(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111879
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】精製レモンバーム抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20230803BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20230803BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230803BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230803BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20230803BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230803BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20230803BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230803BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230803BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20230803BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L2/56
A23L19/00 A
A61P25/28
A61P11/04
A61P11/08
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/06
A61K36/53
A61Q19/00
A61Q19/08
A61Q1/00
A61Q5/00
A61Q17/04
A61Q11/00
A23K10/30
A23L2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009310
(22)【出願日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2022012757
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 耕介
(72)【発明者】
【氏名】今田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】折越 英介
【テーマコード(参考)】
2B150
4B016
4B047
4B117
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
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4C088ZA15
4C088ZA59
4C088ZA61
(57)【要約】
【課題】ロスマリン酸を含有し、飲料に添加した際の濁り又は沈殿の生成が低減されたレモンバーム抽出物を提供する。
【解決手段】レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)のレモンバーム抽出物が低級アルコールを10~90%(v/v)含有する、請求項1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a)の芳香族系合成吸着剤の体積量が、レモンバーム抽出物の体積量に対して0.01~10倍である、請求項1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【請求項4】
(b)レモンバーム抽出物を、活性炭と接触させ、非吸着画分を得る工程をさらに含む、請求項1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長700nmにおける濁度(OD700)が、0.05以下である、請求項1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
【請求項6】
ロスマリン酸を0.01~20質量%含有する、精製レモンバーム抽出物であって、
前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長700nmにおける濁度(OD700)が、0.05以下である、精製レモンバーム抽出物。
【請求項7】
前記精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、下記の(A)~(F)の少なくとも1つを満たす、請求項6に記載の精製レモンバーム抽出物:
(A)酢酸エチルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.24以下;
(B)イソバレルアルデヒドのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.35以下;
(C)イソバレルアルデヒドジエチルアセタールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.53以下;
(D)α-テルピネオールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.26以下;
(E)プレニルエチルエーテルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.05以下;
(F)サフラナールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、1.72以下:
ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、該精製レモンバーム抽出物中のロスマリン酸含有量をc質量%とした場合に、GC/MSピークの面積から下記式により算出される;
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=
〔(前記特定の香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)〕×1/c。
【請求項8】
前記精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、イソ吉草酸のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.083以下である、請求項6に記載の精製レモンバーム抽出物;
ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、該精製レモンバーム抽出物中のロスマリン酸含有量をc質量%とした場合に、GC/MSピークの面積から下記式により算出される;
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=
〔(前記特定の香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)〕×1/c。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の精製レモンバーム抽出物を含有する、製剤。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか一項に記載の精製レモンバーム抽出物を含有し、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料である、組成物。
