(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111821
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】光通信装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20230803BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
G02B26/08 D
G02B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161179
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2022013684
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優介
(72)【発明者】
【氏名】坂本 敬志
(72)【発明者】
【氏名】布施 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 正光
(72)【発明者】
【氏名】今宮 悠一
(72)【発明者】
【氏名】田口 博規
【テーマコード(参考)】
2H042
2H141
【Fターム(参考)】
2H042CA15
2H042CA17
2H141MA12
2H141MB39
2H141MC01
2H141MC05
2H141MC09
2H141MD12
2H141MD20
2H141MD22
2H141MD34
2H141ME01
2H141ME09
2H141ME24
2H141ME25
2H141MF02
2H141MG01
2H141MZ12
2H141MZ30
(57)【要約】
【課題】光通信装置において、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現する。
【解決手段】光通信装置(1)は、一対のウェッジプリズム対(10)と制御部(20)とを備える。制御部(20)は、下記式(1)による各ウェッジプリズムの回転角度Ψだけウェッジプリズム(11、12)を互いに反対方向に回転させて通信光の合成偏角δ
Tを制御する。δは各ウェッジプリズムの偏角(°)を表す。
【数1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚のウェッジプリズムからなる少なくとも一対のウェッジプリズム対と、
前記二枚のウェッジプリズムを互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδ
T(°)とするために、前記回転角度Ψが予め定められた角度以下になる範囲で、前記回転角度Ψを下記式(1)に従って設定する、
光通信装置。
【数1】
(式(1)中、δは各ウェッジプリズムの偏角(°)を表す。)
【請求項2】
各ウェッジプリズムの偏角δは、そのウェッジプリズムの頂角をWとして、下記式(2)により与えられる、請求項1に記載の光通信装置。
【数2】
(式(2)中、nは各ウェッジプリズムの屈折率を表す。)
【請求項3】
前記光通信装置は、第一ウェッジプリズム対および第二ウェッジプリズム対からなるウェッジプリズム群を備え、
前記第一ウェッジプリズム対は、前記ウェッジプリズム群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸に直交する第一の方向の成分を調整し、
前記第二ウェッジプリズム対は、前記ウェッジプリズム群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸および前記第一の方向の両方に直交する第二の方向の成分を調整する、
請求項1または2に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記光通信装置は、第一ウェッジプリズム対および第二ウェッジプリズム対からなる第一ウェッジプリズム群と、第三ウェッジプリズム対および第四ウェッジプリズム対からなる第二ウェッジプリズム群と、を備え、
前記第一ウェッジプリズム対および前記第二ウェッジプリズム対は、前記第一ウェッジプリズム群および前記第二ウェッジプリズム群の両群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸に直交する第一の方向の成分を調整し、
前記第三ウェッジプリズム対および前記第四ウェッジプリズム対は、前記第一ウェッジプリズム群および前記第二ウェッジプリズム群の両群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸および前記第一の方向の両方に直交する第二の方向の成分を調整する、
請求項1または2に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記光通信装置は、第一ウェッジプリズム対および第二ウェッジプリズム対からなる第一ウェッジプリズム群と、第三ウェッジプリズム対および第四ウェッジプリズム対からなる第二ウェッジプリズム群と、を備え、
前記第一ウェッジプリズム対のウェッジプリズムおよび前記第二ウェッジプリズム対のウェッジプリズムは、第一の駆動周波数の範囲で駆動し、
前記第三ウェッジプリズム対のウェッジプリズムおよび前記第四ウェッジプリズム対のウェッジプリズムは、前記第一の駆動周波数の範囲と異なる第二の駆動周波数の範囲で駆動する、
請求項1または2に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記第一ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの頂角と前記第二ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの頂角とが異なる、請求項5に記載の光通信装置。
【請求項7】
二枚のウェッジプリズムからなる少なくとも一対のウェッジプリズム対と、前記二枚のウェッジプリズムを互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部と、を備えた通信装置を製造する製造方法であって、
前記二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδ
T(°)とするため必要な前記回転角度Ψであって、下記式(1)に従って算出される前記回転角度Ψが予め定められた角度以下になるように、各ウェッジプリズムの偏角δ(°)を設定する工程を含む、製造方法。
【数3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第五世代移動通信システム)などの電波による通信技術が劇的な高速化を遂げているが、その通信速度は理論的に上限に達している。通信のさらなる高速化を実現することは、コストおよび実現性の観点から困難である。その中でも、通信のさらなる高速化を実現するための技術として、光無線通信技術が注目されている。
【0003】
光は電磁波であるが、利用の自由度が電波に比べて高く、直進性が高いことから電波のように広い範囲に伝播しないため、セキュリティ上優位である。このため、固定された物体間の通信に適していると考えられ、また、人工衛星間の宇宙空間における通信においても電波を補完する技術として有利と考えられている。
【0004】
光通信技術には、二つのウェッジプリズムを異なる速度だが同じ回転方向で回転させるレーザービームを走査する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光無線通信において、振動ノイズキャンセル機構は、通信の安定性向上のために必要である。たとえば、大気の揺らぎ、航空機の振動または建物の振動などによる通信光の高周波数での振動が問題となるが、このような高周波数で振動する通信光の防振に対応可能な高速動作のノイズキャンセル機構を実現することが難しい。このように、従来、ウェッジプリズムの高速動作での防振の実用に適したウェッジプリズムの高速動作のための条件については、検討の余地が残されている。
