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特開2023-111820熱供給システム、熱供給管理サーバ、動作方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111820
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】熱供給システム、熱供給管理サーバ、動作方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/164 20220101AFI20230803BHJP
   F24H 15/20 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 15/172 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 15/457 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 15/277 20220101ALI20230803BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20230803BHJP
【FI】
F24H15/164
F24H15/20
F24H1/18 G
F24H15/172
F24H15/457
F24H1/00 A
F24H15/277
F24H15/375
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160256
(22)【出願日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2022012777
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家田 陵平
(72)【発明者】
【氏名】畑谷 俊晴
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA12
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA63
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA14
3L122BA23
3L122BA24
3L122BB02
3L122BB13
3L122BB14
(57)【要約】
【課題】発電設備の供給可能電力が当初の想定よりも減少した場合に、電力の不足分の調達コストの増大を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】熱供給システムは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、熱供給管理サーバを備える。複数の熱供給装置のそれぞれは、蓄熱運転を実行可能であり、複数のグループのうちの何れか1つに属する。熱供給管理サーバは、供給可能電力から補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データに基づいて、複数のグループのそれぞれについて、運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行する。補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において補正電力が大きく、電力市場価格が低い時間帯において補正電力が小さくなるように設定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、熱供給管理サーバを備える熱供給システムであって、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、
熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、
電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えており、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であり、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属しており、
前記熱供給管理サーバは、
前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得し、
補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定し、
前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出し、
前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されており、
前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定される、熱供給システム。
【請求項2】
前記補正電力データは、前記電力市場価格が第1所定値を下回る時間帯において前記補正電力がゼロとなり、前記電力市場価格が前記第1所定値以上の時間帯において前記補正電力が正の値となるように設定されている、請求項1の熱供給システム。
【請求項3】
前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理において、前記複数のグループのそれぞれについて、前記電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯を前記運転許可時間帯が含まないように、前記運転許可時間帯を設定するように構成されている、請求項1の熱供給システム。
【請求項4】
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、燃料を利用して前記熱媒を加熱する補助熱源ユニットをさらに備えており、
前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理を実行した後、前記供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯が存在するか否かを判定し、
前記超過時間帯が存在する場合に、
前記運転許可時間帯に前記超過時間帯を含むグループを取消候補グループとして特定し、
前記取消候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行した場合の熱供給コストを第1コストとして算出し、
前記取消候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行せず、代わりに前記補助熱源ユニットを使用する場合の熱供給コストを第2コストとして算出し、
前記第1コストが前記第2コストよりも高い場合に、前記取消候補グループについて設定された前記運転許可時間帯を取り消すように構成されている、請求項1の熱供給システム。
【請求項5】
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、燃料を利用して前記熱媒を加熱する補助熱源ユニットをさらに備えており、
前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理を実行した後、前記供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯が存在するか否かを判定し、
前記超過時間帯が存在する場合に、
前記運転許可時間帯に前記超過時間帯を含むグループを短縮候補グループとして特定し、
前記短縮候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行した場合の熱供給コストを第1コストとして算出し、
前記短縮候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行せず、代わりに前記補助熱源ユニットを使用する場合の熱供給コストを第2コストとして算出し、
前記第1コストが前記第2コストよりも高い場合に、前記短縮候補グループについて設定された前記運転許可時間帯を、前記超過時間帯を含まないように短縮するように構成されている、請求項1の熱供給システム。
【請求項6】
前記第1コストが、前記電力市場価格を前記熱源ユニットの熱効率で除算した値に基づいており、
前記第2コストが、燃料ガス市場価格を前記補助熱源ユニットの熱効率で除算した値に基づいている、請求項4または5の熱供給システム。
【請求項7】
前記熱源ユニットが、外気から吸熱して前記熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えており、
前記熱源ユニットの前記熱効率が、前記運転許可時間帯における外気温度に基づいて設定される、請求項6の熱供給システム。
【請求項8】
熱供給管理サーバであって、
前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用され、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、
熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、
