(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111751
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】吊荷回転装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/06 20060101AFI20230803BHJP
B66C 13/08 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
B66C13/06 M
B66C13/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013765
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】梶川 洋岳
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 晃
(57)【要約】
【課題】吊荷を水平方向及び鉛直方向に回転させることができる吊荷回転装置を提供する。
【解決手段】メインフック12及びサブフック17を備えるクレーン1に吊り下げられる回転装置本体40と、サブフック17と吊荷Wの一端を接続する第一ロープ71と、回転装置本体40と吊荷Wの他端を接続する第二ロープ72と、を備える吊荷回転装置20であって、回転装置本体40は、回転装置本体40の中央に設けられ、第一ロープ71が挿通される開口部50と、開口部50を軸として回転装置本体40を水平方向に回転させる推力部(プロペラ22)と、を有する、とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインフック及びサブフックを備えるクレーンに吊り下げられる回転装置本体と、
前記サブフックと吊荷の一端を接続する第一ロープと、
前記回転装置本体と前記吊荷の他端を接続する第二ロープと、を備える吊荷回転装置であって、
前記回転装置本体は、
前記回転装置本体の中央に設けられ、前記第一ロープが挿通される開口部と、
前記開口部を軸として前記回転装置本体を水平方向に回転させる推力部と、を有する、ことを特徴とする吊荷回転装置。
【請求項2】
前記第一ロープに接続される接続部材を具備し、
前記接続部材は、
前記開口部と重なる穴を有するとともに、前記開口部の縁部に当接するストッパと、
前記穴の上方において前記ストッパに設けられ、前記穴に挿通された前記第一ロープが接続される接続ピンと、
前記ストッパの上端にベアリングを介して設けられ、前記サブフックに接続された第三ロープが接続される回転部材と、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の吊荷回転装置。
【請求項3】
前記回転装置本体は、
第一フレームと、
前記第一フレームに対して鉛直方向に摺動可能に支持される第二フレームと、
前記第一フレームに設けられる第二シーブ及び第三シーブと、
前記第二フレームに設けられる第一シーブ及び第四シーブと、を有し、
前記第一ロープは、前記第一シーブと前記第二シーブとに交互に掛け回されるとともに、前記第一ロープの端部が前記第一シーブのピンに接続され、
前記第二ロープは、前記第三シーブと前記第四シーブとに交互に掛け回されるとともに、前記第二ロープの端部が前記第四シーブのピンに接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の吊荷回転装置。
【請求項4】
前記メインフックに接続される第四ロープと、
前記第四ロープに接続される吊部材と、を具備し、
前記吊部材は、
前記第四ロープが接続される第一プレートと、
前記第一プレートの一側から前記サブフックの直下側に向かって突き出して設けられる第二プレートと、
前記第一プレートの他側から前記サブフックの直下側に向かって突き出して設けられる第三プレートと、
前記第二プレート及び前記第三プレートの間に設けられ、前記サブフックを吊り下げているサブワイヤロープを挟持する第五シーブ及び第六シーブと、を有する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吊荷回転装置。
【請求項5】
前記回転装置本体は、
前記回転装置本体の中央の下部に設けられるトルク伝達部材を有し、
