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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111814
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】分散剤およびセラミックススラリー
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/44 20220101AFI20230803BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230803BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
C09K23/44
C09K3/00 103P
C04B35/622
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133633
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2022013606
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】小室 晴香
(72)【発明者】
【氏名】本田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 文隆
(57)【要約】
【課題】分散剤濃度が変化しても、粘度および曳糸性の変化が少ないセラミックススラリーを形成できる分散剤を提供すること。
【解決手段】式(1):RO-(AO)-CO-R-COOH(式(1)において、Rは、炭素数1~10の炭化水素基であり、AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、mは、AOの平均付加モル数で、1~20の数であり、およびRは、単結合、または炭素数1~10の2価の炭化水素基である。)で示される化合物である分散剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
O-(AO)-CO-R-COOH ・・・ (1)
(式(1)において、
は、炭素数1~10の炭化水素基であり、
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数で、1~20の数であり、および
は、単結合、または炭素数1~10の2価の炭化水素基である。)
で示される化合物である分散剤。
【請求項2】
請求項1に記載の分散剤、セラミックス、バインダー樹脂、および分散媒を含むセラミックススラリーであって、セラミックススラリー全体に対して分散剤の含有量が0.01~3質量%であり、セラミックスの含有量が10~60質量%であり、およびバインダー樹脂の含有量が1~10質量%であるセラミックススラリー。
【請求項3】
可塑剤をさらに含み、セラミックススラリー全体に対して可塑剤の含有量が0.1~10質量%である請求項2に記載のセラミックススラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散剤およびセラミックススラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス焼結体は、電子部品や構造材料等として多くの分野で用いられている。この焼結体の製造においては形状付与のために原料となるセラミックスは各種成形方法によりセラミックス成形体とされる。セラミックス成形体の成形方法としては、一般に、プレス成形、鋳込み成形、塑性成形である射出成形、押し出し成形、シート成形等が知られている。これらいずれの成形方法においても、セラミックス特性を十分に発揮しうる成形体を得るためには、原料であるセラミックスにバインダー樹脂や可塑剤を添加した均一なセラミックススラリー(以下、「スラリー」と記載することがある)や、このスラリーを顆粒化したセラミックス顆粒を用いることが重要である。
【0003】
セラミックスの顆粒成形は、セラミックスを分散媒に分散して得られたスラリーを、スプレードライヤーで乾燥すると同時に顆粒化させる。セラミックス顆粒の特性は、スラリー中におけるセラミックスの分散性や濃度、スラリー物性に大きく左右される。例えば、スラリーの粘度が増加した場合や曳糸性が増大した場合には、スラリーの送液やスプレードライヤーでの噴霧・乾燥が困難となり、所望の特性のセラミックス顆粒を得られない。
【0004】
特許文献1には、スプレードライの手法においてスラリーのセラミックス濃度や粘度特性がセラミックス顆粒の特性や生産性に影響を与えるため、特定の方法によりスラリーを調製することで、セラミックス濃度および粘度特性を制御することが開示されている。
【0005】
一方で、近年電子部品用途においては、部品の小型化、高容量化および高効率化などの製品特性の向上が望まれており、セラミックススラリーの高品質化が必要である。このような背景から、分散剤とセラミックスやバインダー樹脂との相互作用によるスラリー物性の変化が小さい分散剤が求められている。特に製品特性を向上するために、原料であるセラミックスの粒径が小さくなっており、それに伴って分散剤使用量が増加した場合においても、スラリー物性の変化が起こりにくい分散剤が求められている。また、セラミックス成形工程において品質の向上や生産性の向上を目的として、スラリーを乾燥してセラミックス濃度を高めた場合に、スラリー中の分散剤濃度も高くなる。このような工程においてスラリー物性の変化が起こりにくい分散剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-132392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散剤濃度が変化しても、粘度および曵糸性の変化が少ないセラミックススラリーを形成できる分散剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するポリエーテルと二塩基酸またはその無水物とから形成されるポリエーテルエステル化合物を分散剤として用いれば、上記目的を達成できることを見出した。この知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0009】