電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えており、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であり、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属しており、
前記熱供給管理サーバは、
前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得し、
補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定し、
前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出し、
前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されており、
前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定される、熱供給管理サーバ。
【請求項9】
熱供給管理サーバの動作方法であって、
前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用され、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、
熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、
電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えており、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であり、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属しており、
前記動作方法は、
前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得することと、
補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定することと、
前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出することと、
前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行することを備えており、
前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定される、動作方法。
【請求項10】
熱供給管理サーバのためのプログラムであって、
前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用され、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、
熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、
電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えており、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であり、
前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属しており、
前記プログラムは、前記熱供給管理サーバに、
前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得するステップと、
補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定するステップと、
前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出するステップと、
前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するステップを実行させ、
前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定される、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、熱供給システム、熱供給管理サーバ、動作方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、熱供給管理サーバを備える熱供給システムが開示されている。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えている。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能である。前記熱供給管理サーバは、前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得し、前記供給可能電力データに基づいて、前記複数の熱供給装置のそれぞれについて、前記蓄熱運転を実行する時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電設備が発電する電力が当初の想定よりも減少し、供給可能電力が当初の想定よりも減少することがある。このような場合に、複数の熱供給装置の蓄熱運転の消費電力の総和に対して供給可能電力が不足すると、電力の不足分は電力市場から調達して賄う必要がある。このため、電力市場価格が高い時間帯において供給可能電力が不足してしまうと、電力の調達コストが増大するおそれがある。本明細書では、発電設備の供給可能電力が当初の想定よりも減少した場合に、電力の不足分の調達コストの増大を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は熱供給システムを開示する。第1の態様では、熱供給システムは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、熱供給管理サーバを備えていてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えていてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であってもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属していてもよい。前記熱供給管理サーバは、前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得し、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定し、前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出し、前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されていてもよい。前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定されてもよい。
【0006】
本明細書は、熱供給管理サーバも開示する。前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用されてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えていてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であってもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属していてもよい。前記熱供給管理サーバは、前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得し、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定し、前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出し、前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されていてもよい。前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定されてもよい。
【0007】
本明細書は、熱供給管理サーバの動作方法も開示する。前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用されてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えていてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であってもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属していてもよい。前記動作方法は、前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得することと、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定することと、前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出することと、前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行することを備えていてもよい。前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定されてもよい。
