(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111656
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】半導体装置、圧力センサおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/8234 20060101AFI20230803BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20230803BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20230803BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H01L27/06 102A
H01L27/092 H
H01L27/092 B
H01L27/088 331D
H01L27/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013609
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 隆弥
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
【Fターム(参考)】
5F038AR03
5F038AR16
5F038AR28
5F038AR29
5F038AZ07
5F038CA12
5F038EZ06
5F038EZ10
5F048AA04
5F048AC03
5F048AC10
5F048BA16
5F048BB05
5F048BE02
5F048BE03
5F048BF15
5F048BF16
5F048BF18
5F048BG13
5F048BH01
5F048BH04
(57)【要約】
【課題】圧力センサの温度特性を向上させる。
【解決手段】半導体装置300Aは、圧力センサ形成領域RBとトランジスタ形成領域RAとを含む。このとき、圧力センサ形成領域RBに形成されている圧力センサ200Aは、p
-型半導体基板50と、n
-型ディープウェル80に対応するn
-型半導体領域60と、p
-型ウェル81に対応するピエゾ抵抗領域11と、を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置であって、
前記トランジスタ形成領域には、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第2導電型の第1ウェルと、
前記第1ウェルに形成された前記第1導電型の第2ウェルと、
前記第2ウェル上に形成されたトランジスタと、
が形成され、
前記トランジスタは、
前記第2ウェルに形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域に挟まれたチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有し、
前記圧力センサ形成領域に形成されている圧力センサは、
前記半導体基板と、
前記第1ウェルに対応する前記第2導電型の半導体領域と、
前記第2ウェルに対応するピエゾ抵抗領域と、
を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ピエゾ抵抗領域の不純物濃度は、前記ソース領域および前記ドレイン領域のそれぞれの不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記半導体領域の不純物濃度は、前記第1ウェルの不純物濃度と同等であり、
前記ピエゾ抵抗領域の不純物濃度は、前記第2ウェルの不純物濃度と同等である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である、半導体装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記トランジスタは、前記圧力センサを制御する回路の構成要素である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、被測定体に貼り付け可能に構成されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記圧力センサ形成領域における前記半導体基板の裏面には、溝部が形成されている、半導体装置。
【請求項8】
圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置であって、
前記トランジスタ形成領域には、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第2導電型の第1ウェルと、
前記第1ウェルに形成された前記第1導電型の第2ウェルと、
前記第2ウェル上に形成されたトランジスタと、
が形成され、
前記トランジスタは、
前記第2ウェルに形成されたソース領域およびドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域に挟まれたチャネル形成領域と、
前記チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
を有し、
前記圧力センサ形成領域に形成されている圧力センサは、
前記半導体基板と、
前記第1ウェルに対応する前記第2導電型の第1半導体領域と、
前記第2ウェルに対応する前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記ソース領域および前記ドレイン領域に対応するピエゾ抵抗領域と、
を有する、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第1半導体領域の不純物濃度は、前記第1ウェルの不純物濃度と同等であり、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第2ウェルの不純物濃度と同等であり、
前記ピエゾ抵抗領域の不純物濃度は、前記ソース領域および前記ドレイン領域のそれぞれの不純物濃度と同等である、半導体装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の半導体装置において、
前記第1導電型は、p型であり、
前記第2導電型は、n型である、半導体装置。
【請求項11】
圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置の製造方法であって、
(a)第1導電型の半導体基板を準備する工程、
(b)前記トランジスタ形成領域に第2導電型の第1ウェルを形成するとともに、前記圧力センサ形成領域に前記第2導電型の半導体領域を形成する工程、
(c)前記第1ウェル内に前記第1導電型の第2ウェルを形成するとともに、前記半導体領域内に前記第1導電型のピエゾ抵抗領域を形成する工程、
(d)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
(f)前記第2ウェル内にソース領域およびドレイン領域を形成する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1ウェルと前記半導体領域は同一工程で形成され、
前記第2ウェルと前記ピエゾ抵抗領域は同一工程で形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置の製造方法であって、
(a)第1導電型の半導体基板を準備する工程、
(b)前記トランジスタ形成領域に第2導電型の第1ウェルを形成するとともに、前記圧力センサ形成領域に前記第2導電型の第1半導体領域を形成する工程、
(c)前記第1ウェル内に前記第1導電型の第2ウェルを形成するとともに、前記第1半導体領域内に前記第1導電型の第2半導体領域を形成する工程、
(d)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程、
(e)前記ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
(f)前記第2ウェル内にソース領域およびドレイン領域を形成するとともに、前記第2半導体領域内に前記第2導電型のピエゾ抵抗領域を形成する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1ウェルと前記第1半導体領域は同一工程で形成され、
前記第2ウェルと前記第2半導体領域は同一工程で形成され、
