(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111667
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】作業車両及び作業車両を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/438 20100101AFI20230803BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F16H61/438
E02F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013626
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 晃弘
【テーマコード(参考)】
2D003
3J053
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AC01
2D003CA03
2D003DA03
2D003DB03
3J053AA01
3J053AB01
3J053AB16
3J053DA06
3J053DA23
(57)【要約】
【課題】シャトル変速操作時にオペレータの直感に合う減速度を調節すること。
【解決手段】作業車両は、動力源と、動力源によって駆動される油圧ポンプと、供給される作動油の圧力に応じて油圧ポンプの容量を制御し、供給される作動油の供給方向に応じて油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるポンプ容量制御シリンダと、ポンプ容量制御シリンダへの作動油の供給方向を切り換える前後進切換弁5と、作業車両の車速を検出する車速センサと、動力源を制御するためにオペレータによって操作される第1の操作装置と、作業車両の前後進を切り換えるためにオペレータによって操作される第2の操作装置と、コントローラとを備える。コントローラ8は、車速センサが検出した車速と第2の操作装置からの指令信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定する。コントローラは、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、操作装置の操作量と車速とに基づいて、前後進切換弁を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両であって、
動力源と、
前記動力源によって駆動される油圧ポンプと、
供給される作動油の圧力に応じて前記油圧ポンプの容量を制御し、供給される作動油の供給方向に応じて前記油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるポンプ容量制御シリンダと、
前記ポンプ容量制御シリンダへの作動油の供給方向を切り換える前後進切換弁と、
前記作業車両の車速を検出する車速センサと、
前記動力源を制御するために操作される第1の操作装置と、
前記作業車両の前後進を切り換えるために操作される第2の操作装置と、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記車速センサが検出した車速と前記第2の操作装置からの指令信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定し、
前記シャトル変速操作が行われたと判定した場合、前記第1の操作装置の操作量に基づいて、前記前後進切換弁を制御する
作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、車速に基づいて、前記前後進切換弁を制御する
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ポンプ容量制御シリンダに供給される作動油を制御する圧力制御弁を備え、
前記コントローラは、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、前記第1の操作装置の操作量に基づいて、前記圧力制御弁を制御する
請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
動力源と、
前記動力源によって駆動される油圧ポンプと、
供給される作動油の圧力に応じて前記油圧ポンプの容量を制御し、供給される作動油の供給方向に応じて前記油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるポンプ容量制御シリンダと、
前記ポンプ容量制御シリンダへの作動油の供給方向を切り換える前後進切換弁と、
を有する作業車両を制御するための方法であって、