前記トルク伝達部材は、前記トルク伝達部材の上端を軸として、鉛直方向に回転可能に設けられる、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吊荷回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊荷回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、代表的な作業車両であるクレーンが知られている。クレーンは、主に走行体と旋回体で構成されている。走行体は、複数の車輪を備え、自走可能としている。旋回体は、ブームのほかにワイヤロープやフックを備え、吊荷を吊り下げた状態でこれを運搬可能としている。
【0003】
ところで、吊荷が建築物を構成する鋼材等である場合、吊荷に括り付けた介錯ロープを引っ張って吊荷を水平方向に回転させ、吊荷の方向を調節することがある。しかし、介錯ロープを引っ張って吊荷を水平方向に回転させる作業は、転倒や高所からの転落のおそれがあるとともに、余分な人員が必要となる問題があった。また、二台のクレーンを用いて一つの吊荷を吊る、いわゆる共吊りにより、吊荷を鉛直方向に回転させ、吊荷の方向を調節することがある。しかし、共吊りにより吊荷を鉛直方向に回転させる作業は、クレーンの操作が難しいとともに、余分な人員やクレーンが必要となる問題があった。
【0004】
従来技術には、吊荷を水平方向に回転する装置がある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の装置は、揚重機(クレーン)の補巻ワイヤロープ(サブワイヤロープ)の巻き取り(巻き入れ)、繰り出し(巻き出し)動作により資材(吊荷)の吊り上げ時姿勢を調整(鉛直方向に回転)するものである。また、従来技術には、吊荷を水平方向に回転する装置がある(特許文献2参照)。特許文献2に記載の装置は、送風機により吊り具の鉛直軸心回りの方向を制御することで、吊荷の方向を調整(水平方向に回転する)ものである。しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の装置では、鉛直方向の回転及び水平方向の回転のうち、どちらか一方を実施できない問題があった。実作業では、吊荷を鉛直方向及び水平方向に回転する必要があるため、吊荷を水平方向及び鉛直方向に回転させることができる吊荷回転装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-194666号公報
【特許文献2】特開平10-305989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吊荷を水平方向及び鉛直方向に回転させることができる吊荷回転装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、
メインフック及びサブフックを備えるクレーンに吊り下げられる回転装置本体と、
前記サブフックと吊荷の一端を接続する第一ロープと、
前記回転装置本体と前記吊荷の他端を接続する第二ロープと、を備える吊荷回転装置であって、
前記回転装置本体は、
前記回転装置本体の中央に設けられ、前記第一ロープが挿通される開口部と、
前記開口部を軸として前記回転装置本体を水平方向に回転させる推力部と、を有する、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
第一の発明に係る吊荷回転装置によれば、吊荷を水平方向及び鉛直方向に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図12】吊荷を鉛直方向に回転させる動作を示す図。
【
図13】吊荷を水平方向に回転させる動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願に開示する技術的思想は、以下に説明する実施形態のほか、他の実施形態にも適用できる。
【0012】
図1に示すように、クレーン1は、主に走行体2と旋回体3で構成されている。
【0013】
走行体2は、左右一対の前輪4と後輪5を備えている。また、走行体2は、荷物の運搬作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。なお、走行体2は、旋回用モータ7によって、その上部に支持する旋回体3を旋回自在としている。
【0014】