【請求項11】
(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、レモンバーム抽出物の飲料添加の際の濁り又は沈殿を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製レモンバーム抽出物の製造方法、精製レモンバーム抽出物、及び、レモンバームの飲料添加の際の濁り又は沈殿を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シソ科の多年生ハーブであるレモンバーム(Melissa officinalis、和名はコウスイハッカ、セイヨウヤマハッカ)は、フローラルなレモンを思わせる香りを有し、記憶力向上、慢性気管支炎、発熱、頭痛等に効果があると言われている。さらに、レモンバーム抽出物を調製して、新たな生理活性を探索した事例が複数報告されている。特許文献1にはレモンバーム抽出物がTGR5活性化作用をもたらすこと、特許文献2には皮膚のシワ形成を改善するEndo180発現を促進する作用をもたらすことが記載されている。
【0003】
一方、これら特許文献には、レモンバーム抽出物の精製方法については一般的な手法が記載されているにとどまる。例えば、特許文献2には、レモンバーム抽出物が特有の匂いを有しているため、生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であること、精製方法として、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができることは記載されているが、製法についての具体的な実施例は記載されていない。
【0004】
レモンバーム抽出物には、生理活性成分として、ロスマリン酸等を含有することが知られている。ロスマリン酸(CAS登録番号20283-92-5)は、シソ科植物に含まれる水に対して難溶なポリフェノール類の一種であり、抗酸化作用、抗炎症作用、アレルギー症状の緩和作用等が知られている。
【0005】
特許文献3には、ロスマリン酸の精製処理方法として一般的な手法が列記され、脱臭処理方法として、蒸留処理、水蒸気蒸留処理、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理、超臨界流体抽出、溶剤洗浄、再結晶化等の方法をとりうることが記載されている。
【0006】
特許文献4には、塩蔵赤シソの葉に含まれるロスマリン酸等のフェノール類を高濃度に含有する赤シソエキスもしくはその粉末の効率的な製造法として、塩蔵赤シソ葉を酸性条件下、かつ加熱条件下に親水性溶媒で抽出し、得られた抽出液を吸着性樹脂を用いるクロマトグラフィーにかけてエキスを得、次いで必要に応じ当該エキスを濃縮、粉末化することを特徴とするフェノール類含有エキスの製造法が記載されている。具体的には、実施例1において、熱水抽出により得られた抽出液を濾過した後に、芳香族系吸着剤に吸着させたこと、非吸着性成分を洗浄により除去した後で目的物を溶出することで、ロスマリン酸を含有する赤シソエキスを得たことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-177812号公報
【特許文献2】特開2017-128538号公報
【特許文献3】特開2001-275611号公報
【特許文献4】特開2003-180286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、レモンバーム抽出物を飲料に添加した場合、濁り又は澱(オリ)のような沈殿が添加直後又は経時的に生じ、飲料の外観が悪化することを見出した。さらに、これらの濁りや沈殿の原因は、水難溶性のロスマリン酸とは異なる物質であることが判明した。そして、生理活性に優れたレモンバーム抽出物を得るためにレモンバーム抽出物中のロスマリン酸の濃度を上げようとすると、上記の濁りや沈殿が生じやすい傾向があった。
【0009】
そこで、ロスマリン酸を含有し、飲料に添加した際の濁り又は沈殿が低減されたレモンバーム抽出物を提供することを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて非吸着画分を得る工程を含む製造方法によって、飲料に添加した際の濁り又は沈殿が低減された精製レモンバーム抽出物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、精製レモンバーム抽出物の製造方法。
[2]
前記工程(a)のレモンバーム抽出物が低級アルコールを10~90%(v/v)含有する、[1]に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
[3]
前記工程(a)の芳香族系合成吸着剤の体積量が、レモンバーム抽出物の体積量に対して0.01~10倍である、[1]又は[2]に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
[4]
(b)レモンバーム抽出物を、活性炭と接触させ、非吸着画分を得る工程をさらに含む、[1]~[3]のいずれか1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
[5]
前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長700nmにおける濁度(OD700)が、0.05以下である、[1]~[4]のいずれか1に記載の精製レモンバーム抽出物の製造方法。
[6]
ロスマリン酸を0.01~20質量%含有する、精製レモンバーム抽出物であって、
前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長700nmにおける濁度(OD700)が、0.05以下である、精製レモンバーム抽出物。
[7]
前記精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、下記の(A)~(F)の少なくとも1つを満たす、[6]に記載の精製レモンバーム抽出物:
(A)酢酸エチルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.24以下;
(B)イソバレルアルデヒドのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.35以下;
(C)イソバレルアルデヒドジエチルアセタールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.53以下;
(D)α-テルピネオールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.26以下;
(E)プレニルエチルエーテルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.05以下;
(F)サフラナールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、1.72以下:
ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、該精製レモンバーム抽出物中のロスマリン酸含有量をc質量%とした場合に、GC/MSピークの面積から下記式により算出される;
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=
〔(前記特定の香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)〕×1/c。
[8]