【0008】
本明細書は、熱供給管理サーバのためのプログラムも開示する。前記熱供給管理サーバは、複数の熱供給装置と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を前記複数の熱供給装置に供給可能な発電設備と、前記熱供給管理サーバを備える熱供給システムで使用されてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、熱媒を蓄える蓄熱ユニットと、電力を利用して前記熱媒を加熱する熱源ユニットを備えていてもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、前記熱源ユニットにより前記熱媒を加熱して、加熱された前記熱媒を前記蓄熱ユニットへ蓄える蓄熱運転を実行可能であってもよい。前記複数の熱供給装置のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属していてもよい。前記プログラムは、前記熱供給管理サーバに、前記発電設備から前記複数の熱供給装置へ供給可能な電力である供給可能電力の経時的変化を示す供給可能電力データを取得するステップと、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定するステップと、前記供給可能電力から前記補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出するステップと、前記判定基準電力データに基づいて、前記複数のグループのそれぞれについて、前記蓄熱運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するステップを実行させてもよい。前記補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において前記補正電力が大きく、前記電力市場価格が低い時間帯において前記補正電力が小さくなるように設定されてもよい。
【0009】
上記の構成では、供給可能電力から補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化に基づいて、それぞれのグループの運転許可時間帯が設定される。この際に、電力市場価格が高い時間帯では補正電力が大きな値となり、電力市場価格が低い時間帯では補正電力が小さな値となるので、判定基準電力は、電力市場価格が高い時間帯では供給可能電力よりも大幅に小さな値となり、電力市場価格が低い時間帯では供給可能電力と同じか、供給可能電力よりもわずかに小さな値となる。上記の構成では、このような判定基準電力データに基づいてそれぞれのグループの運転許可時間帯が設定されるので、電力市場価格が高い時間帯については、複数の熱供給装置の蓄熱運転の消費電力の総和に対する供給可能電力の余裕が比較的大きく、電力市場価格が低い時間帯については、複数の熱供給装置の蓄熱運転の消費電力の総和に対する供給可能電力の余裕が比較的小さいようなスケジューリングが実現される。従って、発電設備が発電する電力が当初の想定よりも減少し、供給可能電力が当初の想定よりも減少する場合であっても、電力市場価格が高い時間帯で供給可能電力の不足を生じにくくすることができる。このような構成とすることによって、発電設備の供給可能電力が当初の想定よりも減少した場合に、電力の不足分の調達コストの増大を抑制することができる。
【0010】
第2の態様では、第1の態様の前記熱供給システムにおいて、前記補正電力データは、前記電力市場価格が第1所定値を下回る時間帯において前記補正電力がゼロとなり、前記電力市場価格が前記第1所定値以上の時間帯において前記補正電力が正の値となるように設定されてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、電力市場価格が第1所定値よりも低い時間帯については、判定基準電力を供給可能電力と一致させることができる。想定される供給可能電力データにより合わせたスケジューリングを実現することができる。
【0012】
第3の態様では、第1又は第2の態様の前記熱供給システムにおいて、前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理において、前記複数のグループのそれぞれについて、前記電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯を前記運転許可時間帯が含まないように、前記運転許可時間帯を設定するように構成されていてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯については、運転許可時間帯が設定されない(言い換えれば、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯は全てのグループについて蓄熱運転を禁止する)ようにすることができる。従って、発電設備が発電する電力が当初の想定よりも減少し、供給可能電力が当初の想定よりも減少する場合であっても、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯で供給可能電力の不足を生じることを確実に防止することができる。
【0014】
第4の態様では、第1から第3の何れか一つの態様の前記熱供給システムにおいて、前記複数の熱供給装置のそれぞれは、燃料を利用して前記熱媒を加熱する補助熱源ユニットをさらに備えていてもよい。前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理を実行した後、前記供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯が存在するか否かを判定し、前記超過時間帯が存在する場合に、前記運転許可時間帯に前記超過時間帯を含むグループを取消候補グループとして特定し、前記取消候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行した場合の熱供給コストを第1コストとして算出し、前記取消候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行せず、代わりに前記補助熱源ユニットを使用する場合の熱供給コストを第2コストとして算出し、前記第1コストが前記第2コストよりも高い場合に、前記取消候補グループについて設定された前記運転許可時間帯を取り消すように構成されていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、超過時間帯が存在する場合に、補助熱源ユニットによって熱供給を行う場合の熱供給コストと、熱源ユニットによって蓄熱運転を行った上で熱供給を行う場合の熱供給コストを比較して、熱供給コストがより低くなるように、取消候補グループの運転許可時間帯を取り消すか否かが決定される。このような構成とすることによって、熱供給システムにおける熱供給コストを低減することができる。
【0016】
第5の態様では、第1から第3の何れか一つの態様の前記熱供給システムにおいて、前記複数の熱供給装置のそれぞれは、燃料を利用して前記熱媒を加熱する補助熱源ユニットをさらに備えていてもよい。前記熱供給管理サーバは、前記スケジューリング処理を実行した後、前記供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯が存在するか否かを判定し、前記超過時間帯が存在する場合に、前記運転許可時間帯に前記超過時間帯を含むグループを短縮候補グループとして特定し、前記短縮候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行した場合の熱供給コストを第1コストとして算出し、前記短縮候補グループに属する前記熱供給装置が前記運転許可時間帯において前記蓄熱運転を実行せず、代わりに前記補助熱源ユニットを使用する場合の熱供給コストを第2コストとして算出し、前記第1コストが前記第2コストよりも高い場合に、前記短縮候補グループについて設定された前記運転許可時間帯を、前記超過時間帯を含まないように短縮するように構成されていてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、超過時間帯が存在する場合に、補助熱源ユニットによって熱供給を行う場合の熱供給コストと、熱源ユニットによって蓄熱運転を行った上で熱供給を行う場合の熱供給コストを比較して、熱供給コストがより低くなるように、短縮候補グループの運転許可時間帯を短縮するか否かが決定される。このような構成とすることによって、熱供給システムにおける熱供給コストを低減することができる。
【0018】
第6の態様では、第4または第5の態様の前記熱供給システムにおいて、前記第1コストは、前記電力市場価格を前記熱源ユニットの熱効率で除算した値に基づいていてもよい。前記第2コストは、燃料ガス市場価格を前記補助熱源ユニットの熱効率で除算した値に基づいていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、簡易な計算によって、第1コストと第2コストをそれぞれ算出することができる。
【0020】
第7の態様では、第6の態様の前記熱供給システムにおいて、前記熱源ユニットは、外気から吸熱して前記熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えていてもよい。前記熱源ユニットの前記熱効率は、前記運転許可時間帯における外気温度に基づいて設定されてもよい。
