IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中村 芳徳の特許一覧

特開2023-111791マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム
<>
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図1
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図2
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図3
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図4
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図5
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図6
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図7
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図8
  • 特開-マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111791
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61H 19/00 20060101AFI20230803BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230803BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20230803BHJP
【FI】
A61H19/00
G06F3/01 510
G06F3/0481
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022022477
(22)【出願日】2022-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】522061017
【氏名又は名称】中村 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 芳徳
【テーマコード(参考)】
4C074
5E555
【Fターム(参考)】
4C074AA01
4C074AA03
4C074AA04
4C074AA05
4C074BB10
4C074CC20
4C074GG20
4C074RR10
5E555AA16
5E555AA48
5E555AA76
5E555BA02
5E555BA08
5E555BA45
5E555BB02
5E555BB08
5E555BD01
5E555BD07
5E555BE17
5E555CA42
5E555CB64
5E555CB67
5E555CB69
5E555CC01
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】直接的なスキンシップに伴うリスクを抑制しつつ、直接的なスキンシップの満足度に近い満足度を与えるマッサージ施術の支援を提供する。
【解決手段】部屋Aに配置された施術対象となるユーザHm1と、部屋Aと異なる部屋Bに配置されたマッサージを施術する施術者Hm2によって行われるマッサージの施術を支援するマッサージ支援システム100である。マッサージ支援システム100は、部屋Aに配置され、ユーザHm1の身体の一部をマッサージするマッサージ駆動装置OT1と、部屋Aに配置され、マッサージ駆動装置OT1を制御する制御装置110と、部屋Bに配置され、マッサージ駆動装置OT1によるマッサージに関する駆動命令を受け付けるマッサージ入力装置IN2と、部屋Bに配置され、駆動命令を制御装置110に送信する制御装置120とを備える。制御装置110は、駆動命令に応じてマッサージ駆動装置OT1を駆動し、マッサージ駆動装置OT1にマッサージをさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置に配置された施術対象となるユーザと、前記第1位置と異なる第2位置に配置されたマッサージを施術する施術者によって行われるマッサージの施術を支援するマッサージ支援システムであって、
前記マッサージ支援システムは、
前記第1位置に配置され、前記ユーザの身体の一部をマッサージする駆動装置と、
前記第1位置に配置され、前記駆動装置を制御する第1制御装置と、
前記第2位置に配置され、前記駆動装置によるマッサージに関する駆動命令を受け付ける入力装置と、
前記第2位置に配置され、前記駆動命令を前記第1制御装置に送信する第2制御装置とを備え、