前記精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、イソ吉草酸のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.083以下である、[6]又は[7]に記載の精製レモンバーム抽出物;
ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、該精製レモンバーム抽出物中のロスマリン酸含有量をc質量%とした場合に、GC/MSピークの面積から下記式により算出される;
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=
〔(前記特定の香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)〕×1/c。
[9]
[1]~[8]のいずれか1に記載の精製レモンバーム抽出物を含有する、製剤。
[10]
[1]~[8]のいずれか1に記載の精製レモンバーム抽出物を含有し、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料である、組成物。
[11]
(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、レモンバーム抽出物の飲料添加の際の濁り又は沈殿を低減する方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、ロスマリン酸を含有し、飲料に添加した際の濁り又は沈殿が低減されたレモンバーム抽出物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】試験例1-4において、表3の香気成分の各精製レモンバーム抽出物及び市販品Aのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比を比較したグラフである(平均±標準誤差、n=5)。
【
図2】試験例1-5において、イソ吉草酸の各精製レモンバーム抽出物のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比を比較したグラフである(平均±標準誤差、n=5)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、体積%又は%(v/v)はmL/100mLと、%(w/v)は、g/100mLと同義である。また、ppmは質量当たりの百万分率である。
【0015】
[精製レモンバーム抽出物の製造方法]
本発明の精製レモンバーム抽出物の製造方法は、
(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程(以下、工程(a)と呼ぶ場合がある)、を含む。
【0016】
(工程(a):芳香族系合成吸着剤処理工程)
前記芳香族系合成吸着剤と接触させるレモンバーム抽出物は、レモンバーム抽出原液に由来し、ロスマリン酸を少なくとも含有する、液体である。レモンバーム抽出物としては、例えば、レモンバーム抽出原液、レモンバーム抽出原液の加工物、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0017】
本明細書において、「レモンバーム抽出原液」はレモンバームの植物体から溶媒抽出操作を行って得られ、その後に精製、濾過等による不溶物除去、溶媒添加、濃縮及び乾燥等の操作を経ていないものを表す。
本明細書において、レモンバーム抽出原液の「加工物」は、レモンバーム抽出原液に対して精製、濾過等による不溶物除去、溶媒添加、濃縮及び乾燥等のうちの少なくとも1種の操作を経たものを表す。
【0018】
前記レモンバーム抽出原液の調製に用いられるレモンバームの植物体は、例えば、全草、葉部、茎部、根部、樹皮、果実、種子及び花部からなる群より選択される少なくとも1種を含み、好ましくは少なくとも葉部を含む。レモンバームの植物体は、そのまま(生)若しくは破砕物として抽出操作に付してもよく、また乾燥後、必要に応じて粉砕若しくは粉体状として抽出操作に付してもよい。
【0019】
前記レモンバーム抽出原液の調製に用いられる抽出溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1~4である、低級アルコール;酢酸エチル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の極性溶媒、又は、これらの溶媒から選択される2種以上の混合物であり得る。中でも抽出溶媒は、水、低級アルコール又はそれらの混合物が好ましく、レモンバーム特有の不快な風味と着色を抑制する観点から、水と低級アルコールの混合物がより好ましく、水とエタノールの混合物が更に好ましい。
【0020】
前記抽出溶媒として、水と低級アルコールの混合物を用いる場合、低級アルコールの含有量は、抽出溶媒全量に対して、例えば、10%(v/v)以上であり、ロスマリン酸の収率を高める観点から、好ましくは30%(v/v)以上、より好ましくは40%(v/v)以上、更に好ましくは50%(v/v)以上であり、そして、低級アルコールの使用量を抑える観点から、例えば90%(v/v)以下であり、好ましくは80%(v/v)以下、より好ましくは70%(v/v)以下、更に好ましくは60%(v/v)以下であり得る。
【0021】
抽出方法としては、一般に用いられる方法が採用でき、例えばエキス剤、エリキシル剤、浸剤、煎剤、流エキス剤、チンキ剤等の各種生薬製剤の調製に用いられる抽出方法を広く挙げることができる。特に限定されないが、例えば、前記抽出溶媒中に上記の植物(そのまま(生)若しくは粗末、細切物)、又はそれらの乾燥破砕物(粉末等)を冷浸(通常1~25℃)や温浸(通常35~45℃)等によって浸漬する方法、加温し撹拌しながら抽出を行い、ろ過して抽出液を得る方法、又はパーコレーション法(通常1~30℃程度)等を挙げることができる。
【0022】
前記抽出溶媒として水と低級アルコールの混合物を用いる場合、抽出温度は、ロスマリン酸の収率を高める観点から、5~100℃、好ましくは25~80℃、より好ましくは60~80℃である。
【0023】
前記レモンバーム抽出原液は、前記芳香族系合成吸着剤と接触させる前に、後述の別の処理剤による精製、濾過等による不溶物除去、溶媒添加、濃縮及び乾燥からなる群より選ばれる少なくとも1つの工程を経てもよいが、植物体残渣を除く観点から、少なくとも不溶物除去工程を含むことが好ましい。
【0024】
工程(a)に供されるレモンバーム抽出物のロスマリン酸の含有量は、特に限定されず、抽出物の全量に対して、例えば、0.01~20質量%、0.1~10質量%又は0.5~5質量%であり得る。
【0025】
工程(a)に供されるレモンバーム抽出物は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、低級アルコールを含有することが好ましく、エタノールを含有することがより好ましい。低級アルコールの含有量は、レモンバーム抽出物全量に対して、例えば、10%(v/v)以上であり、抽出液量の増加を抑制する観点から、好ましくは30%(v/v)以上、より好ましくは40%(v/v)以上、更に好ましくは50%(v/v)以上であり、そして、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば90%(v/v)以下であり、好ましくは80%(v/v)以下、より好ましくは70%(v/v)以下、更に好ましくは60%(v/v)以下であり得る。
【0026】
