(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111619
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20230803BHJP
G03F 1/29 20120101ALI20230803BHJP
G03F 1/54 20120101ALI20230803BHJP
G03F 1/74 20120101ALI20230803BHJP
G03F 1/80 20120101ALI20230803BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/29
G03F1/54
G03F1/74
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013549
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】米丸 直人
(72)【発明者】
【氏名】黒木 恭子
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋介
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA07
2H195BB03
2H195BB10
2H195BB14
2H195BB25
2H195BC05
2H195BC08
2H195BC20
2H195BD02
2H195BD36
(57)【要約】
【課題】ヘイズ欠陥の少ない、即ちヘイズの発生を十分に抑制することができる位相シフトマスク及びその位相シフトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスクであって、基板11と、基板11の上に形成され、回路パターンを備えた位相シフト膜12と、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成された保護膜13と、を備え、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とし、保護膜13は、露光光に対する屈折率nが1.2以上2.6以下の範囲内であり、且つ、消衰係数kが0.0以上0.4以下の範囲内であり、位相シフト膜12の膜厚をd1とし、保護膜13の膜厚をd2としたときに、d2はd1よりも薄く、d2は15nm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスクであって、
透明基板と、前記透明基板の上に形成され、回路パターンを備えた位相シフト膜と、前記位相シフト膜の上面及び側面に形成された気体透過保護膜と、を備え、
前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とし、
前記気体透過保護膜は、露光光に対する屈折率が1.2以上2.6以下の範囲内であり、且つ、消衰係数が0.0以上0.4以下の範囲内であり、
前記位相シフト膜の膜厚をd1とし、前記気体透過保護膜の膜厚をd2としたときに、d2はd1よりも薄く、d2は15nm以下であることを特徴とする位相シフトマスク。
【請求項2】
前記気体透過保護膜は、ハフニウム金属及びハフニウム化合物から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記ハフニウム化合物は、ハフニウムを含有し、且つ窒素、酸素、炭素、及びフッ素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスク。
【請求項3】
前記気体透過保護膜は、ケイ素を含有し、且つ窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスク。
【請求項4】
前記気体透過保護膜は、アルミニウムを含有し、且つ窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスク。
【請求項5】
前記位相シフト膜は、酸素含有塩素系エッチングに対して耐性を有し、且つフッ素系エッチングでエッチング可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項6】
前記位相シフト膜は、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びタングステンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項7】
前記位相シフト膜の表面反射率に対する、前記気体透過保護膜の表面反射率の比が0.4以上1.2以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項8】
前記気体透過保護膜は、前記透明基板上にも形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の位相シフトマスク。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の位相シフトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に位相シフト膜を形成する工程と、
前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、
前記位相シフト膜上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、
前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記位相シフト膜にパターンを形成する工程と、
前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記レジストパターンを除去した後に、パターンが形成された前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜を除去する工程と、
前記レジストパターンを除去後であって前記遮光膜の除去前に、または前記遮光膜の除去後に、欠陥検査をする工程と、
前記欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の前記遮光膜または前記位相シフト膜を修正する工程と、
前記修正をした後に、パターンが形成された前記位相シフト膜の上面及び側面に前記気体透過保護膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
【請求項10】
前記気体透過保護膜を形成する工程では、前記気体透過保護膜を前記透明基板上にも形成することを特徴とする請求項9に記載の位相シフトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等の製造において使用される位相シフトマスク及び位相シフトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体加工においては、特に大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化が必要になってきており、回路を構成する配線パターンやコンタクトホールパターンの微細化技術への要求が高まってきている。そのため、半導体デバイス等の製造で用いられる露光光源は、KrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0003】
また、ウエハ転写特性を向上させたマスクとして、例えば、位相シフトマスクがある。位相シフトマスクでは、透明基板を透過するArFエキシマレーザー光と、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光との位相差(以下、単に「位相差」という。)が180度、かつ透明基板を透過するArFエキシマレーザー光の光量に対し、透明基板と位相シフト膜の両方を透過するArFエキシマレーザー光の光量の比率(以下、単に「透過率」という)が6%というように、位相差と透過率の両方を調整することが可能である。