前記作業車両の車速を検出することと、
前記作業車両の前後進を切り換えるために操作される第2の操作装置からの指令信号を受信することと、
前記作業車両の車速と前記第2の操作装置からの指令信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定することと、
シャトル変速操作が行われたと判定した場合、前記動力源を制御するためにオペレータによって操作される第1の操作装置の操作量に基づいて、前記前後進切換弁を制御することと
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両及び作業車両を制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HST(Hydraulic Static Transmission)を搭載するホイールローダなどの作業車両が知られている。HST式の作業車両は、エンジンによって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出された作動油によって走行用の油圧モータを駆動する。これにより、作業車両が走行する。このようなHST式の作業車両では、エンジン回転速度、油圧ポンプの容量、走行用油圧モータの容量、作動油の吐出方向などを制御することによって、車速及び進行方向を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホイールローダなどの作業車両において、速やかに作業車両の進行方向を変更させるために、例えば、作業車両を完全に停止させずに進行方向を変更させる(シャトル変速)操作が知られている。従来の作業車両では、シャトル変速時、圧力制御弁と前後進切換制御弁の制御が、アクセル操作量によらず同じである。このため、車速が反転するまでの減速度と、オペレータが所望する減速度とが一致しない場合がある。
【0005】
本開示は、シャトル変速時にオペレータの操作に応じて減速度を調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る作業車両は、動力源と、動力源によって駆動される油圧ポンプと、供給される作動油の圧力に応じて油圧ポンプの容量を制御し、供給される作動油の供給方向に応じて油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるポンプ容量制御シリンダと、ポンプ容量制御シリンダへの作動油の供給方向を切り換える前後進切換弁と、作業車両の車速を検出する車速センサと、動力源を制御するために操作される第1の操作装置と、作業車両の前後進を切り換えるために操作される第2の操作装置と、コントローラと、を備える。コントローラは、車速センサが検出した車速と第2の操作装置からの指令信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定し、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、第1の操作装置の操作量に基づいて、前後進切換弁を制御する。
【0007】
本開示に係る作業車両を制御するための方法は、動力源と、動力源によって駆動される油圧ポンプと、供給される作動油の圧力に応じて油圧ポンプの容量を制御し、供給される作動油の供給方向に応じて油圧ポンプからの作動油の吐出方向を切り換えるポンプ容量制御シリンダと、ポンプ容量制御シリンダへの作動油の供給方向を切り換える前後進切換弁と、を有する作業車両を制御するための方法であって、作業車両の車速を検出することと、作業車両の前後進を切り換えるために操作される第2の操作装置からの指令信号を受信することと、作業車両の車速と第2の操作装置からの指令信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定することと、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、動力源を制御するためにオペレータによって操作される第1の操作装置の操作量に基づいて、前後進切換弁を制御することとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、シャトル変速時にオペレータの操作に応じて減速度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業車両に搭載された走行システムを示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る作業車両に搭載されたHSTコントローラを含む機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る作業車両に搭載されたHSTコントローラを示すブロック図である。