【0007】
本発明の一態様は、光通信装置において、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光通信装置は、二枚のウェッジプリズムからなる少なくとも一対のウェッジプリズム対と、前記二枚のウェッジプリズムを互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδT(°)とするために、前記回転角度Ψが予め定められた角度以下になる範囲で、前記回転角度Ψを下記式(1)に従って設定する。式(1)中、δは各ウェッジプリズムの偏角(°)を表す。
【0009】
【0010】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光通信装置の製造方法は、二枚のウェッジプリズムからなる少なくとも一対のウェッジプリズ対と、前記二枚のウェッジプリズムを互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部と、を備えた通信装置を製造する製造方法であって、前記二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδT(°)とするため必要な前記回転角度Ψであって、上記式(1)に従って算出される前記回転角度Ψが予め定められた角度以下になるように、各ウェッジプリズムの偏角δ(°)を設定する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、光通信装置において、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態1に係る光通信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の模式的な分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の一例の模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の他の例の模式的な斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係る光通信装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態におけるアクチュエータの第一の態様から第三の態様を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態におけるアクチュエータの第二の態様を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態におけるアクチュエータの第三の態様を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の実施形態4におけるウェッジプリズムの配置を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の実施形態5におけるウェッジプリズムの配置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0014】
[装置の構成]
図1は、本発明の実施形態1に係る光通信装置の構成を模式的に示す図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の模式的な分解斜視図である。
図1および
図2に示されるように、光通信装置1は、第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12からなる一対のウェッジプリズム対10と、第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12を互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部20と、を備えている。また、光通信装置1は、発光素子30と、加速度センサ40と、ケーシング50をさらに備えている。
【0015】
第一ウェッジプリズム11は、第一回転板111に支持されている。第一回転板111は、円環状の平面形状を有する板状の部材であり、中央の円形の開口部に第一ウェッジプリズム11が配置されている。開口部を囲む円環部には、円環状の凹部が形成されており、当該凹部内には、第一磁石112が配置されている。第一磁石112は、円環部の周方向における第一の位置に配置されている。第二ウェッジプリズム12も、第一ウェッジプリズム11と同様に、第二回転板121に支持されており、第二回転板121には、第二磁石122が配置されている。
【0016】
なお、第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12の各ウェッジプリズムの偏角δ(°)は、そのウェッジプリズムの頂角をW(°)、そのウェッジプリズムの屈折率をnとして、下記式(2)により与えられる。光通信装置1における第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12の頂角W(°)は、高速運転を実現する観点から、0.1°以上であることが好ましい。頂角Wは、合成偏角の制御の精度の観点から10°以下であることが好ましい。
【0017】
【0018】
第一回転板111および第二回転板121は、支持板13によって回転可能に支持されている。支持板13は、円環状の平面形状を有する板状の部材であり、支持板13の第一主面上に第一回転板111を回転可能に支持し、支持板13の第二主面上に第二回転板121を回転可能に支持している。第一回転板111、第二回転板121および支持板13は、平面視したときに回転軸CAを中心として配置されている。第一回転板111および第二回転板121、すなわち第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12、は、回転軸CAを軸として回転する。
【0019】
支持板13は、第一回転板111および第二回転板121と同様の平面形状を有しており、円環部には、第一コイル131、第二コイル132、第一ホール素子133、第二ホール素子134、第一ヨーク135および第二ヨーク136を有している。
【0020】
第一コイル131は、支持板13の周方向において、第一磁石112に対向する位置に配置されている。第二コイル132は、支持板13の周方向において、第二磁石122に対向する位置に配置されている。第一ホール素子133は、第一コイル131の内側に配置されており、第一ヨーク135は、第一コイル131と重なる位置であって第一磁石112とは反対側の位置に配置されている。第二ホール素子134は、第二コイル132の内側に配置されており、第二ヨーク136は、第二コイル132と重なる位置であって第二磁石122とは反対側の位置に配置されている。
【0021】
光通信装置1は、第一コイル131および第二コイル132に通電可能に構成されている。第一磁石112および第一コイル131は、第一コイル131への通電によって第一ウェッジプリズム11を回転させるアクチュエータとしてのボイスコイルモータを構成している。同様に、第二磁石122および第二コイル132は、第二コイル132への通電によって第二ウェッジプリズム12を回転させるアクチュエータとしてのボイスコイルモータを構成している。
【0022】
さらに、光通信装置1は、第一ホール素子133および第二ホール素子134から出力される電圧値を検出可能に構成されている。ホール素子は、磁石とヨークとの間に形成される磁場に応じた電圧力を出力する素子である。第一ホール素子133および第二ホール素子134は、それぞれ、第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12の回転方向における位置を検出する位置センサに該当する。
【0023】
発光素子30は、光通信に利用される通信光を発生する素子であり、例えば電気を光に変換する素子であってよい。発光素子30の例には、発光ダイオードおよび半導体レーザが含まれる。また、加速度センサ40は、光通信装置1(またはケーシング50)の傾きを検出するセンサである。さらに、ケーシング50は、上記の各種構成を一体的に支持する支持部材である。
