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特開2023-111913pro-ADMに基づく抗生物質療法の指導
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111913
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】pro-ADMに基づく抗生物質療法の指導
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230803BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023083753
(22)【出願日】2023-05-22
(62)【分割の表示】P 2020533655の分割
【原出願日】2018-12-20
(31)【優先権主張番号】17209064.9
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508093584
【氏名又は名称】ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン ダライアス
(57)【要約】
【課題】感染症を有する疑いがある、および/またはそれ、特に敗血症の症状を示す患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための代替的および/または改善された手段の提供。
【解決手段】本発明は、感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法に関する。特に、本方法は、該患者からの試料を提供することと、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することと、を含み、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す。本発明の好ましい実施形態では、本方法は、該患者からの試料中でPCTまたはその一以上の断片のレベルを追加的に判定することを含む。さらに、本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットにも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法であって、
-前記患者からの試料を提供することと、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することと、を含み、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す、前記方法。
【請求項2】
前記提供された試料が、医療従事者との最初の接触後12時間以内、好ましくは医療従事者との最初の接触後6時間、2時間、1時間、またはより好ましくは30分以内に前記患者から単離された、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、救急診療部またはプライマリケアユニットにいる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
MR-proADMのレベルを判定することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
健康な個体群などにおける1つ以上の対照試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルよりも高い、前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することが、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
開始または変更を必要とする前記抗生物質治療が、静脈内抗生物質治療の開始または変更を含む、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
約1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者からの試料中で、PCTまたはその一以上の断片のレベルを追加的に判定することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
PCTまたはその一以上の断片の前記レベルが、proADMまたはその一以上の断片の前記レベルと同じ前記試料中で判定される、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
0.05ng/mL以上、好ましくは0.1ng/mL以上、より好ましくは0.12ng/mL以上のPCTまたはその一以上の断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
proADMまたはその一以上の断片を判定するための前記試料およびPCTまたはその一以上の断片を判定するための前記試料が、好ましくは血液試料、血清試料、血漿試料、および/または尿試料からなる群から選択される体液である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベル、および
-0.05nmol/Lを下回る、好ましくは0.1nmol/mLを下回る、より好ましくは0.12nmol/Lを下回るPCTまたはその一以上の断片のレベルが、
抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、抗生物質治療をまだ受けていない、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、経口抗生物質治療を受けており、抗生物質治療の前記変更が、前記抗生物質治療の前記投与経路の変更を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
年齢、性別、共存症、および/または臓器機能不全などの1つ以上の危険因子を追加的に判定することを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法であって、
-前記患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくはその一以上の断片のレベルの判定あって、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーが、好ましくはラクテート、および/もしくはC-反応性タンパク質である前記判定、ならびに/または
-少なくとも1つの臨床スコアの判定であって、前記少なくとも1つの臨床スコアが、好ましくはSOFAおよび/もしくはqSOFAである前記判定、
を追加的に含み、
-前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベル、および/または前記少なくとも1つの臨床スコア、ならびにproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す、前記方法。
【請求項17】
感染症を有する疑いがある患者の治療に使用するための1つ以上の抗生物質剤を含む医薬組成物であって、前記患者が、前記患者から得られた試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルにより抗生物質治療の開始または変更が必要であると請求項1に記載の方法によって識別された後に、前記組成物を投与される、医薬組成物。
【請求項18】
前記組成物の投与が、前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルを判定した後180分以内、好ましくは120分以内、より好ましくは60分以内、または直後に開始される、請求項1~17のいずれかに記載の薬剤として使用するための医薬組成物。
【請求項19】
前記患者が、前記組成物の静脈内投与、好ましくは1つ以上の組成物の静脈内投与および経口投与を受ける、請求項17または18に記載の薬剤として使用するための医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、
-対象からの試料中で、proADMまたはその一以上の断片の前記レベルを判定するための検出試薬を含み、および任意に追加的に、PCTまたはその一以上の断片の前記レベルを判定するための検出試薬を含んでもよく、及び
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルに対応する、参照レベルなどの参照データであって、好ましくはコンピュータ可読媒体に保存され、および/またはproADMもしくはその一以上の断片の前記判定されたレベル、ならびに任意に追加的に、PCTもしくはその一以上の断片の前記判定されたレベルを、前記参照データと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる前記参照データを含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法に関する。特に、本方法は、該患者からの試料を提供すること、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定すること、を含み、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す。本発明の好ましい実施形態では、本方法は、該患者からの試料中でPCTまたはその一以上の断片のレベルを追加的に判定すること、を含む。さらに、本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症患者における疾患重症度の早期診断および正確な評価は、標的化された療法の指導を通じて生存率および転帰の改善に重要であると考えられる。しかしながら、これは、疾患の非特異的徴候および症状によって複雑であり、加齢集団、抗生物質に対する発達する抵抗力、ならびに体内での免疫抑制剤および異物の使用の増強によって悪化する1。さらに、抗生物質の適時使用は、最重要であり、遅れた療法介入に応じてより高い死亡率が示される2、3。敗血症のエピソードのほとんどは、最初はコミュニティで発生するため、その発生率は、大きく過小評価される場合さえあり4、標的とされた臨床介入の最も早い機会は、例えば、入院の最初の時点、救急診療部(ED)である。
【0003】
したがって、C-反応性タンパク質(CRP)およびプロカルシトニン(PCT)5~8、ならびに臨床診療に組み込まれた様々なアルゴリズムなど9、敗血症診断の分野において多数のバイオマーカーが確立されているが、疾患重症度のより正確かつ迅速な評価の必要性が依然として存在する。この「欠損リンク」は、最近改訂された敗血症の定義においてさらに強調され10、ここでは、連続的臓器不全評価(SOFA)スコアおよびクイックSOFA(qSOFA)スコアなどの臨床重症度スコアを使用して、生命を脅かす臓器機能不全の評価が提案された。残念ながら、時間的制約および複雑さの問題は、特にSOFAをEDで計算することを複雑にし、多くの構成パラメータは、受診直後に利用できない。これらの問題に対処するために構築された第2の重症度スコア、qSOFAは、疾患重症度に関して極めて低い感受性を有することが示されている10、11。その結果として、敗血症発症の初期段階で有意に上昇し、疾患重症度を正確に識別するための高感度を有する生物学的マーカーは、早期の両方決定を容易にし、個別化された治療戦略を仕立てることにおいて臨床的に有用であり得る12、13
【0004】
1つのそのようなバイオマーカーは、微小循環および微小血管系の整合性を安定させるのに役立つことが示されている中間領域プロアドレノメジュリン(MR-proADM)を含む場合があり14~18、したがって敗血症に対する早期病態生理学的応答において顕著な役割を果たす可能性がある。実際に、救急診療部内で下気道感染症19、21および尿路感染症22を有する患者に対して多数の研究が行われているが、そのような環境で敗血症患者の未分化集団における疾患重症度を調査したものは少ない。
【0005】
プロアドレノメジュリン、特に中間領域プロアドレノメジュリン(MR-proADM)は、感染および不良転帰のマーカーとして記述されており42、療法が成功裏に進行するにつれて減少することが示されている40、41。抗生物質療法中に複数のproADM測定を行うことによって、ADMレベルの変化を監視することができる40、41。しかしながら、従来技術に記述されるこれらのような方法は、ADMの複数の測定およびADMレベルの変化の密接な監視を必要とし、それによって、時間集中的な評価を必要とし、比較が行われ得るとき、療法の後期段階で追加の試料が得られる前に疾患進行および治療有効性の著しい不確実性をもたらす。これらの方法は、いかなる変化も検出が遅すぎることが多いため、患者の状態が悪化する前の早期時点として抗生物質療法を変更または開始するなど、早期療法の決定を直接的に可能にしない。
【0006】
さらに、本発明まで、ADMは、疾患進行または療法に関する決定を下すための信頼性の高い予後マーカーとみなされていなかった42
【0007】