【
図5】
図5は、シャトル変速時の制御の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、シャトル変速時の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
<作業車両>
図1は、実施形態に係る作業車両50を示す側面図である。実施形態においては、作業車両50は、例えば、ホイールローダである。以下の説明において、作業車両50を適宜、ホイールローダ50と称する。ホイールローダ50は、車体51と、車体51に支持されるキャブ56と、ホイールローダ50を走行させるための車輪55と、車体51によって動作可能に支持され、所定の作業を実施するための作業機52とを備える。ホイールローダ50は、キャブ56内に表示部57を有する。
【0012】
ホイールローダ50は、コントローラ12などを含む走行システム30を有する。
【0013】
<走行システム>
図2は、実施形態に係るホイールローダ50に搭載された走行システム30を示す図である。走行システム30は、動力源1、チャージポンプ3、HSTポンプである走行用油圧ポンプ4、HSTモータである走行用油圧モータ10、コントローラ12、及び油圧回路20を有する。実施形態では、走行システム30は、一例として1ポンプ1モータのHSTシステムについて説明するが、ポンプ及びモータの数はこれに限定されない。油圧回路20は、第1回路20aと第2回路20bとを有する。走行システム30では、動力源1によって駆動された走行用油圧ポンプ4から作動油が吐出され、走行用油圧ポンプ4から吐出された作動油によって走行用油圧モータ10が駆動される。そして、走行用油圧モータ10が車輪55を回転駆動させることにより、ホイールローダ50が走行する。
【0014】
動力源1は、ホイールローダ50を駆動させるための動力を供給する。実施形態においては、動力源1は、例えば、エンジンである。以下の説明において、動力源1を適宜、エンジン1と称する。エンジン1は、例えば、チャージポンプ3や走行用油圧ポンプ4等に動力を出力する。エンジン1には、エンジン1の実回転速度を検出するエンジン回転速度センサ1aが設けられている。エンジン1には、燃料噴射装置1bが接続されている。エンジン1は、後述するエンジンコントローラによって制御される。
【0015】
走行用油圧ポンプ4は、エンジン1によって駆動されて作動油を吐出する。走行用油圧ポンプ4は、可変容量型の油圧ポンプである。走行用油圧ポンプ4から吐出された作動油は、油圧回路20を介して走行用油圧モータ10へ供給される。走行用油圧ポンプ4は、作動油の吐出方向を変更可能である。作動油が、走行用油圧ポンプ4から第1回路20aを介して走行用油圧モータ10に供給されることにより、走行用油圧モータ10が一方向、例えば前進方向に駆動される。作動油が、走行用油圧ポンプ4から第2回路20bを介して走行用油圧モータ10に供給されることにより、走行用油圧モータ10が他方向、例えば後進方向に駆動される。走行用油圧ポンプ4には、走行用油圧ポンプ4の吐出方向を制御するための前後進切換弁5とポンプ容量制御シリンダ6とが接続されている。
【0016】
油圧回路20には、圧力検出部17が設けられている。圧力検出部17は、第1回路20a又は第2回路20bの回路圧を検出する。圧力検出部17は、第1回路圧センサ17aと第2回路圧センサ17bとを有する。第1回路圧センサ17aは、第1回路20aの油圧を検出する。第2回路圧センサ17bは、第2回路20bの油圧を検出する。第1回路圧センサ17aと第2回路圧センサ17bは、検出信号をコントローラ12に出力する。
【0017】
前後進切換弁5は、コントローラ12からの指令信号に基づいてポンプ容量制御シリンダ6への作動油の供給方向を切り換える電磁制御弁である。前後進切換弁5は、車両の前進及び後進に対応する前進位置と後進位置とに切り換えられる。前後進切換弁5は、ポンプ容量制御シリンダ6への作動油の供給方向を切り換えることにより、走行用油圧ポンプ4の吐出方向を切り換える。前後進切換弁5は、走行用油圧ポンプ4の吐出方向を、第1回路20aへの吐出と第2回路20bへの吐出とに切り換える。
【0018】
ポンプ容量制御シリンダ6は、ポンプパイロット回路32を介して作動油を供給されることにより駆動され、走行用油圧ポンプ4の傾転角を変更する。ポンプ容量制御シリンダ6は、ポンプパイロット回路32を介してポンプ容量制御シリンダ6に供給される作動油の圧力であるポンプパイロット圧に応じて走行用油圧ポンプ4の容量を制御する。ポンプ容量制御シリンダ6は、前後進切換弁5から供給される作動油の供給方向に応じて走行用油圧ポンプ4からの作動油の吐出方向を切り換える。
【0019】