【0024】
[ウェッジプリズムの回転の制御]
光通信装置1におけるウェッジプリズムの回転の制御について説明する。
【0025】
制御部20は、第一ホール素子133および第二ホール素子134から出力される電圧に応じて、第一ウェッジプリズム11の回転角度(現在位置)および第二ウェッジプリズム12の現在位置を取得する。
【0026】
制御部20は、加速度センサ40の出力値に応じて第一ウェッジプリズム11の回転角度および第二ウェッジプリズム12の回転角度の指令値を取得する。たとえば、制御部20は、光通信装置1の振動を検出した加速度センサ40の出力値に応じてこの振動を打ち消すように通信光を振動させるための第一ウェッジプリズム11の回転角度および第二ウェッジプリズム12の回転角度を取得する。ウェッジプリズムの回転角度は、特定の範囲において偏角と線形近似する。制御部20は、このような線形近似の関係により、第一ウェッジプリズム11の回転角度および第二ウェッジプリズム12の回転角度を取得する。
【0027】
ここで制御部20は、第一ウェッジプリズム11の回転角度および第二ウェッジプリズム12の合成偏角をδT(°)とするために、回転角度Ψが予め定められた角度以下になる範囲で、回転角度Ψを下記式(1)に従って設定する。なお、δは第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12の偏角(°)を表す。
【0028】
【0029】
制御部20は、取得した第一ウェッジプリズム11の回転角度および第二ウェッジプリズム12の回転角度に応じて、第一コイル131および第二コイル132への電力量を取得する。
【0030】
制御部20は、取得した電力量の電力を電源から第一コイル131および第二コイル132のそれぞれへ供給させて第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12をそれぞれ回転させる。こうして、第一ウェッジプリズム11および第二ウェッジプリズム12の所望の回転角度が実現する。
【0031】
[製造方法]
光通信装置1は、前述した式(1)を満たすように設計される以外は、公知のウェッジプリズムの回転機構、光学素子および制御機構によって構成することが可能である。すなわち、光通信装置1は、二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδT(°)とするため必要な回転角度Ψであって、上記の式(1)に従って算出される回転角度Ψが予め定められた角度以下になるように、各ウェッジプリズムの偏角δ(°)を設定する工程を含む方法によって製造することが可能である。
【0032】
回転角度Ψについて、「予め定められた所定の角度以下」は、光通信装置1の構成に特有の角度として求めることが可能である。「所定の角度」は、光通信装置に求められる運転条件を満たす回転角度Ψの最大値である。「所定の角度」は、計算により求めることが可能であり、実験により確認することが可能である。また、「所定の角度」は、光通信装置1におけるアクチュエータの推力、および、回転運動における慣性を考慮したウェッジプリズムの外径、などによって調整することが可能である。本実施形態の光通信装置1では、当該所定の角度は、例えば100Hzの高速動作を実現する観点から、10°以下であることが好ましい。
【0033】
[本実施形態の主な作用効果]
光通信装置1は、特定の動作範囲においてウェッジプリズムを高速で回転運動させることが可能である。したがって、光通信装置1は、大気の揺らぎ、建物の振動または航空機の振動による通信光の打ち消すことが可能であり、光通信の安定性をより一層向上させることが可能である。一例を挙げると、光通信装置1は、通信光を100Hz以上の周波数で振動させる、100Hz以上の高速動作が実現可能である。
【0034】
[角度計算の論理]
以下に、本発明の実施形態におけるウェッジプリズムの回転角度の算出に関する論理を説明する。
【0035】
一枚のウェッジプリズムの頂角をW(°)、偏角をδ(°)とすると、下記式(3)が成り立つ。式(3)中、nは、ウェッジプリズムの屈折率であり、n’は媒質(例えば空気)の屈折率である。光通信装置が空気中または真空中に配置されるとすると、n’は1とみなせることから、式(3)から式(4)および前述の式(2)がそれぞれ導き出される。
【0036】
【0037】
次に、二枚のウェッジプリズムによる偏角について説明する。同一回転軸上に併設される二枚のウェッジプリズムについて、第一のウェッジプリズムの偏角δ1(°)は下記式(5)で表される。式(5)中、δ1xは、回転軸をz軸としたときのそれに直交するx軸方向におけるδ1の成分を表し、δ1yは、回転軸をz軸としたときのx軸およびz軸の両方に直交するx軸方向におけるδ1の成分を表す。δ1xは下記式(6)で表され、δ1yは下記式(7)で表される。「Ψ1」は、第一のウェッジプリズムの回転角度を表す。δ1は下記式(8)で表され、同様に、第二のウェッジプリズムの偏角δ2(°)は下記式(9)で表される。「Ψ2」は、第二のウェッジプリズムの回転角度を表す。
【0038】
【0039】
第一のウェッジプリズムおよび第二のウェッジプリズムの両方を通過した光の偏角を合成偏角δT(°)とすると、δTのx軸方向の成分δTxは下記式(10)で表され、δTのy軸方向の成分δTyは下記式(11)で表される。「δ2x」はδ2のx軸方向における成分を表し、「δ2y」はδ2のy軸方向における成分を表す。よって、合成偏角δTは、下記式(12)で表される。
【0040】
【0041】
第一のウェッジプリズムおよび第二のウェッジプリズムが同じ頂角を有し、かつ互いに反対方向に同一の回転角度だけ回転させる場合では、δ、Ψは、それぞれ下記式(13)、式(14)で表される。したがって、合成偏角δTは、下記式(15)で表される。
【0042】
【0043】
よって、第一のウェッジプリズムおよび第二のウェッジプリズムの各ウェッジプリズムの偏角をδ、各ウェッジプリズムの回転角度の絶対値をΨとすると、各ウェッジプリズムの回転角度Ψは、前述の式(1)で表される。さらに、式(1)に式(2)を代入すると、各ウェッジプリズムの回転角度Ψは、下記式(16)で表される。
【0044】
【0045】
以下、本実施形態に関する具体的な実験例を説明する。
【0046】
[実験例]
図1に示されるような光通信装置を用いて二枚のウェッジプリズムの合成偏角を高速で振動させる実験を実施した。第一ウェッジプリズムと第二ウェッジプリズムには同種のウェッジプリズムを用いた。ウェッジプリズムの厚みは、ウェッジプリズムの最も厚い部分の厚さである。本実験例における光通信装置の光源およびウェッジプリズムは以下の通りである。
光源:レーザ
ウェッジプリズムの外径:15mm
ウェッジプリズムの厚み:1mm
ウェッジプリズムの頂角:7°
【0047】
ウェッジプリズムを回転運動させるアクチュエータはボイスコイルモータである。当該ボスコイルモータにおける動作範囲は、ウェッジプリズムの回転方向のうちの一方を+、他方を-で表すと、ウェッジプリズムの回転角度で±4.28°である。
【0048】
本実験例では、制御部に、特定の振動を表す指令値を入力し、当該指令値に応じた合成偏角δTを実現するウェッジプリズムの回転角度Ψを設定させ、パルス幅変調(PWM)によってアクチュエータを駆動させて、設定した回転角度Ψでのウェッジプリズムの回転運動を実施させる。こうして、光源からのレーザ光を垂直方向に周期的に偏向させて振動させる。そして、レーザ光の垂直方向の周期的な偏向と、上記の指令値が表す特定の振動との周期の一致度を確認する。
【0049】
その結果、本実験例の光通信装置は、回転角度±1.6°で100Hzの周波数の振動の指令値に追従するレーザ光の偏向、すなわち光点の垂直方向における100Hzの振動、を実現した。
【0050】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0051】
[ウェッジプリズムが一群二対四枚の例]
