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特開2023-111864金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法
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  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図1A
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図1B
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図2A
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図2B
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図3
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図4
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図5
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図6
  • 特開-金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111864
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】金属物体からの支持構造の除去を容易にする金属液滴吐出三次元(3d)物体プリンタのためのデバイス及び動作方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/43 20210101AFI20230803BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20230803BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230803BHJP
【FI】
B22F10/43
B22F10/25
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000506
(22)【出願日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】17/649,393
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア、エス.、ヒルトン
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ、クリシュナ、クマール、ジャヤバル
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ジェイ.、マッコンビル
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AB07
4K018EA51
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする金属液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】三次元(3D)金属物体製造装置は、支持構造と支持構造によって支持される金属物体の部分との間にグラファイト界面を形成する固体グラファイト塗布デバイス194を備える。グラファイト界面を形成するグラファイトは、アクチュエータ144を動作させて、グラファイト塗布デバイスを支持構造の表面に移動させ、かつデバイス内のグラファイト部材198を支持構造の表面に対して移動させることによって、支持構造に塗布される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を有するエジェクタヘッドであって、溶融金属を保持するように構成されている収容部を前記容器内に有する、エジェクタヘッドと、
平面部材と、
グラファイト塗布デバイスであって、表面にグラファイトを塗布して、支持構造表面と前記エジェクタヘッドから吐出された溶融金属液滴で形成されている金属物体の一部分との間にグラファイト界面を形成するように構成されている、グラファイト塗布デバイスと、
を備える、金属液滴吐出装置。
【請求項2】
前記グラファイト塗布デバイスが、
開口部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記開口部内のグラファイト部材と、
前記ハウジングに動作可能に接続された第1のアクチュエータと、
前記アクチュエータに動作可能に接続されたコントローラと、
を更に備え、前記コントローラが、
前記第1のアクチュエータを動作させて、前記ハウジングを前記表面に移動させ、かつ前記グラファイト部材を前記表面に対して往復運動で移動させて、前記グラファイト界面を形成するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記グラファイト塗布デバイスが、
前記ハウジングの前記開口部内の部材と、
前記部材に動作可能に接続された第2のアクチュエータと、
前記第2のアクチュエータに動作可能に接続された前記コントローラと、
を更に備え、前記コントローラが、