ポンプパイロット回路32には、圧力制御弁7が配置されている。圧力制御弁7は、ポンプ容量制御シリンダ6をポンプパイロット回路32と作動油タンクとのいずれかに接続する。圧力制御弁7は、コントローラ12からの指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。圧力制御弁7は、ポンプパイロット圧を制御することにより、走行用油圧ポンプ4の傾転角を調整する。コントローラ12による圧力制御弁7の制御については後述する。
【0020】
ポンプパイロット回路32は、カットオフ弁47を介してチャージ回路33と作動油タンクとに接続されている。カットオフ弁47のパイロットポートは、シャトル弁46を介して第1回路20aと第2回路20bとに接続されている。シャトル弁46は、第1回路20aの油圧と第2回路20bの油圧とのうち大きい方をカットオフ弁47のパイロットポートに導入する。これにより、カットオフ弁47のパイロットポートには駆動回路圧が印加される。
【0021】
チャージポンプ3は、エンジン1によって駆動され、油圧回路20へ作動油を供給するためのポンプである。チャージポンプ3は、チャージ回路33に接続されている。チャージポンプ3は、カットオフ弁47を介してポンプパイロット回路32に作動油を供給する。
【0022】
走行用油圧モータ10は、可変容量型の油圧モータである。走行用油圧モータ10は、走行用油圧ポンプ4から吐出された作動油によって駆動される。走行用油圧モータ10は、車輪55を回転させるための駆動力を生じさせる走行用のモータである。走行用油圧モータ10は、走行用油圧ポンプ4からの作動油の吐出方向に応じて前進方向と後進方向とに駆動方向が変更される。
【0023】
走行用油圧モータ10には、モータシリンダ11aと、モータ容量制御部11bとが設けられている。モータシリンダ11aは、走行用油圧モータ10の傾転角を変更する。モータ容量制御部11bは、コントローラ12からの指令信号に基づいて制御される電磁制御弁である。モータ容量制御部11bは、コントローラ12からの指令信号に基づいてモータシリンダ11aを制御する。
【0024】
モータシリンダ11aとモータ容量制御部11bとは、モータパイロット回路34に接続されている。モータパイロット回路34は、チェック弁48を介して第1回路20aに接続されている。チェック弁48は、第1回路20aからモータパイロット回路34への作動油の流れを許容し、モータパイロット回路34から第1回路20aへの作動油の流れを規制する。モータパイロット回路34は、チェック弁49を介して第2回路20bに接続されている。チェック弁49は、第2回路20bからモータパイロット回路34への作動油の流れを許容し、モータパイロット回路34から第2回路20bへの作動油の流れを規制する。チェック弁48及びチェック弁49により、第1回路20aと第2回路20bとのうち大きい方の油圧、すなわち駆動回路圧の作動油が、モータパイロット回路34に供給される。
【0025】
モータ容量制御部11bは、コントローラ12からの指令信号に基づいて、モータパイロット回路34からモータシリンダ11aへの作動油の供給方向及び供給流量を切り換える。これにより、コントローラ12は、走行用油圧モータ10の容量を任意に変えることができる。また、走行用油圧モータ10の最大容量や最小容量を任意に設定することができる。
【0026】
走行システム30には、車速センサ16が設けられている。車速センサ16は、車速を検出する。車速センサ16は、車速信号をコントローラ12へ出力する。車速センサ16は、例えば、タイヤ駆動軸の回転速度を検出することにより、車速を検出する。
【0027】
ホイールローダ50は、アクセル操作装置(第1の操作装置)13と、前後進操作装置(第2の操作装置)14とを備えている。
【0028】
アクセル操作装置13は、動力源1を制御するためにオペレータによって操作される。実施形態では、アクセル操作装置13は、オペレータが目標エンジン回転速度を設定するための装置である。アクセル操作装置13は、例えばアクセルペダルである。アクセル操作装置13は、アクセル操作量センサ13aを含む。アクセル操作量センサ13aは、例えば、ポテンショメータなどで構成されている。アクセル操作量センサ13aは、アクセル操作装置13の操作量を示す操作信号をコントローラ12へ出力する。オペレータは、アクセル操作装置13の操作量を調整することによって、エンジン1の回転速度を制御する。
【0029】
前後進操作装置14は、車両の進行方向を切り換えるためにオペレータによって操作される。前後進操作装置14は、オペレータがホイールローダ50の進行方向を選択するための装置である。オペレータが前後進操作装置14を操作することによって、前後進操作装置14は、ホイールローダ50の進行方向を切り換える指令信号をコントローラ12へ出力する。実施形態では、前後進操作装置14の操作位置は、前進位置と後進位置とニュートラル位置とに切り換えられる。前後進操作装置14は、前後進操作装置14の操作位置を示す位置信号をコントローラ12へ出力する。