【0021】
外気から吸熱して熱媒を加熱するヒートポンプ熱源の熱効率は、外気温度に応じて変化する。上記の構成によれば、第1コストをより正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例の給湯システム100の構成を模式的に示す図である。
図2】実施例の貯湯式給湯器104の構成を模式的に示す図である。
図3】実施例の給湯管理サーバ116が実行する運転許可時間帯のスケジューリング処理のフローチャートである。
図4】比較例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、想定される余剰電力の関係の例を示す図である。
図5】比較例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、実際の余剰電力の関係の例を示す図である。
図6】実施例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、想定される余剰電力の関係の例を示す図である。
図7】実施例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、実際の余剰電力の関係の例を示す図である。
図8】実施例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、想定される余剰電力の関係の別の例を示す図である。
図9】実施例の給湯管理サーバ116が実行する別の運転許可時間帯のスケジューリング処理のフローチャートである。
図10】実施例の給湯管理サーバ116によるスケジューリング結果と、想定される余剰電力の関係のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る給湯システム100は、複数の住居102a、102b、・・・のそれぞれに設置された複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・および複数のホームゲートウェイ106a、106b、・・・と、エネルギー事業者108により管理される発電設備110および電力管理サーバ112と、貯湯式給湯器104a、104b、・・・の製造事業者114により管理される給湯管理サーバ116を備えている。複数のホームゲートウェイ106a、106b、・・・と、電力管理サーバ112と、給湯管理サーバ116は、それぞれ、インターネット118に接続されている。
【0024】
なお、以降の説明では、複数の住居102a、102b、・・・のそれぞれ、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のそれぞれ、複数のホームゲートウェイ106a、106b、・・・のそれぞれを、単に住居102、貯湯式給湯器104、ホームゲートウェイ106と表記することがある。
【0025】
(貯湯式給湯器104)
図2に示すように、本実施例に係る貯湯式給湯器104は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。
【0026】
(HPユニット4)
HPユニット4は、電力を利用して、外気から吸熱して水を加熱する熱源である。HPユニット4は、圧縮機10と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16からなるHP熱源17を備えている。HPユニット4は、冷媒(例えばフロン系冷媒)を、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、外気から吸熱して水を加熱する。圧縮機10は、冷媒を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、水との熱交換により冷媒を冷却する。凝縮器12の水流路の両端部には、それぞれ、HP往き経路19とHP戻り経路21が接続されている。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、外気との熱交換により冷媒を加熱する。HPユニット4はさらに、凝縮器12に水を循環させる循環ポンプ18と、凝縮器12に流れ込む水の温度を検出する往きサーミスタ20と、凝縮器12から流れ出る水の温度を検出する戻りサーミスタ22と、外気温度を検出する外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24を備えている。
【0027】
(タンクユニット6)
タンクユニット6は、タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34を備えている。タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に水を蓄える密閉型の容器である。本実施例のタンク30の容量は、例えば100リットルである。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、タンク30の底部の水が、タンク往き経路31およびHP往き経路19を介して、凝縮器12へ送られる。凝縮器12で加熱されて高温となった水は、HP戻り経路21およびタンク戻り経路33を介して、タンク30の頂部からタンク30内に戻される。HPユニット4によって加熱された水がタンク30に流れ込むと、タンク30の内部には、低温の水の層の上に高温の水の層が積み重なった温度成層が形成される。タンク30には、上部の水の温度を検出する上部サーミスタ36と、中間部の水の温度を検出する中間部サーミスタ37と、下部の水の温度を検出する下部サーミスタ38が取り付けられている。
【0028】
タンクユニット6には、給水経路40を介して水道水が供給される。給水経路40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度を検出する入水サーミスタ44が取り付けられている。給水経路40は、タンク30の底部に連通するタンク給水経路46と、混合弁32に連通するタンクバイパス経路48に分岐している。タンク給水経路46とタンクバイパス経路48には、それぞれ、逆止弁50、52が取り付けられている。また、タンクバイパス経路48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水側水量センサ54が取り付けられている。タンク30の頂部と混合弁32は、タンク出湯経路56を介して連通している。タンク出湯経路56には、逆止弁58と、混合弁32に流入するタンク30からの水の流量を検出する湯側水量センサ60が取り付けられている。
【0029】
混合弁32は、タンクバイパス経路48から流れ込む水道水と、タンク出湯経路56から流れ込むタンク30からの水を混合して、第1給湯経路62に送り出す。混合弁32は、図示しないステッピングモータによって弁体を駆動し、タンクバイパス経路48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯経路56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯経路62には、混合弁32から送り出される水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。
【0030】
タンクユニット6からは、第2給湯経路66を介して、台所やシャワー、カラン等の給湯箇所への給湯が行われる。第2給湯経路66には、給湯箇所へ供給される水の温度を検出する給湯出口サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。第1給湯経路62と第2給湯経路66の間は、給湯バイパス経路72によって連通している。給湯バイパス経路72には、バイパス制御弁34が取り付けられている。タンクユニット6は、さらに、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御するタンクコントローラ74を備えている。
【0031】
(バーナユニット8)
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88を備えている。バーナ80は、燃料ガス(例えば都市ガス)の燃焼によって熱交換器82を流れる水を加熱する補助熱源機である。バーナ80には、ガス供給管(図示省略)を介して燃料ガスが供給される。熱交換器82には、バーナ往路90を介して、タンクユニット6の第1給湯経路62からの水が流れ込む。熱交換器82を通過した水は、バーナ復路92を介して、タンクユニット6の第2給湯経路66へ流れ出る。バーナ往路90には、バーナ往路90を流れる水の流量を調整する水量サーボ86と、バーナ往路90を流れる水の流量を検出する水量センサ91が取り付けられている。バーナ往路90とバーナ復路92の間は、バーナバイパス経路94を介して連通している。バーナ往路90とバーナバイパス経路94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往路90からバーナバイパス経路94へ流れる水の流量を調整する。バーナ復路92には、熱交換器82から流れ出る水の温度を検出するバーナ給湯サーミスタ96が取り付けられている。バーナ復路92からは、湯はり経路98が分岐している。湯はり経路98には、湯はり弁88が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり経路98を介して、給湯箇所である浴槽への湯はりが行われる。
【0032】