図3は、本発明の実施形態2に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の一例の模式的な斜視図である。
図3に示されるように、本例の光通信装置は、第一ウェッジプリズム対210および第二ウェッジプリズム対220からなるウェッジプリズム群200を備えている。第一ウェッジプリズム対210および第二ウェッジプリズム対220は、発光素子側からこの順で配置されている。いずれのウェッジプリズムもその回転軸はCAである。
【0052】
第一ウェッジプリズム対210は、第一ウェッジプリズム211および第二ウェッジプリズム212を有する。第二ウェッジプリズム対220は、第三ウェッジプリズム221および第四ウェッジプリズム222を有する。第一ウェッジプリズム対210および第二ウェッジプリズム対220のそれぞれは、制御部20を共有しており、それ以外は前述した実施形態1のウェッジプリズム対10と同様に構成されている。
【0053】
なお、制御部20は、第一ウェッジプリズム対210の第一ウェッジプリズム211および第二ウェッジプリズム212を互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて、通信光の合成偏角におけるx軸方向の成分の大きさを制御するように構成されている。また、制御部20は、第二ウェッジプリズム対220の第三ウェッジプリズム221および第四ウェッジプリズム222を互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて、通信光の合成偏角におけるy軸方向の成分の大きさを制御するように構成されている。
【0054】
このように、本例の光通信装置は、第一ウェッジプリズム対210がウェッジプリズム群200の合成偏角δTにおける、各ウェッジプリズム211、212、221および222の回転軸CAに直交する第一の方向(x軸方向)の成分を調整するように構成されている。また、本例の光通信装置は、第二ウェッジプリズム対220がウェッジプリズム群200の合成偏角δTにおける、各ウェッジプリズム211、212、221および222の回転軸CAおよび上記の第一の方向の両方に直交する第二の方向(x軸方向)の成分を調整するように構成されている。
【0055】
[ウェッジプリズムが二群四対八枚の例]
図4は、本発明の実施形態2に係る光通信装置におけるウェッジプリズム対の他の例の模式的な斜視図である。
図4に示されるように、本例の光通信装置は、第一ウェッジプリズム対310および第二ウェッジプリズム対320からなる第一ウェッジプリズム群301と、第三ウェッジプリズム対330および第四ウェッジプリズム対340からなる第二ウェッジプリズム群302と、を備えている。第一ウェッジプリズム群301および第二ウェッジプリズム群302は、発光素子側からこの順で配置されており、いずれのウェッジプリズムもその回転軸はCAである。
【0056】
第一ウェッジプリズム群301において、第一ウェッジプリズム対310は、第一ウェッジプリズム311および第二ウェッジプリズム312を有し、第二ウェッジプリズム対320は、第三ウェッジプリズム321および第四ウェッジプリズム322を有する。また、第二ウェッジプリズム群302において、第三ウェッジプリズム対330は、第五ウェッジプリズム331および第六ウェッジプリズム332を有し、第四ウェッジプリズム対340は、第七ウェッジプリズム341および第八ウェッジプリズム342を有する。各ウェッジプリズム群において、各ウェッジプリズムは、発光素子側から上記の順で配置されている。
【0057】
第一ウェッジプリズム対310から第四ウェッジプリズム対340のそれぞれは、制御部20を共有しており、それ以外は前述した実施形態1のウェッジプリズム対10と同様に構成されている。
【0058】
なお、制御部20は、第一ウェッジプリズム対310および第二ウェッジプリズム対320のそれぞれにおいて、対をなすウェッジプリズムを互いに反対方向に、そして両ウェッジプリズム対の四枚のウェッジプリズムを同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて、通信光の合成偏角におけるx軸方向の成分の大きさを制御するように構成されている。また、制御部20は、第三ウェッジプリズム対330および第四ウェッジプリズム対340のそれぞれにおいて、対をなすウェッジプリズムを互いに反対方向に、そして両ウェッジプリズム対の四枚のウェッジプリズムを同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて、通信光の合成偏角におけるy軸方向の成分の大きさを制御するように構成されている。
【0059】
このように、本例の光通信装置は、第一ウェッジプリズム対310および第二ウェッジプリズム対320が第一ウェッジプリズム群301および第二ウェッジプリズム群302の両群の合成偏角におけるx軸方向の成分を調整するように構成されている。また、本例の光通信装置は、第三ウェッジプリズム対330および第四ウェッジプリズム対340が第一ウェッジプリズム群301および第二ウェッジプリズム群302の両群の合成偏角におけるy軸方向の成分を調整するように構成されている。
【0060】
上記のように複数のウェッジプリズム対を有する実施形態は、以下の説明から明らかなように、光通信装置の高速運転に有利である。
【0061】
[回転角度の範囲の説明]
本発明の実施形態において、合成偏角におけるx軸方向の成分の大きさは、x軸方向の偏角を変化させるウェッジプリズムを一回転させることで特定の範囲内で変化する。同様に、合成偏角におけるy軸方向の成分の大きさは、y軸方向の偏角を変化させるウェッジプリズムを一回転させることで特定の範囲内で変化する。
【0062】
「x軸方向の偏角を変化させるウェッジプリズム」とは、実施形態1では第一ウェッジプリズム11である。実施形態2における一群二対四枚の形態では、第一ウェッジプリズム211および第二ウェッジプリズム212(第一ウェッジプリズム対210のウェッジプリズム)である。二群四対八枚の形態では、第一ウェッジプリズム311から第四ウェッジプリズム322(第一ウェッジプリズム群301のウェッジプリズム)である。また、「y軸方向の偏角を変化させるウェッジプリズム」とは、実施形態1では第二ウェッジプリズム12である。実施形態2における一群二対四枚の形態では、第三ウェッジプリズム221および第四ウェッジプリズム222(第二ウェッジプリズム対220のウェッジプリズム)である。二群四対八枚の形態では、第五ウェッジプリズム331から第八ウェッジプリズム342(第二ウェッジプリズム群302のウェッジプリズム)である。
【0063】
実施形態1のようにウェッジプリズムが一対(二枚)である場合では、各軸方向の成分の大きさを変化させるウェッジプリズムは一枚である。よって、各ウェッジプリズムの回転角度の最大値は360°である。回転方向における特定の位置を基準にすれば、当該最大値は±180°である。
【0064】
実施形態2における一群二対四枚の形態のように、ウェッジプリズムが二対(四枚)である場合では、各軸方向の成分の大きさを変化させるウェッジプリズムは二枚である。よって、各ウェッジプリズムの回転角度の最大値は180°(±90°)となる。
【0065】
実施形態2における二群四対八枚の形態のように、ウェッジプリズムが四対(八枚)である場合では、各軸方向の成分の大きさを変化させるウェッジプリズムは四枚である。よって、各ウェッジプリズムの回転角度の最大値は90°(±45°)となる。
【0066】
このように、軸方向の成分の大きさを変化させるウェッジプリズムの枚数が増えるほど、ウェッジプリズムの回転角度の最大値は小さくなる。よって、合成偏角δTを実現するためのウェッジプリズムの回転角度Ψは、軸方向の成分の大きさを変えるウェッジプリズムの枚数をmとすると、1/m倍の回転角度で実現される。
【0067】
よって、実施形態2の光通信装置の形態では、合成偏角δTを実現するためのウェッジプリズムの回転角度Ψは、ウェッジプリズムの条件が一定であれば、実施形態1のそれに比べてそれぞれ1/2、1/4の大きさになる。したがって、実施形態2では、実施形態1に比べて各ウェッジプリズムの回転時間がより短縮される。よって、光通信装置の高速運転により有利となる。
