IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 丸建基礎工事株式会社の特許一覧 ▶ オノデラ製作所株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-建機 図1
  • 特開-建機 図2
  • 特開-建機 図3
  • 特開-建機 図4
  • 特開-建機 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111646
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】建機
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20230803BHJP
   E21B 7/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E02D9/02
E21B7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013590
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】520496888
【氏名又は名称】丸建基礎工事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303051396
【氏名又は名称】オノデラ製作所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 博
【テーマコード(参考)】
2D050
2D129
【Fターム(参考)】
2D050DA03
2D129BB03
2D129DA12
2D129DC01
2D129DC11
2D129EA02
2D129EA16
2D129EA23
(57)【要約】
【課題】伸縮可能でありながら掘削時に良好に長さを維持することができるケーシングを備える建機を提供する。
【解決手段】ケーシングは、第1ケーシング体34の内面に区画されて軸方向に延びる軸方向案内路54と、第2ケーシング体の外面に設置されて、軸方向案内路54に進入し、第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体の軸方向相対変位を案内する突片と、軸方向案内路54の上端から連続し、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びて、突片の進入を受け入れて第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第1周方向案内路56と、軸方向案内路54の下端から連続し、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びて、突片の進入を受け入れて第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第2周方向案内路57とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りで駆動される円筒形の第1ケーシング体と、
前記第1ケーシング体に同軸に前記第1ケーシング体の内側に収容され、下端に、前記第1ケーシング体よりも下方に位置する掘削ビットを有する円筒形の第2ケーシング体と、
前記第1ケーシング体の内面に区画されて軸方向に延びる軸方向案内路と、
前記第2ケーシング体の外面に設置されて、前記軸方向案内路に進入し、前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を案内する突片と、
前記軸方向案内路の上端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延びて、前記突片の進入を受け入れて前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第1周方向案内路と、
前記軸方向案内路の下端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延びて、前記突片の進入を受け入れて前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第2周方向案内路と、
を備えることを特徴とする建機。
【請求項2】
請求項1に記載の建機において、
前記第1ケーシング体の外面に取り付けられて、前記第1ケーシング体の上端から軸方向に下方に延びる第1水管と、
前記第2ケーシング体の外面に取り付けられて、軸方向に下方に延びて前記第2ケーシング体の下端に噴出口を配置する第2水管と、
前記第2水管の上端に連結されて、前記第1ケーシング体を貫通して前記第1ケーシング体の外面に突出する連結管と、
前記第1ケーシング体の外面に沿って配置され、前記第1水管の下端に前記連結管を接続する水ホースと
を備えることを特徴とする建機。
【請求項3】
