酸素要求量)も上昇することがないため、放流水質の悪化を回避することで、環境への負荷を小さくすることができる。
【0015】
また、前記第1脱水工程において、鉄系無機凝集剤を用いて前記発酵処理汚泥を脱水してもよい。
【0016】
この構成によると、硫酸塩を含む水熱炭化脱水ろ液をメタン発酵槽に返送しても、同時に含まれている鉄イオンが、硫酸還元菌によって生成した硫化物イオンと反応して硫化鉄となるため、硫化水素の生成を抑制することができる。
【0017】
また、前記汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥への前記硫酸の添加量が20~140g‐H2SO4/kg‐DSであってもよい。
【0018】
この構成によると、水熱炭化処理をより効率化することができる。
【0019】
本願で開示する有機性廃棄物の処理設備は、水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備であって、有機性廃棄物を嫌気性発酵処理するメタン発酵槽と、前記メタン発酵槽から排出された発酵処理汚泥を脱水する第1脱水機と、前記第1脱水機で得られた脱水汚泥を水熱炭化処理する水熱炭化装置と、前記水熱炭化装置で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する第2脱水機と、を備え、前記水熱炭化装置は、前記脱水汚泥に所定量の酸を添加する酸添加装置を有する。
【0020】
第1脱水機で得られた脱水汚泥に所定量の酸を添加して水熱炭化処理することで、酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能することから、反応温度を低下させたり、処理時間を短縮させたりしても、水熱炭化反応が進行し、水熱炭化処理を効率化することができる。
【0021】
前記水熱炭化装置は、前記脱水汚泥を、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて高温高圧処理するリアクターを備え、前記脱水汚泥は、断続的に脱水汚泥供給ポンプにより前記リアクターに供給され、前記酸添加装置は、前記脱水汚泥供給ポンプの運転中に前記脱水汚泥に前記酸を添加してもよい。
【0022】
この構成によると、脱水汚泥供給ポンプの運転中に酸の全量が確実にリアクターに移送されるため、脱水汚泥供給ポンプ停止中に酸がその注入口からリアクターまでの配管に留まることを防ぐことができる。そのため、配管において腐食が発生することを回避することができる。
【0023】
また、前記水熱炭化装置は、前記炭化汚泥スラリーのpHを測定するpH測定手段をさらに有し、前記酸添加装置は、前記pH測定手段で得られた前記炭化汚泥スラリーのpHの値に基づいて、前記脱水汚泥への前記酸の添加量を調整してもよい。
【0024】
この構成によると、酸の添加不足により水熱炭化反応が十分に進行しなかったり、酸の過剰投入によりコストが増大したり、後段の処理への悪影響が生じたりすることを回避することができる。
【0025】
また、前記酸は硫酸であってもよい。
【0026】
この構成によると、酸として硫酸を使用することで、炭化汚泥中の塩素濃度が上昇することがないため、炭化汚泥を固形燃料として利用する場合、燃料品質の低下を防ぐことができる。また、処理水の窒素濃度やCOD(化学的酸素要求量)も上昇することがないため、放流水質の悪化を回避することで、環境への負荷を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0027】
前記構成の有機性廃棄物の処理方法、または有機性廃棄物の処理設備によれば、水熱炭化反応を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】水熱炭化処理を用いた有機性廃棄物の処理設備の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1中に示す水熱炭化装置の具体的構成の一例を示す図である。
【
図3】発酵処理汚泥を脱水することにより得られた脱水汚泥への硫酸添加量と脱水汚泥を水熱炭化処理した後の炭化汚泥スラリーを脱水することにより得られた炭化汚泥の含水率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0030】
本発明の処理方法における処理対象の有機性廃棄物は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などである。これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。以下では、処理対象として下水汚泥を例にとって、その処理について説明する。