前記芳香族系合成吸着剤の樹脂母体は、芳香族環を含み、イオン交換基を有しない合成樹脂が挙げられ、好ましくは、モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーの共重合体であり、より好ましくは、モノビニル芳香族モノマーと架橋性芳香族モノマーの共重合で得られる架橋構造骨格を有する多孔質架橋重合体粒子が挙げられる。
【0027】
前記モノビニル芳香族モノマーとしては、(i)ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン類、メチルスチレン、エチルスチレン等のアルキル置換スチレン類、等のスチレンを主体とする化学修飾型スチレン類;(ii)スチレン;(iii)モノビニルビフェニル、ベンジルスチレン、モノビニルナフタレン、モノビニルアントラセン等の多環芳香族モノビニルモノマー類が挙げられる。中でも、前記モノビニル芳香族モノマーは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、(i)の化学修飾型スチレン類が好ましく、ハロゲン置換スチレン類がより好ましく、ブロモスチレンが更に好ましい。
前記架橋性芳香族モノマーとしては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジビニルキシレン、ジビニルビフェニル、ジビニルジフェニルメタン等が挙げられ、本発明の効果を顕著に奏する観点から、ジビニルベンゼンが好ましい。
【0028】
前記芳香族系合成吸着剤の樹脂母体は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、好ましくは化学修飾型スチレン類-ジビニルベンゼン架橋共重合体であり、好ましくはハロゲン置換スチレン類-ジビニルベンゼン架橋共重合体であり、より好ましくはブロモスチレン-ジビニルベンゼン架橋共重合体であり、更により好ましくは下記の化学式(I)を構造単位とするブロモスチレン-ジビニルベンゼン架橋共重合体である。
【0029】
【0030】
前記芳香族系合成吸着剤の比表面積(specific surface area)は、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上である。
【0031】
前記芳香族系合成吸着剤の細孔半径(pore radius)は、好ましくは約10~500Å、より好ましくは約20~200Åである。
【0032】
前記芳香族系合成吸着剤の具体例としては、例えば、セパビーズSP樹脂(セパビーズTM SP207、SP207SS、SP825L、SP850、SP70、SP700等)、MCI GEL樹脂(MCI GELTM CHP20/P20、CHP20/P30、CHP20/P50、CHP20/P70、CHP20/P120、CHP50/P20、CHP50/P30、CSP50/P10、CHP07/P120、CHP85/P120、CHP87/P120、CSP800、SFP08/P25等)、ダイヤイオンHP樹脂(DIAIONTM HP20、HP20SS、HP21等)、(以上、三菱ケミカル(株)製);アンバーライトXAD樹脂(アンバーライトTM XADTM2000、XAD4、XAD1180N、XAD-2等)、アンバーライトFPX樹脂(アンバーライトTM FPX66、FPX68等)(以上、オルガノ(株)製);ピュロライトPAD樹脂(PAD350、PAD400、PAD500、PAD550、PAD600、PAD700、PAD900、PAD910、PAD1200等)、マクロネット樹脂(MacronetTM MN(MN200、MN202、MN250、MN270等)(以上、ピュロライト(株)製))等を例示することができる。本発明に用いられる前記芳香族系合成吸着剤としては、中でもセパビーズSP207、セパビーズSP207SS、セパビーズSP825L、セパビーズSP850、セパビーズSP70、セパビーズSP700又はアンバーライトXAD1180Nが好ましく、セパビーズSP207又はセパビーズSP207SSがより好ましく、セパビーズSP207が更に好ましい。
【0033】
工程(a)において、前記芳香族系合成吸着剤の量は、特に限定されず、合成吸着剤のモノマー組成や形態、精製条件等によって適宜調整し得る。前記芳香族系合成吸着剤の体積量は、レモンバーム抽出物の体積量に対して、例えば0.001~10倍であり、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくは0.01~10倍であり、より好ましくは0.01~1倍である。
【0034】
工程(a)において前記芳香族系合成吸着剤とレモンバーム抽出物を接触させる態様については特に限定されず、例えば、カラム法、バッチ法等が挙げられるが、カラム法がより好ましい。カラム法の場合、レモンバーム抽出物は、前記芳香族系合成吸着剤を充填したカラムに通液し、その通過液と、場合によって押し出し液を回収する。抽出物を通液する際、SV(space velocity)を適度に調節することが好ましい。SVは、特に限定されないが、通常SV0.5~10程度、好ましくはSV1~6程度の条件を例示することができる。次いで、同様のSV条件でカラムの吸着剤から非吸着画分を押し出す。押し出しに用いる液は、水、又はレモンバーム抽出物と同じかそれ以下の含有量の低級アルコール(好ましくはエタノール)を含有する含水アルコールを使用することができる。なお、工程(a)は、例えば、5~80℃、25~80℃などの温度で実施することができる。
【0035】
工程(a)によって、飲料に添加した際の濁り、沈殿が低減された精製レモンバーム抽出物を得ることができる。加えて、得られた精製レモンバーム抽出物は、後述のレモンバーム抽出物特有の不快な風味(青臭さ、枯草臭、渋み、油臭等)、着色、及び特定の香気成分の含有量も低減される。
【0036】
(工程(b):活性炭処理工程)
本発明の製造方法には、さらに(b)レモンバーム抽出物を、活性炭と接触させ、非吸着画分を得る工程(以下、工程(b)と呼ぶ場合がある)を含むことが好ましい。工程(a)に加えて活性炭を使用した工程(b)を行うことにより、レモンバームの不快な風味及び着色が大きく低減する。さらに、飲料の風味を損ない得る香気成分(例えば、酢酸エチル、イソバレルアルデヒド、イソバレルアルデヒドジエチルアセタール、α-テルピネオール、プレニルエチルエーテル、サフラナール等)や、レモンバーム抽出物特有の油臭の原因であるイソ吉草酸も、工程(a)単独又は工程(b)単独を経た場合に比べて大幅に減少し、風味が改善する。
【0037】
工程(b)に供されるレモンバーム抽出物のロスマリン酸の含有量は、特に限定されず、抽出物の全量に対して、例えば、0.01~20質量%とすることができ、本発明の効果をより顕著に奏する観点から、好ましくは0.1~20質量%であり、さらにレモンバーム抽出物の着色を低減する観点から、0.5~20質量%(例えば0.5~5質量%)であり得る。
【0038】
工程(b)に供されるレモンバーム抽出物は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、低級アルコールを含有することが好ましく、エタノールを含有することがより好ましい。低級アルコールの含有量は、レモンバーム抽出物全量に対して、例えば、10%(v/v)以上であり、抽出液量の増加を抑制する観点から、好ましくは30%(v/v)以上、より好ましくは40%(v/v)以上、更に好ましくは50%(v/v)以上であり、そして、本発明の効果を顕著に奏する観点から、例えば90%(v/v)以下であり、好ましくは80%(v/v)以下、より好ましくは70%(v/v)以下、更に好ましくは60%(v/v)以下であり得る。
【0039】