【0004】
例えば、位相差が180度の位相シフトマスクを製造する場合、位相差が177度付近になるよう位相シフト膜の膜厚を設定した後、位相シフト膜をフッ素系ガスにてドライエッチングすると同時に透明基板を3nm程度加工して、最終的に位相差を180度付近に調整する方法が知られている。
【0005】
波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクにおいては、露光することにより、マスクに「ヘイズ」と呼ばれる異物が徐々に生成・成長・顕在化して、そのマスクが使用できなくなることがある。特に位相シフト膜がシリコンと遷移金属と酸素や窒素などの軽元素とで構成された膜である場合、位相シフト膜表面に異物が発生することがある。
ヘイズを抑制するための技術としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものある。
しかしながら、特許文献1、2に記載された技術では、上述のようなヘイズを抑制する効果が十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-173621号公報
【特許文献2】特許第4579728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情の元になされ、ヘイズ欠陥の少ない、即ちヘイズの発生を十分に抑制することができる位相シフトマスク及びその位相シフトマスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであって、本発明の一態様に係る位相シフトマスクは、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスクであって、透明基板と、前記透明基板の上に形成され、回路パターンを備えた位相シフト膜と、前記位相シフト膜の上面及び側面に形成された気体透過保護膜と、を備え、前記位相シフト膜は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とし、前記気体透過保護膜は、露光光に対する屈折率が1.2以上2.6以下の範囲内であり、且つ、消衰係数が0.0以上0.4以下の範囲内であり、前記位相シフト膜の膜厚をd1とし、前記気体透過保護膜の膜厚をd2としたときに、d2はd1よりも薄く、d2は15nm以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る位相シフトマスクの製造方法は、上述した位相シフトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に位相シフト膜を形成する工程と、前記位相シフト膜上に遮光膜を形成する工程と、前記位相シフト膜上に形成された前記遮光膜上にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを形成した後に、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜にパターンを形成する工程と、前記遮光膜にパターンを形成した後に、フッ素系エッチングにて前記位相シフト膜にパターンを形成する工程と、前記位相シフト膜にパターンを形成した後に、前記レジストパターンを除去する工程と、前記レジストパターンを除去した後に、パターンが形成された前記位相シフト膜上から、酸素含有塩素系エッチングにて前記遮光膜を除去する工程と、前記レジストパターンを除去後であって前記遮光膜の除去前に、または前記遮光膜の除去後に、欠陥検査をする工程と、前記欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の前記遮光膜または前記位相シフト膜を修正する工程と、前記修正をした後に、パターンが形成された前記位相シフト膜の上面及び側面に前記気体透過保護膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る位相シフトマスクを用いることで、マスク上におけるヘイズの発生を十分に抑制することができる。さらに、本発明の一態様に係る位相シフトマスクを用いることで、位相シフトマスク表面における反射率の増加を抑制することが可能となり、所謂、フレアによる露光性能の低下を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造工程を示す断面概略図である。
【
図4】本発明の実施形態の変形例に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。
【
図5】本発明の実施例に係る位相シフトマスクの修正工程前の構造を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
【
図6】本発明の実施例に係る位相シフトマスクの修正工程を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の実施例に係る位相シフトマスクの修正工程後の構造を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明者らは、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを構成する位相シフト膜の構成材料と、水や酸素等の酸化性気体と、露光エネルギーとの3要素が全て揃わなければマスクブランクまたはマスクにおけるヘイズの発生は低減可能と考え、位相シフトマスクブランクまたは位相シフトマスクを下記構成とした。つまり、本実施形態に係る位相シフトマスク及びその製造方法は、回路パターンを備えた位相シフト膜(所謂、位相シフト膜パターン)の上面及び側面に気体透過保護膜(所謂、気体バリア層)を設けることで、位相シフト膜の構成材料に酸化性気体が接触しないようにすることでヘイズの発生を低減するという技術的思想に基づくものである。
【0013】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。なお、断面概略図は、実際の寸法比やパターン数を正確には反映しておらず、透明基板の掘り込み量や膜のダメージ量は省略してある。
本発明の位相シフトマスクブランクの好適な実施形態としては、以下に示す形態が挙げられる。
【0014】
(位相シフトマスクブランクの全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランクの構成を示す断面概略図である。
図1に示す位相シフトマスクブランク10は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクを作製するために用いられる位相シフトマスクブランクであって、露光波長に対して透明な基板(以下、単に「基板」ともいう)11と、基板11の上に成膜された位相シフト膜12とを備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している。
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する各層について詳しく説明する。
【0015】
(基板)
基板11に対する特別な制限はなく、基板11としては、例えば、石英ガラスやCaF2あるいはアルミノシリケートガラスなどが一般的に用いられる。
【0016】
(位相シフト膜)
位相シフト膜12は、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成されている。
位相シフト膜12は、例えば、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)に対して耐性を有し、且つフッ素系エッチング(F系)でエッチング可能な膜である。
