(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011185
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】車いす
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20230117BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20230117BHJP
A61G 5/08 20060101ALN20230117BHJP
【FI】
A61G5/12 707
A61G5/12 701
A61G5/12 702
A61G5/10 703
A61G5/08 702
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114879
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 永佳
(57)【要約】
【課題】座り心地の向上効果と褥瘡の抑制効果とを発揮でき、かつ所望の姿勢で着座させ得る車いすを提供する。
【解決手段】背方への撓み量を夫々調整可能な帯状腰支持部材と帯状背支持部材とが、左右の背もたれフレーム部13間に架設されると共に、前記帯状腰支持部材に支持される腰部クッション91と前記帯状背支持部材に支持される背部クッション81,81とを備えたものであり、腰部クッション91と背部クッション81とが、通気性を有するクッション本体と、該クッション本体を密閉状に内包する非通気性の被覆部材と、該被覆部材の内部の空気量を制御可能な弁体とを夫々備える。かかる構成によれば、腰部クッション91と背部クッション81とが着座時の変形状態で安定して保たれ得ることから、座り心地を向上でき且つ褥瘡の発生を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座部と該着座部に着座した使用者の背部を支持する背もたれ部とを有する車いすにおいて、
前記背もたれ部を構成する左右一対の背もたれフレーム部を備えた本体フレームと、
前記左右の背もたれフレーム部の各下部に架設され、背方への撓み量を調整可能な一又は複数の帯状腰支持部材と、
前記帯状腰支持部材の上方で前記背もたれフレーム部間に架設され、背方への撓み量を調整可能な一又は複数の帯状背支持部材と、
通気性を有するクッション本体と、該クッション本体を密閉状に内包する非通気性の被覆部材と、該被覆部材の内部の空気量を制御可能な弁体とを備え、前記帯状腰支持部材の前側に配設されて該帯状腰支持部材により支持される腰部クッションと、
通気性を有するクッション本体と、該クッション本体を密閉状に内包する非通気性の被覆部材と、該被覆部材の内部の空気量を制御可能な弁体とを備え、前記帯状背支持部材の前側に配設されて該帯状背支持部材により支持される背部クッションと
を備え、
使用者が着座した状態で、前記腰部クッションにより該使用者の腰部を支持し、前記背部クッションにより該使用者の背上部を支持するものであることを特徴とする車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、着座部と背もたれ部とにクッションを配設した車いすが提案されている。このクッションは、クッション体と、該クッション体が収容された被覆材とを備えたものであり、車いすの着座部と背もたれ部とに夫々装着される。さらに、着座部に装着されるクッションには、左右の臀部の形状に沿った凹部と凸部とが二個のクッション体に夫々形成され、背もたれ部に装着されるクッションには、左右の背部および腰部の形状に沿った凹部と凸部とが二個のクッション体に夫々形成される。かかる構成によれば、座り心地と姿勢安定性とに優れると共に、前記凹部と凸部とにより身体の局部的な圧迫を抑制でき、褥瘡の発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来構成は、着座部と背もたれ部とに配設されたクッションによって、座り心地等に優れると共に褥瘡の発生を抑制するという作用効果を奏するものであるが、車いすでは、こうした作用効果をさらに向上し得る構成が希求されている。
【0005】
本発明は、座り心地を向上し得ると共に、褥瘡の抑制効果を向上し得る車いすを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、着座部と該着座部に着座された使用者の背部を支持する背もたれ部とを有する車いすにおいて、前記背もたれ部を構成する左右一対の背もたれフレーム部を備えた本体フレームと、前記左右の背もたれフレーム部の下部間に架設され、背方への撓み量を調整可能な一又は複数の帯状腰支持部材と、前記帯状腰支持部材の上方で前記背もたれフレーム部間に架設され、背方への撓み量を調整可能な一又は複数の帯状背支持部材と、通気性を有するクッション本体と、該クッション本体を密閉状に内包する非通気性の被覆部材と、該被覆部材の内部の空気量を制御可能な弁体とを備え、前記帯状腰支持部材の前側に配設されて該帯状腰支持部材により支持される腰部クッションと、通気性を有するクッション本体と、該クッション本体を密閉状に内包する非通気性の被覆部材と、該被覆部材の内部の空気量を制御可能な弁体とを備え、前記帯状背支持部材の前側に配設されて該帯状背支持部材により支持される背部クッションとを備え、使用者が着座した状態で、前記腰部クッションにより該使用者の腰部を支持し、前記背部クッションにより該使用者の背上部を支持するものであることを特徴とする車いすである。
【0007】
ここで、腰部クッションと背部クッションとは、外部からの圧力によりクッション本体が変形し、該圧力の解除後も該変形状態を保ち得るように、弁体により被覆部材の内部の空気量を一定に保持可能な構成である。
【0008】
かかる構成にあっては、前記腰部クッションと前記背部クッションとが使用者の体型(障害等による左右バランスの歪みを含む)に合わせて変形でき、これらクッションの形状が該着座時の変形状態で保たれる。これにより、体圧が集中してしまう身体の突出部位や荷重のかかる部位の圧を全体に分散させることができるし、次に着座する際に、該使用者に適した前記変形状態の各クッションで使用できるため、優れた座り心地と褥瘡発生の抑制効果とを長期に亘って安定して発揮できる。