前記活性炭の由来は、特に限定されず、例えば、石炭、ヤシ殻、おがくず等が挙げられる。また、活性炭の形状も特に限定されず、粒状、粉末状、繊維状等のものを使用することができる。前記活性炭の好適な例としては、おがくず又はヤシ殻由来の活性炭が挙げられ、より好ましくはタケコール50WG-T又は白鷺DO-2(いずれも大阪ガスケミカル(株)製)が挙げられる。
【0040】
工程(b)においてレモンバーム抽出物を活性炭と接触させる態様については特に限定されず、例えば、カラム法、バッチ法等が挙げられる。非吸着画分を得る方法は、例えば、上記の工程(a)に記載したカラム法による精製方法と同じ方法を用いることができる。
【0041】
活性炭の量は、特に限定されず、活性炭の由来や形態、精製条件によって適宜調整し得るが、上記の効果を奏する観点から、レモンバーム抽出物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、更により好ましくは2質量部以上であり、そして例えば10質量部以下である。
【0042】
工程(a)と工程(b)の順序は特に限定されず、工程(a)を経てから工程(b)を経てもよいし、工程(b)を経てから工程(a)を経てもよい。
【0043】
(その他工程)
本発明の製造工程は、上記工程(a)、工程(b)の他、上記のレモンバーム抽出原液の調製、別の処理剤による精製、濾過等による不溶物除去、溶媒添加、濃縮、乾燥及び殺菌等の工程から選ばれる1種以上を含み得る。
【0044】
前記別の処理剤による精製工程は、例えば、別の処理剤と接触させ、吸着画分又は非吸着画分を得ることを含む。前記別の処理剤との接触は、例えばバッチ法又はカラムクロマトグラフィーが挙げられる。前記別の処理剤としては、特に限定されないが、シリカゲル、ゼオライト、ポリビニルピロリドン、活性白土、珪藻土、酸性白土、イオン交換樹脂、前記芳香族系合成吸着剤以外の合成吸着剤等が挙げられる。これら処理剤としては、商業的に入手可能なものを用いることができる。
【0045】
前記不溶物除去工程は、例えば、多孔質媒体(濾材)を用いた濾過、遠心分離等が挙げられる。
【0046】
前記濃縮工程又は乾燥工程では、例えば、エバポレーター等を用いた減圧濃縮法、限外濾過法、逆浸透膜法、アルコール沈殿法(エタノール沈殿法等)、噴霧乾燥法、凍結乾燥法等を用いることができる。
【0047】
[精製レモンバーム抽出物]
本発明の製造方法によって得られる精製レモンバーム抽出物は、飲料に添加した際の濁り及び沈殿が低減されている。例えば、前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長700nmにおける濁度(OD700)は、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.02以下、更に好ましくは0.01以下である。飲料の前記濁度が0.05以下の場合は、飲料の透明感が顕著に感じられるため、好ましい。
【0048】
本発明の製造方法によって得られる精製レモンバーム抽出物は、レモンバーム特有の不快な風味が低減され、改善した風味を有する。ここで、レモンバーム特有の不快な風味は、レモンバーム抽出原液を摂取した際に味覚及び/又は嗅覚により知覚されるものであり、具体的には、例えば、「青臭さ」、「枯草臭」、「渋み」、「油臭」等で表される感覚である。
【0049】
さらに、本発明の製造方法によって得られる精製レモンバーム抽出物は、例えば、着色が低減されている。前記精製レモンバーム抽出物をロスマリン酸換算量で225ppm、砂糖8質量%、クエン酸無水物0.12質量%、及びクエン酸三ナトリウム0.08質量%を含有する水溶液の波長400nmにおける吸光度は、好ましくは1以下、より好ましくは0.6以下であり、更により好ましくは0.2以下とすることができる。
【0050】
さらに、本発明の製造方法によって得られる精製レモンバーム抽出物は、不快な風味の原因となり得る特定の香気成分が低減されている。特定の香気成分としては、例えば、酢酸エチル、イソバレルアルデヒド(CAS登録番号590-86-3)、イソバレルアルデヒドジエチルアセタール(1,1-ジエトキシ-3-メチルブタン;CAS登録番号3842-03-3)、α-テルピネオール(CAS登録番号98-55-5)、プレニルエチルエーテル(1-エトキシ-3-メチル-2-ブテン;CAS登録番号22094-00-4)又はサフラナール(CAS登録番号:116-26-7)が挙げられる。
【0051】
前記精製レモンバーム抽出物は、該精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、好ましくは下記の(A)~(F)の少なくとも1つを満たし、より好ましくは(A)~(F)の全てを満たす:
(A)酢酸エチルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.24以下、好ましくは0.07以下;
(B)イソバレルアルデヒドのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.35以下、好ましくは0.19以下;
(C)イソバレルアルデヒドジエチルアセタールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.53以下、好ましくは0.16以下;
(D)α-テルピネオールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.26以下、好ましくは0.04以下;
(E)プレニルエチルエーテルのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、0.05以下、好ましくは0.01以下;
(F)サフラナールのロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比が、1.72以下、好ましくは0.39以下:
ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、該精製レモンバーム抽出物中のロスマリン酸含有量をc質量%とした場合に、GC/MSピークの面積から下記式により算出される;
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=
〔(前記特定の香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)〕×1/c。
ここで、前記GC/MSによる測定は、具体的には、実施例の項に記載した測定方法により行われるものとする。
【0052】
さらに、前記精製レモンバーム抽出物は、イソ吉草酸が低減され、それによりレモンバーム抽出物特有の油臭が低減されている。
前記精製レモンバーム抽出物は、該精製レモンバーム抽出物3gに内部標準物質として0.5mg/mLの3-ヘプタノールのエタノール溶液を1μL添加してガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で測定した場合に、イソ吉草酸のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比は、例えば0.083以下、好ましくは0.040以下である。ここで、特定の香気成分のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比の定義及びGC/MSによる測定条件は、上記の酢酸エチル等のものに準じる。
【0053】
前記精製レモンバーム抽出物は、ロスマリン酸を、抽出物全量に対して、例えば0.01~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%含有する。
【0054】
前記精製レモンバーム抽出物は、例えば、製剤の製造に使用され得る。前記製剤には、例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料に添加される製剤が挙げられる。
