(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111695
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】熱膨張性パテ組成物、及び目地材
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20230803BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230803BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20230803BHJP
C09D 5/34 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C09K3/10 Q
E04B1/94 T
C09K21/02
C09D5/34
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013672
(22)【出願日】2022-01-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【弁理士】
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】高津 知道
【テーマコード(参考)】
2E001
4H017
4H028
4J038
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA03
2E001FA11
2E001FA34
2E001FA51
2E001GA07
2E001GA10
2E001HA11
2E001HA21
2E001HA22
2E001HA23
2E001HA33
2E001HF12
2E001JA04
2E001JA18
2E001JA22
2E001LA16
2E001MA02
2E001MA06
2E001MA08
4H017AA24
4H017AA25
4H017AA27
4H017AA29
4H017AD06
4H017AE03
4H028AA03
4H028AB03
4H028BA01
4J038AA011
4J038HA036
4J038HA501
4J038HA551
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA08
4J038NA12
4J038NA14
4J038NA25
4J038PB05
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】熱膨張性、熱膨張後の形状安定性、及び乾燥後の形状安定性において優れる熱膨張性パテ組成物を提供すること。
【解決手段】無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、前記無機系粘土鉱物及び前記熱膨張性黒鉛以外のその他の無機化合物、を含み、前記無機系粘土鉱物、前記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、前記無機系粘土鉱物の含有量が、4.0~30重量部であり、前記熱膨張性黒鉛の含有量が、1.0~50重量部であり、前記その他の無機化合物の含有量が、21~94重量部である、熱膨張性パテ組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、前記無機系粘土鉱物及び前記熱膨張性黒鉛以外のその他の無機化合物、を含み、
前記無機系粘土鉱物、前記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、
前記無機系粘土鉱物の含有量が、4.0~30重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、1.0~50重量部であり、
前記その他の無機化合物の含有量が、21~94重量部である、
熱膨張性パテ組成物。
【請求項2】
水をさらに含み、
前記水の含有量が、前記無機系粘土鉱物、前記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、23~75重量部である、
請求項1に記載の熱膨張性パテ組成物。
【請求項3】
前記無機系粘土鉱物が、層状珪酸塩鉱物又は繊維状珪酸塩鉱物のうち少なくともいずれかを含む、
請求項1又は2に記載の熱膨張性パテ組成物。
【請求項4】
前記無機系粘土鉱物が、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、及びセピオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
【請求項5】
前記無機系粘土鉱物の4.0質量%分散液の粘度が、10~12000mPa・sである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
【請求項6】
前記その他の無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物を備える、
目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性パテ組成物、及び目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物等において建築基準法で定められた防火区画等に配管類や電力ケーブルや通信ケーブル等のケーブル類を貫通させる場合、延焼防止等の観点から防火区画等には一定の耐火性能が求められている。そのため、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間には、防火性能を付与した防火用目地材として、樹脂に金属水和物等を配合したパテ状の耐火材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、形状安定性に優れたノンハロゲン系の防火パテ組成物が記載されている。また、火災時に配管類が変形したり、ケーブル被覆材が燃焼したりすることで生じた隙間を塞ぐことが出来るパテ状耐火材として、バーミキュライトや、熱膨張性黒鉛や、マイクロカプセル化したポリリン酸アンモニウムを有機樹脂に混合した樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)や、ベース樹脂に熱膨張性黒鉛と共にポリカーボネート樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂等の形崩れ防止用樹脂を配合した熱膨張性の組成物(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-306364号公報