請求項2に記載の建機において、前記第1ケーシング体には、軸方向に延び、前記突片が前記軸方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる軸方向長孔と、前記軸方向長孔の上端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延び、前記突片が前記第1周方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる第1周方向長孔と、前記軸方向長孔の下端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延び、前記突片が前記第2周方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる第2周方向長孔とが形成されることを特徴とする建機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸心回りで駆動される円筒形の第1ケーシング体と、第1ケーシング体に同軸に第1ケーシング体の内側に収容され、下端に、第1ケーシング体よりも下方に位置する掘削ビットを有する円筒形の第2ケーシング体とを備える建機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、杭抜きの地切りにあたって用いられ軸方向に伸縮するケーシングを開示する。ケーシングは、垂直軸回りに油圧ポンプで駆動される第1円筒体と、第1円筒体に同軸に第1円筒体の内側に収容されて、第1円筒体に対して軸方向に変位する第2円筒体と、第1円筒体に同軸に第2円筒体の内側に収容されて、第2円筒体に対して軸方向に変位する第3円筒体とを備える。ケーシングは鉛直方向の軸心回りに回転しながら地面を掘削していく。ケーシング内に杭は収容される。杭周りで摩擦は切断される。掘削に先立って杭の長さに合わせてケーシングは伸張する。ケーシングの交換や継ぎ足しが省かれるので、杭抜きの作業効率は高められることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3186376号公報
【特許文献2】特許第4064320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘削にあたってケーシングには地面から反力が作用する。ケーシングは地面からの反力に抗して長さを維持しなければならない。特許文献1では長さの維持が難しい。また、特許文献1では、掘削時にケーシングの下端から水が噴射されるものの、水ホースの配置にあたって第2円筒体やシーブが必須である。構造の複雑化は避けられず、しかも、シーブやロープは地中での動作に適していない。
【0005】
本発明は、伸縮可能でありながら掘削時に良好に長さを維持することができるケーシングを備える建機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態によれば、軸心回りで駆動される円筒形の第1ケーシング体と、前記第1ケーシング体に同軸に前記第1ケーシング体の内側に収容され、下端に、前記第1ケーシング体よりも下方に位置する掘削ビットを有する円筒形の第2ケーシング体と、前記第1ケーシング体の内面に区画されて軸方向に延びる軸方向案内路と、前記第2ケーシング体の外面に設置されて、前記軸方向案内路に進入し、前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を案内する突片と、前記軸方向案内路の上端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延びて、前記突片の進入を受け入れて前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第1周方向案内路と、前記軸方向案内路の下端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延びて、前記突片の進入を受け入れて前記第1ケーシング体に対して前記第2ケーシング体の軸方向相対変位を規制する第2周方向案内路とを備える建機は提供される。
【0007】
第1ケーシング体と第2ケーシング体とは1つのケーシングを形成する。第1ケーシング体に対して軸方向に第2ケーシング体が相対変位することでケーシングは伸縮する。伸縮にあたって第2ケーシング体の突片は第1ケーシング体の内側の軸方向案内路に案内される。
【0008】
突片が第1周方向案内路に進入すると、ケーシングは最大限に短縮される。第2ケーシング体は最大限に第1ケーシング体に収容される。軸心回りで第1ケーシング体が駆動されると、掘削ビットは地面を掘削していく。このとき、第1周方向案内路は掘削時の回転方向に反対向きに延びることから、突片は第1周方向案内路に保持される。ケーシングの伸縮は規制される。
【0009】
突片が第2周方向案内路に進入すると、ケーシングは最大限に伸張する。第2ケーシング体は最大限に第1ケーシング体から引き出される。軸心回りで第1ケーシング体が駆動されると、掘削ビットは地面を掘削していく。このとき、第2周方向案内路は掘削機の回転方向に反対向きに延びることから、突片は第2周方向案内路に保持される。ケーシングの短縮は規制される。地面から反力が作用してもケーシングの長さは維持される。こうしてケーシングは伸縮可能でありながら掘削時に良好に長さを維持することができる。
【0010】