【0017】
位相シフト膜12の透過率の値は、基板11の透過率に対して、例えば、3%以上80%以下の範囲内であり、所望のウエハパターンに応じて最適な透過率を適宜選択することが可能である。また、位相シフト膜12の位相差の値は、例えば、160度以上220度以下の範囲内であり、175度以上190度以下の範囲内であればより好ましい。つまり、位相シフト膜12は、露光光に対する透過率が3%以上80%以下の範囲内であり、位相差が160度以上220度以下の範囲内であってもよい。位相シフト膜12の露光光に対する透過率が3%未満の場合には、良好な露光性能が得られないことがある。また、位相差が160度以上220度以下の範囲内であれば、必要な露光性能を容易に維持することができる。
【0018】
つまり、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする層である。ここで、「位相を調整」とは、例えば、位相を反転させることを意味する。また、「透過率」とは、露光光に対する透過率を意味する。
位相シフト膜12は、例えば、ケイ素を含有し、且つ遷移金属、窒素、酸素、及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含有した単層膜、又はこれらの複数層膜もしくは傾斜膜であり、組成と膜厚とを適宜選択することで露光波長に対する透過率と位相差とを調整させたものである。
位相シフト膜12は、位相シフト膜12全体の元素比率において、ケイ素を20原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、遷移金属を0原子%以上20原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を30原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上30原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上10原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。位相シフト膜12における各元素のより好ましい含有量の範囲は、位相シフト膜12全体の元素比率において、ケイ素は30原子%以上50原子%以下の範囲内であり、遷移金属は0原子%以上10原子%以下の範囲内であり、窒素は40原子%以上70原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上20原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上5原子%以下の範囲内である。位相シフト膜12における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、位相シフト膜12の透過率とともに、位相差も容易に制御することができる。
なお、位相シフト膜12は、金属シリサイドの酸化物、炭化物及び窒化物の少なくとも1種を含有したものであってもよい。その場合、金属シリサイドを構成する金属は、上述した遷移金属であってもよい。
【0019】
位相シフト膜12が含有する遷移金属は、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びタングステンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、モリブデンであればより好ましい。位相シフト膜12が含有する遷移金属が、モリブデン、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、及びタングステンから選ばれる少なくとも1種であれば、位相シフト膜12の加工が容易になり、モリブデンであればさらに位相シフト膜12のエッチング等の加工性が高くなる。
【0020】
(位相シフトマスクの全体構成)
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の構成について説明する。
図2(a)は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成を示す断面概略図である。また、
図2(b)は、本発明の実施形態に係る位相シフトマスクの構成の一部を拡大して示す断面概略図である。
図2に示す位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用され、回路パターンを備えた位相シフトマスク(即ち、パターニングされた位相シフトマスク)であって、露光波長に対して透明な基板11と、基板11の上に成膜され、回路パターンを備えた位相シフト膜12と、その位相シフト膜12の上面12t及び側面12sを少なくとも覆うように形成された気体透過保護膜(以下、単に「保護膜」ともいう)13と、を備えている。また、位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している。また、保護膜13は、位相シフト膜12への気体透過を阻止する機能を有している。また、位相シフト膜12の膜厚をd1とし、保護膜13の膜厚をd2としたときに、d1はd2よりも厚く、d2は15nm以下である。
位相シフトマスク100は、位相シフトマスクブランク10を構成する位相シフト膜12の一部を除去して基板11の表面を露出することで形成した位相シフト膜パターン12a(回路パターンを備えた位相シフト膜12)を備えている。
なお、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100を構成する基板11及び回路パターンを備えた位相シフト膜12の組成等は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10の構成する基板11及び位相シフト膜12の組成等と同じである。そのため、基板11及び回路パターンを備えた位相シフト膜12の組成等に関する詳細な説明については省略する。
以下、位相シフトマスク100において、位相シフトマスクブランク10と異なる部分である保護膜13について詳しく説明する。
【0021】
(保護膜)
保護膜13は、位相シフト膜12上に他の膜を介して又は介さずに形成されており、位相シフト膜12への気体透過(特に、水や酸素等の酸化性気体の透過)を阻止・抑制するための層、即ち気体バリア層である。本実施形態であれば、ヘイズ発生の要素の1つと考える気体の位相シフト膜12への侵入を阻止・抑制することができるため、長期間マスクを使用した場合(例えば、マスク上のドーズ量が100kJ/cm2を超えた場合)であっても、位相シフトマスク表面におけるヘイズの発生を阻止・抑制することができる。
なお、保護膜13で透過が阻止・抑制される気体(雰囲気ガス)は、酸化性気体であり、具体的には酸素含有分子であり、さらに具体的には水分子である。
保護膜13は、露光光に対する屈折率nが1.2以上2.6以下の範囲内であり、且つ、消衰係数kが0.0以上0.4以下の範囲内であればよい。上記条件を満たす保護膜13であれば、気体バリア層としての機能、及び表面反射率の増加を抑制する機能(効果)の両方を有する。さらに、上記条件を満たす保護膜13であれば、位相シフトマスク表面における反射率の増加を抑制することが可能となり、フレアによる露光性能の低下を低減することが可能となる。ここで「フレア」とは、露光装置の内壁面等で露光光が乱反射する現象をいう。
保護膜13は、ハフニウム金属及びハフニウム化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であることが好ましいが、バリア機能を備える層であれば特に組成は限定されるものではない。また、ハフニウム化合物は、ハフニウムを含有し、且つ窒素、酸素、炭素、及びフッ素から選ばれる少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。なお、上述のハフニウム金属は、金属の単体を意味する。