【特許文献2】特開平10-8595号公報
【特許文献3】特開平9-176498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような耐火材には、熱膨張性に加えて、熱膨張後に型崩れや崩壊しないように熱膨張後の形状安定性も求められる。また、施工後に型崩れや崩壊しないようにパテ状の耐火材が乾燥後の形状安定性も求められる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、十分な熱膨張性を有しつつ、優れた乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性を有する熱膨張性パテ組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物を所定の割合で含むことにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、前記無機系粘土鉱物及び前記熱膨張性黒鉛以外のその他の無機化合物、を含み、
前記無機系粘土鉱物、前記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、
前記無機系粘土鉱物の含有量が、4.0~30重量部であり、
前記熱膨張性黒鉛の含有量が、1.0~50重量部であり、
前記その他の無機化合物の含有量が、21~94重量部である、
熱膨張性パテ組成物。
〔2〕
水をさらに含み、
前記水の含有量が、前記無機系粘土鉱物、前記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、23~75重量部である、
〔1〕に記載の熱膨張性パテ組成物。
〔3〕
前記無機系粘土鉱物が、層状珪酸塩鉱物又は繊維状珪酸塩鉱物のうち少なくともいずれかを含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の熱膨張性パテ組成物。
〔4〕
前記無機系粘土鉱物が、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、及びセピオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
〔5〕
前記無機系粘土鉱物の4.0質量%分散液の粘度が、10~12000mPa・sである、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
〔6〕
前記その他の無機化合物が、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物。
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の熱膨張性パテ組成物を備える、
目地材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な熱膨張性を有しつつ、優れた乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性を有する熱膨張性パテ組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
1.熱膨張性パテ組成物
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、上記無機系粘土鉱物及び上記熱膨張性黒鉛以外のその他の無機化合物(以下、単に「その他の無機化合物」ともいう。)、を含み、上記無機系粘土鉱物、上記熱膨張性黒鉛、及び前記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、上記無機系粘土鉱物の含有量が、4.0~30重量部であり、上記熱膨張性黒鉛の含有量が、1.0~50重量部であり、上記その他の無機化合物の含有量が、21~94重量部である、熱膨張性パテ組成物である。また、熱膨張性パテ組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0012】
1.1.無機系粘土鉱物
無機系粘土鉱物は、主に粘結材として機能することができ、無機系粘土鉱物を適量配合することによって、熱膨張性パテ組成物を施工に適した硬さにすることができ、乾燥後の形状安定性のほか、熱膨張後の形状安定性を向上することもできる。このような無機系粘土鉱物としては、天然由来であっても化学合成由来のものであってもよく、特に限定されないが、例えば、層状珪酸塩鉱物、繊維状珪酸塩鉱物等が挙げられる。無機系粘土鉱物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
後述するなかでも、無機系粘土鉱物は、その中でも層状珪酸塩鉱物又は繊維状珪酸塩鉱物のうち少なくともいずれかを含むことが好ましく、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト、及びセピオライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。本実施形態の熱膨張性パテ組成物が、このような無機系粘土鉱物を所定量含むことにより、熱膨張性や熱膨張後の形状安定性が優れる傾向にある。
【0014】