【0068】
[頂角の説明]
なお、実施形態2のように各軸方向の成分の大きさを複数枚のウェッジプリズムで変更させる場合では、複数枚のウェッジプリズム全体で前述の式(2)を満たせばよいことから、各ウェッジプリズムに、頂角がより小さいウェッジプリズムを採用することが可能と考えられる。
【0069】
[用途]
前述の実施形態の光通信装置は、ビーコンに好適に用いられる。ビーコンとは、広い範囲に光ビームを照射して、通信相手に自分の位置を知らせる機能である。ビーコンでは、光ビームをおおよその方向に向けて特定の範囲内で走査させる。光の照射方向は、合成偏角δTにおけるx軸方向の成分とy軸方向の成分との合成によって決められる。広い空間で通信相手の位置を正確に捕捉することは通常困難であるが、本実施形態の光通信装置によれば、迅速な走査が可能であるため、ビーコンに好適に用いられる。
【0070】
〔実施形態1および実施形態2における変形例〕
前述の実施形態の説明では、光通信装置を通信光の出射側の装置として説明したが、本発明の光通信装置は、受光側の装置であってもよい。このような受信側の光通信装置は、前述の発光素子に代えて受光素子を有することで構成される。受光素子には、光を電気に変換する素子を好適に用いることができる。受光素子の例には、フォトダイオードおよびCMOSイメージセンサが含まれる。
【0071】
本発明では、加速度センサに代えて、または加速度センサに加えてジャイロセンサを備えていてもよい。光通信装置の揺れの形態には、任意の場所を回転中心として回転運動する回転揺れもある。回転揺れの検出には、ジャイロセンサが有利である。この構成は、光通信装置の回転揺れを抑制する観点から好適である。
【0072】
実施形態1において、第一ホール素子133および第二ホール素子134は、第一回転板111および第二回転板121のそれぞれに配置される、第一磁石112および第二磁石122以外のホール素子用の磁石に対応する位置に配置されていてもよい。
【0073】
実施形態2において、二以上のウェッジプリズム対で各軸方向の成分の大きさを変更するために協働する二以上のウェッジプリズム対は、回転軸CAに沿って隣り合って配置されていなくてもよい。また、実施形態2において、互いに逆方向に回転する、対をなすウェッジプリズムは、回転軸CAに沿って隣り合って配置されていなくてもよい。
【0074】
複数のウェッジプリズム対で合成偏角を制御する場合では、光通信装置は、z軸の周方向における合成偏角の分割された範囲のそれぞれにおいて、複数のウェッジプリズム対のうちの特定のウェッジプリズム対に合成偏角を制御させてもよい。たとえば、実施形態3において、光通信装置は、四対のウェッジプリズム対のそれぞれが、z軸を原点としてz軸方向に直交するx-y平面の四分割された各部、例えばx-y平面の第一象限から第四象限のそれぞれ、に対応して合成偏角を制御するように、通信光の向きを制御してもよい。
【0075】
本発明において、複数のウェッジプリズム対は奇数対であってもよい。たとえば、光通信装置は、三対のウェッジプリズム対のそれぞれがx-y平面の三分割された各部、例えば±60°ずつずれた領域のそれぞれにおける合成偏角を制御するように、通信光の向きを制御してもよい。
【0076】
本発明において、ウェッジプリズム対に代えて、三枚のウェッジプリズムを一組とし、三枚のウェッジプリズムで通信光の向きを制御してもよい。
【0077】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0078】
光無線通信においては、前述した高周波数での振動には、より低周波数での振動が伴うことがある。このように高周波数の振動と低周波数の振動との両方の成分を含む通信光の適切な防振も求められている。本実施形態では、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現するための技術の一つとして、特に、高周波数の振動と低周波数の振動との両方の成分を含む通信光の振動の防振に適した形態を説明する。
【0079】
一般に、振動の振幅は、振動の周波数が高くなるほど小さくなる。すなわち振幅を縦軸、周波数を横軸とすると、右肩下がりの相関性が示される。本発明の実施形態に係る光通信装置では、振幅はウェッジプリズムの回転数に対応させられることから、回転数を縦軸、周波数を横軸とすると、本発明の実施形態に係る光通信装置では、両者は右肩下がりの相関性を示す。当該相関性は、直線または双曲線様などの曲線で表され得る。
【0080】
前述した実施形態は、複数のウェッジプリズム対、例えば二つのウェッジプリズム対の一方が正側の回転角度で回転し、他方が負側の回転角度で回転して通信光の防振を実現する。
【0081】
本実施形態では、四対八枚のウェッジプリズムを用いる。そして、四つのウェッジプリズムを有する第一ウェッジプリズム群で通信光における高い周波数の振動の成分を抑制し、四つのウェッジプリズムを有する第二ウェッジプリズム群で通信光におけるより低い周波数の振動の成分を抑制する。以下、本実施形態に係る光通信装置の構成を説明する。
【0082】
[構成]
図5は、本発明の実施形態3に係る光通信装置の構成を模式的に示す図である。
図5示されるように、光通信装置3は、通信光の進行方向に、第一ウェッジプリズム群301と第二ウェッジプリズム群302とをこの順で備える。第一ウェッジプリズム群301は、第一ウェッジプリズム対310と第二ウェッジプリズム対320とを含む。第一ウェッジプリズム対310は、第一ウェッジプリズム311と第二ウェッジプリズム312とを含み、第二ウェッジプリズム対320は、第三ウェッジプリズム321と第四ウェッジプリズム322とを含む。第二ウェッジプリズム群302は、第三ウェッジプリズム対330と第四ウェッジプリズム対340とを含む。第三ウェッジプリズム対330は、第五ウェッジプリズム331と第六ウェッジプリズム332とを含み、第四ウェッジプリズム対340は、第七ウェッジプリズム341と第八ウェッジプリズム342とを含む。
【0083】
光通信装置3は、ウェッジプリズム群ごとに、通信光の振動を検出するための光学系と、当該光学系からの検出値に応じてウェッジプリズムの回転を制御する制御系とを備えている。当該光学系は、ビームスプリッター351、集光レンズ352および光電変換素子353を含む。当該制御系は、AD(アナログ/デジタル)変換器361、MPU(マイクロプロセッシングユニット)362およびACT(アクチュエータ)ドライバ363を含む。
【0084】
[アクチュエータ]
各ウェッジプリズムは、アクチュエータによって所望の回転角度と所望の回転速度で回転運動する。
図6~
図8は、それぞれ、本発明の実施形態におけるアクチュエータの第一の態様から第三の態様のそれぞれを模式的に示す図である。第一ウェッジプリズム群301では、低周波数の振動を相殺するため、各ウェッジプリズムの回転角度は、第二ウェッジプリズム群302でのそれに比べてより大きくなる。高速回転駆動の観点から、第一ウェッジプリズム群301におけるアクチュエータと第二ウェッジプリズム群302におけるアクチュエータとは、同じであってもよく、目的とする周波数帯域に応じて異なっていてもよい。
【0085】
アクチュエータには、ウェッジプリズムの回転駆動に利用可能な様々なアクチュエータを使用することが可能である。
図6から
図8に示されるように、アクチュエータの例には、平面アクチュエータ、外部アクチュエータ、および、外部アクチュエータと伝達機構との組み合わせ、が含まれる。
【0086】
図6に示されるように、平面アクチュエータ303は、ウェッジプリズム307と一体的に配置され得る。平面アクチュエータ303は、例えばウェッジプリズム307の周囲を囲む枠体308に配置することができ、直接ウェッジプリズム307を直接回転駆動させることが可能である。平面アクチュエータ303の例には、ボイルコイルモータおよびピエゾモータが含まれる。平面アクチュエータ303は、低速から高速まで、種々の速度に対応する回転駆動を実現させる観点から好適である。
