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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111794
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】多用途床下換気孔装置。
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20230803BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20230803BHJP
   E04H 1/02 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/70 C
E04H1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022023306
(22)【出願日】2022-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】307020475
【氏名又は名称】丸山 佳代
(72)【発明者】
【氏名】丸山 芳之
【テーマコード(参考)】
2E001
2E025
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001FA21
2E025AA01
2E025AA12
2E139AA07
(57)【要約】
【課題】既存または新築の建物の基礎コンクリート部に円筒形を基盤とした床下換気孔装置を簡便かつ安価で設置し、洪水等の浸水防止、万一の浸水時の排水、消毒、乾燥等に活用でき、さらに、床下収納の外部からの出し入れ口、ペット飼育等に活用できる床下換気孔及び建物を提供する。
【解決手段】床下換気孔本体3、床下浸水防止部材4、固定用外周補助部材5からなるシンプルな構造で、簡便な取付け工事にて設置できる安価な床下浸水防止装置であって、床下浸水防止部材4等の浸水防止部材を床下換気孔本体3内から床下へ出し入れして、床下保管を可能とする床下換気孔装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎コンクリート部に設置の床下換気孔装置であって、
既存及び新築の建物基礎へ設置が可能な円筒形を基盤とする床下換気孔本体と、前記床下換気孔本体へ取り付けて建物への浸水を防止する床下換気孔浸水防止部材とからなる、建物基礎コンクリート部の床下換気孔からの浸水防止と、床下への物の出し入れと、浸水時の建物からの排水と、排水後の乾燥と、ペットの床下を使用した飼育と、のいずれか一つ以上に利用することができる機能を備えてあることを特徴とする床下換気孔装置。
【請求項2】
前記床下換気孔浸水防止部材を前記床下換気孔本体へ取り付ける機能を有する固定用外周補助部材を備え、前記床下換気孔浸水防止部材の外径を前記床下換気孔本体の内径より小さくして、前記床下換気孔浸水防止部材を前記床下換気孔本体内から床下へ出し入れすることができる機能を備えてあることを特徴とする請求項1に記載の床下換気孔装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の床下換気孔装置を適用した建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存及び新築の建物の基礎コンクリート部に簡便かつ安価に設置可能な円筒形からなる床下換気孔であって、同換気孔から建物内へ洪水等での浸水が予想される際は換気孔に蓋をして浸水を防止し、万が一に建物内へ浸水した際は蓋を取り外して排水し、消毒液貯留等による消毒後は送風機等による強制通風孔として床下の乾燥を促進し、また、床下へ物を収納する際は外部からの出し入れ口とし、さらに、猫等のペットを床下を使用して飼育する機能を有した多用途に活用できる床下換気孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでは、建物基礎コンクリート部の換気孔からの浸水を防止するために、「止水機能付き床下換気口部品(特許文献1参照)」で円形の止水機能付き床下換気口が提案されている。
また、発明者は、「浸水防止型建築物換気口(特許文献2参照)」により、円形の浸水防止型換気口を提案している。
一方、一昨年に、日本建築学会から、戸建て住宅を中心とした耐水性能の確立に向けた取り組むべき喫緊の課題において、建物への浸水防止対策の方向性等が提言されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4389109号
