(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111622
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ハニカム構造セルタンクの製造方法およびハニカム構造セルタンク
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20230803BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20230803BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20230803BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F17C1/06
F16J12/00 A
B29C70/32
B29C70/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013553
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】504181177
【氏名又は名称】野澤 司
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】野澤 司
【テーマコード(参考)】
3E172
3J046
4F205
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
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3J046AA01
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3J046BD09
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3J046CA03
3J046CA04
3J046DA05
3J046EA01
3J046EA02
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD16
4F205AD17
4F205AG03
4F205AG18
4F205AH55
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4F205HA45
4F205HB01
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4F205HC02
4F205HK04
4F205HK05
4F205HL02
4F205HT12
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】金属製内部タンクとその外部の炭素繊維プリプレグの接着性を向上させる。
【解決手段】金属製薄板タンクの外周面に低倍率の熱発泡性樹脂と炭素繊維プリプレグを巻き付け、これに内周円と外周六角面を有する熱発泡性樹脂を巻き、六角形の炭素繊維複合材を装着し、前記炭素繊維プリプレグを熱硬化させる温度まで加熱する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製薄板タンクの外周面に低倍率の熱発泡性樹脂と炭素繊維プリプレグを順次巻き付け、これに内周円と外周六角面を有する熱発泡性樹脂を巻き、六角形の炭素繊維複合材を装着し、前記炭素繊維プリプレグを熱硬化させる温度まで加熱することを特徴とするハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項2】
前記熱発泡性樹脂は熱可塑性樹脂に熱発泡剤を練り込んで形成されることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項3】
前記炭素繊維プリプレグを加熱した際、内包する熱発泡性樹脂は流動性を持つことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項4】
前記金属製薄板タンクはその壁面厚さを内部タンク直径の1/100以下としたことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項5】
前記金属薄板タンクは壁面から水素ガスが漏洩することを防止する金属からなることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項6】
前記金属薄板タンクは内部に高圧空気を入れ、炭素繊維プリプレグに向けて加圧することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項7】