【0087】
図7に示されるように、外部アクチュエータ304は、ウェッジプリズム307に対してその外側に配置され得る。外部アクチュエータ304は、例えば上記の枠体308に接触して配置することができ、その接点を通じて枠体308(すなわちウェッジプリズム307)を回転駆動させる。このように、外部アクチュエータ304も、ウェッジプリズム307を直接回転駆動させることが可能である。外部アクチュエータ304の例には、ボイルコイルモータ、ピエゾモータ、ブラシレス直流(BLDC)モータ、ステッピングモータおよび直流(DC)モータが含まれる。ボイスコイルモータおよびピエゾモータは、低速から高速までの種々の速度の回転駆動を実現可能である。それ以外のモータは、極低速(~1Hz)での回転駆動の実現に好適である。
【0088】
図8に示されるように、外部アクチュエータ304と伝達機構305との組み合わせは、通常、ウェッジプリズム307に対してその外側に配置され得る。伝達機構305は、外部アクチュエータ304とウェッジプリズム307との間に介在し、外部アクチュエータ304と、ウェッジプリズム307側、例えば上記の枠体308、とのそれぞれに接点を有し、外部アクチュエータ304の駆動をウェッジプリズム307に伝達してウェッジプリズム307を回転駆動させる。伝達機構305は、外部アクチュエータ304の運動をウェッジプリズム307の回転運動に変換可能な範囲において適宜に決めることができる。外部アクチュエータ304の例には上記の例を含む。伝達機構305の例には、ギヤ、リンク機構およびクランク機構が含まれる。
【0089】
外部アクチュエータ304と伝達機構305との組み合わせは、極低速(~1Hz)での回転駆動の実現に好適である。また、外部アクチュエータ304と伝達機構305との組み合わせは、ウェッジプリズム307を一回転(360°)させるのに有利である。よって、アクチュエータとして外部アクチュエータ304と伝達機構305との組み合わせを採用することは、ウェッジプリズム307の所望の回転角度を、二以上のウェッジプリズムで分割せずに一枚のウェッジプリズムで実現することが可能となる。また、低周波数であるが、大きな回転角度を実現するのに有利であるため、合成偏角を大きく変化させるのに有利である。
【0090】
第一ウェッジプリズム群301のアクチュエータには、通信光における低周波数の振動に対応する動作が求められるため、外部アクチュエータまたはそれと伝達機構との組み合わせを採用することが可能であるが、平面アクチュエータであってもよい。第二ウェッジプリズム群302のアクチュエータには、通信光における高周波数の振動に対応する動作が求められるため、平面アクチュエータを採用することが好適である。本実施形態では、第一ウェッジプリズム群301のアクチュエータおよび第二ウェッジプリズム群302のアクチュエータのいずれもが平面アクチュエータであるとして説明する。
【0091】
[境界値の設定]
ここで、本実施形態における通信光の低周波数振動および高周波数振動について説明する。光通信装置3は、一般に、その設置環境に応じた特定の周波数で振動することがある。当該周波数は、通常、光通信における通信光の振動の周波数帯域の中で低い帯域に位置する。したがって、光通信装置3の通信光の振動は、通常、設置環境に特有の低周波数の振動の成分と、それよりも高い周波数である高周波数の振動の成分との両方を含む。
【0092】
通信光の振動の低周波数帯域および高周波数帯域などの周波数帯域は、前述したような光電変換素子353における感度の調整によって、あるいは後述するようなバンドパスフィルタなどの光学素子によって制御され得る。周波数帯域の境界値は、光通信装置3の使用環境および使用条件などに応じて適宜に決められ得る。
【0093】
たとえば、光通信装置3が航空機、ドローン、自動車または鉄道などの移動体に搭載される場合では、50Hz程度の低い周波数の振動が生じ得る。この低周波数の振動は、通常、移動体が作動している間に発生し続ける。このため、車載などの移動体に光通信装置3が搭載される場合には、例えば光通信装置3が搭載される移動体の作動時における振動を測定し、移動体の作動に特有の振動を含む周波数帯域として適当な境界値(例えば50Hzなど)を境界値として設定することができる。
【0094】
また、光通信装置3が建築物に設置される場合では、20Hz程度までの低い周波数の振動が生じ得る。この低周波数の振動は、通常、当該建築物の周辺環境(交通量および風量など)に応じて常時発生し続ける。よって、光通信装置3を建築物に設置する場合には、建築物に特有の振動を含む周波数帯域として適当な境界値(例えば20Hzなど)を境界値として設定することができる。
【0095】
前述した低周波数帯域の境界値の設定以外にも、高周波数帯域として特定の周波数帯域の境界値を設定することも可能である。たとえば、光通信における特定の周波数帯域の通信光のみを受け入れる観点から、特定の高周波数帯域の上限値と下限値とを設定してもよい。また、通信光における特定のノイズ影響を低減させる観点から、高周波数帯域に特定の上限値または下限値を設定してもよい。
【0096】
[動作例]
ビームスプリッター351は、ウェッジプリズム群に入射する通信光の光路上に配置されており、当該通信光の一部を集光レンズ352に向けて反射し、残りを透過する。集光レンズ352は、ビームスプリッター351で反射した通信光を光電変換素子353に向けて集光させる。光電変換素子353は、例えば検出する通信光の振幅の感度制限によって、通信光のうちの所望の周波数帯域の振動の成分を検出する。
【0097】
AD変換器361は、光電変換素子353の検出値をデジタル信号に変換する。MPU362は、AD変換器361で変換されたデジタル信号に応じてウェッジプリズム群を構成する各ウェッジプリズムの回転角度を算出する。ACTドライバ363は、MPU362による回転角度の算出値に応じて、ウェッジプリズムに対応して配置されているアクチュエータの作動量を決定し、当該算出値に応じた作動量で各アクチュエータの作動を制御する。
【0098】
第一ウェッジプリズム群301の光学系は、通信光から低周波数の振動の成分を検出する。第一ウェッジプリズム群301の制御系は、低周波数の振動を相殺するように各ウェッジプリズムの作動(回転駆動)を制御する。このように、第一ウェッジプリズム群301において、第一ウェッジプリズム対310の第一ウェッジプリズム311および第二ウェッジプリズム312ならびに第二ウェッジプリズム対320の第三ウェッジプリズム321および第四ウェッジプリズム322は、通信光から検出される振動の前述の低周波数に応じた第一の駆動周波数の範囲で駆動する。その結果、第一ウェッジプリズム群301を通過する通信光は、高周波数の振動の成分のみを実質的に有する。このように、通信光における低周波数の成分をウェッジプリズムの低速回転駆動で通信光から取り除くと、第一ウェッジプリズム群301を通過して第二ウェッジプリズム群302に向かう通信光には、低周波数振動よりも高い周波数の振動、すなわち高周波数振動、の成分が残る。
【0099】
第二ウェッジプリズム群302の光学系は、通信光から高周波数の振動の成分を検出する。第二ウェッジプリズム群302の制御系は、高周波数の振動を相殺するように各ウェッジプリズムの作動(回転駆動)を制御する。このように、第二ウェッジプリズム群302において、第三ウェッジプリズム対330の第五ウェッジプリズム331および第六ウェッジプリズム332ならびに第四ウェッジプリズム対340の第七ウェッジプリズム341および第八ウェッジプリズム342は、通信光から検出される振動の前述の高周波数に応じた第二の駆動周波数の範囲で駆動する。その結果、第二ウェッジプリズム群302を出射する通信光では、高周波数の振動の振動がさらに相殺される。このようにして第一ウェッジプリズム群301および第二ウェッジプリズム群302の両方を通過した通信光からは、低周波数の振動および高周波数の振動の両方が実質的に除かれており、このような防振が施された通信光が、例えば受光素子に受光される。
【0100】