【0009】
さらに、本構成は、帯状腰支持部材と帯状背支持部材との夫々の撓み量を、着座した使用者の体形若しくは使用者固有の着座姿勢に応じて調整できることから、使用者の着座状態で、適度に緊張した状態(テンションが掛かった状態)で前記各クッションを支持できる。これにより、変形状態を保持できる前記構造のクッションを使用していても、使用者が車いすから立ち上がるなどの際に作用する局所的な圧力に対して、帯状腰支持部材と帯状背支持部材とによって適度な反力が生まれ、当該反力を利用して前記動作が行い易くなることが期待される。さらに、本構成は、腰部クッションと背部クッションとが独立した構成であることから、例えば立ち上がろうとして一方に強く圧力が作用した場合に、当該圧力作用によって他方も変形してしまうことを防止できる。これにより、立ち上がる動作時に生ずるクッションの変形を、腰部又は背部のどちらかに限定でき、該クッション変形の影響により当該動作が行い難くなることを抑制できると思われる。
【0010】
また、前述した本発明の車いすにあって、帯状背支持部材と背部クッションとが直接的または間接的に着脱可能に接合される一方、帯状腰支持部材が腰部クッションと接合されていない構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあって、帯状背支持部材と背部クッションは互いに接合されているため、使用者が着座しているときに帯状背支持部材は背部クッションに拘束されて撓み量の調整作業が行われない。一方、帯状腰支持部材は腰部クッションと接合されていないため、使用者が着座している状態でも、帯状腰支持部材は腰部クッションに拘束されることなく撓み量の調整作業を行うことができる。そうすると、使用者が着座した状態において、使用者の背部位置は変えること無く(換言すると、使用者の背部位置を基準として)、帯状腰支持部材のみの撓み量を調整することが可能となるため、撓み量の調整作業が単純化されて所望の姿勢がかえって得られやすいとともに使用者にも無理な動作を強要しなくて済む。
【0012】
また、前述した本発明の車いすにあって、帯状腰支持部材と帯状背支持部材との少なくとも一方は、左右一方の背もたれフレーム部に一端が連結された長尺状の主支持帯部と、左右他方の背もたれフレーム部に連結されて、前記主支持帯部と係合される副支持帯部とを備え、前記主支持帯部の、前記副支持帯部と係合される係合位置を長手方向で変えることによって、撓み量を調整可能としたものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成にあっては、副支持帯部と係合される主支持帯部の係合位置を変えることによって、比較的容易に撓み量を調整できる。
【0014】
また、前述した本発明の車いすにあって、帯状腰支持部材と帯状背支持部材との少なくとも一方は、長尺状の主支持帯部と、左右の背もたれフレーム部に対向状に夫々連結されて、前記主支持帯部と夫々係合される左右一対の副支持帯部とを備え、前記主支持帯部の、各副支持帯部と夫々係合される左右の係合位置を長手方向で変えることによって、撓み量を調整可能としたものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、左右の副支持帯部と夫々係合される主支持帯部の各係合位置を変えることによって、比較的容易に撓み量を調整できる。尚、一方の副支持帯部との主支持帯部の係合位置を変えるだけでも、撓み量を調整可能である。
【0016】
さらに、こうした構成にあって、帯状背支持部材が、左右の副支持帯部に夫々係合される左右一対の主支持帯部を備えたものであり、左右の主支持帯部が左右両側縁から左右側方へ突出された背当て部を備え、帯状背支持部材が背当て部を介して背部クッションを支持するものである構成が提案される。
【0017】
かかる構成にあっては、左右の主支持帯部の各係合位置を一度に調整することによって、背当て部を左右の背もたれフレーム部間の略中央に比較的簡単かつ迅速に配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車いすは、前述したように、使用者の体型や着座姿勢に応じて撓み量を調整可能な帯状腰支持部材と帯状背支持部材とによって、着座時の使用者の体型等に合わせて変形して保持される腰部クッションおよび背部クッションが支持されたものであるから、優れた座り心地と褥瘡発生の抑制効果とを長期に亘って安定して発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】左右の背もたれフレーム部13,13に架設された帯状腰支持部材51と背上部支持部材41とを示す正面図である。
【
図5】背上部支持部材41を説明する背面図である。
【
図6】(A)背もたれフレーム部13,13に架設された背上部支持部材41を示す説明図と、(B)背上部支持部材41の調整態様を示す説明図である。
【
図7】(A)帯状腰支持部材51を説明する背面図と、(B)背もたれフレーム部13,13に架設された帯状腰支持部材51を示す説明図と、(C)帯状腰支持部材51の調整態様を示す説明図である。
【
図8】帯状腰支持部材51が、(A)撓み量S1に調整された状態と、(B)撓み量S2に調整された状態とを示す説明図である。
【
図9】本体フレーム2にシート部材61を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】(A)各クッション71,81,91の平面図と、(B)X-X線断面図である。
【
図11】変形例の施錠部支持部材101を説明する背面図である。
【
図12】変形例の背もたれフレーム部111を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
本実施例の車いす1は、
