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特開2023-111819毛髪用及び/又は皮膚用組成物、毛髪及び/又は皮膚の処理方法、並びに、毛髪用及び/又は皮膚用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111819
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】毛髪用及び/又は皮膚用組成物、毛髪及び/又は皮膚の処理方法、並びに、毛髪用及び/又は皮膚用装置
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20230803BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230803BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230803BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230803BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230803BHJP
   A45D 20/12 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q5/00
A61K8/06
A61Q19/00
A61K8/31
A45D20/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159767
(22)【出願日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2022013317
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(72)【発明者】
【氏名】井口 亮
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】追風 寛歳
【テーマコード(参考)】
3B040
4C083
【Fターム(参考)】
3B040CJ01
3B040CJ03
3B040CJ04
4C083AA081
4C083AA121
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC112
4C083AC172
4C083AC331
4C083AC402
4C083AC442
4C083AC662
4C083AD151
4C083BB04
4C083BB13
4C083CC02
4C083CC31
4C083DD08
4C083DD28
4C083DD32
4C083DD33
4C083EE21
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】作用、効果を発揮させるのが一般的な成分の配合量を高めても均一性の高い塗布を実現できる毛髪用及び/又は皮膚用組成物、毛髪及び/又は皮膚の処理方法、並びに、毛髪用及び/又は皮膚用装置の提供。
【解決手段】毛髪用及び/又は皮膚用組成物は、蒸発残分が1.0質量%以上であって、空気流を発生させる送風部を有する装置から霧状に吐出されるものであり、毛髪及び/又は皮膚の処理方法は、蒸発残分が1.0質量%以上であって、空気流を発生させる送風部を有する装置から霧状に吐出される組成物を使用するものであり、毛髪用及び/又は皮膚用装置は、蒸発残分が1.0質量%以上の組成物を貯蔵するタンクと、空気流を発生させる送風部と、タンク内の組成物を霧状に吐出するミスト発生部と、を備えるものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50℃で24時間放置した後の蒸発残分が1.0質量%以上であり、
空気流を発生させる送風部を有する装置から霧状に吐出される毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項2】
前記霧状に吐出される量が100mg/s以下である請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項3】
粘度が200mPa・s以下である請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項4】
ノニオン界面活性剤が配合された請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項5】
前記ノニオン界面活性剤の配合量が15質量%以下である請求項4に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項6】
前記蒸発残分となる成分として液状の油性成分が配合されており、前記液状の油性成分の配合量が1.0質量%以上である請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項7】