[1] 下記式(1):
O-(AO)-CO-R-COOH ・・・ (1)
(式(1)において、
は、炭素数1~10の炭化水素基であり、
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、
mは、AOの平均付加モル数で、1~20の数であり、および
は、単結合、または炭素数1~10の2価の炭化水素基である。)
で示される化合物である分散剤。
[2] 前記[1]に記載の分散剤、セラミックス、バインダー樹脂、および分散媒を含むセラミックススラリーであって、セラミックススラリー全体に対して分散剤の含有量が0.01~3質量%であり、セラミックスの含有量が10~60質量%であり、およびバインダー樹脂の含有量が1~10質量%であるセラミックススラリー。
[3] 可塑剤をさらに含み、セラミックススラリー全体に対して可塑剤の含有量が0.1~10質量%である前記[2]に記載のセラミックススラリー。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分散剤を用いれば、分散剤濃度が変化しても、粘度および曵糸性の変化が少ないセラミックススラリーを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の分散剤およびセラミックススラリーについて説明する。
【0012】
(分散剤)
本発明の分散剤は、下記式(1):
O-(AO)-CO-R-COOH ・・・ (1)
で示される化合物である。本発明の分散剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
は、炭素数1~10の炭化水素基である。炭素数1~10の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの分岐鎖状アルキル基などが挙げられる。
【0014】
スラリーの粘度および曵糸性の変化抑制の観点から、Rは、好ましくは炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~3の直鎖状のアルキル基である。
【0015】
AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドを付加重合することで得られる。その付加形式はランダム状であっても、ブロック状であってもよい。AOは、好ましくはオキシエチレン基であるか、またはオキシエチレン基およびオキシプロピレン基であり、より好ましくはオキシエチレン基である。
【0016】
mは、AOの平均付加モル数で、1~20の数である。スラリーの粘度および曵糸性の変化抑制の観点から、mは、好ましくは1~16であり、より好ましくは1~12であり、さらに好ましくは1~8である。
【0017】
は、単結合、または炭素数1~10の2価の炭化水素基である。炭素数1~10の2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~10の2価の脂環式炭化水素基、および炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。スラリーの粘度および曵糸性の変化抑制の観点から、Rは、好ましくは炭素数1~10の2価の脂肪族炭化水素基または炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基であり、より好ましくはエチレン基または1,2-フェニレン基、さらに好ましくは1,2-フェニレン基である。
【0018】
式(1)で示される化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、例えば、RO-(AO)-H(式中の記号の定義は上記の通りである)で示される1価のアルコールと、炭素数2~12の二塩基酸またはその酸無水物とをエステル化反応させて得ることができる。その場合、前記1価のアルコールのモル数を(H)、二塩基酸またはその酸無水物のモル数を(T)としたとき、0.7≦(H)/(T)≦1.2が好ましく、0.9≦(H)/(T)≦1.1がより好ましい。
【0019】
二塩基酸またはその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸などが挙げられる。アルコールとの反応のし易さの観点から、好ましくは無水コハク酸、無水フタル酸であり、より好ましくは無水フタル酸である。
【0020】
また、前記エステル化反応においては触媒を用いてもよく、触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの塩基触媒や、パラトルエンスルホン酸などの酸性触媒が挙げられる。
【0021】
さらに、前記エステル化反応は無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用して行ってもよい。前記エステル化反応に使用した溶媒は、そのままでもよく、反応終了後、蒸留等の操作により除去することもできる。前記エステル化反応の温度は、好ましくは60~150℃、より好ましくは70~120℃であり、さらに好ましくは80~110℃である。
【0022】
(セラミックススラリー)
本発明のセラミックススラリー(以下、「本発明のスラリー」と記載することがある)は、本発明の分散剤、セラミックス、バインダー樹脂、分散媒を含む。本発明のスラリー中の成分は、いずれも1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のスラリー中の分散剤の含有量は、分散性の観点から、0.01~3質量%、好ましくは0.01~2.5質量%、より好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0024】
