IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッドの特許一覧

特開2023-111858内燃機関及び内燃機関を動作させるための方法
<>
  • 特開-内燃機関及び内燃機関を動作させるための方法 図1
  • 特開-内燃機関及び内燃機関を動作させるための方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111858
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】内燃機関及び内燃機関を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 23/00 20060101AFI20230803BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20230803BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
F02D23/00 J
F02M26/06 301
F02D45/00 368
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022209143
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】22154135
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515191442
【氏名又は名称】ヴィンタートゥール ガス アンド ディーゼル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリドリン ウンフーク
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G062AA01
3G062AA02
3G062AA05
3G062GA09
3G062GA12
3G062GA18
3G062GA19
3G062GA21
3G092AA03
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB03
3G092AB04
3G092AB06
3G092AB07
3G092AB08
3G092AB12
3G092AB14
3G092AB15
3G092AC10
3G092BA04
3G092DB03
3G092DC09
3G092FA16
3G092FA21
3G092HA04Z
3G092HA05Z
3G092HA15Z
3G092HC05Z
3G092HC06Z
3G092HD01Z
3G092HD07Z
3G092HD08Z
3G384AA03
3G384AA04
3G384AA14
3G384AA15
3G384AA16
3G384AA26
3G384BA09
3G384BA27
3G384DA54
3G384DA55
3G384FA32Z
3G384FA33Z
3G384FA37Z
3G384FA40Z
3G384FA45Z
3G384FA48Z
(57)【要約】
【課題】エンジン・パラメータの精確な設定を可能にする内燃機関及び内燃機関を動作させる方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、排気ガス再循環のためのシステムを有する内燃機関10、及び内燃機関を動作させるための方法に関する。少なくともガス・モードで動作可能な内燃機関10、すなわち大型舶用エンジン又は定置式エンジンが、少なくとも200mmの内径12を有する少なくとも1つのシリンダ11を有する。内燃機関10はタービン14とコンプレッサ15とを有する過給機13を有する。エンジンはEGR弁17を有する低圧排気ガス再循環経路16を有する。内燃機関10は低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号を提供するための第1の測定ユニット18を更に有し、好ましくは第1の測定ユニットはEGR弁17の下流に配置されたラムダ・センサを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガス・モードで動作可能な内燃機関(10)、すなわち大型舶用エンジン又は定置式エンジンであって、
前記内燃機関(10)は、少なくとも200mmの内径(12)を有する少なくとも1つのシリンダ(11)を有し、
前記内燃機関(10)は、タービン(14)とコンプレッサ(15)とを有する過給機(13)を有し、
前記内燃機関は、EGR弁(17)を有する低圧排気ガス再循環経路(16)を有する、内燃機関(10)において、