旋回体3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム8を備えている。ブーム8は、旋回用モータ7によって旋回自在となっている。また、ブーム8は、伸縮用シリンダ9によって伸縮自在となっている。更に、ブーム8は、起伏用シリンダ10によって起伏自在となっている。
【0015】
加えて、ブーム8には、メインワイヤロープ11が架け渡されている。ブーム8の先端部分から垂下するメインワイヤロープ11は、メインフック12を吊り下げている。ブーム8の基端側近傍には、メインウインチ13が設けられている。メインウインチ13は、巻回用油圧モータ14と一体的に構成されており、メインワイヤロープ11の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、メインフック12は、巻回用油圧モータ14によって昇降自在となっている。
【0016】
加えて、ブーム8には、サブワイヤロープ16が架け渡されている。ブーム8の先端部分から垂下するサブワイヤロープ16は、サブフック17を吊り下げている。ブーム8の基端側近傍には、サブウインチ18が設けられている。サブウインチ18は、巻回用油圧モータ19と一体的に構成されており、サブワイヤロープ16の巻き入れ及び巻き出しを可能としている。そのため、サブフック17は、巻回用油圧モータ19によって昇降自在となっている。
【0017】
次に、
図2から
図9を用いて、クレーン1に設けられる吊荷回転装置20について説明する。なお、
図4(A)は、回転装置本体40の正面図を示している。また、
図4(B)は、回転装置本体40の斜視図を示している。
【0018】
図2に示すように、吊荷回転装置20は、主に、吊天秤30(吊部材)、回転装置本体40、スイベルストッパ60(接続部材)、可動ロープ71(第一ロープ)、吊ロープ72(第二ロープ)、リモコン80を備えている。第一ロープは、サブフック17と吊荷Wの一端を接続するものであり、本実施形態においては、スイベルストッパ60、吊ロープ73(第三ロープ)を介して接続している。第二ロープは、回転装置本体40と吊荷Wの他端を接続するものである。なお、以下では、ブーム8の延伸方向と平行な水平方向を前後方向、ブーム8の延伸方向と直交する水平方向を幅方向として説明する。
【0019】
図2、
図3、
図8に示すように、吊天秤30は、メインフック12とサブワイヤロープ16との距離を一定に保つものである。吊天秤30は、吊ロープ75(第四ロープ)を介してメインフック12に接続されている。吊天秤30は、プレート31(第一プレート)、プレート32(第二プレート)、プレート33(第三プレート)、シーブ34(第五シーブ)、シーブ35(第六シーブ)を有している。
【0020】
プレート31は、幅方向を長手方向として設けられている。プレート31は、四隅に吊ロープ74と吊ロープ75を接続するための穴36がそれぞれ設けられている。プレート31は、幅方向の両端部の上端に設けられた穴36に吊ロープ75がそれぞれ挿通されて固定(接続)され、幅方向の両端部の下端に設けられた穴36に吊ロープ74がそれぞれ挿通されて固定(接続)されている。
【0021】
プレート32は、プレート32の幅方向の一側からサブフック17の直下側に向かって水平に突き出して設けられている。プレート33は、プレート32の幅方向の他側からサブフック17の直下側に向かって水平に突き出して設けられている。プレート32とプレート33は、サブフック17の直下側に向かうにつれて互いに近接するように突き出しており、サブフック17の直下において、互いに平行になるように突き出している。
【0022】
シーブ34とシーブ35は、プレート32とプレート33の間に前後方向に隣接して設けられている。シーブ34とシーブ35は、サブワイヤロープ16がシーブ34の外周とシーブ35の外周の間に挿通されている。シーブ34とシーブ35は、幅方向を軸として回転可能であり、巻き入れ及び巻き出しされるサブワイヤロープ16を外周の溝で挟持している。
【0023】
図2及び
図4に示すように、回転装置本体40は、吊荷回転装置20の本体となるものである。回転装置本体40は、吊ロープ74を介して吊天秤30に接続されている。回転装置本体40は、プレート41、回転部材42、アーム43、プロペラ44(推力部)、シーブ45、シーブ46、シーブ47、トルク伝達部材48、電気回路部49を有している。回転装置本体40は、平面視中央に上下方向に貫通する開口部50が設けられている。
【0024】