【0031】
図1に示すように、有機性廃棄物の処理設備は、メタン発酵槽としての消化槽1と、第1脱水機2と、水熱炭化装置3と、第2脱水機4と、養生容器5と、分離液処理装置6と、を備える。消化槽1、第1脱水機2、水熱炭化装置3、第2脱水機4、および養生容器5は、処理工程の上流側から順に、この順で設けられる。分離液処理装置6は、処理工程において、第1脱水機2の下流側に設けられる。
【0032】
(消化槽、およびメタン発酵工程)
消化槽1は、下水汚泥を嫌気性発酵処理するタンクである。メタン発酵工程は、下水汚泥を消化槽1の中で嫌気性発酵処理する工程である。消化槽1に投入される下水汚泥の固形物濃度は、例えば3~9質量%である。消化槽1は、中温発酵処理においては温度約30~42℃で滞留時間15~30日程度、高温発酵処理においては温度約50~60℃で滞留時間7~20日程度で運転される。
【0033】
下水汚泥の嫌気性発酵により消化槽1の中で消化ガスが発生する。消化ガスは、メタンが約60容量%、二酸化炭素が約40容量%のガス(バイオガス)である。発生した消化ガスは、消化槽1の中から取り出され、消化槽1や水熱炭化装置3の加温のための燃料として利用されたり、発電設備(不図示)の燃料として利用されたりする。すなわち、下水汚泥を嫌気性発酵処理することで、下水汚泥が有するエネルギーを消化ガス(ガスエネルギー)として回収することができる。
【0034】
嫌気性発酵処理後の下水汚泥の発酵残渣、すなわち発酵処理汚泥は、消化槽1の中から外部へ排出される。
【0035】
(第1脱水機、および第1脱水工程)
消化槽1の中から外部へ排出された発酵処理汚泥は、第1脱水機2に供給される。第1脱水機2は、消化槽1から排出された発酵処理汚泥を脱水する機械である。第1脱水工程は、メタン発酵工程後の発酵処理汚泥を脱水する工程である。発酵処理汚泥の固形物濃度は、例えば1.5~5質量%である。第1脱水機2は、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、ベルト濃縮機、または遠心濃縮機などである。
【0036】
第1脱水機2に供給された発酵処理汚泥は、鉄系無機凝集剤を用いて脱水してもよく、鉄系無機凝集剤と高分子凝集剤とを併用して脱水してもよい。鉄系無機凝集剤として、例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄などの無機凝集剤を使用することができる。また、高分子凝集剤としては、例えば、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤などの他、ノニオン系高分子凝集剤や両性高分子凝集剤などを用いることができるが、ここではカチオン系高分子凝集剤を用いることが好ましい。
【0037】
第1脱水機2(第1脱水工程)により、発酵処理汚泥は、例えば含水率が80質量%程度の脱水汚泥となる。第1脱水機2によって発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)は、分離液処理装置6に送られる。
【0038】
(分離液処理装置、および分離液処理工程)
発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)は、分離液処理装置6に供給される。分離液処理装置6は、第1脱水機2で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)を処理する装置である。分離液処理工程は、第1脱水工程で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)を処理する工程である。分離液処理装置6で得られた処理水は、水処理設備(不図示)へ返送される。
【0039】
