(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111902
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】グリッドサポート電解槽
(51)【国際特許分類】
H02J 15/00 20060101AFI20230803BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20230803BHJP
H02J 3/28 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
H02J15/00 G
H02J3/14
H02J3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023012996
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】63/305,212
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピムスヴィースヴィ,プラサド
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA02
5G066JA01
5G066KA01
5G066KA11
5G066KB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電圧及び周波数ドループに基づく制御を行う電解槽を動作させるシステム、装置及び方法を提供する。
【解決手段】方法は、接続された電力システムの公称周波数f0又は公称電圧を設定し、電解槽は、公称周波数f0又は公称電圧において定格生成レベルP0をもたらすように構成されることと、公称周波数f0又は公称電圧における又はその付近の調整可能な不感帯(f1-f0)を設定することと、周波数が公称周波数f0を下回るか又は電圧が公称電圧を下回ると、水素発生を低減させるとともに電力消費を低減させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽を動作させる方法であって、
接続された電力システムの公称周波数又は公称電圧を設定し、前記電解槽は、前記公称周波数又は前記公称電圧において定格生成レベルをもたらすように構成されることと、
前記公称周波数又は前記公称電圧を含む調整可能な不感帯を設定することと、
前記電力システムの周波数が前記公称周波数を下回ると、又は前記電力システムの電圧が前記公称電圧を下回ると、水素発生を低減させるとともに電力消費を低減させることと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記不感帯は、ゼロヘルツ若しくはゼロボルトであり、又は、前記不感帯は、固定の周波数範囲若しくは固定の電圧範囲を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不感帯は、スケジュール、環境条件、又はグリッド条件のうちの1つ以上に基づいて調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
水素発生又は電力消費が、ドループ曲線の傾きに従って調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ドループ曲線は、線形又は非線形である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドループ曲線は、複数の傾きを有し、前記複数の傾きのそれぞれは、線形又は非線形である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記周波数が増大すると、水素発生を増大させるとともに電力消費を増大させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電圧が増大すると、水素発生を増大させるとともに電力消費を増大させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電解槽を動作させるコントローラーであって、
接続された電力システムの公称周波数又は公称電圧を設定し、前記電解槽は、前記公称周波数又は前記公称電圧において定格生成レベルをもたらすように構成されることと、
前記公称周波数又は前記公称電圧を含む調整可能な不感帯を設定することと、
前記電力システムの周波数が前記公称周波数を下回ると、又は前記電力システムの電圧が前記公称電圧を下回ると、水素発生を低減させるとともに電力消費を低減させることと、
を行う命令を実行するように構成される、前記コントローラー。
【請求項10】
前記不感帯は、ゼロヘルツ若しくはゼロボルトであり、又は、前記不感帯は、固定の周波数範囲若しくは固定の電圧範囲を有する、請求項9に記載のコントローラー。
【請求項11】
前記不感帯は、スケジュール、環境条件、又はグリッド条件のうちの1つ以上に基づいて調整される、請求項9に記載のコントローラー。
【請求項12】
水素発生又は電力消費が、ドループ曲線の傾きに従って調整される、請求項9に記載のコントローラー。
【請求項13】
前記ドループ曲線は、線形又は非線形である、請求項12に記載のコントローラー。
【請求項14】
前記ドループ曲線は、複数の傾きを有し、前記複数の傾きのそれぞれは、線形又は非線形である、請求項12に記載のコントローラー。
【請求項15】