無機系粘土鉱物を水に分散させた4.0質量%分散液の粘度は、10~12000mPa・sであることが好ましく、10~6000mPa・sであることがより好ましい。4.0質量%分散液の粘度は無機系粘土鉱物の粘性を示すものであり、4.0質量%分散液の粘度が上記範囲内であることにより、乾燥時の形状安定性及び熱膨張後の形状安定性がより向上する傾向にある。また、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間の隙間をふさぐ際にその作業性がより向上する傾向にある。
【0015】
無機系粘土鉱物の含有量は、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物の総量100重量部に対して、4.0~30重量部であり、好ましくは8.0~24重量部であり、より好ましくは12~20重量部である。無機系粘土鉱物の含有量が4.0重量部以上であることにより、乾燥後及び熱膨張後の形状安定性が向上する傾向にある。それにより、施工時における非付着性及び加工性や、延焼防止性能がより向上する。さらに、無機系粘土鉱物の含有量が30重量部以下であることにより、熱膨張性及び施工時における加工性がより向上する傾向にある。
【0016】
1.1.1.層状珪酸塩鉱物
層状珪酸塩鉱物としては、特に限定されないが、例えば、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物;絹雲母(セリサイト)、イライト、海緑石(グローコナイト)、緑泥石(クロライト)、滑石(タルク)等が挙げられる。その中でも、好ましくは、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライトからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、より好ましくは、少なくともベントナイト及びスメクタイトのいずれかを含む。なお、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
1.1.2.繊維状珪酸塩鉱物
繊維状珪酸塩鉱物としては、セピオライト、パリゴルスカイト等が挙げられる。その中でも、少なくともセピオライトを含むことが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
1.1.3.その他の無機系粘土鉱物
その他の鉱物としては、イモゴライト、アロフェン等の非晶性粘土鉱物、沸石(ゼオライト)等の多孔性アルミノ珪酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
1.2.熱膨張性黒鉛
熱膨張性黒鉛とは、常圧下で膨張開始温度(200℃程度)以上の温度に曝されると、100倍以上に熱膨張する性質を有する黒鉛を言う。
【0020】
このような黒鉛としては、特に限定されないが、例えば、天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末を、硫酸や硝酸等の無機酸と、濃硝酸や過マンガン酸塩等の強酸化剤とを用いて表面処理したものであり、かつグラファイト層状構造を維持した結晶化合物が挙げられる。なお、天然グラファイト、熱分解グラファイト等のグラファイト粉末は、脱酸処理を施したものや、更に中和処理したもの等であってもよい。
【0021】
熱膨張性黒鉛の含有量は、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物の総量100重量部に対して、1.0~50重量部であり、好ましくは2.5~34重量部であり、より好ましくは3.7~20重量部である。熱膨張性黒鉛の含有量が1.0重量部以上であることにより、熱膨張性が向上する傾向にある。また、熱膨張性黒鉛の含有量が50重量部以下であることにより、熱膨張後の形状安定性が向上する傾向にある。
【0022】
1.3.その他の無機化合物
その他の無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、酸化アルミニウム、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等のカルシウム塩;珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化珪素、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、フライアッシュ、無機中空フィラー、ガラス繊維、パーライト、黒曜岩、真珠岩、松脂岩、珪藻土、脱水汚泥、ホウ素、四ホウ酸ナトリウム水和物(ホウ砂)、無機リン系化合物等が挙げられる。
【0023】
その中でも、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルシウム塩、及びリン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、金属水酸化物又はリン系化合物がより好ましく、水酸化アルミニウムがさらに好ましい。このようなその他の無機化合物を用いることにより、乾燥後及び熱膨張後の形状安定性がより向上する傾向にある。
【0024】
その他の無機化合物の含有量は、上記無機系粘土鉱物、上記熱膨張性黒鉛、及び上記その他の無機化合物の総量100重量部に対して、21~94重量部であり、好ましくは40~92重量部であり、より好ましくは60~88重量部である。その他の無機化合物の含有量が21重量部以上であることにより、乾燥後の形状安定性が向上する傾向にある。また、その他の無機化合物の含有量が94重量部以下であることにより、熱膨張性が向上する傾向にあり、同時に、施工時における非付着性が向上する傾向にある。
【0025】
その他の無機化合物の形状は、特に限定されないが、例えば、繊維状であってもよく、粒子状であってもよい。より具体的には、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、ランダム形状等が挙げられる。また、その他の無機化合物は、中空であっても中実であってもよい。