前記第1制御装置は、前記駆動命令に応じて前記駆動装置を駆動し、前記駆動装置にマッサージをさせる、マッサージ支援システム。
【請求項2】
前記第1位置に配置された第1マイクと、
前記第2位置に配置された第2マイクと、
前記第1位置に配置された第1スピーカーと、
前記第2位置に配置された第2スピーカーとをさらに備え、
前記第1制御装置は、前記第1マイクによって収音された前記ユーザの音声を前記第2制御装置に送信し、
前記第2制御装置は、前記第2マイクによって収音された前記施術者の音声を前記第1制御装置に送信し、
前記第1制御装置は、前記施術者の音声を前記第1スピーカーに出力させ、
前記第2制御装置は、前記ユーザの音声を前記第2スピーカーに出力させる、請求項1に記載のマッサージ支援装置。
【請求項3】
前記ユーザにVR空間を表示する第1表示装置と、
前記施術者に前記VR空間を表示する第2表示装置とをさらに備える、請求項1または請求項2に記載のマッサージ支援装置。
【請求項4】
前記駆動装置は、ヒータをさらに備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のマッサージ支援装置。
【請求項5】
前記第2位置に配置され、前記施術者の身体の一部の温度情報を検出する温度検出装置をさらに備え、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置に前記温度情報を送信し、
前記第1制御装置は、前記温度情報に基づいて前記ヒータを駆動させる、請求項4に記載のマッサージ支援装置。
【請求項6】
前記第1位置に配置され、マッサージの対象となる前記ユーザの身体の一部を撮像する第1カメラをさらに備え、
前記第1制御装置は、前記第1カメラによって撮像された第1画像を前記第2制御装置に送信し、
前記第2制御装置は、前記第1画像を前記施術者に表示する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のマッサージ支援装置。
【請求項7】
前記第1位置に配置され、前記ユーザの顔を撮像する第2カメラをさらに備え、
前記第1制御装置は、
前記第1前記第1カメラによって撮像された第2画像に前記ユーザの感情を表す感情情報を生成し、前記感情情報を前記第2制御装置に送信し、
前記第2画像を破棄し、
前記第2制御装置は、前記感情情報を前記施術者に報知する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のマッサージ支援装置。
【請求項8】
第1位置に配置され、施術対象となるユーザの身体の一部をマッサージするマッサージ駆動装置であって、
前記マッサージ駆動装置は、前記第1位置と異なる第2位置に配置された施術者から入力される駆動命令に基づいて駆動する、マッサージ駆動装置。
【請求項9】
第1位置に配置されるユーザの身体の一部に対してマッサージをするマッサージ駆動装置によるマッサージの施術を支援するプログラムであって、
前記第1位置と異なる第2位置に配置された施術者から入力される駆動命令を受信するステップと、
前記駆動命令に基づいて、前記マッサージ駆動装置を駆動させるステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マッサージ支援システム、マッサージ駆動装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間は、他の生物と比較して、強い社会性、協調性を有する生き物である。石器時代における狩猟や、産業革命に大きく貢献したマニュファクチュアも、数多の人間の協力、協調によって行われてきた。これにより、人間は、高度な文化を形成し、現代におけるデジタル社会を形成することに成功した。
【0003】
石器時代から、人間は、人間同士での緻密なコミュニケーションを取ることによって、このような社会性、協調性を構築してきたことは、改めて言うまでもない事実であろう。コミュニケーションの手段としては、たとえば、会話、握手、相手に自身の表情を見せること、抱き合うことを含む。また、より濃厚なコミュニケーションとして、接吻、マッサージ、性交渉などの濃厚接触も、コミュニケーションに含まれ得る。
【0004】
近年、テクノロジーの発展により、電話による会話、メール、インターネット上でのチャット、ビデオ通話、また、VRを用いたVR空間(メタバース)での通信が、上述の直接的なコミュニケーションの代替手段として用いられている。特許文献1(特開2021-073541号公報)には、ロボットハンドを用いたコミュニケーションについて開示されている。
【0005】