図5に示すように、プレート41は、回転部材42が挿入される円形状の穴51(開口部50)が中央に設けられている。プレート41は、穴51に可動ロープ71(
図2参照)が挿通されている。プレート41は、平面視八角形状であり、外縁において上方に延びる外縁部52が形成されている。プレート41は、外縁部52の幅方向の両端部に穴53がそれぞれ設けられており、吊ロープ74が穴53にそれぞれ挿通されて固定(接続)されている。
【0025】
図4及び
図6に示すように、回転部材42は、中央に角丸四角形状(トラック形状)の穴54(開口部50)が設けられた円盤部55と、円盤部55の下面から下方に延びる2つの側板部56と、を有している。回転部材42は、穴54に可動ロープ71(
図2参照)が挿通されている。回転部材42は、側板部56が互いに対向するように設けられ、側板部56の下側がテーパ状に形成されている。
【0026】
回転部材42は、側板部56がプレート41の穴51に挿入され、ベアリング57を介してプレート41に接続されている。回転部材42は、2つの側板部56の上側にそれぞれアーム43が設けられている。アーム43は、互いに反対方向に向けられて、水平方向に延びている。アーム43は、先端において、水平の回転方向に風が吹き出すようにプロペラ44(推力部)が設けられている。アーム43は、右回転用と左回転用のプロペラ44が1本のアーム43に対して1翅ずつ設けられる。これにより、回転装置本体40は、開口部50を軸として右回転及び左回転に自在に回転することができる。
【0027】
回転部材42は、2つの側板部56の内側に可動ロープ71(
図2参照)を保持するためのシーブ45、シーブ46、シーブ47が設けられている。
【0028】
シーブ45とシーブ46は、側板部56の上側において、水平方向に隣接して設けられている。シーブ34とシーブ35は、可動ロープ71(
図2参照)がシーブ45の外周とシーブ46の外周の間に挿通されている。シーブ45とシーブ46は、2つの側板部56が対向する面に対して直交する方向を軸として回転可能であり、上下方向に引っ張られる可動ロープ71を外周の溝で挟持する。
【0029】
シーブ47は、側板部56の下側において、可動ロープ71(
図2参照)に対して、シーブ47のピッチ円半径だけ吊荷Wの一端側に離隔した位置にシーブ47のピン58が設けられている。シーブ47は、2つの側板部56が対向する面に対して直交する方向を軸として回転可能であり、上下方向に引っ張られる可動ロープ71を外周の溝で支持する。
【0030】
回転部材42は、2つの側板部56の内側にトルク伝達部材48がピン59を介して設けられている。回転部材42は、一方の側板部56の外側に電気回路部49が設けられている。電気回路部49は、リモコン80(
図2参照)と通信するための無線装置、CPU、バッテリー、慣性センサ等を有している。リモコン80は、吊荷Wの回転を操作するコントローラである。
【0031】
図2及び
図9に示すように、トルク伝達部材48は、吊荷Wを水平方向に回転させるトルクを伝達するものである。トルク伝達部材48は、回転装置本体40の中央の下部に設けられている。トルク伝達部材48は、板状の部材を有し、トルク伝達部材48の上端を軸として、鉛直方向に回転可能に設けられている。ここで、吊荷Wを鉛直方向に90度回転させるためには、本来、可動ロープ71と吊ロープ72が回転装置本体40側において1点で交わる必要がある。一方、可動ロープ71と吊ロープ72が一点で交わった状態で回転装置本体40を水平回転させた場合、可動ロープ71と吊ロープ72がねじれて、吊荷Wにトルクを伝達しにくくなる。そこで、回転装置本体40の中央の下部にトルク伝達部材48を設けて、トルク伝達部材48の下端に吊ロープ72を接続する。これにより、回転装置本体40側の可動ロープ71と吊ロープ72の支点間隔が広がり、可動ロープ71と吊ロープ72がねじれにくくなるため、吊荷Wにトルクを伝えやすくなる。
【0032】
図2及び
図7に示すように、スイベルストッパ60は、可動ロープ71を回転可能に保持するとともに、スイベルストッパ60が回転装置本体40と接触している間、吊荷Wの水平姿勢を保つものである。スイベルストッパ60は、ストッパ61、接続ピン62、ベアリング63、回転部材64を有する。
【0033】
ストッパ61は、開口部50(
図4(B)参照)と重なる角丸四角形状の穴65が設けられた円盤部66と、円盤部66の上面から上方に延びる2つの側板部68を有している。ストッパ61は、回転部材42の穴54(