バーナユニット8はさらに、バーナコントローラ97と、バーナコントローラ97と通信可能なリモコン99と、を備えている。バーナコントローラ97は、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御する。リモコン99は、スイッチやボタン等を介して、ユーザからの各種の操作入力を受け入れる。また、リモコン99は、表示や音声によってユーザに貯湯式給湯器104の設定や動作に関する各種の情報を通知する。
【0033】
HPコントローラ24、タンクコントローラ74、バーナコントローラ97、リモコン99は、何れも、CPU、ROM、RAM等の制御部と、EEPROM等の記憶部を備えており、記憶部に記憶されているプログラムに従って制御部が各種の処理を実行する。HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ97は、互いに通信可能である。従って、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ97が協調して制御を行うことで、貯湯式給湯器104は沸上運転、給湯運転等の各種の動作を行うことができる。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ97を総称して、単にコントローラとも呼ぶ。
【0034】
(沸上運転)
沸上運転では、貯湯式給湯器104は、HPユニット4を駆動して、タンク30内の水を加熱する。沸上運転が開始されると、コントローラは、HP熱源17の圧縮機10を駆動して、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で水を循環させる。これによって、タンク30の底部から吸い出された水は、凝縮器12において沸上目標温度まで加熱されて、タンク30の頂部に戻される。コントローラは、往きサーミスタ20で検出される温度が沸上目標温度に達すると、タンク30内の水が全て沸上目標温度まで加熱された水で置き換えられたと判断して、沸上運転を終了する。
【0035】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯設定温度の水を給湯箇所へ供給する。給湯設定温度は、ユーザによって設定される温度である。コントローラは、水側水量センサ54で検出される流量と、湯側水量センサ60で検出される流量を合算した流量(給湯流量ともいう)が最低動作流量以上となると、カランの開栓や浴槽への湯はりなどにより給湯箇所への給湯が開始されたものと判断する。コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度に応じて、以下の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行する。
【0036】
コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度以上である場合、非燃焼給湯運転を実行する。非燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を禁止するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度となるように、混合弁32の開度を調整する。これによって、給湯箇所に給湯設定温度に温度調整された水が供給される。
【0037】
また、コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度未満の場合、燃焼給湯運転を実行する。燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を許可するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度よりもバーナ80の最小加熱能力の分だけ低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の水と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって給湯設定温度まで加熱されて、給湯箇所へ供給される。なお、燃焼給湯運転には、混合弁32がタンク30側に全閉状態に固定されている場合も含まれる。この場合、コントローラは、バーナ80によって加熱された水が給湯設定温度になるように、バーナ80の加熱能力を調整する。
【0038】
上記の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行中に、給湯流量が最低動作流量を下回ると、コントローラは、カランの閉栓や浴槽への湯はりの終了などにより給湯箇所への給湯が終了したものと判断して、給湯運転を終了する。
【0039】
(ホームゲートウェイ106)
図1に示すように、ホームゲートウェイ106は、例えば無線LAN等を介して、貯湯式給湯器104のコントローラと通信可能である。貯湯式給湯器104のコントローラは、ホームゲートウェイ106を介して、インターネット118に接続可能である。
【0040】
(発電設備110)
発電設備110は、太陽光、風力、波力・潮力、流水・潮汐等の、再生可能エネルギーを利用して発電を行う設備である。エネルギー事業者108は、発電設備110によって発電される電力を、複数の住居102a、102b、・・・や、他の需要者に供給する。なお、エネルギー事業者108は、発電設備110以外の他の発電設備からも、電力市場を介して電力を調達して、複数の住居102a、102b、・・・に電力を供給可能であるが、発電設備110によって発電される電力が利用可能である場合には、発電設備110によって発電される電力を優先して供給する。また、エネルギー事業者108は、燃料ガス市場を介して燃料ガスを調達して、複数の住居102a、102b、・・・に燃料ガスを供給可能である。
【0041】
(電力管理サーバ112)
電力管理サーバ112は、CPU、ROM、RAM等の制御部と、HDD、SSD等の記憶部を備えており、記憶部に記憶されているプログラムに従って制御部が各種の処理を実行する。電力管理サーバ112は、過去の所定期間(例えば1年間)に発電設備110が発電した電力の実績に基づいて、当日に発電設備110が発電する発電電力の経時的変化を示す発電電力データを推定する。なお、電力管理サーバ11は、過去の所定期間における気象データと発電設備110が発電した発電電力の実績、および当日の気象予測データに基づいて、当日に発電設備110が発電する発電電力の経時的変化を示す発電電力データを推定してもよい。また、電力管理サーバ112は、過去の所定期間(例えば1年間)に発電設備110から複数の住居102a、102b、・・・以外の需要者に供給した供給電力の実績に基づいて、当日に発電設備110から複数の住居102a、102b、・・・以外の需要者に供給する供給予定電力の経時的変化を示す供給予定電力データを推定する。なお、電力管理サーバ11は、過去の所定期間における気象データと発電設備110から複数の住居102a、102b、・・・以外の需要者に供給した供給電力の実績、および当日の気象予測データに基づいて、当日に発電設備110から複数の住居102a、102b、・・・以外の需要者に供給する供給予定電力の経時的変化を示す供給予定電力データを推定してもよい。電力管理サーバ112は、毎日、所定時刻(例えば0時)に、発電電力データと供給予定電力データに基づいて、当日に発電設備110から複数の住居102a、102b、・・・に供給可能な余剰電力の経時的変化を示す余剰電力データを推定する。
【0042】
(給湯管理サーバ116)
給湯管理サーバ116は、CPU、ROM、RAM等の制御部と、HDD、SSD等の記憶部を備えており、記憶部に記憶されているプログラムに従って制御部が各種の処理を実行する。給湯管理サーバ116は、インターネット118を介して、電力管理サーバ112と通信可能である。また、給湯管理サーバ116は、インターネット118を介して、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のコントローラのそれぞれと通信可能である。給湯管理サーバ116は、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のそれぞれを、複数のグループのうちの1つに分類して管理している。複数のグループのそれぞれには、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のうちの1つまたは複数が属している。例えば、貯湯式給湯器104aはグループAに属しており、貯湯式給湯器104bはグループBに属しており、他の貯湯式給湯器104も対応するグループにそれぞれ属している。
【0043】
給湯管理サーバ116は、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のそれぞれについて、HPユニット4の平均的な熱効率と、バーナユニット8の平均的な熱効率を、予め記憶している。ここでいうHPユニット4の熱効率は、HPユニット4で水を加熱する際に、水に加えられる熱量(例えば、kWh換算)をHPユニット4で消費する電力量(例えば、kWh換算)で除算したものである。また、ここでいうバーナユニット8の熱効率は、バーナユニット8で水を加熱する際に、水に加えられる熱量(例えば、kWh換算)をバーナユニット8で消費する燃料ガス量(例えば、kWh換算)で除算したものである。
【0044】
給湯管理サーバ116は、インターネット118を介して、当日にエネルギー事業者108が電力市場から電力を調達する際の電力市場価格の経時的な変化を示す電力市場価格データを取得可能である。また、給湯管理サーバ116は、インターネット118を介して、当日にエネルギー事業者108が燃料ガス市場から燃料ガスを調達する際の燃料ガス市場価格の経時的な変化を示す燃料ガス市場価格データを取得可能である。
