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特開2023-111597圧縮機及びヒートポンプ式給湯システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111597
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】圧縮機及びヒートポンプ式給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20230803BHJP
   F24H 4/02 20220101ALI20230803BHJP
【FI】
F04C29/02 311K
F24H4/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013516
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 隆起
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 完
【テーマコード(参考)】
3H129
3L122
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA17
3H129AB03
3H129BB44
3H129BB50
3H129CC16
3H129CC17
3L122AA02
3L122AA23
3L122AB22
3L122AC41
(57)【要約】
【課題】耐久性が高い圧縮機、及び該圧縮機を備えるヒートポンプ式給湯システムを提供する。
【解決手段】圧縮機101は、冷媒を圧縮する圧縮機構部1と、圧縮機構部1を収容しているケース2とを備える。圧縮機構部1は、シリンダ13と、シリンダ13を貫通する回転軸12とを含む。ケース2は、回転軸12の軸方向の一端12B1を回転自在に支持する第1軸受と、回転軸の軸方向の他端12C1を回転自在に支持する第2軸受とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構部と、
前記圧縮機構部を収容しているケースとを備え、
前記圧縮機構部は、シリンダと、前記シリンダを貫通する回転軸とを含み、
前記ケースは、前記回転軸の軸方向の一端を回転自在に支持する第1軸受と、前記回転軸の前記軸方向の他端を回転自在に支持する第2軸受とを含む、圧縮機。
【請求項2】
前記第1軸受及び前記第2軸受の各々は、前記軸方向において前記シリンダと間隔を空けて配置されている、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮機構部は、前記軸方向において前記シリンダを挟むように配置されている1対のシリンダカバーをさらに含み、
前記1対のシリンダカバーの各々は、前記シリンダの内部空間と外部空間とを区画しており、
前記1対のシリンダカバーの各々には、前記回転軸が通されている貫通孔が形成されており、
前記1対のシリンダカバーの各々の前記貫通孔の内周面は、前記回転軸の外周面と間隔を空けて配置されている、請求項1又は2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮機構部は、前記シリンダ内において前記回転軸に対する周方向に前記回転軸を囲むように配置されており、前記回転軸の回転に伴い偏心回転するピストンをさらに含み、
前記1対のシリンダカバーの各々は、前記ピストンの前記軸方向の端面と接している、請求項3に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記1対のシリンダカバーの各々は、母材と、前記母材の表面上に形成されており、かつ前記ピストンの前記端面と接している表面層とを含み、
前記表面層を構成する材料の前記ピストンとの摩擦係数は、前記母材を構成する材料の前記ピストンとの摩擦係数よりも低い、請求項4に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記1対のシリンダカバーの各々を構成する材料は、自己潤滑性を有する合成樹脂を含む、請求項3又は4に記載の圧縮機。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された前記冷媒が熱媒体と熱交換するように設けられている凝縮器と、