バイオマーカーPCTは、抗生物質療法を指導する際に用いられている43(EP2320237)。しかしながら、proADMとバイオマーカー値の特定の組み合わせとの組み合わされた評価は、抗生物質療法の開始または調整に関する早期かつ信頼性の高い決定を下すために以前に識別されていない。
【0008】
従来技術に照らして、感染症、特に敗血症を有する疑いがある患者を治療する分野では、抗生物質療法の選択、指導、層別化、および/または制御のための追加の手段に対する重大なニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術における困難に照らして、本発明の根底にある技術的問題は、感染症を有する疑いがある、および/またはそれ、特に敗血症の症状を示す患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための代替的および/または改善された手段の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法、キット、およびさらには手段、ならびに感染症を有する疑いがある患者の治療に使用するための1つ以上の抗生物質剤を含む医薬組成物を提供することを目的とする。したがって、本発明の1つの目的は、抗生物質治療の開始または変更を必要とする患者を識別するためのバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせおよび潜在的に1つ以上の臨床スコアの使用である。
【0011】
本発明の技術的問題の解決策は、独立請求項に提供される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に提供される。
【0012】
したがって、本発明は、感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法に関し、その方法は、
該患者からの試料を提供することと、
該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することと、を含み、
該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す。
【0013】
本発明の方法は、感染症または敗血症の症状の呈示による感染を有する疑いがある患者に遭遇する医療従事者が、(緊急の)抗生物質治療が必要かどうかを決定するための非常に有用な措置を提供する。本方法は、客観的かつ迅速であり、正しい治療決定を下すために、治療対策担当者に高度な保証を提供する。ProADMが、感染症の症状を示す患者に最初に遭遇したときに行われ得る、診断方法で、または療法の指導および分層化のための方法で用いられる単独のバイオマーカーとしてそのような情報を提供することができることは、まったく予想外であった。したがって、MR-proADMは、抗生物質治療に関する早期決定を容易にするためのツールとして使用されてもよい。
【0014】
本発明は、(i)抗生物質治療の開始または変更の初期の必要性、(ii)陽性血液培養の予測、(iii)重度敗血症の発症、および/または(iv)28日間死亡率によって評価される疾患重症度、を評価するために、広範囲のバイオマーカー(proADM、PCT、乳酸塩、C-反応性タンパク質(CRP))および臨床重症度スコア(SOFAおよびqSOFA)を潜在的に用いる。
【0015】
例えば救急診療部もしくはプライマリケアユニットで、また、医者もしくは医療従事者による家庭訪問中、または救急車内で、または緊急事態の現場で、などの任意の他の環境で感染を有する疑いがある患者に遭遇する医師もしくは医療従事者は、いくつかの実施形態では、ポイントオブケア形式で、好ましくはプライマリケアユニットの救急診療部で本発明の方法を用いてもよい。これは、バイオマーカーに基づく治療決定が数時間後またはさらに数日後にのみ行われ得るように、はるかに多くの時間を必要とする実験室での試料分析を必要とする他のバイオマーカー試験と比較して、大きな利点を表す。対照的に、本発明の方法は、救急診療部、プライマリケアユニット、または救急車などの第1の治療措置を取る責任者が最初に患者を診察する場所で、その場で行うことができる。
【0016】
本方法は、感染症を有する疑いがある患者が抗生物質治療を受けるべきかどうか、または継続中の抗生物質治療を継続または変更または停止すべきかどうかを決定するのに有用である。さらに、proADMまたはその断片のレベルに基づいて、患者が、抗生物質治療が開始または修正されるべきである集中した医療的観察下にあるべき高リスク患者であるかどうか、または患者が、抗生物質治療または抗生物質治療の変更を必要としない可能性がある、安定または改善さえしている健康状態の低リスク患者であるかどうかを判断することができる。
【0017】
したがって、本発明の方法は、医療従事者が患者に遭遇してすぐに行われる治療決定を改善するのに役立ち得る。本発明の方法は、抗生物質療法の開始または変更がなくても健康状態が安定しているか、または改善さえしている低リスク患者から、抗生物質療法の開始または変更を必要とする可能性がより高い高リスク患者を区別することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、患者からの試料中のproADMレベルの単一測定を含むか、またはそれからなる。これは、治療有効性を評価するために、経時的に複数の測定、およびADMレベルの変化を判定するためのこれらの値の比較が必要である従来技術の方法と比較して、改善を表す。したがって、本発明は、抗生物質治療の開始または変更に関する療法の決定を下すために、好ましくは、ADMの単一の測定、および/または単一の試料中の複数の測定値、および/または本質的に同じ時点で得られた複数の試料を用いる。本発明まで、proADMは、任意にPCTなどの追加のマーカーと組み合わせて、単一の時点でproADMレベルの評価を介して療法の指導を提供することができることは知られていなかった。
【0019】
本発明のさらなる実施形態では、1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。ProADMまたはその断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示さない本発明の実施形態では、患者は、退院してもよい、ICUもしくは任意の病院もしくは臨床環境から退院してもよい、または入院していなくてもよい。proADMまたはその断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す代替の実施形態では、患者は、入院、またはICUに入室する場合がある。特に患者が既に入院している場合は、ICUへの入室が検討される場合がある。ProADMまたはその断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要でないことを示す別の代替実施形態では、患者は、非静脈内抗生物質(経口抗生物質)を必要とするか、または抗生物質を必要とせずに、病院または病院環境から退院してもよい。
【0020】
本発明の方法の特定の利点は、発明を有する疑いがある患者を、必要な療法ごとに層別化することができることである。層別化された患者群には、抗生物質治療の開始または変更を必要とする患者、および抗生物質治療または継続中の治療の変更を必要としない患者が含まれてもよい。
【0021】
さらに、proADMまたはその断片のレベルに基づいて、例えば、投与される抗生物質剤または抗生物質剤の組み合わせ、それぞれの抗生物質剤の投与経路または複数の投与経路、および単回もしくは反復もしくは複数回の投与などの治療体制、ならびに潜在的に投与間隔に関して、どのような抗生物質治療が必要とされ得るかを決定することが可能であり得る。
【0022】
したがって、本発明の方法は、抗生物質の不必要な使用を回避するのに役立ち得る。これにより、抗生物質をより効率的に使用することができ、これは、不要なコストだけでなく、抗生物質剤の不必要な使用によって促進される抗生物質耐性または生理的副作用の発生を回避することになる。さらに、医療従事者と遭遇した後、例えば病院の救急診療部で、どの患者を監視し、潜在的に、抗生物質治療中に入院させるべきか、および厳密な監視を必要としないため、どの患者を退院させることができるかを確実に決定することができる。その結果、抗生物質療法を必要とする患者のみがさらなる治療のために滞在しなければならない場合がある一方で、他の患者は、退院してもよいため、それぞれの病院または医療機関がより効率的に管理され得る。これはまた、抗生物質治療を必要としない低リスクの患者に適用されていたであろう不必要な措置のための費用の回避から大きな利益をもたらすであろう。
【0023】
重要なことに、好ましい実施形態では、本発明の方法の患者は、感染症または感染病を患っているとまだ診断されていない。しかしながら、患者は、感染症の症状または兆候を示す可能性があるため、感染症を有する疑いがある。
【0024】
さらに、患者は、まだ感染症または敗血症を有すると診断されていないが、患者は、経口抗生物質剤などの抗生物質治療を既に受けてもよい。
【0025】
したがって、本発明の方法は、感染症の症状または兆候を呈する対象が抗生物質治療を受けるべきかどうかを決定するために使用され得る。
【0026】
感染症の症状は、感染症の影響を受けている可能性がある臓器系によって非常に多様である。しかしながら、そのような症状は、救急診療部、プライマリケアユニット、病院、または同様の施設で働く医療従事者など、熟練者には十分に定義され、知られている。感染病および敗血症の一般的兆候には、発熱、体温の上昇、38℃を超える体温、鼻水、咳、頭痛、疲労、身体痛、吐き気、嘔吐、下痢、発熱、悪寒、腹痛、1分間に90回を超える心拍数、1分間に20回を超える呼吸速度、尿出力の著しい低下、精神状態の急激な変化、血小板数の減少、呼吸困難、心臓ポンプ機能の異常、または低血圧が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の別の実施形態では、対象は、敗血症の症状を示す。
【0028】
proADMまたはその断片の判定されたレベルは、抗生物質治療の開始または継続中の抗生物質治療の変更が必要かどうかを示す。言い換えれば、proADMまたはその断片のレベルは、抗生物質治療を必要とし得る感染病の存在の可能性の指標として使用され得る。本発明の方法に基づいて、治療を開始、変更、もしくは継続すべきか、または抗生物質治療を必要としないかを決定することができる。
【0029】
本発明の文脈において、患者の抗生物質治療の変更は、用量、投与経路、またはレジメン、または抗生物質治療の他のパラメータの変更に関与し得るが、変更された治療は、当初使用されていたのと同じ1つ以上の抗生物質剤を依然として包含してもよい。さらに、抗生物質治療の変更は、潜在的に追加的に、患者を治療するために使用される1つ以上の抗生物質剤の変更にも関してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、変更は、さらなる抗生物質剤の追加、または1つ以上の抗生物質剤を1つ以上の他の薬剤と置き換えることに関してもよい。
【0030】
好ましい実施形態では、抗生物質治療の変更は、抗生物質剤治療を受けない患者における抗生物質剤治療の開始を指す。さらに、抗生物質治療の変更は、例えば、経口および/または局所抗生物質治療を受けている患者における静脈内抗生物質治療の開始などの投与経路に関する抗生物質治療の拡大に関してもよく、ここで、静脈内抗生物質治療は、以前の抗生物質治療の代わりに、またはそれに加えて投与されてもよい。
【0031】
さらに、抗生物質治療の変更は、例えば、静脈内抗生物質治療を、抗生物質治療の経口および/または局所投与に置き換える、または抗生物質治療を中止するなどの投与経路に関する抗生物質治療の減少に関してもよい。さらに、抗生物質治療の変更はまた、抗生物質治療の投与の環境の変更に関してもよい。例えば、拡大の意味での抗生物質治療の変更は、抗生物質治療の変更前に入院していなかった患者への病院環境での抗生物質治療の投与、または抗生物質の変更前にICU患者ではなかった患者へのICU環境での抗生物質治療の投与に関してもよい。本明細書において、抗生物質治療および抗生物質療法という用語は、互換的に使用される。抗生物質治療の変更は、いくつかの実施形態では、proADM測定の転帰に応じて、追加の、またはより少ない抗生物質剤の投与を含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御は、好ましくは、将来の有害事象の可能性に関しても、継続中の抗生物質療法の成果または有効性の予想に関与する。
【0033】
本発明によれば、「抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す」の文脈における、「示す」という用語は、抗生物質治療の開始または継続中の抗生物質治療の変更が必要であり得る可能性の尺度を意図する。好ましくは、必要とされている抗生物質治療における開始または変更の「指標」は、患者が、患者の健康状態の改善をもたらす好適な抗生物質の投与によって成功裏に治療され得る感染症を患う可能性の増加を指すことを意図する。一方で、proADMまたはその断片のレベルは、患者が感染症を有する疑いがあるが、抗生物質の投与が健康状態の改善をもたらさない可能性があるため、抗生物質治療が患者の状態の改善に役立たない可能性があるという事実を示し得る。