前記蒸発残分となる成分として、炭化水素、ロウ、エステル油、油脂、高級アルコール、及びシリコーンから選ばれる1種又は2種以上の油性成分が配合された請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項8】
水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、又は二種以上の油性成分が配合された非水系組成物である請求項1に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物を貯蔵するタンクと、空気流を発生させる送風部と、前記毛髪用及び/又は皮膚用組成物を霧状に吐出するミスト発生部と、を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪及び/又は皮膚の表面に霧状にして塗布して使用される油性成分などを含む毛髪用及び/又は皮膚用組成物、毛髪及び/又は皮膚の処理方法、並びに、毛髪用及び/又は皮膚用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪や皮膚に塗布する組成物として、例えば、紫外線吸収剤および液状炭化水素が配合された皮膚用又は毛髪用の非水系組成物(特許文献1参照)、第四級アンモニウム基含有基を有し、カチオン化度が0.15~0.6であるヒアルロン酸及び/又はその塩が配合された噴霧用容器詰め液状化粧料(特許文献2参照)が開示されている。これら開示された組成物を使用する際には、その組成物を手で直接塗布する方法、ポンプ式容器からの噴霧で塗布する方法などがとられる。また、特許文献3には、特許文献1、2とは異なる塗布方法として、ミスト発生部を有するヘアケア装置を使用する方法が開示されている(段落0023等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-075498号公報
【特許文献2】特開2010-24207号公報
【特許文献3】特開2021-132688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、毛髪や皮膚への均一な組成物の塗布は、期待する組成物の作用、効果の均一性向上の要素となる。しかし、手による直接塗布やポンプ式容器からの噴霧塗布を行う場合、塗布箇所を意識した局所的な塗布となり易い。また、組成物による作用、効果は一般的に蒸発しない成分が発揮し易いが、その成分の配合量を高めた場合、塗布が不均一となった場合の組成物による作用、効果の不均一性は顕在化し易い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、作用、効果を発揮させるのが一般的な成分の配合量を高めても、均一性の高い塗布を実現できる毛髪用及び/又は皮膚用組成物、この組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法、並びに、同組成物を備えた毛髪用及び/又は皮膚用装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討を行った結果、所定条件における蒸発残分が1.0質量%以上、かつ、空気流を発生させる送風部を有する装置から霧状に吐出される毛髪用及び/又は皮膚用組成物であれば、その蒸発残分であっても、均一性の高い塗布を実現できる知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]の通りである。
【0007】
[1]50℃で24時間放置した後の蒸発残分が1.0質量%以上であり、空気流を発生させる送風部を有する装置から霧状に吐出される毛髪用及び/又は皮膚用組成物(以下、「毛髪用及び/又は皮膚用組成物」を単に「組成物」と称することがある。)。[1]に係る組成物を毛髪用に使用すれば、空気流が毛髪を解きほぐす作用を有する。その結果、静止状態で外部観察可能な毛髪表面だけではなく、他の毛髪表面にまで霧状の組成物が行き届き易くなるから、毛髪全体に対して均一性の高い塗布が可能となる。
【0008】
[2]前記霧状に吐出される量が100mg/s以下である前記[1]に記載の毛髪用及び/又は皮膚用組成物。[2]に係る組成物であれば、より均一性の高い塗布を実現できる。
【0009】
[3]粘度が200mPa・s以下である前記[1]又は[2]に記載の組成物。当該組成物が200mPa・s以下の粘度であると、吐出される[3]に係る組成物を効率的かつ簡易に霧状にできる。
【0010】
[4]ノニオン界面活性剤が配合された前記[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。当該組成物へのノニオン界面活性剤の配合は、毛髪の滑らかな感触の向上に好適である。
【0011】
[5]前記ノニオン界面活性剤の配合量が15質量%以下である前記[4]に記載の組成物。当該組成物であれば、霧状に吐出させることが容易となる。
【0012】