前記凝縮器にて前記冷媒と熱交換した前記熱媒体が貯留されるタンクとを備える、ヒートポンプ式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機及びヒートポンプ式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/146028号(特許文献1)には、シリンダ室内にてピストンを偏心回転するためにシリンダ室を貫通する回転軸を、シリンダ室を塞ぐ1対の軸受により回転自在に支持する、圧縮機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/146028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の圧縮機では、回転軸がシリンダ室に隣接して配置された2つの軸受で支持されており、回転軸において軸受に支持されている部分間の距離は短い。そのため、モータ磁力や圧縮荷重が大きい場合には、回転軸へのモーメント荷重も大きくなり、回転軸が傾いて回転軸と軸受との間に設定された隙間が確保されず、回転軸及び軸受の耐久性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の主たる目的は、耐久性が高い圧縮機、及び該圧縮機を備えるヒートポンプ式給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構部と、圧縮機構部を収容しているケースとを備える。圧縮機構部は、シリンダと、シリンダを貫通する回転軸とを含む。ケースは、回転軸の軸方向の一端を回転自在に支持する第1軸受と、回転軸の軸方向の他端を回転自在に支持する第2軸受とを含む。
【0007】
上記圧縮機において、第1軸受及び第2軸受の各々は、軸方向においてシリンダと間隔を空けて配置されているのが好ましい。
【0008】
上記圧縮機において、圧縮機構部は、軸方向においてシリンダを挟むように配置されている1対のシリンダカバーをさらに含む。1対のシリンダカバーの各々は、シリンダの内部と外部とを区画する。1対のシリンダカバーの各々には、回転軸が通されている貫通孔が形成されている。1対のシリンダカバーの各々の貫通孔の内周面は、回転軸の外周面と間隔を空けて配置されている。
【0009】
上記圧縮機において、圧縮機構部は、シリンダ内において回転軸に対する周方向に回転軸を囲むように配置されており、回転軸の回転に伴い偏心回転するピストンをさらに含む。1対のシリンダカバーの各々は、ピストンの軸方向の端面と接している。
【0010】
上記圧縮機において、1対のシリンダカバーの各々は、母材と、母材の表面上に形成されており、かつピストンの端面と接している表面層とを含む。表面層を構成する材料のピストンとの摩擦係数は、母材を構成する材料のピストンとの摩擦係数よりも低い。
【0011】
上記圧縮機において、1対のシリンダカバーの各々を構成する材料は、自己潤滑性を有する合成樹脂を含む。
【0012】
本発明に係るヒートポンプ式給湯システムは、上記圧縮機と、圧縮機から吐出された冷媒が熱媒体と熱交換するように設けられている凝縮器と、凝縮器にて冷媒と熱交換した熱媒体が貯留されるタンクとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性が高い圧縮機、及び該圧縮機を備えるヒートポンプ式給湯システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るヒートポンプ式給湯システムを説明するためのブロック図である。
図2】本実施の形態に係る圧縮機を説明するための斜視断面図である。
図3】本実施の形態に係る圧縮機を説明するための断面図である。
図4図2中の矢印IV-IVから視た断面図である。
図5図2中の矢印V-Vから視た断面図である。
図6】本実施の形態に係る圧縮機の第1シリンダカバーの変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<ヒートポンプ式給湯システムの構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係るヒートポンプ式給湯システム300は、ヒートポンプユニット(HPユニットともよぶ)100と、貯湯ユニット200とを備える。
【0016】
HPユニット100は、冷媒が循環する冷媒回路を含む。HPユニット100の冷媒回路は、圧縮機101、水熱交換器102、膨張弁103、及び空気熱交換器104を含む。圧縮機101は、低圧のガス冷媒を吸入し、該ガス冷媒を圧縮して、高圧のガス冷媒として吐出する。圧縮機101の詳細な構成は、後述する。
【0017】
水熱交換器102は、HPユニット100において凝縮器として作用する。圧縮機101から吐出された高圧のガス冷媒は、水熱交換器102において貯湯ユニット200を流れる水と熱交換することにより凝縮される。膨張弁103は、水熱交換器102にて凝縮された高圧の液冷媒を、減圧膨張させる。空気熱交換器104は、HPユニット100において蒸発器として作用する。膨張弁103にて減圧された低圧の気液二相冷媒は、空気熱交換器104において送風機105から送られた外気と熱交換することにより蒸発する。空気熱交換器104において蒸発した低圧のガス冷媒は、圧縮機101に吸入される。
【0018】
貯湯ユニット200は、ポンプ201、及び貯湯タンク202を含む。ポンプ201及び貯湯タンク202は、HPユニット100内の水熱交換器102に接続されている。言い換えると、ヒートポンプ式給湯システム300は、冷媒回路とともに、水が循環する水回路を含む。水回路の一部はHPユニット100の水熱交換器102の内部に形成されており、水回路の他の一部は貯湯ユニット200のポンプ201及び貯湯タンク202の内部に形成されている。