【0034】
本発明の文脈において、例えば感染病を患っている患者の抗生物質療法で使用される1つ以上の抗生物質剤の変更などの抗生物質治療を開始または変更する必要性の指標は、患者の健康における将来の有害事象の発生の可能性の増加に関連する場合がある。抗生物質療法の開始または変更の指標は、意図される抗生物質治療の有効性の評価として意図されてもよく、典型的には、抗生物質治療の絶対的な成功または失敗を明確に指摘するように限定的な様式で解釈されるものではなく、これは、患者の健康状態の連続的な改善で表示される場合がある。
【0035】
上記を念頭において、本発明の方法は、特に本明細書に開示されるカットオフ値を使用する場合、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかの判定に関して非常に信頼できる手順を表す。ProADMまたはその断片のレベルに基づいて、開始される抗生物質治療の成功の可能性を、確信を持って予測することが可能であり得ることは驚くべきことであった。
【0036】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、提供された試料は、医療従事者との最初の接触から12時間以内、好ましくは医療従事者との最初の接触から6時間、2時間、1時間、またはより好ましくは30分以内に患者から単離された。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、提供された試料は、感染症の症状および/または敗血症の症状が医療従事者に呈示された後12時間以内、好ましくは該症状が医療従事者に呈示された後6時間、2時間、1時間、またはより好ましくは30分以内に患者から単離された。
【0038】
患者と医療従事者との間の最初の接触の時点は、医療従事者が、医療従事者に連絡した、または医療従事者を受診した患者を最初に検査する時点として定義される。これはまた、感染症または敗血症の症状が呈示され得る時点である可能性がある。検査は、身体検査、健康診断、または臨床検査に関してもよく、これは、医療専門家が疾患の兆候に関して患者の身体を調査するプロセスであってもよい。それは、通常、病歴の取り込み、継続中の治療の評価、および患者が経験した症状の説明を含む。健診は、病歴とともに、正しい診断の判定および治療計画の立案を支援する。
【0039】
医療専門家が患者の症状を認識する時点は、患者が、感染症を有する疑いがある患者として識別される時点であってもよい。この時点は、基準時点または時点0とも称されてもよく、これは、本発明の方法の文脈において言及される期間に関する。理想的には、ProADMまたはその断片のレベルが判定されるべき試料は、試料分析の結果を非常に迅速に受け取ることができ、したがって、proADMに基づく治療決定を非常に迅速に行うことができるように、感染症を有する疑いがある患者を識別した後、できるだけ早く単離されるべきである。感染症または敗血症を有する疑いがある患者の治療の功を奏する結果のためには、患者の症状を認識した後、非常に迅速に正しい治療を開始することが重要であり得る。したがって、本発明の文脈において、試料は、医療従事者への最初の接触および/または症状の呈示後12時間以内、好ましくは、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1時間以内、または直後に単離されることが好ましい。好ましくは、試料は、自動化または半自動化であってもよく、非常に短い時間内に治療決定を担当する医療専門家に結果を提供するポイントオブケアアッセイを使用することによって、試料単離の現場、例えば、救急診療部、ポイントオブケアユニット、または救急車で直接分析され得る。このようにして、本発明に基づいて治療決定を下すために必要な情報を得るための時間は、著しく短縮され得、これは、潜在的に開始される抗生物質治療の成功にとって重要であり得る。
【0040】
好ましい実施形態では、抗生物質治療は、試料中のproADMまたはその断片のレベルを示す試料分析の結果の提供後、直ぐに開始または変更される。さらなる実施形態では、治療は、試料分析の結果を受けた後12時間以内、好ましくは11、10、9、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1時間以内、または直後に開始されてもよい。
【0041】
本発明の別の実施形態では、抗生物質治療の開始、変更、または停止の決定は、28日間死亡率を予測し、48時間以内の重症敗血症発症を予測し、陽性細菌培養(血液培養)を予測するためのproADMまたはその一以上の断片の定量化によって支持され得る。
【0042】
好ましくは、患者は、救急診療部またはプライマリケアユニットにいる。
【0043】
本発明の方法の大きな利点は、患者の遭遇現場で行うことができ、移動および結果の提供のための時間を費やす可能性がある特定の実験室を必ずしも必要としないことである。さらに、本発明の方法に基づく治療決定は、EDまたはプライマリケアユニットで患者に遭遇した後、非常に迅速に行われ得る。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、proADMのN-末端ペプチド(PAMP)、またはproADMの中間領域ペプチド(MR-proADM)、または成熟アドレノメジュリン(生物活性ADMを含む)、またはproADMのC-末端ペプチド(CT-proADM)のレベルを判定することを含む。MR-proADMを判定することの採用は、本明細書に記載される任意の所与の実施形態に好ましく、したがって、各実施形態の文脈で考慮されてもよい。好ましい実施形態では、「proADM断片」は、MR-proADMであるとみなされてもよい。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、健康な個体群などにおける1つ以上の対照試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルよりも高い、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0046】
そのような好ましい実施形態では、試験対照試料、好ましくは任意の所与の疾患を患っているコホートもしくは他の多数の対象、または対照群によって生成された対照試料または対照値を使用することが可能である。そのようなデータセットの分析および比較のための適切な統計的手段は、当業者に知られている。陽性対照(疾患を患っている人など)または陰性対照(健康な対象から)の対照試料は、同時または非同時比較のいずれかで基準値に使用されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、開始または変更を必要とする抗生物質治療は、静脈内抗生物質治療の開始または変更を含む。したがって、本発明は、proADM測定を手段として、任意にPCT測定とともに、静脈内抗生物質投与が必要である、および/または強化されるかどうかの決定を可能にする方法を提示する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態によれば、1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0049】
本発明のある特定の実施形態では、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15、1.2、1.25、1.27、1.3、1.35、1.4、1.45、1.5、1.55、1.6、1.65、1.7、1.75、1.8、1.85、1.9、1.95、2.0、2.05、2.1、2.15、2.2、2.25、2.3、2.35、2.4、2.45、2.5、2.55、2.6、2.65、2.7、2.75、2.8、2.85、2.9、2.95、3.0、3.05、3.1、3.15、3.2、3.25、3.3、3.35、3.4、3.45、3.5、3.55、3.6、3.65、3.7、3.75、3.8、3.85、3.9、3.95、4.0nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0050】
proADMまたはその断片のタンパク質レベルのカットオフ値は、好ましくは、患者から得られた血漿試料中の測定値を指す。したがって、本明細書に開示される値は、用いられる検出/測定方法に応じてある程度変動する場合があり、本明細書に開示される特定の値はまた、他の方法によって判定される対応する値を読み取ることを意図している。
【0051】
proADMまたはPCTなどのマーカーまたはバイオマーカーのレベルに関する本明細書に開示されるすべてのカットオフ値は、ある特定のカットオフ「以上」または特定のカットオフ「以下」として理解されるべきである。例えば、1nmol/Lを上回るproADMまたはその一以上の断片のレベルに関する実施形態は、1nmol/L以上のproADMまたはその一以上の断片のレベルに関すると理解されるべきである。逆に、1nmol/Lを下回るproADMまたはその一以上の断片のレベルに関する実施形態は、1nmol/L以下のproADMまたはその一以上の断片のレベルに関すると理解されるべきである。
【0052】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される方法の結果を患者に知らせることを追加的に含む。さらなる実施形態では、本発明は、抗生物質治療の開始を追加的に含む。さらに、本方法は、患者を、特定の治療レジメンと関連する特定の療法群に層別化するステップと、任意に、治療層別化の結果を患者に知らせることと、を含んでもよい。
【0053】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、該患者の集中治療ユニットへの転移を示し、または1nmol/lを下回る、好ましくは1.2nmol/Lを下回る、より好ましくは1.27nmol/Lを下回る該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、該患者の退院を示す。
【0054】
本発明の方法の大きな利点は、proADMまたは断片のレベルに基づいて、さらなる治療ステップおよび決定が行われ得ることである。proADMのレベルが1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の場合、これは、抗生物質治療が開始されるべきであるか、または継続中の抗生物質治療が修正または変更されるべきであることを示す。さらに、患者は、厳密な医学的管理および潜在的に追加の治療措置を必要とする高リスク患者であると判定され得る。一方で、該試料中のproADMまたはその断片のレベルが1nmol/Lを下回る、好ましくは1.2nmol/Lを下回る、より好ましくは1.27nmol/Lを下回る場合、これは、患者が、抗生物質治療、厳密な医学的管理を必要とする高リスク感染病患者ではないことを示す場合がある。患者は、医学的管理を必要とするさらなる措置を伴わずに回復する可能性があり、医療機関から退院する可能性がある。
【0055】
本発明の方法の好ましい実施形態では、抗生物質治療は、例えば、臓器療法、補酸素、静脈内液体、コルチコステロイド、昇圧剤、機械的換気、非侵襲的換気、腎代替療法、または連続的陽性気道圧(CPAP)などの1つ以上の医療または療法措置と組み合わせて投与される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、患者は、陽性血液培養、肺感染症、上気道感染症、尿路感染症、骨格または関節感染症、皮膚感染症、軟組織感染症、CNS感染症、腹部感染症、または原因不明の感染症と関連し得る、全身感染症を疑われるか、またはそれを有する。
【0057】
本発明の方法が、該患者からの試料中でPCTまたはその一以上の断片のレベルを追加的に判定することを含む場合、有利である。
【0058】
PCTは、敗血症などの感染病用のマーカーであると考えられている。したがって、低PCT値は、感染症または敗血症の非存在を示すとみなされ、抗生物質治療を必要としない場合がある。ただし、本明細書で開示されるように、感染を有する患者の平均PCTを下回る場合がある、および/または定義されたカットオフ値を下回る場合がある低PCT値にもかかわらず、定義されたカットオフ値であり得る対照値、または関連する参照群におけるproADMまたはその断片の平均値よりも高いなど、proADMまたはその断片のレベルが上昇している場合、患者は、抗生物質療法の開始または変更がまだ必要であるということが明らかになった。したがって、治療する医師または他の医療従事者は、PCT単独に基づいて抗生物質治療の開始または変更が必要であると識別されなかったであろう、そのような患者の抗生物質治療を調節することができる。PCTレベルが低い場合でも、proADMまたはその断片のレベルが、抗生物質治療の開始または変更の必要性と相関し得ることは、まったく驚くべきことであった。
【0059】
本発明の方法の文脈において、proADMまたはその一以上の断片のレベルと同じ試料中のPCTまたはその一以上の断片のレベルを判定することは、特に好ましい。この実施形態では、両方のバイオマーカー、PCTおよびproADMは、多重アッセイ形式で同時に、または多重アッセイ形式もしくは単一アッセイ形式で異なる時点で同じ試料中で判定され得る。多重アッセイは、両方のマーカーを判定するための二重アッセイであり得、アッセイは、患者が遭遇される同じ場所で試料単離直後に行われ得るポイントオブケアアッセイであってもよい。