【0055】
前記製剤の形態は、例えば、液体状(溶液、乳化液、分散液等)、半固形状(ペースト状、クリーム状等)、又は固形状(粉末状、顆粒状等)が挙げられる。
【0056】
また、前記精製レモンバーム抽出物は、例えば、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料の製造に使用され得る。中でも、前記精製レモンバーム抽出物は、飲食品の製造に使用されることが好ましく、本発明の効果を顕著に奏する観点から、飲料の製造に使用されることがより好ましい。
【0057】
前記飲食品としては、特に限定されないが、例えば、清涼飲料(フレーバーウォーター、炭酸飲料、果汁飲料、乳性飲料、茶系飲料等のアルコール度数1度未満の飲料);アルコール飲料(酎ハイ、カクテル等のアルコール度数1度以上の飲料);ゼリー、プリン、ババロア、ケーキ、クッキー、マカロン等のパティスリー;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓等の冷菓;ヨーグルト、チーズ等の乳製品;タブレット、カプセル菓子、フィルム菓子、キャンディー、チューインガム、チョコレート、焼菓子等の菓子類;団子、カステラ等の和菓子類;調理食品(カレー、パスタ、唐揚げ等)、畜肉類加工品、魚介類加工品、野菜加工品、果物加工品、海産物加工品、穀物加工品等の加工食品;ソース、ドレッシング、食用油、スパイス等の調味料;シロップ、ジャム等を挙げることができる。中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、前記飲食品としては、飲料(清涼飲料、アルコール飲料)が好ましい。また、前記飲食品は、精製レモンバーム抽出物のロスマリン酸の生理活性を利用する点において、機能性表示食品、特定保健用食品、特別用途食品、栄養機能食品、サプリメント等の機能性食品であることが好ましい。
【0058】
前記医薬品としては、特に限定されないが、例えば、錠剤(たとえば、糖衣錠)、顆粒剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、及びうがい薬等の経口医薬品、ハップ剤、軟膏剤等の皮膚外用剤等が挙げられる。
【0059】
前記医薬部外品としては、特に限定されないが、例えば、口中清涼剤、のど清涼剤、健胃清涼剤、ビタミン剤、カルシウム剤、ビタミン含有保健剤(ドリンク剤等を含む)、育毛剤(養毛剤)、除毛剤、染毛剤(染毛、脱色又は脱染に用いるものを含む)、薬用歯磨き類(洗口剤等を含む)等が挙げられる。
【0060】
前記化粧品としては、特に限定されないが、例えば、香水等のフレグランス製品、基礎化粧品(洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落とし等)、仕上げ化粧品(ファンデーション、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバー等)、頭髪化粧品(ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、ヘアワックス、バンドリン、養毛料、染毛料等)、日焼け化粧品(サンタン製品、サンスクリーン製品等)、ハンドクリーム、オーラルケア用品(洗口液、歯磨き等)等が挙げられる。
【0061】
飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料において、前記精製レモンバーム抽出物は、それら組成物の全量に対して、例えば、ロスマリン酸を45~450ppm含有するように添加される。かかるロスマリン酸濃度は、組成物にロスマリン酸が有する生理活性機能を付与することができる点で、好ましい。
【0062】
[精製レモンバーム抽出物を含有する製剤]
本発明には、精製レモンバーム抽出物を含有する製剤、好ましくは飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料に用いられる製剤が含まれる。
【0063】
精製レモンバーム抽出物、製剤形態、飲食品等の具体的な態様は、上記[精製レモンバーム抽出物]の項の記載に準じる。
【0064】
前記製剤中の精製レモンバーム抽出物の含有量は、特に限定されず、製剤の用途、形態等に応じて適宜調整され得るが、製剤の全量に対して、例えば、0.1~100質量%又は1~80質量%である。
【0065】
前記製剤中のロスマリン酸の含有量は、特に限定されず、製剤の用途、形態等に応じて適宜調整され得るが、製造後の濃縮工程を省略できる点から、製剤の全量に対して、例えば、0.01~20質量%であり、好ましくは0.1~20質量%(例えば、0.1~10質量%又は0.5~5質量%)である。
【0066】
前記製剤は、例えば、澱粉分解物(デキストリン、粉飴等)、糖類〔単糖(グルコース、フルクトース等)、二糖(例えば、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等)〕、オリゴ糖(セロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖等)、糖アルコール(キシリトール、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール等)、還元澱粉糖化物、食物繊維(例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グァーガム酵素分解物等)等のうちの1種単独又は2種以上の組み合わせを含有してもよい。これらの成分の使用目的は特に限定されず、例えば、賦形、比重調整、安定化等の目的で使用される。
【0067】
前記製剤は、製剤化をしやすくする観点から、さらに乳化剤を含有することができる。乳化剤の種類は、特に限定されないが、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、有機酸モノグリセリド等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、キラヤ抽出物、サポニン、ポリソルベート(例、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80)等が挙げられる。これらの乳化剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
さらに、前記製剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、精製レモンバーム抽出物及び上記成分以外に、その他成分として、栄養成分、アルコール、酒類、塩類、呈味成分、果汁、果肉、野菜、野菜汁、ピューレ、エキス(動物、植物、微生物等由来)、香辛料、甘味料、高甘味度甘味料、苦味料、酸味料、香料、着色料、その他食品添加物(食物繊維、pH調整剤、保存料、酸化防止剤、増粘剤、安定化剤等);医薬品、医薬部外品又は化粧品の有効成分又は添加剤;その他の防腐剤、防カビ剤、界面活性剤、ゲル化剤、溶剤、香料、殺菌剤等を1種以上配合することができる。
【0069】
製剤化方法は、特に限定されないが、例えば水、有機溶媒(アルコール、グリセリン、プロピレングリコール)又はそれらの混合物等の所望の溶媒に溶解させて液剤とする方法;液剤にデキストリン等の賦形剤を配合してペースト状製剤にする方法;ペースト状製剤をさらに顆粒化又は打錠して顆粒剤又は錠剤にする方法;上記液剤を噴霧乾燥又は凍結乾燥することでパウダー状製剤(粉末製剤)とする方法;さらに上記液剤に乳化剤とともに油脂類を添加し分散・乳化させることでエマルジョン製剤とする方法等を挙げることができ、用途に応じて所望の剤型を適宜選択採用することができる。