【0019】
ポンプ201は、貯湯タンク202内の低温の水を水熱交換器102に送る。水熱交換器102は、貯湯ユニット200において水を加温する。貯湯タンク202から水熱交換器102に送られた水は、圧縮機101から吐出された高圧のガス冷媒とを熱交換することにより、加温される。水熱交換器102にて加温された水(湯)は、貯湯タンク202に戻されて貯湯タンク202内に貯められる。
【0020】
貯湯ユニット200は、給水管203、出湯管204、及び給湯器205をさらに含む。給水管203は、貯湯タンク202に接続されており、貯湯タンク202内に給水する。出湯管204は、給湯器205を介して貯湯タンク202に接続されている。貯湯タンク202内の加温された水(湯)は、必要に応じて給湯器205によりさらに加温された後、出湯管204に出力される。
【0021】
<圧縮機の構成>
図2及び図3に示されるように、圧縮機101は、圧縮機構部1と、ケース2と、電動機部3とを備える。
【0022】
圧縮機構部1は、低圧のガス冷媒を圧縮するように設けられている。圧縮機構部1は、潤滑油により潤滑される。圧縮機構部1は、シリンダ室11が形成されているシリンダ13と、シリンダ室11を貫通する回転軸12とを含む。回転軸12は、中心軸C周りに回転するように設けられている。以下では、回転軸12の中心軸Cが延在する方向を単に軸方向とよび、中心軸Cに対する径方向を単に径方向とよび、中心軸Cに対する周方向を単に周方向とよぶ。圧縮機101は、軸方向が水平方向に沿うように配置された状態で使用されることが予定されている。
【0023】
図3に示されるように、シリンダ13には、シリンダ13を軸方向に貫通する第1貫通孔13Aが形成されている。第1貫通孔13Aの内部には、シリンダ室11が形成されている。シリンダ室11は、シリンダ13、第1シリンダカバー14、第2シリンダカバー15、及びピストン16により、シリンダ室11の外部と区画されている。
【0024】
第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々は、軸方向においてシリンダ室11を挟むように配置されている。第1シリンダカバー14は、シリンダ13の軸方向の一方の側面に接している。第1シリンダカバー14は、シリンダ13の第1貫通孔13Aの一方の開口端の外側に、該開口端に隣接して配置されている。第2シリンダカバー15は、シリンダ13の軸方向の他方の側面に接している。第2シリンダカバー15は、シリンダ13の第1貫通孔13Aの他方の開口端の外側に、該開口端に隣接して配置されている。
【0025】
シリンダ13は、後述するケース2の筒部21に固定されている。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15は、シリンダ13に固定されている。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15は、ケース2に直接接続されていない。
【0026】
図2図4に示されるように、ピストン16は、円筒形状を有しており、回転軸12のうちシリンダ室11内に通されている部分(後述する第1部分12A)を囲むように配置されている。ピストン16は、回転軸12の回転に伴い、第1部分12Aとともに中心軸C周りに偏心回転する。
【0027】
図3に示されるように、ピストン16の内周面と回転軸12の第1部分12Aの外周面との間には、隙間が形成されている。他方、ピストン16の軸方向の一方の端面16Aは、第1シリンダカバー14において第1貫通孔13Aに面している内表面14Bと接している。ピストン16の端面16Aは、上記偏心回転時に、第1シリンダカバー14の内表面14Bに対して摺動する。ピストン16の軸方向の他方の端面16Bは、第2シリンダカバー15において第1貫通孔13Aに面している内表面15Bと接している。ピストン16の端面16Bは、上記偏心回転時に、第2シリンダカバー15の内表面15Bに対して摺動する。
【0028】
このように、シリンダ室11は、径方向においてシリンダ13の第1貫通孔13Aの内周面とピストン16の外周面との間に挟まれており、かつ軸方向において第1シリンダカバー14と第2シリンダカバー15との間に挟まれている空間として、シリンダ13、第1シリンダカバー14、第2シリンダカバー15、及びピストン16により、シリンダ室11の外部と区画されている。シリンダ室11にて圧縮された冷媒は、吐出口13C以外から漏れ出ない。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々は、圧縮機101の駆動時に冷媒がシリンダ室11内で圧縮されることにより生じる軸方向の荷重(以下、圧縮荷重とよぶ)を受ける。
【0029】
