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特開2023-111705ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111705
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/06 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
H02K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013686
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149098
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149102
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 習
(74)【代理人】
【識別番号】100136102
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 雅子
(72)【発明者】
【氏名】森 知樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜広
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP19
5H615QQ02
5H615QQ06
5H615QQ14
5H615SS09
5H615SS10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウェッジからのコイルのはみ出しを抑制する、ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置を提供する。
【解決手段】ウェッジ挿入装置200は、ステータコア20の軸方向に貫通するスロットに、スロットに挿入されたコイル10とステータコアとの間に配置されるウェッジ30を、軸方向一側から他側に向けて挿入する。ステータコアの軸方向一側に配置され、軸方向に延び、ウェッジの少なくとも径方向位置を案内するウェッジガイド210と、ウェッジガイドの径方向外側に配置され、コイルの軸方向一側端部の少なくとも径方向位置を案内するコイルガイド220と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの軸方向に貫通するスロットに、前記スロットに挿入されたコイルと前記ステータコアとの間に配置されるウェッジを、軸方向一側から他側に向けて挿入するウェッジ挿入装置であって、
前記ステータコアの軸方向一側に配置され、軸方向に延び、前記ウェッジの少なくとも径方向位置を案内するウェッジガイドと、
前記ウェッジガイドの径方向外側に配置され、前記コイルの軸方向一側端部の少なくとも径方向位置を案内するコイルガイドと、
を備える、ウェッジ挿入装置。
【請求項2】
前記コイルガイドは、前記ウェッジガイドに固定される、請求項1に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項3】
前記コイルガイドの軸方向他側端は、前記ウェッジガイドの軸方向他側端よりも軸方向一側に位置する、請求項1または2に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項4】
前記コイルガイドの周方向幅は、前記ウェッジガイドの周方向幅よりも大きい、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項5】
前記ウェッジガイドは、周方向に複数配置され、
前記コイルガイドは、複数の前記ウェッジガイドと前記コイルとの間に配置される、請求項4に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項6】
前記コイルガイドの軸方向他側端部は、軸方向他側端に向かうにしたがって、径方向内側に向かう形状を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項7】
前記コイルガイドの径方向の厚みは、前記ウェッジガイドの径方向の厚みよりも小さい、請求項1~6のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項8】
前記コイルガイドは、
周方向に延びる第1形状と、
前記第1形状の周方向両端部から径方向内側に延びる第2形状と、
を含み、
前記第1形状の径方向位置は、前記ウェッジガイドの径方向位置と重なる、請求項1~7のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項9】