前記内燃機関は、前記低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号を提供するための第1の測定ユニット(18)を更に有し、好ましくは前記第1の測定ユニットは前記EGR弁(17)の下流に配置されたラムダ・センサを有する、内燃機関(10)。
【請求項2】
前記内燃機関(10)は第2の測定ユニット(8)を有し、前記第2の測定ユニット(8)は、周囲圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ(2)を備え、また好ましくは周囲温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ(3)を備え、
前記内燃機関(10)は第3の測定ユニット(19)を有し、前記第3の測定ユニット(19)は、前記タービン(14)の下流の圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ(22b)、前記タービン(14)の上流の圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ(22a)、及び/又は前記タービン(14)の上流の温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ(23a)を備え、また
前記内燃機関(10)は第1の制御ユニット(20)を有し、前記第1の制御ユニット(20)は、
-前記第1の測定ユニット(18)から信号を受信し、
-前記第2の測定ユニット(8)から信号を受信し、
-前記第3の測定ユニット(19)から信号を受信し、また好ましくは前記上流及び下流圧力のそれぞれ並びに前記上流温度に基づいてタービン・マス・フローを決定し、また
-前記第1の測定ユニット(18)、前記第2の測定ユニット(18)からの前記信号、及び前記第3の測定ユニット(19)からの前記信号、特に前記タービン・マス・フローに基づいて、前記EGR率を決定する
ように構成されている、請求項1に記載の内燃機関(10)。
【請求項3】
前記第1の制御ユニット(20)は、前記決定されたEGR率を、事前決定された値及び/又は事前決定された間隔と比較するように構成されている、請求項2に記載の内燃機関(10)。
【請求項4】
前記第1の制御ユニット(20)は、前記EGR率が前記事前決定された値及び/又は前記事前決定された間隔よりも大きい又は小さい場合に信号を生成するように構成されている、請求項3に記載の内燃機関(10)。
【請求項5】
前記内燃機関は、前記信号を表示するためのモニタを有する、請求項4に記載の内燃機関(10)。
【請求項6】
前記内燃機関は第2の制御ユニット(21)を有し、前記第2の制御ユニット(21)は、
-燃焼ピーク圧、過早着火、ノッキング及び/又はミスファイヤ事象、又はβ値などの燃焼パラメータ、
-前記排気ガス中のNO値又はCH値などの排出レベル、
-前記タービン出口における温度などのエンジン性能、
-温度、湿度、及び/又は圧力などの周囲条件、
-燃料品質、メタン価、又は発熱量などの燃料特性、並びに/或いは、
-前記シリンダ内の空燃比又は空燃当量比(λ)
を表す信号に基づいて、前記EGR経路中の排気ガスのフローを調整するように少なくとも構成され、また
前記第2の制御ユニットは、前記EGR経路内の排気ガスのフローを調整するとき、前記決定されたEGR率を考慮するように構成されている、請求項2から5までのいずれか一項に記載の内燃機関(10)。
【請求項7】
前記内燃機関(10)は第3の制御ユニット(16)を有し、前記第3の制御ユニットは、
-前記第1の測定ユニット(18)から信号を受信し、
-前記第1の測定ユニット(18)からの前記信号に基づいて前記シリンダ(11)内の空燃比又は空燃当量比(λ)を決定する
ように構成されている、請求項2から6までのいずれか一項に記載の内燃機関(10)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の内燃機関(10)を動作させるための方法であって、
-前記低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号を提供するステップ
を含む、方法。
【請求項9】
-周囲圧力を表す信号及び周囲温度を表す信号を提供するステップと、
-前記タービン(14)の下流の圧力を表す信号、前記タービン(14)の上流の圧力センサを表す信号、及び前記タービン(14)の上流の温度を表す信号を提供するステップと、
-前記低圧排気ガス再循環経路(16)内の過剰空気率を表す前記信号、前記タービン(14)の下流の圧力を表す前記信号、前記タービン(14)の上流の圧力を表す前記信号、及び前記タービン(14)の上流の温度を表す前記信号に基づいて、前記EGR率を決定するステップと、