[6]前記蒸発残分となる成分として液状の油性成分が配合されており、前記液状の油性成分の配合量が1.0質量%以上である前記[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。当該組成物における油性成分は、毛髪や皮膚の滑らかな感触付与に好適で、1.0質量%以上の配合により、その滑らかさがより向上する。
【0013】
[7]前記蒸発残分となる成分として、炭化水素、ロウ、エステル油、油脂、高級アルコール、及びシリコーンから選ばれる1種又は2種以上の油性成分が配合された前記[1]から[6]のいずれかに記載の組成物。この油性成分の配合により、毛髪や皮膚の滑らかさが良好となる。
【0014】
[8]水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、又は二種以上の油性成分が配合された非水系組成物である前記[1]から[7]のいずれかに記載の組成物。
【0015】
[9]前記[1]から[8]のいずれかに記載の組成物を使用する毛髪及び/又は皮膚の処理方法。
【0016】
[10]前記[1]~[8]のいずれかに記載の組成物を貯蔵するタンクと、空気流を発生させる送風部と、前記組成物を霧状に吐出するミスト発生部と、を備える装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る毛髪用及び/又は皮膚用組成物によれば、霧状に吐出されると共に空気流により拡散するから、均一性の高い塗布が可能となる上に、蒸発残分が1.0質量%以上であるから、その成分による作用、効果が高くなる。
【0018】
また、本発明に係る毛髪及び/又は皮膚の処理方法によれば、送風部から送り出される空気流と共に霧状組成物が吐出されるから、その組成物が空気流の中でより拡散して均一性の高い塗布が可能となる上に、組成物の蒸発残分が1.0質量%以上であるから、その成分による作用、効果が高くなる。
【0019】
また、本発明に係る装置によれば、ミスト発生部から吐出される霧状組成物が、送風部から送り出される空気流により拡散するから、その組成物の均一性の高い塗布が可能となる上に、組成物の蒸発残分が1.0質量%以上であるから、その成分による作用、効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る装置の一例の側面図。
図2図1の装置の断面図。
図3図1の装置の電気的な接続を示すブロック図。
図4】霧状組成物の拡散を説明するための模式図。
図5】実施例3、比較例3の感水試験紙への塗布状態を説明するための画像。
図6】参考例1~2の塗布均一性を説明するための画像。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に基づき、本発明を以下に説明する。
本実施形態の組成物は、蒸発残分が所定量以上のものであって、特定の装置から霧状に吐出されるものである。
【0022】
本実施形態の組成物における蒸発残分は、1.0質量%以上90質量%以下が良く、2.0質量%以上50質量%以下が好ましく、3.0質量%以上40質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上35質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以上30質量%以下がより更に好ましい。蒸発残分が1.0質量%以上であると、その成分による感触付与などの作用、効果を発揮させやすくなり、90質量%以下であると、同成分による過剰な作用、効果の抑制に好適である。
【0023】
ここで、上記「蒸発残分」は、組成物を50℃に設定した恒温槽内に24時間放置した後の残量あり、(恒温槽内に放置した後の組成物の質量)/(恒温槽内に放置する前の組成物の質量)×100にて算出される値である。
【0024】
本実施形態の組成物には、毛髪又は皮膚表面の感触を滑らかにするなどの目的で、蒸発残分となる油性成分、蒸発後に残らない油性成分、又は、蒸発残分となる油性成分および蒸発後に残らない油性成分が配合されていると良い。当該油性成分は、炭化水素、ロウ、エステル油、油脂、高級アルコール、及びシリコーンから選ばれた一種又は二種以上である。
【0025】
上記炭化水素として、公知の炭化水素から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の炭化水素及び/又は25℃で固体の炭化水素を配合できる。この炭化水素としては、例えば、水添ポリイソブテン、イソドデカン、(C13-15)アルカン、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0026】
上記ロウは、天然物を起源とするエステルとして分類され、一般的には、脂肪酸と水に不溶性の高級一価アルコール又は二価アルコールとのエステルが該当する。また、ロウを配合する場合、公知のロウから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。このロウとしては、例えば、ミツロウ、モクロウ、ホホバ油、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、カルナウバロウ、ヒマワリ種子ロウが挙げられる。
【0027】