流動化して金属製薄板タンクと炭素繊維プリプレグとの間に密着した低倍率の熱発泡性樹脂は室温冷却後、高圧ガスによって金属製薄板タンクに発生する膨張力をダイレクトに炭素繊維プリプレグに伝達することを特徴とする請求項3に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項8】
金属製薄板タンクの空気圧による膨張圧力と低倍率の熱発泡性樹脂による膨張圧力によって炭素繊維プリプレグの内側から加圧され、高倍率の六角形熱発泡性樹脂による膨張圧力と外型枠による機械的反力によって外側から加圧されることによって、内在する気泡を排除されることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項9】
高倍率の熱可塑性発泡樹脂で製造される六角形熱発泡性樹脂は高弾性の緩衝材となって炭素繊維プリプレグから生成される炭素繊維複合材(高圧タンクの構造材)を落下事故等の外部衝撃荷重から保護することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項10】
熱硬化後の六角形炭素繊維複合材はハニカム構造体の殻構造となって高圧タンクを落下事故等の外部衝撃荷重から保護することを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造セルタンクの製造方法。
【請求項11】
金属製薄板タンクの外周面に低倍率の熱発泡性樹脂と炭素繊維プリプレグを巻き付け、これに内周円と外周六角面を有する熱発泡性樹脂を巻き、六角形の炭素繊維複合材を装着し、前記炭素繊維プリプレグを熱硬化させて形成されてなることを特徴とするハニカム構造セルタンク。
【請求項12】
金属製薄板タンクはその壁面厚さを内部タンク直径の1/100以下であることを特徴とする請求項11に記載のハニカム構造セルタンク。
【請求項13】
前記金属薄板タンクは壁面から水素ガスが漏洩することを防止する金属からなることを特徴とする請求項11に記載のハニカム構造セルタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内部タンクに金属製のタンクを使用する高圧水素タンクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧において液体水素1000(リットル)の重さは70.8(Kg)である。常温・大気圧における水素ガス1000(リットル)の重さは0.0899(Kg)である。常温・大気圧における水素ガス1000(リットル)は常温・800気圧において1.25(リットル)に圧縮される。従って、常温・大気圧1000(リットル)の水素と、常温・800気圧1.25(リットル)の重量は共に0.0899(Kg)である。液体水素の重量と比較するには、常温・800気圧の水素ガスを1000(リットル)に換算する必要がある。
【0003】
常温・800気圧の高圧水素ガス1.25(リットル)は800倍すれば1000(リットル)となる。従って、常温・800気圧の高圧水素ガス1000(リットル)の重さは0.0899(Kg)の800倍、すなわち71.92(Kg)となる。液体水素(大気圧、-253度)の重量は70.8(Kg)ある。
【0004】
故に、800気圧に圧縮された高圧水素ガス(71.92Kg/1000l)は、液体水素(70.8Kg/1000l)より密度が大きい。同じ大きさのタンクで水素を輸送する場合、高圧ガスの方が液体水素より多くの水素を輸送できることが分かる。従って、液体水素タンクより高圧水素タンクの方が、より多くの水素を輸送できるという点で有用である。
【0005】
特許文献1の「ハニカムコアがパネル表面と平行に配置されているハニカム構造体、およびその製造方法」は、ハニカム構造による大容量の高圧ガスタンクの製造方法」を開示している。加えて、特許文献2および特許文献3には、内部タンクに金属製の円筒形薄板タンクおよび熱発泡性樹脂を用いてハニカム構造高圧タンクの製造方法が開示されている。これら開示されている特許技術によって製造された高圧タンクの構造強度は耐圧100MPaの水圧試験によって評価され立証されている。しかしながら、前述の特許技術によって高圧水素タンクに要求される全ての課題が解決されたわけではない。高圧水素ガスタンクに要求される課題は以下の通りである。
(1)常用耐圧70MPa以上の(耐圧)構造強度を持つこと。
(2)高圧で封入された水素ガスがタンク壁面から漏れないこと。
(3)水素脆性による疲労破壊が発生しないこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6160876号
【特許文献2】US10,364,942 B2
【特許文献3】US10,864,684 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高圧ガスタンクの内部タンクを金属製の薄板で製造すると水素ガスの壁面透過問題を解決できる。しかし、水素脆性は金属分子の隙間に水素分子が浸入する現象なので、水素脆性を機械的方法で克服する方法は無い。加えて、内部タンクを金属製の薄板で製造すると、金属製の内部タンクから炭素繊維複合材(CFRP)が剥離するという問題が発生する。