【0060】
proADMおよびPCTの評価を含むいくつかの実施形態では、両方の値は、抗生物質治療の開始または変更に関する治療決定を下すために、各マーカーの実質的に単一の測定、および/または単一の試料中の複数の測定、および/または実質的に同じ時点で得られた複数の試料中で評価されてもよい。本発明まで、PCTと組み合わせたproADMが、単一の時点で両方のバイオマーカーレベルの評価を介して療法の指導を提供することができることは知られていなかった。これは、療法の決定が行われ得る前に変化を観察するために複数の測定を必要とする従来技術の方法と比較して有意な利点を表す。
【0061】
本発明の方法の好ましい実施形態では、0.05ng/ml以上、好ましくは0.1ng/ml以上、より好ましくは0.12ng/ml以上のPCTまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0062】
好ましい実施形態では、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、または0.2ng/ml以上のPCTまたはその断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0063】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、proADMまたはその一以上の断片を判定するための試料、および/またはPCTまたはその一以上の断片を判定するための試料は、好ましくは血液試料、血清試料、血漿試料、および/または尿試料からなる群から選択される体液である。血液もしくは血液由来の試料または尿もしくは唾液試料などの救急診療部またはポイントオブケアユニットで単離しやすい体液が使用されることが特に好ましい。
【0064】
proADMまたはその一以上の断片を判定するための試料およびPCTまたはその一以上の断片を判定するための試料は、同じ試料であっても、異なる試料であってもよい。
【0065】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベル、および
-0.05ng/mlを下回る、好ましくは0.1ng/mlを下回る、より好ましくは0.12ng/mlを下回るPCTまたはその一以上の断片のレベルは、
-抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0066】
上記の実施形態は、従来技術の方法と比較して驚くべきかつ予期せぬ利点を表す。PCTレベルが、0.05ng/mlを下回る、好ましくは0.1ng/mlを下回る、より好ましくは0.12ng/mlを下回るなどの比較的低いままであるが、例えば試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルが、1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上であるときなど、ADMレベルが上昇した患者には、抗生物質治療の変更または開始が必要であるということは、当技術分野において以前に示唆されていない。典型的には、開業医は、リスクの増加が明らかであり、療法の変更が必要な場合、両方のバイオマーカーが一緒に上昇することを期待するであろう。この期待に反して、本発明は、PCTは、低いままであるがproADMが高い場合、PCTとproADMとを組み合わせた測定に基づく療法の決定を可能にする。これは、効果的かつ早期の療法の決定を下すことができる新規の患者群を表す。いくつかの実施形態では、これらの療法の決定は、本質的に単一の時点で、および/または単一の試料からこれらのバイオマーカーを評価した後に下すことができる。
【0067】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベル、および
-0.05ng/ml以上、好ましくは0.1ng/ml以上、より好ましくは0.12ng/ml以上のPCTまたはその一以上の断片のレベルは、
-抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0068】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、
-1nmol/Lを下回る、好ましくは1.2nmol/Lを下回る、より好ましくは1.27nmol/Lを下回る試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベル、および
-0.05ng/ml以上、好ましくは0.1ng/ml以上、より好ましくは0.12ng/ml以上のPCTまたはその一以上の断片のレベルは、
-抗生物質治療の開始または変更が必要であることを示す。
【0069】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、
-1nmol/L以上、好ましくは1.1nmol/L以上、より好ましくは1.2nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、次の48時間以内の重症敗血症の発症を示す。
【0070】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、
-1.2nmol/L以上、好ましくは1.5nmol/L以上、より好ましくは1.78nmol/L以上の試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルは、陽性細菌培養を示す。
【0071】
本発明の方法の文脈において、該患者が疑われた感染症の抗生物質治療をまだ受けていない場合、好ましい。
【0072】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、該患者は、抗生物質治療を受けており、抗生物質治療の変更は、抗生物質治療の投与経路の変更を含むか、またはそれからなる。好ましくは、患者は、局所または経口抗生物質治療を受けている。さらに、抗生物質治療の変更後の投与経路は、好ましくは、抗生物質の静脈内適用である。
【0073】
この実施形態は、本発明の驚くべきかつ有益な態様を表し、それによって、好ましくは単一の試料および/または単一の時点でのproADM測定を通じて、例えば抗生物質を静脈内投与することによって抗生物質療法が強化され得、それによって、長期間の観察を必要とせずに、またはリスクを発生させずに、早期時点での療法の有効な向上を可能にする。proADMレベルを評価し、例えば、単一のマーカー値に基づく静脈内療法を推進することの実践者にとっての実用的な利点は、顕著である。逆に、本明細書に記載されるように、例えば、より低いレベルのADMを判定することによって、強化療法がいつ必要でないかを判定することができることは、よりコスト集約的かつ困難な手順を回避する有効な手段を表す。
【0074】
本発明のさらに好ましい実施形態では、抗生物質治療の変更は、継続中の抗生物質治療の投与経路の変更を含む。
【0075】
本発明のさらに好ましい実施形態では、抗生物質治療の変更は、継続中の抗生物質治療の投与経路の変更からなる。
【0076】
本発明の方法は、好ましくは、年齢、性別、共存症、および/または臓器機能不全などの1つ以上の危険因子を追加的に判定することを含む。
【0077】
好ましくは、本発明は、好ましくは、心血管疾患、心房細動、粗動、うっ血性心不全、COPD、喘息、肺線維症、石綿症、肺疾患、免疫不全、糖尿病、腎疾患、高血圧、脳卒中、一過性虚血性発作(TIA)、認知症、貧血、血栓症、リウマチ性疾患、神経筋肉疾患、悪性腫瘍、または癌を含む群から好ましく選択される1つ以上の共存症を追加的に判定することを含む。
【0078】
本発明の方法の文脈において判定される可能性がある好ましい臓器機能不全は、神経機能不全、心血管機能不全、呼吸機能不全、腎機能不全、肝機能不全、血液機能不全、および/または代謝性アシドーシスのうちの1つ以上に関するが、これらに限定されない。
【0079】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、
-該患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくはその一以上の断片のレベルを判定すること、および/または
-少なくとも1つの臨床スコアを判定すること、を追加的に含み、
-少なくとも1つの追加のバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの臨床スコアのレベル、ならびにproADMまたはその一以上の断片、好ましくはPCTまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す。
【0080】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明の方法は、
-該患者からの試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーまたはその一以上の断片のレベルを判定することであって、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、好ましくは乳酸塩および/もしくはC-反応性タンパク質である、判定すること、ならびに/または
-少なくとも1つの臨床スコアを判定することであって、少なくとも1つの臨床スコアは、好ましくはSOFAおよび/もしくはqSOFAである、判定すること、を追加的に含み、
-少なくとも1つの追加のバイオマーカーおよび/または少なくとも1つの臨床スコアのレベル、ならびにproADMまたはその一以上の断片のレベルは、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す。
【0081】
本明細書に記載される方法のさらなる実施形態では、本方法は、感染症を検出するための該患者からの試料の分子分析を追加的に含む。感染症を検出するための分子分析に使用される試料は、好ましくは血液試料である。好ましい実施形態では、分子分析は、病原体に由来する1つ以上の生体分子を検出することを目的とする方法である。該1つ以上の生体分子は、核酸、タンパク質、糖、炭水化物、脂質、および/またはそれらの組み合わせ、例えばグリコシル化タンパク質、好ましくは核酸であってもよい。該生体分子は、好ましくは、1つ以上の病原体(複数可)に特異的である。好ましい実施形態によれば、そのような生体分子は、PCR、qPCR、RT-PCR、qRT-PCR、または温増幅などの核酸増幅方法、質量分析、酵素活性の検出、および免疫アッセイに基づく検出方法を含む群から選択される、生体分子の分析のための1つ以上の方法によって検出される。分子分析のさらなる方法は、当業者に知られており、本発明の方法によって含まれる。
【0082】
本発明はさらに、感染症を有する疑いがある患者の治療に使用するための1つ以上の抗生物質剤を含む医薬組成物に関し、患者は、該患者から得られた試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルにより、抗生物質治療の開始または変更を必要とすると本発明の方法によって識別された後に、該組成物を投与される。
【0083】
好ましくは、本発明の投与医薬組成物は、該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定した後180分以内、好ましくは120分以内、より好ましくは60分以内、または直後に開始される。
【0084】
本発明の医薬組成物の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、患者に、繰り返し、かつ一定の治療期間にわたって投与される。例えば、抗生物質治療は、数時間、数日、または数週間継続してもよく、抗生物質は、例えば静脈内注入によって継続的に、または例えば、経口投与もしくは注射もしくは局所適用によって繰り返し投与されてもよく、投与の間隔は、患者の状態、ならびに/または投与される抗生物質剤(複数可)および製剤に応じて、1時間以上、数日以上、または数週間以上の間で変化してもよい。
【0085】
さらに、proADMおよび/またはその一以上の断片、ならびに優先的にPCTおよび/またはその一以上の断片は、本発明の組成物での治療期間中に1回以上判定される。proADMおよび/またはその一以上の断片、ならびに優先的にPCTおよび/または断片)は、治療の成功および/または疾患進行を監視するために、本発明の医薬組成物での治療中に判定されてもよい。
【0086】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、例えば、共存症の治療または抗生物質治療とは異なる症状の治療などの他の治療と組み合わせて投与される。特に、本発明の医薬組成物は、局部感染症皮膚感染症、尿路感染症などの対症療法と組み合わせて、または炎症事象の対症療法と組み合わせて投与される。
【0087】
好ましくは、患者は、本発明の組成物の静脈内投与を受ける。代替として、患者は、1つ以上の組成物の静脈内投与および経口投与を受けてもよい。
【0088】
本発明はさらに、本発明の方法を実施するためのキットに関し、