上記エステル油は、合成により得られたエステルとして分類されるものである。エステル油を配合する場合、公知のエステル油から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状のエステル油及び/又は25℃で固体のエステル油を配合できる。このエステル油としては、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸エチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸ヘキシル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸イソセチル、ジメチルオクタン酸2-オクチルドデシル、乳酸ミリスチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、アジピン酸ジイソブチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、(カプリル/カプリン酸)ヤシアルキルが挙げられる。
【0028】
油脂は、脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを主成分とするものである。油脂を配合する場合、公知の油脂から選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の油脂及び/又は25℃で固体の油脂を配合できる。この油脂としては、例えば、アーモンド油、アボガド油、アンズ核油、オリーブ油、コメヌカ油、シア脂、シア脂油、月見草油、チャボトケイソウ種子油、ツバキ油、ババス油、ピーナッツ油、ヒマワリ種子油、ローズヒップ油が挙げられる。
【0029】
高級アルコールは、炭素数12以上の一価アルコールである。高級アルコールを配合する場合、公知の高級アルコールから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。また、25℃で液状の高級アルコール及び/又は25℃で固体の高級アルコールを配合できる。この高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールが挙げられる。
【0030】
シリコーンを配合する場合、公知のシリコーンから選ばれた一種又は二種以上を配合できる。このシリコーンとしては、例えば、ジメチルシリコーン(メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサンなど)、メチルフェニルシリコーン、環状シリコーン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなど)、アミノ変性シリコーン(アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体など)長鎖アルキル変性シリコーン、ジメチコノールが挙げられる。
【0031】
本実施形態の組成物に蒸発残分となる油性成分を配合する場合、当該蒸発残分に該当する炭化水素、ロウ、エステル油、油脂、高級アルコール、及びシリコーンから選ばれる1種又は2種以上を配合する。本実施形態の組成物における蒸発残分となる油性成分の配合量は、1.0質量%以上50質量%以下が良く、2.0質量%以上40質量%以下が好ましく、3.0質量%以上30質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上15質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以上10質量%以下がより更に好ましい。その1.0質量%以上の配合量であると、その成分による感触付与などの作用、効果を発揮させやすくなり、50質量%以下であると、同成分による過剰な作用、効果の抑制に好適である。
【0032】
また、本実施形態の組成物に蒸発残分となる成分として液状油性成分を配合すると、毛髪や皮膚表面の滑らかさの向上に好適である。本実施形態の組成物における液状油性成分の配合量は、1.0質量%以上50質量%以下が良く、2.0質量%以上40質量%以下が好ましく、3.0質量%以上30質量%以下がより好ましく、4.0質量%以上15質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以上10質量%以下がより更に好ましい。1.0質量%以上の配合量であると、その成分による感触付与などの作用、効果を発揮させやすくなり、50質量%以下であると、同成分による過剰な作用、効果の抑制に好適である。
【0033】
本実施形態の組成物には、油性成分の乳化分散性、可溶化などの目的で公知の界面活性剤を適宜配合すると良い。また、多価アルコール、糖類、高分子化合物、アミノ酸、動植物抽出物、無機化合物、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、増粘剤など、公知の毛髪用組成物や公知の皮膚用組成物に配合されている成分を配合しても良い。なお、本実施形態の組成物は、毛髪や皮膚表面の感触を滑らかにするため、固形粒子を配合しないことが最適である。