前記周波数が増大すると、水素発生を増大させるとともに電力消費を増大させることを更に含む、請求項9に記載のコントローラー。
【請求項16】
前記電圧が増大すると、水素発生を増大させるとともに電力消費を増大させることを更に含む、請求項9に記載のコントローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、包括的には、グリッドサポート電解槽及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解槽は、水分子又は他の炭化水素燃料分子を分割することによって水素を生成するために、電気を消費する装置である。電解槽への入力電源は、メイングリッド(すなわち、ユーティリティグリッド)、マイクログリッド、又はその組合せのいずれかとすることができる。概して、マイクログリッドは、太陽光、風力、地熱、水力、貯蔵、従来型等の1つ以上の分散型電気リソース(DER)を備える。メイングリッドは、複数の分散型電力リソースを備えることもできる。
【0003】
電力システム(EPS)は、メイングリッドであるかマイクログリッドであるかを問わず、EPSネットワークにおける総発生電力と総負荷電力との均衡が乱されることによって生じる様々な変動を受ける。そのような変動は、DER内に接続される再生可能エネルギー源によって発生する電力の間欠的性質に起因して増大していく。ネットワークにおける発電量が総負荷電力よりも大きくなると、電力システムの電圧及び/又は周波数が増大する。同様に、負荷電力の総量が発電よりも大きくなると、電力システムの電圧及び/又は周波数が低減する。
【0004】
これらの電圧及び周波数の変動に応答した動作が行われない場合、グリッドの妨害が起こる場合がある。例えば、変動により、グリッドの完全な崩壊が生じるおそれがあり、これは、マイクログリッド及びユーティリティグリッドの双方の動作に当てはまる。理想的には、発電リソースがネットワークにおける総負荷需要を満たすように即座に応答することが期待されるが、現実には、多くの従来の発電システムは、負荷の変動と比較して応答がはるかに遅いことから、瞬時応答は可能でない。したがって、発電不足は、EPSネットワークに対して現実的な脅威を与え続ける。
【0005】
これまでのところ、ネットワークオペレーターに利用可能な異なる選択肢として、負荷遮断又は貯蔵モジュールの使用がある。しかしながら、貯蔵モジュールの追加には、追加のコスト、フットプリント、及びより高度な制御の複雑さが伴う。ユーティリティグリッドネットワークの場合、理想的ではないが、負荷遮断は、ネットワークにおける総発電とネットワークにおける総負荷との均衡を制御するための1つの選択肢である。メイングリッドに対する貯蔵拡張解決策も考慮することができるが、これにもはるかに高いコストが伴う。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の実施形態は、関連技術の制限及び不都合点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除するグリッドサポート電解槽に関する。
【0007】
本発明の更なる特徴及び利点は、以下の説明において記載され、その説明から部分的に明らかになるか、又は本発明の実施によって習得することができる。本発明の目的及び他の利点は、特に、添付図面と合わせて記載の説明及び本件の特許請求の範囲に示される構造によって実現及び達成される。
【0008】
これらの利点及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、具現化及び広範に記載されるように、グリッドサポート電解槽は、接続された電力システムの公称周波数としてf0を設定し、電解槽は、f0において定格生成レベル(rated production level)P0をもたらすように構成されることと、公称周波数f0における又はその付近の調整可能な不感帯(f1-f0)を設定することと、周波数が周波数f1レベルを下回ると、周波数f2におけるゼロ水素生成に達するまで、水素発生を低減させるとともに電力消費を低減させることとを含む、電解槽を動作させるシステム、装置、方法、及び命令を含む。
【0009】
以上の一般的な記載及び以下の詳細な記載はいずれも、例及び説明的なものであり、特許請求の範囲に係る本発明の更なる説明を与えることを意図するものであることが理解される。
【0010】
本発明の更なる理解をもたらすために含まれ、本明細書に援用されるとともに本明細書の一部をなす添付図面は、本発明の実施形態を例示するとともに、明細書と合わせて本発明の原理を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一例示の実施形態に係る電解槽システムの周波数ドループ制御を示すグラフである。
【
図2】
図2のA~Dは、本発明の他の例示の実施形態に係る電解槽システムの周波数ドループ制御を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の一例示の実施形態に係る、一時的な過負荷を伴う電解槽システムの周波数ドループ特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の一例示の実施形態に係る電解槽システムの電圧ドループ制御を示すグラフである。
【
図5】