【0008】
剥離問題とは、高圧ガスタンクの内部圧力が30~40MPaになると、金属製の内部タンクから炭素繊維複合材(CFRP)が剥離するという問題である。この剥離問題を詳細に説明すると次のとおり。
(1)高圧ガスタンクに圧力がかかると、金属製の内部タンクが膨張する。
(2)この膨張圧力は内部タンクの補強部材である炭素繊維複合材に伝わる。
(3)炭素繊維複合材に、膨張圧力に抗する円周方向応力(フープ応力)が発生する。
(4)フープ応力は炭素繊維複合材に歪みを発生させる。
(5)超高圧における金属製の内部タンクと炭素繊維複合材に発生する歪みのズレで炭素繊維複合材(CFRP)が剥離してくる。
(6)ただし、金属製内部タンクの膨張変形は炭素繊維複合材の内側壁に接触して停止する。
(7)高圧タンクの内部圧力は全て炭素繊維複合材が担う。
(8)従って、内部タンクの歪みは炭素繊維複合材の歪みに比べると小さい。
この問題を接着剤の改良で克服しようと多くの試みが為されたが、金属製の内部タンクと炭素繊維複合材に発生する歪みのズレを克服できず、全て失敗に終わっている。
【0009】
接着剤の改良の次に「金属製内部タンクと炭素繊維複合材の間に何らかの液体を密封すれば内部タンクと炭素繊維複合材に発生する歪みによるズレを克服できる」というアイデアを得たが、液体を機械的に密封する方法を得られなかった。
【0010】
しかし、内部タンクと補強用の炭素繊維複合材の間に何らかの液体を密封すれば歪みによるズレを克服できるというアイデアは、接着剤の改良より現実的に思える。加えて、金属製内部タンクと炭素繊維複合材を非圧縮性の物体である液体で隔離できれば、「タンクの内側と外側に同じ大きさの圧力を受ける薄板タンクの壁面に応力は発生しない」という機械工学の理論から、高圧水素タンクの難問である水素脆性による疲労破壊も克服できる。しかしながら、内部タンクと炭素繊維複合材の間に液体を密封する手段はどうしても得られなかった。
【0011】
そこで、液体の代わりに円筒形内部タンクの3次元形状に合わせてカットしたゴム材で内部タンクを包むことにした。しかし、円筒形の内部タンクと炭素繊維複合材の間の隙間を切り貼りしたゴム材で完全に埋めることは不可能であった。
【0012】
しかしながら、円筒形の内部タンクと炭素繊維複合材の隙間を非圧縮性の物体で完全に埋めることができれば、「タンクの内側と外側に同じ大きさの圧力を受ける薄板タンクの壁面に応力は発生しない」という機械工学の理論から、高圧水素タンクの難問である水素脆性による疲労破壊を克服できると考えられる。加えて内部タンクを金属で製造すれば、水素ガスが壁面から漏れることもない。これ等の利点は魅力的である。
【0013】
液体ならば3次元形状の内部タンクと補強用炭素繊維複合材の隙間を(理論上)完全に埋めることができるが、実行は不可能である。個体のゴム材ではどこかに不連続の隙間ができ、どこに、どれほどの隙間ができているかを確認することは困難である。実際は、高圧タンクに内部圧力が作用すると金属製の内部タンクが変形(膨張)すると同時に補強用の炭素繊維複合材も変形するので、理想的には、非圧縮性の液体よりも内部タンクの変形に合わせて内部タンクと炭素繊維複合材の隙間を自動的に埋めてくれるような多少弾力性がある物体が望ましい。これ等の問題を克服することができれば、水素脆性による疲労破壊や水素ガスの壁面透過問題も解決可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、発泡倍率を低く抑えた熱発泡性樹脂で、円筒形内部タンクの形状に合わせてカットした熱発泡性樹脂で内部タンクを均一に包むことにした。熱発泡性樹脂を熱可塑性の樹脂で製造すると、熱可塑性樹脂は常温で固体であるため、機械加工で精密に加工できる。
【0015】
その結果、3次元円筒形内部タンクと熱発泡性樹脂の隙間をごく小さくすることが可能である。加えて、熱発泡性樹脂を熱可塑性の樹脂で製造することにより、炭素繊維複合材の加熱工程において熱発泡性樹脂が膨張すると同時に切り貼りした樹脂が溶けて周囲の熱発泡性樹脂と一体化する。このようにして、円筒形の内部タンクと炭素繊維複合材の間の隙間を完全に埋めることができる。
【0016】
具体的には、本発明は、金属製の薄板タンク、低倍率の熱発泡性樹脂、炭素繊維プリプレグ、六角形の熱発泡性樹脂および六角形の炭素繊維複合材で構成されるハニカム構造セルタンクとした。
【0017】
熱発泡性樹脂はポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に熱発泡剤を練りこんだ材料で製造される。熱発泡性樹脂は常温で固体であって、精密機械加工が可能である。炭素繊維プリプレグを熱硬化させる温度まで加熱すると、溶けだして流動性をもつようになると同時に熱発泡して膨張する。
【0018】