【特許文献2】特願2020-134215
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「提言 激甚化する水害への建築分野の取組むべき課題~戸建て住宅を中心として~(日本建築学会、2020年6月提言)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明については、明細書、図面に記載のとおり、発明品の構造上、部材の数が多く、部材の形がやや複雑であるなどのためコスト高が懸念される。また、既存建物への設置についての説明は、「発明の効果」で、「請求項5~9の発明は、新築時に設置するのが最適で、」と記載され、明細書には、既存建物へ設置する方法等は説明がされてなく、発明品の構造上、既存建物への後付けは技術的、コスト的に困難であると考えられる。
さらに、新築時の設置では、明細書に記載どおり、コンクリート打設には凹部を形成するため、型枠に工夫が必要となることなどから、技術的、コスト的に高いものが要求されるという課題がある。
特に、発明の構造上、換気口周囲の凹部の直径は換気口の直径より大きくなり、通常の基礎(45センチ程度の高さ)では、基礎強度の確保上、換気口の直径が大きすぎて、設置できる基礎が制約されることが課題であると思料する。
さらに、提案の円形の換気口では、その構造上、止水用の蓋部品を換気口本体から床下へ出し入れすることが不可能であり、止水用の蓋を紛失等しないための保管場所に課題がある。
【0006】
次に、特許文献2については、その構造上、既存建物への後付けは基礎コンクリート部にコア抜き工事等で円形孔を開け、円筒形の換気口本体部材を固着するのみで設置が可能である。
しかし、換気口装置の形状(図2参照)からして、新築時の基礎工事では、基礎の内側、外側に凹部があるため、特許文献1と同様、型枠内に固定してコンクリートを打設する場合は通常の基礎型枠では打設することができず、型枠に細工の工程を要するなど複雑な工程となり、また、ボイド管を用いた場合は上塗りで仕上がりを整える工事が必要となるなど、いずれもコスト高となることが課題である。
また、特許文献1同様に、浸水防止部材の外経が換気孔の内経より大きいため換気孔を通過せず、浸水防止部材を床下へ収納することができず、同部材を紛失等しないための保管方法に大きな課題がある。
【0007】
さらに、上記2つの特許文献の発明は、あくまで、洪水等の浸水を防止する目的での床下換気口に関する提案であって、浸水した場合の水害復旧への利用については一切説明がなく、浸水した場合の建物からの排水等水害復旧に活用することなどを目的とした発明ではない。
【0008】
一方、非特許文献1の提言では、「水害に耐える建築構造技術の開発」、「水害からの復旧性能の高い建築物の開発」等が喫緊の課題として挙げられているが、「水害に関する耐水性能についての取組みは未着手である。」旨、浸水対策、水害復旧対策上での床下換気孔に関する具体的な提案は示されていない。
【0009】
建物の浸水防止及び水害復旧にかかる装置の設置を普及促進するためには、設置費用のコストを下げることに尽きるものと思料する。
また、設置しても、浸水防止用の各部材を取り付けるべき箇所の近くに保管しておき、これら部材をいざ取り付ける際、直ちに、確実に取り付けられるようにしておくことが必要不可欠である。
【0010】
しかし、現状では、そもそもコスト面等の課題で床下浸水防止装置の設置が促進されず、また、設置されたとしても浸水防止部材等の保管場所が各建物によってまちまちであって、浸水発生予想の際に保管場所が分からないことや、部材の紛失、破損等で直ちに取り付けられないことが懸念される。
【0011】
本発明は、第一に、浸水防止型床下換気孔本体の形状を基礎内に固定しやすいシンプルな形状として、既存、新築の全建物を対象に、「簡便な工事で安価に導入できること」を実現した。
次に、「浸水防止部材を床下に保管できること」により、浸水防止部材等の保管場所を床下という共通場所にすることで、近隣住民或いは自治体職員等が不在等の家人に代わって、浸水防止部材等を屋外から取り出して、確実に取り付けることができるようにした。
第三に、浸水時の排水等の水害復旧へ活用できるよう、従来の特許文献1、2等が未提案である課題を解決し、さらに、ペット飼育に利用できることを提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決して上記大凡三つの目的を達成するための解決手段の一つは、床下換気孔本体を塩ビ管また同管と同じ円筒形、或いは円筒形を基盤としたシンプルなものとし、かつ、その部材数を減らし、既存及び新築建物へ簡便な設置工事で安価に導入できるものとした。