前記第2のアクチュエータを動作させて、前記グラファイト部材を前記ハウジング内の前記開口部内で移動させて、前記グラファイト部材の端部を前記開口部の外側に伸長させるように更に構成されている、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記グラファイト部材の周りで前記ハウジング内の前記開口部内に取り付けられたばねを更に備え、
前記グラファイト部材の一部分が、前記部材と前記ばねとの間に介在している、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングの前記開口部内のねじ山付き凹部を更に備え、
前記ハウジングの前記開口部内の前記部材が、ねじ山付き部材であり、前記第2のアクチュエータが、前記ねじ山付き部材を前記ねじ山付き凹部内で回転させるように構成されており、
前記コントローラが、
前記第2のアクチュエータを動作させて、前記ねじ山付き部材を前記ねじ山付き凹部内で回転させて、前記グラファイト部材を伸長させるように更に構成されている、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記グラファイト部材が、T字形の長手方向断面領域を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラが、前記エジェクタヘッドに動作可能に接続されており、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造表面を形成する吐出される溶融金属液滴間の間隔を変化させるように更に構成されている、
請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラが、前記エジェクタヘッドに動作可能に接続されており、
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造表面を形成する吐出される溶融金属液滴のサイズを変化させるように更に構成されている、
請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、
前記エジェクタヘッド及び前記ハウジングが取り付けられている部材を更に備え、
前記第1のアクチュエータが、前記部材に動作可能に接続されており、したがって前記第1のアクチュエータの前記動作が、前記エジェクタヘッド及び前記ハウジングを連携して移動させる、
請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記装置が、
前記エジェクタヘッドが取り付けられている第1の部材と、
前記ハウジングが取り付けられている第2の部材であって、前記第1の部材が前記第2の部材とは異なる、第2の部材と、
前記第2の部材に動作可能に接続された第2のアクチュエータと、
を更に備え、
前記第1のアクチュエータが、前記第1の部材に動作可能に接続されており、
前記コントローラが、前記第2のアクチュエータに動作可能に接続されており、かつ前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータを動作させて、前記エジェクタヘッド及び前記ハウジングを互いに独立して移動させるように構成されている、
請求項2に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラが、
前記第2のアクチュエータを動作させて、前記第2の部材を三次元空間内で移動させるように更に構成されている、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、
前記第1のアクチュエータを動作させて、前記エジェクタヘッドを平面内で又は単一の軸に沿って移動させるように更に構成されている、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
金属液滴吐出装置を動作させる方法であって、
エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を吐出して、部材によって支持されている物体層及び支持層を形成することと、
グラファイト塗布デバイスを動作させて、支持層で形成された支持構造の表面と、物体層で形成された金属物体の一部分の表面との間にグラファイト界面を形成することと、
を含む、方法。
【請求項14】
第1のアクチュエータを動作させて、前記グラファイト塗布デバイスのハウジングを前記支持構造の前記表面に移動させ、かつ前記グラファイト部材を往復運動で前記支持構造の前記表面に対して移動させて、前記グラファイト界面を形成することを更に含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ハウジング内の前記開口部内の部材に動作可能に接続された第2のアクチュエータを動作させて、前記グラファイト部材を前記ハウジング内の開口部内で移動させて、前記グラファイト部材の端部を前記開口部の外側に伸長させること、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のアクチュエータの前記動作が、
前記グラファイト部材の周りで前記ハウジング内の前記開口部内に取り付けられたばねに対して前記グラファイト部材の一部分を付勢することを更に含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のアクチュエータの前記動作が、
前記部材をねじ山付き凹部内で回転させて、前記グラファイト部材を伸長させることを更に含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記グラファイト部材が、T字形の長手方向断面領域を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造表面を形成する吐出される溶融金属液滴間の間隔を変化させること、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記エジェクタヘッドを動作させて、前記支持構造表面を形成する吐出される溶融金属液滴のサイズを変化させること、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のアクチュエータの前記動作が、