【0034】
本実施形態の組成物へのノニオン界面活性剤の配合は、毛髪の滑らかな感触の向上に好適である。このノニオン界面活性剤は、毛髪用及び/又は皮膚用組成物に配合される公知のノニオン界面活性剤から選ばれた一種又は二種以上であると良い。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルアルカノールアミドが挙げられる。
【0035】
本実施形態の組成物におけるノニオン界面活性剤の配合量は、0.1質量%以上15質量%以下が良く、0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上8質量%以下がより好ましく、2質量%以上6質量%以下が更に好ましい。0.1質量%以上の配合量であると、毛髪の滑らかな感触の向上に好適であり、10質量%以下の配合量であると、組成物の粘度を低く設定する場合に好適である。
【0036】
本実施形態の組成物の剤型は、当該組成物を霧状に吐出させることが容易な液状である。この液状である本実施形態の組成物の粘度は、例えば200mPa・s以下であり、100mPa・s以下が良く、70mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、10mPa・s以下がより更に好ましい(なお、粘度を低下させるには、例えば、本実施形態の組成物に配合する固形成分又は相対的に粘性の高い成分を減量すると良い。)。200mPa・s以下の粘度であると、本実施形態の組成物を微細化して霧状にすることが容易かつ効率的となる上に、毛髪や皮膚表面の滑らかな感触付与にも好適である。ここで粘度は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製レオメーター「Thermo Scientific HAAKE MARS 40」を用いて、定常フローカーブモードにて、せん断速度(dγ/dt)50s-1、コーンプレートセンサー(直径35mm、傾斜角2°)、温度25℃の条件で、η(mPa・s)の値を採用したものである。
【0037】
本実施形態の組成物は、例えば、界面活性剤で油性成分を分散させた水中油型乳化組成物、界面活性剤で水性成分を分散させた油中水型乳化組成物、二種以上の油性成分が配合された非水系組成物が挙げられる。本実施形態の組成物が水中油型乳化組成物である場合の水の配合量は、当該組成物の粘度を低く抑えたい場合には、50質量%以上が良く、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。また、非水系組成物とは、油中水型乳化組成物に該当しないものであって、水の配合量が0.5質量%未満、又は、水が無配合の組成物をいう。
【0038】
図1~3は、本実施形態の組成物を使用する際に、当該組成物を霧状に吐出する本実施形態の装置であって、本発明に係る装置の一例を表すものである。
【0039】
図1は、本実施形態の装置の側面図である。装置10は、連続的に空気流を発生可能、かつ、本実施形態の組成物の霧状吐出が連続的に可能なものである(装置10の使用例として、毛髪に向けて送風するドライヤーが挙げられる。)。ここで、霧状吐出の「連続的」とは、1秒以上、5秒以上、10秒以上、30秒以上、1分以上、3分以上、5分以上、又は10分以上などの適宜な時間続くことを意味し、吐出が瞬時に終了するポンプ式容器からの噴霧吐出とは異なる。
【0040】
装置10は、装置10の外観を構成し、複数の要素を収容するハウジング11と、操作部40を有し、使用者に握られる把持部12と、電力を供給するための電力線61と、を備える。ハウジング11と把持部12とは、把持部12に対してハウジング11の位置を変更できるように連結されていると良い。ハウジング11は、外部の空気を流入させる吸入口11Aと、外部に本実施形態の組成物または空気流を放出する放出口11Bと、を備える。吸入口11Aおよび放出口11Bの形状は、例えば楕円形状である。
【0041】
図2は、図1で示した装置10の断面図である。ハウジング11は、内部に流体の流れが形成される流路13を備える。流路13は、図1で示した吸入口11Aからの空気を放出口11Bに送出可能なように適宜な中空構造を採る。そして、流路13は、主に空気が通過する第1流路13Aと、主に霧状の本実施形態の組成物が通過する第2流路13Bと、を含む。
【0042】
図3は、図1で示した装置10の電気的な接続を示すブロック図である。装置10は、図2に示す電力を供給するための電力線61に接続された制御部20、操作部40、モータ71を有する送風部70、ヒータ81を有する加熱部80、および、ポンプ91を有するミスト発生部90をさらに備える。これら各部は、例えば、図2に示すようにハウジング11の内部などに保持されていると良い。
【0043】
制御部20は、制御プログラムを実行する演算処理装置により構成される。制御部20は、操作部40、送風部70、加熱部80、および、ミスト発生部90と、無線または有線で通信できるように構成される。制御部20は、操作部40からの操作信号が入力されることで制御を開始する。
【0044】