【0013】
もう一つの解決手段は、通常の床下換気時に床下換気孔本体へ取り付ける防鼠部材、または浸水予想時に取り付ける浸水防止部材と、床下換気孔本体の間に固定用外周補助部材を用いることとした。
これを用いることで、固定用外周補助部材の径の幅だけ、防鼠部材、浸水防止部材の外径が小さくなり、浸水防水部材等を換気孔本体から床下へ出し入れして、浸水防止部材等を床下で確実に保管、収納しておくことを可能としたことを特徴とする。
【0014】
本発明の概要を説明する。
本装置の本体部である、床下換気孔本体は塩ビ管または同管と同じ円筒形の金属、樹脂等で成型したものであって低コスト化を図ることができる。
同床下換気孔本体は、既存建物では、基礎部コンクリートにコア抜き工事等で貫通させた貫通孔に挿入して固着する。
【0015】
また、新築建物では、円筒形の床下換気孔本体をボイド管的に基礎型枠内に固定して、コンクリートを打設して基礎内に固着することができる。
ただし、ボイド管を使って孔を作り、その孔へ挿入して固着してもよい。
このように、既存、新築のいずれにしても、円筒形を基盤としたシンプルな構造であるため、簡便な工事、工程で安価に設置することが可能である。
なお、床下換気孔本体の内側に、防鼠部材、浸水防止部材を直接ネジ込み止め、または嵌め込み止め等で固定するためのネジ溝等を設けたものとして成形してもよいし、ネジ溝等を設けた別部材を成型し、同部材を円筒形部材へ接合し、一体のものとした床下換気孔本体としてもよい。
【0016】
本装置の防鼠部材、浸水防止部材については、床下換気孔本体へ直接ネジ込み止め、嵌め込み止め等で取り外しできるように直接固定してもよい。
ただし、この場合、防鼠部材、浸水防止部材は床下換気孔本体内(内径)を通過しないため床下換気孔本体から床下へ出し入れすることができず、床下で保管することができない。
【0017】
そこで、浸水防止部材等を床下換気孔本体から床下へ出し入れして、床下で保管するには、床下換気孔本体と、浸水防止部材、防鼠部材の間に、取り外しが可能なネジ込み止め等にて固定するための固定用外周補助部材を設ける。
この部材を設けることで、浸水防止部材等の外径を床下換気孔本体の内径より小さくすることができ、浸水防止部材等が床下換気孔本体を通過することが可能となって床下へ出し入れすることができる。
【0018】
以上のとおり、本発明は、水害対策上の課題とされているものの、これまでに当業者(建築・防災・行政関係)から提案されていない、既存または新築の全建物に簡便かつ安価に設置できる浸水防止機能を有する床下換気孔装置であって、加えて、上述のとおり、床下収納出し入れ口等の多用途に活用することが可能であり、さらに、固定用外周補助部材を備えることで、浸水防止部材等を床下に収納しておくことを可能とし、浸水予想時に直ちに浸水防止対策を確実に実施できるものを実現した。
【0019】
本発明について、請求項1から順に説明する。
請求項1に記載の発明は、基礎コンクリート部に設置の円筒形を基盤とした床下換気孔装置であって、防鼠機能、浸水防止機能、建物床下への収納出し入れ口機能、浸水時の排水機能、排水後に消毒用液を貯留等して消毒し、その後に送風機等で強制乾燥する際の通風孔として、さらに猫等のペット出入口、ペットの床下飼育の際の通風、採光等の多用途に活用することができ、既存及び新築の全建物に簡便かつ安価に設置できる床下換気孔を提供するものである。
【0020】
現状では、既存、新築の建物へ簡便な工事で、かつ安価に設置できる、床下換気孔、床下収納用孔、排水用孔、通風用孔に利用できる装置に関する提案、また、このような装置を用いた水害復旧対策、床下でのペット飼育に関する提案はなされていないものと思料する。
【0021】
本発明は、このような現状において、建物への浸水防止、浸水時の復旧に関する機能と防水部材の収納等を既存、新築の全建物に適用できるようにしたものである。
この発明の各部材は、耐水性、耐久性を有する、金属、樹脂等からなる成形品とする。また、各部材の固着は接着材を使用するなどし、固定はネジ込み止め、嵌め込み止め等の従来の固定技術による。
【0022】
請求項2に記載の発明は、浸水防止部材、防鼠部材を換気孔本体内を通過させて、床下へ出し入れして、床下で確実に保管、収納しておくためのものである。
その方法として、床下換気孔本体へ、浸水防止部材等を固定する際に、浸水防止部材等の外周に取り付ける固定用外周補助部材を備えたものである。
【0023】
従来から提供されている円筒形の浸水防止型床下換気孔について、浸水防止部材等を床下へ保管、収納しておく機能は提案されていなかった。
本発明が提供する機能により、浸水防止部材等を紛失することなく、水害発生予想時に家人以外によっても確実に取り付けることができるものとなる。