金属製の内部タンクは壁面から水素ガスが漏れることはない。金属製内部タンクは、内部タンクを補強する炭素繊維プリプレグを内側から加圧する加圧装置としても使用される。金属製の薄板タンクの壁面厚さは内部タンク直径の1/100以下である。
【0019】
低倍率の熱発泡性樹脂は圧縮力に対してほとんど変形しないので、高圧ガスによって金属製薄板タンクに発生する膨張力はダイレクトに熱硬化後の炭素繊維プリプレグに伝達される。その結果、金属製薄板タンクに発生する応力(歪み変形)は極めて小さくなる。金属製薄板タンクと炭素繊維プリプレグの間に低倍率の熱発泡性樹脂が介在することによって、金属製薄板タンクに発生する応力は極めて小さくなり、高圧水素タンクの課題である水素脆性による疲労破壊は解決される。
【0020】
金属製の内部タンクは高圧ガスの内部圧力に抗する強度を有しない。高圧ガスタンクの内部圧力に抗する構造強度は、炭素繊維プリプレグのみで保証する。
【0021】
熱硬化させる前のハニカム構造六角セルタンクは炭素繊維プリプレグの繊維と繊維の間および何重にも巻いてある炭素繊維プリプレグの層間に多くの気泡を含んでいる。熱硬化した後でこの気泡が残っていると、炭素繊維複合材料の構造強度が大きく損なわれる。
【0022】
熱硬化後のハニカム構造六角セルタンクにおける炭素繊維プリプレグは、金属製の内部タンクの空気圧による膨張圧力と低倍率の熱発泡性樹脂による膨張圧力によって炭素繊維プリプレグの内側から加圧され、高倍率の六角形熱発泡性樹脂による膨張圧力と外型枠による機械的反力によって外側から加圧されることによって、気泡を完全に排除された炭素繊維複合材である。
【0023】
炭素繊維プリプレグの両側から強固に加圧する製造プロセスによって生成される炭素繊維複合材の強度構造は製造プロセスによって保証される。
高倍率の熱可塑性発泡樹脂で製造される六角形熱発泡性樹脂は高弾性の緩衝材となって炭素繊維プリプレグから生成される炭素繊維複合材(高圧タンクの構造材)を落下事故等の外部衝撃荷重から保護する。
【0024】
熱硬化前の六角形炭素繊維複合材には繊維と繊維の間、および何重にも重ねて製造する炭素繊維複合材の層間に多くの気泡が存在する。この気泡は、内側から六角形熱発泡性樹脂による膨張圧力、外側から鋼鉄製の外型枠の機械的反力により両側から加圧されることによって排除される。このように、両側から強固に加圧された六角形炭素繊維複合材から生成される炭素繊維複合材の構造強度は製造プロセスによって強度が保証される。
【0025】
熱硬化後の六角形炭素繊維複合材はハニカム構造体の殻構造となって高圧タンクを落下事故等の外部衝撃荷重から保護する。
この発明が解決しようとしている問題は、高圧水素タンクの課題である水素ガスの壁面透過問題と水素脆性による疲労破壊である。これらの問題を解決する方法は全ての高圧ガスタンクに応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】金属製内部タンクを低倍率の熱発泡性樹脂で包んだ図の概念図である。
【
図3】炭素繊維プリプレグで補強した内部タンクアセンブリの概念図である。
【
図4】熱硬化前のハニカム構造六角セルタンクの製造工程とその概念図である。
【
図5】熱硬化前のハニカム構造六角セルタンクを外型枠にセットする工程の概念図である。
【
図6】熱硬化中のハニカム構造六角セルタンクと熱発泡性樹脂に発生する膨張力の概念図である。
【
図7】熱硬化後のハニカム構造六角セルタンクの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の具体化するための実施例は、上で説明された図面と関連して、以下に説明される。以下に図面を参照して、発明に係る金属製内部タンクと低倍率の熱発泡性樹脂および内部タンクを補強する炭素繊維複合材を用いる高圧水素タンクとその製造方法を説明する。同時に、高倍率の六角形熱発泡性樹脂および六角形炭素繊維複合材で落下等の外部衝撃荷重に耐えるハニカム構造高圧タンクとその製造方法を説明する。水素ガスの壁面透過および水素脆性による疲労破壊を防止できる高圧水素タンクと外部衝撃荷重に耐えるハニカム構造高圧タンクの製造方法は密接に関連している。
【0028】
図1は金属製内部タンク1の概念図を示す。金属製内部タンク1は金属製薄板タンク2と、このタンク2の両側に設けられる接続口3で構成される。金属製薄板タンク2はSUS316等の水素脆性を考慮した金属で製造される。接続口3は金属で製造され、金属製薄板タンク2に溶接もしくは銀ロウで固定される。金属製内部タンク1は高圧ガスタンクの内部圧力に抗する構造強度メンバーではない。ただし金属製内部タンク1は金属製であるので内部タンクの壁面から水素ガスが漏れることはない。後に図を使って詳細に説明するが、金属製内部タンク1は、内部タンクを補強する炭素繊維プリプレグを内側から加圧する加圧装置としても使用される。従って、金属製薄板タンク2の壁面厚さはあまり厚くないことが望ましい。金属製薄板タンク2の壁面厚さは、金属製内部タンク1の直径の1/100~2/100以下が好ましい。また、壁面厚さの選定は水素脆性による影響を考慮することが望ましい。耐圧100MPaをクリアした試作タンクに使用された内部タンクはSUS316で製造され直径80mm、壁面厚さ0.8mmである。炭素繊維プリプレグを内側から加圧する加圧圧力は100気圧~200気圧が好ましい。