【0070】
[精製レモンバーム抽出物を含有する、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料]
本発明には、精製レモンバーム抽出物を含有し、飲食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料である、組成物が含まれる。本組成物の構成のより具体的な態様は、上記[精製レモンバーム抽出物]の記載に準じる。
【0071】
[レモンバーム抽出物の飲料添加の際の濁り又は沈殿を低減する方法]
本発明は、(a)レモンバーム抽出物を芳香族系合成吸着剤と接触させて、非吸着画分を得る工程を含む、レモンバーム抽出物の飲料添加の際の濁り又は沈殿を低減する方法、を含む。本方法のより具体的な態様は、上記[精製レモンバーム抽出物の製造方法]の記載に準じる。
【実施例0072】
以下、本発明を実験例及び実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、特に記載がない限り、それぞれ「質量部」「質量%」を意味する。
【0073】
[レモンバーム粗抽出物の調製]
57%(v/v)エタノール水溶液2Lに対してレモンバーム葉(AmorosNature社製、ロスマリン酸約3質量%含有)100gを加え、60℃で3時間抽出処理した後、No.2濾紙で濾過し、ロスマリン酸を含有する粗抽出物(レモンバーム抽出原液)を調製し、各試験例に用いた。
【0074】
[試験例1]
[試験例1-1.精製レモンバーム抽出物の調製]
上記レモンバーム粗抽出物に対して、下記工程(a)及び/又は工程(b)による精製処理を経たレモンバーム抽出物(比較例1-2~4、実施例1-1~2)を調製した。比較例1-1は、対照サンプルであり、精製処理を行わなかったレモンバーム粗抽出物である。各サンプルの調製で使用した処理剤、工程(a)の有無及び使用した処理剤、並びに工程(b)の有無は表1に示した。いずれのサンプルも、ロスマリン酸含有量はサンプル全量に対して2.0質量%であった。
<工程>
工程(a):表1の各処理剤に上記粗抽出物を通液し、その通過画分(非吸着画分)を得る。ここで各処理剤は通液2Lに対して200mLの割合で使用した。
工程(b):活性炭(タケコール50WG-T、大阪ガスケミカル(株)製)に上記粗抽出物又は工程(a)で処理した液を通液し、その通過画分を得る。ここで、活性炭は通液2L(約1.9kg)に対して16gの割合で使用した。
【0075】
[試験例1-2.精製レモンバーム抽出物の飲料の外観に及ぼす影響の検討]
得られた精製レモンバーム抽出物を用いて下記試験飲料を調製したときの沈殿や澱(オリ)の有無を目視による外観観察で評価した。
<試験飲料の調製>
砂糖8質量部、クエン酸無水物0.12質量部、クエン酸三ナトリウム0.08質量部、レモンバーム抽出物1.13質量部に対して、水を加えて全量を100質量部としたものを加熱し、93℃達温後密栓して、速やかに冷却して調製した。飲料中のロスマリン酸含有量は225ppmとなる。
【0076】
その結果、表1に示されるように、芳香族系合成吸着剤の非吸着画分から得られる実施例サンプルでは試験飲料に沈殿又は澱は見られなかったが、未処理又は合成吸着剤以外の吸着剤で処理を行った比較例サンプルでは、沈殿又は澱が発生した。
【0077】
さらに、沈殿又は澱が見られなかった実施例サンプルについて、それぞれの試験飲料の波長700nmでの吸光度を測定して、濁りを評価した。表1に示されるように、芳香族系合成吸着剤の非吸着画分をさらに活性炭処理した実施例1-2では、活性炭処理を行わない実施例1-1に比べて、濁りが大幅に減少した。
【0078】
さらに、それぞれの試験飲料の波長400nmでの吸光度を測定して、着色を評価した。表1に示されるように、実施例1-1でも着色の減少が見られたが、さらに活性炭処理を行った実施例1-2では、着色が大幅に減少した。
【0079】
【0080】
[試験例1-3.精製レモンバーム抽出物の不快風味の比較]
食品の研究開発に従事し、官能評価に熟練した9名によって構成される官能評価パネルにより、上記の精製レモンバーム抽出物含有飲料の青臭さ、枯草臭、渋みを官能評価した。これらの青臭さ、枯草臭及び渋みは、レモンバーム抽出物特有の不快な風味の一部を構成する官能特性である。各パネリストは、ロスマリン酸を1.4質量%含有する市販のレモンバーム抽出物(市販品A)をロスマリン酸含有量が225ppmとなるように添加した上記の試験飲料の評点を3として、それぞれの官能特性を下記の基準により5段階評価した。評価サンプルには、試験例1-2の試験飲料と同じ組成の飲料を使用した。最終的に、パネリストの評点の単純平均を各官能特性の評価値とした。
<青臭さ/枯草臭/渋みの評価基準>
5:青臭さ/枯草臭/渋みがとても強く感じられる
4:青臭さ/枯草臭/渋みが強く感じられる
3:青臭さ/枯草臭/渋みが感じられる(市販品A含有飲料と同程度に感じられる)
2:青臭さ/枯草臭/渋みが低減されている
1:青臭さ/枯草臭/渋みがかなり低減されている
【0081】
得られた各官能特性の評価値を表2に示した。芳香族系合成吸着剤で処理した実施例1-1を含有する試験飲料では、未処理の比較例1-1に比べて青臭さ、枯草臭、渋みのいずれも改善が見られ、市販品Aと比べても風味が改善していた。活性炭処理を行った実施例1-2を含有する試験飲料では、さらに大幅な改善が見られ、他の樹脂による精製と活性炭処理の両方を行った比較例1-3又は比較例1-4を含有する試験飲料と比べても、青臭さ、枯草臭、渋みが顕著に低減していた。
【0082】
【0083】
[試験例1-4.精製レモンバーム抽出物の香気成分の比較]
各精製レモンバーム抽出物の香気成分をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)によって測定した。測定方法の詳細は下記のとおりである。
<測定試料の調製>
分析対象試料を撹拌し均一にした後、各分析対象試料3gをSPMEバイアルに秤量した。そこへ、内部標準物質として0.5mg/mL 3-ヘプタノール(メタノール溶液)を1μL加え、均一になるように混合し、キャップで密閉して測定試料とした。
<SPME-GC/MS分析方法>
前記測定試料を固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー質量分析法(SPME-GC/MS)に供した。分析には、Agilent Technologies社のGC/MS装置(7890A GC System,5975C inert XL MSD with Triple-Axis Detector)を使用した。SPMEとして、Gerstel社製 MPSを使用した。SPMEファイバーを、密閉したバイアル内で40℃、30分間曝露して、揮発成分を吸着させた後に、GC/MS装置へインジェクションした。分析は各試料につきn=5で行った。
<GC/MS条件>
使用カラム:DB-WAX(60m×0.25mm、0.25μm)(Agilent Technologies社製)
カラム昇温条件:(i)50℃で2分間加熱→(ii)3℃/分の条件で56.667分間加熱し220℃まで昇温させて、12分保持させて終了(昇温開始から70.667分経過)
検出器:四重極型質量分析計5975C inert XL MSD with Triple-Axis Detector(Agilent Technologies社製)
MS条件:イオン源温度350℃
<内部標準物質に対するピーク面積比の算出方法>
それぞれの香気成分及び3-ヘプタノールの代表的なMSフラグメントのm/zでイオンクロマトグラム抽出し、得られたピークの面積を使用した。ここで、各香気成分の代表的なMSフラグメントのm/zは、表3のとおりである。また、3-ヘプタノールの代表的なMSフラグメントのm/zは59である。