図6参照)の対向する直線部分間の距離よりも、円盤部66の外径が大きく形成されているため、円盤部66の下面が円盤部55(
図6参照)の上面、即ち開口部50の縁部67(
図4(B)参照)に当接するように構成されている。また、ストッパ61は、側板部68が互いに対向するように設けられている。
【0034】
接続ピン62は、穴65の上方において、2つの側板部68の内側に設けられている。接続ピン62は、2つの側板部56が対向する面に対して直交する方向に延びる棒状の部材であり、その両端部が側板部68にそれぞれ固定されている。接続ピン62は、穴65に挿通された可動ロープ71が固定(接続)されている。
【0035】
回転部材64は、ストッパ61の上端にベアリング63を介して設けられている。回転部材64は、上方に突出する板状の部材であり、水平方向に貫通する穴69が形成されている。回転部材64は、サブフック17に接続された吊ロープ73が穴69に挿通されて固定(接続)されている。
【0036】
図2に示すように、可動ロープ71は、吊荷Wの一端に接続されるものである。可動ロープ71は、上述のように回転装置本体40の開口部50(
図4(B)参照)を通って、スイベルストッパ60の接続ピン62(
図7参照)に接続されている。
【0037】
吊ロープ72は、吊荷Wの他端に接続されるものである。吊ロープ72は、上述のようにトルク伝達部材48の下端に接続されている。可動ロープ71、吊ロープ72、吊ロープ74(吊天秤30から回転装置本体40まで)、吊荷W(一端から他端まで)の長さは、次の条件式を満たすように設定する。
吊荷W<トルク伝達部材48+吊ロープ72<可動ロープ71<吊ロープ74
【0038】
リモコン80は、回転装置本体40の回転を操作するためのものである。リモコン80は、制御信号を送るための無線通信装置、CPU、スイッチ、レバー等で構成される。リモコン80は、レバー等の操作によって、電気回路部49がプロペラ44を稼働させて、回転装置本体40の水平方向の回転を調整可能に構成される。なお、リモコン80は、回転装置本体40に無線で制御信号を送信可能である構成であれば、特に限定されるものでなく、回路構成やスイッチ構成等はどのような構成でもよい。
【0039】
次に、
図8を用いて、吊荷Wを鉛直方向に回転させる動作について説明する。なお、
図8(A)に示す、吊荷Wが水平な状態を初期状態とする。
【0040】
吊荷回転装置20は、吊荷Wが水平な状態において、サブフック17に接続された吊ロープ73をたるませ、メインフック12にのみ張力を発生させている。これにより、吊荷回転装置20は、スイベルストッパ60が可動ロープ71によって下方に引っ張られた状態で回転部材42の円盤部55(
図6参照)の上面と接触し、可動ロープ71の上端が拘束されるため吊荷Wの水平を保つことができる。
図8(B)に示すように、吊荷回転装置20は、クレーン1がサブワイヤロープ16を巻き上げることにより、可動ロープ71が上方に引っ張られ、吊荷Wを0度~90度の範囲で鉛直方向に回転させることができる。また、吊天秤30によりメインフック12とサブワイヤロープ16の距離を一定に保つことで、鉛直方向の吊荷Wの回転時にメインフック12とサブワイヤロープ16が干渉するのを防ぐことができる。
【0041】
次に、
図9を用いて、吊荷Wを水平方向に回転させる動作について説明する。なお、
図9(A)に示す状態を初期状態とする。
【0042】
吊荷回転装置20は、リモコン80から送られる制御信号に基づいて、プロペラ44を稼働させ、吊荷Wが水平方向に回転するトルクを発生させる。吊荷回転装置20は、回転部材42がベアリング57を介してプレート41に接続されている。これにより、
図9(B)に示すように、吊荷回転装置20は、プレート41に対して回転部材42が水平方向に回転する。吊荷回転装置20は、水平方向の回転によって生じる可動ロープ71のねじれを、ベアリング63により解消し、サブワイヤロープ16がメインフック12に絡みつくのを防いでいる。また、吊荷回転装置20は、プレート41よりも上側の位置関係が変化しないため、吊荷Wを水平方向に回転させる動作と吊荷Wを鉛直方向に回転させる動作を両立することができる。
【0043】