一方で、テクノロジーを用いたコミュニケーションのいずれも、直接会って、心を許した人間と肌を触れ合わせるスキンシップの満足感に匹敵するものではない。人間は、心を許した人間とスキンシップをすることでストレスを緩和させ、様々な苦難を乗り越えてきた。心を許した人間とのスキンシップがあったからこそ、現代におけるような高度な文明が形成されたといっても過言ではないだろう。つまり、人間という種の発展において、スキンシップは必要不可欠であったと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特開2021-073541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、直接的なスキンシップは、リスクを含む。たとえば、2020年初頭に発見されたコロナウィルスの騒動に見られるように、ウィルスの感染リスクを抑制するため、直接的なスキンシップは制限された。
【0007】
さらに、リスクは、ウィルスの感染だけではないだろう。たとえば、直接的なスキンシップを許したものの、スキンシップを取っている相手から予期しない暴行を受けてしまうリスクも考えられる。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、直接的なスキンシップに伴うリスクを抑制しつつ、直接的なスキンシップの満足度に近い満足度を与えるマッサージ施術の支援を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1位置に配置された施術対象となるユーザと、第1位置と異なる第2位置に配置されたマッサージを施術する施術者によって行われるマッサージの施術を支援するマッサージ支援システムである。マッサージ支援システムは、第1位置に配置され、ユーザの身体の一部をマッサージする駆動装置と、第1位置に配置され、駆動装置を制御する第1制御装置と、第2位置に配置され、駆動装置によるマッサージに関する駆動命令を受け付ける入力装置と、第2位置に配置され、駆動命令を第1制御装置に送信する第2制御装置とを備える。第1制御装置は、駆動命令に応じて駆動装置を駆動し、駆動装置にマッサージをさせる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、直接的なスキンシップに伴うリスクを抑制しつつ、直接的なスキンシップの満足度に近い満足度を与えるマッサージ施術の支援を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1におけるマッサージ支援システム100の構成を示す図である。
図2】マッサージ駆動装置と、マッサージ入力装置との連動を説明するための図である。
図3】VR空間について説明するための図である。
図4】VR空間におけるユーザの視点を説明するための図である。
図5】VR空間における施術者の視点を説明するための図である。
図6】実施の形態2におけるマッサージ支援システムの構成を説明するための図である。
図7】実施の形態2におけるマッサージ駆動装置の操作を説明するための図である。
図8】施術者側の制御装置によって実行されるプログラムの処理手順を示すフローチャートである。
図9】ユーザ側の制御装置によって実行されるプログラムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1におけるマッサージ支援システム100の構成を示す図である。マッサージ支援システム100は、部屋Aに居るユーザHm1に対するマッサージの施術を支援する。すなわち、ユーザHm1は、マッサージ提供を受けるものである。一方で、部屋Bにいる施術者Bは、ユーザHm1に対して、マッサージを提供する者である。部屋Aと部屋Bとは異なる部屋である。部屋Aと部屋Bとは、離れた位置に配置される。実施の形態1においては、部屋Aと部屋Bとは、たとえば、数キロメートル以上離れた遠隔の地に配置されている。
【0013】
なお、部屋Aと部屋Bとの距離は、数キロメートルに限られず、たとえば、部屋Aは、北極にあり、部屋Bは、南極にあってもよい。もしくは、部屋Aは、地球にあり、部屋Bは、火星にあってもよい。また、同一ビル内の隣同士の部屋であってもよい。
【0014】
図1に示されるように、マッサージ支援システム100は、マイクMK1と、スピーカーSP1と、スマートグラスSG1と、カメラCM1,CM2と、マッサージ駆動装置OT1と、制御装置110と、マイクMK2と、スピーカーSP2と、スマートグラスSG2と、マッサージ入力装置IN2と、制御装置120とを含む。
【0015】
図1に示されるように、マイクMK1と、スピーカーSP1と、スマートグラスSG1と、カメラCM1,CM2と、マッサージ駆動装置OT1と、制御装置110とは、部屋Aに配置される。また、マイクMK2と、スピーカーSP2と、スマートグラスSG2と、マッサージ入力装置IN2と、制御装置120とは、部屋Bに配置される。
【0016】
制御装置110は、マイクMK1と、スピーカーSP1、マッサージ駆動装置OT1と電気的に接続されている。また、制御装置110は、インターネット10と接続されている。制御装置110と各構成との接続方法は、有線でもよいし、無線であってもよい。
【0017】