【0022】
ハフニウム化合物からなる保護膜13は、ハフニウムと、酸素、窒素、炭素、及びフッ素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
ハフニウム化合物からなる保護膜13は、保護膜13全体の元素比率において、ハフニウムを10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、フッ素を10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。ハフニウム化合物からなる保護膜13における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護膜13全体の元素比率において、ハフニウムは10原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は60原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は40原子%以上60原子%以下の範囲内であり、炭素は40原子%以上60原子%以下の範囲内であり、フッ素は70原子%以上90原子%以下の範囲内である。ハフニウム化合物からなる保護膜13における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護膜13の位相シフト膜12への気体透過のバリア性が高まる。
【0023】
また、保護膜13は、ケイ素と、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であってもよい。
ケイ素を含有する化合物(ケイ素含有化合物)からなる保護膜13は、保護膜13全体の元素比率において、ケイ素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を10原子%以上90原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を10原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。ケイ素含有化合物からなる保護膜13における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護膜13全体の元素比率において、ケイ素は20原子%以上60原子%以下の範囲内であり、酸素は60原子%以上80原子%以下の範囲内であり、窒素は50原子%以上70原子%以下の範囲内であり、炭素は40原子%以上60原子%以下の範囲内である。ケイ素含有化合物からなる保護膜13における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護膜13の位相シフト膜12への気体透過のバリア性が高まる。
【0024】
また、保護膜13は、アルミニウムと、酸素、窒素、及び炭素から選ばれる1類種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜であってもよい。
アルミニウムを含有する化合物(アルミニウム含有化合物)からなる保護膜13は、保護膜13全体の元素比率において、アルミニウムを10原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を10原子%以上80原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を10原子%以上70原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を10原子%以上60原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。アルミニウム含有化合物からなる保護膜13における各元素のより好ましい含有量の範囲は、保護膜13全体の元素比率において、アルミニウムは30原子%以上70原子%以下の範囲内であり、酸素は50原子%以上70原子%以下の範囲内であり、窒素は40原子%以上60原子%以下の範囲内であり、炭素は30原子%以上50原子%以下の範囲内である。アルミニウム含有化合物からなる保護膜13における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、保護膜13の位相シフト膜12への気体透過のバリア性が高まる。
以上のように、保護膜13が、露光光に対する屈折率nが1.2以上2.6以下の範囲内となるように、且つ、消衰係数kが0.0以上0.4以下の範囲内となるように、保護膜13の組成を調整した膜であれば、表面反射率の増加を抑制する効果が高まる。具体的には、保護膜13が、ハフニウム金属、ハフニウム化合物、ケイ素、及びアルミニウムから選ばれる1種以上の物質(元素)からなる単層膜、またはこれらの化合物の混合膜、もしくは複数層膜であれば、表面反射率の増加を抑制する効果がさらに高まる。
【0025】
位相シフト膜12の膜厚をd1とし、保護膜13の膜厚をd2としたときに、位相シフト膜12の膜厚d1は保護膜13の膜厚d2よりも厚く、保護膜13の膜厚d2は15nm以下である。また、保護膜13の膜厚d2は1nm以上であれば好ましい。保護膜13の膜厚d2が上記数値範囲内であれば、光学特性を維持しつつ、位相シフト膜12への気体透過のバリア性も維持することができる。保護膜13の膜厚d2を15nmよりも厚くした場合には、光学特性において影響を受ける可能性がある。
また、位相シフト膜12の膜厚d1は15nmよりも厚くてもよい。位相シフト膜12の膜厚d1が15nmよりも厚い場合には、位相及び透過率の各調整が容易になる。
また、位相シフト膜12の膜厚と、保護膜13の膜厚との合計膜厚は、50nm以上であれば好ましく、70nm以上であればより好ましい。位相シフト膜12の膜厚と、保護膜13の膜厚との合計膜厚が上記数値範囲内であれば、位相シフトマスク100の機能を所望の値に設定しやすくなる。
【0026】
なお、本実施形態では、保護膜13の膜厚d2は、「位相シフト膜12の上面12tに形成された保護膜13の膜厚d2t」を意味する。
また、本実施形態では、位相シフト膜12の上面12tに形成された保護膜13の膜厚d2tと、位相シフト膜12の側面12sに形成された保護膜13の膜厚d2sとは、同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。例えば、保護膜13の膜厚d2tと、保護膜13の膜厚d2sとの比率(d2t/d2s)は、0.2以上2.0以下の範囲内であれば好ましく、0.5以上1.5以下の範囲内であればより好ましく、1であれば最も好ましい。保護膜13の膜厚d2tと保護膜13の膜厚d2sとの比率が上記数値範囲内であれば、保護膜13は気体バリア層としてさらに十分に機能する。
【0027】
保護膜13は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性及び膜厚の均一性に優れた膜を得る方法としては、原子層堆積(ALD)法が好ましく挙げられるが、本実施形態では原子層堆積(ALD)法に限定する必要はない。
【0028】
位相シフト膜12の表面反射率に対する保護膜13の表面反射率の比(保護膜13の表面反射率/位相シフト膜12の表面反射率)は、0.40以上1.20以下の範囲内であれば好ましく、0.40以上0.95以下の範囲内であればより好ましく、0.40以上0.80以下の範囲内であればさらに好ましく、0.40以上0.70以下の範囲内であればさらに好ましい。保護膜13の表面反射率が上記数値範囲内であれば、フレアによる露光性能の低下を低減することが可能となる。