分離液処理装置6は、例えば、上記発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)を凝集沈殿処理する装置である。分離液処理工程は、例えば、上記発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)を凝集沈殿処理する工程である。凝集沈殿処理は、酸性凝集沈殿処理であることが好ましい。酸性凝集沈殿処理とは、必要に応じて被処理水のpHを調整後、鉄系無機凝集剤を注入し、酸性条件下で凝集沈殿処理するものである。酸性凝集沈殿処理により、発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)に含まれる汚濁物質を凝集沈殿させることでリンや重金属類が除去され、処理水のCOD上昇も抑制される。その結果、放流水質の悪化を抑制することができる。鉄系無機凝集剤として、例えば、ポリ硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄などの無機凝集剤を使用することができる。また、凝集沈殿処理による沈殿物(沈澱汚泥)を炭化汚泥スラリーに混合してもよい。これにより、沈澱汚泥の処理量を削減するとともに炭化汚泥(燃料)として有効利用できる。なお、上記発酵処理脱水ろ液(消化脱水ろ液)の処理は、凝集沈殿処理に限られず、凝集浮上分離処理、または凝集ろ過処理などであってもよい。
【0040】
(水熱炭化装置、および汚泥炭化工程)
脱水汚泥は、水熱炭化装置3に供給される。水熱炭化装置3は、第1脱水機2で得られた脱水汚泥に所定量の酸を添加して水熱炭化処理する装置である。汚泥炭化工程は、第1脱水工程で得られた脱水汚泥に所定量の酸を添加して水熱炭化処理する工程である。水熱炭化処理とは、水を含む処理対象物を、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて高温高圧処理することで、炭化させる処理のことをいう。
【0041】
図2に示すように、水熱炭化装置3は、脱水汚泥に酸を添加する酸添加装置13を備え、例えば、加熱熱交換器8と、リアクター7と、冷却熱交換器9と、を備える。水熱炭化装置3は、pH測定手段14をさらに備えていてもよい。なお、水熱炭化装置3の構成は、これに限定されるものではない。
【0042】
加熱熱交換器8は、第1脱水機2で得られた脱水汚泥をリアクター7に供給する前に、脱水汚泥を予熱する加熱器である。加熱熱交換器8には、例えば含水率が80質量%程度の脱水汚泥が第1脱水機2から脱水汚泥供給ポンプ12により供給される。
【0043】
酸添加装置13は、酸を収容させた薬品槽およびこの槽から酸を供給するポンプを含み、この槽から加熱熱交換器8とリアクター7とを連結する配管に酸を供給するように構成されてもよく、リアクター7に酸を供給するように構成されてもよい。また、酸添加装置13は、酸添加量を調整するためのバルブなどから構成されてもよい。脱水汚泥が、断続的に脱水汚泥供給ポンプ12によりリアクター7に供給される場合、脱水汚泥供給ポンプ12の運転中に脱水汚泥に酸を添加することが好ましい。また、脱水汚泥供給ポンプ12の運転開始後、所定時間経過後に、脱水汚泥への酸の添加を開始し、酸の添加を停止後、所定時間経過後に、脱水汚泥供給ポンプ12の運転を停止してもよい。このように、脱水汚泥供給ポンプ12の運転中に酸添加を行うことにより、酸の全量が確実にリアクター7に移送されるため、脱水汚泥供給ポンプ12の停止中に酸が注入口からリアクター7までの配管に留まることを防ぐことができる。そのため、配管や加熱熱交換器8において腐食が発生することを回避することができる。
【0044】
酸としては、硫酸、塩酸や硝酸あるいは有機酸を薬品槽に収容して、水熱炭化処理に使用することが可能であるが、塩酸を使用すると、炭化汚泥中の塩素濃度が上昇し、炭化汚泥を固形燃料として利用する場合、燃料品質に影響を及ぼす虞があり、硝酸あるいは有機酸を使用すると、処理水の窒素濃度あるいはCOD(化学的酸素要求量)が上昇することから、放流水質が悪化し、環境への負荷が大きくなる虞がある。そのため、本発明における水熱炭化処理への使用には塩酸や硝酸あるいは有機酸よりも硫酸が好ましい。
【0045】
リアクター7は、酸素を含有しない又は酸素濃度が低いガス雰囲気下にて又は酸素を遮断した状態にて脱水汚泥を高温高圧処理する容器である。一例としてリアクター7は酸素濃度5体積%以下のガス雰囲気下にて脱水汚泥を高温高圧処理する。不活性ガスによって置換した状態で前記高温高圧処理をスタートするか、若しくはスタート時が空気(酸素濃度21体積%)であったとしても被処理物中の易分解性の有機物の酸化にて速やかに酸素が消費されてその後に空気が供給されることがないため、スタート直後を除いて、反応中のリアクター7内気相の酸素濃度は略0体積%に保たれる。リアクター7は、撹拌機7aを有する。リアクター7の中の炭化汚泥スラリーと、リアクター7に供給された脱水汚泥とは、撹拌機7aによって混合・撹拌される。リアクター7の外周に筒状のジャケット7bが設けられる。熱媒油熱交換器10で加熱された熱媒油は、熱媒油循環ポンプ11によって、ジャケット7bに循環供給される。リアクター7の中の炭化汚泥スラリーは、循環供給される熱媒油によって間接加熱される。なお、前記熱媒油に替えて他の熱媒が使用されてもよい。