前記ソース領域および前記ドレイン領域と前記ピエゾ抵抗領域は同一工程で形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第2導電型の半導体領域と、
前記半導体領域に内包される前記第1導電型のピエゾ抵抗領域と、
を備える、圧力センサ。
【請求項16】
請求項15に記載の圧力センサにおいて、
前記圧力センサは、前記ピエゾ抵抗領域と電気的に接続された一対の電極を有している、圧力センサ。
【請求項17】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に形成された第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域に内包される前記第1導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域に内包される前記第2導電型のピエゾ抵抗領域と、
を備える、圧力センサ。
【請求項18】
請求項17に記載の圧力センサにおいて、
前記圧力センサは、前記ピエゾ抵抗領域と電気的に接続された一対の電極を有している、圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、圧力センサおよび半導体装置の製造技術に関し、例えば、圧力センサとトランジスタとを含む半導体装置およびその製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-2781号公報(特許文献1)および非特許文献1には、ピエゾ抵抗を使用した圧力センサおよびその製造方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】X. Li et al. “High-temperature piezoresistive pressure sensor based on implantation of oxygen into silicon wafer” Sensors and Actuators A 179 (2012) 277- 282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧力センサは、幅広い用途に使用されている。例えば、自動車用途を例に挙げて説明すると、圧力センサは、自動車のエンジン制御に用いられる吸気圧センサとして採用されはじめ、その後、路面状況や運転状況に合わせてダンパの硬さや特性を変化させるサスペンションの油圧制御や、エアコンの冷え方を制御する冷媒圧制御などの用途に使用されている。さらに、近年では、安全性や環境性能を高めるために排気圧やブレーキ圧の他、エアバックやタイヤ空気圧などの様々な用途に圧力センサが用いられている。したがって、圧力センサは、様々な環境下で使用されることから、過酷な環境下でも良好な特性が得られることが求められている。特に、過酷な温度環境においても良好な特性が得られることが重要であることから、温度特性に優れた圧力センサが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態における半導体装置は、圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む。このとき、トランジスタ形成領域には、第1導電型の半導体基板と、半導体基板に形成された第2導電型の第1ウェルと、第1ウェルに形成された第1導電型の第2ウェルと、第2ウェル上に形成されたトランジスタと、が形成されている。そして、トランジスタは、第2ウェルに形成されたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域に挟まれたチャネル形成領域と、チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を有する。さらに、圧力センサ形成領域に形成されている圧力センサは、半導体基板と、第1ウェルに対応する第2導電型の半導体領域と、第2ウェルに対応するピエゾ抵抗領域と、を有する。
【0007】
一実施の形態における半導体装置は、圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む。このとき、トランジスタ形成領域には、第1導電型の半導体基板と、半導体基板に形成された第2導電型の第1ウェルと、第1ウェルに形成された第1導電型の第2ウェルと、第2ウェル上に形成されたトランジスタと、が形成されている。そして、トランジスタは、第2ウェルに形成されたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域に挟まれたチャネル形成領域と、チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、を有する。さらに、圧力センサ形成領域に形成されている圧力センサは、半導体基板と、第1ウェルに対応する第2導電型の第1半導体領域と、第2ウェルに対応する第1導電型の第2半導体領域と、ソース領域およびドレイン領域に対応するピエゾ抵抗領域と、を有する。
【0008】
一実施の形態における半導体装置の製造方法は、圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置の製造方法であり、(a)第1導電型の半導体基板を準備する工程、(b)トランジスタ形成領域に第2導電型の第1ウェルを形成するとともに、圧力センサ形成領域に第2導電型の半導体領域を形成する工程、(c)第1ウェル内に第1導電型の第2ウェルを形成するとともに、半導体領域内に第1導電型のピエゾ抵抗領域を形成する工程、(d)トランジスタ形成領域の半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程、(e)ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、(f)第2ウェル内にソース領域およびドレイン領域を形成する工程、を備える。
【0009】
一実施の形態における半導体装置の製造方法は、圧力センサ形成領域とトランジスタ形成領域とを含む半導体装置の製造方法であり、(a)第1導電型の半導体基板を準備する工程、(b)トランジスタ形成領域に第2導電型の第1ウェルを形成するとともに、圧力センサ形成領域に第2導電型の第1半導体領域を形成する工程、(c)第1ウェル内に第1導電型の第2ウェルを形成するとともに、第1半導体領域内に第1導電型の第2半導体領域を形成する工程、(d)トランジスタ形成領域の半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程、(e)ゲート絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、(f)第2ウェル内にソース領域およびドレイン領域を形成するとともに、第2半導体領域内に第2導電型のピエゾ抵抗領域を形成する工程、を備える。
【0010】
一実施の形態における圧力センサは、第1導電型の半導体基板と、半導体基板に形成された第2導電型の半導体領域と、半導体領域に内包される第1導電型のピエゾ抵抗領域と、を備える。
【0011】
一実施の形態における圧力センサは、第1導電型の半導体基板と、半導体基板に形成された第2導電型の第1半導体領域と、第1半導体領域に内包される第1導電型の第2半導体領域と、第2半導体領域に内包される第2導電型のピエゾ抵抗領域と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、圧力センサの温度特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1関連技術における圧力センサの構成を模式的に示す図である。
【
図2】第1関連技術における圧力センサの等価回路図である。
【
図3】pn接合ダイオードに逆バイアスを印加した状態を示すバンド図である。
【
図4】第2関連技術における圧力センサの模式的な構成を示す図である。
【
図5】実施の形態1における圧力センサの模式的な構成を示す図である。
【
図6】実施の形態1における圧力センサの等価回路図である。
【
図7】ピエゾ抵抗領域とp
-型半導体基板との間にn
-型半導体領域を設ける構成を採用しながら、ピエゾ抵抗領域とn
-型半導体領域との間に逆バイアスVを印加するとともにn
-型半導体領域とp
-型半導体基板との間に逆バイアスVを印加した状態を示すバンド図である。
【