操作部40は、例えばユーザからの操作による操作信号を制御部20に対して出力する。操作信号は、制御部20のオンおよびオフを切り替える信号、または、制御部20による送風部70、加熱部80、および、ミスト発生部90の少なくとも1つの出力変化を実行する信号を含む。操作部40の一部は、ユーザが操作しやすいようにハウジング11の外側に向けて突出するように構成される。操作部40は、例えばボタン、スイッチ、および、ダイヤルにより構成される。
【0045】
送風部70は、図1に示す吸入口11Aから空気を吸入し、放出口11Bから送り出される空気流を形成する。図2に示す通り、送風部70は、モータ71およびファン72を含む。モータ71の駆動により、ファン72が回転することで、流路13において空気流が生じる。モータ71は、制御部20により制御される。本実施形態の装置10は、このファン72の回転状態が維持されることにより、連続的な空気流を発生させる。送風部70は、流路13において、第1流路13Aおよび第2流路13Bの上流に存在し、第1流路13Aおよび第2流路13Bの両方に空気流を供給する。
【0046】
加熱部80は、ハウジング11内の空気流を加熱し、温風を作成する。温風は、例えば100~120℃の範囲内の空気である。加熱部80は、ヒータ81を含む。ヒータ81の一例は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータおよび赤外線ヒータである。加熱部80は、例えば第1流路13Aに設けられる。制御部20は、ヒータ81の出力を制御する。装置10から送り出される空気流の温度を高めて温風とすることにより、組成物の蒸発残分以外の成分の蒸発を促進させることが可能となる。
【0047】
ミスト発生部90は、本実施形態の組成物を霧状にして吐出させる。ミスト発生部90は、図2に示すポンプ91、タンク92、および、ノズル93を含む。ポンプ91は、図示しないモータを駆動することで、タンク92に貯蔵される本実施形態の組成物をノズル93に供給する液体ポンプである(当該液体ポンプの例として、ギアポンプが挙げられる)。タンク92は、装置10内部において本実施形態の組成物を貯蔵する。タンク92は、ポリプロピレンなどの液状組成物の保持に適した公知の材料で構成される。ノズル93は、本実施形態の組成物を霧状にする。この霧状を実現するには、例えば、ノズル93の内部で空気と本実施形態の組成物とを混合し、この混合時のせん断力による霧状化が可能である。この場合、ポンプ91は、ダイヤフラムポンプなどの気体ポンプをさらに含む。ミスト発生部90おいては、制御部20により、ミスト発生部90から霧状に吐出される本実施形態の組成物の流速、及び、ミスト発生部90から霧状に吐出される本実施形態の組成物の量を、制御可能となっている。本実施形態の組成物が1秒間に霧状に吐出される量は、0.1mg/s以上100mg/s以下が良く、0.3mg/s以上50mg/s以下が好ましく、0.5mg/s以上10mg/s以下がより好ましく、0.5mg/s以上5mg/s以下が更に好ましく、0.5mg/s以上3mg/s以下がより更に好ましい。その吐出量が100mg/s以下であると、塗布の均一性向上に好適であり、0.1mg/s以上であると、塗布処理の短時間化に好適である。
【0048】
操作部40の操作により、制御部20に電力が供給され、必要に応じて、ポンプ91、モータ71、又はヒータ81に電力がさらに供給される。ポンプ91に電力が供給されると、ノズル93から本実施形態の組成物が霧状に吐出され、当該組成物は第2流路13Bを通過して装置10の外部に導かれる。モータ71に電力が供給されると、ファン72が作動してファン72によって送り出された空気流が第1流路13Aを通って装置10の外部に吹き出される。
霧状に吐出された組成物の粒子径は、例えば、20μm以上200μm以下であってよい。ここで、粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積平均粒子径をいう。
【0049】
図4は、霧状となった本実施形態の組成物(霧状組成物M)の拡散を説明するための模式図である(図4における霧状組成物は、円形状で図示。)。第2流路13Bから吐出後の霧状組成物Mは、第1流路13Aから送り出される空気流Aに引き付けられて拡散する。その結果、本実施形態の組成物による毛髪や皮膚への局所的な塗布が抑えられ、均一性の高い塗布が可能となる。また、図2のヒータ81による空気の加熱がある場合には、本実施形態の組成物の塗布と、同組成物の乾燥を同時に行うことが可能となる。
【0050】
本実施形態の組成物を貯蔵するタンクと、空気流を発生させる送風部と、その組成物を霧状に吐出するミスト発生部と、を備える装置を使用することにより、霧状の本実施形態の組成物を毛髪、皮膚、又は、毛髪及び皮膚に塗布すれば、均一性の高い塗布処理が可能となる。
【実施例0051】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0052】
<<実施例1~2、比較例1~2>>
実施例1~2及び比較例1~2の毛髪用組成物を製造し、これら組成物による毛髪処理を行った後に、毛髪の感触、艶の評価を行った。詳細は、次の通りである。