前記エジェクタヘッド及び前記ハウジングが取り付けられている部材を移動させ、したがって前記第1のアクチュエータの前記動作が、前記エジェクタヘッド及び前記ハウジングを連携して移動させることを更に含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のアクチュエータを動作させて、前記エジェクタヘッドを移動させることと、
第2のアクチュエータを動作させて、前記ハウジングを前記エジェクタヘッドとは独立して移動させることと、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のアクチュエータの前記動作が、
前記ハウジングを三次元空間内で移動させることを更に含む、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のアクチュエータの前記動作が、
前記エジェクタヘッドを平面内で又は単一の軸に沿って移動させることを更に含む、
請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属液滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、かかるプリンタにおいて金属物体を構築するための支持構造の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどの紫外線硬化材料を吐出するエジェクタを使用するが、他の技術は、エラストマーを溶融し、熱可塑性材料を押出して物体層にする。プリンタは、典型的には、可塑性又は熱可塑性材料の連続層を形成して、様々な形状及び構造を有する三次元印刷物体を構築するように、1つ以上のエジェクタ又は押出機を動作させる。三次元被印刷物体の各層が形成された後、可塑性材料は、紫外線硬化され、固まり、その層を三次元被印刷物体の下地層に接着する。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
最近、1つ以上のエジェクタから、溶融金属の液滴を吐出して3D物体を形成するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール又はペレットなどの固体金属源を有し、この固体金属源は、固体金属が溶融されるプリンタ内の容器の加熱された収容部に固体金属を供給し、溶融金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過することにより、電磁場を生成し、その電磁場により、収容部のノズルにおいて溶融金属のメニスカスが収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進する。ビルドプラットフォームは、エジェクタのノズルから吐出された溶融金属液滴を受容するように位置付けられ、このプラットフォームは、コントローラ動作アクチュエータによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内を移動する。これらの吐出された金属液滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成し、別のアクチュエータは、コントローラによって動作されて、エジェクタとプラットフォームとの間の距離を変化させて、エジェクタと、形成される金属物体の直近に印刷された層との間で適切な距離を維持する。このタイプの金属液滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタとしても知られている。
【0004】
MHDプリンタを使用して実行される印刷プロセスは液滴ごとに実行されるため、従来の減法製造技術を通じて本来は達成することができない複雑な三次元(3D)形状を生成することができる。この利点にもかかわらず、物体上に張り出しフィーチャを形成するために使用できる角度には限界が存在する。3D金属印刷において、物体の前の層は、次の印刷された層のための支持基部として機能する。T字形部品の水平部分など、新しい層が前の層を直角に越える場合、溶融金属が垂下することなく凝固することを可能にする十分な期間にわたって支持層がフィーチャを保持しないので、フィーチャは崩壊する。形成されている物体の一部ではない支持構造は、複雑な形状が印刷され得るように、次の物体層の張り出し部分の形成を支持するように生成され得る。本明細書で使用される場合、「支持構造」という用語は、物体形成中に物体層の吐出された金属滴を支持し、物体の製造後に物体から除去される、吐出された金属液滴の蓄積を意味する。
【0005】
3D金属物体材料の環境は高温環境であり、例えば、典型的には、475℃以上の温度に遭遇するので、ポリマー材料の支持構造を使用することができない。代わりに、物体を形成する同じ溶融金属が、支持構造を構築するためにも使用される。物体及び支持体は同じ金属で作製されているので、支持体と物体との間の界面における層は互いに強く結合する。この強力な結合は、部品から支持体を除去するために工具及び機械加工を必要とする。このタイプの支持体除去動作は、3D金属物体製造プロセスにかなりの時間、労力、及び費用を追加する。高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にすることができることは有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする。本方法は、エジェクタヘッドを動作させて、溶融金属液滴を吐出して、部材によって支持されている物体層及び支持層を形成することと、グラファイト塗布デバイスを動作させて、支持層で形成された支持構造の表面と、物体層で形成された金属物体の一部分の表面との間にグラファイト界面を形成することと、を含む。