【0024】
なお、固定用外周補助部材の材質は、各部材と同じく、耐水性、耐久性を有する、金属、樹脂等からなる成形品とし、浸水防止部材等との固定はネジ込み止め、嵌め込み止め等の取り外し可能な従来の固定技術による。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の床下換気孔装置を用いた、建物の床下換気、浸水防止、床下収納、浸水時の排水、排水後の乾燥、ペットの床下を使用した飼育に関する機能のうち、一つ以上の機能を提供する建物に関するものである。
【0026】
以上のとおり、請求項1~3の発明の基本となるものは、基礎コンクリート部の貫通孔に塩ビ管または同管と同じ円筒形を基盤とした金属、樹脂等からなる低コストで成形した装置を、簡便な設置工事で安価に設置、導入できる床下換気孔本体のシンプルな形状にある。
【0027】
さらに、床下換気孔本体、防鼠部材、浸水防止部材、固定用外周補助部材をそれぞれ固定する方法は、ネジ込み止め等の従来の固定方法とすることで、低コストを実現するものである。このように固定方法が特殊、特別なものでない理由は、本装置が有効に活用できる浸水深を地面から1.5メートル程度、床上でいえば1メートル程度までのものと想定しているためであって、各部材にかかる水圧がさほど大きなものでないことからである。
【0028】
なお、洪水等での浸水は床下換気孔に何ら浸水防止対策をしていない場合は、数分程度で浸水が床下全体から床上に及ぶとされているが、床下換気孔からにじみ入る程度の浸水であれば、さほどの量が浸水しないものと考えられる。
しかし、できる限りの浸水防止を図るため、各部材の固定部分にパッキンを使用し、各部材の固定の密着度を高め、水密対策を施しておくことが望ましい。
【0029】
このように、本発明は、従来から提案されている基礎コンクリート部の浸水防止型床下換気孔について、その構造、固定方法をシンプルなものに改善して、簡便な工事で施工でき、かつ安価に設置できることを実現した。
【0030】
また、浸水防止部材等の外径を小さくするため、同部材等を床下換気孔本体へ固定するための固定用外周補助部材を発明したことで、浸水防止部材等を床下に保管、収納でき、保管場所の確保により紛失防止を図り、確実な浸水防止対策を可能とした。
【0031】
さらに、従来から提案されていなかった、床下換気孔を、床下への物の出し入れ口、浸水時の排水孔、排水後の消毒液貯留等による消毒後の送風機、換気扇等を使用しての強制乾燥時の換気孔として水害復旧対策への活用、また、猫等ペットの屋内外の出入口、或いは床下をペット飼育場所の一部とした場合の通風、採光確保の目的にも活用できる発明を実現させた。
【発明の効果】
【0032】
以上の説明どおり、本装置の構造上から、既存、新築を問わず全建物に簡便な工事によって低コストで設置できるため、これまでに浸水被害に遭った地域、浸水被害が懸念される地域等においては、既存、新築の建物に設置することで浸水防止、万一の場合の水害復旧対策への効果が期待できる。
また、浸水防止部材等の床下への収納、ペット飼育にも活用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】 建物基礎部を上から見た断面概略図である。
図2】 建物基礎部を横から見た概略図である。
図3】 建物基礎部に床下換気孔本体を固着した断面概略図である。
図4】 床下換気孔装置全体を建物外側から見た概略図である。
図5】 床下換気孔装置全体を上から見た断面概略図である。
図6】 同上の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態、本発明の技術的範囲については、以下の実施形態及び図示に限定されるものではない。
まず、請求項1に記載の発明について説明する。
【0035】
図1は、基礎1に円筒形の基礎貫通孔2を設けている概略図である。既存建物ではコア抜き工事等で円筒孔をくり抜き、新築建物では床下換気孔本体3を基礎型枠にボイド管的に固定し、通常のコンクリート打設にて設けることができる。なお、ボイド管を用いた孔に床下換気孔本体3を挿入し固着してもよい。
【0036】
図2では、設置の位置を基礎1の高さの中程としているが、設置の位置は、基礎の状態と建物周囲の状態等から基礎強度等を考慮して適当な位置に設置する。
換気口の直径、設置数は、基礎の種類(布基礎か、べた基礎か)、或いは基礎パッキン工法による換気方法等と併用して行うか、本装置単独で行うかなどによって決定すればよい。
【0037】
また、設置の高さ位置を基礎地面と接する低い位置としてもよい。この場合は、浸水した水を、直接、流出させ比較的容易に排水することが可能である。