ケーシングの伸張にあたってケーシングは地面に立てられる。第1ケーシング体が軸心回りに掘削時と反対向きに駆動されると、第2ケーシング体の突片は第1周方向案内路から軸方向案内路に進入する。第1ケーシング体が上向きに引き上げられると、第2ケーシング体は自重で地上に留まることから、ケーシングは伸張することができる。突片が軸方向案内路の下端に達した際に第1ケーシング体が軸心回りに掘削時と同様に駆動されると、突片は第2周方向案内路に進入する。こうしてケーシングの伸張状態は固定されることができる。
【0011】
ケーシングの短縮にあたってケーシングは同様に地面に立てられる。第1ケーシング体が軸心回りに掘削時と反対向きに駆動されると、第2ケーシング体の突片は第2周方向案内路から軸方向案内路に進入する。第1ケーシング体が下降すると、第2ケーシング体は地上に起立することから、ケーシングは短縮することができる。突片が軸方向案内路の上端に達した際に第1ケーシング体が軸心回りに掘削時と同様に駆動されると、突片は第1周方向案内路に進入する。こうしてケーシングの短縮状態は固定されることができる。このようにケーシングの伸縮にあたって建機の改変は回避されることができる。伸縮に固有の駆動源は追加されずに済む。
【0012】
建機は、前記第1ケーシング体の外面に取り付けられて、前記第1ケーシング体の上端から軸方向に下方に延びる第1水管と、前記第2ケーシング体の外面に取り付けられて、軸方向に下方に延びて前記第2ケーシング体の下端に噴出口を配置する第2水管と、前記第2水管の上端に連結されて、前記第1ケーシング体を貫通して前記第1ケーシング体の外面に突出する連結管と、前記第1ケーシング体の外面に沿って配置され、前記第1水管の下端に前記連結管を接続する水ホースとを備えてもよい。第1ケーシング体の上端で第1水管に水は導入される。水は、第1水管から、水ホースおよび連結管を経て第2水管に流入する。水は第2ケーシング体の下端に配置される噴出口から噴出する。こうして掘削にあたって地中に水は供給される。地中の土は軟化することから掘削の抵抗は減少する。効率的な掘削は実現されることができる。
【0013】
前記第1ケーシング体には、軸方向に延び、前記突片が前記軸方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる軸方向長孔と、前記軸方向長孔の上端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延び、前記突片が前記第1周方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる第1周方向長孔と、前記軸方向長孔の下端から連続し、掘削時の回転方向に反対向きに周方向に延び、前記突片が前記第2周方向案内路内に位置する際に前記連結管を受け入れる第2周方向長孔とが形成されてもよい。ケーシングの伸縮にあたって、軸方向案内路内に第2ケーシング体の突片が位置すると連結管は軸方向長孔内に位置する。第1周方向案内路内に突片が位置すると連結管は第1周方向長孔内に位置する。第2周方向案内路内に突片が位置すると連結管は第2周方向長孔内に位置する。連結管は第1ケーシング体の外観に現れて作業者から視認されることから、軸方向長孔、第1周方向長孔および第2周方向長孔に対して連結管の位置関係を確認することで、軸方向案内路、第1周方向案内路および第2周方向案内路に対して突片の位置は判断されることができる。伸縮の作業は効率的に遂行されることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように開示の建機によれば、伸縮可能でありながら掘削時に良好に長さを維持することができるケーシングは提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る建機の構造を概略的に示す図である。
図2】短縮状態のケーシングを概略的に示す全体図である。
図3】伸張状態のケーシングを概略的に示す全体図である。
図4】ケーシングの断面図である。
図5】第1ケーシング体の内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る建機を概略的に示す。建機11は、左右のクローラー12を支持する駆動体13と、垂直軸回りで旋回自在に駆動体13に連結されて、運転台14を支持する旋回体15とを備える。運転台14に作業者は乗車する。作業者の操作に応じてクローラー12は動作する。クローラー12の動作に基づき建機11は走行する。
【0018】
旋回体15には、水平軸回りで起伏自在にブーム16が支持される。ブーム16は、旋回体15に連結される第1体16aと、第1体16aの内空間に進退自在に収容される第2体16bと、第2体16bの内空間に進退自在に収容される第3体16cとを備える。ブーム16と旋回体15との間には油圧シリンダーが連結される。油圧シリンダーの伸縮に応じてブーム16の起伏は実現される。第1体16aと第2体16bとの間には油圧シリンダーが連結される。第2体16bと第3体16cとの間には油圧シリンダーが連結される。油圧シリンダーの伸縮に応じてブーム16はテレスコープ方式で伸縮することができる。個々の油圧シリンダーは油圧回路に接続される。油圧回路の働きで油圧源の油圧は個々の油圧シリンダーに供給されることができる。
【0019】