なお、位相シフト膜12の表面反射率は、例えば、分光光度計を用いて位相シフト膜12の表面における相対反射率を測定して決定してもよい。ここで、「相対反射率」とは、分光光度計から放射された光エネルギーが、試験面(位相シフト膜12の表面)でどの程度反射されて戻ってきたかを「%」の単位で表した数値である。つまり、試験面(位相シフト膜12の表面)が明るく艶があるほど、100%に近い値を示す。
本実施形態では、同一サンプルに対し、同じ表面反射率の測定を10回繰り返し、その平均値を「位相シフト膜12の表面反射率」とした。
【0029】
(位相シフトマスクの製造方法)
本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10を用いる位相シフトマスク100の製造方法は、基板11上に位相シフト膜12を形成する工程と、位相シフト膜12上に遮光膜15を形成する工程と、位相シフト膜12上に形成された遮光膜15上にレジストパターン16を形成する工程と、レジストパターン16を形成した後に、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜15にパターンを形成する工程と、遮光膜15にパターンを形成した後に、フッ素系エッチング(F系)にて位相シフト膜12にパターンを形成する工程と、位相シフト膜12にパターンを形成した後に、レジストパターン16を除去する工程と、レジストパターン16を除去した後に、パターンが形成された位相シフト膜12上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜15を除去する工程と、レジストパターン16を除去後であって遮光膜15の除去前に、または遮光膜15の除去後に、欠陥検査をする工程と、その欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の遮光膜15または位相シフト膜12を修正する工程と、欠陥部位の遮光膜15または位相シフト膜12を修正した後に、パターンが形成された位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに保護膜13を形成する工程と、を有している。また、本実施形態に係る位相シフトマスクブランク10を用いる位相シフトマスク100の製造方法では、上述した欠陥検査にて欠陥を検出した場合、欠陥部位の遮光膜15または位相シフト膜12を修正してもよい。
ここで、本発明の実施形態に係る遮光膜15について説明する。
【0030】
(遮光膜)
遮光膜15は、上述した本発明の実施形態に係る位相シフトマスクブランク10(位相シフト膜12)の上に形成される層である。
遮光膜15は、例えば、クロム単体、又はクロム化合物からなる単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。より詳しくは、クロム化合物からなる遮光膜15は、クロムと、窒素及び酸素から選ばれる1種以上の元素とを含有する単層膜、またはこれらの複数層膜、もしくは傾斜膜である。
クロム化合物からなる遮光膜15は、遮光膜15全体の元素比率において、クロムを30原子%以上100原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、酸素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、窒素を0原子%以上50原子%以下の範囲内で含有することが好ましく、炭素を0原子%以上10原子%以下の範囲内で含有することが好ましい。クロム化合物からなる遮光膜15における各元素のより好ましい含有量の範囲は、遮光膜15全体の元素比率において、クロムは50原子%以上100原子%以下の範囲内であり、酸素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、窒素は0原子%以上40原子%以下の範囲内であり、炭素は0原子%以上5原子%以下の範囲内である。クロム化合物からなる遮光膜15における各元素の含有量が上記数値範囲内であれば、遮光膜15の遮光性が高まる。
【0031】
遮光膜15の膜厚は、例えば、15nm以上80nm以下の範囲内、特に20nm以上75nm以下の範囲内が好ましい。
遮光膜15は、公知の方法により成膜することができる。最も容易に均質性に優れた膜を得る方法としては、スパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本実施形態ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
ターゲットとスパッタガスは膜組成によって選択される。例えば、クロムを含有する膜の成膜方法としては、クロムを含有するターゲットを用い、アルゴンガス等の不活性ガスのみ、酸素等の反応性ガスのみ、又は不活性ガスと反応性ガスとの混合ガス中で反応性スパッタリングを行う方法を挙げることができる。スパッタガスの流量は膜特性に合わせて調整すればよく、成膜中一定としてもよいし、酸素量や窒素量を膜の厚み方向に変化させたいときは、目的とする組成に応じて変化させてもよい。また、ターゲットに対する印加電力、ターゲットと基板との距離、成膜チャンバー内の圧力を調整してもよい。
【0032】
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトマスク100の製造方法が有する各工程について詳しく説明する。
【0033】
図3は、
図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いた位相シフトマスク100の製造工程を示す断面概略図である。
図3(a)は、位相シフト膜12上に遮光膜15を形成する工程を示す。
図3(b)は、遮光膜15上にレジスト膜を塗布し、描画を施し、その後に現像処理を行い、レジストパターン16を形成する工程を示す。
図3(c)は、レジストパターン16に沿って酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)により遮光膜15をパターニングする工程を示す。
図3(d)は、遮光膜15のパターンに沿ってフッ素系エッチング(F系)により位相シフト膜12をパターニングし、位相シフト膜パターン12aを形成する工程を示す。
図3(e)は、レジストパターン16を剥離除去した後、洗浄する工程を示す。
図3(f)は、パターンが形成された位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)上から、酸素含有塩素系エッチング(Cl/O系)にて遮光膜15を除去する工程を示す。
図3(g)は、遮光膜15を除去した後に、パターンが形成された位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)の上面12t及び側面12sに保護膜13を形成する工程を示す。こうして、本実施形態に係る位相シフトマスク100を製造する。
なお、本製造工程では、レジストパターン16を除去後であって遮光膜15の除去前に、または遮光膜15の除去後に、欠陥検査をする工程を有している。この欠陥検査にて欠陥を検出した場合には、欠陥部位の遮光膜15または位相シフト膜12を修正することで、本実施形態に係る位相シフトマスク100を製造する。
【0034】
こうして製造された本実施形態に係る位相シフトマスク100は、波長200nm以下の露光光が適用される位相シフトマスクであって、基板11と、基板11上に他の膜を介して又は介さずに形成された位相シフト膜12と、その位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)の上面12t及び側面12sに形成された保護膜13と、を備えている。また、回路パターンを備えた位相シフト膜12は、透過する露光光に対して所定量の位相及び透過率をそれぞれ調整可能とする機能を有している。また、保護膜13は、位相シフト膜12への気体透過を阻止する機能を有している。