【0030】
<制御システム>
コントローラ12は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置や各種のメモリなどを有する電子制御部である。コントローラ12は、アクセル操作量センサ13aと、前後進操作装置14と、車速センサ16と、表示部57と、圧力制御弁7と、前後進切換弁5とのそれぞれと電気的に接続される。コントローラ12は、アクセル操作量センサ13aからの操作信号、前後進操作装置14からの位置信号、及び車速センサ16からの車速信号を受信する。
【0031】
コントローラ12は、設定された目標エンジン回転速度に応じて燃料噴射装置1bを制御することにより、エンジン1の出力トルクと出力回転速度とを制御する。
【0032】
図3は、実施形態に係るホイールローダ50に搭載されたコントローラ12を含む機能ブロック図である。
図4は、実施形態に係るホイールローダ50に搭載されたコントローラ12を示すブロック図である。コントローラ12は、コンピュータシステムを含む。コントローラ12は、ホイールローダ50を制御する指令信号を出力する。
【0033】
コントローラ12は、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、アクセル操作装置13の操作量と車速とに基づいて、前後進切換弁5の切り換えタイミングを制御する。より詳しくは、コントローラ12は、パラメータ設定情報、前後進操作装置14からの位置信号、車速センサ16から車速信号、アクセル操作量センサ13aからの操作信号などに基づいて、圧力制御弁7を制御するとともに、前後進切換弁5を制御する。
【0034】
実施形態では、コントローラ12は、シャトル変速操作が行われたと判定した場合、アクセル操作装置13の操作量に基づいて、圧力制御弁7を制御するための指令信号を生成する。
【0035】
図4に示すように、コントローラ12は、プロセッサ1201と、メインメモリ1202と、ストレージ1203と、インタフェース1204とを有する。プロセッサ1201は、コンピュータプログラムを実行することによって、走行システム30の動作を演算処理する。プロセッサ1201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)である。メインメモリ1202は、例えば、不揮発性メモリ又は揮発性メモリである。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)が例示される。揮発性メモリとして、RAM(Random Access Memory)である。ストレージ1203は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ1203は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、及び半導体メモリ等である。ストレージ1203は、コントローラ12のバスに直接接続された内部メディアでもよいし、インタフェース1204又は通信回線を介してコントローラ12に接続される外部メディアでもよい。ストレージ1203は、走行システム30を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。なお、コントローラ12は、一体に限らず、複数のコントローラに分かれていてもよい。
【0036】
図3に示すように、コントローラ12は、記憶部121と、ニュートラル判定部122と、シャトル変速判定部123と、シャトル変速制御決定部124と、パラメータ決定部125と、圧力制御弁指令生成部128と、前後進切換弁指令生成部129とを有する。
【0037】
記憶部121は、パラメータ設定情報を記憶する。
【0038】
ニュートラル判定部122は、前後進操作装置14の操作がニュートラル操作であるか否かを判定する。ニュートラル判定部122は、例えば、前後進操作装置14からの位置信号が、所定時間以上、継続してニュートラル位置であることを示す場合、ニュートラル操作であると判定する。
【0039】
シャトル変速判定部123は、シャトル変速操作が行われたか否かを判定する。シャトル変速判定部123は、前後進操作装置14からの位置信号と、車速センサ16からの車速信号とに基づいて、シャトル変速操作が行われたか否かを判定する。より詳しくは、シャトル変速判定部123は、ホイールローダ50が前進している時に、前後進操作装置14が前進位置から後進位置に切り換えられたことを検出した場合、前進から後進へのシャトル変速操作が行われたと判定する。シャトル変速判定部123は、ホイールローダ50が後進している時に、前後進操作装置14が後進位置から前進位置に切り換えられたことを検出した場合、後進から前進へのシャトル変速操作が行われたと判定する。