好ましくは、前記上流及び下流圧力のそれぞれ並びに前記上流温度に基づいて前記タービン・マス・フローを決定するステップと
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記低圧排気ガス再循環経路(16)内の過剰空気率を表す信号に基づいて、前記シリンダ(10)内の空燃比又は空燃当量比(λ)を決定するステップを更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス再循環のためのシステムを有する内燃機関、及び内燃機関を動作させるための方法に関する。
【0002】
本発明は好ましくは、シリンダが少なくとも200mmの内径を有する、大型の舶用又は船舶エンジン若しくは定置式エンジンなどの内燃機関に関する。機関は好ましくは2ストローク・エンジン又は2ストローク・クロス・ヘッド・エンジンである。
【背景技術】
【0003】
機関はディーゼル・エンジン又はガス・エンジン、デュアル・フューエル・エンジン若しくはマルチ・フューエル・エンジンであり得る。そのような機関では、ガス状燃料の又は液体及び/若しくはガス状燃料の燃焼、並びに自己着火又は強制着火が可能である。
【0004】
内燃機関という用語はしたがってまた一般に、燃料の自己着火を特徴とするディーゼル・モードだけでなく、例えば火花着火による燃料の積極着火を特徴とするオットー・モードでも、又はこれら2つの混合でも動作可能な、大型エンジンも指す。また更に、内燃機関という用語は特に、燃料の自己着火が別の燃料の積極着火に使用されるデュアル・フューエル・エンジン及び大型エンジンを含む。
【0005】
エンジンは中にピストンを有する少なくとも1つのシリンダを有する。ピストンはクランクシャフトに接続されている。ピストンはエンジンの動作中、上死点(TDC:top dead center)と下死点(BDC:bottom dead center)との間を往復動する。シリンダは典型的には、少なくとも1つの吸気用の空気通過開口部、特にシリンダのライナーに配置されている空気入口と、少なくとも1つの排気用の空気通過開口部、特にシリンダのカバーに配置されている排気出口と、を有する。好ましくは空気入口は掃気空気レシーバと流体接続している。
【0006】
内燃機関は縦方向に掃気される2ストローク・エンジンであり得る。
【0007】
エンジン回転速度は好ましくは800RPM(4ストローク)未満であり、より好ましくは、低速度エンジンの指定を示唆する200RPM(2ストローク)未満である。
【0008】
燃料は、ディーゼル若しくは舶用ディーゼル油又は重質燃料油、又はエマルジョン、又はスラリー、又はメタノール、又はエタノール、並びに液化天然ガス(LNG:liquid natural gas)、液化石油ガス(LPG:liquid petrol gas)などのようなガスとすることができる。
【0009】
要求に応じて追加されてもよい更なる可能な燃料は、液化バイオ・ガス(LBG:Liquified Biogas)、バイオ燃料(例えば、藻類燃料又は海草油)、水素、CO2からの合成燃料(例えば、パワー・トゥ・ガス又はパワー・トゥ・リキッドによって作られたもの)である。
【0010】
大型船舶、特に貨物輸送船は通常、内燃機関、特にディーゼル及び/又はガス・エンジン、ほとんどの場合2ストローク、クロス・ヘッド・エンジンによって動力を得る。機関で燃焼される、重質燃料油、舶用ディーゼル油、ディーゼル又は他の液体のような液体燃料の場合、及びLNG、LPG、又はその他のようなガス状燃料の場合、この燃焼プロセスからの排気は、IMO Tier III規則などの現行の汚染物質規制に適合するように浄化される必要がある。
【0011】
内燃機関はガス・モードで動作され得る。ガス吸入弁によってガス燃料などの流体燃料を提供できるか又は加圧ガス液体を液体として提供でき、それがトルク生成のために使用される。ガス・モードでは更に、誘起着火を行うために、パイロット噴射と呼ばれる場合もある少量の液体燃料の噴射が行われ得る。
【0012】
大気及び流体燃料に加えて、排気ガスなどの不活性ガスをシリンダ内に導入することができる。機関は高圧又は低圧排気ガス再循環経路を有し得る。
【0013】
最新の4ストロークのオットー・サイクル・エンジンは、ラムダを望ましい限度内に維持するために及びリッチ燃焼を回避するために、閉ループ・ラムダ制御を使用し、排気ガス中の酸素含有量を測定し、エンジン内で噴射される燃料の量を制御する。
【0014】
2ストローク・エンジンでは、排気弁の開放中に大気が入口ポートから進入し排気ガスと混合するのを許容するシリンダ掃気プロセスに起因して、シリンダ内ラムダ測定が困難であり得る。このため排気ガス中の残留燃焼酸素の測定は確実ではない。
【0015】