図3及び図5に示されるように、第1シリンダカバー14には、回転軸12が通されている第2貫通孔14Aが形成されている。第2貫通孔14Aは、第1シリンダカバー14を軸方向に貫通しており、内表面14Bに開口している。図3に示されるように、第2シリンダカバー15には、回転軸12が通されている第3貫通孔15Aが形成されている。第3貫通孔15Aは、第2シリンダカバー15を軸方向に貫通しており、内表面15Bに開口している。
【0030】
第1貫通孔13A、第2貫通孔14A、及び第3貫通孔15Aの各々の開口形状は、円形状である。第1貫通孔13A、第2貫通孔14A、及び第3貫通孔15Aの各々の孔軸は、同一直線状に連なるように配置されている。
【0031】
図2及び図3に示されるように、回転軸12は、シリンダ13、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々を貫通している。回転軸12の中心軸Cは、第1貫通孔13A、第2貫通孔14A、及び第3貫通孔15Aの各々の孔軸と重なるように配置されている。
【0032】
図2及び図3に示されるように、回転軸12は、シリンダ室11の内部に配置されている第1部分12Aと、シリンダ室11の外部に配置されており第1部分12Aから軸方向の一方の側に延びている第2部分12Bと、軸方向の他方の側に第1部分12Aから延びている第3部分12Cとを有している。
【0033】
第1部分12Aは、シリンダ室11内において、ピストン16とともに中心軸C周りに偏心回転するように設けられている。軸方向から視て、第1部分12Aの重心は、径方向において中心軸Cと間隔を空けて配置されている。第1部分12Aの軸方向に垂直な断面の中心は、軸方向に対する径方向において中心軸Cから離れた位置に配置されている。第1部分12Aの外径は、第2部分12B及び第3部分12Cの各々の外径よりも大きい。
【0034】
第1部分12Aの軸方向の一方の端面は、第1シリンダカバー14においてシリンダ室11に面する内表面14Bと間隔を空けて配置されている。第1部分12Aの軸方向の他方の端面は、第2シリンダカバー15においてシリンダ室11に面する内表面15Bと間隔を空けて配置されている。
【0035】
図2図4に示されるように、第2部分12Bの一部は、第1シリンダカバー14の第2貫通孔14Aに通されている。第2部分12Bのうち第1部分12Aと接続されている端部とは反対側に位置する第1端部12B1の少なくとも一部は、回転軸12の一端として後述する第1滑り軸受に支持されている。本実施の形態において、回転軸12の一端とは、回転軸12の軸方向の端面から軸方向に所定の長さを有する回転軸12の第1端部12B1の少なくとも一部を意味する。
【0036】
図2図4に示されるように、第3部分12Cの一部は、第2シリンダカバー15の第3貫通孔15Aに通されている。第3部分12Cのうち第1部分12Aと接続されている端部とは反対側に位置する第2端部12C1の少なくとも一部は、回転軸12の他端として後述する第2滑り軸受に支持されている。本実施の形態において、回転軸12の他端とは、回転軸12の軸方向の端面から軸方向に所定の長さを有する回転軸12の第2端部12C1の少なくとも一部を意味する。
【0037】
軸方向から視て、第2部分12B及び第3部分12Cの各々の重心は、中心軸C上に配置されている。第2部分12B及び第3部分12Cの各々の軸方向に垂直な断面の中心は、中心軸C上に配置されている。
【0038】
第2部分12Bの外径は、第2貫通孔14Aの孔径よりも小さい。第2貫通孔14Aの内周面は、第2部分12Bの外周面と間隔を空けて配置されている。第3部分12Cの外径は、第3貫通孔15Aの孔径よりも小さい。第3貫通孔15Aの内周面は、第3部分12Cの外周面と間隔を空けて配置されている。言い換えると、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々は、回転軸12を支持していない。
【0039】
図4に示されるように、シリンダ13には、シリンダ室11の外部から内部に低圧のガス冷媒を導くための吸入孔13Bと、シリンダ室11の内部から外部に高圧のガス冷媒を吐出するための吐出孔13Cがさらに形成されている。吸入孔13B及び吐出孔13Cの各々は、シリンダ室11の内周面に開口している一端とシリンダ13の外周面に開口している他端とを有している。吸入孔13B及び吐出孔13Cの各々は、径方向に沿って延びている。吸入孔13B及び吐出孔13Cの各々は、周方向において互いに間隔を空けて配置されている。
【0040】
吸入孔13Bは、シリンダ室11の外部に配置されている第1空間部S1を介して、圧縮機101の吸入口24と接続されている。吐出孔13Cは、シリンダ室11の外部に配置されている第2空間部S2を介して圧縮機101の吐出口と接続されている。第1空間部S1及び第2空間部S2の詳細は後述する。
【0041】
図4に示されるように、圧縮機構部1は、シリンダ室11の内部を吸入孔13Bに連なる吸入室と、吐出孔13Cに連なる圧縮室11Bとに区分するベーン18をさらに含む。ベーン18は、径方向に延びるように設けられており、かつシリンダ室11の内周面に対して径方向に進退動する。図4は、ベーン18が最も退避しており、圧縮過程において圧縮室11Bの体積が最も大きい状態を示している。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々は、吸入室及び圧縮室11Bの各々に面している。