ただし、この場合、平時の雨水浸入対策、防虫侵入対策を十分に行う必要がある。
【0038】
なお、床下換気孔本体が基礎地面に接しない場合の排水は、排水用ホースを通す孔として利用する。
【0039】
図3は、図2と同じく基礎1の中程の高さに床下換気孔本体3設置していることを示している。
図示では、床下換気孔本体3が基礎1の幅全体にわたって固着している。このようにすれば、新築時のコンクリート打設では、床下換気孔本体3がボイド管的となり、特別な型枠や工程を要さず、通常のコンクリート打設工事で床下換気孔本体3を基礎内に固着することができる。
【0040】
また、図示では、床下換気孔本体3の一部である床下換気孔本体別材3aが、基礎1の外表面より突出している。
この突出している部分は、新築の建物へボイド管的に設置の場合は、基礎内に収まっている床下換気孔本体3部分とは別に成形した部材を型枠を外した後で、基礎内に収まっている床下換気孔本体3の内側へ接着材等で固着するのがよい。
【0041】
一方、既存建物への設置及び新築建物へのボイド管で作った孔への設置では、床下換気孔本体3は、コア抜き工事等で作った基礎貫通孔2へ、基礎1から突出している部分と基礎内に収まっている部分を床下換気孔本体3として一体として成形したものを挿入して固着してもよい。さらに、基礎内に収まっている部分は、基礎中程までに短くしたものでもよい。
【0042】
なお、新築建物へボイド管的に設置の場合、図示していないが、床下換気孔本体3へ内側から外側へ向けて、ネジ、ボルト等を数カ所へ固定しておけば、ネジ等の先端部分がコンクリート内に埋設され、基礎との固着が一層強固にできる。
【0043】
一方、既存建物への設置、新築建物基礎へボイド管を作った貫通孔へ設置する場合も、床下換気孔本体3の内側から、ネジ等でコンクリートへ数カ所においてネジ止め等で固定すればよい。
ただし、新築、既存のいずれの場合も、ネジ止め等をしなくても、図3のとおり、床下換気孔本体3(3a)の部分を、基礎1の外表面より突出させ、かつ、貫通孔2より床下換気孔本体3(3a)の突出部分の外径を大きなものとすることで、浸水深が地面から1.5メートル程度までの浸水時の水圧を受けても床下換気孔本体3が基礎1内へ押し込まれることを防ぐことは可能である。
【0044】
本装置は、べた基礎の場合は、基礎パッキン工法等での床下換気方法と併用した補助的な床下換気装置としてもよい。この場合は、建物全体で1箇所或いは数カ所の設置でもよい。
なお、布基礎の場合は、換気口一箇所の必要面積(300平方センチ以上)を確保するためには、本装置では直径20センチ弱以上のものが必要となるため、基礎の強度確保上、本装置単独での設置は難しいことが考えられ、長方形型床下換気口の併用品として、排水等の水害復旧対策等の目的で、適当な1、2箇所に設置しておくことも考えられる。
【0045】
本装置の各部材は、耐水性、耐久性を有する、金属、樹脂等からなる成形品とする。また、各部材の固着は接着材、ネジ止め等を使用するなどとし、固定はネジ込み止め、嵌め込み止め等の従来の固定技術による。
なお、床下浸水防止部材4の浸水に接する部分の材質、厚みは、最低でも、地面から1.5メートル程度までの浸水深の水圧に耐えられるものとする。
【0046】
床下換気孔本体3の直径は、べた基礎建物に設置の場合は、数センチ以上であればよく、基礎全体の状態(高さ、幅、長さ、建物内部の基礎配置状況)等から基礎の強度を総合的に判断し基礎の強度を確保できる適切なものとする。
なお、収納出し入れ口として活用する場合は、直径15センチ程度とすれば物の出し入れがしやすくなる。
【0047】
請求項2に記載の発明について説明する。
図4、5、6で示したとおり、床下浸水防止部材4、床下防鼠部材を床下換気孔本体3へ取り付ける際に、固定用外周補助部材5を間に入れて取り付けるものである。
固定用外周補助部材5を間に入れることで、床下浸水防止部材4等の外径が固定用外周補助部材5の経の分相当が小さくなり、床下換気孔本体3の内径より小さくなって、床下換気孔本体3の内部を通過して、床下への出し入れが可能となる。
【0048】
なお、各部材の固定は、ネジ込み止め等の従来の技術によるが、ネジ込み止めとした場合は、一方に逆ネジを用いてもよい。
【0049】
図5は、各部材(3~5)を基礎1に設置した図である。
図示の6は、床下浸水防止部材4、固定用外周補助部材5の突起部分である。このような突起部分等を設けておけば同部材の取り付け、取り外しに役立つものとなるが、同部材は円形であるため、突起部分6を設置せず、同部材の外周に凹凸の滑り止めのみを施すだけでも使いやすいものとなる。
【0050】