欧州特許出願公開第3722572A1号から、パイロット燃料噴射タイミングを適合させることによって、EGR率を適合させることによって、加えられる燃料の量を適合させることによって、掃気空気圧力を適合させることによって、及び/又は不活性添加物の量を適合させることによって、燃焼圧力ピーク角度を調整できることが知られている。EGR率は燃焼プロセスに対して強い影響を有し得る。
【0016】
EGRシステムは、充填物の過早着火及びエンジンのノッキングの抑制を助ける、圧縮後の温度の低下及びシリンダ充填物の不活性化をもたらし得る。
【0017】
異常燃焼プロセスを低減又は回避するために、シリンダ内に排気ガスなどの不活性ガスを導入できることが知られている。欧州特許出願公開第3081890A1号から、EGR率を調整することによって過早着火を防止するために、ノッキング及びミスファイヤも低減又は回避できることが知られている。
【0018】
更に、排気ガスの再循環の適用によって、排気ガス排出物CH、THC、NO、COの低減が可能である。
【0019】
しかしながら、EGR率が高くなるほど、シリンダ内の空燃比(AFR:air-to-fuel ratio)が過度に小さくなるリスクも高まる。空燃比は燃焼プロセス中に存在する固体燃料、液体燃料、又は気体燃料の質量比である。
【0020】
EGR率は、燃焼プロセスを最適化するためにEGRを使用する燃焼エンジンにおいて、エンジンの前後の、例えば掃気レシーバ内の及び排気ポートにおけるO濃度を測定することによって、測定され得る。代替として、排気ガス中の及び掃気充填物中のCO濃度を測定することによって、EGR率を計算することが考えられる。
【0021】
国際出願公開第2011/076837A1号は、EGR率を測定すること及び制御すること、並びに、シリンダを通る総排気マス・フロー及びタービンを通るタービン・マス・フローからEGRマス・フローを決定することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3722572A1号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3081890A1号
【特許文献3】国際出願公開第2011/076837A1号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Guzzella、Onder:「Introduction to Modeling and Control of Internal Combustion Engine Systems」、ISBN3-540-22274-x、Springer-Verlag、ベルリン、2004年
【非特許文献2】Mitsubishi METurbo TZ-E002-5573のユーザ・マニュアル「Guideline for MET turbocharger project」、2017年4月、54頁以下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
先行技術の欠点を回避すること、特に、エンジン・パラメータの精確な設定を可能にする内燃機関及び内燃機関を動作させる方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、内燃機関は少なくともガス・モードで動作可能な大型舶用エンジン又は定置式エンジンである。
【0026】
内燃機関は少なくとも200mmの内径を有する少なくとも1つのシリンダを有する。
【0027】
内燃機関はシリンダに流体燃料を供給するための少なくとも1つのガス吸入弁を有し得る。流体燃料は燃料ガス、又はシリンダ内に入ると気化する高圧燃料液体であり得る。
【0028】
内燃機関は、少なくとも1つのタービンと少なくとも1つのコンプレッサとを有する少なくとも1つの過給機を有する。
【0029】
過給機はシリンダから排出される排気ガスを使用して、シリンダに供給される空気の量を増加させる。過給機によって圧縮された空気は、吸気用の空気通過開口部に流体接続している掃気レシーバに供給され得る。
【0030】
内燃機関はEGR弁を有する低圧排気ガス再循環経路を有する。
【0031】
低圧排気ガス再循環のために、排気ガスは、大気と混合される前に過給機のタービンを通過する、及び/又は、過給機のコンプレッサを通過し掃気空気の一部としてシリンダの中に入る。この場合、典型的にはEGR経路はタービンの下流で分岐する。
【0032】
内燃機関は低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率(excess-air-ratio)を表す信号を提供するための第1の測定ユニットを更に有する。
【0033】
第1の測定ユニットは、EGR弁の下流に配置されているラムダ・センサを有し得る。ラムダλは空燃当量比とも呼ばれ、化学量論による所与の混合物に関する実際の空燃比の比である。λ=1.0は混合物が化学量論に基づいていることを意味し、リッチ混合物ではλ<1.0であり、リーン混合物ではλ>1.0である。