【0029】
図2は金属製内部タンク1を低倍率の熱発泡性樹脂4で均一に包んだ図の概念図を示す。
図1に示す金属製内部タンク1の周面部に2~3倍の低発泡倍率の熱発泡性樹脂4を装着して構成されている。低倍率の熱発泡性樹脂4はポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に熱発泡剤を練りこんだ材料で製造される。低倍率の熱発泡性樹脂4は常温で固体であって、精密機械加工が可能である。熱発泡性樹脂4は炭素繊維プリプレグを熱硬化させる温度まで加熱すると、溶けだして流動性をもつようになると同時に熱発泡して膨張する。試作タンクに使用された熱発泡性樹脂の可塑化温度、熱発泡温度は120℃~150℃である。この温度は熱可塑性樹脂と熱発泡剤の特性に依存する。
【0030】
低倍率の熱発泡性樹脂4は金属製内部タンク1を均一の厚さで包み込むように加工され、
図2の右半部に示されるように、作業性を考慮して2つ以上に分割されている。加熱プロセスにおいて熱可塑性の樹脂でつくられた熱発泡性樹脂4は周囲の熱発泡性樹脂と溶け合って一体化する。同時に、低倍率の熱発泡性樹脂4は熱発泡して金属製内部タンク1と低倍率の熱発泡性樹脂4との間にある機械的隙間を完全に埋める。熱発泡性樹脂は熱発泡した後で常温に戻ると、発泡した形状を保って固まる。その際、熱発泡性樹脂4は膨張率に応じてある程度の弾力性をもつ。その結果、高圧タンクの製造工程が終わり、実際に高圧ガスが充填されると、低倍率の熱発泡性樹脂4は高圧ガスによる金属製内部タンク1の変形を吸収し微小変形する。しかし、過度の弾性は金属製内部タンク1の歪み(応力疲労)の原因となる。
【0031】
低倍率の熱発泡性樹脂4に求められている機能は、次の2つである。
(1)内部タンクと炭素繊維複合材の間に生じる機械的隙間を完全に埋める。
(2)高圧ガスによる内部タンクの膨張圧力を炭素繊維複合材にダイレクトに伝える。
従って、低倍率の熱発泡性樹脂4の発泡倍率は2~3倍程度が好ましい。炭素繊維複合材の加熱工程は、後に図を使って説明する。
【0032】
図3は炭素繊維プリプレグで補強した内部タンクアセンブリ6の概念図を示す。内部タンクアセンブリ6は、
図1に示す金属製内部タンク1を
図2に示す低倍率の熱発泡性樹脂4で包んだものを熱硬化させる前の炭素繊維プリプレグ5で補強したものである。炭素繊維プリプレグ5の接着剤は熱可塑性と熱硬化性の両方が使える。ここでは一般的である熱硬化性の炭素繊維プリプレグで説明する。
【0033】
金属製内部タンク1は高圧ガスの内部圧力に抗する強度を有しない。高圧ガスタンクの内部圧力は、炭素繊維プリプレグ5のみで受け持つ。従って、炭素繊維プリプレグ5の構造強度を製造工程で保証することは重要である。
【0034】
熱硬化させる前の内部タンクアセンブリ6は炭素繊維プリプレグ5の繊維と繊維の間および何重にも巻いてある炭素繊維プリプレグ5の層間に多くの気泡を含んでいる。熱硬化した後でこの気泡が残っていると、炭素繊維複合材料の構造強度が大きく損なわれる。従って、炭素繊維プリプレグ5を熱硬化させる工程で、この気泡を完全に取り除く必要がある。また金属製内部タンク1と低倍率の熱発泡性樹脂4との間には、機械的隙間が存在する。この隙間を放置すると高圧タンクの疲労強度を損ねる原因となる。特に高圧水素タンクにおける金属製内部タンク1と低倍率の熱発泡性樹脂4間の機械的隙間は、金属製内部タンク1の疲労強度低下の原因となる。
【0035】
炭素繊維プリプレグは用途に応じていろいろな種類の厚さ、重量、強度、硬化温度、接着剤含有率がある。耐圧100MPaをクリアした試作タンクに使用された炭素繊維プリプレグは、厚さ0.1mm、硬化温度130℃、積層厚さ5.0mmである。炭素繊維プリプレグ、熱発泡樹脂の選定および炭素繊維プリプレグによる巻き補強の方法等には十分な知識を必要とする。
【0036】
図4(A)~(E)は熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9の概念図とその製造工程を示す。
図4(A)は内部タンクアセンブリ6である。
図4(B)は内部タンクアセンブリ6にハニカム構造体の基本要素である2つに分割された六角形熱発泡性樹脂7を取り付ける図を示す。
図4(C)は内部タンクアセンブリ6と六角形熱発泡性樹脂7を一体化させる図を示す。
図4(D)は六角形熱発泡性樹脂7に2つ以上に分割された六角形炭素繊維複合材8を取り付ける図を示す。
図4(E)は六角形熱発泡性樹脂7と六角形炭素繊維複合材8を一体化させハニカム構造六角セルタンク9を製造する図を示す。