図8】電子電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、(a)は300℃におけるシミュレーション結果、(b)は350℃におけるシミュレーション結果、(c)は400℃におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】正孔電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、(a)は300℃におけるシミュレーション結果、(b)は350℃におけるシミュレーション結果、(c)は400℃におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】半導体装置の模式的な構成を示す図である。
【
図11】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図である。
【
図17】変形例における半導体装置を示す図である。
【
図18】実施の形態2における圧力センサの構成を示す図である。
【
図19】実施の形態2における圧力センサの等価回路図である。
【
図20】(a)は電子電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、700℃におけるシミュレーション結果を示す図であり、(b)は正孔電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、700℃におけるシミュレーション結果を示す図である。
【
図21】半導体装置の模式的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0015】
(実施の形態1)
<圧力センサの検出原理>
本実施の形態1で対象としている圧力センサは、ピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサである。以下では、ピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサの検出原理について説明する。
【0016】
まず、「ピエゾ抵抗効果」とは、半導体や金属に機械的な歪を加えたときに電気抵抗が変化する効果であり、圧力センサとしては、例えば、「ピエゾ抵抗効果」を発現する半導体が使用される。具体的に、気体や液体の圧力が外部から圧力センサを構成する半導体に加わるように構成される。すると、外部からの圧力が加わった半導体は歪む結果、「ピエゾ抵抗効果」によって、半導体の電気抵抗が変化する。
【0017】
そして、この半導体には、一対の電極が電気的に接続されており、一対の電極間の出力電圧は、電気抵抗の変化に応じて変動する。このとき、電気抵抗の変化は、歪によって引き起こされ、この歪が気体や液体からの圧力に起因することを考慮すると、電気抵抗の変化から、間接的に気体や液体からの圧力を算出できることがわかる。すなわち、圧力センサを構成する半導体から出力された出力電圧に基づいて、外部から圧力センサに加わる圧力を検出することができる。以上のようにして、圧力センサによれば、「ピエゾ抵抗効果」を利用して、外部から加わる圧力を検出することができる。
【0018】
<第1関連技術>
例えば、ピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサとして、以下に示す構造の圧力センサがある。すなわち、圧力センサの構造に関して、以下に示す第1関連技術がある。
【0019】
ここで、本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0020】
図1は、第1関連技術における圧力センサ100Aの構成を模式的に示す図である。
【0021】
図1において、圧力センサ100Aは、n
-型半導体基板10を有し、このn
-型半導体基板10内にp
-型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11が形成されている。そして、ピエゾ抵抗領域11は、一対の電極20Aおよび電極20Bと電気的に接続されている。このとき、ピエゾ抵抗領域11が抵抗R1として機能する。また、n
-型半導体基板10とピエゾ抵抗領域11との境界領域にpn接合が形成される結果、n
-型半導体基板10とピエゾ抵抗領域11とによってpn接合ダイオードD1が形成される。これにより、第1関連技術における圧力センサ100Aの等価回路図は、
図2に示すようになる。
【0022】
このように構成されている圧力センサ100Aでは、外部から圧力が加わると、n-型半導体基板10に形成されているピエゾ抵抗領域11に歪が発生する。この結果、「ピエゾ抵抗効果」によって、ピエゾ抵抗領域11の抵抗値が変化する。ここで、ピエゾ抵抗領域11には一対の電極20Aおよび電極20Bが電気的に接続されており、電極20Aと電極20Bとの間の出力電圧は、電気抵抗の変化に応じて変動する。したがって、出力電圧の変化に基づいて、間接的に気体や液体からの圧力を算出できる。
【0023】
このような圧力センサ100Aを動作させる場合には、ピエゾ抵抗領域11とn-型半導体基板10からなるpn接合ダイオードD1に順方向電流が流れないように、ピエゾ抵抗領域11とn-型半導体基板10との間に逆バイアスが印加される。
【0024】
図3は、pn接合ダイオードD1に逆バイアスVを印加した状態を示すバンド図である。
図3において、順方向電流ほどではないが、pn接合ダイオードD1に逆バイアスVを印加した場合も僅かなリーク電流が流れる。すなわち、ピエゾ抵抗領域11を構成するp
-型半導体領域の伝導帯Ec1には、少数キャリアである電子が存在するため、この少数キャリアである電子が、空乏層内に形成される電界によって、ピエゾ抵抗領域11の伝導帯Ec1から電子的にエネルギーが低いn
-型半導体基板10の伝導帯Ec2に移動する。一方、n
-型半導体基板10の価電子帯Ev2には、少数キャリアである正孔が存在するため、この少数キャリアである正孔が、空乏層内に形成される電界によって、n
-型半導体基板10の価電子帯Ev2から正孔的にエネルギーが低いピエゾ抵抗領域11の価電子帯Ev1に移動する。このようにして、圧力センサ100Aを構成するピエゾ抵抗領域11とn
-型半導体基板10との間には、少数キャリアに起因する電子電流と正孔電流とを合わせたリーク電流が流れることになる。
【0025】
ここで、室温付近の温度では、ピエゾ抵抗領域11を構成するp-型半導体領域の伝導帯Ec1に励起される少数キャリア(電子)の数、および、n-型半導体基板10の価電子帯Ev2に存在する少数キャリア(正孔)の数は少ないことから、上述したリーク電流はそれほど多くはならない。ところが、温度が高くなると電子が持つエネルギーが大きくなってバンドギャップを超えて励起しやすくなるため、ピエゾ抵抗領域11を構成するp-型半導体領域の伝導帯Ec1に励起される少数キャリア(電子)の数、および、n-型半導体基板10の価電子帯Ev2に存在する少数キャリア(正孔)の数が多くなる。この結果、圧力センサ100Aを構成するピエゾ抵抗領域11とn-型半導体基板10との間に流れるリーク電流が増加する。これにより、リーク電流がn-型半導体基板10にまで達すると他の素子へ悪影響が及ぶことが懸念される。このため、圧力センサ100Aでは、リーク電流の増加によって、圧力センサ100Aの動作温度が125℃程度に限定される。
【0026】
そこで、リーク電流を低減させて高温動作を可能とする第2関連技術が提案されている。以下では、第2関連技術における圧力センサ100Bについて説明する。
【0027】
<第2関連技術>
図4は、第2関連技術における圧力センサ100Bの模式的な構成を示す図である。
【0028】
図4において、圧力センサ100Bは、SOI(Silicon On Insulator)基板1Sを有しており、SOI基板1Sは、n
-型半導体基板である支持基板10Aと、支持基板10A上に形成された絶縁層30と、絶縁層30上に形成されたシリコン層40から構成されている。このとき、絶縁層30は、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。そして、圧力センサ100Bにおいては、SOI基板1Sのシリコン層40にp
-型半導体領域であるピエゾ抵抗領域11が形成されている。このピエゾ抵抗領域11は、一対の電極20Aおよび電極20Bと電気的に接続されている。
【0029】
以上のように構成されている圧力センサ100Bでは、ピエゾ抵抗領域11がn-型半導体基板である支持基板10Aと接していない。言い換えれば、ピエゾ抵抗領域11と支持基板10Aとの間に絶縁層30が介在している。これにより、圧力センサ100Bでは、ピエゾ抵抗領域11と支持基板10Aとの接触によるpn接合ダイオードが形成されないことから、上述した第1関連技術と異なり、高温時においてもリーク電流を低減することができる。したがって、第2関連技術によれば、500℃程度の高温動作が可能となる。