【0040】
シャトル変速制御決定部124は、アクセル操作量センサ13aからの操作信号と、車速センサ16からの車速信号と、シャトル変速判定部123の判定結果と、圧力制御弁指令生成部128からの指令信号とに基づいて、シャトル変速制御を開始するための指令信号(シャトル変速指令)を出力する。シャトル変速制御決定部124は、例えば、シャトル変速判定部123が前進から後進へのシャトル変速操作が行われたと判定した場合、前進位置から後進位置へのシャトル変速制御を開始するためにシャトル変速指令を出力する。シャトル変速制御決定部124は、例えば、シャトル変速判定部123が後進から前進へのシャトル変速操作が行われたと判定した場合、後進位置から前進位置へのシャトル変速制御を開始するためにシャトル変速指令を出力する。
【0041】
パラメータ決定部125は、圧力制御弁7を制御する指令信号を生成するためのパラメータを決定する。パラメータ決定部125は、アクセル操作量センサ13aからの操作信号と、記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて、圧力制御弁7を制御する指令信号を生成するためのパラメータを決定する。パラメータ設定情報は、あらかじめ記憶部121に記憶されていてもよいし、例えば、キャブ56内の表示部57を介して、オペレータによって設定されてもよい。または、パラメータ設定情報は、例えば、通信回線を介して接続される外部メディア、又は、USBメモリ等を介して入力されてもよい。
【0042】
圧力制御弁指令生成部128は、圧力制御弁7を制御するための指令信号(圧力制御弁指令)を生成する。圧力制御弁指令生成部128は、シャトル変速制御決定部124からのシャトル変速指令と、パラメータ決定部125が決定したパラメータとに基づいて、圧力制御弁指令を生成する。圧力制御弁指令生成部128は、生成した圧力制御弁指令を圧力制御弁7へ出力する。
【0043】
前後進切換弁指令生成部129は、前後進切換弁5を制御するための指令信号(前後進切換弁指令)を生成する。前後進切換弁指令生成部129は、記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報と、ニュートラル判定部122の判定結果と、シャトル変速判定部123の判定結果と、シャトル変速制御決定部124からのシャトル変速指令と、圧力制御弁指令生成部128が生成した圧力制御弁指令とに基づいて、前後進切換弁指令を生成する。前後進切換弁指令生成部129は、生成した前後進切換弁指令を前後進切換弁5へ出力する。
【0044】
図5は、所定の車速で後進から前進へのシャトル変速操作が行われた時の制御の一例を示すタイムチャートである。
図5のタイムチャートは、異なる3パターンが示されている。記憶部121のパラメータ設定情報には、例えば、
図5(b)に示すような波形を生成するためのカットオフ周波数が記憶されている。
【0045】
図5(a)は、シャトル変速制御決定部124から出力されたシャトル変速指令の一例である。
図5(a)に示すシャトル変速指令は、アクセル操作装置13の操作量によって変化する。破線で示すシャトル変速指令1は、例えば、アクセル操作装置13の操作量が100%の場合の指令信号である。一点鎖線で示すシャトル変速指令2は、例えば、アクセル操作装置13の操作量が50%の場合の指令信号である。実線で示すシャトル変速指令3は、例えば、アクセル操作装置13の操作量が0%の場合の指令信号である。
図5(a)に示す例では、アクセル操作装置13の操作量によって、シャトル変速指令がONからOFFになる時間である指令時間が変化する。
【0046】
図5(b)は、圧力制御弁指令生成部128が生成した圧力制御弁指令の一例である。
図5(b)に示す圧力制御弁指令は、シャトル変速制御決定部124からのシャトル変速指令と、パラメータ決定部125が決定したパラメータとによって変化する。圧力制御弁指令は、アクセル操作装置13の操作量と記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて生成される。すなわち、圧力制御弁指令は、アクセル操作装置13の操作量に基づいて変化する。破線で示す圧力制御弁指令1は、シャトル変速指令1に対応する指令信号である。一点鎖線で示す圧力制御弁指令2は、シャトル変速指令2に対応する指令信号である。実線で示す圧力制御弁指令3は、シャトル変速指令3に対応する指令信号である。
図5(b)に示す例では、シャトル変速指令がONとなった時、指令電流値が徐々に減少する圧力制御弁指令が生成される。
図5(b)に示す例では、シャトル変速指令がOFFとなった時、指令電流値が徐々に増加する圧力制御弁指令が生成される。
【0047】