図1~3に示すように、金属製パイプで構成された本体フレーム2を備える。本体フレーム2は、左右一対の側枠10,10を備えており、該側枠10は、前後方向に配設されたベースフレーム部11と、該ベースフレーム部11の後部に接合された上下方向の後脚フレーム部12と、該後脚フレーム部12の上端から上方へ延出された背もたれフレーム部13と、該後脚フレーム部12の上端部から前方へ延出された上フレーム部15とを有する。さらに、左右の上フレーム部15,15には、凹溝状の座フレーム支持部16,16が夫々配設されており、各座フレーム支持部16,16に、前後方向に延成された左右一対の座フレーム部22,22が夫々載置される。
【0021】
前記した後脚フレーム部12には、主車輪3が配設されている。この主車輪3は、従来から用いられているものが適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
前記した左右一対の側枠10,10間には、一対の杆材が夫々の中央で回動自在に連結されたクロスフレーム部19が配設されている。このクロスフレーム部19は、その一対の杆材の夫々の下端が、前記した側枠10,10を構成する左右のベースフレーム部11,11に回動可能に連結されると共に、該一対の杆材の夫々の上端が、前記した左右の座フレーム部22,22に回動可能に連結されている。
【0023】
さらに、前記ベースフレーム部11の前端部には、キャスター24が取り付けられている。このキャスター24は、従来から用いられているものが適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0024】
本体フレーム2は、クロスフレーム部19によって左右の側枠10,10が連結された構成であり、左右の座フレーム部22,22が前記座フレーム支持部16,16に載置されることによって、左右の側枠10,10が左右に所定間隔をおいて離間された状態で保持される。この状態が、使用者の着座可能な使用状態である。こうした使用状態から左右の座フレーム部22,22が持ち上げられることによって、該クロスフレーム部19の左右両端が近接し、これに伴って左右の側枠10,10が互いに近接する。これにより、本体フレーム2(すなわち、車いす1)が折り畳まれる。
尚、クロスフレーム部19は、従来から用いられているものが適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
次に、本発明の要部について説明する。
図4に示すように、左右の背もたれフレーム部13,13には、その上部に背上部支持部材41が掛け渡され、該背上部支持部材41の下方部位に、三個の帯状腰支持部材51が上下方向に間隔をおいて夫々掛け渡されている。
【0026】
前記背上部支持部材41は、左右の背もたれフレーム部13,13に、上下方向に間隔をおいて夫々掛け渡された三個の帯状背支持部材31と、該帯状背支持部材31により支持されて左右の背もたれフレーム部13,13間に配設される背当て部材42とを備える。ここで、帯状背支持部材31は、非伸縮性を有する布製のバンドで構成されており、
図5に示すように、一方の背もたれフレーム部13に連結される主支持帯部32と、他方の背もたれフレーム部13に連結される副支持帯部33とを備える。主支持帯部32は、左右方向に長尺の帯部32aと、該帯部32aの一端に連成された環部32bとを備え、この環部32bに一方の背もたれフレーム部13が挿通された状態で、ネジ30により当該背もたれフレーム部13に固結される(
図4参照)。さらに、この主支持帯部32の帯部32aには、その他端寄り部位の背面に面ファスナー部34が設けられている。一方、副支持帯部33は、左右方向に短尺の帯部33aを備え、該帯部33aの一端に、略矩形環状のバックル部36が連結されていると共に、該帯部33aの他端に環部33bが連成されている。この副支持帯部33は、その環部33bに他方の背もたれフレーム部13が挿通された状態で、ネジ30により当該背もたれフレーム部13に固結される(
図4参照)。
【0027】
前記背当て部材42は、非伸縮性を有する略矩形状の布製であり、背面に、前記帯状背支持部材31の主支持帯部32を左右方向に挿通させる挿通部43が、上下方向に所定間隔をおいて三個配設されている。そして、各挿通部43の背面には、面ファスナー部44が夫々設けられている。さらに、背当て部材42は、
図4に示すように、その前面に、二個の面ファスナー部45,45が上下方向に並設されている。
【0028】
こうした三個の帯状背支持部材31と背当て部材42とからなる背上部支持部材41は、一方の背もたれフレーム部13に連結された各主支持帯部32と、他方の背もたれフレーム部13に連結された各副支持帯部33とを係合させることによって、左右の背もたれフレーム部13,13に架設される。
具体的には、
図6に示すように、同じ高さで連結された主支持帯部32と副支持帯部33とは、該主支持帯部32の帯部32aが該副支持帯部33のバックル部36を通して折返されて、該帯部32aの面ファスナー部34が背当て部材42の面ファスナー部44に着脱可能に接合されることにより係合される。そして、全体として、背もたれフレーム部13,13間に背上部支持部材41が架設されることとなる(
図4参照)。さらに、この背上部支持部材41は、各帯状背支持部材31の帯部32aをバックル部36で折り返す係合位置(環部32bから折り返す部位までの長さ)を変えることによって、各帯状背支持部材31の背方への撓み量を調整することができる。
【0029】
次に、帯状腰支持部材51について説明する。
前記した帯状腰支持部材51は、非伸縮性を有する布製のバンドで構成されており、
図7(A)に示すように、一方の背もたれフレーム部13に連結される主支持帯部52と、他方の背もたれフレーム部13に連結される副支持帯部53とを備える。主支持帯部52は、左右方向に長尺の帯部52aと、該帯部52aの一端に連成された環部52bとを備え、この環部52bに一方の背もたれフレーム部13が挿通された状態で、ネジ30により当該背もたれフレーム部13に固結される(
図6参照)。さらに、この主支持帯部52の帯部52aには、その他端寄り部位の背面に面ファスナー部54が設けられると共に、該面ファスナー部54よりも一端寄り部位の背面に面ファスナー部55が設けられている。一方、副支持帯部53は、左右方向に短尺の帯部53aを備え、該帯部53aの一端に、略矩形環状のバックル部56が連結されていると共に、該帯部53aの他端に環部53bが連成されている。この副支持帯部53は、その環部53bに他方の背もたれフレーム部13が挿通された状態で、ネジ30により当該背もたれフレーム部13に固結される(