前記コイルガイドは、
軸方向に延びる本体部と、
前記本体部の軸方向一側端部から径方向外側に延びるフランジ部と、
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項10】
前記コイルガイドの軸方向長さは、前記ウェッジガイドの軸方向長さの半分以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項11】
前記コイルガイドと、前記ウェッジガイドとは、1つの部材で構成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置。
【請求項12】
複数の前記スロットに、コイル線が環状に巻き付けられた前記コイルを、軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル挿入装置であって、
請求項1~11のいずれか1項に記載のウェッジ挿入装置と、
前記ステータコアの径方向内側に配置されて軸方向に移動し、前記コイルを軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル移動機構と、
前記ステータコアの径方向内側かつ前記コイル移動機構の径方向外側に、前記ステータコアの周方向に並んで配置されて軸方向に延び、前記コイルを保持する複数のブレードと、
を備える、コイル挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアのスロットに挿入されたコイルと、ステータコアと、を絶縁するために、コイルとステータコアとの間にウェッジを挿入するウェッジ挿入装置が知られている。例えば、国際公開2012/117535号(特許文献1)には、ウェッジを、ステータコアの軸方向に伸びるウェッジプッシャの先端に支承した状態で、スロットに挿入するウェッジ挿入機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/117535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のウェッジ挿入機を用いてスロットにウェッジを挿入すると、スロットに挿入されたコイルがウェッジからはみ出す場合があるという問題に着目した。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、ウェッジからのコイルのはみ出しを抑制する、ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点からのウェッジ挿入装置は、ステータコアの軸方向に貫通するスロットに、スロットに挿入されたコイルとステータコアとの間に配置されるウェッジを、軸方向一側から他側に向けて挿入するウェッジ挿入装置であって、ステータコアの軸方向一側に配置され、軸方向に延び、ウェッジの少なくとも径方向位置を案内するウェッジガイドと、ウェッジガイドの径方向外側に配置され、コイルの軸方向一側端部の少なくとも径方向位置を案内するコイルガイドと、を備える。
【0007】
本発明の第2の観点からのコイル挿入装置は、複数のスロットに、コイル線が環状に巻き付けられたコイルを、軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル挿入装置であって、
第1の観点からのウェッジ挿入装置と、ステータコアの径方向内側に配置されて軸方向に移動し、コイルを軸方向一側から他側に向けて挿入するコイル移動機構と、ステータコアの径方向内側かつコイル移動機構の径方向外側に、ステータコアの周方向に並んで配置されて軸方向に延び、コイルを保持する複数のブレードと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ウェッジからのコイルのはみ出しを抑制する、ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ステータの断面模式図である。
図2図2は、実施形態のウェッジ挿入装置を模式図である。
図3図3は、実施形態のウェッジ挿入装置の模式図である。
図4図4は、実施形態のウェッジ挿入装置の断面模式図である。
図5図5は、実施形態のコイルガイドの斜視図である。
図6図6は、実施形態のウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置の断面模式図である。
図7図7は、実施形態のウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置の断面模式図である。
図8図8は、実施形態のウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置の断面模式図である。