【0042】
図2及び図3に示されるように、ケース2は、筒部21と、第1ケースカバー22と、第2ケースカバー23とを含む。筒部21は、軸方向に沿って延びており、軸方向の一方側及び他方の側の各々において開口している。第1ケースカバー22は、筒部21の軸方向の一方の開口端を塞いでいる。第2ケースカバー23は、筒部21の軸方向の他方の開口端を塞いでいる。
【0043】
図2及び図3に示されるように、圧縮機構部1及び電動機部3は、径方向において筒部21の内周面に囲まれており、かつ軸方向において第1ケースカバー22と第2ケースカバー23との間に挟まれている空間(以下、ケース2の内部空間とよぶ)に収容されている。ケース2の内部空間は、筒部21、第1ケースカバー22、及び第2ケースカバー23により、ケース2の外部空間と区画されている。第1ケースカバー22、圧縮機構部1、電動機部3、及び第2ケースカバー23は、この記載順に軸方向に並んで配置されている。第1ケースカバー22と圧縮機構部1との間の軸方向の距離は、第2ケースカバー23と圧縮機構部1との間の軸方向の距離よりも短い。回転軸12は、第1ケースカバー22と第2ケースカバー23との間に渡されている。回転軸12は、第1ケースカバー22及び第2ケースカバー23の各々を貫通していない。
【0044】
図3に示されるように、第1ケースカバー22は、ケース2の内部空間に面している内表面22Aと、内表面22Aに対して凹んでいる凹部の内壁面22Bと、径方向の外側を向いており筒部21の内周面と径方向に対向する外周面22Cとを有している。
【0045】
内壁面22Bは、回転軸12の第2部分12Bの外周面と接している。内壁面22Bは、回転軸12が中心軸C周りに回転しているときに回転軸12の第2部分12Bの外周面と摺動する摺動面となるように設けられている。つまり、第1ケースカバー22の上記凹部は、回転軸12の第2部分12Bを回転自在に支持する第1滑り軸受を成している。上記凹部の内壁面22Bに囲まれている底面は、回転軸12の第2部分12Bの端面と軸方向に間隔を空けて対向している。
【0046】
図3に示されるように、第2ケースカバー23は、ケース2の内部空間に面している内表面23Aと、内表面23Aに対して凹んでいる凹部の内壁面23Bと、径方向の外側を向いており筒部21の内周面と径方向に対向する外周面23Cとを有している。
【0047】
内壁面23Bは、回転軸12の第3部分12Cの外周面と接している。内壁面23Bは、回転軸12が中心軸C周りに回転しているときに回転軸12の第3部分12Cの外周面と摺動する摺動面となるように設けられている。つまり、第2ケースカバー23の上記凹部は、回転軸12の第3部分12Cを回転自在に支持する第2滑り軸受を成している。上記凹部の内壁面23Bに囲まれている底面は、回転軸12の第3部分12Cの端面と軸方向に間隔を空けて対向している。
【0048】
図2及び図3に示されるように、筒部21には、圧縮機101の吸入口24とシリンダ13の吸入孔13Bとの間を接続する第1空間部S1が形成されている。第1空間部S1は、回転軸12よりも上方に配置されている。第1空間部S1は、例えばシリンダ室11よりも上方に配置されている。第1空間部S1の一端は、吸入口24に接続されている。第1空間部S1の他端は、筒部21の内周面に開口しており、シリンダ13の外周面に開口している吸入孔13Bに接続されている。第1空間部S1は、圧縮機101の吸入口24から吸入された低圧のガス冷媒を圧縮機構部1の吸入孔13Bに導く。互いに直列に接続されている第1空間部S1及び吸入孔13Bは、圧縮機101の吸入口24から吸入された低圧のガス冷媒を圧縮機構部1のシリンダ室11に導く。
【0049】
図2及び図3に示されるように、第2空間部S2は、ケース2の内部空間の一部として形成されている。第2空間部S2の一部は、軸方向において第1ケースカバー22と圧縮機構部1との間に形成されている。第2空間部S2の他の一部は、軸方向において第2ケースカバー23と圧縮機構部1との間に形成されている。第2空間部S2の一部は、潤滑油を貯留するように設けられている。
【0050】
電動機部3は、モータである。電動機部3は、回転子31(図3参照)と、固定子32(図3参照)とを備える。回転子31は、回転軸12の第3部分12Cに固定されている。回転子31は、例えば積層された電磁鋼板からなる本体部と、該本体部に埋設された磁石とを有する。固定子32は、例えば積層された電磁鋼板からなる本体部と、該本体部に巻き回されたコイルとを有する。電動機部3は、圧縮機101の駆動時に、上記コイルに電流を流して電磁力を発生させ、該電磁力によって回転子31を回転軸12とともに回転させ、回転軸12を介して圧縮機構部1のピストン16を駆動する。
【0051】