【0034】
空燃当量比は常に1の値を超えるべきである。典型的には、50%のEGR率ではラムダλは1.5となる。
【0035】
過剰空気率は、空燃比によって又は空燃当量比λによって指定され得る。
【0036】
典型的にはラムダ・センサは、分析中のガス、この場合再循環させた排気ガス中の、酸素(O)の割合を測定する。燃料の種類が既知である場合、酸素含有量から空燃当量比が、それに応じて理論空気量要件が決定され得る。
【0037】
標準的広帯域ラムダ・プローブはλ約1.5~1.7までのラムダ範囲内で非常に良好に機能する。
【0038】
例えば、任意の通常燃料に対して、標準的な広帯域ラムダ・プローブを有する測定ユニットとして、ETAS社のES63xラムダ・モジュールを使用することができる。
【0039】
したがって、排気ガス中のラムダ測定、燃料消費、及びタービン・マス・フロー計算を介して、EGR率を計算することが可能となろう。
【0040】
排気ガスの空燃当量比が知られることによって、燃焼を制御するための更なる値の決定が可能になる。
【0041】
内燃機関は、周囲圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサを有する、及び好ましくは周囲温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサを有する、第2の測定ユニットを有し得る。
【0042】
内燃機関は、タービンの下流の圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサを有する、タービンの上流の圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサを有する、及び、タービンの上流の温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサを有する、第3の測定ユニットを更に有し得る。
【0043】
内燃機関は、第1の測定ユニットから信号を受信するように、第2の測定ユニットから信号を受信するように、及び第3の測定ユニットから信号を受信するように構成されている、第1の制御ユニットを更に有し得る。
【0044】
好ましくは、第1の制御ユニットは、上流及び下流圧力のそれぞれに及び上流温度に基づいてタービン・マス・フロー(turbine mass flow)を決定するように構成されている。
【0045】
国際出願公開第2011076837A1号に開示されているように、タービン・マス・フローmturbineの計算は、例えばスロットル方程式に類似した既知の数式を使用することによって決定されるタービン・モデルから導出される、よく知られた式を適用して行うことができ、このモデルは例えば:Guzzella、Onder:「Introduction to Modeling and Control of Internal Combustion Engine Systems」、ISBN3-540-22274-x、Springer-Verlag、ベルリン、2004年、に記載されている。
【0046】
典型的には、例えばMitsubishi METurbo TZ-E002-5573のユーザ・マニュアル「Guideline for MET turbocharger project」、2017年4月、54頁以下にあるように、過給機には個別にタービン・フロー特性が与えられている。タービンの前の温度及び圧力、周囲温度及び圧力、並びにタービン圧力比と特徴的な関係を有するタービン・フロー・パラメータの関数として、kg/s単位のガス量が与えられている。
【0047】
タービン・マス・フローmturbineはタービンを通過する排気ガスの一部である。ウェイストゲートが開いている場合、そこを排気ガスの別の部分が通過する。エンジンのガス・モードではウェイストゲートは閉じたままである。
【0048】
別法として、タービン・マス・フローmturbine又は「Exh質量流量、タービン・イン」を、過給機のエネルギー収支から計算することができる。
【数1】

上式で、「アルファ-T」及び「AresT」は過給機仕様書から得ることができ、「p5タービン・イン」及び「p0周囲」は測定値であり、「Rexh」は所与の定数であるか、又はより正確にはタービンの上流で測定された温度値「T5タービン・イン」に基づいて計算することができる。
【0049】
「p5タービン・イン」は、排気レシーバとタービンとの間で、好ましくはタービンの近くで測定され得るタービン上流圧力である。「p0周囲」は周囲圧力であり、例えばエンジンのあらゆるところで測定可能である。
【0050】
用語「psi1」は