なお、本発明のスラリー中の成分の含有量の基準は、本発明のスラリー全体である。また、2種以上の成分(例えば2種以上の分散剤)を使用する場合、その含有量とは、2種以上の成分の含有量の合計を意味する。
【0025】
セラミックスは、セラミックススラリーで一般的に用いられているものであればよい。セラミックスとしては、例えば、ケイ酸塩鉱物、その他のケイ酸化合物、炭酸化合物、硫酸化合物、水酸化物、酸化物、窒化物、炭化物、チタン酸化合物などが挙げられる。セラミックスは、好ましくは、酸化物および/またはチタン酸化合物であり、より好ましくはチタン酸バリウムである。
【0026】
セラミックスは、粉体であることが好ましい。セラミックスの平均粒径は、特に限定されない。セラミックスの平均粒径が小さい場合、多量の分散剤を使用する必要があるため、本発明の効果が得られやすい。この観点から、セラミックスの平均粒径は、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは70nm以下である。また、分散性の観点から、セラミックスの平均粒径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは20nm以上である。なおセラミックスの平均粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡)によって測定することができる。
【0027】
本発明のスラリー中のセラミックスの含有量は、10~60質量%、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~60質量%である。前記含有量でセラミックスを含むスラリーは、その粘度特性の変化が大きくなり、本発明の効果が得られやすい。
【0028】
バインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エチルセルロース樹脂等などが挙げられる。これらの中で、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0029】
バインダー樹脂の分子量が大きい場合、スラリーの粘度特性の変化が大きくなるため、本発明の効果が得られやすい。この観点から、バインダー樹脂の重量平均分子量は、好ましくは60,000~1,000,000、より好ましくは100,000~500,000である。なお、本発明における重量平均分子量は、以下の条件でゲルパーミュエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
装置:東ソー株式会社製HLC-8320GPC
カラム:昭和電工株式会社製SHODEX KF-804L(内径8mm×長さ30c
m)、3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折計(RI)
温度:40℃
標準:ポリエチレングリコール
試料:有効分0.1質量%のTHF溶液を100μL注入
【0030】
本発明のスラリー中のバインダー樹脂の含有量は、1~10質量%、好ましくは3~10質量%、より好ましくは4~10質量%である。前記含有量でバインダー樹脂を含むスラリーは、その粘度特性の変化が大きくなり、本発明の効果が得られやすい。
【0031】
本発明のスラリーは、本発明の分散剤、セラミックス、バインダー樹脂、および分散媒以外の成分(以下、「他の成分」と記載する)を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0032】
スラリーの粘度の変化抑制の観点から、本発明のスラリーは、さらに可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤としては、例えば、ポリエーテル系可塑剤、エステル系可塑剤などが挙げられる。バインダー樹脂(特にポリビニルブチラール樹脂)との相溶性の観点から、ポリエーテル系可塑剤が好ましい。ポリエーテル系可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロック共重合体、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダム共重合体などが挙げられ、好ましくはポリエチレングリコールモノメチルエーテルである。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルのオキシエチレン基の平均付加モル数は、好ましくは3~15、より好ましくは3~10である。
【0033】
可塑剤を使用する場合、スラリーの粘度の変化抑制の観点から、本発明のスラリー中の可塑剤の含有量は、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.2~9質量%、さらに好ましくは0.2~8質量%である。
【0034】
本発明のスラリーは、本発明の分散剤、セラミックス、バインダー樹脂、および必要に応じて含まれる他の成分以外の残部として、分散媒を含む。
【0035】
分散媒としては、例えば、エタノール、n-プロパノールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピルなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤、およびこれらの混合物等が挙げられる。分散媒は、好ましくはエタノール、トルエン、メチルエチルケトン、またはこれらの混合物であり、より好ましくはエタノール、トルエン、またはこれらの混合物であり、さらに好ましくはエタノールおよびトルエンの混合物である。
【実施例0036】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0037】
(化合物1の製造例)