圧縮機構部1を潤滑する潤滑油は、特に制限されないが、例えば、エステル油、エーテル油、アルキルベンゼン油、及びポリアルキレングリコール油からなる群から選択される少なくともいずれかを含む。
【0052】
第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々を構成する材料は、上記圧縮荷重を受けることができる限りにおいて、任意の材料であればよい。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々を構成する材料は、金属材料より強度が低い材料であってもよく、例えば樹脂材料であってもよい。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々が、回転軸12に対し軸方向に垂直な方向の荷重を受ける軸受として作用しないためである。
【0053】
好ましくは、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々を構成する材料は、自己潤滑性を有する合成樹脂を含み、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0054】
好ましくは、ケース2の筒部21を構成する材料は、熱伝導率が高い材料である。ケース2の筒部21を構成する材料は、例えばアルミニウム(Al)を含む。
【0055】
次に、圧縮機101の効果について説明する。
上述のように、従来の圧縮機では、回転軸はシリンダ室に隣接して配置されている2つの軸受により支持されており、回転軸において軸受に支持されている部分間の距離は短い。そのため、モータ磁力や圧縮荷重が比較的大きい場合には、回転軸へのモーメント荷重も大きくなり、回転軸が傾いて回転軸と軸受との間に設定された隙間が確保されず、回転軸及び軸受の耐久性が低下する。
【0056】
これに対し、圧縮機101では、回転軸12の端部12B1が第1滑り軸受に、端部12C1が第2滑り軸受に回転自在に支持されているため、回転軸12において第1滑り軸受に支持されている端部12B1と第2滑り軸受に支持されている端部12C1管の距離は、回転軸12の軸方向の長さと同等となる。つまり、圧縮機101では、回転軸12において回転自在に支持されている部分間の距離は、回転軸12の長さとの対比において最大化されている。そのため、圧縮機101では、モータ磁力や圧縮荷重が比較的大きい場合にも、従来の圧縮機と比べて回転軸へのモーメント荷重が小さく抑えられるため、回転軸が傾いて回転軸と軸受との間に設定された隙間が確保されない事態が発生しにくく、回転軸及び軸受の耐久性の低下が抑制される。その結果、圧縮機101の耐久性は、従来の圧縮機と比べて高い。
【0057】
圧縮機101では、第1滑り軸受及び第2滑り軸受の各々が、軸方向において圧縮機構部1と間隔を空けて配置されている。この場合、第1滑り軸受及び第2滑り軸受の少なくともいずれかが圧縮機構部1と隣接して配置されている場合と比べて、回転軸12において第1滑り軸受に支持されている端部12B1と第2滑り軸受に支持されている端部12C1管の距離が長い。そのため、モータ磁力や圧縮荷重が大きい場合にも、回転軸12がより傾きにくく、回転軸12及び各軸受の耐久性の低下がさらに抑制され得る。
【0058】
上記圧縮機101では、圧縮機構部1は、軸方向においてシリンダ13を挟むように配置されており、かつシリンダ13の内部空間(シリンダ室11)と外部空間とを区画する第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15をさらに含む。第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々には、回転軸12が通されている第2貫通孔14A又は第3貫通孔15Aが形成されている。第2貫通孔14A及び第3貫通孔15Aの各々の内周面は、回転軸12の外周面と間隔を空けて配置されている。
【0059】
第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15は、回転軸12に対し軸方向に垂直な方向に働く荷重を受けない。そのため、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の耐久性は、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15が回転軸12に対し軸方向に垂直な方向に働く荷重を受ける軸受として作用する場合と比べて、高い。
【0060】
上記圧縮機101において、圧縮機構部1は、シリンダ室11内において回転軸12に対する周方向に回転軸12を囲むように配置されており、回転軸12の回転に伴い偏心回転するピストン16をさらに含む。第1シリンダカバー14はピストン16の軸方向の端面16Aと接しており、第2シリンダカバー15はピストン16の軸方向の端面16Bと接している。このようにして、シリンダ室11は、シリンダ13、第1シリンダカバー14、第2シリンダカバー15、及びピストン16により、シリンダ室11の外部と区画され得る。
【0061】