【0037】
ハニカム構造六角セルタンク9は内部タンクアセンブリ6、六角形熱発泡性樹脂7、六角形炭素繊維複合材8で構成される。内部タンクアセンブリ6は
図3に示される内部タンクアセンブリ6と同一である。六角形熱発泡性樹脂7は、
図2で示される低倍率の熱発泡性樹脂4と同じく、熱可塑性樹脂に熱発泡剤を練りこんだ材料で製造される。熱発泡させる前の常温における機械的性質は低倍率の熱発泡性樹脂4と同じである。ただし、六角形熱発泡性樹脂7は低倍率の熱発泡性樹脂4よりは発泡倍率が大きい。
【0038】
六角形熱発泡性樹脂7はハニカム構造体の構成要素である六角形のハニカムセル形状をしており、内部に内部タンクアセンブリ6を収納可能に成形される。作業性を考慮して2つ以上に分割されていることが好ましい。六角形熱発泡性樹脂7は
図2に示される低倍率の熱発泡性樹脂4とは用途目的が根本的に異なる。六角形熱発泡性樹脂7に求められる機能は次の3つである。
(1)金属製内部タンク1を補強する炭素繊維プリプレグ5を加熱硬化させる工程において炭素繊維プリプレグ5を外側から加圧する。
(2)ハニカム構造の殻構造を構成する六角形炭素繊維複合材8を加熱硬化させる工程において、六角形炭素繊維複合材8を内側から加圧する。
(3)ハニカム構造高圧タンクに落下等の外的衝撃荷重が作用したとき、六角形熱発泡性樹脂7は六角形炭素繊維複合材8と共に外的衝撃荷重を吸収する。
従って、六角形熱発泡性樹脂7の発泡倍率は、低倍率の熱発泡性樹脂4より大きい5~10倍が好ましい。
【0039】
六角形炭素繊維複合材8は炭素繊維プリプレグで製造され、六角形熱発泡性樹脂7に被せるもしくは巻きつけるように製造される。作業性を考慮して2つ以上に分割されていることが好ましい。六角形炭素繊維複合材8は熱硬化性の炭素繊維プリプレグでも熱可塑性の炭素繊維プリプレグでも作ることができるが、熱可塑性の炭素繊維プリプレグで製造する方が好ましい。理由は、熱硬化性のプリプレグは常温で粘着性があるため、ハニカム構造六角セルタンク9を複数個組み合わせてハニカム構造体をつくるとき、ハニカム構造六角セルタンク9に内蔵されている金属製内部タンク1の配管作業がおこない難くなるからである。
【0040】
図5は熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9を外型枠10にセットする工程の概念図である。熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9を外型枠10にセットする工程の概念は、金属製薄板タンク2、低倍率の熱発泡性樹脂4、炭素繊維プリプレグ5、六角形熱発泡性樹脂7、六角形炭素繊維複合材8、外型枠10、外型枠の補強部材11、ボルト12およびナット13で説明される。外型枠10、外型枠の補強部材11、ボルト12、ナット13は鋼鉄で製造され、それぞれ強固な構造強度を有する。外型枠の補強部材11は外型枠10に点溶接等で固定されることが好ましい。
【0041】
図5に示す工程は、
図4に示される熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9を強固な構造強度を持つ外型枠10にセットする作業である。単体タンクの場合、作業そのものは簡単であるが、その工程はいろいろな課題を含んでいる。その課題とは次の通り。
(1)
図5における金属製薄板タンク2と低倍率の熱発泡性樹脂4には機械的隙間が存在する。この機械的隙間は高圧ガス充填の繰り返し加重による金属製薄板タンク2の疲労破壊の原因となる。高圧ガスタンクにおいて、たとえどんなに微小なものであっても、機械的隙間は許されない。
(2)
図5において低倍率の熱発泡性樹脂4と熱硬化させる前の炭素繊維プリプレグ5には機械的隙間が存在する。高圧ガスタンクにおいて、たとえどんなに微小なものであっても、機械的隙間は許されない。
(3)熱硬化させる前の炭素繊維プリプレグ5は繊維と繊維の間、および何重にも巻いてある炭素繊維プリプレグ5の層間に多くの気泡を含んでいる。この気泡は、熱硬化後の炭素繊維複合材料の強度を損ねるので熱硬化プロセスの際に取り除く必要がある。
(4)
図5において熱硬化させる前の炭素繊維プリプレグ5と六角形熱発泡性樹脂7との間には機械的隙間が存在する。高圧ガスタンクにおいて、たとえどんなに微小なものであっても、機械的隙間は許されない。
(5)
図5において熱発泡させる前の六角形熱発泡性樹脂7と六角形炭素繊維複合材8の間には機械的隙間が存在する。高圧ガスタンクにおいて、たとえどんなに微小なものであっても、機械的隙間は許されない。
(6)
図5において加熱硬化させる前の六角形炭素繊維複合材8と鋼鉄製の外型枠10の間には機械的隙間が存在する。この機械的隙間が完全に埋まらないと、外型枠10に機械的反力は発生しない。
(7)加熱&加圧硬化させる前の六角形炭素繊維複合材8には繊維と繊維の間、および何重にも重ねて製造する六角形炭素繊維複合材8の層間に多くの気泡を含んでいる。この気泡は、熱硬化後の炭素繊維複合材料の強度を損ねるので熱硬化プロセスの際に取り除く必要がある。