本実施形態において、第二の駆動周波数の範囲は、第一の駆動周波数の範囲よりも高周波側の範囲である。第二の駆動周波数の範囲の下限値および上限値は、それぞれ、第一の駆動周波数の範囲の下限値および上限値よりも高い周波数である。また、第二の駆動周波数の範囲の下限値は、第一の駆動周波数の上限値よりも高い周波数である。
【0101】
前述したように、低周波数の振動を有する通信光の振幅は大きく、高周波数の振動を有する通信光の振幅は小さい。したがって、第二ウェッジプリズム群302では、第一ウェッジプリズム群301に比べて、通信光における振動の振幅はより小さくなり、各ウェッジプリズムの回転角度はより小さくなる。各ウェッジプリズムの回転角度がより小さくなることは、回転運動におけるイナーシャがより小さくなり、回転駆動におけるトルクがより大きくなるため、アクチュエータの高速駆動に有利となる。
【0102】
[主な作用効果]
前述したように、本実施形態では、いずれのウェッジプリズム群のウェッジプリズムに対しても同じアクチュエータを用いる構成を採用している。このため、第一ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの回転角度をγ、第二ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの回転角度をωとしたときに、ウェッジプリズム群間でウェッジプリズムの回転角度を変更(γ≒ωと)し、各ウェッジプリズム群において通信光の振動の対応周波数を変更することにより、各ウェッジプリズム群が対応する通信光の振動の周波数帯域を決定するカットオフ周波数を変更することが可能となる。このようなカットオフ周波数の変更により、本実施形態の光通信装置は、多様な用途への適応により有利となる。
【0103】
本実施形態では、ウェッジプリズム群間において、通信光の振動の周波数帯域に応じてウェッジプリズムの回転角度を変更することで、各ウェッジプリズム群におけるウェッジプリズムの回転駆動制御により好適な、特性の異なるアクチュエータをウェッジプリズム群ごとにウェッジプリズムに対して用いることが可能となる。異なる特性のアクチュエータを用いる場合でも、当該アクチュエータの動作角度をより小さく制限することで、通信光の防振の高速化が可能である。
【0104】
本実施形態では、全て同じ頂角(θ)のウェッジプリズムを採用しており、いずれのウェッジプリズムも同等の光学特性を発現し得る。全てのウェッジプリズムの光学特性が同じであることは、低速動作のパート(第一ウェッジプリズム群)と高速動作のパート(第二ウェッジプリズム群)とに分けたときの角ウェッジプリズム群での制御を簡素化する観点からより有利である。
【0105】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、第二ウェッジプリズム群302におけるウェッジプリズムの頂角が異なる以外は、前述した実施形態3と同様の構成を有する。
【0106】
図9は、本実施形態におけるウェッジプリズムの配置を模式的に示す図である。第五ウェッジプリズム431、第六ウェッジプリズム433、第七ウェッジプリズム441および第八ウェッジプリズム442は、いずれもその頂角がφ(φ>θ)である。このように、第二ウェッジプリズム群302は、第一ウェッジプリズム群301に比べて、より大きな頂角のウェッジプリズムで構成されている。
【0107】
第二ウェッジプリズム群302では、ウェッジプリズムの頂角が第一ウェッジプリズム群301のそれよりも大きいことから、ウェッジプリズムの回転角度を第一ウェッジプリズム群301のそれよりも小さくすることが可能である。第二ウェッジプリズム群302では、通信光の高周波帯域の振動に対応していることから、当該振動の振幅が小さく、そのためウェッジプリズムの回転角度も小さい。このため、第二ウェッジプリズム群302でのウェッジプリズムの回転駆動をより高速化するのに有利である。また、通信光の高周波数振動のためのウェッジプリズムの回転速度をより高速化可能であることから、通信光におけるより高い周波数の振動の低減にもより有利である。
【0108】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態は、第三ウェッジプリズム群をさらに有する以外は、前述した実施形態3と同様の構成を有する。
図10は、本実施形態におけるウェッジプリズムの配置を模式的に示す図である。本実施形態の光通信装置は、第一ウェッジプリズム群301、第二ウェッジプリズム群302に加えて、第三ウェッジプリズム群503をこの順でさらに備える。
【0109】
第三ウェッジプリズム群503は、第五ウェッジプリズム対550および第六ウェッジプリズム対560を含み、第五ウェッジプリズム対550は、第九ウェッジプリズム551および第十ウェッジプリズム552を有し、第六ウェッジプリズム対560は、第十一ウェッジプリズム561および第十二ウェッジプリズム562を有する。第三ウェッジプリズム群503は、図示しないが、第一ウェッジプリズム群301および第二ウェッジプリズム群302と同様の光学系および制御系をさらに含み、第三ウェッジプリズム群503は各ウェッジプリズムに対応するアクチュエータを有している。本実施形態では、全てのウェッジプリズムの頂角は同じ(θ)であり、全てのアクチュエータは同じとする。
【0110】
本実施形態では、通信光の振動を、低周波数帯域、高周波数帯域に加えてその間の中周波数帯域の三つの帯域に分けて設定し、各ウェッジプリズム群は各周波数帯域に対応して設定されている。すなわち、第一ウェッジプリズム群301は、通信光の低周波数振動に対応して当該低周波数振動を低減させ、第二ウェッジプリズム群302は、通信光の中周波数振動に対応して当該中周波数振動を低減させ、第三ウェッジプリズム群503は、通信光の高周波数振動に対応して当該高周波数振動を低減させる。このように、本発明の実施形態では、通信光の振動を、低、中および高の周波数帯域に応じて低減させることも可能である。
【0111】
〔実施形態3~5における変形例〕
各ウェッジプリズム群の光学系は、振動の所望の周波数帯域に応じて通信光を検出するために、ビームスプリッターから光電変換素子までの間に、振動の所望の周波数帯域の光を通過させる光学フィルタ(ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタまたはバンドパスフィルタなど)をさらに含んでいてもよい。
【0112】
各ウェッジプリズム群の制御系において、MPUは、ジャイロセンサなどの角速度センサの検出値に応じて所定の周波数帯域、例えば低周波数帯域、の振動の情報を取得し、取得した振動の情報に応じて当該振動を第一ウェッジプリズム群または第二ウェッジプリズム群またはその両方によって相殺してもよい。
【0113】
通信光の振動の周波数帯域に応じて各ウェッジプリズム群で通信光の防振を実施する場合では、実施形態1および2におけるウェッジプリズムの回転制御をさらに(選択的または同時に)実施してもよいし、実施形態1および2における制御以外の他の制御でウェッジプリズムの回転駆動を制御してもよい。
【0114】
複数のウェッジプリズム群に対応する複数の駆動周波数のそれぞれは、互いに一部重複していてもよい。この場合、駆動周波数の一部が重複する場合、重複する駆動周波数帯域を有する二以上のウェッジプリズム群のそれぞれが重複する駆動周波数帯域で駆動してもよい。このような構成は、単一の駆動周波数帯域では防振が困難な振動の防振効果を高める観点から有利である。
【0115】
実施形態3における通信光の振動の周波数帯域を決める境界値(例えばカットオフ周波数)を変更させる場合では、ウェッジプリズム群間でウェッジプリズムの回転角度を変更させなくても(γ=ωでも)よい。ウェッジプリズム群間でウェッジプリズムの回転角度を同じ(γ=ω)とすることにより、実施形態3での通信光の振動の周波数帯域に応じたパート別の制御と、実施形態1、2でのウェッジプリズムの特定の回転角度の範囲に応じたパート別の制御とを、切り替えて実施するのにより有利である。このような異なる制御を切り替え可能な構成とすることは、通信光の防振および多様な通信形態を実現するのにより有利であり、本発明の実施形態の光通信装置の光通信における汎用性をより一層高める観点でより有利である。