-対象からの試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定するため、および任意に追加的に、PCTまたはその一以上の断片のレベルを判定するための検出試薬と、
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/L以上、より好ましくは1.27nmol/L以上の該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルに対応する、参照レベルなどの参照データであって、好ましくはコンピュータ可読媒体に保存され、および/またはproADMもしくはその一以上の断片の判定されたレベル、ならびに任意に追加的に、PCTもしくはその一以上の断片の判定されたレベルを該参照データと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、参照データと、を含む。
【0089】
proADMまたはその一以上の断片のレベルを判定するため、および任意にPCTまたはその一以上の断片のレベルを判定するための検出試薬は、好ましくは、本方法を実施するのに必要なもの、例えばproADMを対象にする抗体、蛍光標識などの好適な標識、好ましくはKRYPTORアッセイでの用途に好適な2つの別個の蛍光標識、試料収集チューブから選択される。
【0090】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、proADMまたはその一以上の断片および任意にPCTまたはその一以上の断片のレベルは、質量分析法(MS)、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式、レアクリプテートアッセイ、ならびに自動システム/分析器からなる群から選択される方法を使用して判定される。
【0091】
proADMもしくはその一以上の断片、および任意にPCTもしくはその一以上の断片および/または他のバイオマーカーのレベルの判定は、proADMもしくはその一以上の断片およびPCTもしくはその一以上の断片などの本発明の別のバイオマーカーを判定するための多重または二重アッセイにおいて、本発明のキットの検出試薬を使用して実施されてもよい。
【0092】
それはまた、好ましくは、例えば救急診療部またはプライマリケアユニットなど、患者が医療従事者に遭遇する場所で直接実施され得るポイントオブケアアッセイとして判定されてもよい。さらに、proADMもしくはその一以上の断片、および任意にPCTもしくはその一以上の断片、および/または他のバイオマーカーの検出のためのアッセイは、アッセイ、好ましくは二重アッセイおよび/または自動もしくは半自動ポイントオブケアアッセイであってもよい。
【0093】
本発明による方法は、均一な方法としてさらに具体化され得、検出されるべき抗体/複数の抗体およびマーカー、例えば、proADMまたはその断片によって形成されるサンドイッチ錯体は、液相中で懸濁状態のままである。この場合、2つの抗体が使用されるとき、両方の抗体が検出系の部分で標識され、それが、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合される場合にシグナルの発生またはシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。
【0094】
そのような技術は、特に蛍光増強または蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882733A、EP-B10180492、またはEP-B10539477、およびそれらで引用された従来技術に記載されているものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識成分を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。
【0095】
例えば、そのような技術は、上記で引用された出願の教示を実践する、商標名TRACE(登録商標)(時間分解増幅クリプテート放出(Time Resolved Amplified Cryptate Emission))またはKRYPTOR(登録商標)の下で提供されている。したがって、特に好ましい態様では、本明細書で提供される方法を実施するために診断装置が使用される。例えば、proADMタンパク質もしくはその断片のレベル、および/または本明細書で提供される方法の任意のさらなるマーカーのレベルが判定される。特に好ましい態様において、診断装置は、KRYPTOR(登録商標)である。
【0096】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、本方法は、イムノアッセイであり、このアッセイは、均一相または不均一相で実行され、自動システムで稼働され得る。
【0097】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、第1の抗体および第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在し、蛍光または化学発光消光または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分は、第1の抗体に結合され、該標識系の第2の標識成分は、第2の抗体に結合され、これにより、検出されるべき両方の抗体の該proADMまたはその断片への結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ錯体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。
【0098】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、標識系は、特にシアニン型の蛍光色素または化学発光色素と組み合わせたレアアースクリプテートまたはキレートを含む。
【0099】
本明細書に記載される方法の一実施形態では、本方法は、proADMまたはその一以上の断片の判定されたレベルを、感染症を有する疑いがあるか、または敗血症の症状を示す患者におけるproADMまたはその断片に対応する参照レベル、閾値、および/または集団平均と比較することを追加的に含み、該比較は、コンピュータ実行可能コードを使用してコンピュータプロセッサで実施される。
【0100】
本発明の方法は、部分的にコンピュータで実践されてもよい。例えば、マーカー、例えばproADMまたはその断片の検出されたレベルを参照レベルと比較するステップは、コンピュータシステムで実行され得る。コンピュータシステムでは、診断、予後診断、リスク評価、および/またはリスク層別化の指標であるスコアを計算するために、マーカー(複数可)の判定されたレベルは、他のマーカーレベルおよび/または対象のパラメータと組み合わされ得る。例えば、判定された値は、コンピュータシステムに入力されてもよい(医療専門家によって手動、またはそれぞれのマーカーレベル(複数可)が判定された装置(複数可)から自動のいずれかで)。コンピュータシステムは、ポイントオブケア(例えば、プライマリケアユニットまたはED)に直接あってもよく、またはコンピュータネットワークを介して(例えば、インターネット、または任意に、他のITシステムまたは病院情報システム(HIS)などのプラットフォームと組み合わせ可能な専門の医療クラウドシステムを介して)接続された遠隔地にあり得る。典型的には、コンピュータシステムは、コンピュータ可読媒体上に値(例えば、マーカーレベル、または年齢、血圧、体重、性別などのパラメータ、またはSOFA、qSOFA、BMIなどの臨床評点システム)を保存し、予め定義された、および/または予め保存された参照レベルまたは参照値に基づいてスコアを計算する。得られたスコアは、ユーザ(典型的には、医師などの医療専門家)のために表示および/または印刷される。代替として、または加えて、関連する予後診断、診断、評価、治療指導、患者管理指導、または層別化は、ユーザ(典型的には、医師などの医療専門家)のために表示および/または印刷される。
【0101】
本発明の一実施形態では、好ましくは、電子健康記録(EHR)からのデータを使用して敗血症、重症敗血症、および敗血症性ショックのリスクがある入院患者を識別するために、機械学習アルゴリズムが明らかであるソフトウェアシステムが用いられ得る。機械学習手法は、患者からのEHRデータ(ラボ、バイオマーカーの発現、バイタル、および人口統計など)を使用して、ランダムフォレスト分類器で訓練され得る。機械学習は、より単純なルールベースのシステムとは異なり、明示的にプログラムされなくても、コンピュータにデータの複雑なパターンを学習する能力を提供する人工知能の一種である。以前の研究では、電子健康記録データを使用して、アラートを誘発して、一般的な臨床的悪化を検出していた。本発明の一実施形態では、proADMレベルの処理は、既存のデータセットとの比較のために適切なソフトウェアに組み込まれてもよく、例えば、proADMレベルはまた、有害事象の発生の診断または予後診断を支援する機械学習ソフトウェアで処理されてもよい。
【0102】
PCTまたはCRPまたは乳酸塩などの別のバイオマーカーと組み合わせたproADMまたはその断片の組み合わされた採用は、単一の多重アッセイで、または患者からの試料上で行われる2つの別個のアッセイのいずれかで実現されてもよい。試料は、同じ試料に、または異なる試料に関してもよい。proADM、および例えばPCTの検出および判定に用いられるアッセイはまた、同じであっても、異なっていてもよく、例えば、上記のマーカーのうちの1つの判定のために、イムノアッセイが用いられてもよい。好適なアッセイのより詳細な説明を以下に提供する。
【0103】
感染症を有する疑いがある患者におけるproADMまたはその断片のカットオフ値および他の参照レベルは、先述の方法によって判定されてもよい。例えば、基準値および/またはカットオフを確立するために定量アッセイの変動性を評価する際の変動係数を使用するための方法(George F.Reed et al.,Clin Diagn Lab Immunol.2002;9(6):1235-1239)が、当業者に知られている。
【0104】
さらに、確立された技法に従って基準レベルまたはカットオフとして使用するための統計的に有意な値を示すために、機能アッセイの感度が判定され得る。実験室は、臨床的に関連するプロトコルによってアッセイの機能的感度を単独で確立する能力がある。「機能的感度」は、変動係数(CV)が20%(またはいくつかの他の所定のCV%)になる濃度とみなされ得、したがってそれは、低検体レベルでのアッセイの精度の尺度である。したがって、CVは、標準偏差(SD)の標準化であり、それにより、検体濃度の大きさに関係なく、少なくともアッセイの動作範囲の大部分で変動推定値を比較することができる。
【0105】
さらに、ROC分析に基づく方法を使用して、2つの臨床患者群間の統計的有意差を判定することができる。受信者動作特性(ROC)曲線は、モデルの適合確率の並べ替え効率を測定して、応答レベルを並べ替える。ROC曲線は、診断テストでの基準点の設定にも役立ち得る。対角線からの曲線が高いほど、適合度は、高くなる。ロジスティック適合度に2つ以上の応答レベルがある場合、一般化されたROC曲線が作成される。そのようなプロットには、各応答レベルの曲線があり、これは、すべての他のレベルに対するそのレベルのROC曲線である。例えば、SASのJMP12、JMP13、Statistical Discoveryなど、好適な参照レベルおよびカットオフを確立するために、この種類の分析を可能にする能力があるソフトウェアが利用可能である。
【0106】
カットオフ値が同様にPCTに関して判定されてもよい。適切なカットオフを判定するための文献、例えば、0.1ng/mLのカットオフで、PCTが感染を除外する非常に高い感度を有することを記載しているPhilipp Schuetz et al.(BMC Medicine.201 1;9:107)が、当業者に利用可能である。Terence Chan et al.(Expert Rev.Mol.Diagn.201 1;1 1(5),487.496)は、感度および特異性に基づいて計算される正および負の可能性比などの指標も、診断テストの強度を評価するために有用であると記載している。値は、一般に、複数のカットオフ値(CV)について受信者動作特性曲線としてグラフ化される。曲線下面積を使用して、最も診断上関連するCVを判定する。この文献は、CV(アッセイおよび研究デザインに依存するカットオフ値)の変動、およびカットオフ値を判定するための好適な方法について記載している。
【0107】
proADMまたはその断片の集団平均レベルはまた、参照値、例えば平均proADM集団値として使用されてもよく、それにより、敗血症の症状を示す感染症を有する疑いがある患者が、好ましくは10、20、30、40、50、またはそれ以上の対象を含む対照集団と比較されてもよい。
【0108】