【0042】
図6は熱硬化中のハニカム構造六角セルタンク9と熱発泡性樹脂に発生する膨張力および外型枠による機械的反力の概念図である。熱硬化中のハニカム構造六角セルタンク9と熱発泡性樹脂に発生する膨張力および外型枠による機械的反力の概念は、金属製薄板タンク2、低倍率の熱発泡性樹脂4、炭素繊維プリプレグ5、六角形熱発泡性樹脂7、六角形炭素繊維複合材8、外型枠10、外型枠の補強部材11、ボルト12、ナット13、空気圧による膨張圧力14、低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16および外型枠の機械的反力17で説明される。空気圧による膨張圧力14は内部タンクに外部から高圧空気を充填し、金属製薄板タンク2を膨張させた時に発生する膨張力である。低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15は、炭素繊維プリプレグ5を熱硬化させるときに、高温に熱せられた低倍率の熱発泡性樹脂4に発生する膨張力である。六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16は、炭素繊維プリプレグ5を熱硬化させるときに、高温に熱せられた六角形熱発泡性樹脂7に発生する膨張力である。外型枠の機械的反力17は、空気圧による膨張圧力14、低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15および六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16を全て合算した圧力である。従って、外型枠10、外型枠の補強部材11、ボルト12、ナット13は鋼鉄で製造され剛性および構造強度は十分に強化される必要がある。図に示されていないが、外型枠に固定されたハニカム構造六角セルタンク9を加熱する加熱炉には大気圧の加熱オーブンが使用できる。加熱時間は2.0~3.0時間、加熱後の冷却時間は12時間以上が望ましい。
【0043】
図6に示す膨張力によって
図5の課題は全て解決する。理由は次の通りである。
(1)熱硬化させる前の金属製薄板タンク2と低倍率の熱発泡性樹脂4の間に存在する機械的隙間は、金属製薄板タンク2の空気圧による膨張圧力14と低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15および高温に加熱され流動化し膨張する低倍率の熱発泡性樹脂4によって完全に埋められる。
(2)熱硬化させる前の低倍率の熱発泡性樹脂4と炭素繊維プリプレグ5の間に存在する機械的隙間は空気圧による膨張圧力14と低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15および高温に加熱され流動化し膨張する低倍率の熱発泡性樹脂4によって完全に埋められる。
(3)炭素繊維プリプレグ5の繊維と繊維の間、および何重にも巻いてある炭素繊維プリプレグ5の層間に存在する気泡は、炭素繊維プリプレグ5を内側から加圧する空気圧による膨張圧力14と低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15および炭素繊維プリプレグ5を外側から加圧六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16によって加圧され取り除かれる。
(4)熱硬化させる前の炭素繊維プリプレグ5と六角形熱発泡性樹脂7との間に存在する機械的隙間は、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16と高温に加熱され流動化し膨張する六角形熱発泡性樹脂7によって完全に埋められる。
(5)加熱発泡させる前の六角形熱発泡性樹脂7と六角形炭素繊維複合材8の間に存在する機械的隙間は、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16と高温に加熱され流動化し膨張する六角形熱発泡性樹脂7によって完全に埋められる。
(6)加熱硬化させる前に、六角形炭素繊維複合材8と鋼鉄製の外型枠10の間に存在する機械的隙間は、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16および鋼鉄製の外型枠10による機械的反力17によって、炭素繊維複合材8が鋼鉄製の外型枠10に強く押しつけられることによって消滅する。
(7)加熱&加圧硬化させる前の六角形炭素繊維複合材8には繊維と繊維の間、および何重にも重ねて製造する六角形炭素繊維複合材8の層間に多くの気泡を含んでいる。この気泡は、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16および鋼鉄製の外型枠10による機械的反力17によって、六角形炭素繊維複合材8が鋼鉄製の外型枠10に強く押しつけられることによって消滅する。鋼鉄製の外型枠10の反力を確保するため六角形熱発泡性樹脂7は膨張倍率を大きくすることが好ましい。