【0030】
ただし、第2関連技術では、高価なSOI基板を使用していることから、製造コストが上昇することが懸念されている。つまり、第2関連技術は、高温時におけるリーク電流を低減する観点から有用であるが、製造コストが上昇するデメリットが存在する。このため、第2関連技術は、製造コストを抑制しながら、高温時におけるリーク電流を低減して圧力センサの性能を向上させる観点から改善の余地が存在する。
【0031】
そこで、本実施の形態1では、第1関連技術および第2関連技術に存在する改善の余地を克服するための工夫を施している。つまり、本実施の形態1では、製造コストを抑制しながらも、高温動作時までリーク電流を低減できる圧力センサを実現するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想を説明する。
【0032】
<圧力センサの構成>
図5は、本実施の形態1における圧力センサ200Aの模式的な構成を示す図である。
【0033】
図5において、圧力センサ200Aは、p
-型半導体基板50を有し、p
-型半導体基板50には、n
-型半導体領域60が形成されている。そして、n
-型半導体領域60の内部には、p
-型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11が形成されている。言い換えれば、n
-型半導体領域60に内包されるように、p
-型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11が形成されている。そして、このピエゾ抵抗領域11は、一対の電極20Aおよび電極20Bと電気的に接続されている。
【0034】
このとき、ピエゾ抵抗領域11が抵抗R1として機能する。また、n
-型半導体領域60とピエゾ抵抗領域11との境界領域にpn接合が形成される結果、n
-型半導体領域60とピエゾ抵抗領域11とによってpn接合ダイオードD1が形成される。さらに、n
-型半導体領域60とp
-型半導体基板50との境界領域にもpn接合が形成される結果、n
-型半導体領域60とp
-型半導体基板50とによってpn接合ダイオードD2が形成される。これにより、圧力センサ200Aの等価回路図は、
図6に示すようになる。
【0035】
ここで、n-型半導体領域60は、ピエゾ抵抗領域11とp-型半導体基板50とを電気的に分離する機能を有し、n-型半導体領域60による電気的な素子分離を実現するために、pn接合ダイオードD1およびpn接合ダイオードD2に逆バイアスを印加する。すなわち、ピエゾ抵抗領域11とn-型半導体領域60との間に逆バイアスが印加されるとともにn-型半導体領域60とp-型半導体基板50との間に逆バイアスが印加される。
【0036】
<圧力センサの動作>
続いて、本実施の形態1における圧力センサ200Aの動作について説明する。
【0037】
圧力センサ200Aでは、外部から圧力が加わると、ピエゾ抵抗領域11に歪が発生する。この結果、「ピエゾ抵抗効果」によって、ピエゾ抵抗領域11の抵抗値が変化する。ここで、ピエゾ抵抗領域11には一対の電極20Aおよび電極20Bが電気的に接続されており、電極20Aと電極20Bとの間の出力電圧は、電気抵抗の変化に応じて変動する。したがって、出力電圧の変化に基づいて、間接的に気体や液体からの圧力を算出できる。
【0038】
<実施の形態1における特徴>
次に、本実施の形態1における特徴点について説明する。
【0039】
本実施の形態1における特徴点は、例えば、
図5に示すように、p
-型半導体基板50とピエゾ抵抗領域11との間にn
-型半導体領域60が介在しており、ピエゾ抵抗領域11とn
-型半導体領域60との間およびn
-型半導体領域60とp
-型半導体基板50との間の両方に逆バイアスを印加する点にある。
【0040】
これにより、n-型半導体領域60が、ピエゾ抵抗領域11とp-型半導体基板50とを電気的に分離する素子分離領域として機能する結果、ピエゾ抵抗領域11とp-型半導体基板50との間を流れるリーク電流を低減することができる。したがって、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、高温動作が可能となる。
【0041】
以下では、p-型半導体基板50とピエゾ抵抗領域11との間にn-型半導体領域60を介在させて、ピエゾ抵抗領域11とn-型半導体領域60との間およびn-型半導体領域60とp-型半導体基板50との間の両方に逆バイアスを印加するという本実施の形態1における特徴点によれば、リーク電流を低減できることについて説明する。
【0042】
図7は、ピエゾ抵抗領域11とp
-型半導体基板50との間にn
-型半導体領域60を設ける構成を採用しながら、ピエゾ抵抗領域11とn
-型半導体領域60との間に逆バイアスVを印加するとともにn
-型半導体領域60とp
-型半導体基板50との間に逆バイアスVを印加した状態を示すバンド図である。
【0043】
図7に示すように、ピエゾ抵抗領域11を構成するp
-型半導体領域の伝導帯Ec1には、少数キャリアである電子が存在するため、この少数キャリアである電子が、空乏層内に形成される電界によって、ピエゾ抵抗領域11の伝導帯Ec1から電子的に見てエネルギーが低いn
-型半導体領域60の伝導帯Ec2に移動する。同様に、p
-型半導体基板50の伝導帯Ec3にも、少数キャリアである電子が存在するため、この少数キャリアである電子が、空乏層内に形成される電界によって、p
-型半導体基板50の伝導帯Ec3から電子的に見てエネルギーが低いn
-型半導体領域60の伝導帯Ec2に移動する。
【0044】
したがって、n
-型半導体領域60の伝導帯Ec2には、ピエゾ抵抗領域11の伝導帯Ec1とp
-型半導体基板50の伝導帯Ec3の両方から電子が流れ込むことになる。つまり、
図7に示すように、ピエゾ抵抗領域11とp
-型半導体基板50の間には、逆バイアスに起因する井戸型ポテンシャルが形成される。これにより、例えば、ピエゾ抵抗領域11からn
-型半導体領域60には電子が流れ込むが、このn
-型半導体領域60に流れ込んだ電子は、ポテンシャル障壁によってn
-型半導体領域60からp
-型半導体基板50までは到達しにくくなる。同様に、例えば、p
-型半導体基板50からn
-型半導体領域60には電子が流れ込むが、このn
-型半導体領域60に流れ込んだ電子は、ポテンシャル障壁によってn
-型半導体領域60からピエゾ抵抗領域11までは到達しにくくなる。このことは、ピエゾ抵抗領域11とp
-型半導体基板50の間を電子が流れることが抑制されることを意味する。この結果、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、電子電流に起因するリーク電流を低減できることがわかる。
【0045】
一方、
図7に示すように、n
-型半導体領域60の価電子帯Ev2には、少数キャリアである正孔が存在するため、少数キャリアである正孔が、空乏層内に形成される電界によって、n
-型半導体領域60の価電子帯Ev2から正孔的に見てエネルギーが低いピエゾ抵抗領域11の価電子帯Ev1およびp
-型半導体基板50の価電子帯Ev3に移動する。
【0046】
したがって、ピエゾ抵抗領域11の価電子帯Ev1およびp-型半導体基板50の価電子帯Ev3のそれぞれには、n-型半導体領域60の価電子帯Ev2から少数キャリアである正孔が流れ込むことになる。ただし、逆に、ピエゾ抵抗領域11の価電子帯Ev1からn-型半導体領域60の価電子帯Ev2への多数キャリア(正孔)の移動は、ポテンシャル障壁によって阻害される。同様に、p-型半導体基板50の価電子帯Ev3からn-型半導体領域60の価電子帯Ev2への多数キャリア(正孔)の移動も、ポテンシャル障壁によって阻害される。このことは、ピエゾ抵抗領域11とp-型半導体基板50の間を正孔が流れることが抑制されることを意味する。この結果、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、正孔電流に起因するリーク電流も低減できることがわかる。
【0047】
以上のことから、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、電子電流に起因するリーク電流および正孔電流に起因するリーク電流の両方を抑制できるため、電子電流と正孔電流を合わせたトータルのリーク電流を低減することができる。この結果、高温時までリーク電流を低減できるため、圧力センサ200Aの温度特性を向上させることができ、これによって、圧力センサ200Aの高温動作が可能となる。