図9図9は、実施形態のウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法のフローチャートである。
図10図10は、比較例のウェッジ挿入装置の模式図である。
図11図11は、変形例のウェッジ挿入装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
また、以下の説明において、ステータ1の中心軸が延びる方向、すなわちスロットの貫通方向を「軸方向」とする。軸方向に沿った一側を下側、他側を上側とする。上下方向は、位置関係を特定するために用いるためであって、実際の方向を限定するものではない。すなわち、下方向は重力方向を必ずしも意味するものではない。軸方向は、特に限定されず、鉛直方向、水平方向、これらの方向に交差する方向などを含む。
【0012】
また、ステータ1の中心軸に直交する方向を「径方向」とする。径方向に沿った一側を内側、他側を外側とする。さらに、ステータ1の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」とする。
【0013】
また以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示す場合がある。よって、各構成要素の寸法および比率は実際のものと必ずしも同じではない。また、同様の目的で、特徴とならない部分を省略して図示する場合がある。
【0014】
(ステータ)
図1は、ステータの軸方向に垂直な断面の模式図である。図1に示すように、ステータ1は、モータの構成部品であって、図示しないロータと相互作用して回転トルクを発生させる。本実施形態のステータ1は、いくつかのスロット21を跨いでコイル10を巻きつける分布巻きとされる。ステータ1は、コイル10と、ステータコア20と、ウェッジ30と、を備える。
【0015】
<ステータコア>
ステータコア20は、中空の円柱形状に形成される。ステータコア20は、薄い珪素鋼鈑を重ねて形成される。ステータコア20には、複数のティース23が放射状に形成される。ティース23同士の間には、スロット21が形成される。ティース23は、スロット21を介して径方向に延びる。スロット21には、径方向の開口部であるスロットオープン22が形成される。本実施形態のステータコア20は、一体型のステータコアである。
【0016】
<コイル>
コイル10は、コイル線が環状に巻きけられてなる。本実施形態のコイル線は、丸線であるが、特に限定されず、平角線などでもよい。
【0017】
コイル10は、二つのコイル辺部と、コイル渡り部と、を有する。二つのコイル辺部は、スロット21内に収容される。具体的には、一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、異なる。一方のコイル辺部が収納されるスロット21と、他方のコイル辺部が収納されるスロット21とは、図1に示すように別のスロットを介して周方向に配置されてもよく、隣り合っていてもよい(図示せず)。
【0018】
<ウェッジ>
ウェッジ30は、スロット21内に配置されたコイル線と、スロットオープン22との間に配置される。ウェッジ30は、スロット21の径方向内側開口であるスロットオープン22において、コイル10をスロット21内に閉塞する。
【0019】
本実施形態のウェッジ30は、軸方向視においてU字形状である。なお、ウェッジ30は省略されてもよい。
【0020】
(ウェッジ挿入装置)
図1図5を参照して、ウェッジ挿入装置200について説明する。なお、図2は、本実施形態のウェッジ挿入装置200を模式的に示す。図3は、スロット21にコイル10を挿入した状態で、本実施形態のウェッジ挿入装置200を用いて、ウェッジ30をスロット21に挿入する際の模式図である。図4は、ウェッジ挿入装置200を構成するウェッジガイド210、コイルガイド220などの数を減らして簡略に示す断面図である。図5は、コイルガイド220の斜視図である。
【0021】
図3及び図4に示すように、ウェッジ挿入装置200は、ステータコア20の軸方向に貫通するスロット21に、スロット21に挿入されたコイル10とステータコア20との間に配置されるウェッジ30を、軸方向一側から他側に向けて挿入する。ここでは、ウェッジ挿入装置200は、ステータコア20の複数のスロット21のそれぞれにウェッジ30を挿入する。
【0022】
ウェッジ挿入装置200は、図2図4に示すウェッジガイド210と、コイルガイド220と、図3に示すウェッジプッシャ230と、を備える。
【0023】
<ウェッジガイド>
ウェッジガイド210は、ウェッジ30を保持する。ウェッジガイド210は、ウェッジ30をスロット21に案内する。
【0024】