【0044】
図7は熱硬化後のハニカム構造六角セルタンク18の概念図である。熱硬化後のハニカム構造六角セルタンク18は、金属製薄板タンク2、低倍率の熱発泡性樹脂4、炭素繊維プリプレグ5、六角形熱発泡性樹脂7および六角形炭素繊維複合材8で構成される。この構成要素は熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9と同じであるが、炭素繊維複合材の構造強度および各構成要素の密着度は
図5の熱硬化前のハニカム構造六角セルタンク9とまったく異なる。
(1)熱硬化させる前のハニカム構造六角セルタンク9にあった全ての機械的隙間は、熱硬化後のハニカム構造六角セルタンク18において完全に消滅する。
(2)低倍率の熱発泡性樹脂4の発泡倍率は2~3倍と小さい。つまり、低倍率の熱発泡性樹脂4は圧縮力に対してほとんど変形しない。従って、高圧ガスによって金属製薄板タンク2に発生する膨張圧力はダイレクトに熱硬化後の炭素繊維プリプレグ5に伝達される。その結果、金属製薄板タンク2に発生する応力(歪み変形)は極めて小さくなる。つまり、金属製薄板タンク2と炭素繊維プリプレグ5の間に低倍率の熱発泡性樹脂4が介在することによって、金属製薄板タンク2に発生する応力は極めて小さくなり、高圧水素タンクの課題である水素脆性による疲労破壊は軽減される。
(3)金属製薄板タンク2と炭素繊維プリプレグ5の間に低倍率の熱発泡性樹脂4が介在することによって、金属製薄板タンク2と炭素繊維プリプレグ5が直接触れ合うことはない。従って、熱硬化後の炭素繊維プリプレグ5が金属製薄板タンク2から剥離するという問題も解消する。
(4)熱硬化させる前のハニカム構造六角セルタンク9は炭素繊維プリプレグ5の繊維と繊維の間および何重にも巻いてある炭素繊維プリプレグ5の層間に多くの気泡を含んでいる。熱硬化した後でこの気泡が残っていると、炭素繊維複合材の構造強度が大きく損なわれる。
図7の炭素繊維プリプレグ5は、
図6に示される金属製内部タンク1の空気圧による膨張圧力14と低倍率の熱発泡性樹脂4による膨張圧力15によって炭素繊維プリプレグ5の内側から加圧され、高倍率の六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16と外型枠10による機械的反力17によって炭素繊維プリプレグ5の外側から加圧されることによって、気泡を完全に排除された炭素繊維複合材である。炭素繊維プリプレグ5から生成される炭素繊維複合材の構造強度は、両側から強固に炭素繊維プリプレグ5を加圧する製造プロセスによって保証される。
(5)高倍率の熱可塑性発泡樹脂で製造される六角形熱発泡性樹脂7は高弾性の緩衝材となって炭素繊維プリプレグ5から生成される炭素繊維複合材を落下等の外部衝撃荷重から保護する。
(6)熱硬化前の六角形炭素繊維複合材8には繊維と繊維の間、および何重にも重ねて製造する炭素繊維複合材8の層間に多くの気泡が存在する。これらの気泡は、六角形熱発泡性樹脂7による膨張圧力16によって内側から加圧され、鋼鉄製の外型枠10の機械的反力17により外側から加圧されることによって排除される。このように、両側から強固に加圧された六角形炭素繊維複合材8から生成される炭素繊維複合材の構造強度は製造プロセスによって強度が保証されると共にハニカム構造の殻構造となって落下等の外部衝撃荷重から高圧タンクを保護する。
【0045】
本発明のハニカム構造高圧水素タンクの形状や目的は様々に変更されることが考えられる。本発明の精神は、金属製の内部タンクと熱発泡性樹脂を使って高圧水素タンクの課題である構造強度、高圧ガスタンクの気密性および水素脆性による疲労破壊の問題を解決する高圧水素タンクの開発である。加えて、タンク構造をハニカム構造にすることで落下事故のような外部衝撃荷重にも安全性を確保する。本発明は全ての高圧ガスタンクに応用可能である。
【0046】
本発明はその具体化に関して添付図面を添えて完全に説明されたが、様々な変化と変更が当業者よって明らかになるのに注意されたい。そのような変化と変更は追加された請求によって定義され、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1……金属製内部タンク、2……金属製薄板タンク、3……接続口、4……低倍率の熱発泡性樹脂、5……炭素繊維プリプレグ、6……内部タンクアセンブリ、7……六角形熱発泡性樹脂、8……六角形炭素繊維複合材、9……ハニカム構造六角セルタンク、10……外型枠、11……補強部材、12……ボルト、13……ナット、14……空気圧による膨張圧力、15……低倍率の熱発泡性樹脂による膨張圧力、16……六角形熱発泡性樹脂による膨張圧力、17……外型枠の機械的反力、18……熱硬化後のハニカム構造六角セルタンク。