500mL4つ口フラスコにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(164g、1mol)、無水フタル酸(148g、1mol)を仕込み、均一になるように撹拌しながら110℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し、化合物1を得た(式(1)中、R:メチル基、AO:オキシエチレン基、m:3、R:1,2-フェニレン基)。
【0038】
(化合物2の製造例)
500mL4つ口フラスコにトリエチレングリコールモノメチルエーテル(164g、1mol)、無水コハク酸(100g、1mol)を仕込み、均一になるように撹拌しながら110℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し、化合物2を得た(式(1)中、R:メチル基、AO:オキシエチレン基、m:3、R:エチレン基)。
【0039】
(化合物3の製造例)
500mL4つ口フラスコにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル(350g、0.5mol)、無水コハク酸(50g、0.5mol)を仕込み、均一になるように撹拌しながら110℃まで昇温した。達温したのち7時間後に冷却し、反応を停止し、化合物3を得た(式(1)中、R:メチル基、AO:オキシエチレン基とオキシプロピレン基のブロック付加、m:15(オキシエチレン基12mol+オキシプロピレン基3mol)、R:エチレン基)。
【0040】
(化合物4)
無水マレイン酸とメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数:11)とのラジカル重合によって得られた共重合体(重量平均分子量:約20,000)(以下、「化合物4」と記載する)。
【0041】
(実施例1~4および比較例1)
化合物1~4を分散剤として使用して、以下のようにしてスラリーを調製した。なお、実施例1では化合物1を使用し、実施例2では化合物2を使用し、実施例3では化合物3を使用し、実施例4では化合物3を使用し、比較例1では化合物4を使用した。
また、実施例4では、可塑剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数:8)を使用した。
【0042】
(実施例1~3および比較例1)
50mLスクリュー管に、分散剤を、それぞれ0.05gまたは0.25g(セラミックス100質量部に対する分散剤量:1質量部または5質量部、セラミックススラリー中の分散剤濃度(含有量):0.5質量%または2.4質量%)、チタン酸バリウム(製品名:KZM-50、堺化学工業株式会社製、平均粒径:50nm)5g、ポリビニルブチラール溶液5g(ポリビニルブチラール0.5g(製品名:エスレックBH-3、積水化学工業株式会社製、重量平均分子量:200,000)を質量比1/1のトルエン/エタノール混合溶媒4.5gで溶解させた液)を秤量し、自転公転型ミキサーで2分間撹拌してスラリーを得た。
【0043】
(実施例4)
50mLスクリュー管に、分散剤を、それぞれ0.05gまたは0.25g(セラミックス100質量部に対する分散剤量:1質量部または5質量部、セラミックススラリー中の分散剤濃度(含有量):0.5質量%または2.3質量%)、チタン酸バリウム(製品名:KZM-50、堺化学工業株式会社製、平均粒径:50nm)5g、ポリビニルブチラール溶液5g(ポリビニルブチラール0.5g(製品名:エスレックBH-3、積水化学工業株式会社製、重量平均分子量:200,000)を質量比1/1のトルエン/エタノール混合溶媒4.5gで溶解させた液)、可塑剤0.5gを秤量し、自転公転型ミキサーで2分間撹拌してスラリーを得た。
【0044】
(スラリーの粘度および粘度変化率)
実施例1~4および比較例1で得られたスラリーの粘度およびその変化率を、以下のようにして測定した。
【0045】
動的粘弾性装置(Paar Physica MCR-300、Anton Paar社製)を用いて、フローモードにより温度20℃、せん断速度が0.1(1/s)または1(1/s)のときのスラリーの粘度を測定した。結果を、表1および2に示す。
【0046】
また、スラリーの粘度変化率を、下記式:
スラリーの粘度変化率(%)
=100×(分散剤量が5質量部のときのスラリーの粘度-分散剤量が1質量部のときのスラリーの粘度)の絶対値/分散剤量が1質量部のときのスラリーの粘度
から算出し、以下の基準で評価した。なお、上記式中の「分散剤量」は、「セラミックス100質量部に対する分散剤量」である。結果を表1および2に示す。
<スラリーの粘度変化率の評価基準>
〇:50%未満
×:50%以上
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
(スラリーの曳糸性および曳糸性変化)
実施例1~4および比較例1で得られたスラリーの曳糸性を、以下のようにして測定した。
【0050】
動的粘弾性装置(Paar Physica MCR-300、Anton Paar社製)を用いて、タックモードにより温度20℃、0.25mmから速度1mm/sにて各スラリーを引き上げ、スラリーの糸が切れたときの高さ(スラリーの曳糸性)を測定した。結果を表3に示す。
【0051】
また、スラリーの曳糸性変化を、下記式:
スラリーの曳糸性変化(mm)
=分散剤量が5質量部のときのスラリーの曳糸性-分散剤量が1質量部のときのスラリーの曳糸性
から算出し、以下の基準で評価した。なお、上記式中の「分散剤量」は、「セラミックス100質量部に対する分散剤量」である。結果を表3に示す。
<スラリーの曳糸性変化の評価基準>
〇:4mm未満
×:4mm以上
【0052】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の分散剤を用いれば、分散剤濃度が変化しても、粘度および曵糸性の変化が少ないセラミックススラリーを得ることができる。