図5のA~Dは、本発明の他の例示の実施形態に係る電解槽システムの電圧ドループ制御を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の一例示の実施形態に係る、一時的な過負荷を伴う電解槽システムの電圧ドループ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、種々の実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すのに使用する。特定の例及び実施態様に対する参照は、例示目的でなされ、本発明の実施形態又は特許請求の範囲の範囲を制限することは意図していない。
【0013】
本明細書において、「約」1つの特定の値から及び/又は「約」別の特定の値までのように値及び範囲が表現され得る。そのような範囲が表現される場合の例として、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までというのが挙げられる。同様に、頭に「約」又は「実質的に」を使用することによって値が近似として表現される場合、特定の値は別の様相を形成することが理解されよう。いくつかの実施形態において、「約X」という値は、+/-1%X又は+/-5%Xという値を含み得る。範囲のそれぞれの端点は、他方の端点に関連しても、他方の端点とは無関係でも重要であることが更に理解されよう。これらの値及び範囲は例を提供するが、本発明の実施形態はそれに限定されない。
【0014】
当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更及び変形を行うことができることが明らかとなろう。本開示の趣旨及び要旨を組み込む開示の実施形態の変更、組合せ、部分組合せ、及び変形が当業者には想到され得ることから、本開示は、添付の特許請求の範囲内の全てのもの及びその均等物を含むように解釈すべきである。
【0015】
本発明の実施形態は、包括的には、入力ネットワークの安定性をサポートするために、入力電源の条件に基づいて電解槽プラントにおける水素生成速度を調整及び制御することに関する。入力ネットワークは、メイングリッド(すなわち、ユーティリティグリッド)、マイクログリッド、又はその組合せのいずれかとすることができる。
【0016】
実施形態は、電圧及び周波数ドループに基づく制御を使用することによって、EPSネットワーク条件に基づく水素生成速度を調整することを提案する。これらの制御技法は、分散型発電において使用され、多くの場合、接続されたグリッドをサポートするために組み込まれる必須の機能である。しかしながら、これらの機能は、概して、エネルギー発生製品及びバッテリチャージャーにおいて利用可能である。実施形態は、接続されたEPSネットワークをサポートするために、これらの機能を電解槽に導入する。電圧及び周波数ドループに基づく制御、並びにそのためのシステム、装置、方法、及び命令は、電解槽システムの1つ以上のコントローラーを利用する。制御アルゴリズムが、概して、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は産業用コンピューター等のデジタルコントローラーにおいて実装される。
【0017】
発電量が電力システムネットワークにおける負荷量を上回る場合、電力システムの周波数及び/又は電圧は、公称周波数及び/又は公称電圧レベルを上回る。同様に、電力システムの周波数及び/又は電圧は、ネットワークにおける電力消費が発電よりも多い場合、公称値を下回る。典型的に、電力システムの公称周波数は、地理的場所に応じて60Hz又は50Hzである。公称電圧は、数百ボルト~数千ボルトの任意の値とすることができるため、公称電圧のパーセンテージにおける電圧を基準にすることが一般的である。
【0018】
図1は、本発明の一例示の実施形態に係る電解槽システムの周波数ドループ制御をグラフで示している。
図1のグラフ100は、公称周波数f
0における又はその付近の不感帯(f
1-f
0)を有する電解槽システムのドループ曲線を示している。
【0019】
図1に示されているように、f
0は、接続された電力システムの公称周波数(すなわち、典型的に60Hz、50Hz又はその付近)である。公称周波数f
0において、電解槽システムは、定格生成レベルP
0をもたらすように構成される。公称周波数f
0における又はその付近の調整可能な不感帯(f
1-f
0)は、電解槽が周波数における小さな変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上するために使用される。
【0020】
電解槽は、水素発生の低減を開始し、そうして、周波数がf1レベルを下回ると、周波数f2におけるゼロ水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が低減する。周波数が増大する場合、電解槽は、ドループ曲線(例えば、線形又は非線形)に従って生成をランプアップする。
【0021】
容易に理解されるように、現場におけるバランスオブプラント(BOP)負荷を維持しなければならないため、水素生成がゼロレベルに降下すると、電解槽プラントの電力使用(power draw)は最小限になり得る(ただし、正確にゼロkWではない)。電解槽システムは、任意選択の特徴として、f2よりも低い何らかの周波数において完全にオフになるように構成することができる。
【0022】
不感帯は、ゼロとなる低さまで設定することができ、それにより、f1=f0となる。代替的に、不感帯(f1-f0)は、i)予め設定された固定値となる、ii)手動で調整される、iii)スケジュール、環境条件に基づいて自動で調整される、及び/又は、iv)1つ以上のアルゴリズム、人工知能(AI)、及び/又は機械学習(ML)を使用して、グリッド条件に基づいて周期的又は反復的に調整されるように構成することができる。