【0046】
水熱炭化処理において、酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能することから、リアクター7内の脱水汚泥の温度(反応温度)を低下させたり、脱水汚泥の滞留時間(処理時間)を短縮させたりしても、水熱炭化反応が進行し、水熱炭化処理を効率化することができる。通常の水熱炭化処理は、反応温度200~250℃、圧力(ゲージ圧)2.0~2.5MPa、滞留時間180~300分のように、高温高圧かつ長時間のプロセスで行われることで、低含水率の炭化汚泥が得られる。それに対し、所定量の酸を脱水汚泥に添加すると、反応温度180℃程度、圧力(ゲージ圧)1.5MPa程度、滞留時間120分程度であっても、水熱炭化反応が進行することから、熱加水分解するためのコストを削減することができるとともに、処理時間を短縮することができる。なお、脱水汚泥を高温高圧処理するとは、脱水汚泥の温度が160℃以上250℃以下、且つ、リアクター7内の圧力がゲージ圧0.6MPa以上ゲージ圧3MPa以下で脱水汚泥を処理することをいう。
【0047】
リアクター7内に供給された脱水汚泥は、上記圧力および温度で、上記処理時間、処理されることで炭化汚泥スラリーとなる。
【0048】
冷却熱交換器9は、リアクター7の中で水熱炭化処理により得られた炭化汚泥スラリーを冷却する冷却器である。冷却熱交換器9において、炭化汚泥スラリーの温度が取扱いに適した領域に調整される。炭化汚泥スラリーの温度が調整されることで、炭化汚泥スラリーの粘性を調整することができ、炭化汚泥スラリーの移送を行い易くすることができるとともに、炭化汚泥スラリーの脱水性を向上させることができる。
【0049】
(pH測定手段、およびpH測定工程)
pH測定手段14は、リアクター7の中で水熱炭化処理により得られた炭化汚泥スラリーのpHを測定する測定器である。pH測定工程は、リアクター7の中で水熱炭化処理により得られた炭化汚泥スラリーのpHを測定する工程である。炭化汚泥スラリーのpHに基づいて、脱水汚泥への酸添加量を調整することで、酸の添加不足により水熱炭化反応が十分に進行しなかったり、酸の過剰投入によりコストが増大したり、後段の処理への悪影響が生じたりすることを回避することができる。例えば、炭化汚泥スラリーのpHの設定値を4.0とする場合は、脱水汚泥への酸添加量の初期値を例えば70g‐H
2SO
4/kg‐DSとし、炭化汚泥スラリーのpHの測定値が4.0付近である場合は、その酸添加量を維持し、炭化汚泥スラリーのpHの測定値が4.0付近でない場合は、脱水汚泥への酸添加量を初期値の約20%ずつ増加または減少させたりすることで、脱水汚泥への酸添加量を調整することができる。なお、
図2において、pH測定手段14は、冷却後の炭化汚泥スラリーのpHを測定することが示されているが、第2脱水工程で得られた炭化汚泥のpHを測定してもよく、リアクター7の中の炭化汚泥スラリーのpHを測定してもよい(不図示)。
【0050】
(酸添加量調整工程)
酸添加量調整工程は、脱水汚泥への硫酸添加量を調整する工程である。酸添加量調整工程は、pH測定手段14(pH測定工程)と連携して、炭化汚泥スラリーや炭化汚泥のpHの値に基づいて脱水汚泥への酸の供給量を調整してもよい。
【0051】
(第2脱水機、および第2脱水工程)
第2脱水機4は、水熱炭化装置3で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する機械である。第2脱水工程は、汚泥炭化工程で得られた炭化汚泥スラリーを第2脱水機4により脱水する工程である。第2脱水機4は、フィルタープレス脱水機、遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、ベルト濃縮機、または遠心濃縮機などである。
【0052】
(ろ液返送工程)
ろ液返送工程は、第2脱水機4(第2脱水工程)で炭化汚泥スラリーから分離した水熱炭化脱水ろ液を消化槽1に送る(戻す)工程である。pHの低い水熱炭化脱水ろ液をメタン発酵槽に戻すことで、第1脱水工程で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液のpHが低くなることから、分離液処理工程において、発酵処理脱水ろ液への酸添加量を削減することができる。また、水熱炭化処理によって、脱水汚泥中の微生物の細胞が破壊されて、脱水汚泥中の有機物がろ液(水熱炭化脱水ろ液)中に溶出する。水熱炭化脱水ろ液に含まれる有機物が消化ガスの原料となるので、水熱炭化脱水ろ液を消化槽1に投入すると、消化ガスの発生量はその分増加する。消化ガスは燃料として利用することが可能な、下水汚泥から回収されるエネルギー(ガスエネルギー)である。すなわち、第2脱水工程で炭化汚泥スラリーから分離した脱水ろ液(水熱炭化脱水ろ液)を消化槽1に戻すことで、消化ガスの発生量を増加させることができ、エネルギー回収量を増加させることができる。