図4参照)。
【0030】
三個の帯状腰支持部材51は、互いに同じ高さ部位で左右の背もたれフレーム部13,13に夫々連結された主支持帯部52と副支持帯部53とを係合させることによって、左右の背もたれフレーム部13,13に架設される。
すなわち、
図7(B),(C)に示すように、一方の背もたれフレーム部13に連結された主支持帯部52の帯部52aが、他方の背もたれフレーム部13に連結された副支持帯部53のバックル部56を通して折返されて、該帯部53aの面ファスナー部54と面ファスナー部55に着脱可能に接合されることにより係合される。このようにして、各帯状腰支持部材51が左右の背もたれフレーム部13,13に架設される(
図4参照)。そして、各帯状腰支持部材51は、主支持帯部52の帯部52aをバックル部56で折り返す係合位置(環部52bから折り返す部位までの長さ)を変えることによって、背方への撓み量を夫々調整することができる。
【0031】
ここで、帯状腰支持部材51の撓み量調整について説明する。すなわち、
図8(A)に示すように、背もたれフレーム部13,13間における帯状腰支持部材51の長さを相対的に短くすれば、該帯状腰支持部材51の背方への最大撓み量S1が比較的小さくなる一方、
図8(B)に示すように、背もたれフレーム部13,13間における帯状腰支持部材51の長さを相対的に長くすれば、該該帯状腰支持部材51の背方への最大撓み量S2が比較的大きくなる。換言すると、背もたれフレーム部13,13間における帯状腰支持部材51の長さを長くすることによって、該帯状腰支持部材51は、背方への撓み量を大きくでき、該長さを短くすることによって、背方へ撓み量を小さくできる。ここで、前記「背方」は、前記した左右の背もたれフレーム部13,13(の各中心線)を含む仮想平面Pと直交する方向における、後方を示す。
【0032】
撓み量の調整作業について、前記した背上部支持部材41も同様である。
【0033】
本実施例にあって、前記した帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とは、同じ布製で形成されている。
【0034】
また、前記した左右の座フレーム部22,22には、非伸縮性の布材からなる矩形状の着座支持部材(図示せず)が、その左右両側縁をネジ(図示せず)により固定されて掛け渡されている。この着座支持部材は、その表面に面ファスナー部(図示せず)が設けられている。
【0035】
また、このように背上部支持部材41と帯状腰支持部材51とが装着された本体フレーム2には、
図9に示すシート部材61が着脱可能に取り付けられる。
【0036】
シート部材61についてさらに詳述すると、一枚状のシート部材61は、比較的柔軟な薄厚の布製であって、着座シート部62と、背もたれシート部63とを備えている。そして、背もたれシート部63が着座シート部62の後縁から連成されてなる。
【0037】
着座シート部62は、略矩形状をなし、前記した左右の座フレーム部22,22に掛け渡された着座支持部材上に載置される。この着座シート部62の裏面には、図示しない面ファスナー部が設けられており、前記着座支持部材の表面に設けられた面ファスナー部と着脱可能に接合される。
【0038】
この着座シート部62の表面には、左右方向に延成された面ファスナー部64,64が前後に並設されており、後述する着座クッション71,71を装着可能としている。
【0039】
また、前記の背もたれシート部63は、略矩形状をなし、前記背もたれフレーム部13,13に架設された背上部支持部材41と帯状腰支持部材51との前側に配設される。
【0040】
背もたれシート部63には、その背面上部に面ファスナー部(図示省略)が適宜設けられており、背上部支持部材41の面ファスナー部45,45と接合可能となっている。尚、背もたれシート部63は、前記した三個の帯状腰支持部材51に非接合状態で支持される。
【0041】
さらに、背もたれシート部63の前面には、左右方向に延成された面ファスナー部65,65が上下に並設されており、後述する腰部クッション91と背部クッション81を装着可能としている。
【0042】
このようにシート部材61は、着座シート部62が着座支持部材に接合され且つ背もたれシート部63が背上部支持部材41に接合されることによって、所用位置で適切に固定される。
【0043】
尚、本実施例にあって、座フレーム部22,22と、シート部材61が該座フレーム部22,22および背もたれフレーム部13,13に装着された状態における着座シート部62とにより、本発明にかかる着座部6が構成されている。そして、この着座部6に、後述する着座クッション71,71が載置される。また、背もたれフレーム部13,13と、シート部材61が座フレーム部22,22および該背もたれフレーム部13,13に装着された状態における背もたれシート部63と、左右の該背もたれフレーム部13,13に架設された背上部支持部材41(帯状背支持部材31)および帯状腰支持部材51とにより、本発明にかかる背もたれ部7が構成されている。そして、この背もたれ部7に、後述する背部クッション81,81と腰部クッション91とが配設される。
【0044】
次に、前記シート部材61に装着される着座クッション71、背部クッション81、および腰部クッション91について、説明する。
【0045】
本実施例の構成にあって、使用状態における着座シート部62には、
図1~3に示すように、二個の着座クッション71,71が左右に並んで装着される。また、背もたれシート部63の下部には、一個の腰部クッション91が装着される。加えて、腰部クッション91の上方には、二個の背部クッション81,81が左右に並んで装着される。
【0046】