圧縮機101では、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15は、圧縮荷重のみを受ける。そのため、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15を構成する材料に金属材料以外の材料を選択でき、圧縮機101の製造コスト及び重量を低減し得る。
【0062】
圧縮機101では、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15を構成する材料は、自己潤滑性を有する合成樹脂を含む。このような圧縮機101では、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々が高い耐摩耗性を有しているため、例えば第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15が鋳鉄(FC材)により構成されている場合と比べて、耐久性が高く、また必要とされる潤滑油量が低減され得る。
【0063】
(変形例)
第1シリンダカバー14の内表面14B及び第2シリンダカバー15の内表面15Bは、各面の摩擦係数を小さくすることを目的とした表面処理が施された面であってもよい。このようにしても、第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15の各々が高い耐摩耗性を有しているため、例えば第1シリンダカバー14及び第2シリンダカバー15が鋳鉄(FC材)により構成されている場合と比べて、耐久性が高く、また必要とされる潤滑油量が低減され得る。
【0064】
図6に示されるように、第1シリンダカバー14は、母材14Cと、表面層14Dとを含んでいてもよい。母材14Cを構成する材料は、任意の材料であればよいが、例えば金属材料である。表面層14Dは、第1シリンダカバー14においてピストン16の端面16Aと接している内表面14Bを構成している。表面層14Dを構成する材料のピストン16との摩擦係数は、母材14Cを構成する材料のピストン16との摩擦係数よりも低い。
【0065】
図6に示されるように、表面層14Dは、例えば内表面14B及び第2貫通孔14Aの内周面を構成するように設けられている。なお、表面層14Dは、少なくとも第1シリンダカバー14の内表面14Bを構成するように設けられていればよい。また、表面層14Dは、母材14Cの全表面を覆うように設けられていてもよい。
【0066】
なお、第2シリンダカバー15にも、第1シリンダカバー14と同様の表面処理が施されていてもよい。
【0067】
また、第1シリンダカバー14の内表面14B及び第2シリンダカバー15の内表面15Bは、各面の摩擦係数を小さくすることを目的とした表面処理として、表面粗さを低減するための研磨処理が施された面であってもよい。
【0068】
圧縮機101において、ケース2は、第1滑り軸受及び第2滑り軸受に代えて、任意の構成を備える第1軸受及び第2軸受を備えていてもよい。第1軸受及び第2軸受の一例として、第1転がり軸受及び第2転がり軸受が挙げられる。回転軸12は、第1転がり軸受及び第2転がり軸受に回転自在に支持されていてもよい。第1転がり軸受及び第2転がり軸受の各々は、内輪軌道面を有する内輪と、外輪軌道面を有する外輪と、内輪軌道面及び外輪軌道面の各々と摺動する転動体とを有する。回転軸12は、第1転がり軸受及び第2転がり軸受の各内輪に嵌め合わされている。第1転がり軸受及び第2転がり軸受の各外輪は、第1ケースカバー22又は第2ケースカバー23の上記凹部の内壁面22B,23Bに嵌め合わされている。このような圧縮機においても、上記圧縮機101と同様の効果が奏される。
【0069】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 圧縮機構部、2 ケース、3 電動機部、11 シリンダ室、12 回転軸、12A 第1部分、12B 第2部分、12C 第3部分、12D 第3管部、12E 第4管部、13 シリンダ、13A 第1貫通孔、13B 吸入孔、13C 吐出孔、14 第1シリンダカバー、14A 第2貫通孔、15 第2シリンダカバー、15A 第3貫通孔、16 ピストン、17 吐出弁、18 ベーン、19 第2油流通路、21 筒部、21A 第1管部、21B 第2管部、21C 第6貫通孔、22 第1ケースカバー、22A 内表面、22B 内壁面、22C 外周面、22D 第4貫通孔、22E 第5貫通孔、23 第2ケースカバー、23A 内表面、23B 内壁面、23C 外周面、24 吸入口、31 回転子、32 固定子、40 フィルタ、100 HPユニット、101 圧縮機、102 水熱交換器、104 空気熱交換器、103 膨張弁、105 送風機、200 貯湯ユニット、201 ポンプ、202 貯湯タンク、203 給水管、204 出湯管、205 給湯器、300 ヒートポンプ式給湯システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6