【0007】
新しい3D金属物体プリンタは、高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする。新しい3D金属物体プリンタは、容器を有するエジェクタヘッドであって、溶融金属を保持するように構成されている収容部を容器内に有する、エジェクタヘッドと、平面部材と、グラファイト塗布デバイスであって、表面にグラファイトを塗布して、支持構造表面とエジェクタヘッドから吐出された溶融金属液滴で形成されている金属物体の一部分との間にグラファイト界面を形成するように構成されている、グラファイト塗布デバイスと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする3D金属物体プリンタを動作させるための方法、及びこの方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴は、添付の図面に関連して以下の説明において説明される。
図1A】高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする新しい3D金属物体プリンタの側面図である。
図1B図1Aに示される新しい3D金属物体プリンタの上面図である。
図2A】高温環境における支持体の剛性及び耐久性を損なうことなく、金属物体の製造が完了した後に支持構造の剥離を容易にする新しい3D金属物体プリンタの代替の実施形態を示す。
図2B図2Aに示される新しい3D金属物体プリンタの上面図である。
図3図1A図1B図2A、及び図2Bに示されるグラファイト塗布デバイスの概略図である。
図4図1A及び図2Aのプリンタによって形成された金属物体、支持構造、及び介在するグラファイト層を示す。
図5】物体層と支持層との間に介在する固体グラファイト界面層を形成する、図1A又は図2Aのシステムを動作させるためのプロセスの流れ図である。
図6】固体グラファイト界面層を有する支持構造を形成しない従来技術の3D金属プリンタの概略図である。
図7】金属物体の部分を互いに別々に形成するための従来技術のプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作のための環境、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0010】
図6は、溶融金属の液滴を吐出してビルドプラットフォーム上に金属物体を直接形成する、既知の3D金属物体プリンタ100の一実施形態を示す。図6のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴は、単一のノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出され、ノズルからの液滴が、ビルドプラットフォーム112に直接塗布されたスワスによって物体の基部層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般に利用可能な標準規格のワイヤ、マクロサイズの比率のペレット、及び金属粉末などの、集合形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0011】
図6を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116が、エジェクタヘッド140内の上部ハウジング122を通って延びるワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属液滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「エジェクタヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を生成する。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通してエジェクタヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りのエジェクタヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属液滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0012】
エジェクタヘッド140は、プラットフォーム112に対するエジェクタヘッドの垂直方向への移動のために、Z軸軌道内に移動可能に取り付けられている。1つ以上のアクチュエータ144が、Z軸に沿ってエジェクタヘッド140を移動させるためにベースプレート114に動作可能に接続されており、1つ以上のアクチュエータ144は、プラットフォームをエジェクタヘッド140の下方のX-Y平面内で移動させるためにプラットフォーム112に動作可能に接続されている。アクチュエータ144は、コントローラ148によって動作されて、エジェクタヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持する。システム100のいくつかの変形例におけるビルドプラットフォームは、本質的に酸化鋼からなり、他の場合では、酸化鋼は、タングステン又はニッケルの上面コーティングを有する。プラットフォームの酸化鋼バージョンは、溶融アルミニウムによって容易に湿潤されないため、溶融アルミニウムの基部層にそれほど強く結合する可能性は低い。このプラットフォームは、製造後に物体を取り外すに有利であるが、プロセス全体中に物体の形成を支持するのに十分なほど適切に強くはない場合がある。この問題に対処するために、プラットフォームの他のバージョンは、プラットフォームにタングステン又はニッケル表面を追加して、溶融アルミニウムを用いてのビルド面の湿潤を改善する。