【0048】
<<シミュレーション結果>>
続いて、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、リーク電流を低減できることを検証したシミュレーション結果について説明する。
【0049】
図8は、圧力センサ200Aの温度特性を評価した結果を示す図である。特に、
図8は、電子電流に起因するリーク電流密度の発生状況を示すシミュレーション結果であり、(a)は300℃におけるシミュレーション結果、(b)は350℃におけるシミュレーション結果、(c)は400℃におけるシミュレーション結果を示している。ここで、グレー領域がp
-型半導体基板50にまで達するリーク電流密度を示している。
【0050】
図8(a)~
図8(c)を見ると、
図8(a)と
図8(b)では、p
-型半導体基板50までリーク電流が流れていない一方、
図8(c)では、p
-型半導体基板50までリーク電流が流れていることがわかる。したがって、圧力センサ200Aによれば、少なくとも350℃までは電子電流に起因するリーク電流の発生を抑制できることがわかる。
【0051】
次に、
図9は、正孔電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、(a)は300℃におけるシミュレーション結果、(b)は350℃におけるシミュレーション結果、(c)は400℃におけるシミュレーション結果を示している。ここで、グレー領域がp
-型半導体基板50にまで達するリーク電流密度を示している。
【0052】
図9(a)~
図9(c)を見ると、
図9(a)では、p
-型半導体基板50までリーク電流が流れていない一方、
図9(b)および
図9(c)では、p
-型半導体基板50までリーク電流が流れていることがわかる。したがって、圧力センサ200Aによれば、少なくとも300℃までは正孔電流に起因するリーク電流の発生を抑制できることがわかる。
【0053】
以上のことから、電子電流のシミュレーション結果と正孔電流のシミュレーション結果とを合わせると、少なくとも300℃程度までリーク電流を低減できることがわかる。すなわち、本実施の形態1における圧力センサ200Aの構造によれば、300℃程度の高温動作が可能であることが裏付けられている。したがって、第1関連技術における圧力センサ100Aの動作可能温度は125℃程度が限界であるのに対し、本実施の形態1における圧力センサ200Aの動作可能温度は300℃程度である点で、圧力センサ200Aの構造は、非常に有用な構造であることがわかる。
【0054】
本実施の形態1における目的は、上述した第1関連技術および第2関連技術に存在する改善の余地を克服するための工夫を施すことにあり、具体的には、製造コストを抑制しながらも、高温動作時までリーク電流を低減できる圧力センサを実現することにある。
【0055】
ここで、例えば、
図7に示す圧力センサ200Aの構造は、リーク電流を低減させて高温動作を可能とする観点から優れている。そして、圧力センサ200Aは、製造コストを削減する観点からも有用な構造であれば、量産性にも優れているということができ、上述した目的を実現することができる。この点に関し、圧力センサ200Aは、製造コストを削減しながら、リーク電流を低減して高温動作を可能とする有用な構造としての可能性を秘めており、上述した目的を実現するために適した構造である。具体的には、以下に示す基本思想を圧力センサ200Aで具現化することによって、製造コストを抑制しながらも、高温動作時までリーク電流を低減できる圧力センサを実現できる。
【0056】
<基本思想>
本実施の形態1における基本思想は、製造コストを抑制しながら、リーク電流を低減するために、電界効果トランジスタで形成される「トリプルウェル構造」を圧力センサ200Aの構成に利用する思想である。この基本思想によれば、まず、高価なSOI基板を使用せずにバルクの半導体基板を使用することができることから、製造コストを低減できる。さらには、電界効果トランジスタで形成される「トリプルウェル構造」をそのまま圧力センサ200Aの構成に利用することから、1つの半導体基板に電界効果トランジスタと圧力センサ200Aとを混載することが容易となる。このことは、電界効果トランジスタの製造工程を変更することなく、電界効果トランジスタと圧力センサ200Aとを含む半導体装置を製造することができることを意味することから、この点からも圧力センサ200Aの製造コストを削減できることになる。
【0057】
すなわち、「トリプルウェル構造」を利用する基本思想によれば、(1)SOI基板を使用せずにバルクの半導体基板(シリコンウェハ)を使用できる点、(2)電界効果トランジスタの製造工程をそのまま利用して「トリプルウェル構造」の圧力センサ200Aを形成できる点との相乗要因によって、圧力センサ200Aを含む半導体装置の製造コストを抑制できる。そして、「トリプルウェル構造」を利用した圧力センサ200Aによれば、リーク電流を低減できる。つまり、基本思想によれば、製造コストを抑制しながらも、高温動作時までリーク電流を低減できる圧力センサ200Aを実現することができる。
【0058】
以下では、圧力センサ200Aと電界効果トランジスタとを混載した半導体装置の構成について説明する。そして、さらに、この半導体装置の製造方法について説明する。
【0059】
<半導体装置の構成>
図10は、半導体装置300Aの模式的な構成を示す図である。
【0060】
図10において、半導体装置300Aは、トランジスタ形成領域RAと圧力センサ形成領域RBとを有している。トランジスタ形成領域RAには、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)領域が形成されたp
-型半導体基板50と、p
-型半導体基板50に形成されたn
-型ウェル71と、n
-型ウェル71上に形成されたpチャネル型電界効果トランジスタQpとが形成されている。そして、pチャネル型電界効果トランジスタQpは、n
-型ウェル71に形成されたソース領域72およびドレイン領域73と、ソース領域72とドレイン領域73に挟まれたチャネル形成領域と、チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜74と、ゲート絶縁膜74上に形成されたゲート電極75を有している。また、n
-型ウェル71には、コンタクト領域76が形成されている。
【0061】
さらに、トランジスタ形成領域RAには、例えば、p-型半導体基板50に形成されたn-型ディープウェル80と、n-型ディープウェル80に形成されたp-型ウェル81が形成されており、p-型半導体基板50とn-型ディープウェル80とp-型ウェル81によって「トリプルウェル構造」が構成される。そして、「トリプルウェル構造」上にnチャネル型電界効果トランジスタQnが形成されている。このnチャネル型電界効果トランジスタQnは、p-型ウェル81に形成されたソース領域82およびドレイン領域83と、ソース領域82とドレイン領域83に挟まれたチャネル形成領域と、チャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜84と、ゲート絶縁膜84上に形成されたゲート電極85を有している。また、p-型ウェル81には、コンタクト領域86が形成されており、n-型ディープウェル80には、コンタクト領域87が形成されている。同様に、p-型半導体基板50には、コンタクト領域88が形成されている。
【0062】
一方、圧力センサ形成領域RBには、圧力センサ200Aが形成されている。この圧力センサ200Aは、p-型半導体基板50と、n-型ディープウェル80に対応するn-型半導体領域60と、p-型ウェル81に対応するピエゾ抵抗領域11から構成されている。
【0063】
このとき、例えば、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度は、ソース領域82およびドレイン領域83のそれぞれの不純物濃度よりも低くなっている一方、p-型ウェル81の不純物濃度と同等である。これに対し、n-型半導体領域60の不純物濃度は、例えば、n-型ディープウェル80の不純物濃度と同等である。ここで、「不純物濃度が同等である」とは、不純物濃度のオーダーが同じである場合をいう。例えば、「ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度がp-型ウェル81の不純物濃度と同等である」とは、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度のオーダーとp-型ウェル81の不純物濃度のオーダーとが一致する場合をいう。