以上のように構成される吊荷回転装置20によれば、吊荷Wを水平方向及び鉛直方向に回転させることができる。また、一つの装置や吊具(メインフック12とサブフック17)で吊荷Wを水平方向及び鉛直方向に回転させることができる。更に、吊荷Wを鉛直方向及び水平方向に同時に回転させることができる。従って、吊荷Wを回転させる作業の効率を向上できる。加えて、介錯ロープや共吊りによって吊荷Wを回転させるよりも、安全に作業を行うことができる。加えて、吊荷Wを鉛直方向に回転させるための動力源を用いていないため、装置が軽量となる。
【0044】
次に、
図10から
図13を用いて、第二実施形態に係る吊荷回転装置21について説明する。なお、以下においては、第一実施形態に係る吊荷回転装置20の説明で用いた名称と符号を用いることで、同じものを指すこととする。また、第一実施形態に係る吊荷回転装置20に対して相違する部分を中心に説明する。なお、
図11(A)は、回転装置本体90の正面断面図を示している。また、
図11(B)は、回転装置本体90の側面断面図を示している。
図11においては、吊ロープ74を省略している。本実施形態において、可動ロープ77(第一ロープ)は、吊ロープ73、ベアリング114、フレーム92、ピン102を介して、サブフック17と吊荷Wの一端を接続している。
【0045】
図10及び
図11に示すように、回転装置本体90は、吊ロープ74を介して吊天秤30に接続され、フレーム91(第一フレーム)、フレーム92(第二フレーム)、フレーム93、シーブ94(第一シーブ)、シーブ95(第二シーブ)、シーブ96(第三シーブ)、シーブ97(第四シーブ)、シーブ98、シーブ99、シーブ100、シーブ101を有する。シーブ94~101は、それぞれピン102~109に設けられている。
【0046】
フレーム91は、シーブ94~97が設けられる上側フレーム110と、シーブ98とシーブ99が設けられる下側フレーム111を有する。フレーム92は、上側フレーム110の内部において、スライドレール112を介して鉛直方向に摺動可能に設けられている。フレーム93は、上側フレーム110の上端において、ベアリング113を介して鉛直方向を軸として回転可能に接続されている。
【0047】
回転装置本体90は、平面視中央に上下方向に貫通する開口部116が設けられている。開口部116は、フレーム93の上部において吊ロープ73が挿通される穴と、下側フレーム111において可動ロープ77と可動ロープ78(第二ロープ)が挿通される穴と、回転装置本体90の内部の空間と、を含んで構成される。回転装置本体90は、プロペラ44により開口部116を軸として右回転及び左回転に自在に回転することができる。
【0048】
ピン102は、ピン103の上方において、両端部がフレーム92に接続されている。ピン104は、ピン105の上方において、両端部が上側フレーム110に接続されている。ピン103とピン105は、互いに水平方向に並んで、ピン103の両端部が上側フレーム110に接続され、ピン105の両端部がフレーム92に接続されている。ピン106とピン107は、互いに水平方向に並んで、両端部が下側フレーム111に接続されている。ピン108とピン109は、互いに水平方向に並んで、両端部がフレーム93に接続されている。
【0049】
ピン102には、n枚(nは任意の数)のシーブ94が設けられ、ピン103には、2n枚のシーブ95が設けられ、ピン104には、n枚のシーブ96が設けられ、ピン105には、n-1枚のシーブ97が設けられている。ロープの掛け数は、シーブ94が2n+1本掛け、シーブ95が2n本掛け、シーブ96が2n本掛け、シーブ97が2n-1本掛けとなっている。ピン106には、1枚のシーブ98が設けられ、ピン107には、1枚のシーブ99が設けられ、ピン108には、1枚のシーブ100が設けられ、ピン109には、1枚のシーブ101が設けられている。
【0050】
可動ロープ77は、一方の端部がピン102に接続されている。また、可動ロープ77は、シーブ94とシーブ95に交互に掛け回され、シーブ98に掛け回されたあと、他方の端部が吊荷Wの一端に接続されている。可動ロープ78は、一方の端部がピン105に接続されている。また、可動ロープ78は、シーブ96とシーブ97に交互に掛け回され、シーブ99に掛け回されたあと、他方の端部が吊荷Wの他端に接続されている。吊ロープ73は、一方の端部がベアリング114を介してフレーム92に接続されている。また、吊ロープ73は、シーブ100とシーブ101の外周の溝で挟持され、吊ロープ73の他方の端部がサブフック17に接続されている。可動ロープ77と可動ロープ78は、フレーム92が上側フレーム110の底部と接触している状態で、吊荷Wが水平になる長さに設定されている。なお、トルク伝達部材115は、回転装置本体90の中央の下部に設けられている。トルク伝達部材115は、2つのシーブ(図示せず)を有し、その外周の溝で可動ロープ78を挟持している。トルク伝達部材115は、可動ロープ78に設けられているが、可動ロープ77に設けられてもよい。