着座クッション71は、略直方体状を成し、左右方向の幅が、着座シート部62の左右幅の約1/2に設定されており、前後方向の長さが、該着座シート部62の前後長と略同じに設定されている。これにより、二個の着座クッション71,71は、前記着座シート部62上に左右に並んで載置されることで、該着座シート部62の左右幅に亘って配設されて、該着座シート部62の上面全域を覆う。そして、着座クッション71,71は、左右の座フレーム部22,22に架設された着座シート部62によって支持されることとなる。
【0047】
着座クッション71は、さらに詳しく述べると、
図10に示すように略直方体状のクッション本体72と、該クッション本体72を密閉状に内包する被覆部材73とを備える。クッション本体72は、発泡性のウレタン素材からなり、通気性を有する。被覆部材73は、非通気性の樹脂製シート材により形成されたものであり、内部を外部と連通させる開放状態と該内部を閉鎖する閉鎖状態とに変換される弁体74が設けられている。さらに、本実施例では、前記被覆部材73を全体的に覆うメッシュ状のカバー部材75を備えており、クッション本体72を内包した被覆部材73が該カバー部材75により内包されている。このカバー部材75には、前記弁体74を貫通させる貫通孔(図示せず)を備え、前記被覆部材73を内包した状態で、該弁体74を外側に突出させている。
【0048】
ここで、弁体74は、その先端部が正逆回動可能に設けられたものであり、該先端部が正逆回動されることによって前記開放状態と閉鎖状態とに変換できるものである。このように弁体74は、その先端部の回動によって被覆部材73の内部の空気量を制御可能なものである。尚、こうした弁体74は、従来から公知の構成を適用できることから、その詳細を省略する。
【0049】
また、着座クッション71は、被覆部材73に、クッション本体72を該被覆部材73の内部に入出可能な開口部(図示せず)が設けられており、該開口部が線ファスナー(図示せず)により開閉可能となっている。そして、被覆部材73は、この線ファスナーにより前記開口部を閉鎖することによって、内部を密閉状態とできるものである。
【0050】
こうした着座クッション71は、前記カバー部材75の下面に、面ファスナー部76が配設されており、該面ファスナー部76が、前記シート部材61の着座シート部62の上面に配設された面ファスナー部64(
図10参照)に接合されることによって、該着座シート部62上に着脱可能に装着される。そして、装着された状態で、着座クッション71は、前後左右方向の位置ずれが防止される。さらに、本実施例では、被覆部材73を覆うカバー部材75に面ファスナー部76が設けた構成としている。この構成では、カバー部材75に面ファスナー部76を縫合することができる。これにより、被覆部材73に面ファスナー部76を裁合する場合に該被覆部材73の密閉性が低減することを、防止できる。
【0051】
腰部クッション91は、
図1~3に示すように、略直方体状を成し、左右方向の幅が前記背もたれシート部63の左右幅と略同じに設定されており、上下方向の長さが、該背もたれシート部63の上下長の約1/2に設定されている。
【0052】
一方、背部クッション81は、略直方体状を成し、左右方向の幅が前記背もたれシート部63の左右幅の約1/2に設定されており、上下方向の長さが、該背もたれシート部63の上下長の約1/2に設定されている。また、これら腰部クッション91と背部クッション81とは、夫々の厚みが略同じに設定されている。
【0053】
すなわち、一個の腰部クッション91は、背もたれシート部63の前面下部に配置されることによって、該背もたれシート部63の左右幅に亘って配設され、二個の背部クッション81,81は、該腰部クッション91の直上で左右に並べて該背もたれシート部63の前面に配置されることによって、該背もたれシート部63の左右幅に亘って配設される。このように一個の腰部クッション91と二個の背部クッション81,81が配設されることにより、該背もたれシート部63の前面全域が覆われる。そして、腰部クッション91は、左右の背もたれフレーム部13,13に架設された三個の帯状腰支持部材51によって支持され、背部クッション81,81は、左右の背もたれフレーム部13,13に架設された背上部支持部材41(三個の帯状背支持部材31)によって支持される。
【0054】
腰部クッション91、および背部クッション81は、着座クッション71と同様の内部構造となっており、同様の機能を備えている。
【0055】
念のため説明すると、腰部クッション91は、
図10に示すように、略直方体状のクッション本体92と、該クッション本体92を密閉状に内包する被覆部材93と、該被覆部材93を全体的に覆うカバー部材95とを備える。クッション本体92は、ウレタン素材からなり、通気性を有し、被覆部材93は、樹脂製シート材からなり、非通気性である。さらに、被覆部材93には弁体94が設けられており、該被覆部材93の内部の空気量を制御可能である。この弁体94が、カバー部材95の貫通孔(図示せず)から外側に突出されている。尚、被覆部材93は、クッション本体92を入出可能な開口部(図示せず)と線ファスナー(図示せず)とを備えている。また、背部クッション81は、
図10に示すように、略直方体状のクッション本体82と、該クッション本体82を密閉状に内包する被覆部材83と、該被覆部材83を全体的に覆うカバー部材85とを備える。クッション本体82は、ウレタン素材からなり、通気性を有し、被覆部材83は、樹脂製シート材からなり、非通気性である。さらに、被覆部材83には、弁体84が設けられており、該被覆部材83の内部の空気量を制御可能である。この弁体84が、カバー部材85の貫通孔(図示せず)から外側に突出されている。尚、被覆部材83は、クッション本体82を入出可能な開口部(図示せず)と線ファスナー(図示せず)とを備えている。
【0056】
また、腰部クッション91は、カバー部材95の背面に、面ファスナー部96が配設されており、該面ファスナー部96が、背もたれシート部63の前面下部に配設された面ファスナー部65(
図9参照)に接合可能となっている。そして、腰部クッション91が背もたれシート部63の前面に装着されると、腰部クッション91は、上下左右方向の位置ずれが防止される。
【0057】
同様に、背部クッション81は、カバー部材85の背面に、面ファスナー部86が配設されており、該面ファスナー部86が、背もたれシート部63の前面上部に配設された面ファスナー部65(