【0053】
また、水熱炭化脱水ろ液に含まれる有機物の一部が消化ガスとなるので、有機物はその分、処理系から減少する。その結果、処理水のCOD上昇が抑制され、下水処理場からの放流水質の悪化を抑制することができる。詳しくは、次のとおりである。水熱炭化脱水ろ液をそのまま水処理系に送って処理すると、水処理系のCOD負荷が上昇し、放流水質が悪化する可能性があるが、メタン発酵によって有機物が分解されることで、水処理系のCOD負荷上昇が抑制され、放流水質の悪化を抑制することができる。
【0054】
図3は、発酵処理汚泥を脱水することにより得られた脱水汚泥への硫酸添加量と脱水汚泥を水熱炭化処理した後の炭化汚泥スラリーを脱水することにより得られた炭化汚泥の含水率との関係を示すグラフである。リアクター7に供給する脱水汚泥の固形物濃度は12質量%であり、リアクター7内の脱水汚泥の温度は190℃、圧力はゲージ圧1.9MPa、脱水汚泥の滞留時間は120分である。第2脱水機4として、フィルタープレス脱水機を用いて、ゲージ圧2.0MPaの圧力で脱水した。
【0055】
図3に示すグラフの横軸は、発酵処理汚泥を脱水することにより得られた脱水汚泥の固形物量1kg当たりの硫酸添加量(g‐H
2SO
4/kg‐DS)であり、縦軸は、脱水汚泥を水熱炭化処理した後の炭化汚泥スラリーを脱水することにより得られた炭化汚泥の含水率(%)である。
【0056】
図3からわかるように、硫酸添加量が70g‐H
2SO
4/kg‐DSである脱水汚泥の水熱炭化処理後の炭化汚泥スラリーを脱水することにより得られた炭化汚泥の含水率は、25.9%であった。一方、硫酸添加量が35g‐H
2SO
4/kg‐DSである脱水汚泥の水熱炭化処理後の炭化汚泥スラリーを脱水することにより得られた炭化汚泥の含水率は、34.2%であった。
図3のグラフから、脱水汚泥への硫酸添加量(脱水汚泥中の硫酸含有量)が50g‐H
2SO
4/kg‐DSを超えると、含水率が30%以下である低含水率の炭化汚泥が得られることが予測される。
【0057】
(養生容器、および養生工程)
養生容器5は、第2脱水機4で得られた炭化汚泥の乾燥、および炭化汚泥の発熱発火性の低減を行う容器である。養生工程は、第2脱水工程で得られた炭化汚泥の乾燥、および炭化汚泥の発熱発火性の低減を行う工程である。養生容器5は、一般にホッパと呼ばれる容器である。
【0058】
第2脱水機4からの炭化汚泥は養生容器5に投入される。養生容器5には、例えば、その下部の側面から養生容器5の中に空気(酸素含有ガス)が吹き込まれる。養生容器5内の炭化汚泥は、吹き込まれた空気と接触することで、乾燥するとともに、部分的に酸化する。部分的に酸化することで、炭化汚泥の発熱発火性は低減する。
【0059】
なお、養生工程は、養生容器5(ホッパ)を用いた工程に限られることはない。例えば、その周囲を囲ったコンベヤ(養生部)の上に、第2脱水機4で得られた炭化汚泥を投下し、空気などの酸素含有ガスを通すことで養生工程を実施してもよい。また、酸素含有ガスは、乾燥をより促進するために予め加熱されていてもよいし、その加熱の熱源として冷却熱交換器9で回収した熱エネルギーを使用するようにしてもよい。
【0060】
(効果)
本実施形態の有機性廃棄物の処理方法は、下水汚泥(有機性廃棄物)を消化槽1(メタン発酵槽)の中で嫌気性発酵処理するメタン発酵工程、メタン発酵工程後の発酵処理汚泥を脱水する第1脱水工程、第1脱水工程で得られた脱水汚泥を水熱炭化処理する汚泥炭化工程、および、汚泥炭化工程で得られた炭化汚泥スラリーを脱水する第2脱水工程を備え、汚泥炭化工程において、脱水汚泥に所定量の酸を添加する。
【0061】
上記処理方法によると、次のような効果が得られる。
【0062】
上記第1脱水工程で得られた脱水汚泥に所定量の酸を添加して水熱炭化処理することで、酸が水熱炭化の初期反応である有機物分解の触媒として機能することから、反応温度を低下させたり、処理時間を短縮させたりしても、水熱炭化反応が進行し、水熱炭化処理を効率化することができる。
【0063】