【0026】
また、その他の無機化合物の平均粒子径は、特に、乾燥後の形状安定性を向上させる観点から、好ましくは、10~1000μmであり、より好ましくは、20~800μmであり、さらに好ましくは、30~500μm、よりさらに好ましくは、40~200μmである。ここで、「平均粒子径」とは、公知のレーザー回折・散乱測定法によって求められる粒度分布における積算値50%における粒径を意味する。
【0027】
熱膨張性パテ組成物は、無機リン系化合物を含むことが好ましい。それにより、熱膨張性パテ組成物と施工対象の主な素材である金属との密着性が向上する。無機リン系化合物としては、無機リン系の金属塩又はアンモニウム塩が好ましい。金属塩の金属としては、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が好ましい。
【0028】
ここで、無機リン系化合物とは、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物、次亜リン酸系化合物、メタリン酸系化合物、ピロリン酸系化合物及びポリリン酸系化合物のうちの少なくとも1種を含む化合物を意味する。
【0029】
リン酸系化合物としては、特に限定されないが、例えば、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、第3リン酸マグネシウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三カルシウム、リン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0030】
亜リン酸系化合物としては、例えば、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸水素アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0031】
次亜リン酸系化合物としては、例えば、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛等が挙げられる。
【0032】
メタリン酸系化合物としては、例えば、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
ピロリン酸系化合物としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
ポリリン酸系化合物としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0035】
1.4.水
熱膨張性パテ組成物は、水をさらに含んでいてもよい。これにより、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間の隙間をふさぐ際の加工性がより向上する傾向にある。
【0036】
なお、本実施形態の熱膨張性パテ組成物には、水を含む乾燥前のパテ組成物と、乾燥後のパテ組成物の、2つの態様が含まれる。
【0037】
水を含む乾燥前のパテ組成物において、水の含有量は、好ましくは、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物からなる水以外の固形分の総量100重量部に対して、好ましくは23~75重量部であり、より好ましくは38~72重量部であり、さらに好ましくは40~70重量部である。水の含有量が上記範囲内であることにより、非付着性や加工性が向上する傾向にある。
【0038】
また、乾燥後のパテ組成物において、水の含有量は、好ましくは、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物からなる水以外の固形分の総量100重量部に対して、好ましくは0~20重量部であり、より好ましくは0~15重量部であり、さらに好ましくは0~10重量部である。
【0039】
1.5.その他の成分
その他の成分としては、物性の損なわれない程度で適宜添加することができ、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、軟化剤、粘着付与剤、凍結防止剤、有機繊維等が挙げられる。
【0040】
2.目地材
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、建築物内の配管類・ケーブル類と防火壁等との間の隙間をふさぐ目地材に用いることができる。
【0041】
3.熱膨張性パテ組成物の製造方法
本実施形態の熱膨張性パテ組成物は、ミキサー等を用いて、上記無機系粘土鉱物、上記熱膨張性黒鉛、上記その他の無機化合物、並びに、必要に応じて、水及びその他の成分を混合・撹拌することによって製造することができる。
【実施例0042】
1.無機系粘土鉱物の4.0質量%分散液粘度の測定
以下の無機系粘土鉱物を水に分散させた4.0質量%分散液(以下、4.0質量%分散液、という。)について、水に分散させた後、21℃で24時間放置した後に、東機産業株式会社製BL型粘度計粘度を用いて、ローターNo.2、回転数60[rpm]の条件にて粘度測定を行うことにより、4.0質量%分散液粘度をそれぞれ求めた。
・ベントナイト1:株式会社ホージュン製「赤城」
・セピオライト1:昭和KDE株式会社製「セピオライト ミルコンSS」
【0043】
上記測定により、ベントナイト1及びセピオライト1の4.0質量%分散液粘度は、それぞれ13mPa・s、18mPa・sであることがわかった。
【0044】
2.熱膨張性パテ組成物の作製
表1~5に示す各成分及び組成に従い、ミキサーを用いて混合・撹拌して、実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を作製した。各成分の単位は特に記載がない限り、無機系粘土鉱物、熱膨張性黒鉛、及びその他の無機化合物の総量を100重量部としたときにおける重量部で表す。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