次に、下記計算式により、内部標準物質に対するピーク面積比(内標比)を算出した。
香気成分のピーク面積の内標比
=(香気成分のピーク面積)/(3-ヘプタノールのピーク面積)
<ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比の算出方法>
各GC/MS測定試料中のロスマリン酸含有量をc(質量%)とした場合に、下記計算式により、GC/MS測定試料中のロスマリン酸1質量%当たりのピーク面積比を算出した:
ロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比=(香気成分のピーク面積の内標比)/c。
【0084】
結果を表3及び
図1に示す。イソバレルアルデヒドは嗅覚閾値が低い悪臭物質として知られるが、実施例1-1(合成吸着剤処理のみ)は、比較例に比べて顕著にイソバレルアルデヒド量が減少し、実施例1-2(合成吸着剤処理+活性炭処理)ではさらに顕著に減少していた。
【0085】
また、実施例1-2は、驚くべきことに、いずれの香気成分についても、比較例1-2(活性炭処理のみ)及び実施例1-1から想定される減少量を大幅に超える減少を示した。
【0086】
【表3】
[試験例1-5.精製レモンバーム抽出物の、特有の油臭とイソ吉草酸含有量の比較]
評価基準以外は試験例1-4と同様の方法で、同じ官能評価パネルにより、比較例1-1、比較例1-2、実施例1-1及び実施例1-2のレモンバーム抽出物を飲料中のロスマリン酸含有量が225ppmとなるように試験飲料に添加したサンプルのレモンバーム抽出物特有の油臭を官能評価した。比較例1-1の精製レモンバーム抽出物を含有する試験飲料の評点を4として、それぞれの官能特性を下記の基準により5段階評価した。最終的に、パネリストの評点の単純平均を各官能特性の評価値とした。
<レモンバーム抽出物特有の油臭の評価基準>
5:特有の油臭がとても強く感じられる
4:特有の油臭が強く感じられる(比較例1-1含有飲料と同程度に感じられる)
3:特有の油臭が感じられる
2:特有の油臭が低減されている
1:特有の油臭がかなり低減されている
【0087】
各サンプルの油臭の評価値を表4に示す。実施例1-1を添加した試験飲料は、比較例1-1や比較例1-2を添加した場合に比べて特有の油臭が低減した。さらに実施例1-2を添加した場合は、他の場合よりも顕著に特有の油臭が低減した。
【0088】
次に、比較例1-1、比較例1-2、実施例1-1及び実施例1-2のレモンバーム抽出物を試験例1-4と同じ方法によりSPME-GC/MS分析を行った。各サンプルのイソ吉草酸(m/z=60、保持時間34.180(分))のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比を表4に示す。また、各サンプルのイソ吉草酸のロスマリン酸1質量%当たりピーク面積比を比較したグラフを
図2に示す。油臭の強さとイソ吉草酸の量とは相関性があることから、イソ吉草酸は、レモンバーム抽出物に特有の油臭の原因物質であると言える。
【0089】
【0090】
[試験例2.工程(a)で用いる合成吸着剤の検討]
工程(a)の処理剤を表5の各処理剤に変更する以外は実施例1-2と同じ条件でレモンバーム粗抽出物を精製処理し、実施例2-1~6、比較例2-1を調製した。得られた精製レモンバーム抽出物を用いて試験例1-2の方法に従って試験飲料を調製し、目視による沈殿又は澱の有無の観察と波長700nmでの吸光度の測定を行った。
【0091】
結果を表5に示す。処理剤の樹脂母体として芳香族系合成吸着剤を使用した実施例2-1~6は、いずれも沈殿又は澱の発生はなく、濁りも少ないことが確認された。また、処理剤の樹脂母体としては、上記化学式(I)を構造単位とする場合が優れ、中でもセパビーズSP207が特に優れていることが明らかとなった。一方、陰イオン交換樹脂を使用した比較例2-1では、比較例1-3の場合と同様に澱が発生した。
【0092】
【0093】
[試験例3.工程(a)で通液する粗抽出物の低級アルコール濃度の検討]
上記レモンバーム粗抽出物から溶媒を蒸発させて濃縮し、エタノール又は水を適量加えることにより、上記レモンバーム粗抽出物と同量、同ロスマリン酸濃度で、10%(v/v)又は90%(v/v)のエタノールを含有する粗抽出液を調製した。得られた2種類の粗抽出液に対して上記実施例1-2と同じ条件で処理剤通液による精製処理を行って、精製ロスマリン酸抽出物(実施例3-1、実施例3-2)を調製した。
【0094】
得られた精製ロスマリン酸抽出物を用いて試験例1-2の方法に従って試験飲料を調製し、波長700nm及び400nmの吸光度を測定した結果を表6に示した。処理剤通液時の低級アルコールの濃度が10%(v/v)、90%(v/v)の実施例3-1及び実施例3-2は、それぞれ実施例1-2と同様に沈殿又は澱の発生はなく、濁りが大きく低減し、また着色も低減していた。
【0095】
【0096】
[試験例4.工程(a)の樹脂量の検討]
処理剤の使用体積量を通液する粗抽出物の体積量に対して0.01倍(粗抽出物2Lに対して処理剤20mL)又は0.001倍(粗抽出物2Lに対して処理剤2mL)とする以外は、上記実施例1-2と同じ条件で精製処理を行って、実施例4-1及び実施例4-2を調製した。得られた精製レモンバーム抽出物を用いて試験例1-2の方法に従って試験飲料を調製し、目視による沈殿又は澱の有無の観察と波長700nm及び400nmでの吸光度の測定を行った。
【0097】
結果を表7に示した。いずれの実施例の精製レモンバームを使用した場合も沈殿又は澱の発生はなく、濁りが低減したが、特に、接触させるレモンバーム抽出物の体積量に対する処理剤の体積量が0.01倍である実施例4-1では、波長700nmでの吸光度が0.05を下回り、顕著に高い透明性を有していた。また、実施例4-1では、着色も大きく抑えられていた。
【0098】
【0099】
[試験例5.工程(b)の活性炭の検討]
工程(b)で使用する活性炭を白鷺DO-2(ヤシ殻由来;大阪ガスケミカル製)とする以外は、実施例1-2と同じ条件で精製処理を行って実施例5を調製した。得られた精製レモンバーム抽出物を用いて試験例1-2の方法に従って試験飲料を調製し、目視による沈殿又は澱の有無の観察と波長700nm及び400nmでの吸光度の測定を行った。
【0100】
結果を表8に示した。実施例1-2とは異なる活性炭を使用した実施例5でも、実施例1-2と同様に飲料中の沈殿又は澱の発生はなく、濁り低減と着色の低減が確認された。
【0101】
【0102】
[試験例6.通液する粗抽出液のロスマリン酸濃度の検討]
次の手順で精製レモンバーム抽出物を調製し、評価した。
(1)(i)上記レモンバーム粗抽出物を57%(v/v)で20倍希釈したもの、(ii)上記レモンバーム粗抽出物から溶媒を蒸発させて濃縮し、液量を1/10倍量としたものを調製した。
(2)試験例1-1と同じ液量の上記(i)、(ii)を実施例1-2と同様に処理して、試験例1-1で得られるサンプルに対してロスマリン酸濃度が1/20倍(0.1質量%)及び10倍(20質量%)の精製レモンバーム抽出物(実施例6-1、実施例6-2)を調製した。
(3)精製レモンバーム抽出物を用いて試験例1-2の方法に従って試験飲料を調製し、目視による沈殿又は澱の有無の観察と波長700nm及び400nmでの吸光度の測定を行った。
【0103】
結果を表9に示した。いずれの実施例でも飲料の沈殿又は澱の発生はなく、濁り、着色が低減されていた。実施例1-2の結果も踏まえると、通液して得られる精製レモンバーム抽出物のロスマリン酸濃度が0.1質量%よりも大きい値の場合は、これらの低減効果がより顕著となることが明らかとなった。
【0104】