上記第2脱水工程で炭化汚泥スラリーから分離した水熱炭化脱水ろ液を、メタン発酵槽に戻すろ液返送工程と、上記第1脱水工程で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液を、鉄系無機凝集剤を用いて酸性凝集沈殿処理する分離液処理工程と、をさらに備えることが好ましい。pHの低い水熱炭化脱水ろ液をメタン発酵槽に戻すことで、第1脱水工程で発酵処理汚泥から分離した発酵処理脱水ろ液のpHが低くなることから、分離液処理工程において、発酵処理脱水ろ液への酸添加量を削減することができる。また、水熱炭化脱水ろ液に含まれる有機物がメタン発酵の原料となることからエネルギー回収量が増える。有機物はその分、処理系から減少するので、処理水のCOD上昇が抑制される。さらに、発酵処理脱水ろ液を、鉄系無機凝集剤を用いて酸性凝集沈殿処理することによって、リンや重金属類が除去され、処理水のCOD上昇も抑制される。その結果、放流水質の悪化を抑制することができる。
【0064】
また、前記第1脱水工程において、鉄系無機凝集剤を用いて前記発酵処理汚泥を脱水することが好ましい。これによれば、硫酸塩を含む水熱炭化脱水ろ液をメタン発酵槽に返送しても、同時に含まれている鉄イオンが、硫酸還元菌によって生成した硫化物イオンと反応して硫化鉄となるため、硫化水素の生成を抑制することができる。
【0065】
また、上記汚泥炭化工程において、前記脱水汚泥への前記硫酸の添加量が20~140g‐H2SO4/kg‐DSであることが好ましい。これにより、水熱炭化処理をより効率化することができる。
【0066】
さらには、本実施形態の有機性廃棄物の処理方法は、上記炭化汚泥スラリーや炭化汚泥のpHを測定するpH測定工程と、pH測定工程で得られた炭化汚泥スラリーや炭化汚泥のpHの値に基づいて、脱水汚泥への酸の添加量を調整する酸添加量調整工程とを備えている。これによれば、酸の添加不足により水熱炭化反応が十分に進行しなかったり、酸の過剰投入によりコストが増大したり、後段の処理への悪影響が生じたりすることを回避することができる。
【0067】
上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0068】
上記の実施形態は、複数の消化槽1を並列に設置して運用してもよい。例えば、消化槽1が複数設置され、複数の消化槽1内の発酵処理汚泥が一つの第1脱水機2に供給されるように構成されてもよく、消化槽1と消化槽1内の発酵処理汚泥が供給される第1脱水機2とがそれぞれ複数設置され、複数の第1脱水機2から脱水汚泥が一つの水熱炭化装置3に供給されるように構成されてもよく、消化槽1と消化槽1から発酵処理汚泥が供給される第1脱水機2と第1脱水機2から脱水汚泥が供給される水熱炭化装置3とがそれぞれ複数設置され、複数の水熱炭化装置3から炭化汚泥スラリーが一つの第2脱水機4に供給されるように構成されてもよい。また、消化槽1と消化槽1内の発酵処理汚泥が供給される第1脱水機2とがそれぞれ複数設置され、一つ又は他の第1脱水機2からの脱水汚泥は一つの水熱炭化装置3に供給され、他の又は一つの第1脱水機2からの脱水汚泥は焼却処分されるように構成されてもよい。これらの実施形態において、ろ液返送工程は、第2脱水機2で炭化汚泥スラリーから分離した水熱炭化脱水ろ液を複数設置された消化槽1のうち少なくともいずれか一つに戻すように構成されていればよい。
【0069】
上記の実施形態は、ろ液返送工程を備える。本発明において、ろ液返送工程は、必須ではない。
【0070】
上記の実施形態は、分離液処理装置6、および分離液処理工程を備える。本発明において、分離液処理装置6、および分離液処理工程は、必須ではない。
【0071】
上記の実施形態は、pH測定手段14、およびpH測定工程を備える。本発明において、pH測定手段14、およびpH測定工程は、必須ではない。
【0072】
上記の実施形態は、養生容器5、および養生工程を備える。本発明において、養生容器5、および養生工程は、必須ではない。
【0073】
処理対象の有機性廃棄物は、下水汚泥に限られるものではない。本発明は、下水汚泥、し尿汚泥、農業集落排水汚泥、浄化槽汚泥、生ごみなどの食品廃棄物(食品系バイオマス)、古紙・廃止などの紙などのリグノセルロース系廃棄物、農業残渣、および家畜糞尿などの様々な有機性廃棄物を処理対象とすることができる。前記のとおり、これらの有機性廃棄物は、それぞれ単独で処理されてもよいし、混合処理されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1:消化槽(メタン発酵槽)
2:第1脱水機
3:水熱炭化装置
4:第2脱水機
5:養生容器
6:分離液処理装置
7:リアクター
12:脱水汚泥供給ポンプ
13:酸添加装置
14:pH測定手段