また、位相シフトマスク100は、基板11の一部が露出するように位相シフト膜12の一部を除去して形成した位相シフト膜パターン12aを備えている。そして、位相シフト膜12の膜厚をd1とし、保護膜13の膜厚をd2としたときに、位相シフト膜12の膜厚d1は保護膜13の膜厚d2よりも厚く、保護膜13の膜厚d2は15nm以下でとなっている。
【0035】
図3(b)の工程において、レジスト膜の材料としては、ポジ型レジストでもネガ型レジストでも用いることができるが、高精度パターンの形成を可能とする電子ビーム描画用の化学増幅型レジストを用いることが好ましい。レジスト膜の膜厚は、例えば50nm以上250nm以下の範囲内である。特に、微細なパターン形成が求められる位相シフトマスクを作製する場合、パターン倒れを防止する上で、レジストパターン16のアスペクト比が大きくならないようにレジスト膜を薄膜化することが必要であり、200nm以下の膜厚が好ましい。一方、レジスト膜の膜厚の下限は、用いるレジスト材料のエッチング耐性などの条件を総合的に考慮して決定され、60nm以上が好ましい。レジスト膜として電子ビーム描画用の化学増幅型のものを使用する場合、描画の際の電子ビームのエネルギー密度は35μC/cm
2から100μC/cm
2の範囲内であり、この描画の後に加熱処理及び現像処理を施してレジストパターン16を得る。
また、
図3(e)の工程において、レジストパターン16の剥離除去は、剥離液によるウェット剥離であってもよく、また、ドライエッチングによるドライ剥離であってもよい。
【0036】
また、
図3(c)の工程において、クロム単体、又はクロム化合物からなる遮光膜15をパターニングする酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜12は、酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0037】
また、
図3(d)の工程において、位相シフト膜12をパターニングするフッ素系ドライエッチング(F系)の条件は、ケイ素系化合物膜、タンタル化合物膜、あるいはモリブデン化合物膜等をドライエッチングする際に用いられてきた公知のものであってもよく、フッ素系ガスとしては、CF
4やC
2F
6やSF
6が一般的であり、必要に応じて酸素などの活性ガスや窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。
図3(d)の場合は、上層の遮光膜15又はレジストパターン16は、フッ素系ドライエッチング(F系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
図3(d)では、同時に基板11を1nmから3nm程度掘り込み、位相シフト膜12の抜け不良を防止すると共に、位相差の微調整を行うことが一般的である。
【0038】
また、
図3(f)の工程において、遮光膜15を除去する酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)の条件は、クロム化合物膜の除去に用いられてきた公知のものであってもよく、塩素ガスと酸素ガスとに加えて、必要に応じて窒素ガスやヘリウムガスなどの不活性ガスを混合してもよい。下層の位相シフト膜12及び基板11は、いずれも酸素含有塩素系ドライエッチング(Cl/O系)に対して耐性を有しているため、本工程では除去もしくはパターニングされずに残る。
【0039】
(その他の実施形態)
本実施形態では、位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)の上面12t及び側面12sに保護膜13を形成した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図4に示すように、保護膜13は、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成され、且つ露出した基板11上に形成されていてもよい。上記形態であれば、位相差も透過率も、その基準は基板露出部であり、パターンが形成された部分がそれぞれ位相変化/透過率変化をもたらすため、位相差透過率の調整が不要(容易)となる。
また、基板11上に形成される保護膜13の組成は、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成される保護膜13の組成と同じであってもよい。
また、基板11上に形成される保護膜13と、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成される保護膜13との間に界面はなく、連続的な膜であってもよい。
【0040】
また、本実施形態では保護膜13が単層である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保護膜13は複層(積層膜)であってもよい。その場合には、保護膜13の表面側に位置する膜の密度を、保護膜13の位相シフト膜12側に位置する膜の密度よりも高くしてもよい。
【0041】
本実施形態では、位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)の上面12t及び側面12sに保護膜13を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、保護膜13を形成する工程では、保護膜13を位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成し、且つ露出した基板11上に形成してもよい。上記形態であれば、位相差も透過率も、その基準は基板露出部であり、パターンが形成された部分がそれぞれ位相変化/透過率変化をもたらすため、位相差透過率の調整が不要(容易)となる。
また、基板11上に形成する保護膜13の組成が、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成する保護膜13の組成と同じになるように形成してもよい。
また、基板11上に形成する保護膜13と、位相シフト膜12の上面12t及び側面12sに形成する保護膜13との間に界面がない連続的な膜(保護膜13)を形成してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、単層の保護膜13を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複層(積層膜)の保護膜13を形成してもよい。その場合には、保護膜13の表面側に位置する膜の密度が、保護膜13の位相シフト膜12側に位置する膜の密度よりも高くなるように形成してもよい。
【0043】
[実施例]
以下、実施例により、本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0044】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。なお、本実施例において、「露光光の透過率」とは、位相シフト膜の開口部に対する非開口部の露光光の透過率を意味する。また、「位相差」とは、位相シフト膜の開口部に対する非開口部の位相差を意味する。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0045】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0046】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0047】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
【0048】
次に、この位相シフトマスクに対し、修正を行った。以下、その方法について説明する。
(修正方法)
位相シフトマスク100の修正の方法について
図5~
図7を用いて簡単に説明する。なお、ここでは、遮光膜15を除去した後に欠陥検査を行い、修正を行う場合について説明するが、レジストパターン16を除去した後であって遮光膜15を除去する前に欠陥検査を行い、修正を行ってもよい。