【0045】
(運転許可時間帯のスケジューリング)
給湯管理サーバ116は、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・で消費される電力について、発電設備110で発電された電力の利用割合が高くなるように、複数のグループのそれぞれについて、そのグループに属する貯湯式給湯器104の沸上運転の実行を許可する運転許可時間帯のスケジューリング処理を行う。複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・は、現在時刻が運転許可時間帯に含まれる場合には、必要に応じて沸上運転を実行し、現在時刻が運転許可時間帯に含まれない場合には、沸上運転を実行しない。給湯管理サーバ116は、毎日、所定時刻(例えば2時)になると、図3に示す処理を行う。
【0046】
S2では、給湯管理サーバ116は、電力管理サーバ112から、余剰電力データを取得する。本実施例では、給湯管理サーバ116から電力管理サーバ112に、余剰電力データの問合せを行い、電力管理サーバ112から給湯管理サーバ116に、問い合わせに対する応答として、余剰電力データが送信される。これとは異なり、余剰電力データは、電力管理サーバ112から給湯管理サーバ116に、定期的に(例えば1日に1回)送信されてもよい。
【0047】
S4では、給湯管理サーバ116は、電力市場価格データに基づいて、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定する。例えば、給湯管理サーバ116は、全ての時刻において、電力市場価格に所定の係数を乗算した値を補正電力として算出することで、補正電力データを設定してもよい。あるいは、給湯管理サーバ116は、電力市場価格が第1所定値を下回る時間帯については、補正電力をゼロとし、電力市場価格が第1所定値以上の時間帯については、電力市場価格に所定の係数を乗算した値を補正電力として算出することで、補正電力データを設定してもよい。
【0048】
S6では、給湯管理サーバ116は、電力市場価格データに基づいて、運転許可時間帯を設定することを禁止する時間帯である運転禁止時間帯を設定する。例えば、給湯管理サーバ116は、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯が存在するか否かを判断し、そのような時間帯が存在する場合には、その時間帯を運転禁止時間帯に設定する。ここで、第2所定値は第1所定値よりも高い値に設定されている。
【0049】
S8では、給湯管理サーバ116は、まだ運転許可時間帯を設定していないグループの中から、運転許可時間帯の設定対象とするグループを設定対象グループとして特定する。
【0050】
S10では、給湯管理サーバ116は、S2で取得された余剰電力データと、S4で設定された補正電力データと、使用予定電力データに基づいて、使用可能電力データを算出する。本実施例において、使用予定電力データは、すでに運転許可時間帯が設定されたグループに属する貯湯式給湯器104の沸上運転で使用される予定の電力である使用予定電力の経時的変化を示している。給湯管理サーバ116は、当日の各時刻について、余剰電力から補正電力と使用予定電力を減算した使用可能電力を算出することで、使用可能電力の経時的変化を示す使用可能電力データを算出する。
【0051】
S12では、給湯管理サーバ116は、S6で設定された運転禁止時間帯と、S10で算出された使用可能電力データに基づいて、設定対象グループの運転許可時間帯を設定する。例えば、給湯管理サーバ116は、運転禁止時間帯における使用可能電力をゼロに補正した上で、設定対象グループの運転許可時間帯が、使用可能電力に最も余裕がある時間帯に割り当てられるように、設定対象グループの運転許可時間帯を設定する。例えば、給湯管理サーバ116は、使用可能電力が最も大きい時刻が運転許可時間帯に含まれるように、設定対象グループの運転許可時間帯を設定してもよい。
【0052】
S14では、給湯管理サーバ116は、S12で運転許可時間帯が設定された設定対象グループに属する貯湯式給湯器104の消費電力と、S12で設定された運転許可時間帯に基づいて、使用予定電力データを更新する。
【0053】
S16では、給湯管理サーバ116は、全てのグループについてスケジューリングが完了したか否かを判断する。全てのグループについてスケジューリングが完了していない場合(NOの場合)、処理はS8へ戻る。
【0054】
S8からS16までの処理を繰り返し実行することによって、それぞれのグループの運転許可時間帯が設定される。この際に、仮に補正電力データを考慮せずに、余剰電力データと使用予定電力データのみから使用可能電力データを算出する場合、図4に示すように、電力市場価格が高い時間帯において、余剰電力と使用予定電力の間にあまり余裕がないスケジューリングが行われることがある。この場合、図5に示すように、実際の余剰電力が想定していた余剰電力よりも少なくなると、電力市場価格が高い時間帯で、余剰電力の不足が生じるおそれがある。このような時間帯において余剰電力に不足が生じると、エネルギー事業者108は電力市場から高価格で電力を調達しなければならなくなり、調達コストの増大を招いてしまう。
【0055】
これに対して、本実施例の給湯システム100では、余剰電力データと使用予定電力データだけではなく、補正電力データについても考慮して、使用可能電力データを算出する。これによって、図6に示すように、電力市場価格が低い時間帯については、余剰電力と使用予定電力の間にあまり余裕を持たせず、電力市場価格が高い時間帯については、余剰電力と使用予定電力の間に十分な余裕を持たせたスケジューリングを実現することができる。この場合、図7に示すように、実際の余剰電力が想定していた余剰電力よりも少なくなっても、余剰電力の不足は、電力市場価格が高い時間帯では生じず、電力市場価格が低い時間帯で生じることになる。このような時間帯において余剰電力に不足が生じる場合、エネルギー事業者108は電力市場から低価格で電力を調達すればよいので、それほど大きな調達コストの増大を招くことは無い。
【0056】
図3のS16で、全てのグループについてスケジューリングが完了すると(YESとなると)、処理はS18へ進む。S18では、給湯管理サーバ116は、余剰電力データと使用予定電力データに基づいて、超過時間帯が存在するか否かを判断する。本実施例において、超過時間帯は、余剰電力から使用予定電力を減算した使用可能電力の値が所定のしきい値(例えばゼロ)に満たない時間帯である。なお、所定のしきい値は、ゼロ以外の値であってもよい。超過時間帯が存在しない場合(NOの場合)、処理はS30へ進む。超過時間帯が存在する場合(YESの場合)、処理はS20へ進む。
【0057】
S20では、給湯管理サーバ116は、運転許可時間帯の取消を行う候補となるグループを、取消候補グループとして特定する。本実施例では、給湯管理サーバ116は、運転許可時間帯に超過時間帯が含まれるグループの中から、取消候補グループを特定する。例えば、図8に示すように、超過時間帯T1と、超過時間帯T2が存在する場合、給湯管理サーバ116は、超過時間帯T1に関して、運転許可時間帯に超過時間帯T1が含まれるグループCおよびグループGの中の1つ(例えばグループG)を取消候補グループとして特定し、超過時間帯T2に関して、運転許可時間帯に超過時間帯T2が含まれるグループE、グループFおよびグループHの中の1つ(例えばグループH)を取消候補グループとして特定する。
【0058】
図3のS22では、給湯管理サーバ116は、取消候補グループに属する貯湯式給湯器104が、運転許可時間帯において沸上運転を実行する場合の給湯コストを、第1コストとして算出する。例えば、第1コストは、以下の式により算出される。
(第1コスト)=(電力市場価格)÷(HPユニット4の熱効率)
ここで、電力市場価格は、例えば、1kWhあたりの価格である。
【0059】
一般に、HPユニット4の熱効率は、外気温度に応じて変化する。このため、給湯管理サーバ116は、インターネット118を介して当日の気象データを取得し、取消候補グループに属する貯湯式給湯器104が設置された住居102での運転許可時間帯における外気温度を特定し、予め記憶されているHPユニット4の平均的な熱効率と、特定された外気温度に基づいて、第1コストの算出に用いるHPユニット4の熱効率を特定してもよい。
【0060】
S24では、給湯管理サーバ116は、取消候補グループに属する貯湯式給湯器104が、運転許可時間帯において沸上運転を実行せず、代わりにバーナユニット8による水の加熱を実行する場合の給湯コストを、第2コストとして算出する。例えば、第2コストは、以下の式により算出される。
(第2コスト)=(燃料ガス市場価格)÷(バーナユニット8の熱効率)
なお、一般的には、都市ガス等の燃料ガスについての燃料ガス市場価格は1mあたりの価格で取引されるが、本実施例では、第1コストとの比較を行うため、燃料ガス市場価格として、1kWhあたりの価格に換算した値を用いている。ただし、第1コストと第2コストの単位が同じであれば、1kWhあたりの価格に限らず、1MJあたりの価格、1kcalあたりの価格等、種々の単位を用いることができる。
【0061】
S26では、給湯管理サーバ116は、S22で算出された第1コストが、S24で算出された第2コストを上回る取消候補グループが存在するか否かを判断する。第1コストが第2コストを上回る取消候補グループが存在しない場合(NOの場合)、処理はS30へ進む。第1コストが第2コストを上回る取消候補グループが存在する場合(YESの場合)、処理はS28へ進む。