ウェッジガイド210は、ステータコア20の軸方向一側に配置され、軸方向に延びる。ウェッジガイド210は、ウェッジ30の少なくとも径方向位置を案内する。すなわち、ウェッジガイド210は、ウェッジ30の少なくとも径方向の位置決めをする。本実施形態のウェッジガイド210は、ウェッジ30の周方向位置をさらに案内する。このため、ウェッジガイド210は、ウェッジ30の径方向及び周方向の位置決めをする。
【0025】
図2に示すように、ウェッジガイド210は、棒状の部材である。図2及び図4に示すように、ウェッジガイド210は、周方向に複数配置される。ここでは、複数のウェッジガイド210は、周方向全体に間隔をあけて配置される。
【0026】
<コイルガイド>
コイルガイド220は、ウェッジガイド210の径方向外側に配置される。コイルガイド220は、コイル10の軸方向一側端部の少なくとも径方向位置を案内する。これにより、ウェッジ30をスロット21に挿入する際に、コイルガイド220によって、コイル10の一側端部を案内できる。このため、コイルガイド220がスロット21に挿入されたコイル10の一側端部を径方向外側に案内することによって、ウェッジ30がスロット24に歪んで挿入されることを抑制できる。したがって、ウェッジ30からのコイル10のはみ出しを抑制することができる。
【0027】
なお、上記「ウェッジ30からのコイル10のはみ出し」とは、コイル10がウェッジ30とスロット21との間に挟まる状態などを含み、ウェッジ30によるコイル10の絶縁または閉塞ができない状態である。
【0028】
また、コイルガイド220の「コイル10を案内する」とは、コイル10を成形してもよく、コイル10が成形されない範囲でコイル10の径方向位置を移動させてもよい。
【0029】
詳細には、コイルガイド220は、コイル10の軸方向一側端部と接触する。より詳細に、コイルガイド220の少なくとも軸方向他側端部は、コイル10の軸方向一側端部と接触する。そして、コイルガイド220は、コイル10の一側端部を径方向外側に移動させる。このとき、コイル10は、塑性変形してもよく、塑性変形しなくてもよい。また、コイル10に接触することによって、コイルガイド220は、傾いてもよく、傾かなくてもよい。
【0030】
また、コイルガイド220が案内する「コイル10の軸方向一側端部」は、軸方向一側において、2つのスロット21を跨ぐコイル渡り部を含む。
【0031】
図4に示すように、軸方向視において、コイルガイド220は隣り合うスロット21間に位置する。コイルガイド220は、ウェッジガイド210に接触してもよく、接触しなくてもよい。
【0032】
コイルガイド220は、ウェッジガイド210に固定される。これにより、コイルガイド220を容易に配置することができる。
【0033】
コイルガイド220は、ウェッジガイド210に対して、相対移動しない。このため、ウェッジガイド210を軸方向に移動する場合には、コイルガイド220はウェッジガイド210とともに軸方向に移動する。
【0034】
図2及び図3に示すように、コイルガイド220の軸方向他側端221は、ウェッジガイド210の軸方向他側端211よりも軸方向一側に位置する。これにより、コイルガイド220がコイル10を強く押圧することを抑制できる。このため、コイルガイド220によるコイル10への過度の負荷が生じることを抑制できる。
【0035】
図2及び図4に示すように、コイルガイド220の周方向幅は、ウェッジガイド210の周方向幅よりも大きい。これにより、コイルガイド220が、複数のスロット21に挿入されたコイル10の軸方向一側端部を径方向外側に移動することができる。ここでは、コイルガイド220の周方向幅は、ウェッジ30の周方向幅よりも大きい。
【0036】
図3に示すように、コイルガイド220は、複数のウェッジガイド210とコイル10との間に配置される。これにより、ウェッジガイド210の周方向幅よりも大きい周方向幅を有するコイルガイド220を容易に実現できる。
【0037】
ここでは、コイルガイド220は、ウェッジガイド210を保持する。この場合、コイルガイド220によって保持されたウェッジガイド210の撓みを抑制できる。また、コイルガイド220を容易に配置できる。
【0038】
図4及び図5に示すように、本実施形態のコイルガイド220は、U字形状である。具体的には、コイルガイド220は、第1形状222と、第2形状223と、を含む。第1形状222は、周方向に延びる。第2形状223は、第1形状222の周方向両端部から径方向内側に延びる。
【0039】
図2及び図4に示すように、第1形状222の径方向位置は、ウェッジガイド210の径方向位置に重なる。これにより、コイルガイド220の径方向の厚みを確保できる。このため、コイルガイド220がコイル10を径方向外側へ適量移動するウェッジ挿入装置200を容易に実現できる。
【0040】
詳細には、第1形状222は、複数のウェッジガイド210の径方向外側において、複数のウェッジガイド210を跨ぐように配置される。
【0041】