【0013】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属液滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、エジェクタヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直方向で動作されるように図6に示されるが、他の別の向きを使用することができる。また、図6に示される実施形態がX-Y平面内で移動するプラットフォームを有し、エジェクタヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の構成も可能である。例えば、アクチュエータ144は、エジェクタヘッド140をX-Y平面内で移動させ、プラットフォーム112をZ軸に沿って移動させるように構成することができ、又はエジェクタヘッド140をX-Y平面及びZ軸の両方で移動させるように構成することができ、又はプラットフォーム112をX-Y平面及びZ軸の両方で移動させるように構成することができる。
【0014】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を生成するために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を生成するため、コイル164は、吐出装置ヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置決めされる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属液滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続されており、また、熱交換器180にも流体的に接続されている。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0015】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラと共に実装されるスライサによって処理され、既知の方法でコントローラ148が実行するマシン対応命令を生成して、プリンタ100の構成要素を動作させ、そのモデルに対応する金属物体を形成する。マシン対応命令の発生は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を発生させることができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属液滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0016】
図6のプリンタを使用して支持構造を形成する従来技術のプロセスが図7に示されている。図7に示されるように、いくつかの物体フィーチャは、印刷の開始時に物体の本体から切断され、次いで、印刷が進行するにつれて本体に接合され得る。プロセスは、図の左側で始まり、エジェクタヘッドは、Z軸又は垂直方向に沿って層ごとの様式で支持体504及び508並びに物体部分512を形成するように動作される。物体部分512と支持体504及び508との間の界面516及び520は空間的空隙であり、したがって支持体及び物体部分は互いに結合しない。支持体及び物体部分の形成は、別の物体部分524を含む層に達するまでZ方向に継続する。この物体部分と支持体との間の物体/支持体界面528は、物体部分524が適切に形成され得るように支持体504上に載置されなければならないので、これは空間的に空隙であることができない。図6のプリンタでは、この界面における支持体及び物体部分のそれぞれの層は、物体の製造が完了した後にそれらを互いに分離するために工具及び機械加工が必要とされるほど強く結合する可能性がある。支持体508を覆う物体の部分が支持体上に直接載置されるので、界面536に関しても同じことが言える。プロセスの中央部分において、物体部分524及び512は収束し始め、最も右の描写に示されるように、それらは点532で交わる。プロセスのこの部分以降、単一の物体層がZ方向に連続的に形成されて、オブジェクトの形成を完了する。
【0017】
同様の構成要素に同様の参照番号を使用し、その形成中に物体を安定化させるために使用されない構成要素のいくつかを除去して、より容易に除去される支持構造を形成する新しい3D金属物体プリンタ100’を図1Aに示す。プリンタ100’は、ベースプレート114に取り付けられているグラファイト塗布デバイス194だけでなく、コントローラに接続された非一時的メモリに記憶されたプログラムされた命令で構成されたコントローラ148’を含む。コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行して、以下に記載するようにアクチュエータ144及びグラファイト塗布デバイス194を動作させて、支持構造によって支持されるか又は支持構造に接触する物体層を形成する前に、グラファイト部材198を支持構造の表面に対して擦る。グラファイト層は、支持構造と支持されている物体フィーチャとの間で熱を容易に伝達する。