マイクMK1は、ユーザHm1の発する音声を収音し、デジタル形式に変換して制御装置110へと送信する。すなわち、マイクMK1は、A/D変換器を含む。スピーカーSP1は、ユーザHm1に対して、音声、音楽などを発する。スマートグラスSG1は、ユーザHm1にVR空間を表現した画像を表示する。スマートグラスは、「VRヘッドセット」とも称される。
【0018】
スピーカーSP1は、ユーザHm1の耳に直接装着する形式が好ましい。これにより、マッサージ支援システム100において、ユーザのVR空間への没入感を高めることができる。VR空間は、メタバースとも称される。また、マイクMK1、スピーカーSP1、スマートグラスSG1の全ては、一体となったヘッドセットであることが好ましい。これにより、マッサージ支援システム100における部品点数を少なくすることができる。
【0019】
制御装置110は、マイクMK1、スピーカーSP1、スマートグラスSG1を用いたVR空間の表示処理、マッサージ駆動装置OT1の駆動処理を行う。より具体的には、制御装置110は、制御装置120からインターネットを介して、マッサージ駆動装置OT1の駆動命令を受け付け、当該駆動命令に従って、マッサージ駆動装置OT1を駆動させる。
【0020】
実施の形態1におけるマッサージ駆動装置OT1は、ロボットハンドである。実施の形態1におけるマッサージ駆動装置OT1は、たとえば、特開2021-073541号公報に示されるようなロボットハンドである。ユーザHm1は、当該ロボットハンドにユーザHm1の身体の一部を接触させて、マッサージの提供を受ける。実施の形態1では、ユーザHm1は、ロボットハンドにユーザHm1の手Hd1を接触させている。より具体的には、ユーザHm1は、ユーザHm1の人差し指を、ロボットハンドであるマッサージ駆動装置OT1に握らせている。これにより、ロボットハンドがユーザHm1の人差し指に対して、種々多様なマッサージを施して、ユーザHm1の人差し指にマッサージ施術がなされる。これにより、ユーザHm1は、快楽を得ることができる。なお、ロボットハンドに、接触させるユーザHm1の身体の一部は、人差し指に限られない。マッサージの対象となるユーザHm1の身体の一部は、たとえば、自身の肩、背中、足、臀部、頭、こめかみ、耳、口内、手のひら、足の裏、ふくらはぎ、生殖器を含む。
【0021】
実施の形態1では、カメラCM1は、ロボットハンドOT1およびユーザHm1の手Hd1を撮像する。すなわち、カメラCM1は、マッサージの施術が適切に行われているか否かを施術者Hm2が判断するための画像を撮像する。カメラCM2は、ユーザHm1の顔を撮像する。カメラCM2は、マッサージの施術の結果が適切か否かをユーザHM1の表情から判断するための画像を撮像する。
【0022】
制御装置110は、カメラCM1によって撮像された画像を、インターネットを介して、制御装置120へと送信する。制御装置110は、カメラCM2によって撮像された顔を示す画像から感情を示すデータを取得する。たとえば、制御装置110は、人工知能を用いてユーザHm1の表情からユーザHm1の感情を示すデータを取得する。制御装置110は、ユーザHm1の顔画像を破棄し、取得した感情を示すデータだけを制御装置120へと送信する。これにより、マッサージ支援システム100は、ユーザHm1を特定可能な個人情報の漏洩を抑制しつつ、ユーザHm1の感情を示すデータを施術者Hm2へと送信することができる。
【0023】
部屋Bにおいて、施術者Hm2は、マッサージ入力装置IN2を用いて、ロボットハンドであるマッサージ駆動装置OT1に対して、駆動命令を入力する。施術者Hm2には、ユーザHm1と同様に、スマートグラスSG2を用いて、VR空間を表現する画像が表示されている。また、マイクMk2、施術者Hm2の発する音声を収音し、スピーカーSP2は、施術者Hm2に対して、音声、音楽を提供する。スピーカーSP2は、ユーザHm1が発した音声を発し得る。
【0024】
制御装置120は、マイクMK2と、スピーカーSP2、マッサージ入力装置IN2と、カメラCM21と、電気的に接続されている。また、制御装置120は、インターネット10と接続されている。制御装置120と各構成との接続方法は、有線でもよいし、無線であってもよい。
【0025】
マッサージ入力装置IN2は、ロボットハンドであるマッサージ駆動装置OT1と連動するグローブである。図2は、マッサージ駆動装置OT1と、マッサージ入力装置IN2との連動を説明するための図である。
【0026】
実施の形態1においては、部屋Aに設置されているグローブであるマッサージ入力装置IN2が感知した施術者Hm2の手の動作そのものが、駆動命令となる。すなわち、図2の上段に示されるように、マッサージ入力装置IN2によって、施術者Hm2の手が拳を握る動きをするとき、制御装置120は、拳を握る動きを駆動命令として制御装置110へ送信する。拳を握る動きとは、じゃんけんで使用される、いわゆるグーチョキパーのうちのグーである。
【0027】
制御装置110は、受信した駆動命令に基づいて、マッサージ駆動装置OT1に拳を握る動きをさせることができる。これにより、ロボットハンドによって握りこまれたユーザHm1の人差し指に対して、さらに、圧力を与えることができる。ユーザHm1は、快感を得ることができる。