図5に位相シフトマスク100における位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)の一部を拡大した図を示す。より詳しくは、
図5(a)は、本実施例に係る位相シフトマスク100の修正工程前の構造を示す概略平面図であり、
図5(b)は、本実施例に係る位相シフトマスク100の修正工程前の構造を示す概略断面図である。
図5(a)において、「L」は位相シフト膜12が形成された領域を示し、「S」は基板11が露出した領域を示す。また、
図5において、「12b」は、修正箇所を示す。
【0049】
図6に示すように、遮光膜15を除去した後の位相シフト膜12(位相シフト膜パターン12a)に対して修正を行った。
こうして、位相シフト膜12を修正した位相シフトマスク100を得た。
【0050】
最後に、
図7に示すように、この位相シフト膜(修正をした後の位相シフト膜)の上面及び側面、さらには露出した石英基板上に保護膜を形成した。保護膜の形成は、熱ALD法にて前駆体であるテトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf(N(CH
3)
2)
4)とフッ素系前駆体とを63サイクル反応させ、ハフニウムフッ化物(HfF
4)を5nm形成した。
こうして、実施例1に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、128kJ/cm
2であった。
【0051】
上記「加速露光によりヘイズが発生したドーズ量」は、その値が大きい程、ヘイズが発生しにくいことを意味する。ドーズ量が70kJ/cm2以上(下記表で「△」と評価)であれば、位相シフトマスクを使用する上で何ら問題なく、ドーズ量が100kJ/cm2以上(下記表で「〇」と評価)であれば、ヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。また、ドーズ量が110kJ/cm2以上(下記表で「◎」と評価)であれば、極めてヘイズが発生しにくい位相シフトマスクといえる。なお、ドーズ量が70kJ/cm2未満(下記表で「×」と評価)であれば、従来技術に係る位相シフトマスクと同程度である。
上記測定結果から、実施例1の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が128kJ/cm2であるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、17.1%であった。また、後述する比較例1の位相シフトマスクの表面反射率に対する、実施例1の位相シフトマスクの表面反射率の比(実施例1の位相シフトマスクの表面反射率/比較例1の位相シフトマスクの表面反射率:相対比率)を算出したところ、その値は0.78であった。
上記「相対比率」は、その値が小さい程、フレアが発生しにくいことを意味する。相対比率が0.95以下(下記表で「△」と評価)であれば、位相シフトマスクを使用する上で何ら問題なく、0.80以下(下記表で「〇」と評価)であれば、フレアが発生しにくい位相シフトマスクといえる。また、相対比率が0.70以下(下記表で「◎」と評価)であれば、極めてフレアが発生しにくい位相シフトマスクといえる。相対比率が1.0超であれば、フレアの発生が低減されていない位相シフトマスク(下記表で「×」と評価)といえる。
【0052】
(実施例2)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0053】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0054】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0055】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0056】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
次に、この位相シフトマスクに対し、実施例1と同様にして修正を行った。
最後に、この位相シフト膜の上面及び側面、さらには露出した石英基板上に保護膜を形成した。保護膜の形成は、プラズマALD法にて前駆体であるテトラキスジメチルアミノハフニウム(Hf(N(CH3)2)4)とO2プラズマとを130サイクル反応させ、ハフニウム酸化物(HfO2)を13nm形成した。
こうして、実施例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、163kJ/cm2以上であった。
【0057】
以上の結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が163kJ/cm2以上であるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、17.5%であった。また、後述する比較例1の位相シフトマスクの表面反射率に対する、実施例2の位相シフトマスクの表面反射率の比(実施例2の位相シフトマスクの表面反射率/比較例1の位相シフトマスクの表面反射率:相対比率)を算出したところ、その値は0.80であった。
以上の結果から、実施例2の位相シフトマスクであれば、相対比率が0.80であるため、フレアの発生を低減可能であることが確認された。
【0058】
(実施例3)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0059】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0060】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0061】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0062】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
次に、この位相シフトマスクに対し、実施例1と同様にして修正を行った。
最後に、この位相シフト膜の上面及び側面、さらには露出した石英基板上に保護膜を形成した。保護膜の形成は、プラズマALD法にて前駆体であるビスジエチルアミノシラン(Si[N(C2H5)2]2H2)とO2プラズマとを32サイクル反応させ、ケイ素酸化物(SiO2)を5nm形成した。
こうして、実施例3に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、112kJ/cm2であった。
【0063】
以上の結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が112kJ/cm2であるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、20.0%であった。また、後述する比較例1の位相シフトマスクの表面反射率に対する、実施例3の位相シフトマスクの表面反射率の比(実施例3の位相シフトマスクの表面反射率/比較例1の位相シフトマスクの表面反射率:相対比率)を算出したところ、その値は0.91であった。
以上の結果から、実施例3の位相シフトマスクであれば、相対比率が0.91であるため、フレアの発生を低減可能であることが確認された。
【0064】
(実施例4)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0065】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0066】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0067】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0068】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