【数2】

によって与えられ、上式で「k exh」は定数であるか、又はより正確には測定された「T5タービン・イン」値及びEGR率に基づいて計算することができ、また
【数3】

であり、上式で「p6タービン・アウト」はタービンの下流の圧力である。
【0051】
第1の制御ユニットは、第1の測定ユニット、第2の測定ユニットからの信号、及び第3の測定ユニットからの、特にタービン・マス・フローからの信号に基づいて、EGR率を決定するように構成され得る。
【0052】
典型的には、周囲圧力及び周囲温度の値は船舶モータの所与の制御ユニットにおいて入手可能である。この場合、別法として、第1の制御ユニットは、外部のデバイスから周囲圧力及び好ましくは周囲温度を表す信号を受信するための入力ラインを有し得る。第1の制御ユニットはEGR率を決定するためにこれらの値を使用し得る。
【0053】
排気ガス再循環率又はEGR率XEGRは例えば、以下の比:
【数4】

として取得できる。
【0054】
これらの式において、mturbineはタービンを通る質量流量(mass flow rate)であり、mfuelは燃料質量流量であり、λexhaustは第1の測定ユニットによって測定される排気中の空燃当量比であり、LSTは理論空気量要件又は理論空燃比である。
【0055】
タービンを通る質量流量を決定するために、例えば上で説明したように、周囲圧力が知られている必要がある。
【0056】
燃料質量流量mfuelは通常、船舶モータの所与の制御ユニットにおいて入手可能である。更に又は別法として、第1の制御ユニットは、燃焼エンジンにおいて実際に使用される燃料の量及び種類についての情報に基づいて、燃料質量流量を決定するように構成されている。
【0057】
典型的には、燃焼はEGR率を設定することによって制御され得る。しかしながら、燃焼制御はEGR率を精確な様式で調整できるべきである。精確な燃焼制御を実現可能とするには、実際のEGR率の決定が重要である。
【0058】
第1の制御ユニットは、決定されたEGR率を、事前に決定された値と及び/又は事前に決定された間隔(interval)と比較するように構成され得る。事前に決定された値及び/又は事前に決定された間隔は、実地試験で決定されていてもよく、又はマップから採られてもよく、又は圧力曲線に応じて選ばれてもよい。
【0059】
設定点は一般に荷重に依存する。それらはエンジンのタイプによって異なる場合があり、ボアのサイズに依存し得る。設定点はまたエンジンの回転速度及び出力にも依存し得る。
【0060】
第1の制御ユニットは、EGR率が事前に決定された値及び/又は事前に決定された間隔よりも大きいか又は小さい場合に信号を生成するように構成され得る。内燃機関は信号を表示するためのモニタを有し得る。モニタは視覚及び/又は聴覚モニタであり得る。
【0061】
この結果、使用者はEGR率が望まれない値に達したかどうかを認識することができ、この場合制御プロセスを停止又は修正することができる。EGR率の不合理な設定を回避することができる。
【0062】
第1の制御ユニットは、決定されたEGR率と、事前に決定された値及び/又は事前に決定された間隔との間の差を決定するように構成され得る。
【0063】
第1の制御ユニットは、事前に決定された値及び/又は事前に決定された間隔よりも大きいか又は小さい決定されたEGR率に対して、新しいEGR率を設定する制御プロセスを停止及び/又は補正することで応答するように構成され得る。
【0064】
燃焼制御によってEGR率を調整することが可能となり得る。
【0065】
これを精確な様式で行うために、実際のEGR率の決定が提案される。
【0066】
内燃機関は、EGR経路内の排気ガスのフロー(flow)を調整するように少なくとも構成されている、第2の制御ユニットを有し得る。第2の制御ユニットは第1の制御ユニットの一部であり得る。第1の及び/又は第2の制御ユニットはエンジン制御システムの一部であり得る。
【0067】
第2の制御ユニットは、燃焼パラメータ、排出レベル、エンジン性能、周囲条件、燃料特性、及び/又はシリンダ内の空燃比を表す信号に基づいて、EGR経路内の排気ガスのフローを調整するように構成され得る。
【0068】
第2の制御ユニットは、EGR経路内の排気ガスのフローを調整するときに、決定されたEGR率を考慮に入れるように構成され得る。
【0069】
燃焼パラメータは、ピーク・シリンダ圧力、過早着火、ノッキング、及び/若しくはミスファイヤ事象、又はベータ値βなどの、燃焼の特性を示すパラメータである。
【0070】
ベータ値βは燃焼中の圧力増加に関するパラメータである。
β=(pmax-pcomp)/(θpmax-θPIT
上式で、pmaxは最大シリンダ圧力であり、θpmaxは最大シリンダ圧力のクランク角、pcompは圧縮後に到達するシリンダ圧力、θPITはパイロット燃料が噴射されるクランク角である。