【0116】
なお、通信光の振動における周波数成分への対応の順序は、本発明の効果が得られる範囲において限定されない。たとえば、実施形態3~5の光通信装置では、第一ウェッジプリズム群が通信光の高周波数の振動に対応し、第二ウェッジプリズム群が通信光の低周波数の振動に対応するように各ウェッジプリズムを回転駆動させてもよい。
【0117】
また、ウェッジプリズム群間で頂角が異なるウェッジプリズムを採用する場合、ウェッジプリズム群とウェッジプリズムの頂角との組み合わせは、本発明の効果が得られる範囲において限定されない。たとえば、実施形態4の光通信装置において、第一ウェッジプリズム群がより大きな頂角(φ)のウェッジプリズムを有し、第二ウェッジプリズム群がより小さな頂角(θ)のウェッジプリズムを有していてもよい。
【0118】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様の光通信装置(1)は、二枚のウェッジプリズム(11、12)からなる少なくとも一対のウェッジプリズム対(10)と、二枚のウェッジプリズムを互いに反対方向に同一の回転角度Ψ(°)だけ回転させて通信光の向きを制御する制御部(20)と、を備える。そして、制御部は、二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδT(°)とするために、回転角度Ψが予め定められた角度以下になる範囲で、回転角度Ψを下記式(1)に従って設定する。式(1)中、δは各ウェッジプリズムの偏角(°)を表す。
【0119】
【0120】
上記の第一の態様の光通信装置は、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現することができる。
【0121】
本発明の第二の態様の光通信装置は、第一の態様において、各ウェッジプリズムの偏角δが、そのウェッジプリズムの頂角をW(°)として、下記式(2)により与えられてもよい。式(2)中、nは各ウェッジプリズムの屈折率を表す。この構成は、光通信装置の運転速度に好適なウェッジプリズムを実現させる観点からより一層効果的である。
【0122】
【0123】
本発明の第三の態様の光通信装置は、第一の態様または第二の態様において、第一ウェッジプリズム対(210)および第二ウェッジプリズム対(220)からなるウェッジプリズム群(200)を備え、第一ウェッジプリズム対は、ウェッジプリズム群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸に直交する第一の方向の成分を調整し、第二ウェッジプリズム対は、ウェッジプリズム群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸および前記第一の方向の両方に直交する第二の方向の成分を調整してもよい。この構成は、ウェッジプリズムの回転運動の範囲および時間を短縮する観点、ならびに、より小さな頂角を有するウェッジプリズムの採用を可能にする観点、からより一層効果的である。
【0124】
本発明の第四の態様の光通信装置は、第一の態様または第二の態様において、第一ウェッジプリズム対(310)および第二ウェッジプリズム対(320)からなる第一ウェッジプリズム群(301)と、第三ウェッジプリズム対(321)および第四ウェッジプリズム対(322)からなる第二ウェッジプリズム群(302)と、を備え、第一ウェッジプリズム対および第二ウェッジプリズム対は、第一ウェッジプリズム群および第二ウェッジプリズム群の両群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸に直交する第一の方向の成分を調整し、第三ウェッジプリズム対および第四ウェッジプリズム対は、第一ウェッジプリズム群および第二ウェッジプリズム群の両群の合成偏角における、各ウェッジプリズムの回転軸および第一の方向の両方に直交する第二の方向の成分を調整してもよい。この構成も、ウェッジプリズムの回転運動の範囲および時間を短縮する観点、ならびに、より小さな頂角を有するウェッジプリズムの採用を可能にする観点、からより一層効果的である。
【0125】
本発明の第五の態様の光通信装置は、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、第一ウェッジプリズム対および第二ウェッジプリズム対からなる第一ウェッジプリズム群と、第三ウェッジプリズム対および第四ウェッジプリズム対からなる第二ウェッジプリズム群と、を備え、第一ウェッジプリズム対のウェッジプリズムおよび第二ウェッジプリズム対のウェッジプリズムは、第一の駆動周波数の範囲で駆動し、第三ウェッジプリズム対のウェッジプリズムおよび第四ウェッジプリズム対のウェッジプリズムは、第一の駆動周波数の範囲と異なる第二の駆動周波数の範囲で駆動してもよい。この構成も、ウェッジプリズムの回転運動の範囲および時間を短縮する観点からより一層効果的である。
【0126】
本発明の第六の態様の光通信装置は、第一の態様から第五の態様のいずれかにおいて、第一ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの頂角と第二ウェッジプリズム群のウェッジプリズムの頂角とが異なっていてもよい。この構成は、第二ウェッジプリズム群におけるウェッジプリズムの回転角度を第一ウェッジプリズム群のそれに比べて小さくすることでウェッジプリズムの回転運動の範囲および時間を短縮する観点からより一層効果的である。
【0127】
本発明の第七の態様の光通信装置を製造する製造方法は、二枚のウェッジプリズムの合成偏角をδT(°)とするため必要な前記回転角度Ψであって、上記式(1)に従って算出される前記回転角度Ψが予め定められた角度以下になるように、各ウェッジプリズムの偏角δ(°)を設定する工程を含む。第七の態様も、第一の態様と同様に、光通信装置において、ウェッジプリズムの高速動作での通信光の防振を実現することができる。
【0128】
本発明の実施形態に係る光通信装置によれば、より高精度の光通信の実現が期待される。これにより、通信に係る種々の技術の普及、発展および革新が期待される。このように、本発明の実施形態に係る光通信装置では、産業と技術革新の基盤に関する持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献が期待される。
【0129】
本発明は、上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0130】
1、3 光通信装置
10 ウェッジプリズム対
11、211、311 第一ウェッジプリズム
12、212、312 第二ウェッジプリズム
13 支持板
20 制御部
30 発光素子
40 加速度センサ
50 ケーシング
111 第一回転板
112 第一磁石
121 第二回転板
122 第二磁石
131 第一コイル
132 第二コイル
133 第一ホール素子
134 第二ホール素子
135 第一ヨーク
136 第二ヨーク
200 ウェッジプリズム群
210、310 第一ウェッジプリズム対
220、320 第二ウェッジプリズム対
221、321 第三ウェッジプリズム
222、322 第四ウェッジプリズム
301 第一ウェッジプリズム群
302 第二ウェッジプリズム群
303 平面アクチュエータ
304 外部アクチュエータ
305 伝達機構
307 ウェッジプリズム
308 枠体
330 第三ウェッジプリズム対
331、431 第五ウェッジプリズム
332、432 第六ウェッジプリズム
340 第四ウェッジプリズム対
341、441 第七ウェッジプリズム
342、442 第八ウェッジプリズム
351 ビームスプリッター
352 集光レンズ
353 光電変換素子
361 AD変換器
362 MPU
363 ACTドライバ
503 第三ウェッジプリズム群
550 第五ウェッジプリズム対
551 第九ウェッジプリズム
552 第十ウェッジプリズム
560 第六ウェッジプリズム対
561 第十一ウェッジプリズム
562 第十二ウェッジプリズム
CA 回転軸