次に、この位相シフトマスクに対し、実施例1と同様にして修正を行った。
最後に、この位相シフト膜の上面及び側面、さらには露出した石英基板上に保護膜を形成した。保護膜の形成は、プラズマALD法にて前駆体であるトリメチルアルミニウム(TMA)(Al(CH3)3)とO2プラズマとを36サイクル反応させ、アルミニウム酸化物(Al2O3)を5nm形成した。
こうして、実施例4に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、116kJ/cm2であった。
【0069】
以上の結果から、実施例4の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が116kJ/cm2であるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、14.4%であった。また、後述する比較例1の位相シフトマスクの表面反射率に対する、実施例4の位相シフトマスクの表面反射率の比(実施例4の位相シフトマスクの表面反射率/比較例1の位相シフトマスクの表面反射率:相対比率)を算出したところ、その値は0.65であった。
以上の結果から、実施例4の位相シフトマスクであれば、相対比率が0.65であるため、フレアの発生を低減可能であることが確認された。
【0070】
(比較例1)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0071】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0072】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0073】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0074】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
次に、この位相シフトマスクに対し、実施例1と同様にして修正を行った。
こうして、比較例1に係る位相シフトマスクを得た。つまり、比較例1に係る位相シフトマスクは、実施例1~4で形成した保護膜を備えない位相シフトマスクである。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、58kJ/cm2であった。
【0075】
以上の結果から、比較例1の位相シフトマスクでは、ドーズ量が58kJ/cm2であるため、ヘイズの発生を十分に低減することができないことが確認された。
上述のように、位相シフト膜の上面及び側面に保護膜を形成することは、位相シフトマスクにおけるヘイズの発生量を低減させる際に有効であることが分かる。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、22.0%であった。
【0076】
(比較例2)
石英基板の上に2つのターゲットを用いたDCスパッタ装置を用いて、ケイ素とモリブデンと酸素と窒素とからなる位相シフト膜を70nmの厚さで成膜した。ターゲットはモリブデンとケイ素とを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この位相シフト膜の組成をESCAで分析したところ、Si:Mo:O:N=40:8:7:45(原子%比)であった。
【0077】
こうして形成した位相シフト膜は、露光光の透過率が6%であり、位相差が180度であった。
次に、この位相シフト膜の上にDCスパッタ装置を用いて、クロムと酸素と窒素とからなる遮光膜を50nmの厚さで成膜した。ターゲットはクロムを用い、スパッタガスはアルゴンと酸素と窒素とを用いた。この遮光膜の組成をESCAで分析したところ、Cr:O:N=55:35:10(原子%比)であった。
【0078】
次に、この遮光膜上にネガ型化学増幅型電子線レジストを膜厚200nmでスピンコートし、パターンをドーズ量35μC/cm2で電子ビーム描画し、110℃で10分間熱処理し、パドル現像で90秒間現像を行い、レジストパターンを形成した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜をパターニングした。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。オーバーエッチングは100%行った。
【0079】
次に、ドライエッチング装置を用いて、位相シフト膜をパターニングした。エッチングガスはCF4と酸素とを用い、ガス圧力は5mTorr、ICP電力は400W、バイアスパワーは40Wに設定した。ドライエッチングは、石英基板を平均3nm掘り込んだ時点で停止した。
【0080】
次に、レジストパターンを硫酸加水洗浄によって剥膜洗浄した。
次に、ドライエッチング装置を用いて、遮光膜を除去した。エッチングガスは塩素と酸素とヘリウムとを用い、ガス圧力は10mTorr、ICP電力は500W、バイアスパワーは10Wに設定した。オーバーエッチングは200%行った。この際、下層の位相シフト膜及び石英基板にはダメージは発生しなかった。
次に、この位相シフトマスクに対し、実施例1と同様にして修正を行った。
最後に、この位相シフト膜の上面及び側面、さらには露出した石英基板上に保護膜を形成した。保護膜の形成は、プラズマALD法にて前駆体であるペンタエトキシタンタル(Ta(OC2H5)5)とO2プラズマとを91サイクル反応させ、タンタル酸化物(Ta2O5)を10nm形成した。
こうして、比較例2に係る位相シフトマスクを得た。
次に、この位相シフトマスクに対し、加速露光によりヘイズが発生したドーズ量を測定したところ、159kJ/cm2であった。
【0081】
以上の結果から、比較例2の位相シフトマスクであれば、ドーズ量が159kJ/cm2であるため、ヘイズの発生を低減可能であることが確認された。
次に、この位相シフトマスクに対し、表面反射率を測定したところ、32.5%であった。また、比較例1の位相シフトマスクの表面反射率に対する、比較例2の位相シフトマスクの表面反射率の比(比較例2の位相シフトマスクの表面反射率/比較例1の位相シフトマスクの表面反射率:相対比率)を算出したところ、その値は1.48であった。
以上の結果から、比較例2の位相シフトマスクであれば、相対比率が1.48であるため、フレアの発生を改善できないことが確認された。
【0082】
【0083】
以上、上記実施例により、本発明の位相シフトマスクブランクおよびこれを用いて作成される位相シフトマスクについて説明したが、上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの実施例を変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において他の様々な実施例が可能であることは上記の記載から自明である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明では、位相シフトマスクブランクの組成及び膜厚及び層構造と、これを用いた位相シフトマスクの製造工程及び条件を適切な範囲で選択したので、28nm以下のロジック系デバイス、又は30nm以下のメモリ系デバイス製造に対応した、微細なパターンを高精度で形成した位相シフトマスクを提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
10・・・位相シフトマスクブランク
11・・・露光波長に対して透明な基板(基板)
12・・・位相シフト膜
12a・・位相シフト膜パターン
13・・・保護膜(気体透過保護膜)
15・・・遮光膜
16・・・レジストパターン
100・・位相シフトマスク
d1・・・位相シフト膜の膜厚
d2・・・保護膜(気体透過保護膜)の膜厚