【0071】
排出レベルは、排気ガス中のNO値又はCH値などの、排気ガスの品質の特性を示すパラメータである。
【0072】
エンジン性能は、タービン出口での温度などの、エンジン出力の特性を示すパラメータである。
【0073】
周囲条件は、周囲温度、周囲湿度、及び/又は周囲圧力などの、環境の特性を示すパラメータである。
【0074】
燃料特性は、燃料品質、メタン価、又は発熱量などの、使用される燃料の特性を示すものである。
【0075】
決定されたEGR率を考慮に入れることは、第2の制御ユニットが、EGR率を事前に決定された値及び/若しくは事前に決定された間隔と比較するように、並びに/又は、EGR率と第1の制御ユニットによって提供される事前に決定された値及び/若しくは事前に決定された間隔との間の差を使用して更なる処理を行うように、構成され得ることを意味し得る。
【0076】
第2の制御ユニットは、決定されたEGR率が低過ぎるか若しくは高過ぎる場合、又は事前に決定されたEGR率値に対する差が事前に決定されたレベルに達した場合に、EGR率の調整を停止するように、EGR率の調整を訂正するように、EGR率以外のパラメータを変更するように、及び/又は保守を引き起こすように構成され得る。
【0077】
内燃機関は、第1の測定ユニットから信号を受信するように、及び、第1の測定ユニットからの並びに第2及び第3の測定ユニットからの信号に基づいてシリンダ内の空燃比又は空燃当量比(λ)を決定するように構成されている、第3の制御ユニットを有し得る。別法として又は追加として、第1の測定ユニットからの信号に及び第1の制御ユニットからの信号に基づく、シリンダ内の空燃比又は空燃当量比(λ)。
【0078】
シリンダ内ラムダ値は以下の式によって決定され得る。
λcylinder=(m+mL,EGR)/(LST*mfuel
【0079】
この式では、mfuelは燃料質量流量であり、mは燃焼チャンバに入る空気の質量流量であり、LSTは理論空燃比であり、mL,EGRは再循環させた排気ガスからの空気当量酸素質量流量である。
【0080】
再循環させた排気ガスからの空気当量酸素質量流量mL,EGRは、以下の式
L,EGR=mEGR*wO2/0.232
によって限定することができ、上式でmEGRは再循環させた排気ガスの質量流量であり、wO2は空気中の酸素の質量分率である。
【0081】
再循環させた排気ガスの質量流量は、以下の式によって排気ガス再循環率に結び付けられる。
EGR=m/XEGR/(1-XEGR
【0082】
空気中の酸素の質量分率wO2
O2=νO2,exhaust*0.232/0.2095
によって限定することができ、上式でνO2,exhaustは排気ガス中の酸素のモル分率である。
【0083】
モル分率νO2は一般に以下の式:
νO2=(λexhaust-1)/(4.76λexhaust+(H/C)/(H/C+4))
によって計算でき、上式でHは燃料の水素含有量であり、Cは燃料の炭素含有量である。H及びCは燃料に固有の量である。CHの場合、Hの値は4と考えられ、Cの値は1と考えられる。
【0084】
λexhaustは排気ガス中でラムダ・プローブを用いて測定される。
【0085】
この場合、使用される燃料、排気ガスの質量流量及びラムダが知られれば、EGR率及びシリンダ内ラムダを計算することができる。
【0086】
燃焼プロセスを精確にモニタするために及び燃焼プロセスの制御を改善するために、両方の値を使用することができる。
【0087】
本発明によれば、上記したような内燃機関を動作させるための方法は、低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号を提供するステップを有する。
【0088】
燃焼プロセスをモニタするために及び燃焼プロセスの制御を改善するために、この値を使用することができる。
【0089】
方法は、周囲圧力を表す信号及び好ましくは周囲温度を表す信号を提供するステップ、タービンの下流の圧力を表す信号、タービンの上流の圧力センサを表す信号、及びタービンの上流の温度を表す信号を提供するステップを更に有し得る。
【0090】
方法は、低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号、周囲圧力を表す信号、タービンの下流の圧力を表す信号、タービンの上流の圧力を表す信号、及び/又はタービンの上流の温度を表す信号に基づいて、EGR率を決定するステップを更に有し得る。
【0091】
好ましくは、タービン・マス・フローは、上流及び下流圧力のそれぞれに、上流温度及び/又は周囲圧力に基づいて決定される。
【0092】
更に、シリンダ内の空燃比又は空燃当量比(λ)は、低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号に基づいて決定され得る。