図9参照)に接合可能となっている。そして、背部クッション81が背もたれシート部63の前面に装着されると、背部クッション81は、上下左右方向の位置ずれが防止される。
【0058】
次に、本実施例の車いす1の使用について説明する。
車いす1は、使用する際に、着座クッション71,71の各弁体74,74と、腰部クッション91の弁体94と、背部クッション81,81の各弁体84とを開放状態として、夫々のクッション本体72,82,92を外部と通気状態とする。
【0059】
この状態で、使用者が着座すると、着座クッション71,71が該使用者の臀部と大腿部との形状に合わせて変形し、腰部クッション91が該使用者の腰部の形状に合わせて変形し、背部クッション81,81が該使用者の背上部(肩甲骨から肩の部位)の形状に合わせて変形する。そして、この変形した状態で各クッション71,81,91の弁体74,84,94を閉鎖状態とすることで、各被覆部材73,83,93の内部と外部との空気の流通が阻止されることから、各クッション本体72,82,92が前記変形した形状で保たれる。これにより、使用者が次回から使用する際に、該使用者に適した形状の各クッション71,81,91で車いす1を使用できる。
【0060】
このように着座クッション71,71が使用者の臀部と大腿部とに合わせて変形することにより、該臀部と大腿部とで作用する局所的な圧力を、該臀部と大腿部との全体に分散させることができる。同様に、腰部クッション91が使用者の腰部に合わせて変形することにより、該腰部で作用する局所的な圧力を、該腰部全体に分散できると共に、背部クッション81,81が使用者の背上部に合わせて変形することにより、該背上部で作用する局所的な圧力を、該背上部全体に分散できる。こうしたことから、座り心地を向上できる。
【0061】
ここで、使用者が車いす1に着座した状態について詳述する。例えば使用者のなかには、高齢や障害等の理由で左右のバランスに歪みを生じている場合があり、こうした左右バランスの歪みによって、前記着座状態で掛かる重量に左右差が生ずる。本実施例の車いす1にあって、左右の着座クッション71,71は、夫々が独立した構成であることから、前記着座状態で使用者の左右の臀部と大腿部とを夫々支持する。そのため、左右の着座クッション71,71は、前記左右バランスの歪みにより作用する左右で異なる重量によって、使用者の左右の臀部と大腿部との夫々の形状に変形できる。このように左右の着座クッション71,71によって、左右バランスの歪みで生ずる局所的な圧力を、使用者の臀部と大腿部との全体に分散できることから、前述したように、座り心地を向上できる。
【0062】
同様に、左右の背部クッション81,81は、夫々が独立した構成であることから、前記着座状態で使用者の左右の肩甲骨と肩とを夫々支持する。そのため、左右の背部クッション81,81は、前記左右バランスの歪みにより作用する左右で異なる重量によって、使用者の左右の肩甲骨と肩との夫々の形状に変形できる。これにより、左右バランスの歪みで生ずる局所的な圧力を、使用者の背上部全体に分散できることから、前述したように、座り心地を向上できる。
【0063】
一方、本実施例の車いす1は、一個の腰部クッション91によって、使用者の腰部を支持する。ここで、腰部クッション91により支持される腰部は、腰椎から仙骨を介した左右の腸骨に至る部位であり、上半身を支持する体幹の一部である。一個の腰部クッション91は、こうした腰部の背部を左右方向に亘って連続状に支持することによって、該腰部の背部形状に従って変形できる。これにより、使用者の腰部を背後から包み込むように比較的大きく撓み変形でき、該変形によって該腰部を一層安定して支持できる。
【0064】
さらに、本実施例の車いす1は、使用者の体型や着座姿勢に応じて帯状背支持部材31の撓み量と帯状腰支持部材51の撓み量とを調整することによって、使用者の着座状態で、該帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とが適度に緊張した状態で各クッション81,91を支持する。詳述すると、帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とは、非伸縮性の布製であるから、調整された撓み量まで撓んで緊張した状態(換言すれば、テンションが掛かった状態)で、着座した使用者を支える。こうした帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とで背部クッション81と腰部クッション91とが支持されることにより、各クッション81,91が前述したように使用者の体型に適した形態で安定して変形できる。また、着座する使用者が姿勢を変えたり立ち上がったりする際には、着座時と異なる部位に局所的な圧力が作用し易く、この圧力作用により各クッション81,91が変形してしまう恐れがあるものの、本実施例の構成によれば、当該局部的な圧力に対して、適度な緊張状態にある帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とによって適度な反力が生まれ、当該局部的な圧力により各クッション81,91が変形してしまうことを抑制できる。加えて、この反力を利用して姿勢を変えたり、元に戻したり、あるいは立ち上がったりする動作を行い易くなると思われる。
【0065】
具体的に、本実施例の車いす1は帯状背支持部材31と帯状腰支持部材51とが夫々の撓み量を調整可能であることから、使用者の背上部(胸郭)を支える前後方向位置と腰部(骨盤)を支える前後方向位置とをその使用者の体型等に応じて調整可能である。
【0066】