表1~5に示す各成分の詳細は、以下の通りである。
<粘結材>
(無機系粘土鉱物)
・ベントナイト1:株式会社ホージュン製「赤城」、4.0質量%分散液粘度:13mPa・s
・ベントナイト2:クニミネ工業株式会社製「クニピアF」、4.0質量%分散液粘度:300mPa・s
・ベントナイト3:クニミネ工業株式会社製「クニピアG10」、4.0質量%分散液粘度:1000mPa・s
・スメクタイト1:クニミネ工業株式会社製「スメクトンST」、4.0質量%分散液粘度:1000mPa・s
・スメクタイト2:クニミネ工業株式会社製「スメクトンSA」、4.0質量%分散液粘度:4000mPa・s
・スメクタイト3:クニミネ工業株式会社製「スメクトンSWF」、4.0質量%分散液粘度:6000mPa・s
・セピオライト:昭和KDE株式会社製「セピオライト ミルコンSS」、4.0質量%分散液粘度:18mPa・s
(有機化合物)
・カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na):林純薬工業株式会社製、4.0質量%分散液粘度:11000mPa・s
・変性ポリアクリル系架橋物:株式会社日本触媒製「アクアリックCS6S」、4.0質量%分散液粘度:35000mPa・s
【0051】
<熱膨張性黒鉛>
・熱膨張性黒鉛:エア・ウオーター・ケミカル株式会社製「SS-3」
【0052】
<その他の無機化合物>
・水酸化アルミニウム:住友化学株式会社製「C-301N」
【0053】
3.評価方法
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物について、以下に示す各種評価を行った。
【0054】
<乾燥後の形状安定性>
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。その試験片を3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定し、試験片の断面積で除した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、乾燥後の形状安定性が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、乾燥後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が300[N/mm2]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が250[N/mm2]以上、300[N/mm2]未満である。
△:3点曲げ破壊強度が200[N/mm2]以上、250[N/mm2]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が200[N/mm2]未満である。
【0055】
<熱膨張性>
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。そして、乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の体積を測定し、その体積から膨張倍率を算出した。そして、体積膨張倍率に基づいて、熱膨張性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:体積膨張倍率が2.5倍以上である。
○:体積膨張倍率が2.0倍以上、2.5倍未満である。
△:体積膨張倍率が1.5倍以上、2.0倍未満である。
×:体積膨張倍率が1.5倍未満である。
【0056】
<熱膨張後の形状安定性>
実施例及び比較例の熱膨張性パテ組成物を用いて、縦30mm×横30mm×厚み4mmの試験片を作製し、これを110℃、24時間の条件で乾燥させた。乾燥後の試験片を600℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後、3点曲げ試験治具(上部押し側先端R1mmおよび幅80mm、下部2点支点側R1mm、幅80mm、支点間距離20mm)を用い、試験片を圧縮速度50mm/minの条件にて破壊した際の強度(3点曲げ破壊強度)を測定した。ここで、3点曲げ破壊強度が大きいほど、熱膨張後の強度が高いことを示す。そして、3点曲げ破壊強度に基づいて、熱膨張後の形状安定性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:3点曲げ破壊強度が3.0[N]以上である。
○:3点曲げ破壊強度が1.0[N]以上、3.0[N]未満である。
×:3点曲げ破壊強度が1.0[N]未満である。
【0057】
<非付着性>
ラテックスゴム手袋を装着し、パテを10回握った後の手袋の付着物の重量を測定し、以下の式に基づいて付着物重量を算出した。そして、付着物重量に基づいて、非付着性を以下の評価基準で判定した。
付着物重量[g]=(パテを10回握った後の手袋の重量)-(元の手袋の重量)
〔評価基準〕
◎:付着物重量が0.3[g]未満である。
○:付着物重量が0.3[g]以上、1.0[g]未満である。
△:付着物重量が1.0[g]以上、1.5[g]未満である。
×:付着物重量が1.5[g]以上である。
【0058】
<加工性>
乾燥前の熱膨張性パテ組成物をJIS A5752に準拠し荷重150g、温度21℃において軟度の測定を行った。次に規定の円錐を試験片に垂直に貫入させ、その貫入深さを0.1mm単位で測定した。最後に、貫入深さに基づいて、加工性を以下の評価基準で判定した。
〔評価基準〕
◎:貫入深さが120[1/10mm]以上200未満[1/10mm]である。
○:貫入深さが70[1/10mm]以上120[1/10mm]未満、又は、200[1/10mm]以上230[1/10mm]未満である。
△:貫入深さが50[1/10mm]以上70[1/10mm]未満、又は、230[1/10mm]以上250[1/10mm]未満である。
×:貫入深さが50[1/10mm]未満、又は250[1/10mm]以上である。