【0028】
さらに、図2の中段に示されるように、マッサージ入力装置IN2によって、施術者Hm2の手が開いた動きをするとき、制御装置120は、手を開く動きを駆動命令として制御装置110へ送信する。
【0029】
制御装置110は、受信した駆動命令に基づいて、ロボットハンドであるマッサージ駆動装置OT1に手を開く動きをさせることができる。これにより、ロボットハンドの指先または手のひらで、ユーザHm1の人差し指を擦り合わせることができる。また、図2の下段に示されるように、ロボットハンドは、ユーザHm1の人差し指の先端を5本の指の各々で包み込むように刺激を与えることができる。これにより、ユーザHm1の人差し指の先端は、5本の指の各々から個別の接触を得ることができ、マッサージ支援100は、好適なマッサージの提供を支援できる。
【0030】
<VR空間におけるコミュニケーション>
以下、図3図5を用いて、VR空間におけるコミュニケーションを説明する。図3は、VR空間について説明するための図である。図3に示されるように、ユーザHm1と、施術者Hm2は、スマートグラスSG1,SG2を介して、同一のVR空間に没入している。すなわち、同様の3D空間が各々のスマートグラスに表示されている。
【0031】
図4は、VR空間におけるユーザHm1の視点を説明するための図である。図4に示されるように、ユーザHm1と施術者Hm2が体感するVR空間は、太陽や、草木が生い茂る野外である。これにより、マッサージ支援システム100は、現実世界では困難である野外でのマッサージ施術をユーザHm1に体感させることができる。図4には、ユーザHm1自身の手Hd1を模したモデルMd1が示されている。
【0032】
図4には、施術者Hm2のアバターAv2が示されている。アバターAv2は、施術者本人を表すものではなくてよい。実施の形態1においては、擬人化された猫のキャラクターである。なお、アバターAv2は、どのようなキャラクターであってもよく、たとえば、施術者Hm2の実際の性別と異なるものであってもよいし、年齢、人種なども様々なモデルが用いられ得る。さらに、アバターAv2は、現実世界では存在しない生物であってもよい。
【0033】
現実世界では存在しない生物とは、たとえば、動物の特徴を有する人間であったり、羽が生えた人間であったり、鋭角な耳を有する人間であったり、角が生えた人間であったり、ありとあらゆるファンタジーの世界をモチーフとするキャラクターが考えられ得る。
【0034】
実施の形態1においては、この施術者Hm2のアバターAv2は、ユーザHm1によって決められる。すなわち、マッサージ支援システム100では、施術が行われる前に事前に、ユーザHm1によって、アバターが選択される。ユーザHm1は、既存のアバターから選択してもよいし、自らアバターを作成してもよい。これにより、マッサージ支援システム100は、ユーザHm1の好みのアバターAv2による施術を提供することができる。
【0035】
このとき、ユーザHm1は、施術者Hm2から施術中に、どのような名前で呼ばれたいかを入力することができる。これにより、個人情報の漏洩を担保したまま、ユーザHm1の好みの名前で、ユーザHm1の好みのアバターAv2から声を掛けられながら、施術を受けることができる。
【0036】
図4に示されるように、実施の形態1におけるマッサージ支援システム100は、インタラクティブなコミュニケーションを提供する。図4には、施術者Hm2の発したセリフVc1,Vc3、ユーザHm1の発したセリフVc2,Vc4が示されている。これらのセリフVc1~Vc4は、スピーカーSP1,SP2によって出力される。図4では、説明のため、吹き出しとして文字が表示されているが、実際の実施形態において文字は表示されない。つまり、セリフVc1~Vc4は、本開示の説明のため、付されている。
【0037】
なお、マッサージ支援システム100がスピーカーSP1,SP2を有さない場合、図4のように、スマートグラスSG1,SG2によって表示される画面に、文字を表示してもよい。これにより、聴力に障害を有するユーザも本開示のシステムを楽しむことができる。
【0038】
具体的には、セリフVc1に示されるように、施術者Hm2は、ユーザHm1に対して「気持ちいいですか?もう少し強い方がいいですか?もう少し先端付近の方がいいですか?」と問いかける。これに対して、セリフVc2に示されるように、ユーザHm1は、施術者Hm2に対して「もっと根本付近を強くマッサージしてください!」と応答する。
【0039】
さらに、セリフVc3に示されるように、施術者Hm2は、ユーザHm1に対して「うふふ、仕方がないわね。」と応答し、ユーザHm1の要望に応えるように、グローブであるマッサージ入力装置IN2を操作する。なお、このとき、施術者Hm2は、ユーザHm1を焦らすため、ユーザHm1の要望に応えなくともよい。これに対して、セリフVc4に示されるように、ユーザHm1は、施術者Hm2に対して「ありがたき幸せ!」と応答する。