ブーム16の先端には水平軸線回りに揺動自在にリーダー21が連結される。ブーム16の角度および長さに応じてリーダー21は地面GDに起立することができる。リーダー21にはオーガーユニット22が連結される。オーガーユニット22は、リーダー21に案内されてリーダー21に沿って上下動するスライダー23と、スライダー23に結合されて、油圧回路から供給される油圧に基づき鉛直軸線24回りに駆動力を生成する油圧モーター25と、油圧モーター25に連結されて鉛直軸線24回りに回転するケーシング26とを備える。スライダー23には、水平軸線回りで回転自在にシーブ27が結合される。シーブ27には、ウインチ28で巻き上げられるワイヤー29が巻きかけられる。ウインチ28は油圧回路から供給される油圧に応じて動作する。ウインチ28の動作に応じてスライダー23の上下動は引き起こされる。油圧モーター25には、図2に示されるように、例えばブーム16に伝って水供給システム31から水が流入する水路32が区画される。
【0020】
図2に示されるように、ケーシング26は、油圧モーター25に連結されて、軸心(ここでは鉛直軸線24)回りで駆動される円筒形の第1ケーシング体34と、第1ケーシング体34に同軸に第1ケーシング体34の内側に収容され、下端に掘削ビット35を有する円筒形の第2ケーシング体36とを備える。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に最大限に収容されて、ケーシング26の短縮状態を確立する第1位置と、図3に示されるように、第1ケーシング体34から最大限に下方に引き出されて、ケーシング26の伸張状態を確立する第2位置との間で軸方向に変位することができる。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に収容される外径を有する本体36aと、本体36aの下端に結合されて、本体36aよりも大きな外径を有する拡径体36bとを備える。拡径体36bはケーシング26の短縮状態であっても第1ケーシング体34の下方に維持される。その結果、掘削ビット35はケーシング26の短縮状態であっても伸張状態であっても第1ケーシング体34よりも下方に位置する。
【0021】
第1ケーシング体34の外面には、第1ケーシング体34の上端から軸方向に下方に延びる第1水管37が取り付けられる。第1水管37の上端は第1ケーシング体34の上端で水路32に接続される。油圧モーター25の働きで鉛直軸線24回りに第1ケーシング体34が回転しても、水路32から第1水管37に水は供給されることができる。
【0022】
第2ケーシング体36の外面には、第2ケーシング体36の上端から軸方向に下方に延びて第2ケーシング体36の下端に噴出口38を配置する第2水管39が取り付けられる。第2水管39の上端には、第1ケーシング体34を貫通して第1ケーシング体34の外面に突出する連結管42が連結される。図4に示されるように、連結管42は、第2ケーシング体36で鉛直軸線24に直交する半径線に沿って第2ケーシング体36の外面から直立する直立管43と、直立管43の内端から第2ケーシング体36の外面に沿って周方向に延び、直立管43の内端に第2水管39の上端を接続する周管44とを備える。直立管43に流入する水は周管44から個々の第2水管39に分配される。
【0023】
直立管43は第1ケーシング体34の壁体を貫通する。直立管43の外端にはスイベルジョイント45が結合される。スイベルジョイント45には、第1ケーシング体34の外面よりも外側で水ホース46が連結される。スイベルジョイント45は直立管43の軸心回りに水ホース46の回転を許容する。
【0024】
水ホース46は、図2に示されるように、直立管43の外端に第1水管37の下端を接続する。水ホース46は第1ケーシング体34の外面に沿って配置される。第1ケーシング体34の外面には、第1ケーシング体34の外面との間に水ホース46の移動経路を確保する4つのホースカバー47が取り付けられる。ホースカバー47は、ケーシング26の伸縮時に水ホース46が変形しても水ホース46を覆うことができる。噴出口38には、水供給システム31から水路32、第1水管37、水ホース46および第2水管39を経て水が供給される。水は噴出口38から噴出する。
【0025】
第1ケーシング体34には、軸方向に延び、ケーシング26の伸縮時に直立管43が受け入れられる軸方向長孔51と、軸方向長孔51の上端から連続し、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びる第1周方向長孔52と、軸方向長孔51の下端から連続し、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びる第2周方向長孔53とが形成される。軸方向長孔51は、短縮状態と伸張状態との間でケーシング26が伸縮する際に直立管43の変位を許容する長さに設定される。第1周方向長孔52は、ケーシング26の短縮状態で第1ケーシング体34に対して鉛直軸線24回りに第2ケーシング体36が相対回転する際に直立管43の変位を許容する長さに設定される。第2周方向長孔53は、ケーシング26の伸張状態で第1ケーシング体34に対して鉛直軸線24回りに第2ケーシング体36が相対回転する際に直立管43の変位を許容する長さに設定される。ケーシング26の短縮状態で第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りで掘削時の回転方向DRに駆動されると、直立管43は第1周方向長孔52に進入する。ケーシング26の伸張状態で第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りで掘削時の回転方向DRに駆動されると、直立管43は第2周方向長孔53に進入する。