【0062】
S28では、給湯管理サーバ116は、第1コストが第2コストを上回る取消候補グループについて、設定された運転許可時間帯を取り消す。運転許可時間帯が取り消されたグループに属する貯湯式給湯器104は、当日の沸上運転の実行が禁止される。S28の後、処理はS30へ進む。
【0063】
図8に示すように、電力市場価格は、1日の間で時間により変動する。これに対して、図示はしていないが、燃料ガス市場価格は、1日の間で時間による変動がない。このため、例えば、超過時間帯T1に関する取消候補グループGについては、運転許可時間帯における電力市場価格が低いので、第1コストが第2コスト以下となる。この場合、グループGの運転許可時間帯は取り消されず、グループGに属する貯湯式給湯器104は運転許可時間帯において沸上運転を実行する。これに対して、例えば、超過時間帯T2に関する取消候補グループHについては、運転許可時間帯における電力市場価格が高いので、第1コストが第2コストを上回る。この場合、グループHの運転許可時間帯が取り消され、グループHに属する貯湯式給湯器104は、超過時間帯における沸上運転の実行が禁止される。なお、この場合に、グループHに属する貯湯式給湯器104については、他の時間帯において沸上運転の実行を許可するように構成してもよい。
【0064】
図3のS30では、給湯管理サーバ116は、それぞれのグループについてスケジューリングした運転許可時間帯を、それぞれのグループに属する貯湯式給湯器104のコントローラに送信する。なお、給湯管理サーバ116は、それぞれのグループについてスケジューリングした運転許可時間帯を、スケジューリングテーブルとして記憶しておいてもよく、貯湯式給湯器104が、必要に応じて、自身が属するグループの運転許可時間帯を給湯管理サーバ116に問い合わせてもよい。S30の後、図3の処理は終了する。
【0065】
なお、給湯管理サーバ116は、図3に示す処理の代わりに、図9に示す処理を実行してもよい。例えば、給湯管理サーバ116は、毎日、所定時刻(例えば2時)になると、図9に示す処理を行う。
【0066】
図9のS2からS18までの処理と、S30の処理は、図3のS2からS18までの処理と、S30の処理と同様である。図9のS18の処理において、超過時間帯が存在しない場合(NOの場合)、処理はS30へ進む。超過時間帯が存在する場合(YESの場合)、処理はS32へ進む。
【0067】
S32では、給湯管理サーバ116は、運転許可時間帯の短縮を行う候補となるグループを、短縮候補グループとして特定する。本実施例では、給湯管理サーバ116は、運転許可時間帯に超過時間帯が含まれるグループのうちで、最後にスケジューリングが行われたグループを短縮候補グループとして特定する。例えば、図8に示すように、超過時間帯T1と、超過時間帯T2が存在する場合、給湯管理サーバ116は、超過時間帯T1に関して、運転許可時間帯に超過時間帯T1が含まれるグループCおよびグループGのうちで最後にスケジューリングが行われたグループ(例えばグループG)を短縮候補グループとして特定し、超過時間帯T2に関して、運転許可時間帯に超過時間帯T2が含まれるグループE、グループFおよびグループHのうちで最後にスケジューリングが行われたグループ(例えばグループH)を短縮候補グループとして特定する。
【0068】
S34では、給湯管理サーバ116は、超過時間帯を所定の時間長さ(例えば30分間)を有する時間枠に分割して、それぞれの時間枠について、短縮候補グループに属する貯湯式給湯器104が沸上運転を実行する場合の給湯コストを、第1コストとして算出する。S34での第1コストの計算は、図3のS22での第1コストの計算と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
S36では、給湯管理サーバ116は、上記したそれぞれの時間枠について、短縮候補グループに属する貯湯式給湯器104が沸上運転を実行せず、代わりにバーナユニット8による水の加熱を実行する場合の給湯コストを、第2コストとして算出する。S36での第2コストの計算は、図3のS24での第2コストの計算と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0070】
S38では、給湯管理サーバ116は、S34で算出された第1コストが、S36で算出された第2コストを上回る時間枠が存在するか否かを判断する。第1コストが第2コストを上回る時間枠が存在しない場合(NOの場合)、処理はS30へ進む。第1コストが第2コストを上回る時間枠が存在する場合(YESの場合)、処理はS40へ進む。
【0071】
S40では、給湯管理サーバ116は、短縮候補グループについて設定されている運転許可時間帯から、第1コストが第2コストを上回る時間枠を削除して、短縮候補グループの運転許可時間帯を短縮する。S40の後、処理はS30へ進む。
【0072】
図10に示す例では、超過時間帯T1に関する取消候補グループGについては、運転許可時間帯における電力市場価格が低いので、超過時間帯のどの時間枠においても第1コストが第2コスト以下となる。この場合、グループGの運転許可時間帯は短縮されない。これに対して、例えば、超過時間帯T2に関する取消候補グループHについては、運転許可時間帯における電力市場価格が高いので、超過時間帯のどの時間枠においても第1コストが第2コストを上回る。この場合、グループHの運転許可時間帯が、超過時間帯を含まないように短縮される。
【0073】
(変形例)
上記の実施例では、熱供給システムとして給湯システム100を例とし、熱供給装置として貯湯式給湯器104を例として説明したが、熱供給システムおよび熱供給装置は暖房等の他の用途で使用される熱を供給するものであってもよい。この場合、熱媒は不凍液等の水以外の熱媒であってもよい。また、上記の実施例では、蓄熱ユニットとしてタンクユニット6を例として説明したが、蓄熱ユニットは他の形態で熱媒を蓄えるものであってもよい。さらに、上記の実施例では、熱源ユニットとして、HPユニット4を例として説明したが、熱源ユニットは電気ヒータ等の他の形態で熱媒を加熱するものであってもよい。
【0074】
上記の実施例では、電力管理サーバ112から給湯管理サーバ116へ、当日に発電設備110から複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・へ供給可能な電力の経時的変化を示すデータとして、発電設備110の余剰電力の経時的な変化を示す余剰電力データを送信する構成について説明した。これとは異なり、電力管理サーバ112から給湯管理サーバ116へ、当日に発電設備110から複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・へ供給可能な電力の経時的変化を示すデータとして、発電設備110の発電電力の経時的変化を示す発電電力データを送信する構成としてもよい。
【0075】
上記の実施例では、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のそれぞれが、HPユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備える構成について説明した。これとは異なり、複数の貯湯式給湯器104a、104b、・・・のうち、一部の貯湯式給湯器104’が、HPユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えており、残りの貯湯式給湯器104’’が、HPユニット4と、タンクユニット6を備えるものの、バーナユニット8を備えていない構成としてもよい。この場合、バーナユニット8を備える貯湯式給湯器104’と、バーナユニット8を備えていない貯湯式給湯器104’’は別々のグループに分類され、図3のS20-S28の処理や図9のS32-S40の処理は、バーナユニット8を備える貯湯式給湯器104’が属するグループのみを対象として行われる。
【0076】
上記の実施例では、給湯管理サーバ116が、全ての時間帯(例えば、当日の2時から翌日の2時まで)を対象として、それぞれのグループの運転許可時間帯を設定し、現在時刻が運転許可時間帯に含まれる場合に沸上運転の実行を許可し、現在時刻が運転許可時間帯に含まれない場合に沸上運転を禁止する構成について説明した。これとは異なり、給湯管理サーバ116は、余剰電力が多くなる特定の時間帯(例えば当日の6時から18時まで)のみを対象として、それぞれのグループの運転許可時間帯を設定し、現在時刻が運転許可時間帯に含まれる場合に沸上運転の実行を許可し、現在時刻が運転許可時間帯に含まれない場合に沸上運転を禁止する構成としてもよい。この場合、上記以外の時間帯(例えば当日の2時から6時までと、当日の18時から翌日の2時まで)については、全てのグループについて沸上運転の実行が許可されてもよい。
【0077】