【0064】
このように構成されているトランジスタ形成領域RAおよび圧力センサ形成領域RBには、例えば、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜90が形成されており、この層間絶縁膜90に複数のプラグ91が形成されている。そして、層間絶縁膜90上には、複数のプラグ91と電気的に接続される複数の配線92が形成されている。
【0065】
<半導体装置の製造方法>
続いて、半導体装置300Aの製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0066】
まず、例えば、
図11に示すように、p
-型半導体基板50を準備して、p
-型半導体基板50にSTI領域70を形成する。STI領域70は、p
-型半導体基板50に溝を形成し、この溝に絶縁膜を埋め込むことによって形成することができる。
【0067】
次に、
図12に示すように、p
-型半導体基板50のトランジスタ形成領域RAにn
-型ディープウェル80を形成するとともに、p
-型半導体基板50の圧力センサ形成領域RBにn
-型半導体領域60を形成する。n
-型ディープウェル80およびn
-型半導体領域60は、例えば、以下に示す工程を経ることによって形成することができる。すなわち、p
-型半導体基板50上にレジスト膜を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を使用することによってレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、例えば、リン(P)や砒素(As)などのn型不純物(ドナー)をイオン注入法でp
-型半導体基板50に注入する。これにより、n
-型ディープウェル80およびn
-型半導体領域60を形成することができる。ここで、例えば、n
-型ディープウェル80の不純物濃度とn
-型半導体領域60の不純物濃度を同等とする場合、n
-型ディープウェル80とn
-型半導体領域60とは、同一工程で形成することができる。一方、n
-型ディープウェル80の不純物濃度とn
-型半導体領域60の不純物濃度とを相違させる場合、n
-型ディープウェル80とn
-型半導体領域60とは、別工程で形成することになる。
【0068】
続いて、
図13に示すように、トランジスタ形成領域RAのうち、pチャネル型電界効果トランジスタ形成領域のp
-型半導体基板50内にn
-型ウェル71を形成する。n
-型ウェル71もフォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより形成することができる。その後、
図14に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n
-型ディープウェル80内にp
-型ウェル81を形成するとともに、n
-型半導体領域60内にp型半導体領域であるピエゾ抵抗領域11を形成する。
【0069】
具体的には、p-型半導体基板50上にレジスト膜を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を使用することによってレジスト膜をパターニングする。そして、パターニングしたレジスト膜をマスクにして、例えば、ホウ素(B)などのp型不純物(アクセプタ)をイオン注入法でp-型半導体基板50に注入する。これにより、p-型ウェル81およびピエゾ抵抗領域11を形成することができる。この結果、圧力センサ形成領域RBにおいては、p-型半導体基板50と、n-型半導体領域60と、ピエゾ抵抗領域11とを有する圧力センサ200Aが形成されることになる。
【0070】
ここで、p-型ウェル81の不純物濃度とピエゾ抵抗領域11の不純物濃度を同等とする場合、p-型ウェル81とピエゾ抵抗領域11とは、同一工程で形成できる。一方、p-型ウェル81の不純物濃度とピエゾ抵抗領域11の不純物濃度とを相違させる場合、p-型ウェル81とピエゾ抵抗領域11とは、別工程で形成することになる。
【0071】
次に、p
-型半導体基板50上に、例えば、酸化シリコン膜を形成した後、酸化シリコン膜上にポリシリコン膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、ポリシリコン膜および酸化シリコン膜をパターニングする。これにより、
図15に示すように、n
-型ウェル71上にゲート絶縁膜(酸化シリコン膜)74を形成し、ゲート絶縁膜74上にゲート電極(ポリシリコン膜)75を形成することができる。また、p
-型ウェル81上にゲート絶縁膜(酸化シリコン膜)84を形成し、ゲート絶縁膜84上にゲート電極(ポリシリコン膜)85を形成することができる。
【0072】
続いて、
図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n
-型ウェル71内にp
+型半導体領域からなるソース領域72およびドレイン領域73と、n
+型半導体領域からなるコンタクト領域76を形成する。また、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、p
-型ウェル81内にn
+型半導体領域からなるソース領域82およびドレイン領域83と、p
+型半導体領域からなるコンタクト領域86を形成する。さらに、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、n
-型ディープウェル80内にn
+型半導体領域からなるコンタクト領域87を形成し、p
-型半導体基板50内にp
+型半導体領域からなるコンタクト領域88を形成する。このようにして、トランジスタ形成領域RAにおいては、nチャネル型電界効果トランジスタQnと、pチャネル型電界効果トランジスタQpを形成できる。
【0073】
その後、
図10に示すように、トランジスタ形成領域RAと圧力センサ形成領域RBにわたって、例えば、酸化シリコン膜を有する層間絶縁膜90を形成した後、層間絶縁膜90を貫通する複数のプラグ91を形成する。そして、複数のプラグ91を形成した層間絶縁膜90上に複数の配線92を形成する。さらに、上層に複数の配線を形成する工程が存在するが、同様の工程であるため、ここでの説明は省略する。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置300Aを製造することができる。
【0074】
<半導体装置の特徴>
次に、本実施の形態1における半導体装置300Aの特徴点について説明する。
【0075】
半導体装置300Aにおける第1特徴点は、例えば、
図10に示すように、圧力センサ200Aの製造コストを抑制しながら、圧力センサ200Aでのリーク電流を低減するために、電界効果トランジスタが形成される「トリプルウェル構造」を圧力センサ200Aの構成に利用している点である。すなわち、半導体装置300Aにおける第1特徴点は、電界効果トランジスタと圧力センサ200Aを混載することを前提構成として、圧力センサ200Aの構成に「トリプルウェル構造」を利用する点にある。つまり、本実施の形態1における半導体装置300Aでは、
図10に示すように、トランジスタ形成領域RAにおいて、p
-型半導体基板50と、n
-型ディープウェル80と、p
-型ウェル81とからなる「トリプルウェル構造」が採用されており、この「トリプルウェル構造」に対応して、圧力センサ形成領域RBにおいて、p
-型半導体基板50と、n
-型ディープウェル80に対応するn
-型半導体領域60と、p
-型ウェル81に対応するピエゾ抵抗領域11とからなる圧力センサ200Aが形成されている。
【0076】
これにより、本実施の形態1によれば、
図5に示す圧力センサ200Aを電界効果トランジスタの製造工程を利用して製造することができる(
図11~
図16参照)。つまり、本実施の形態1によれば、電界効果トランジスタの製造工程をそのまま利用して圧力センサ200Aも混載することができることから、圧力センサ200Aの製造コストを削減できる。さらに、
図5に示す圧力センサ200Aによれば、リーク電流を低減できることを考慮すると、半導体装置300Aによって、製造コストを抑制しながら、リーク電流を低減した優れた性能を有する圧力センサ200Aを製造できることがわかる。
【0077】
続いて、半導体装置300Aにおける第2特徴点は、例えば、