第2形状223の径方向位置は、ウェッジガイド210の径方向位置と異なる。ここでは、第2形状223は、隣り合うウェッジガイド210の隙間に配置される。第2形状223はウェッジガイド210の径方向外側から、ウェッジガイド210の径方向内側端部に向けて延びる。
【0042】
図3に示すように、コイルガイド220の軸方向他側端部(図3では軸方向他側端)は、軸方向他側端に向かうにしたがって、径方向内側に向かう形状を有する。これにより、コイルガイド220によるコイル10の軸方向一側端部の径方向外側への移動を容易に行うことができる。
【0043】
なお、上記形状を有するコイルガイド220の軸方向他側端部は、R形状、テーパ面などを含む。
【0044】
図4に示すように、コイルガイド220の径方向の厚みH220は、ウェッジガイド210の径方向の厚みH210よりも小さい。これにより、コイルガイド220によってコイル10を径方向外側へ適量移動することができる。
【0045】
また、本実施形態では、図2及び図5に示すように、コイルガイド220は、本体部224と、フランジ部225と、を含む。本体部224は、軸方向に延びる。フランジ部225は、本体部224の軸方向一側端部から径方向外側に延びる。これにより、フランジ部225をコイルガイド220の取付部として利用することができる。
【0046】
ここでは、本体部224は、第1形状222と、2つの第2形状223とを有する。フランジ部225は、第1形状222の軸方向一側端から径方向外側に延びる。本体部224とフランジ部225とは、別部材でもよいが、図5では、1つの部材である。
【0047】
フランジ部225は、ウェッジガイド210を保持する土台に締結部材を用いて取り付けられる。詳細には、フランジ部225には、軸方向に延びる貫通穴225a(図5参照)が設けられる。貫通穴225aには、土台に締結するための締結部材が取り付けられる。
【0048】
図2に示すように、コイルガイド220の軸方向長さL220は、ウェッジガイド210の軸方向長さL210の半分以上である。これにより、コイル10を容易に案内するコイルガイド220を実現できる。この観点から、コイルガイド220の軸方向長さL220は、ウェッジガイド210の軸方向長さL210の7割以上であることが好ましい。また、コイルガイド220の軸方向長さL220は、ウェッジガイド210の軸方向長さL210よりも小さい。
【0049】
なお、コイルガイド220の軸方向長さL220は、限定されない。コイルガイド220は、コイル10を案内できれば、ウェッジガイド210の軸方向一側端部の近傍に配置されず、かつウェッジガイド210の軸方向他側端部の近傍に配置されてもよい。この場合、コイルガイド220の軸方向長さL220は、ウェッジガイド210の軸方向長さL210の半分未満であってもよい。
【0050】
本実施形態では、コイルガイド220は、ウェッジガイド210と、別部材である。コイルガイド220を構成する材料と、ウェッジガイド210とを構成する材料は、同じであっても、異なってもよい。後者の場合、コイルガイド220が接触するコイル10への負荷を抑制する観点から、コイルガイド220の強度は、ウェッジガイド210の強度よりも小さいことが好ましい。
【0051】
<ウェッジプッシャ>
ウェッジプッシャ230は、ウェッジ30をスロット21に挿入する。ウェッジプッシャ230は、ウェッジ30に固定される。詳細には、ウェッジプッシャ230の軸方向他側は、ウェッジ30の軸方向一側に取り付けられる。ウェッジプッシャ230は、軸方向に移動する。これにより、ウェッジ30を軸方向に移動する。ウェッジプッシャ230によるウェッジ30の挿入方向は、コイル10の挿入方向と同じである。
【0052】
(コイル挿入装置)
図1図8を参照して、コイル挿入装置100について説明する。図6図8は、コイル挿入装置100を軸方向に切断した状態を模式的に示す。コイル挿入装置100によって、図6図8の順にコイル10がスロット21に挿入される。
【0053】
図1図8に示すように、コイル挿入装置100は、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル線が環状に巻き付けられたコイル10を、軸方向一側から他側(図6図8では、右側から左側)に向けて挿入する。詳細には、コイル挿入装置100は、ステータコア20の複数のスロット21を跨ぐようにそれぞれのスロットオープン22からコイル10を挿入する。
【0054】
コイル挿入装置100は、上述したウェッジ挿入装置200と、複数のブレード110と、コイル移動機構としてのストリッパ120と、を備える。
【0055】
<ブレード>
図6図8に示すように、複数のブレード110は、コイル10を保持する。ブレード110は、ステータコア20の径方向内側かつストリッパ120の径方向外側に、ステータコア20の周方向に配置されて軸方向に延びる。ブレード110により、コイル10をスロット21に容易に挿入できる。