【0093】
以下では本発明を実施例において図を用いて更に説明する。同じ参照符号は機能的に対応する特徴を指す。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】内燃機関の概略図である。
図2】内燃機関の更なる実例の概略的表示である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、少なくとも200mmの内径12を有する往復ピストン9を有するシリンダ11を有する内燃機関10の第1の実例を示す。内燃機関10は、シリンダ11の排気出口31と空気入口32との間にEGR経路16が配置された、排気ガス再循環のためのシステムを有する。内燃機関10は、タービン14とコンプレッサ15とを有する過給機13を有する。
【0096】
排気ガス再循環のためのシステムは低圧システムであり、再循環させた排気ガスは過給機13のコンプレッサ15を介してシリンダ11の空気入口32に案内可能であり、そこで排気ガスは大気と混合される。この実例では、排気ガスは過給機13のタービン14を通して案内可能であり、EGR経路16はタービン14の下流で分岐している。
【0097】
再循環させた排気ガスの量は、EGR弁17を設定することによって、及び背圧弁29を設定することによって、制御され得る。
【0098】
EGR弁17の下流に第1の測定ユニット18が配置されている。測定ユニット18はラムダ・センサを有し、低圧排気ガス再循環経路内の過剰空気率を表す信号を第1の制御ユニット20に提供する。
【0099】
燃焼機関は、周囲圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ2(図2を参照)と、周囲温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ3(図2を参照)と、を有する、第2の測定ユニット8(図2を参照)を有し得る。
【0100】
第3の測定ユニット19はタービン19の近くに配置されている。
【0101】
第1の制御ユニットは、第1の測定ユニット18からの、第2の測定ユニット8からの(図2を参照)、及び/又は第3の測定ユニット19からの信号に基づいて、EGR率を計算し得る。
【0102】
内燃機関10は、背圧弁29を設定することによってEGR経路16内の排気ガスのフローを調整するように構成されている、第2の制御ユニット21を有する。
【0103】
第2の制御ユニット21は、燃焼パラメータに基づいてEGR経路内の排気ガスのフローを調整する。燃焼パラメータはシリンダ測定ユニット33から受信された信号から決定することができ、シリンダ測定ユニット33は例えば、シリンダ11内の圧力測定値、特に燃焼ピーク圧、過早着火、ノッキング及び/若しくはミスファイヤ事象、又はβ値を提供する。
【0104】
図2は内燃機関10の更なる実例の概略的表示を示す。
【0105】
少なくとも1つのシリンダ11からの排気ガス(図1を参照)が排気ガス・レシーバ27内に回収され、これを過給機13のタービン14及びコンプレッサ15を介して掃気空気レシーバ28へと再循環させることができる。
【0106】
低圧EGR経路16はタービン14の下流で分岐する。EGR経路はEGR弁17を有する。EGR経路への接合部の下流に、再循環される排気ガスの量を制御するために使用され得る、背圧弁29が存在する。
【0107】
更に、EGR経路は、図には示されていないブロワを有し得る。
【0108】
EGR弁17の下流に第1の測定ユニット18が配置されている。この実例には、第1の測定ユニット18の2つの典型的な位置、EGR冷却器24の上流及び下流が示されている。
【0109】
燃焼機関は、周囲圧力を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ2を有する、及び周囲温度を表す信号を提供するための少なくとも1つのセンサ3を有する、第2の測定ユニット8を有し得る。
【0110】
第3の測定ユニット19(図1を参照)は、タービン14の下流の圧力を表す信号を提供するためのセンサ22bと、タービン14の上流の圧力を表す信号を提供するためのセンサ22aと、タービン14の上流の温度を表す信号を提供するためのセンサ23aと、タービン14の下流の温度を表す信号を提供するためのセンサ23bと、を有する。
【0111】
タービンの下流の温度は、EGR冷却器24の上流の排気ガスの温度に対応している。温度は排気ガスの断熱指数κを計算するために使用され得る。
【0112】
排気ガスは大気33と混合され、掃気空気冷却器25を介して、及び最終的にブロワ26を介して、掃気空気レシーバ28へと案内される。
図1
図2
【外国語明細書】