本発明の一実施形態では、PCTのカットオフレベルは、例えば、BRAHMS PCT-Kryptorアッセイ、または自動システム、例えば、RocheによるCobasシステム、もしくはBioMerieuxによるVidasシステム、もしくはAbbottによるArchitectシステムを使用するとき、血清試料中で0.01~10.00ng/mlの範囲の値であってもよい。好ましい実施形態では、PCTのカットオフレベルは、0.01~100、0.05~50、0.1~20、または0.1~2ng/mL、最も好ましくは>0.05~0.5ng/mLの範囲であってもよい。これらの範囲内の任意の値は、適切なカットオフ値とみなされてもよい。例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100ng/mLが用いられてもよい。いくつかの実施形態では、健康な対象のPCTレベルは、約0.05ng/mLである。
【0109】
本明細書に開示される本発明の方法のすべての好ましい実施形態および利点は、本発明の医薬組成物およびキットにも適用される。これはまた、本発明の医薬組成物およびキットの好ましい実施形態および利点に関して逆に適用される。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明は、感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法に関する。本明細書に提示されるデータから明らかなように、抗生物質治療の開始および変更は、抗生物質治療の潜在的な開始および変更に関する情報を提供するproADMまたはその一以上の断片のレベルによって示される。
【0111】
本発明の別の実施形態では、抗生物質治療の開始、変更または停止の決定は、28日間死亡率を予測し、48時間以内の重症敗血症発症を予測し、陽性細菌培養(血液培養)を予測するためのproADMまたはその一以上の断片の定量化によって支持され得る。
【0112】
本発明は、従来の方法に対して、本発明の方法およびキットが感染症を有する疑いがある患者の療法の指導、層別化、および/または制御のために高速で、客観的で、使いやすく、かつ正確であるという利点を有する。proADM、PCT、乳酸塩、C-反応性タンパク質、SOFA、qSOFA、APACHE II、SAPS IIのレベルが、定期的に得られた血液試料、または対象から得られたさらなる生体液もしくは試料中で判定され得るため、本発明の方法およびキットは、病院での常法で容易に測定可能であるマーカーおよび臨床スコアに関する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」は、脊椎動物であってもよい。本発明の文脈において、「対象」という用語は、ヒトおよび動物の両方、特に哺乳動物、および他の生物を含む。
【0114】
本発明の文脈において、「患者の健康における有害事象」は、合併症または患者の健康状態の悪化を示す事象に関する。そのような有害事象には、患者の死、診断および治療開始後28~90日以内の患者の死、感染症または新たな感染症の発生、臓器不全、ならびに低血圧または高血圧、頻脈または徐脈などの患者の一般臨床徴候または症状の悪化が含まれるが、これらに限定されない。さらに、有害事象の例には、臨床症状の悪化が、病巣洗浄処置、血液製剤の注輸、コロイドの注入、侵襲的機械的換気、非侵襲的機械的換気、緊急手術、腎または肝代替などの臓器代替療法、および昇圧剤療法などの療法措置の必要性を示す状況が含まれる。
【0115】
本明細書で使用される場合、プライマリケアユニットは、医師の診療または医療センターであり、ここで、日常的なプライマリヘルスケアが、医療供給者によって患者に与えられてもよい。典型的には、供給者は、医療システム内の患者の継続的ケアの最初の接触および主点として機能し、患者が必要とし得る他の専門的ケアを調整する。患者は一般的に、プライマリケア医師(例えば、一般開業医または家庭医)、看護師(成人血液内科看護師、家庭看護師、または小児科看護師など)、または医師助手などの専門家からプライマリケアを受ける。そのような専門家はまた、登録看護師、薬剤師、臨床担当者であってもよい。
【0116】
本発明の文脈において、事故および救急診療部、救急室(ER)、救急病棟(EW)、または救急外来としても知られる救急診療部(ED)は、救急医療を専門とする医療施設であり、これには、自らの手段または救急車の手段のいずれかによって事前の予約なしに現れた患者の急性ケアに関与する。救急診療部は通常、病院や他のプライマリケアセンターで見られる。
【0117】
本明細書で使用される場合、本発明の文脈における「診断」は、感染病に関連する対象の臨床状態の認識および(早期)検出に関する。感染病の重症度の評価もまた、「診断」という用語によって包含されてもよい。
【0118】
「予後診断」は、感染病に基づく対象の転帰または特定のリスクの予測に関する。これはまた、該対象についての回復の見込みまたは有害な転帰の見込みの推定を含んでもよい。
【0119】
本発明の方法はまた、監視をするために使用されてもよい。「監視」は、例えば、疾患の進行、または重篤な患者の疾患もしくは患者の感染症の疾患進行に対する特定の治療もしくは療法の影響を分析するための、診断済みの感染症、障害、合併症、またはリスクの追跡に関する。
【0120】
本発明の文脈における「療法の監視」または「療法の制御」という用語は、例えば、療法の有効性に関するフィードバックを得ることによる、該対象の療法的治療の監視および/または調整を指す。
【0121】
本発明において、用語「リスク評価」および「リスク層別化」および「療法的層別化」という用語は、対象を、それらのさらなる予後診断に従って、異なるリスク群にグループ化することに関する。リスク評価はまた、予防的および/または療法措置を適用するための層別化に関する。特に「療法的層別化」という用語は、患者を、患者の分類に応じてある特定の差異的療法措置を受けるリスク群または療法群などの異なる群にグループ化または分類することに関する。「療法的層別化」という用語はまた、感染症を有する、または感染病の症状を有する患者を、ある特定の療法措置を受ける必要のない群にグループ化または分類することに関する。
【0122】
本明細書で使用される場合、「療法の指導」は、1つ以上のバイオマーカーの値および/または臨床パラメータおよび/または臨床スコアに基づくある特定の療法または医学的介入の適用を指す。
【0123】
本発明の文脈において、「proADMまたはその一以上の断片のレベルを判定すること」などは、proADMまたはその断片を判定する任意の手段を指すということが理解される。断片は、それがproADMまたはその断片のレベルの明らかな判定を可能にする限り、任意の長さ、例えば少なくとも約5、10、20、30、40、50、または100個のアミノ酸を有することができる。本発明の好ましい態様では、「proADMのレベルを判定すること」は、中部領域プロアドレノメジュリン(MR-proADM)のレベルを判定することを指す。MR-proADMは、proADMの断片および/または領域である。
【0124】
ペプチドアドレノメジュリン(ADM)は、52個のアミノ酸を含む血圧降下ペプチドとして発見され、それは、ヒト褐色細胞腫から単離された(Kitamura et al.,1993)。アドレノメジュリン(ADM)は、185個のアミノ酸を含む前駆体ペプチド(「プレプロアドレノメジュリン」または「pre proADM」)としてコードされる。ADMの例示的なアミノ酸配列は、配列番号1に示される。
【0125】
〔配列表1〕
【0126】
ADMは、pre-proADMアミノ酸配列の95~146位を含み、そのスプライス生成物である。「プロアドレノメジュリン」(「proADM」)は、シグナル配列を有さないpre-proADM(アミノ酸1~21)、すなわちpre-proADMのアミノ酸残基22~185を指す。
【0127】
「中間領域プロアドレノメジュリン」(「MR-proADM」)は、pre-proADMのアミノ酸45~95を指す。MR-proADMの例示的なアミノ酸配列は、配列番号2に示される。
【0128】
〔配列表2〕
【0129】
Pre-proADMまたはMR-proADMのペプチドおよびその断片が本明細書に記載される方法に使用され得ることも本明細書で想定される。例えば、ペプチドまたはその断片は、pre-proADMのアミノ酸22~41(PAMPペプチド)またはpre-proADMのアミノ酸95~146(バイオADMとしても知られる、生物学的に活性な形態を含む成熟アドレノメジュリン)を含むことができる。proADMのC-末端断片(pre proADMのアミノ酸153~185)は、アドレノテンシンと呼ばれる。proADMペプチドの断片またはMR-proADMの断片は、例えば、少なくとも約5、10、20、30、またはそれ以上のアミノ酸を含むことができる。したがって、proADMの断片は、例えば、MR-proADM、PAMP、アドレノテンシン、および成熟アドレノメジュリンからなる群から選択されてもよく、好ましくは本明細書では断片は、MR-proADMである。
【0130】
これらの様々な形態のADMまたはproADMおよびその断片の判定はまた、例えば、抗体もしくは分子の特定の部分に対する他の親和性試薬を用いることにより、または質量分析を使用してタンパク質の一部を測定することによって分子の存在および/もしくは量を判定することにより、これらの分子の特定のサブ領域の測定および/または検出を包含する。
【0131】
本発明の方法およびキットはまた、proADMまたはその断片に加えて、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー、マーカー、臨床スコア、および/またはパラメータを判定することを含むことができる。
【0132】
本明細書で使用される場合、パラメータは、特定のシステムを定義するのを補助することができる特性、特徴、または測定可能な要因である。パラメータは、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは臓器機能不全(複数可)などの健康および生理学に関連する評価にとって重要な要素である。さらに、パラメータは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または療法的介入に対する薬理学的反応の指標として客観的に測定および評価される特性として定義される。例示的なパラメータは、急性生理学および長期的健康評価II(APACHE II)、簡易急性生理学スコア(SAPSIIスコア)、クイック連続的臓器不全評価スコア(qSOFA)、連続的臓器不全評価スコア(SOFAスコア)、肥満度指数、体重、年齢、性別、IGS II、水分摂取量、白血球数、ナトリウム、カリウム、体温、血圧、ドーパミン、ビリルビン、呼吸数、酸素分圧、世界脳神経外科連合(WFNS)評価、ならびにグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)からなる群から選択され得る。
【0133】
本明細書で使用される場合、「マーカー」、「代理」、「予後診断マーカー」、「因子」、または「バイオマーカー」もしくは「生物学的マーカー」などの用語は、互換的に使用され、疾患/障害/臨床状態リスク、好ましくは有害事象などの健康および生理学に関連する評価の指標として機能する測定可能かつ定量化可能な生物学的マーカー(例えば、特定のタンパク質もしくは酵素濃度またはその断片、特定のホルモン濃度もしくはその断片、または生物学的物質もしくはその断片の存在)に関する。マーカーまたはバイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定および評価され得る特性として定義される。バイオマーカーは、試料中で(血液、血漿、尿、または組織検査として)測定されてもよい。
【0134】