【0026】
図4に示されるように、第1ケーシング体34の内面には軸方向に延びる軸方向案内路54が区画される。ここでは、軸方向案内路54は等角度間隔で3つ設置される。個々の軸方向案内路54の形成にあたって第1ケーシング体34の内面にはレール54a、54bが固着される。
【0027】
第2ケーシング体36の外面には、軸方向案内路54に進入し、第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36の軸方向変位を案内する突片55が設置される。突片55は第2ケーシング体36の外周面で上端に配置される。軸方向案内路54は、短縮状態と伸張状態との間でケーシング26が伸縮する際に突片55の変位を許容する長さに設定される。軸方向案内路54の上端はケーシング26の短縮状態を規定する。軸方向案内路54の下端はケーシング26の伸張状態を規定する。
【0028】
図5に示されるように、軸方向案内路54の上端には、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びる第1周方向案内路56が接続される。第1周方向案内路56は、レール54a、54bの上端に接続される板材で区画される。第1周方向案内路56は、ケーシング26の短縮状態で第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時の回転方向DRに駆動される際に突片55の進入を受け入れる。第1周方向案内路56は、突片55が進入した際に第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36の相対変位を規制する長さで途切れる。
【0029】
軸方向案内路54の下端には、掘削時の回転方向DRに反対向きに周方向に延びる第2周方向案内路57が接続される。第2周方向案内路57は、レール54a、54bの下端に接続される板材で区画される。第2周方向案内路57は、ケーシング26の伸張状態で第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時の回転方向DRに駆動される際に突片55の進入を受け入れる。第2周方向案内路57は、突片55が進入した際に第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36の相対変位を規制する長さで途切れる。
【0030】
軸方向案内路54の下端には導入路58が連続する。導入路58は第2ケーシング体36の下端で下向きに開放される。第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36が収容される際に、突片55は導入路58の開放端から軸方向案内路54に進入することができる。
【0031】
導入路58にはストッパーピン61が配置される。ストッパーピン61は軸方向案内路54の下端を規定する。ストッパーピン61は第1ケーシング体34の外面から差し込まれて導入路58で第1ケーシング体34の内面から突出する。ストッパーピン61の働きで軸方向案内路54から導入路58へ突片55の進入は阻止される。ストッパーピン61は第1ケーシング体34に着脱自在に固定されればよい。ここでは、第1ケーシング体34の下端には掘削ビット62が設置される。
【0032】
図2に示されるように、第1ケーシング体34の外面には第1ホースガード63a、第2ホースガード63bおよび第3ホースガード63cが取り付けられる。第1、第2および第3ホースガード63a、63b、63cは、第1ケーシング体34の外面から決められた高さで起立する板材で形成される。第1ホースガード63aは、掘削時の回転方向DRに第1水管37および水ホース46の上流側に配置される。第1ホースガード63aは、掘削時に、第1水管37に水ホース46を接続するジョイントを保護する。第2ホースガード63bは、上側および周方向に第1周方向長孔52を囲むように配置される。第2ホースガード63bは、短縮状態の掘削時に、連結管42に水ホース46を接続するスイベルジョイント45を保護する。第3ホースガード63cは、下側および周方向に第2周方向長孔53を囲むように配置される。第3ホースガード63cは、伸張状態の掘削時に、連結管42に水ホース46を接続するスイベルジョイント45を保護する。
【0033】
次に建機11の作用を説明する。杭抜きの地切りにあたって建機11にはケーシング26が装着される。第1ケーシング体34と第2ケーシング体36とは1つのケーシング26を形成する。ここでは、ケーシング26の短縮状態は確立される。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に対して、第1周方向案内路56に突片55を保持する角位置に位置づけられる。突片55は、例えば、掘削時の回転方向DRに第1周方向案内路56の下流端に収まる。連結管42の直立管43は掘削時の回転方向DRに第1周方向長孔52の下流端に位置する。第2ケーシング体36は最大限に第1ケーシング体34に収容される。
【0034】
図1に示されるように、リーダー21は地面GDに立てられる。リーダー21は地面GDに直交する。リーダー21の長さに応じてブーム16の起伏角度や長さは調整される。起伏角度や長さの調整にあたって対応する油圧シリンダーには油圧回路から油圧は供給される。