図5(c)は、前後進切換弁指令生成部129が生成した前後進切換弁指令の一例である。
図5(c)に示す前後進切換弁指令は、シャトル変速制御決定部124からのシャトル変速指令、または、圧力制御弁指令生成部128が生成した圧力制御弁指令によって変化する。すなわち、
図5(c)に示す前後進切換弁指令は、アクセル操作装置13の操作量によって変化する。破線で示す前後進切換弁指令1は、圧力制御弁指令1に対応する指令信号である。一点鎖線で示す前後進切換弁指令2は、圧力制御弁指令2に対応する指令信号である。実線で示す前後進切換弁指令3は、圧力制御弁指令3に対応する指令信号である。
図5(c)に示す例では、前後進切換弁指令は、
図5(b)に示す圧力制御弁指令が閾値X以下となった場合に、前後進切換弁5を切り換える。前後進切換弁指令は、シャトル変速指令がOFFとなった時に、前後進切換弁5を切り換えるような指令であってもよい。
【0048】
図5(d)は、
図5(b)及び
図5(c)に対応するポンプ容量の一例である。
図5(e)は、
図5(d)に対応する車速の一例である。
【0049】
このように
図5から、圧力制御弁指令、前後進切換弁指令、ポンプ容量、及び車速は、アクセル操作装置13の操作量によって変化することがわかる。これにより、シャトル変速操作時は、オペレータは、アクセル操作装置13を操作することによって減速度を調整する。
【0050】
<制御方法>
図6は、シャトル変速操作時の制御方法の一例を示すフローチャートである。コントローラ12は、車速を取得する(ステップST11)。より詳しくは、コントローラ12は、車速センサ16から入力される車速信号を受信する。
【0051】
コントローラ12は、前後進操作装置14からの指令信号を取得する(ステップST12)。より詳しくは、コントローラ12は、前後進操作装置14の操作位置を示す位置信号を取得する。
【0052】
コントローラ12は、シャトル変速操作であるか否かを判定する(ステップST13)。より詳しくは、コントローラ12は、シャトル変速判定部123によって、前進から後進へのシャトル変速操作又は後進から前進へのシャトル変速操作であるか否かを判定する。前進から後進へのシャトル変速又は後進から前進へのシャトル変速である場合、シャトル変速操作であると判定する。コントローラ12は、シャトル変速操作であると判定した場合(ステップST13でYes)、ステップST14へ進む。コントローラ12は、シャトル変速操作ではないと判定した場合(ステップST13でNo)、処理を終了する。
【0053】
シャトル変速操作であると判定した場合(ステップST13でYes)、コントローラ12は、アクセル操作装置13の操作量を取得する(ステップST14)。より詳しくは、コントローラ12は、アクセル操作量センサ13aからアクセル操作装置13の操作量を示す操作信号を取得する。
【0054】
コントローラ12は、シャトル変速制御を開始するための指令信号を出力する(ステップST15)。より詳しくは、コントローラ12は、シャトル変速制御決定部124によって、アクセル操作量センサ13aからの操作信号と、車速センサ16からの車速信号と、シャトル変速判定部123の判定結果と、圧力制御弁指令生成部128からの指令信号とに基づいて、
図5(a)に示す例のようなシャトル変速指令を出力する。
【0055】
コントローラ12は、圧力制御弁7を制御する指令信号を生成するためのパラメータを決定する(ステップST16)。より詳しくは、コントローラ12は、パラメータ決定部125によって、アクセル操作量センサ13aからの操作信号と、記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて、圧力制御弁指令を生成するためのパラメータを決定する。
【0056】
コントローラ12は、圧力制御弁7を制御するための指令信号を生成する(ステップST17)。より詳しくは、コントローラ12は、圧力制御弁指令生成部128によって、パラメータ決定部125が決定したパラメータに基づいて、
図5(b)に示す例のような圧力制御弁指令を生成する。
【0057】
コントローラ12は、圧力制御弁7へ指令信号を出力する(ステップST18)。より詳しくは、コントローラ12は、圧力制御弁指令生成部128によって、圧力制御弁7に対して圧力制御弁指令を出力する。
【0058】
コントローラ12は、前後進切換弁5を制御するための指令信号を生成する(ステップST19)。より詳しくは、コントローラ12は、前後進切換弁指令生成部129によって、前後進切換弁指令を生成する。
【0059】
コントローラ12は、前後進切換弁5へ指令信号を出力する(ステップST20)。より詳しくは、コントローラ12は、前後進切換弁指令生成部129によって、前後進切換弁5に対して前後進切換弁指令を出力する。
【0060】