該対象の少なくとも1つのさらなるマーカーおよび/またはパラメータは、該試料中の乳酸塩のレベル、該試料中のプロカルシトニン(PCT)のレベル、該対象の連続的臓器不全評価スコア(SOFAスコア)、該対象の簡易急性生理学スコア(SAPSII)、該対象の急性生理学および慢性健康評価II(APACHE II)スコアならびに可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)、ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4、カルシトニン、エンドセリン-1(ET-1)、アルギニンバソプレシン(AVP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、トロポニン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C-反応性タンパク質(CRP)、膵石タンパク質(PSP)、骨髄性細胞1に発現するトリガー受容体(TREM1)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1、インターロイキン-24(IL-24)、インターロイキン-22(IL-22)、インターロイキン(IL-20)その他のIL、プレセプシン(sCD14-ST)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、アルファ-1-アンチトリプシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)、メタロプロテイナーゼ2(MMP8)、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)、マトリックスメタロプロテイナーゼ7(MMP7、胎盤成長因子(PIGF)、クロモグラニンA、S100Aタンパク質、S100Bタンパク質および腫瘍壊死因子α(TNFα)、ネオプテリン、アルファ-1-アンチトリプシン、プロアルギニンバソプレッシン(AVP、proAVP、またはコペプチン)、プロカルシトニン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、pro-ANP)、エンドセリン-1、E-セレクチン、ICAM-1、VCAM-1、IP-10、CCL1/TCA3、CCL11、CCL12/MCP-5、CCL13/MCP-4、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17/TARC、CCL18、CCL19、CCL2/MCP-1、CCL20、CCL21、CCL22/MDC、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL3L3、CCL4、CCL4L1/LAG-1、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CX3CL1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL16、CXCL17、CXCL2/MIP-2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCUVPpbp、CXCL9、IL8/CXCL8、XCL1、XCL2、FAM19A1、FAM19A2、FAM19A3、FAM19A4、FAM19A5、CLCF1、CNTF、IL11、IL31、IL6、レプチン、LIF、OSM、IFNA1、IFNA10、IFNA13、IFNA14、IFNA2、IFNA4、IFNA7、IFNB1、IFNE、IFNG、IFNZ、IFNA8、IFNA5/IFNaG、IFNco/IFNW1、BAFF、4-1 BBL、TNFSF8、CD40LG、CD70、CD95L/CD178、EDA-A1、TNFSF14、LTA/TNFB、LTB、TNFa、TNFSF10、TNFSF11、TNFSF12、TNFSF13、TNFSF15、TNFSF4、IL18、IL18BP、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F3/IL1RA、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1RL2、IL1F9、IL33、またはその断片のレベルからなる群から選択され得る。
【0135】
本明細書中で使用される場合、「プロカルシトニン」または「PCT」は、プロカルシトニンペプチドのアミノ酸残基1~116、2~116、3~116またはそれらの断片に及ぶペプチドに関する。PCTは、カルシトニンホルモンのペプチド前駆体である。したがって、プロカルシトニン断片の長さは、少なくとも12個のアミノ酸、好ましくは50個のアミノ酸以上、より好ましくは110個以上のアミノ酸である。PCTは、グリコシル化、脂質化、または誘導体化などの翻訳後修飾を含んでもよい。プロカルシトニンは、カルシトニンおよびカタカルシンの前駆体である。したがって、通常の条件下では、循環中のPCTレベルは、非常に低い(<約0.05ng/mL)。
【0136】
対象の試料中のPCTのレベルは、本明細書に記載されるようにイムノアッセイによって判定され得る。本明細書で使用される場合、「プロカルシトニン」または「PCT」をエンコーディングするリボ核酸またはデオキシリボ核酸のレベルも決定され得る。例えば、Thermo Fisher Scientific/B R A H M S GmbHから得られる製品を使用することによるPCTの判定のための方法が、当業者に知られている。
【0137】
乳酸塩または乳酸は、式CH3CH(OH)COOHの有機化合物であり、血液を含む体液に発生する。乳酸塩の血液検査は、体内の酸塩基恒常性の状態を判定するために行われる。乳酸は、細胞代謝の生成物であり、細胞に十分な酸素が不足し(低酸素症)、エネルギー生産のより低い効率手段に転換しなければならないとき、または状態が乳酸塩の過剰生産またはクリアランス障害を引き起こすときに蓄積し得る。乳酸アシドーシスは、例えば、ショック、敗血症性ショック、またはうっ血性心不全などの、細胞および組織に供給される酸素の量の減少を引き起こす可能性のある状態を有する場合に細胞および組織の酸素量が不十分(低酸素症)なために起こり得、乳酸塩テストが、低酸素症および乳酸アシドーシスの重症度の検出および評価を補助するために使用され得る。
【0138】
C-反応性タンパク質(CRP)は、五量体タンパク質であり、血漿などの体液内に見られ得る。CRPレベルは、炎症に反応して上昇し得る。CRP値の測定およびチャート作成は、疾患進行または治療の有効性を判定するのに有用であることを証明することができる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「連続的臓器不全評価スコア」または「SOFAスコア」は、集中治療室(ICU)に滞在中の患者の状態を追跡するために使用される1つのスコアである。SOFAスコアは、人の臓器機能の程度または不全率を判定するための採点システムである。スコアは、6つの異なるスコアに基づき、各1つが呼吸器系、心血管系、肝臓系、凝固系、腎臓系、および神経系に関する。平均および最高のSOFAスコアの両方が、転帰の予測因子である。ICUでの最初の24~48時間のSOFAスコアの増加は、少なくとも50%~最大95%の死亡率を予測する。9未満のスコアは、33%で予測死亡率を示し、一方で、14を超えると95%に近いかまたは95%を超え得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、クイックSOFAスコア(qSOFA)は、患者の臓器機能不全または死亡リスクを示す採点システムである。スコアは、以下の3つの基準に基づく:1)精神状態の変化、2)100mmHg未満への収縮期血圧の低下、3)1分間あたり22回を超える呼吸数。これらの状態のうちの2つ以上を有する患者は、臓器機能不全を有するか、死亡するリスクがより高い。
【0141】
本明細書中で使用される場合、「APACHE II」または「急性生理学および慢性健康評価II」は、重症度分類採点システムである(Knaus et al.,1985)。それは、患者の集中治療室(ICU)への入室後24時間以内に適用され得、12個の異なる生理学的パラメータに基づいて判定されてもよい:AaD02またはPa02(Fi02に依存)、温度(直腸)、平均動脈圧、動脈のpH、心拍数、呼吸数、ナトリウム(血清)、カリウム(血清)、クレアチニン、ヘマトクリット、白血球数、およびグラスゴー・コーマ・スケール。
【0142】
本明細書で使用される場合、「SAPS II」または「簡易急性生理学スコアII」は、疾患または障害の重症度を分類するためのシステムに関する(Le Gall JR et al.,A new Simplified Acute Physiology Score(SAPS II)based on a European/North American multicenter study.JAMA.1993;270(24):2957-63.)SAPS IIスコアは、12個の生理学的変数および3個の疾患関連変数で構成されている。点数は、12個の定期的な生理学的測定、以前の健康状態に関する情報、およびICUへの入室時に得られたいくつかの情報から計算される。SAPS IIスコアはいつでも、好ましくは2日目に判定され得る。「最悪の」測定値は、最高の点数に相関する評価基準として定義される。SAPS IIスコアは、0~163点の範囲である。分類システムには、以下のパラメータが含まれる:年齢、心拍数、収縮期血圧、体温、グラスゴー・コーマ・スケール、機械的換気またはCPAP、Pa02、Fi02、尿量、血中尿素窒素、ナトリウム、カリウム、重炭酸塩、ビリルビン、白血球、慢性疾患、および入院の種類。死亡率と合計SAPS IIスコアとの間には、S字形相関がある。対象の死亡率は、29点のSAPSIIスコアで10%であり、死亡率は、40点のSAPSIIスコアで25%であり、死亡率は、52点のSAPSIIスコアで50%であり、死亡率は、64点のSAPSIIスコアで75%であり、死亡率は、77点のSAPSIIスコアで90%である(Le Gall loc.cit.)。
【0143】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、患者または対象から得られる、または単離される生体試料である。「試料」は、本明細書で使用される場合、例えば、患者などの関心対象の診断、予後診断、または評価の目的で得られた体液または組織の試料を指してもよい。好ましくは本明細書では、試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰、胸水、細胞、細胞抽出物、組織試料、組織生検、便試料などの体液の試料である。特に、試料は、血液、血漿、血清、または尿である。
【0144】
本発明の文脈における「血漿」は、遠心分離後に得られる抗凝固剤を含有する血液の実質的に無細胞の上清である。例示的な抗凝血剤としては、EDTAまたはクエン酸塩などのカルシウムイオン結合化合物、およびヘパリン酸塩またはヒルジンなどのトロンビン阻害剤が挙げられる。無細胞血漿は、抗凝固処理された血液(例えば、クエン酸塩処理された、EDTA、またはヘパリン処理された血液)を、例えば、2000~3000gで少なくとも15分間遠心分離することによって得ることができる。本発明の文脈における「血清」とは、血液を凝固させた後に収集される全血の液状画分である。凝固した血液(血餅)が遠心分離されると、血清を上清として得ることができる。
【0145】
本明細書で使用される場合、「尿」は、排尿(urination)(または排尿(micturition))と呼ばれる過程を通して腎臓によって分泌され、尿道を通して排泄される体の液体生成物である。
【0146】
本発明の文脈における「敗血症」は、感染症に対する全身性反応を指す。代替として、敗血症は、確認された感染症プロセスまたは感染症とSIRSとの組み合わせとして見られる場合がある。敗血症は、感染症および全身性炎症反応の両方の存在によって定義される臨床症候群として特徴付けられてもよい(Levy MM et al.2001 SCCM/ESICM/ACCP/ATS/SIS International Sepsis Definitions Conference.Crit Care Med.2003 Apr;31(4):1250-6)。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックを含むが、これらに限定されない。
【0147】
本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症、重度敗血症、および敗血症性ショックを含むが、これらに限定されない。重症敗血症は、臓器機能不全、低灌流異常、または敗血症誘発性低血圧に関連する敗血症を指す。低灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿症、および精神状態の急激な変化が含まれる。敗血症誘発性低血圧は、低血圧の他の原因(例えば、心原性ショック)の非存在下で、約90mmHg未満の収縮期血圧の存在またはベースラインからの約40mmHg以上のその低下によって定義される。敗血症性ショックは、低灌流異常または臓器機能不全の存在とともに、適切な輸液蘇生法にもかかわらず持続する敗血症誘発性低血圧を伴う重症敗血症として定義される(Bone et al.,CHEST101(6):1644-55,1992)。
【0148】
敗血症という用語は、代替として、感染症に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全として定義されてもよい。臨床運用の場合、臓器機能不全は、好ましくは2点以上の連続的臓器不全評価(SOFA)スコアの増加によって表わされ得、これは、10%を超える院内死亡率に関連している。敗血症性ショックは、特に重度の循環、細胞、および代謝異常が敗血症単独よりも高い死亡のリスクと関連する、敗血症のサブセットとして定義されてもよい。敗血症性ショックの患者は、血液量減少の非存在下で、65mmHg以上の平均動脈圧および2mmol/Lを超える(>18mg/dL)血清乳酸塩レベルを維持するための昇圧剤の必要性によって臨床的に識別され得る。
【0149】
本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症におけるすべての可能な段階に関する。
【0150】
「敗血症」という用語には、SEPSIS-2の定義に基づく重症敗血症または敗血症性ショックも含まれる(Bone et al.,2009)。「敗血症」という用語には、SEPSIS-3の定義内に入る対象も含まれる(Singer et al.,2016)。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症におけるすべての可能な段階に関する。
【0151】