【0051】
次に、
図12を用いて、吊荷Wを鉛直方向に回転させる動作について説明する。なお、
図12(A)に示す状態を初期状態とする。
【0052】
吊荷回転装置21は、吊荷Wが水平な状態において、サブフック17に接続された吊ロープ73をたるませ、メインフック12にのみ張力を発生させている。これにより、吊荷回転装置21は、フレーム92が上側フレーム110の底部と接触した状態で静止し、可動ロープ77の巻き入れ及び可動ロープ78の巻き出しが行われないため吊荷Wの水平を保つことができる。
図12(B)に示すように、吊荷回転装置21は、クレーン1がサブワイヤロープ16を巻き上げることにより、フレーム92が上側フレーム110の天井部と接触するまで上昇する。これにより、吊荷回転装置21は、シーブ94がシーブ95から離隔し、シーブ97がシーブ96に近接する。吊荷回転装置21は、可動ロープ77がシーブ94とシーブ95に巻き入れられ、可動ロープ78がシーブ96とシーブ97から巻き出される。これにより、吊荷回転装置21は、吊荷Wを0度~90度の範囲で鉛直方向に回転させることができる。
【0053】
次に、
図13を用いて、吊荷Wを水平方向に回転させる動作について説明する。なお、
図13(A)に示す状態を初期状態とする。
【0054】
吊荷回転装置21は、リモコン80から送られる制御信号に基づいて、プロペラ44を稼働させ、吊荷Wが水平方向に回転するトルクを発生させる。吊荷回転装置21は、フレーム91がベアリング113を介してフレーム93に接続されている。これにより、
図13(B)に示すように、吊荷回転装置21は、フレーム93に対してフレーム91が水平方向に回転する。吊荷回転装置21は、水平方向の回転によって生じる吊ロープ73のねじれを、ベアリング114により解消し、サブワイヤロープ16がメインフック12に絡みつくのを防いでいる。また、吊荷回転装置21は、フレーム93よりも上側の位置関係が変化しないため、吊荷Wを水平方向に回転させる動作と吊荷Wを鉛直方向に回転させる動作を両立することができる。
【0055】
以上のように構成される吊荷回転装置21によれば、可動ロープ77と可動ロープ78をシーブ94~97に掛け回すことで、吊荷回転装置21(吊ロープ75の上端)から吊荷Wまでの距離を短くすることができる。即ち、吊荷回転装置20と比較して、揚程(地面からの吊荷Wの高さ)を大きくすることができる。また、吊荷Wを鉛直方向に回転させるためのサブフック17のストロークを減少させることができる。加えて、シーブ94~97の枚数nを増加させることで、吊荷Wを鉛直方向に回転させる動作に必要なサブフック17のストロークを更に低減できる。
【0056】
以上、サブフック17で第一ロープを上方に引っ張ることにより吊荷Wを鉛直方向に回転させる実施形態について説明を行ったが、メインフック12とサブフック17を入れ替えて、メインフック12で第一ロープを上方に引っ張ることにより吊荷Wを鉛直方向に回転させる構成としてもよい。即ち、本願の技術的思想は、複数のフックを備えるクレーンに適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 クレーン
12 メインフック
17 サブフック
20 吊荷回転装置
21 吊荷回転装置
31 プレート(第一プレート)
32 プレート(第二プレート)
33 プレート(第三プレート)
34 シーブ(第五シーブ)
35 シーブ(第六シーブ)
40 回転装置本体
44 プロペラ(推力部)
48 トルク伝達部材
50 開口部
60 スイベルストッパ(接続部材)
61 ストッパ
62 接続ピン
63 ベアリング
64 回転部材
71 可動ロープ(第一ロープ)
72 吊ロープ(第二ロープ)
73 吊ロープ(第三ロープ)
75 吊ロープ(第四ロープ)
77 可動ロープ(第一ロープ)
78 可動ロープ(第二ロープ)
90 回転装置本体
91 フレーム(第一フレーム)
92 フレーム(第二フレーム)
94 シーブ(第一シーブ)
95 シーブ(第二シーブ)
96 シーブ(第三シーブ)
97 シーブ(第四シーブ)
115 トルク伝達部材
116 開口部
W 吊荷