【0040】
このように、実施の形態1におけるマッサージ支援システム100は、ユーザHm1と、施術者Hm2とのインタラクティブなコミュニケーションに合わせて、施術者Hm2がマッサージ駆動装置OT1を操作することによって、現実のスキンシップの満足感に近いマッサージの提供を支援することができる。さらに、ユーザHm1と施術者Hm2とは、身体的な接触がないため、ウィルス、病原菌の感染のリスクを抑制することが可能であるとともに、施術者Hm2が、悪意を持ったユーザHm1に襲われるなどといったリスクをも抑制できる。
【0041】
図5は、VR空間における施術者Hm2の視点を説明するための図である。図5に示されるように、施術者Hm2は、ユーザHm1が体感するVR空間と同一のVR空間を体感する。図5には、施術者Hm2自身の手を模したモデルMd2が示されている。
【0042】
また、図5には、ユーザHm1を表すアバターAv1が表示されている。ユーザHm1は、アバターAv1についても、アバターAv2と同様に、あらかじめ設定することができる。すなわち、実施の形態1におけるマッサージ支援システム100は、ユーザHm1の自身の好みの容姿で、ユーザHm1に施術を提供することができる。さらに、ユーザHm1は、VR空間の設定されている場所を予め設定できる。
【0043】
たとえば、ユーザHm1は、野外ではなく、学校の体育館の裏、他のアバターが密集する電車内、ベッドルーム、温泉地などのVR空間が表現する場所を設定できる。これらのVR空間が表現する場所のモデルは、実際に現実世界に存在する場所を表すモデルであってもよい。たとえば、ユーザHm1が以前、実際に通学していた学校のモデルなどが選択され得る。これにより、マッサージ支援システム100は、現実世界ではありえない場所でのマッサージの提供をユーザHm1に体感させることができる。
【0044】
図5に示されるように、施術者Hm2の視点では、ウィンドウWd1,Wd2が表示されている。ウィンドウWd1には、カメラCM11が撮像する画像が表れている。すなわち、制御装置120は、インターネットを介して制御装置110から受信したカメラCM11が撮像する画像を施術者Hm2に表示する。これにより、施術者Hm2は、実際に、施術されている動画像を確認することができ、力の加減や、力を与える場所の調整などを行い易くなる。
【0045】
さらに、図5に示されるように、ウィンドウWd2には、カメラCM12の撮像した画像に基づいて生成された感情情報が表示されている。実施の形態1における例では、感情情報として、「快楽80%、楽しさ10%、興奮6%、愛しさ2%、切なさ2%」が表示されている。これにより、マッサージ支援システム100では、ユーザHm1の実際の顔を表示することなく、ユーザHm1がおおむね快感を得られていることを施術者Hm2に把握させることができる。
【0046】
感情情報およびユーザHm1の実際の表情は、アバターAv1の顔情報として表現されてもよい。すなわち、実施の形態1においては、快感が強い感情情報を受信した制御装置120は、快感の表情を表したアバターAv2の顔を表示している。これにより、マッサージ支援システム100は、文字情報だけではなく、直感的に、ユーザHm1の感情を示す情報を、施術者Hm2に提供することができる。
【0047】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、ロボットハンド、VR空間を用いたマッサージ支援システム100について説明した。しかしながら、ロボットハンド、VR空間を用いることなく、実際のスキンシップに近い満足感を与えるマッサージを支援することができる。
【0048】
実施の形態2では、ロボットハンドではなく、筒形状のマッサージ駆動装置OT1およびキーボードなどのマッサージ入力装置IN1、VR空間を表示するためのスマートグラスSG1,SG2ではなくディスプレイDs1,Ds2を備えるマッサージ支援システム200について説明する。なお、以下では、実施の形態2のマッサージ支援システム200が有する構成について、実施の形態1のマッサージ支援システム100と同一の構成については、説明を繰り返さない。
【0049】
図6は、実施の形態2におけるマッサージ支援システム200の構成を説明するための図である。マッサージ支援システム200は、筒形状のマッサージ駆動装置OT1を備える。マッサージ駆動装置OT1は、ユーザHm1の身体の一部を包み込む。マッサージ駆動装置OT1は、包み込んだユーザHm1の身体の一部に圧力をかけたり、擦ったりすることによって、マッサージを行う。また、ユーザHm1と、施術者Hm2は、ディスプレイによって互いのアバターを視認する。
【0050】
実施の形態2におけるマッサージ駆動装置OT1は、ヒータHt1を備える。ヒータHt1は、人肌程度の温度を出力可能である。これにより、マッサージ支援システム200は、ユーザHm1に実際に人間からマッサージされているような感覚を与えることができる。