【0035】
ケーシング26は地面GDに立てられる。ケーシング26の着地にあたってウインチ28は動作する。リーダー21の姿勢を反映してケーシング26は地面GDに直交する。ここでは、ケーシング26には水供給システム31から水が供給されることができる。水の供給に応じて第2ケーシング体36の下端から水は噴出する。
【0036】
鉛直軸線24回りでケーシング26は駆動される。第2ケーシング体36の掘削ビット35は地面GDを掘削していく。ケーシング26の下降にあたってウインチ28は動作する。第2ケーシング体36の内側に杭は収容されていく。ケーシング26の働きで杭と地中との摩擦は切断される。摩擦の切断が完了すると、ケーシング26は引き上げられる。その後、杭は引き抜かれる。
【0037】
杭の長さが短縮状態のケーシング26よりも長い場合にはケーシング26は短縮状態から伸張状態に切り換えられる。切り換えにあたってケーシング26は地面GDに立てられる。掘削時の回転方向DRと反対向きに鉛直軸線24回りにケーシング26は駆動される。このとき、油圧モーター25の駆動力は第1ケーシング体34に作用する一方で、第2ケーシング体36の下端と地面GDとの摩擦に応じて第2ケーシング体36の回転は阻止される。こうして突片55は第1周方向案内路56から軸方向案内路54に進入する。突片55は軸方向案内路54の上端に位置する。連結管42の直立管43は軸方向長孔51の上端に位置する。ここでは、周方向の相対変位にあたって第1ケーシング体34が少しだけ引き上げられて第1周方向案内路56と突片55との摩擦は軽減されてもよい。
【0038】
突片55が軸方向案内路54に進入すると、ケーシング26の駆動は停止される。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に対して、軸方向案内路54内で突片55の変位を許容する角位置に位置づけられる。続いて第1ケーシング体34は上向きに引き上げられる。突片55は軸方向案内路54に沿って軸方向に変位する。このとき、軸方向相対変位の規制は解除されることから、第1ケーシング体34だけが引き上げられ第2ケーシング体36は自重で地面GD上に留まる。こうしてケーシング26は伸張することができる。第1ケーシング体34の引き上げに伴って連結管42の直立管43は軸方向長孔51に沿って軸方向に上昇する。
【0039】
ケーシング26の伸張状態が確立されると、第1ケーシング体34の引き上げは停止される。突片55は軸方向案内路54の下端に到達する。連結管42の直立管43は軸方向長孔51の下端に到達する。続いてケーシング26は掘削時の回転方向DRに鉛直軸線24回りに駆動される。突片55は軸方向案内路54の下端から第2周方向案内路57に進入する。ケーシング26の伸張状態は固定されることができる。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に対して、第2周方向案内路57に突片55を保持する角位置に位置づけられる。突片55は、例えば、掘削時の回転方向DRに第2周方向案内路57の下流端に収まる。突片55および第2周方向案内路57の働きで第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36の軸方向変位は規制される。連結管42の直立管43は掘削時の回転方向DRに第2周方向長孔53の下流端に位置する。
【0040】
鉛直軸線24回りで伸張状態のケーシング26は駆動される。第2ケーシング体36の掘削ビット35は地面GDを掘削していく。ケーシング26の下降にあたってウインチ28は動作する。第2ケーシング体36の内側に杭は収容されていく。ケーシング26の働きで杭と地中との摩擦は切断される。摩擦の切断が完了すると、ケーシング26は引き上げられる。その後、杭は引き抜かれる。
【0041】
ケーシング26の短縮にあたってケーシング26は地面GDに立てられる。掘削時の回転方向DRと反対向きに鉛直軸線24回りにケーシング26は駆動される。このとき、油圧モーター25の駆動力は第1ケーシング体34に作用する一方で、第2ケーシング体36の下端と地面GDとの摩擦に応じて第2ケーシング体36の回転は阻止される。突片55は第2周方向案内路57から軸方向案内路54に進入する。突片55は軸方向案内路54の下端に位置する。連結管42の直立管43は軸方向長孔51の下端に位置する。ここでは、周方向の相対変位にあたって第1ケーシング体34が少しだけ引き上げられて第2周方向案内路57と突片55との摩擦は軽減されてもよい。
【0042】
突片55が軸方向案内路54に進入すると、ケーシング26の駆動は停止される。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に対して、軸方向案内路54内で突片55の変位を許容する角位置に位置づけられる。続いて第1ケーシング体34は下降する。このとき、第2ケーシング体36は地上に起立することから、ケーシング26は短縮することができる。突片55は軸方向案内路54に沿って軸方向に変位する。軸方向相対変位の規制は解除されることから、第1ケーシング体34は下向きに移動し第2ケーシング体36を収容していく。第1ケーシング体34の下降に伴って連結管42の直立管43は軸方向長孔51に沿って軸方向に下降する。
【0043】