以上のように、一またはそれ以上の実施形態において、給湯システム100(熱供給システムの例)は、複数の貯湯式給湯器104(熱供給装置の例)と、再生可能エネルギーを利用して発電した電力を複数の貯湯式給湯器104に供給可能な発電設備110と、給湯管理サーバ116(熱供給管理サーバ)を備えている。複数の貯湯式給湯器104のそれぞれは、水(熱媒の例)を蓄えるタンクユニット6(蓄熱ユニットの例)と、電力を利用して水を加熱するHPユニット4(熱源ユニットの例)を備えている。複数の貯湯式給湯器104のそれぞれは、HPユニット4により水を加熱して、加熱された水をタンクユニット6へ蓄える沸上運転(蓄熱運転の例)を実行可能である。複数の貯湯式給湯器104のそれぞれは、複数のグループのうちの何れか1つに属している。給湯管理サーバ116は、発電設備110から複数の貯湯式給湯器104へ供給可能な電力である余剰電力(供給可能電力の例)の経時的変化を示す余剰電力データ(供給可能電力データの例)を取得し、補正電力の経時的変化を示す補正電力データを設定し、余剰電力から補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化を示す判定基準電力データを算出し、判定基準電力データに基づいて、複数のグループのそれぞれについて、沸上運転の実行を許可する時間帯である運転許可時間帯を設定するスケジューリング処理を実行するように構成されている。補正電力データは、電力市場価格が高い時間帯において補正電力が大きく、電力市場価格が低い時間帯において補正電力が小さくなるように設定される。
【0078】
上記の構成では、余剰電力から補正電力を減算した判定基準電力の経時的変化に基づいて、それぞれのグループの運転許可時間帯が設定される。この際に、電力市場価格が高い時間帯では補正電力が大きな値となり、電力市場価格が低い時間帯では補正電力が小さな値となるので、判定基準電力は、電力市場価格が高い時間帯では余剰電力よりも大幅に小さな値となり、電力市場価格が低い時間帯では余剰電力と同じか、余剰電力よりもわずかに小さな値となる。上記の構成では、このような判定基準電力データに基づいてそれぞれのグループの運転許可時間帯が設定されるので、電力市場価格が高い時間帯については、複数の貯湯式給湯器104の沸上運転の消費電力の総和に対する余剰電力の余裕が比較的大きく、電力市場価格が低い時間帯については、複数の貯湯式給湯器104の沸上運転の消費電力の総和に対する余剰電力の余裕が比較的小さいようなスケジューリングが実現される。従って、発電設備110が発電する電力が当初の想定よりも減少し、余剰電力が当初の想定よりも減少する場合であっても、電力市場価格が高い時間帯で余剰電力の不足を生じにくくすることができる。このような構成とすることによって、発電設備110の余剰電力が当初の想定よりも減少した場合に、電力の不足分の調達コストの増大を抑制することができる。
【0079】
一またはそれ以上の実施形態において、補正電力データは、電力市場価格が第1所定値を下回る時間帯において補正電力がゼロとなり、電力市場価格が第1所定値以上の時間帯において補正電力が正の値となるように設定される。
【0080】
上記の構成によれば、電力市場価格が第1所定値よりも低い時間帯については、判定基準電力を余剰電力と一致させることができる。想定される余剰電力データにより合わせたスケジューリングを実現することができる。
【0081】
一またはそれ以上の実施形態において、給湯管理サーバ116は、スケジューリング処理において、複数のグループのそれぞれについて、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯を運転許可時間帯が含まないように、運転許可時間帯を設定するように構成されている。
【0082】
上記の構成によれば、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯については、運転許可時間帯が設定されない(言い換えれば、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯は全てのグループについて沸上運転を禁止する)ようにすることができる。従って、発電設備110が発電する電力が当初の想定よりも減少し、余剰電力が当初の想定よりも減少する場合であっても、電力市場価格が第2所定値以上となる時間帯で余剰電力の不足を生じることを確実に防止することができる。
【0083】
一またはそれ以上の実施形態において、複数の貯湯式給湯器104のそれぞれは、燃料を利用して水を加熱するバーナユニット8(補助熱源ユニットの例)をさらに備えている。給湯管理サーバ116は、スケジューリング処理を実行した後、供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯T1,T2が存在するか否かを判定し、超過時間帯T1,T2が存在する場合に、運転許可時間帯に超過時間帯T1,T2を含むグループを取消候補グループとして特定し、取消候補グループに属する貯湯式給湯器104が運転許可時間帯において沸上運転を実行した場合の給湯コスト(熱供給コストの例)を第1コストとして算出し、取消候補グループに属する貯湯式給湯器104が運転許可時間帯において沸上運転を実行せず、代わりにバーナユニット8を使用する場合の給湯コストを第2コストとして算出し、第1コストが第2コストよりも高い場合に、取消候補グループについて設定された運転許可時間帯を取り消すように構成されている。
【0084】
上記の構成によれば、超過時間帯T1,T2が存在する場合に、バーナユニット8によって給湯を行う場合の給湯コストと、HPユニット4によって沸上運転を行った上で給湯を行う場合の給湯コストを比較して、給湯コストがより低くなるように、取消候補グループの運転許可時間帯を取り消すか否かが決定される。このような構成とすることによって、給湯システム100における給湯コストを低減することができる。
【0085】
一またはそれ以上の実施形態において、複数の貯湯式給湯器104のそれぞれは、燃料を利用して水を加熱するバーナユニット8(補助熱源ユニットの例)をさらに備えている。給湯管理サーバ116は、スケジューリング処理を実行した後、供給可能電力から使用予定電力を減算した使用可能電力が所定のしきい値に満たない時間帯である超過時間帯T1,T2が存在するか否かを判定し、超過時間帯T1,T2が存在する場合に、運転許可時間帯に超過時間帯T1,T2を含むグループを短縮候補グループとして特定し、短縮候補グループに属する貯湯式給湯器104が運転許可時間帯において沸上運転を実行した場合の給湯コスト(熱供給コストの例)を第1コストとして算出し、短縮候補グループに属する貯湯式給湯器104が運転許可時間帯において沸上運転を実行せず、代わりにバーナユニット8を使用する場合の給湯コストを第2コストとして算出し、第1コストが第2コストよりも高い場合に、短縮候補グループについて設定された運転許可時間帯を、超過時間帯を含まないように短縮するように構成されている。
【0086】
上記の構成によれば、超過時間帯T1,T2が存在する場合に、バーナユニット8によって給湯を行う場合の給湯コストと、HPユニット4によって沸上運転を行った上で給湯を行う場合の給湯コストを比較して、給湯コストがより低くなるように、短縮候補グループの運転許可時間帯を短縮するか否かが決定される。このような構成とすることによって、給湯システム100における給湯コストを低減することができる。
【0087】
一またはそれ以上の実施形態において、第1コストは、電力市場価格をHPユニット4の熱効率で除算した値に基づいている。第2コストは、燃料ガス市場価格をバーナユニット8の熱効率で除算した値に基づいている。
【0088】
上記の構成によれば、簡易な計算によって、第1コストと第2コストをそれぞれ算出することができる。
【0089】
一またはそれ以上の実施形態において、HPユニット4は、外気から吸熱して水を加熱するヒートポンプ熱源を備えている。HPユニット4の熱効率は、運転許可時間帯における外気温度に基づいて設定される。
【0090】
外気から吸熱して熱媒を加熱するヒートポンプ熱源の熱効率は、外気温度に応じて変化する。上記の構成によれば、第1コストをより正確に算出することができる。
【0091】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0092】
4 :HPユニット
6 :タンクユニット
8 :バーナユニット
10 :圧縮機
12 :凝縮器
14 :膨張弁
16 :蒸発器
17 :HP熱源
18 :循環ポンプ
19 :HP往き経路
20 :往きサーミスタ
21 :HP戻り経路
22 :戻りサーミスタ
23 :外気温度サーミスタ
24 :HPコントローラ
30 :タンク
31 :タンク往き経路
32 :混合弁
33 :タンク戻り経路
34 :バイパス制御弁
36 :上部サーミスタ
37 :中間部サーミスタ
38 :下部サーミスタ
40 :給水経路
42 :減圧弁
44 :入水サーミスタ
46 :タンク給水経路
48 :タンクバイパス経路
50 :逆止弁
52 :逆止弁
54 :水側水量センサ
56 :タンク出湯経路
58 :逆止弁
60 :湯側水量センサ
62 :第1給湯経路
64 :混合サーミスタ
66 :第2給湯経路
68 :給湯出口サーミスタ
70 :逆止弁
72 :給湯バイパス経路
74 :タンクコントローラ
80 :バーナ
82 :熱交換器
84 :バイパスサーボ
86 :水量サーボ
88 :湯はり弁
90 :バーナ往路
91 :水量センサ
92 :バーナ復路
94 :バーナバイパス経路
96 :バーナ給湯サーミスタ
97 :バーナコントローラ
98 :湯はり経路
99 :リモコン
100 :給湯システム
102 :住居
102a :住居
102b :住居
104 :貯湯式給湯器
104’ :貯湯式給湯器
104’’:貯湯式給湯器
104a :貯湯式給湯器
104b :貯湯式給湯器
106 :ホームゲートウェイ
106a :ホームゲートウェイ
106b :ホームゲートウェイ
108 :電力事業者
110 :発電設備
112 :電力管理サーバ
114 :製造事業者
116 :給湯管理サーバ
118 :インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10