図10に示すように、ピエゾ抵抗領域11が、トランジスタ形成領域RAに形成されている「トリプルウェル構造」のp
-型ウェル81に対応して形成されている点にある。そして、ピエゾ抵抗領域11がp
-型ウェル81に対応して形成されているということは、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度がp
-型ウェル81の不純物濃度と同等であることを意味するものである。
【0078】
したがって、p-型ウェル81の不純物濃度が低いことを考慮すると、本実施の形態1においては、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度は低いと考えることができる。この場合、圧力センサ200Aのサイズを小型化することができる。
【0079】
以下に、この理由について説明する。
【0080】
圧力センサ200Aでは、ピエゾ抵抗領域11の電気抵抗値の変化によって、外部からの圧力を検出するように構成されている。このとき、ピエゾ抵抗領域11の電気抵抗値の大きさ自体が高いほど電気抵抗値の変化も大きくなって、圧力の検出感度が高くなる。したがって、圧力センサ200Aの検出感度を向上する観点からは、ピエゾ抵抗領域11の電気抵抗値は高い方が望ましい。
【0081】
この点に関し、例えば、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度がソース領域72やドレイン領域73と同等の不純物濃度を有しているとすると、単位長さ当たりの抵抗値が低くなることから、抵抗値を高くするためには、ピエゾ抵抗領域11の長さを長くする必要があり、例えば、ピエゾ抵抗領域11の平面形状をメアンダ形状(蛇行形状)とする必要がある。このことは、圧力センサ自体のサイズが大きくなることを意味する。
【0082】
これに対し、本実施の形態1では、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度がp-型ウェル81の不純物濃度と同程度に低くなっている。このため、ピエゾ抵抗領域11の不純物濃度がソース領域72やドレイン領域73と同等の不純物濃度を有している場合よりも、単位長さ当たりの抵抗値が高くなる。このことは、抵抗値を高くするために、ピエゾ抵抗領域11の長さを長くする必要がなくなることを意味し、例えば、ピエゾ抵抗領域11の平面形状をメアンダ形状(蛇行形状)とする必要がなくなることを意味する。
【0083】
したがって、本実施の形態1によれば、検出感度を維持しながらも、圧力センサ200A自体のサイズを小さくすることができる。以上のことから、本実施の形態1における技術的思想は、上述した第1特徴点と第2特徴点の組み合わせによって、製造コストを抑制しながら、リーク電流を低減した優れた性能を有する小型の圧力センサ200Aを提供できる点で非常に大きな技術的意義を有しているということができる。
【0084】
さらに、本実施の形態1における圧力センサ200Aによれば、電界効果トランジスタとの混載が容易となることから、例えば、圧力センサ200Aと混載されている電界効果トランジスタを圧力センサ200Aの制御回路の構成要素として使用することができる。この結果、本実施の形態1によれば、圧力センサ200Aと制御回路とを含む圧力センサシステムの高集積化が可能となり、この観点からも、半導体装置300Aは有用である。
【0085】
なお、本実施の形態における半導体装置300Aは、被測定体に貼り付け可能に構成されていてもよいし、圧力センサ形成領域RBにおけるp-型半導体基板50の裏面に溝部(ダイヤフラム部)が形成されていてもよい。
【0086】
<変形例>
図17は、変形例における半導体装置300Aを示す図である。
【0087】
図17において、変形例では、圧力センサ形成領域RBに形成されている圧力センサ200Aにおいて、ピエゾ抵抗領域11に内包されるコンタクト領域95およびコンタクト領域96が形成されている。このコンタクト領域95およびコンタクト領域96は、p
+型半導体領域から構成されている。これにより、ピエゾ抵抗領域11での高抵抗を確保しながら、プラグ91とコンタクト領域95の接触抵抗を低減することができるとともに、プラグ91とコンタクト領域96の接触抵抗を低減することができる。すなわち、本変形例によれば、ピエゾ抵抗領域11内にコンタクト領域95およびコンタクト領域96を設けることによって、プラグ91とコンタクト領域95とのオーミック接触を確保することができるとともに、プラグ91とコンタクト領域96とのオーミック接触を確保できる。
【0088】
(実施の形態2)
<圧力センサの構成>
図18は、本実施の形態2における圧力センサ200Bの構成を示す図である。
【0089】
図18において、圧力センサ200Bは、p
-型半導体基板50を有し、p
-型半導体基板50には、n
-型半導体領域60Aが形成されている。そして、n
-型半導体領域60Aの内部には、p
-型半導体領域60Bが形成されており、このp
-型半導体領域60Bの内部にn
+型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11Aが形成されている。すなわち、n
-型半導体領域60Aに内包されるようにp
-型半導体領域60Bが形成されており、このp
-型半導体領域60Bに内包されるようにn
+型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11Aが形成されている。そして、このピエゾ抵抗領域11Aは、一対の電極20Aおよび電極20Bと電気的に接続されている。
【0090】
このとき、ピエゾ抵抗領域11Aが抵抗R1として機能する。また、p
-型半導体領域60Bとピエゾ抵抗領域11Aとの境界領域にpn接合が形成される結果、p
-型半導体領域60Bとピエゾ抵抗領域11Aとによってpn接合ダイオードD1が形成される。また、p
-型半導体領域60Bとn
-型半導体領域60Aとの境界領域にもpn接合が形成される結果、p
-型半導体領域60Bとn
-型半導体領域60Aとによってpn接合ダイオードD2が形成される。さらに、n
-型半導体領域60Aとp
-型半導体基板50との境界領域にもpn接合が形成される結果、n
-型半導体領域60Aとp
-型半導体基板50とによってpn接合ダイオードD3が形成される。これにより、圧力センサ200Aの等価回路図は、
図19に示すようになる。
【0091】
ここで、p-型半導体領域60Bは、ピエゾ抵抗領域11Aとn-型半導体領域60Aとを電気的に分離する機能を有し、p-型半導体領域60Bによる電気的な素子分離を実現するために、pn接合ダイオードD1およびpn接合ダイオードD2に逆バイアスを印加する。すなわち、ピエゾ抵抗領域11Aとp-型半導体領域60Bとの間に逆バイアスが印加されるとともにp-型半導体領域60Bとn-型半導体領域60Aとの間に逆バイアスが印加される。
【0092】
同様に、n-型半導体領域60Aは、p-型半導体領域60Bとp-型半導体基板50とを電気的に分離する機能を有し、n-型半導体領域60Aによる電気的な素子分離を実現するために、pn接合ダイオードD2およびpn接合ダイオードD3に逆バイアスを印加する。すなわち、p-型半導体領域60Bとn-型半導体領域60Aとの間に逆バイアスが印加されるとともにn-型半導体領域60Aとp-型半導体基板50との間に逆バイアスが印加される。
【0093】
<実施の形態2における特徴>
次に、本実施の形態2における特徴点について説明する。
【0094】
本実施の形態2における特徴点は、例えば、
図18に示すように、p
-型半導体基板50とピエゾ抵抗領域11Aとの間にn
-型半導体領域60Aとp
-型半導体領域60Bが介在しており、ピエゾ抵抗領域11Aとp
-型半導体領域60Bとの間、p
-型半導体領域60Bとn
-型半導体領域60Aとの間、およびn
-型半導体領域60Aとp
-型半導体基板50との間に逆バイアスを印加する点にある。
【0095】
これにより、p-型半導体領域60Bおよびn-型半導体領域60Aが、ピエゾ抵抗領域11Aとp-型半導体基板50とを電気的に分離する素子分離領域として機能する結果、ピエゾ抵抗領域11Aとp-型半導体基板50との間を流れるリーク電流を低減することができる。すなわち、本実施の形態2では、「pnpn構造」が実現される結果、ピエゾ抵抗領域11Aとp-型半導体基板50との間を流れるリーク電流を低減できる。したがって、本実施の形態2における圧力センサ200Bによれば、高温動作が可能となる。
【0096】
<<シミュレーション結果>>
続いて、本実施の形態2における圧力センサ200Bによれば、リーク電流を低減できることを検証したシミュレーション結果について説明する。