【0023】
図2のA~Dは、本発明の他の例示の実施形態に係る電解槽システムの周波数ドループ制御をグラフで示している。グラフ200A、200B、200C、200Dは、様々な実施形態に係る異なる傾きの曲線を示している。
【0024】
図2のAに示されているように、不感帯は、ゼロHzの低さまで設定することができる。f
1とf
2との間のドループ曲線の傾きは、
図1(又は
図2のAのf
0とf
2との間)に示されているように線形、又は
図2のBに示されているように非線形であり得る。代替的又は付加的に、f
1とf
2との間のドループ曲線の傾きは、
図2のCに示されているような複数の傾き(例えば、線形及び/又は非線形)を有し得る。更に別の代替形態において、f
1とf
2との間のドループ曲線の傾きは、
図2のDに示されているようなヒステリシスを有し得る。ヒステリシスの幅(f
1-f
1’及びf
2-f
2’)並びにf
1とf
2との間の傾き及びf
1’とf
2’との間の傾きは、調整可能である。
【0025】
いくつかの構成において、電解槽は、期待寿命の最適化、信頼性の向上等の様々な理由から、最大可能生成レベルを下回って動作する。付加的又は代替的に、電解槽は、短期間の過生成(過負荷)をサポートするように構成することができる。そのような場合、過周波数のグリッドシナリオ中、追加の生成を達成することができる。電力システムネットワークにおける過周波数は、発電機が反応して発電レベルを低減させる前に消費され得る利用可能な余剰の発生を示す。電解槽は、発電機が電力低減のプロセスを開始する間、短期間に公称定格を上回る水素生成レベルに増大させることによって、余剰電力を消費するように構成することができる。余剰電力の消費は、ネットワークにおいて利用可能な余剰の発生を低減し、したがって、過周波数レベルを軽減する。
【0026】
図3は、本発明の一例示の実施形態に係る、一時的な過負荷を伴う電解槽システムの周波数ドループ特性をグラフで示している。グラフ300は、一時的な過負荷中の過生成レベルP
4を示している。
【0027】
公称周波数f0において、電解槽システムは、定格生成レベルP0をもたらすように構成される。公称周波数f0における又はその付近の調整可能な下方不感帯(f1-f0)を使用すると、電解槽が周波数における小さな下方変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上させる。公称周波数f0における又はその付近の調整可能な上方不感帯(f0-f3)を使用すると、電解槽が周波数における小さな上方変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上させる。
【0028】
電解槽は、水素発生の低減を開始し、そうして、周波数がf1レベルよりも降下すると、周波数f2におけるゼロ水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が低減する。周波数が増大する場合、電解槽は、ドループ曲線に従って生成をランプアップする。電解槽は、水素発生の増大を開始し、そうして、周波数がf3レベルを超過すると、周波数f4における過負荷水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が増大する。
【0029】
図4は、本発明の一例示の実施形態に係る有効電力を伴う電解槽システムの電圧ドループ制御をグラフで示している。
図4のグラフ400は、公称電圧V
0における又はその付近の不感帯(V
1-V
0)を有する電解槽システムのドループ曲線を示している。
【0030】
図4に示されているように、V
0は、接続された電力システムの公称電圧である。公称電圧V
0において、電解槽システムは、定格生成レベルP
0をもたらすように構成される。公称電圧V
0における又はその付近の調整可能な不感帯(V
1-V
0)は、電解槽が電圧における小さな変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上するために使用される。
【0031】
電解槽は、水素発生の低減を開始し、そうして、電圧がV1レベルを下回ると、電圧V2におけるゼロ水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が低減する。電圧が増大する場合、電解槽は、ドループ曲線に従って生成をランプアップする。
【0032】
容易に理解されるように、現場におけるバランスオブプラント(BOP)負荷を維持しなければならないため、水素生成がゼロレベルに降下すると、電解槽プラントの電力使用は最小限になり得る(ただし、正確にゼロkWではない)。電解槽システムは、任意選択の特徴として、V2よりも低い何らかの電圧において完全にオフになるように構成することができる。
【0033】
不感帯は、ゼロとなる低さまで設定することができ、それにより、V1=V0となる。代替的に、不感帯(V1-V0)は、i)予め設定された固定値となる、ii)手動で調整される、iii)スケジュール、環境条件に基づいて自動で調整される、及び/又は、iv)1つ以上のアルゴリズム、人工知能(AI)、及び/又は機械学習(ML)を使用して、グリッド条件に基づいて周期的又は反復的に調整されるように構成することができる。
【0034】