【0053】
(毛髪用組成物)
不揮発性炭化水素であるスクワラン、揮発性炭化水素であるイソドデカンを混合し、粘度が100mPa・s以下、非水系である比較例1~2、実施例1~2の液状毛髪用組成物を製造した。製造する際の配合量は、下記表1の通りとした。また、蒸発残分を、毛髪用組成物10gを設定温度50℃の恒温槽内に24時間放置し、その前後の質量に基づいて算出した。
【0054】
(毛髪処理)
洗浄後、タオルで水分を拭き取った毛束(長さ30cm程度、12gの毛束)に対して、送風部とミスト発生部を有する装置から、1分間、手櫛による櫛通しを行いつつ空気流れとしての温風を吹き付けると共に、霧状にした比較例及び実施例の組成物のいずれかを塗布した(なお、当該組成物の塗布量は40mg)。
【0055】
(評価:毛髪の感触)
毛髪処理直後と毛髪処理から24時間後の毛髪の感触について、評価者2名により評価した。
【0056】
(評価:毛髪の艶)
毛髪処理直後と毛髪処理から24時間後の毛髪の艶について、評価者2名の目視により評価した。
【0057】
下記表1に、比較例1~2及び実施例1~2の組成物に配合した成分、その配合量と共に、毛髪の感触の評価、毛髪の艶の評価を示す(なお、その2つの評価においては、評価者2名共に同じ評価を行っていた。)。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示す通り、蒸発残分が増えるにつれて、当該成分による感触がより発揮されていたことを確認できる。その効果は、霧状の実施例1~2の組成物が空気流で拡散されつつ毛髪に塗布されるから、均一性が高い。
【0060】
<<実施例3、比較例3>>
複数の感水試験紙(スプレーイングシステムス社製、52mm×76mmサイズ)を並べて152mm×208mmのパネルを作成した。このパネルに、下記表2に記載の毛髪用組成物を霧状にして塗布した。この塗布方法は、実施例3及び比較例3で次の通りとした。
実施例3:
送風部とミスト発生部を有する装置から、空気流れとしての温風(温度80℃程度、風速20m/s)をパネルに吹き付けると共に、霧状にした毛髪用組成物200mgを3分間かけて塗布した。
比較例3:
一回の吐出量が約200mgである株式会社吉野工業所製の定量吐出ミストポンプを使用し、塗布した。
【0061】
【表2】
【0062】
図5は、実施例3、比較例3の感水試験紙への塗布状態を説明するための画像であり、下記表3は、実施例3及び比較例3の塗布を纏めたものである。図5に示す通り、比較例3では、感水試験紙パネルの中央部の塗布量が多くなっていた。一方、実施例3では、比較例3のような中央部への塗布量の偏りがなく、均一性の高い塗布となったことを確認できる。
【0063】
【表3】
【0064】
<<実施例4~7>>
下記表4に記載の実施例4~7の毛髪用組成物を、水洗後にタオルドライした毛束(長さ30cm程度、質量10g)に霧状にして塗布した。この塗布方法は、送風部とミスト発生部を有する装置から、空気流れとしての温風(温度80℃程度、風速20m/s)を毛束に吹き付けると共に、霧状にした毛髪用組成物200mgを3分間かけて塗布した。また、装置から吐出する霧状組成物の粒子径を、マイクロトラック・ベル社製粒度分布計「AEROTRAC II」を使用し、測定した。この測定では、使用レンズ「f100レンズ」、露光時間「10秒」、レンズから霧状組成物の距離「50mm」の条件で測定し、20回測定した体積平均粒子径の平均値を「霧状組成物の粒子径」とした。
【0065】
下記表4において、実施例4~7の毛髪用組成物を塗布した後の毛束について、表面の滑らかさの評価を行った結果を示す。ノニオン界面活性剤を配合した実施例5~7は、実施例4よりも滑らかさに優れる結果であった。
【表4】
【0066】
<<参考例1~2>>
人頭マネキンに装着されている毛髪を洗浄し、タオルで水分を拭き取った後に、赤色色素を追加配合した市販の液状毛髪用組成物(ミルボン社製「プラーミア デイエッセンス」)0.3gを、人頭マネキンの片側側面の毛髪に塗布した。この塗布は、下記の参考例1~2の処理により行った。
参考例1:
送風部とミスト発生部を有する装置から、櫛通しをしつつ、空気流れとしての温風(温度80℃程度、風速20m/s)を吹き付けると共に、霧状にした上記液状毛髪用組成物を塗布した。
参考例2:
手の平に伸ばした上記液状毛髪用組成物を塗布した。
【0067】
参考例1~2の処理により塗布した毛髪を撮影したカラー画像から、画像処理により赤の色相を抽出し、その抽出画像により塗布の均一性を確認した。図6は、参考例1~2の塗布均一性を説明するための画像であり、参考例1の抽出画像は、参考例2の抽出画像よりも色むらが明らかに少なく、塗布均一性が良好であったことを確認できる。
【符号の説明】
【0068】
10 装置
20 制御部
70 送風部
71 モータ
72 ファン
90 ミスト発生部
91 ポンプ
92 タンク
M 霧状組成物
A 空気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6