さらに、本実施例では、背上部支持部材41が、面ファスナー部45,65,86により背もたれシート部63を介して背部クッション81,81と接合されていることから、帯状背支持部材31については使用者の着座前に撓み量が調整されることとなる。一方、帯状腰支持部材51は、背もたれシート部63に接合されていないことから、使用者が着座した状態で、背もたれシート部63に拘束されることなく撓み量を調整することができる。加えて、三個の帯状腰支持部材51は、夫々の撓み量を独立して調整できる。こうしたことから、例えば、使用者が着座したままで、骨盤を立てる姿勢となるように各帯状腰支持部材51の撓み量を微調整することができる。さらに言えば、本構成では、使用者の着座状態で背上部に対応する帯状背支持部材31における撓み量の調整作業が行われないため、使用者の背上部位置を変えること無く、前記帯状腰支持部材51の撓み量を調整して骨盤が適正に立った姿勢を得ることができる。そして、使用者が所望の姿勢で安定して着座できることから、車いす1で着座した状態で食事する場合に、食べ物や飲み物を使用者の口に運び易く、飲食を容易に行うことができるという利点もある。
【0067】
このように本実施例の車いす1によれば、各クッション71,81,91が使用者の体型に応じて変形することによって、該使用者の座り心地の向上効果と褥瘡の発生抑制効果とを発揮できると共に、背上部支持部材41と帯状腰支持部材51との撓み量調整によって、該使用者を所望姿勢で着座でき且つ着座姿勢を安定させることができる。
【0068】
さらに、本実施例の車いす1は、シート部材61が、左右の背もたれフレーム部13,13に固定された背上部支持部材41と左右の座フレーム部22,22に固定された着座支持部材(図示せず)とから着脱可能であるから、前記した各クッション71,81,91がシート部材61に装着された状態で、当該シート部材61を取り外すことが可能である。これにより、車いす1を折り畳む際に、シート部材61を取り外すことで各クッション71,81,91も一緒に取り外しできるため、各クッション71,81,91を個別に取り外す作業に要する手間を軽減できる。シート部材61を取り付ける際にも,同様に各クッション71,81,91を一緒に取り付けできるため、取付作業に要する手間を軽減できる。
【0069】
尚、本実施例にあって、「背方」は、前記した仮想平面Pと直交する方向における、腰部クッション91および背部クッション81の背面側を示す。また、使用者の着座状態と着座による変形形状を保った状態と含めて、使用者の使用状態と言う。
【0070】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
【0071】
前述の実施例にあって、帯状腰支持部材51と帯状背支持部材31との夫々の架設数は、適宜変更可能である。また、実施例では、背上部支持部材41により背部クッション81,81を支持する構成であるが、これに限らず、背当て部材42を備えず、帯状背支持部材31がシート部材61を介して背部クッション81,81を支持する構成としても良い。
【0072】
前述の実施例では、帯状腰支持部材51と帯状背支持部材31とを同じ布製のものとしたが、これに限らず、両者が異なる素材から形成されるものであっても良い。
【0073】
前述の実施例では、背上部支持部材41を構成する各帯状背支持部材31が、主支持帯部32と副支持帯部33とにより構成されるものとしたが、これに限らず、例えば、
図11に示す変形例のように、背上部支持部材101が、左右両側縁に左右一対の主支持帯部105,105を複数備えた支持部102と、左右の背もたれフレーム部13,13に夫々連結される左右一対の連結部103,103とを備えた構成とできる。ここで、支持部102は、矩形状の背当て部材104の左右両側縁に、前記した左右一対の主支持帯部105,105が、上下方向に所定間隔をおいて複数突設されており、左右一方の主支持帯部105の背面に面ファスナー部106が設けられ、左右他方の主支持帯部105の前面に面ファスナー部107が設けられている。さらに、支持部102の前面には、図示しない面ファスナー部が配設されており、前述の実施例と同様に、シート部材61の背もたれシート部63の面ファスナー部と接合される。一方、連結部103は、上下方向に所定間隔をおいて配設された複数の副支持帯部112を備え、複数の副支持帯部112が上下方向に延成された環部111により一体的に構成されている。すなわち、連結部103は、前記環部111と、該環部111から上下方向に所定間隔をおいて設けられて左右一方へ突出された複数の帯部114とを備え、各帯部114の突出側端部に略矩形環状のバックル部113が連結されたものであり、各帯部114とバックル部113と環部111とによって前記副支持帯部112が構成されている。そして、連結部103は、環部111に背もたれフレーム部13が挿通された状態でネジ(図示せず)により当該背もたれフレーム部13に固結される。こうした背上部支持部材101は、左右の背もたれフレーム部13,13に夫々固結された左右の連結部103,103と、支持部102とを連結させることによって、左右の背もたれフレーム部13,13に架設される。すなわち、左右一方の主支持帯部105が、一方の連結部103の各副支持帯部112に設けられたバックル部113を通して折り返されると共に、左右他方の主支持帯部105が、他方の連結部103の各副支持帯部112に設けられたバックル部113を通して折り返される。そして、折り返した主支持帯部105,105同士を重ね合わせて、一方の背面に設けられた面ファスナー部106と他方の前面に設けられた面ファスナー部107とが着脱可能に接合させる。これにより、左右の主支持帯部105,105と左右の副支持帯部112,112とが係合されて、背上部支持部材101が背もたれフレーム部13,13に架設される。このような変形例の背上部支持部材101にあっても、前述した実施例と同様に、左右の主支持帯部105,105の、左右の副支持帯部112,112との係合位置を変えることによって、背方への撓み量を調整することができる。さらに、かかる構成は、左右の主支持帯部105,105の係合位置を一度に調整することによって、背当て部材104を左右の背もたれフレーム部13,13間の略中央に比較的簡単かつ迅速に配置することができる。そのため、背当て部材104により背部クッション81,81を一層安定して支持できる。
【0074】
前述した実施例および変形例(
図11)の構成では、帯状背支持部材と帯状腰支持部材とを構成する副支持帯部が、環部と帯部とバックル部とを備えた構成であるが、これに限らず、例えば、バックル部が背もたれフレーム部に直接的に連結された構成であっても良い。このように副支持帯部の構成は、適宜設定変更することが可能である。