【0097】
図20は、圧力センサ200Bの温度特性を評価した結果を示す図である。特に、
図20(a)は、電子電流に起因するリーク電流密度の発生状況を示すシミュレーション結果であり、700℃におけるシミュレーション結果を示している。ここで、グレー領域がp
-型半導体基板50にまで達するリーク電流密度を示している。
【0098】
図20(a)を見ると、p
-型半導体基板50までリーク電流が流れていないことがわかる。したがって、圧力センサ200Bによれば、少なくとも700℃までは電子電流に起因するリーク電流の発生を抑制できることがわかる。
【0099】
次に、
図20(b)は、正孔電流に起因するリーク電流の発生状況を示すシミュレーション結果であり、700℃におけるシミュレーション結果を示している。ここで、グレー領域がp
-型半導体基板50にまで達するリーク電流密度を示している。
【0100】
図20(b)を見ると、p
-型半導体基板50までわずかにリーク電流が流れているが、ほとんど問題ないレベルである。したがって、圧力センサ200Bによれば、少なくとも700℃までは正孔電流に起因するリーク電流の発生を抑制できることがわかる。
【0101】
以上のことから、電子電流のシミュレーション結果と正孔電流のシミュレーション結果とを合わせると、少なくとも700℃程度までリーク電流を低減できることがわかる。すなわち、本実施の形態2における圧力センサ200Bの構造によれば、700℃程度の高温動作が可能であることが裏付けられている。したがって、第1関連技術における圧力センサ100Aの動作可能温度は125℃程度が限界であるのに対し、本実施の形態2における圧力センサ200Bの動作可能温度は700℃程度である点で、圧力センサ200Bの構造は、非常に有用な構造であることがわかる。
【0102】
<半導体装置の構成>
図21は、半導体装置300Bの模式的な構成を示す図である。
【0103】
図21において、半導体装置300Bは、トランジスタ形成領域RAと圧力センサ形成領域RBとを有している。トランジスタ形成領域RAには、例えば、「トリプルウェル構造」などのように前記実施の形態1と同様の構造が形成されている。具体的には、n
-型ウェル71上にpチャネル型電界効果トランジスタQpが形成されている一方、「トリプルウェル構造」上にnチャネル型電界効果トランジスタQnが形成されている。
【0104】
一方、圧力センサ形成領域RBには、圧力センサ200Bが形成されている。この圧力センサ200Bは、p-型半導体基板50と、n-型ディープウェル80に対応するn-型半導体領域60Aと、p-型ウェル81に対応するp-型半導体領域60Bと、ソース領域82およびドレイン領域83に対応するn+型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11Aを有している。つまり、圧力センサ200Bは、トランジスタ形成領域RAに形成されている「トリプルウェル構造」に対応して形成されている。
【0105】
このとき、例えば、ピエゾ抵抗領域11Aの不純物濃度は、ソース領域82およびドレイン領域83のそれぞれの不純物濃度と同等である。一方、p-型半導体領域60Bの不純物濃度は、p-型ウェル81の不純物濃度と同等である。また、n-型半導体領域60Aの不純物濃度は、例えば、n-型ディープウェル80の不純物濃度と同等である。
【0106】
このように構成されているトランジスタ形成領域RAおよび圧力センサ形成領域RBには、例えば、酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜90が形成されており、この層間絶縁膜90に複数のプラグ91が形成されている。そして、層間絶縁膜90上には、複数のプラグ91と電気的に接続される複数の配線92が形成されている。
【0107】
<半導体装置の製造方法>
本実施の形態2における半導体装置300Bの製造方法は、
図11~
図16に示す工程において、前記実施の形態1における半導体装置300Aの製造方法とほぼ同様である。相違点としては、本実施の形態2では、
図16に示す工程において、トランジスタ形成領域RAのp
-型ウェル81内にソース領域82およびドレイン領域83を形成するとともに、圧力センサ形成領域RBのp
-型半導体領域60B内にn
+型半導体領域からなるピエゾ抵抗領域11Aを形成する点を挙げることができる。
【0108】
ここで、ソース領域82およびドレイン領域83の不純物濃度とピエゾ抵抗領域11Aの不純物濃度を同等とする場合、ソース領域82およびドレイン領域83とピエゾ抵抗領域11Aとは、同一工程で形成できる。一方、ソース領域82およびドレイン領域83の不純物濃度とピエゾ抵抗領域11Aの不純物濃度とを相違させる場合、ソース領域82およびドレイン領域83とピエゾ抵抗領域11Aとは、別工程で形成することになる。
【0109】
<半導体装置の特徴>
次に、本実施の形態2における半導体装置300Bの特徴点について説明する。
【0110】
半導体装置300Bにおける特徴点は、例えば、
図21に示すように、圧力センサ200Bの製造コストを抑制しながら、圧力センサ200Bでのリーク電流を低減するために、電界効果トランジスタが形成される「トリプルウェル構造」を圧力センサ200Bの構成に利用している点である。すなわち、半導体装置300Bにおける特徴点は、電界効果トランジスタと圧力センサ200Bを混載することを前提構成として、圧力センサ200Bの構成に「トリプルウェル構造」を利用する点にある。つまり、本実施の形態2における半導体装置300Bでは、
図21に示すように、トランジスタ形成領域RAにおいて、p
-型半導体基板50と、n
-型ディープウェル80と、p
-型ウェル81とからなる「トリプルウェル構造」が採用されている。そして、この「トリプルウェル構造」に対応して、圧力センサ形成領域RBにおいて、p
-型半導体基板50と、n
-型ディープウェル80に対応するn
-型半導体領域60Aと、p
-型ウェル81に対応するp-型半導体領域60Bと、ソース領域82およびドレイン領域83に対応するピエゾ抵抗領域11Aとからなる圧力センサ200Bが形成されている。
【0111】
これにより、本実施の形態2によれば、圧力センサ200Bを電界効果トランジスタの製造工程を利用して製造することができる(
図11~
図15および
図21参照)。つまり、本実施の形態2によれば、電界効果トランジスタの製造工程をそのまま利用して圧力センサ200Bも混載することができることから、圧力センサ200Bの製造コストを削減できる。さらに、圧力センサ200Bによれば、700℃程度までリーク電流を低減できることを考慮すると、半導体装置300Bによって、製造コストを抑制しながら、リーク電流を低減した優れた性能を有する圧力センサ200Bを製造できることがわかる。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0113】
前記実施の形態では、「第1導電型」をp型とし、「第2導電型」をn型とする例を挙げて説明したが、前記実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、「第1導電型」をn型とし、「第2導電型」をp型とする例にも適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1S SOI基板
10 n-型半導体基板
10A 支持基板
11 ピエゾ抵抗領域
11A ピエゾ抵抗領域
20A 電極
20B 電極
30 絶縁層
40 シリコン層
50 p-型半導体基板
60 n-型半導体領域
60A n-型半導体領域
60B p-型半導体領域
70 STI領域
71 n-型ウェル
72 ソース領域
73 ドレイン領域
74 ゲート絶縁膜
75 ゲート電極
76 コンタクト領域
80 n-型ディープウェル
81 p-型ウェル
82 ソース領域
83 ドレイン領域
84 ゲート絶縁膜
85 ゲート電極
86 コンタクト領域
87 コンタクト領域
88 コンタクト領域
90 層間絶縁膜
91 プラグ
92 配線
95 コンタクト領域
96 コンタクト領域
100A 圧力センサ
100B 圧力センサ
200A 圧力センサ
200B 圧力センサ
300A 半導体装置
300B 半導体装置
D1 pn接合ダイオード
D2 pn接合ダイオード
D3 pn接合ダイオード
Ec1 伝導帯
Ec2 伝導帯
Ec3 伝導帯
Ev1 価電子帯
Ev2 価電子帯
Ev3 価電子帯
Qn nチャネル型電界効果トランジスタ
Qp pチャネル型電界効果トランジスタ
R1 抵抗