熱を伝達する能力は重要である。なぜなら、熱は、加熱されたプラットフォーム112から、形成される物体190及び支持構造に伝達されて、層間接着を促進し、反りを減衰させるからである。物体の製造が完了し、物体が冷却された後、支持構造及びグラファイト層は、グラファイト層が物体層に強く結合していないので、物体から容易に分離することができる。本明細書で使用される場合、「物体層」という用語は、3D金属物体プリンタのエジェクタヘッドから吐出された、着地後に同じ重力ポテンシャルを有する複数の溶融金属液滴で形成された金属物体の平面を意味する。本明細書で使用される場合、「支持層」という用語は、3D金属物体プリンタのエジェクタヘッドから吐出された、着地後に同じ重力ポテンシャルを有する複数の溶融金属液滴で形成された金属支持構造の平面を意味する。
【0018】
図1Aを更に参照すると、グラファイト塗布デバイス194は、エジェクタヘッド140を保持するベースプレート114に取り付けられているため、ベースプレート114、したがってエジェクタヘッド140を移動させる同じアクチュエータ144もデバイス194を移動させる。加熱されたビルドプラットフォーム112は、アクチュエータ144に動作可能に接続されており、したがって、プラットフォームは、ベースプレート114の下のX-Y平面内で移動することができる。図1Aに示される実施形態では、Y軸は図の平面に出入りするが、X軸は図の左右に移動する。したがって、コントローラ148’は、コントローラに動作可能に接続された非一時的メモリに記憶されたプログラムされた命令で構成され、グラファイト塗布デバイス194内のグラファイト部材198を支持体表面又は物体表面に隣接して移動させ、次いでデバイス194を移動させてグラファイト部材198を表面に対して擦り、グラファイトを表面に塗布するように、コントローラにアクチュエータ144のいくつかを動作させる。図1Aに示されるプリンタの上面図が図1Bに提供される。
【0019】
同様の構成要素に同様の参照番号を使用して、より容易に除去される支持構造を形成する新しい3D金属物体プリンタ100’の代替実施形態が、図2Aに示される。プリンタ100”は、デバイス194とは独立して移動するように構成された部材196に取り付けられたグラファイト塗布デバイス194と、コントローラに接続された非一時的メモリに記憶されたプログラム命令で構成されたコントローラ148’と、を含む。コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行して、以下に記載するようにアクチュエータ144及びグラファイト塗布デバイス194を動作させて、支持構造によって支持されるか又は支持構造に接触する物体層を形成する前に、グラファイト部材198を支持構造の表面に対して擦る。グラファイト層は、支持構造と支持されている物体フィーチャとの間で熱を容易に伝達する。熱を伝達する能力は重要である。なぜなら、熱は、加熱されたプラットフォーム112から、形成される物体190及び支持構造に伝達されて、層間接着を促進し、反りを減衰させるからである。物体の製造が完了し、物体が冷却された後、支持構造及びグラファイト層は、グラファイト層が物体層に強く結合していないので、物体から容易に分離することができる。
【0020】
図2Aを更に参照すると、グラファイト塗布デバイス194は、部材196に取り付けられており、部材196は、デバイス194及びエジェクタヘッド140を互いに独立して移動させることができるように、エジェクタヘッド140を移動させるアクチュエータとは異なるアクチュエータ144に動作可能に接続されている。アクチュエータのうちのいくつかは、部材196に動作可能に接続されており、図に示されるように、X-Y-Z空間内でデバイスを移動させる。したがって、コントローラ148’は、コントローラに動作可能に接続された非一時的メモリに記憶されたプログラム命令で構成され、プラットフォーム112又はベースプレート114の移動とは独立してX-Y-Z空間内で部材196を移動させるように、コントローラにアクチュエータ144のいくつかを動作させ、それによりグラファイト塗布デバイス194内のグラファイト部材198を支持体表面又は物体表面に隣接して移動させ、次いで表面に対してグラファイト部材198を擦り、表面にグラファイトを塗布するように移動させることができる。加熱されたビルドプラットフォーム112は、アクチュエータ144のうちのいくつかに動作可能に接続されおり、それにより、プラットフォームは、ベースプレート114の下のX-Y平面内で移動され得、一方、ベースプレート114は、垂直方向のZ軸に沿ったエジェクタヘッドの移動のためにアクチュエータ144のうちのいくつかに動作可能に接続されているが、他の構成が、上述のように使用され得る。図2Aに示される実施形態では、Y軸は図の平面に出入りするが、X軸は図の左右に移動する。図1Aに示されるプリンタの上面図が図1Bに提供される。
【0021】
塗布デバイス194は、図3により詳細に示されている。デバイス194は、ねじ山付き凹部308を有するハウジング304を含む。グラファイト部材198は、T字形の断面を有し、上部クロス部材198Aは、ハウジング304の開口部の直径に近い直径を有する。上部クロス部材198Aに垂直なグラファイト部材の伸長部198Bは、ハウジング304のオリフィス320を通って伸長する。ばね316がハウジング304の開口部に同心状に取り付けられ、ねじ山付き部材312がねじ山付き凹部308にねじ込まれて、上部クロス部材198Aを部材312とばね316との間に介在させる。クロス部材198A及びねじ山付き部材312に対するばねの付勢は、グラファイト部材198をオリフィス内に整列させた状態に保ち、グラファイト部材198を支持体又は物体表面に対して擦り、固体グラファイトの層を残す間、グラファイト部材を安定化させる。アクチュエータ144は、ねじ山付き部材312に動作可能に接続されており、ねじ山付き部材をねじ山付き凹部308内で双方向に回転させて、伸長部198Bがグラファイト塗布中に消費されるときに伸長部198Bを前進させるように構成されている。