この図示の実施例は、床下換気孔本体3が基礎1の外側へ突出しているため、既存建物または新築時にボイド管で作った孔への設置に適するものである。
また、図示のように、床下換気孔本体3の基礎1の外側へ突出している部分にネジ込み止め用の溝等を設けた床下換気孔本体別材3aを接合してもよいし、同別部材3aと一体形に成形した床下換気孔本体3として設置してもよい。
【0051】
また、図示していないが、床下浸水防止部材4の、固定用外周補助部材5に固定した部分の外側となる部分の外径を大きくすれば、水圧で固定用外周補助部材5内に押し込まれることを防止できる(図6参照)。
【0052】
なお、固定用外周補助部材5と床下換気孔本体3との関係、形状についても上記0051と同じである。
【0053】
図6は、床下換気孔本体3が基礎1の幅より突出していないため、既存及び新築の建物の何れへの設置にも適するものである。
図示の床下換気孔本体3は、内部に、固定用外周補助部材5をネジ込み止め等するための溝、嵌め込み部等を設けたものである。
ただし、嵌め込み止めで、嵌め込み状態が緩くない場合は、あえて、嵌め込み部分の加工を施さなくとも、浸水時の水圧で床下換気孔本体3から外れることはないものと思料する。
また、図示の各部材のネジ込み止め等での固定部分の外側の部分の形状は、0051、0052で説明したとおり、水圧に強い形状とするのがよい。
【0054】
請求項3に記載の発明について説明する。
図示はないが、床下換気孔装置を有効に活用した建物について、以下のことについて提案する。
【0055】
先ず、水害復旧の浸水の排水方法に関する提案については、上記0037、0038のとおりである。
【0056】
次に、復旧時の消毒液を貯留しての消毒方法は、浸水した水を排出した後、壁、柱、床等の浸水部分全体を消毒液で洗浄するほか、床下換気孔本体3に床下換気孔浸水防止部材4で蓋をして、床下に消毒液を貯留すれば長時間にわたっての消毒が可能である。その後、再度、洗浄を行うことで十分な消毒、洗浄が可能となり、雑菌の繁殖を抑え水害復旧対策が効果的に行える。なお、排水が効率的となるよう、べた基礎では床下地面コンクリートに排水に考慮した勾配を設けておくのがよい。
【0057】
次に、復旧時の建物乾燥への活用は、洗浄後に、送風機、換気扇等を用いて、床下換気孔本体から建物(主に床下)への入りと出の送風を行い、強制換気をすることで、早期に建物を乾燥することができ、建物の傷みを抑えることにつながる。
【0058】
次に、ペット飼育への利用については、室内飼いの猫等が室内の床下収納庫の蓋部分、床下点検口、専用出入口等から床下へ降りられるようにし、床下換気孔本体3を通って室外(中庭、室外設置のケージ等)へ出入りすることに利用できる。
この場合、床下換気孔本体3の室外、室内の両側に、内径を大きめにした固定用外周補助部材5を取り付けておけば、ペットが床下換気孔本体3内で頭部、胴体部が挟まる危険性を下げることができる。万一挟まった場合は、固定用外周補助部材5とともに引き出すことが可能となる。
なお、床下を飼育場所の一部とはするものの、室外への出入り口としない場合などは、床下換気孔本体3の室内側に防鼠部材を取り付け、通風孔、採光孔として利用することができる。
このように、従来から、ペットを床下飼育する設備は提案されていないものと思料するが、掃除はお掃除ロボットで、行動観察は動画カメラで行うことなどで床下をペット飼育に使うことは可能であると思料する。
さらに、飼育する範囲を柵、ネット等で区切って限定した場合は、その部分等の床をスキップフロアで高くし、床下高を上げて、床下換気孔で、通風、採光を確保するなど適切な環境を作れば、室外、室内に次ぐ第三の飼育場所とすることができるものと考える。
【0059】
本発明の基本は、浸水防止及び水害復旧促進機能を有する床下換気孔を、シンプルな構造とし、既存、新築を問わず、簡便な工事で安価に導入できるものとしたことにある。
加えて、床下への外部からの物の出し入れ口として、浸水防止部材の保管、さらにペット飼育等に活用することなど、床下を多用途に有効活用することにある。
本発明は、上述した実施形態に限定されず、各部材の材質、固着方法、固定方法等は特許請求の範囲に記載の範囲で種々の変更ができる。
本発明は、特許請求の範囲において、従来の提案と組み合わせるなどして、建物浸水防止、水害復旧対策、ペット飼育等に利用する装置として構成するのがよい。
【符号の説明】
【0060】
1 基礎
2 基礎貫通孔
3 床下換気孔本体
3a床下換気孔本体別材
4 床下換気孔浸水防止部材・床下換気孔防鼠部材
5 固定用外周補助部材
6 突起部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6