【0051】
施術者Hm2は、マッサージ駆動装置OT1に対する駆動命令を、キーボード、マウスなどの入力装置IN2を用いて、制御装置110へと送信する。また、ユーザHm1と施術者Hm2とは、チャット機能を用いて、文字によるインタラクティブなコミュニケーションを行う。すなわち、ユーザHm1は、入力装置IN1に文字情報を入力し、施術者Hm2は、入力装置IN2に文字情報を入力する。
【0052】
すなわち、実施の形態1において説明したセリフVc1~Vc4に示されるコミュニケーションが実際の音声ではなく、文字だけを用いて行われる。これにより、ユーザHm1の音声に関する個人情報の漏洩を抑制することができ、また、話すことが得意ではないユーザHm1に対してもチャット機能によって円滑なコミュニケーションを促すことが可能となる。
【0053】
このようなチャット機能に行われるコミュニケーションの中で、施術者Hm2は、ユーザHm1の反応を見て、マッサージ駆動装置OT1を操作する。図7は、実施の形態2におけるマッサージ駆動装置OT1の操作を説明するための図である。
【0054】
図7の上段に示されるように、制御装置120は、筒形状のマッサージ駆動装置OT1の上部に対して圧力を高める命令Aを、施術者Hm2から受け付ける。制御装置120は、インターネットを介して、命令Aを制御装置110へと送信する。制御装置110は、命令Aを受信したことに応じて、マッサージ駆動装置OT1の上部の圧力を高めるように操作する。
【0055】
また、図7の下段に示されるように、制御装置120は、筒形状のマッサージ駆動装置OT1の下部に対して圧力を高める命令Bを、施術者Hm2から受け付ける。制御装置120は、インターネットを介して、命令Bを制御装置110へと送信する。制御装置110は、命令Bを受信したことに応じて、マッサージ駆動装置OT1の下部の圧力を高めるように操作する。
【0056】
このように、実施の形態2においても、チャット機能を用いて、インタラクティブなコミュニケーションを担保しつつ、マッサージ駆動装置OT1を施術者Hm2に操作させることによって、ユーザHm1は、あたかも施術者Hm2に実際に自身の身体の一部を触られているように感じることができる。これにより、マッサージ支援システム200においても、実際のスキンシップに近い満足感のマッサージを提供することができる。
【0057】
<処理手順>
図8は、施術者側の制御装置120によって実行されるプログラムの処理手順を示すフローチャートである。制御装置120は、マッサージ入力装置IN2から駆動命令を受信したか否か判断する。制御装置120は、駆動命令を受信した場合、制御装置110に駆動命令を出力する。
【0058】
図9は、ユーザ側の制御装置110によって実行されるプログラムの処理手順を示すフローチャートである。制御装置110は、制御装置120から駆動命令を受信したか否か判断する。制御装置110は、駆動命令を受信した場合、マッサージ駆動装置OT1に駆動命令を出力させる。
【0059】
[変形例1]
マッサージ支援システム200は、施術者Hm2の身体の一部が有する温度を検出する温度検出装置を含んでもよい。制御装置120は、温度検出装置から取得した温度情報を、制御装置110へと送信する。制御装置110は、当該温度情報に基づいて、ヒータHt1を駆動する。これにより、マッサージ支援システム200では、実際の施術者Hm2の温度を、ユーザHm1に伝えることができ、より現実に近いマッサージを提供することができる。
【0060】
[変形例2]
マッサージ駆動装置OT1は、筒形状ではなく、棒形状であってもよい。棒形状のマッサージ駆動装置OT1は、ユーザHm1の身体の一部に押し当てられたり、口などの身体が有する穴部に挿入されたりする。これにより、人体の内部からマッサージを施すことができる。
【0061】
[変形例3]
マッサージ駆動装置OT1は、実際の人間に行うことができない動作をしてもよい。たとえば、マッサージ駆動装置OT1は、小刻みに震えるバイブレーション機能を有していてもよい。これにより、より好適なマッサージを実現できる。
【0062】
[変形例4]
マッサージ支援システム300は、ユーザが、マッサージ入力装置IN2とは異なるマッサージ入力装置IN3を用いて、ロボットハンドであるマッサージ駆動装置OT1とは異なるマッサージ駆動装置OT2に対して、駆動命令を入力し、マッサージ駆動装置OT2を介して施術者Hm2の身体の一部をマッサージしたり、口などの身体が有する穴部に挿入されたりするように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 マッサージ支援システム、110,120 制御装置、OT1 マッサージ駆動装置、IN2 マッサージ入力装置、CM11,CM12,CM21 カメラ、MK1,MK2 マイク,SP1,SP2 スピーカー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9