動作原理は、影響するパラメーターが電圧であることを除いて周波数ドループと同様である。電力システムの周波数が有効電力の不均衡に直接関係する過周波数/不足周波数とは異なり、電力システムにおける過電圧/不足電圧条件は、無効電力の不均衡、有効電力の不均衡、又はその組合せの結果であり得るが、無効電力の不均衡が主要な原因である。しかしながら、水素生成速度は有効電力にのみ影響を与え得ることから、電解槽は、有効電力を調整することができる。
【0035】
概して、過電圧が無効電力又は有効電力のいずれの不均衡によってもたらされているかを判断することは難しい。したがって、一般的には、負荷を調整して無効電力を可能な限り調整することで、有効電力制御を可能にする。したがって、有効電力ドループ曲線は、無効電力制御における不感帯と比較してはるかに広い不感帯(すなわち、V1-V0又はV2-V0)を有する。無効電力制御が可能でない場合、電圧レベルが不感帯を超えると有効電力のみが調整される。
【0036】
図5のA~Dは、本発明の他の例示の実施形態に係る電解槽システムの電圧ドループ制御をグラフで示している。グラフ500A、500B、500C、500Dは、様々な実施形態に係る異なる傾きの曲線を示している。
【0037】
図5のAに示されているように、不感帯は、ゼロボルトの低さまで設定することができる。V
1とV
2との間のドループ曲線の傾きは、
図4(又は
図5のAのV
0とV
2との間)に示されているように線形、又は
図5のBに示されているように非線形であり得る。代替的又は付加的に、V
1とV
2との間のドループ曲線の傾きは、
図5のCに示されているような複数の傾き(例えば、線形及び/又は非線形)を有し得る。更に別の代替形態において、V
1とV
2との間のドループ曲線の傾きは、
図5のDに示されているようなヒステリシスを有し得る。ヒステリシスの幅(V
1-V
1’及びV
2-V
2’)並びにV
1とV
2との間の傾き及びV
1’とV
2’との間の傾きは、調整可能である。
【0038】
いくつかの構成において、電解槽は、期待寿命の最適化、信頼性の向上等の様々な理由から、最大可能生成レベルを下回って動作する。付加的又は代替的に、電解槽は、短期間の過生成(過負荷)をサポートするように構成することができる。そのような場合、過電圧グリッドシナリオ中、その追加の生成を達成することができる。電力システムネットワークにおける過電圧は、発電機が反応して発電レベルを低減させる前に消費され得る利用可能な余剰の発生を示す。電解槽は、発電機が電力低減のプロセスを開始する間、短期間に公称定格を上回る水素生成レベルに増大させることによって、この余剰電力を消費するように構成することができる。余剰電力の消費は、ネットワークにおいて利用可能な余剰の発生を低減し、したがって、過電圧レベルを軽減する。
【0039】
図6は、本発明の一例示の実施形態に係る、一時的な過負荷を伴う電解槽システムの電圧ドループ特性をグラフで示している。グラフ600は、一時的な過負荷中の過生成レベルP
4を示している。
【0040】
公称電圧V0において、電解槽システムは、定格生成レベルP0をもたらすように構成される。公称電圧V0における又はその付近の調整可能な下方不感帯(V1-V0)を使用すると、電解槽が電圧における小さな下方変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上させる。公称電圧V0における又はその付近の調整可能な上方不感帯(V0-V3)を使用すると、電解槽が電圧における小さな上方変動に応答することを防止し、したがって、ネットワークの安定性を向上させる。
【0041】
電解槽は、水素発生の低減を開始し、そうして、電圧がV1レベルを下回ると、電圧V2におけるゼロ水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が低減する。電圧が増大する場合、電解槽は、ドループ曲線に従って生成をランプアップする。電解槽は、水素発生の増大を開始し、そうして、電圧がV3レベルを超過すると、電圧V4における過負荷水素生成に達するまで、ネットワークからの電力消費が増大する。
【0042】
いくつかの実施形態において、EPSネットワークの電圧及び周波数は、独立して異なる方向及び異なる大きさで変動する、分離された変数である。例えば、過周波数及び不足電圧を同時に有する及びその逆である可能性がある。これらの状況下で、有効電力制御は、電圧ドループ曲線と比較して周波数ドループを優先することができる。換言すれば、電解槽は、周波数が周波数ドループ不感帯内にある場合にのみ、電圧ドループを可能にするように構成することができる。代替的に、電解槽は、電圧が電圧ドループ不感帯内にある場合にのみ、周波数ドループを可能にするように構成することができる。
【0043】
本明細書に記載される実施形態は、単一の電解槽、電解槽の群、又は電解槽プラント全体;水の電解又は炭化水素分子の分割;低温電解槽(例えば、高分子電解質膜「PEM」型又はアルカリ型)又は高温電解槽(例えば、固体酸化物型電解セル「SOEC」)等の多様な電解槽に容易に適用することができる。実施形態は、任意の電解槽技術又は任意の重要でない線形に調整可能な負荷と組み合わせて使用することができる。
【0044】
当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本発明のグリッドサポート電解槽において、様々な変更及び変形を行うことができることが明らかとなろう。したがって、本発明は、本発明の変更及び変形が添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあるならば、それらを包含することが意図される。
【外国語明細書】