【0022】
ある実施形態において、グラファイト部材は、固体グラファイトから作製される。本明細書で使用される場合、「固体グラファイト」という用語は、研磨、擦り、又は同様の摩擦運動によって表面に塗布される、表面上のグラファイト原子の層を意味する。本明細書で使用される場合、「擦り」という用語は、固体グラファイトを表面に塗布する非円形の摩擦運動を意味する。本明細書で使用される場合、「グラファイト塗布デバイス」という用語は、固体グラファイト部材から、グラファイト部材が擦られる表面にグラファイトを移動させるデバイスを意味する。この層の厚さは500μm以下である。擦り圧力と支持体表面又は物体表面の凹凸との組み合わせは、固体グラファイト層の表面への塗布を容易にする。支持体表面の凹凸又は粗さは、固体グラファイト層の塗布前に、支持構造の最後の数層における溶融金属液滴の間隔又は液滴のサイズを変化させることによって、支持構造を形成する3D印刷プロセス中に変化させることができる。
【0023】
支持構造と物体部分との間のグラファイト層の例を図4に示す。この図では、物体528の部分が支持構造504及び508によって支持されており、グラファイト界面550、554がそれらの間に介在している。物体の製造が完了し、物体が冷却されると、支持構造504、508及びグラファイト界面550、554は、手で又は軽量の把持工具を使用して容易に取り外すことができる。本明細書で使用される場合、「グラファイト界面」という用語は、物体層の一部分と物体層の部分を支持する支持構造の表面との間に介在するグラファイトの層を意味する。
【0024】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に記載され、並びに以下に記載される動作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理するため及び発生させるために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0025】
物体の製造のために金属物体の部分と支持構造との間に固体グラファイト界面を形成するように3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセス300が図5に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素と共に実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0026】
図5は、グラファイト塗布デバイス194を動作させて、金属物体の部分と、プリンタ100’及び100”による金属物体の製造を助けるために使用される支持構造との間に固体グラファイト界面を形成するプロセス300のフロー図である。コントローラ148’は、この目的のために塗布デバイス194を動作させるために、コントローラに動作可能に接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている。プリンタが初期化された後(ブロック304)、プリンタは、物体層及び支持層(存在する場合)を形成するように動作される(ブロック308)。次の層を印刷する前に、プロセスは、物体層/支持層界面が検出されるかどうかを判定する(ブロック312)。そのような界面が検出された場合、コントローラは、アクチュエータを動作させて、塗布デバイスをグラファイト塗布のための位置に移動させ、デバイスを往復様式で移動させてグラファイトを界面領域に塗布し、グラファイト界面を形成する(ブロック316)。領域がグラファイトでコーティングされると、物体層及び支持層を形成するプロセスは、物体が完成するまで継続する(ブロック320)。ブロック316の処理を実行する前に、プロセスは、グラファイト界面を形成する前に支持体表面の凹凸を増加させるために、溶融金属液滴間隔又は溶融金属液滴サイズを変化させることができる。
【0027】
グラファイト塗布デバイスを有する3D金属物体プリンタ、及びそのようなプリンタを動作させる方法は、以前には利用できなかったいくつかの利点を提供する。以前から知られている3D金属物体プリンタでは、支持構造の堅牢性についてトレードオフを考慮しなければならなかった。支持構造は、製造プロセスが完了した後に除去する必要があるので、高価な機械加工などを必要とせずに支持構造の除去を容易にするために、支持構造を可能な限り軽量にする傾向があった。この傾向は、いくつかの状況では、垂下などを伴わずに延在物体フィーチャを保持するのに不十分な支持構造を生成した。上記で開示されたプリンタ及び動作方法によって生成されるグラファイト界面は、機械加工を伴わずに除去され得る強固な支持構造の形成を可能にする。また、固体グラファイトの塗布は、支持構造と物体フィーチャとの間に分離界面を形成するための剥離材料の液体懸濁液の塗布よりも大きな利点であると考えられる。金属物体が形成される環境は、高温にさらされる。金属物体及び支持構造は、475℃以上の温度であり得る。15℃程度の温度低下は、物体フィーチャ欠陥を引き起こす可能性がある。塗布器から支持構造への固体グラファイトの伝達は、そのような温度変化をもたらさない。
【0028】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7