【0075】
前述した実施例では、シート部材61が着座シート部62と背もたれシート部63とを連成した一枚状のものとした構成であるが、これに限らず、着座シート部と背もたれシート部とが別部材であるものとしても良い。この構成にあっては、腰部クッション91と背部クッション81とを装着したままで背もたれシート部の取り外しと取り付けとを行うことができると共に、着座クッション71を装着したままで着座シート部の取り付けと取り外しを行うことができる。そのため、前述した実施例と同様に、各クッション71,81,91を個別に取り付け又は取り外しする作業に要する手間を軽減できる。
【0076】
前述の実施例にあって、左右の座フレーム部22,22に架設された着座支持部材(図示せず)を、帯状背支持部材31と同様に撓み量を調整可能な構成とすることもできる。
【0077】
前述の実施例にあって、着座シート部62上に載置される着座クッションの配設個数と背もたれシート部63の前面に配置される背部クッション81の配設個数とは適宜変更することが可能である。例えば、着座シート部62の上面全域を覆う一個の着座クッションが、該着座シート部62に載置される構成とすることができる。また、背もたれシート部63と同じ左右幅に設定された一個の背部クッションが、背もたれシート部63に配置される構成とすることも可能である。
【0078】
前述の実施例にあって、各クッション71,81,91を構成するクッション本体72,82,92は、一種類の素材(発泡性のウレタン)から形成されたものであるが、これに限らず、異なる複数の素材を組み合わせて形成されたものであっても良い。例えば、各クッション本体72,82,92が、硬質の素材と軟質の素材とを積層してなるものとすることができる。このクッション本体72,82,92を適用する構成では、軟質の素材を使用者側に配設することが好適である。また、各クッション71,81,91は、この中の少なくとも一が、他と異なる素材からなるクッション本体72,82,92を備えた構成とすることもできる。例えば、着座クッション71と背部クッション81とを、前述した硬質の素材と軟質の素材とを積層してなるクッション本体を備えた構成とし、腰部クッション91を、前述の実施例1と同じクッション本体92を備えた構成とすることもできる。
【0079】
前述した実施例にあって、各クッション71,81,91の弁体74,84,94は、使用者や介護者などが手動で開閉させる構成であるが、これに限らず、半自動的または自動的に開閉可能な構成とすることもできる。例えば、半自動的な弁体としては、開放状態と閉鎖状態とに変換可能な弁部を備え、該弁部が、閉鎖状態に付勢された構成とする。この構成では、常態で弁部が閉鎖状態に保持され、クッションの内圧増によって開放状態に変換されることから、使用者が着座した場合に、実施例と同様に、クッション本体が変形でき、その後に、内圧が外圧と等しくなると弁部が閉鎖状態となる。このため、該変形状態を保つことができる。尚、かかる構成の弁体は、実施例と同様に、前記弁部を手動で開放できるものが好適である。
【0080】
一方、自動的な弁体としては、例えば、開放状態と閉鎖状態とに変換可能な弁部と該弁部を該開放状態と閉鎖状態と変換作動させる駆動制御装置とを備え、該駆動制御装置が、クッションに配設された圧力検出手段から受信した信号に従って、該弁部を開閉作動させる構成とすることができる。尚、この弁体にあっても、スイッチ操作により駆動制御装置を駆動させて、弁部を開閉作動できる構成が好適である。
【0081】
前述した実施例は、背もたれフレーム部13が、後脚フレーム部12の上端から上方へ直線状に延出されたものであるが、これに限らず、例えば、
図12に示すように、背もたれフレーム部121が、直線状の主フレーム杆部122と該主フレーム杆部122から分岐された副フレーム杆部123とから構成されるものとすることも可能である。ここで、副フレーム杆部123は、主フレーム杆部122の前方に設けられて、該主フレーム杆部122の略中央部に接合されてなるものである。こうした背もたれフレーム部121を備えた車いすでは、主フレーム杆部122の、副フレーム杆部123の接合部よりも上部に、背上部支持部材41が掛け渡されると共に、該副フレーム杆部123に帯状腰支持部材51が掛け渡される。こうした変形例の構成にあっては、背上部支持部材41を架設した主フレーム杆部122に比して、帯状腰支持部材51を架設した副フレーム杆部123が前方に位置することから、使用者の腰(骨盤)を背上部(胸郭)よりも前方で支持できることから、該腰を立てた姿勢で着座させ得る。
【符号の説明】
【0082】
1 車いす
2 本体フレーム
3 主車輪
6 着座部
7 背もたれ部
10 側枠
11 ベースフレーム部
12 後脚フレーム部
13 背もたれフレーム部
15 上フレーム部
16 座フレーム支持部
19 クロスフレーム部
22 座フレーム部
24 キャスター
30 ネジ
31 帯状背支持部材
32 主支持帯部
32a 帯部
32b 環部
33 副支持帯部
33a 帯部
33b 環部
34 面ファスナー部
36 バックル部
41 背上部支持部材
42 背当て部材
43 挿通部
44,45 面ファスナー部
51 帯状腰支持部材
52 主支持帯部
52a 帯部
52b 環部
53 副支持帯部
53a 帯部
53b 環部
54,55 面ファスナー部
56 バックル部
61 シート部材
62 着座シート部
63 背もたれシート部
64,65 面ファスナー部
71 着座クッション
72 クッション本体
73 被覆部材
74 弁体
75 カバー部材
76 面ファスナー部
81 背部クッション
82 クッション本体
83 被覆部材
84 弁体
85 カバー部材
86 面ファスナー部
91 腰部クッション
92 クッション本体
93 被覆部材
94 弁体
95 カバー部材
96 面ファスナー部
101 背上部支持部材
102 支持部
103 連結部
104 背当て部材
105 主支持帯部
106,107 面ファスナー部
111 環部
112 副支持帯部
113 バックル部
114 帯部
121 背もたれフレーム部
122 主フレーム杆部
123 副フレーム杆部
P 仮想平面
S1,S2 撓み量