ケーシング26の短縮状態が確立されると、第1ケーシング体34の下降は停止される。突片55は軸方向案内路54の上端に到達する。連結管42の直立管43は軸方向長孔51の上端に到達する。続いてケーシング26は掘削時の回転方向DRに鉛直軸線24回りに駆動される。突片55は軸方向案内路54の上端から第1周方向案内路56に進入する。こうしてケーシング26の短縮状態は固定されることができる。第2ケーシング体36は、第1ケーシング体34に対して、第1周方向案内路56に突片55を保持する角位置に位置づけられる。突片55は、例えば、掘削時の回転方向DRに第1周方向案内路56の下流端に収まる。突片55および第1周方向案内路56の働きで第1ケーシング体34に対して第2ケーシング体36の軸方向変位は規制される。連結管42の直立管43は掘削時の回転方向DRに第1周方向長孔52の下流端に位置する。
【0044】
前述のように、突片55が第1周方向案内路56に進入すると、ケーシング26は最大限に短縮される。第2ケーシング体36は最大限に第1ケーシング体34に収容される。鉛直軸線24回りで第1ケーシング体34が駆動されると、掘削ビット35は地面GDを掘削していく。このとき、第1周方向案内路56は掘削時の回転方向DRに反対向きに延びることから、突片55は第1周方向案内路56に保持される。ケーシング26の伸縮は規制される。
【0045】
その一方で、突片55が第2周方向案内路57に進入すると、ケーシング26は最大限に伸張する。第2ケーシング体36は最大限に第1ケーシング体34から引き出される。鉛直軸線24回りで第1ケーシング体34が駆動されると、掘削ビット35は地面GDを掘削していく。このとき、第2周方向案内路57は掘削時の回転方向DRに反対向きに延びることから、突片55は第2周方向案内路57に保持される。ケーシング26の短縮は規制される。地面GDから反力が作用してもケーシング26の長さは維持される。こうしてケーシングは伸縮可能でありながら掘削時に良好に長さを維持することができる。
【0046】
ケーシング26の伸張にあたってケーシング26は地面GDに立てられる。第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時と反対向きに駆動されると、第2ケーシング体36の突片55は第1周方向案内路56から軸方向案内路54に進入する。第1ケーシング体34が上向きに引き上げられると、第2ケーシング体36は自重で地上に留まることから、ケーシング26は伸張することができる。突片55が軸方向案内路54の下端に達した際に第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時と同様に駆動されると、突片55は第2周方向案内路57に進入する。こうしてケーシング26の伸張状態は固定されることができる。
【0047】
ケーシング26の短縮にあたってケーシング26は同様に地面GDに立てられる。第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時と反対向きに駆動されると、第2ケーシング体36の突片55は第2周方向案内路57から軸方向案内路54に進入する。第1ケーシング体34が下降すると、第2ケーシング体36は地上に起立することから、ケーシング26は短縮することができる。突片55が軸方向案内路54の上端に達した際に第1ケーシング体34が鉛直軸線24回りに掘削時と同様に駆動されると、突片55は第1周方向案内路56に進入する。こうしてケーシング26の短縮状態は固定されることができる。このようにケーシング26の伸縮にあたって建機11の改変は回避されることができる。伸縮に固有の駆動源は追加されずに済む。
【0048】
本実施形態では、第1ケーシング体34の上端で第1水管37に水は導入される。水は、第1水管37から、水ホース46および連結管42を経て第2水管39に流入する。水は第2ケーシング体36の下端に配置される噴出口38から噴出する。こうして掘削にあたって地中に水は供給される。地中の土は軟化することから掘削の抵抗は減少する。効率的な掘削は実現されることができる。
【0049】
本実施形態に係る建機11では、ケーシング26の伸縮にあたって、軸方向案内路54内に第2ケーシング体36の突片55が位置すると、連結管42の直立管43は軸方向長孔51内に位置する。第1周方向案内路56内に突片55が位置すると、連結管42の直立管43は第1周方向長孔52内に位置する。第2周方向案内路57内に突片55が位置すると、連結管42の直立管43は第2周方向長孔53内に位置する。連結管42は第1ケーシング体34の外観に現れて作業者から視認されることから、軸方向長孔51、第1周方向長孔52および第2周方向長孔53に対して連結管42の位置関係を確認することで、軸方向案内路54、第1周方向案内路56および第2周方向案内路57に対して突片55の位置は判断されることができる。伸縮の作業は効率的に遂行されることができる。
【符号の説明】
【0050】
11…建機、34…第1ケーシング体、35…掘削ビット、36…第2ケーシング体、37…第1水管、38…噴出口、39…第2水管、42…連結管、46…水ホース、51…軸方向長孔、52…第1周方向長孔、53…第2周方向長孔、54…軸方向案内路、55…突片、56…第1周方向案内路、57…第2周方向案内路、DR…掘削時の回転方向。
図1
図2
図3
図4
図5