このようにして、シャトル変速操作時に、アクセル操作装置13の操作量及び車速に応じた圧力制御弁指令が出力される。また、前後進切換弁5を切り換える前後進切換弁指令は、シャトル変速制御を開始するための指令信号、または、圧力制御弁指令によって変化する。すなわち、前後進切換弁5の切り換えタイミングがアクセル操作装置13の操作量及び車速に基づいて制御される。
【0061】
<効果>
以上説明したように、実施形態では、シャトル変速時に、アクセル操作装置13の操作量に応じて、車速が反転するまでの減速度を調整することができる。実施形態では、前後進切換弁5を切り換えるタイミングは、アクセル操作装置13の操作量に基づいて決定される。実施形態では、圧力制御弁7を制御する指令信号を生成するためのパラメータは、アクセル操作装置13の操作量に基づいて決定される。これにより、ポンプ容量が、アクセル操作装置13の操作量に応じて変化する。このように、実施形態によれば、シャトル変速時における、車速が反転するまでの実際の車両の減速度を、オペレータが所望する減速度に近づけることができる。実施形態によれば、シャトル変速時にオペレータの操作に応じて減速度を調整することができる。実施形態によれば、作業機52に積荷を搭載してシャトル変速を行う場合に、オペレータがアクセル操作装置13の操作量を少なくすることで、車速の急激な変化が制限され、荷こぼれの発生を抑制することができる。実施形態によれば、作業機52に積荷の無い状態でシャトル変速を行う場合に、オペレータがアクセル操作装置13の操作量を多くすることで、速やかにシャトル変速を行うことができる。
【0062】
<変形例>
上述の実施形態においては、作業車両50がホイールローダであることとしたがこれに限定されない。例えば、HST式のフォークリフトやブルドーザであってもよい。
【0063】
<その他の実施形態>
上述の実施形態において、圧力制御弁指令は、アクセル操作装置13の操作量と記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて生成されると説明したがこれに限定されない。例えば、コントローラ12にあらかじめ記憶された圧力制御弁7の指令信号に、アクセル操作装置13の操作量と記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて決定されたパラメータを用いてフィルタ処理を行ってもよい。より詳しくは、パラメータ決定部125は、アクセル操作量センサ13aからの操作信号と、記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報とに基づいて、指令信号にフィルタ処理を行うためのパラメータを決定する。圧力制御弁指令生成部128は、シャトル変速制御決定部124からのシャトル変速指令と、パラメータ決定部125が決定したパラメータとに基づいて、あらかじめ記憶された圧力制御弁7の指令信号にフィルタ処理を行う。この場合、例えば、フィルタがローパスフィルタの場合、パラメータ決定部125は、記憶部121に記憶されたパラメータ設定情報を参照し、アクセル操作量センサ13aから入力される操作信号に応じたカットオフ周波数を決定してもよい。
【0064】
上述の実施形態では、アクセル操作装置の操作量に基づいて、前後進切換弁5と圧力制御弁7の両方を制御するものとして説明したが、前後進切換弁5のみを制御してもよい。シャトル変速指令がOFFとなった時に、前後進切換弁5を切り換えるような前後進切換弁指令によって実現可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…エンジン、3…チャージポンプ、4…走行用油圧ポンプ(HSTポンプ)、5…前後進切換弁、6…ポンプ容量制御シリンダ、7…圧力制御弁、10…走行用油圧モータ(HSTモータ)、11a…モータシリンダ、11b…モータ容量制御部、12…コントローラ、13…アクセル操作装置(第1の操作装置)、13a…アクセル操作量センサ、14…前後進操作装置(第2の操作装置)、16…車速センサ、17…圧力検出部、17a…第1回路圧センサ、17b…第2回路圧センサ、20…油圧回路、20a…第1回路、20b…第2回路、30…走行システム、32…ポンプパイロット回路、33…チャージ回路、34…モータパイロット回路、41…第1チェック弁、42…第2チェック弁、43…第1リリーフ弁、44…第2リリーフ弁、45…低圧リリーフ弁、46…シャトル弁、47…カットオフ弁、48…チェック弁、49…チェック弁、50…ホイールローダ(作業車両)、51…車体、52…作業機、55…車輪、56…キャブ、57…表示部、121…記憶部、122…ニュートラル判定部、123…シャトル変速判定部、124…シャトル変速制御決定部、125…パラメータ決定部、128…圧力制御弁指令生成部、129…前後進切換弁指令生成部、X…閾値。