【0056】
ブレード110は、軸方向に移動する。本実施形態のブレード110は、軸方向に移動する可動ブレードである。
【0057】
ブレード110は、ステータコア20の周方向に並んで配置される。ここでは、ブレード110は、複数のティース23を介して配置される。詳細には、複数のブレード110は、ティース23に対応して、同一円周上に配設される。
【0058】
2つのブレード110で、1つのコイル辺部を保持する。ブレード110は、後述するストリッパ120に引っ掛けられたコイル10を軸方向及び径方向に沿ってスロット21まで導く。
【0059】
ブレード110は、スロットオープン22に配置される形状を有する。ブレード110は、軸方向に延びる棒状の部材である。
【0060】
本実施形態のブレード110の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0061】
<ストリッパ>
ストリッパ120は、コイル10を移動させるコイル移動機構である。ストリッパ120は、ステータコア20の径方向内側に配置されて、軸方向に移動する。ストリッパ120は、コイル10を軸方向一側から他側に向けて挿入する。
【0062】
ストリッパ120は、コイル10に接触する。ストリッパ120により、コイル10がステータコア20の径方向内側を軸方向に移動しつつ、コイル10の一部がスロットオープン22からスロット21内部に挿入される。具体的には、ストリッパ120は、コイル10の径方向の内側を引っ掛けて、ブレード110に沿ってコイル10を引き上げる。ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動してもよく、ブレード110とともに軸方向他側に移動しなくてもよい。後者の場合、ブレード110がストリッパ120よりも先に軸方向他側に移動する。
【0063】
ストリッパ120には、環状のコイル10の径方向の内側が引っ掛けられる。ストリッパ120においてコイル10が引っ掛けられる部分の径は、コイル10を保持するブレード110間の距離である。
【0064】
本実施形態のストリッパ120の径方向外側端縁は、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向内側に位置するが、ステータコア20の径方向内側端縁よりも径方向外側に位置してもよい。
【0065】
ストリッパ120は、スロットオープン22に配置される形状を有する。本実施形態では、ストリッパ120の軸方向他側の端部は、半球状である。ストリッパ120の軸方向他側の端面は、曲面である。
【0066】
(ウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法)
続いて、図1図9を参照して、本実施形態のウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法を説明する。なお、図9は、本実施形態のウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法のフローチャートである。本実施形態のウェッジ挿入方法は、上述したウェッジ挿入装置200を用いたウェッジ30の挿入方法である。本実施形態のコイル挿入方法は、上述したコイル挿入装置100を用いたコイル10の挿入方法である。
【0067】
まず、図9に示すように、ウェッジ挿入装置200を備えるコイル挿入装置100をステータコア20に設置する(ステップS1)。このステップS1では、図6に示すように、ステータコア20の軸方向一側にコイル10、ウェッジ30、ウェッジ挿入装置200及びコイル挿入装置100を配置する。
【0068】
具体的には、複数のブレード110間に保持されるようにコイル10を配置する。また、複数のブレード110の径方向の中央であって軸方向一側に、ストリッパ120を配置する。さらに、ウェッジプッシャ230に支持されるようにウェッジ30を配置する。
【0069】
次に、コイル線が環状に巻き付けられたコイル10をスロット21に挿入する(ステップS2)。このステップS2では、ストリッパ120を軸方向一側から他側に向けて移動する。ここでは、ストリッパ120は、ブレード110とともに軸方向他側に移動する。ブレード110及びストリッパ120を移動することによって、図7及び図8に示すように、スロット21にコイル10を挿入することができる。
【0070】
また、ウェッジ30をスロット21に挿入する(ステップS3)。このステップS3では、ウェッジプッシャ230を軸方向一側から他側に向けて移動する。ここでは、ウェッジプッシャ230、ウェッジガイド210及びコイルガイド220を軸方向他側に移動する。
【0071】
具体的には、ウェッジガイド210によって、ウェッジ30の少なくとも径方向位置を案内する。そして、ウェッジプッシャ230を移動することによって、スロット21にウェッジ30を挿入することができる。
【0072】
このステップS3では、図3に示すように、コイルガイド220によって、コイル10の軸方向一側端部の少なくとも径方向位置を案内する。具体的には、コイルガイド220は、ウェッジガイド210とともに、軸方向に移動する。そして、コイルガイド220は、スロット21に挿入されたコイル10の軸方向一側端部を径方向外側に移動させる。このため、ウェッジプッシャ230に支持されるウェッジ30が、スロット21に歪んで挿入されることを抑制できる。
【0073】
次に、ウェッジ挿入装置200を備えるコイル挿入装置100をステータコア20から取り外す(ステップS4)。具体的には、ストリッパ120を軸方向一側に向かって移動する。
【0074】
以上の工程(ステップS1~S4)を実施することにより、ステータコア20の軸方向に貫通する複数のスロット21に、コイル10及びウェッジ30を挿入することができる。その結果、図1に示すステータ1を製造できる。
【0075】
(作用効果)
ここで、図1図10を参照して、本実施形態のウェッジ挿入装置200、コイル挿入装置、ウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法の作用効果について説明する。図10は、比較例のウェッジ挿入装置を用いてウェッジ30をスロット21に挿入する際の模式図を示し、図3に対応する。図10に示すように、比較例のウェッジ挿入装置は、本実施形態のコイルガイド220を備えていない。
【0076】
本発明者は、コイル10がウェッジ30からはみ出すという問題は、図10に示す矢印Aのように、スロット21に挿入されたコイル10の一側端部がウェッジ30またはウェッジガイド210を径方向内側に押すことによって、ウェッジ30が歪んで挿入されることに起因していることを見出した。
【0077】
この問題に対して、本実施形態のウェッジ挿入装置200は、図3に示すように、ウェッジ30を挿入する際に、コイルガイド220によって、コイル10の一側端部を径方向外側に案内する。このため、コイル10の一側端部がウェッジ30またはウェッジガイド210を径方向内側に押すことを抑制できる。すなわち、コイルガイド220によって、スロット21に挿入中のコイル10の一側端部が径方向内側に倒れることを抑制できる。これにより、コイル10とウェッジ30またはウェッジガイド210とが接触する負荷が小さくなるので、ウェッジ30がスロット21に歪んで挿入されることを抑制できる。したがって、ウェッジ30からのコイル10のはみ出しを抑制することができる。
【0078】
このように、本実施形態のウェッジ挿入装置200、コイル挿入装置100、ウェッジ挿入方法及びコイル挿入方法では、コイルガイド220によって、ウェッジ30からのコイル10のはみ出しを抑制することができる。したがって、コイル10の挿入とウェッジ30の挿入とを効率よく行うことができる。
【0079】
(変形例1)
上述した実施形態では、コイルガイド220とウェッジガイド210とは、別の部材で構成されるが、これに限定されない。本変形例では、図11に示すように、コイルガイド220とウェッジガイド210とは、1つの部材で構成される。これにより、コイルガイド220を容易に実現できる。
【0080】
本変形例では、コイルガイド220と、複数のウェッジガイド210とが、1つの部材で構成される。
【0081】
(変形例2)
上述した実施形態では、ウェッジ30を軸方向に移動するためのウェッジプッシャ230を備えるウェッジ挿入装置200及びコイル挿入装置100を例に挙げて説明したが、これに限定されない。ウェッジ挿入装置及びコイル挿入装置は、ウェッジプッシャ230の代わりに、ウェッジ30を軸方向に移動する機構を備えてもよい。
【0082】
(変形例3)
上述した実施形態では、図1に示すように、コイルを挿入する2つのスロット21は、スロット21を4つ挟んだ一のスロット21と他のスロット21とされるが、これに限定されない。
【0083】
(変形例4)
上述した実施形態では、2つのスロット21に1つのコイル10を挿入する方法を例に挙げて説明した。4以上のスロット21に、複数のコイル10を同時に挿入してもよい。
【0084】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 :ステータ
10 :コイル
20 :ステータコア
21 :スロット
30 :ウェッジ
100 :コイル挿入装置
110 :ブレード
120 :ストリッパ
200 :ウェッジ挿入装置
210 :ウェッジガイド
220 :コイルガイド
222 :第1形状
223 :第2形状
224 :本体部
225 :フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11