本明細書で使用される場合、本発明の範囲内の「感染症」は、病原性もしくは潜在的に病原性の因子/病原体、生物、および/または微生物による、通常は無菌の組織または液体の侵入によって引き起こされる病理学的プロセスを意味し、好ましくは細菌、ウイルス、真菌、および/または寄生虫による感染症(複数可)に関する。したがって、感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、および/または真菌感染症であり得る。感染症は、局部または全身感染症であり得る。本発明の目的のために、ウイルス感染症は、微生物による感染症とみなされてもよい。
【0152】
さらに、感染症を患っている対象は、同時に2つ以上の感染源(複数可)を患っている可能性がある。例えば、感染症を患っている対象は、細菌感染症およびウイルス感染症を、ウイルス感染症および真菌感染症を、細菌感染症および真菌感染症を、ならびに細菌感染症、真菌感染症、およびウイルス感染症を患っている可能性があり、または重複感染、例えば、1つ以上のウイルス感染症および/もしくは1つ以上の真菌感染症に加えて、1つ以上の細菌感染症を潜在的に含む、本明細書に挙げられる感染症のうちの1つ以上を含む混合感染症を患っている可能性がある。
【0153】
本明細書で使用される場合、「感染病」は、細菌および/またはウイルスおよび/または真菌感染症に関連するすべての疾患または障害を含む。
【0154】
本発明によれば、敗血症患者などの重篤患者は、生命機能および/または臓器保護の監視に関して非常に厳密な制御を必要とする場合があり、加療中である場合がある。
【0155】
本発明の文脈において、「医療」または「治療」という用語は、抗炎症戦略、療法的抗体、si-RNA、またはDNAなどのADM拮抗薬の投与、サイトカインストームを防ぐための体外血液浄化またはアフェレーシス、透析、吸着剤を介する有害物質の除去、炎症性メディエーターの除去、血漿アフェレーシス、ビタミンCなどのビタミンの投与、抗生物質治療、輸液療法、アフェレーシス、および臓器保護のための措置を含む、様々な治療および療法戦略を含むが、これらに限定されない。
【0156】
好ましい実施形態では、「医療」または「治療」という用語は、静脈内抗生物質、経口抗生物質、または局所抗生物質などの抗生物質治療を含む。
【0157】
より好ましい実施形態では、「医療」または「治療」という用語は、静脈内に適用される抗生物質治療を含む。
【0158】
さらに、本発明の医療は、血液凝固の安定化、iNOS阻害剤、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、鎮静剤および鎮痛剤、ならびにインスリンを含むが、これらに限定されない。
【0159】
「流体管理」とは、例えば、経口、経腸、または静脈内の流体投与によって循環または臓器の活力を安定させるための、対象の流体状態および流体の投与の監視および制御を指す。これは、流体および電解質のバランスの安定化、または血液量増加もしくは血液量減少の予防もしくは修正、ならびに血液製剤の供給を含む。
【0160】
敗血症または重症感染症などの重大な病気の場合、早期診断、ならびに患者の転帰のための予後診断およびのリスク評価を有して、最適な療法および管理を見つけることが非常に重要である。治療学的手法は、非常に個性的である必要があり、症例ごとに異なる。療法的監視は、最良実践療法に必要であり、治療のタイミング、併用療法の使用、および薬物投与の最適化によって影響を受ける。誤ったまたは省略された療法または管理は、1時間ごとに死亡率が上昇する。
【0161】
本発明の文脈における「共存症」という用語は、感染症または敗血症の疑いに加えて存在するかもしれない、本発明の方法の患者の任意のさらなる病理または疾患を指す。そのような共存症には、心臓血管疾患、心房細動、粗動、うっ血性心不全、COPD、喘息、肺線維症、石綿症、肺疾患、免疫不全、糖尿病、腎臓疾患、高血圧、脳卒中、一過性虚血発作(TIA)、認知症、貧血、血栓症、リウマチ性疾患、神経筋肉疾患、悪性腫瘍、または癌が含まれてもよいが、これらに限定されない。
【0162】
本発明の医療は、抗生物質治療であってもよく、感染症が診断された場合、または感染症の症状が判定された場合、1つ以上の「抗生物質」または「抗生物質剤」が投与されてもよい。
【0163】
本発明による抗生物質または抗生物質剤はまた、診断された感染症または敗血症を治療するために使用される抗真菌または抗ウイルス化合物を潜在的に包含する。病原体を分類別に分けると、任意の所与の感染症の治療に一般的に適用される抗生物質剤は、以下のとおりである:
グラム陽性範囲:ペニシリン、(アンピシリン、アモキシシリン)、ペニシリナーゼ耐性、(ジクロキサシリン、オキサシリン)、セファロスポリン(第1世代および第2世代)、マクロライド(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、キノロン(ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン)、バンコマイシン、
スルホンアミド/トリメトプリム、クリンダマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、リネゾリド、シネルシド。
【0164】
グラム陰性範囲:広範囲ペニシリン(チカルシリン、クラブラン酸、ピペラシリン、タゾバクタム)、セファロスポリン(第2、第3、および第4世代)、アミノグリコシド、マクロライド、アジスロマイシン、キノロン(シプロフロキサシン)、モノバクタム(アゼトレオナム)、スルホンアミド/トリメトプリム、カルバペネム(イミペネム)、クロラムフェニコール。
【0165】
偽モナス範囲:シプロフロキサシン、アミノグリコシド、一部の第3世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、広範囲ペニシリン、カルバペネム。
【0166】
さらなる抗生物質としては、例えば、ベンシルペニシリン、セフォタキシム、クラキサシリン、クリンダマイシン、アミノグリコシド、メトロニダゾール、ピペラシリン-タゾバクタム、メロペネム、イミピネム、エリストマイシン、キノロン、トリメトプリム、およびバンコマイシンが挙げられる。
【0167】
真菌治療:アリルアミン、アムホテリシンB、フルコナゾールおよび他のアゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール、エキノカンジン、フルシトシン、ソルダリン、キチンシンターゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、リポペプチド、プラジミシン、リポゾームナイスタチン、ボリコナゾール、エキノカニジン、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ポリエン。
【0168】
抗ウイルス治療:アバカビル、アシクロビル(Acyclovir)(アシクロビル(Aciclovir))、活性化カスパーゼオリゴマー化薬、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル(アゲネラーゼ)、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、シドフォビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、二本鎖RNA、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリエベル、ファムシクロビル、固定用量の組み合わせ(抗レトロウイルス)、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバシタビン、イミノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型、インターフェロンII型、インターフェロンI型、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリデ、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、モルフォリノ、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ニタゾキサニド、ヌクレオシド類似体、ノビル、オセルタミビル(タミフル)、ペグインターフェロンアルファ-2a、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤(薬理学)、ラルテグラビル、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リボザイム、リファンピシン、リマンタジン、リトナビル、RNase H、プロテアーゼ阻害剤、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、相乗的エンハンサー(抗レトロウイルス)、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、トルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ)、ジドブジン。
【0169】
さらに、抗生物質剤は、細菌感染症の治療のためのバクテリオファージを含み、合成抗微生物ペプチドまたは鉄拮抗薬/鉄キレート剤が使用され得る。また、抗VAP抗体、抗耐性クローンワクチン接種などの病原性構造に対する治療抗体または拮抗薬、インビトロプライミングまたは変調Tエフェクター細胞などの免疫細胞の投与は、敗血症患者などの重篤患者の治療選択肢を表す抗生物質剤である。感染症に対するまたは新しい感染症の予防のためのさらなる抗生物質剤/治療または療法戦略には、防腐剤、除染製品、リポソームのような抗毒性剤、衛生、創傷ケア、手術の使用が含まれる。
【0170】
先述の抗生物質剤または療法戦略のうちのいくつかを組み合わせることも可能である。
【0171】
本発明によれば、proADMおよび任意にPCT、ならびに/または他のマーカーもしくは臨床スコアは、感染症を有する疑いがある患者における療法抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のためのマーカーとして用いられる。
【0172】
当業者は、上記のproADM分子のうちのいずれか1つ、またはその断片もしくは変異体、ならびに標準的な分子生物学的実践による本発明の他のマーカーの識別、測定、判定、および/または定量化のための手段を取得または開発する能力がある。
【0173】
本発明のproADMまたはその断片のレベルならびに他のマーカーのレベルは、マーカーの濃度を確実に判定する任意のアッセイにより判定され得る。特に、質量分析法(MS)および/またはイムノアッセイが、添付の実施例に例示されているように用いられ得る。本明細書中で使用される場合、イムノアッセイは、抗体または抗体結合断片または免疫グロブリンの使用を通して、溶液中の巨大分子/ポリペプチドの存在または濃度を測定する生化学的試験である。
【0174】
本発明の文脈において使用されるproADMまたはPCTなどの他のマーカーを判定する方法が、本発明で意図される。例として、質量分析法(MS)、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、例えばイムノクロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式、レアクリプテートアッセイ、および自動システム/分析器からなる群から選択される方法が用いられてもよい。
【0175】
抗体認識に基づくproADMおよび任意に他のマーカーの判定は、本発明の好ましい実施形態である。本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明によると、抗体は、モノクローナル抗体ならびにポリクローナル抗体であってもよい。特に、少なくともproADMまたはその断片に特異的に結合する抗体が使用される。
【0176】
抗体は、対象とする分子、例えば、proADM、またはその断片に対する抗体の親和性が、対象とする分子を含有する試料に含まれる他の分子に対するよりも、少なくとも50倍高い、好ましくは100倍高い、最も好ましくは少なくとも1000倍高い場合、特異的であるとみなされる。所与の特異性を有する抗体をどのように開発し、選択するかは、該技術分野において周知である。本発明の文脈において、モノクローナル抗体が好ましい。抗体または抗体結合断片は、本明細書に定義されたマーカーまたはその断片に特異的に結合する。特に、抗体または抗体結合断片は、proADMの本明細書に定義されたペプチドに結合する。したがって、本明細書に定義されたペプチドはまた、抗体が特異的に結合するエピトープであり得る。さらに、本発明の方法およびキットでは、ADMまたはproADM、特にMR-proADMに特異的に結合する抗体または抗体結合断片が使用される。
【0177】
さらに、本発明の方法およびキットにでは、proADMまたはその断片に、および任意にPCTなどの本発明の他のマーカーに特異的に結合する抗体または抗体結合断片が使用される。例示的なイムノアッセイは、発光イムノアッセイ(LIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、化学発光および蛍光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ(EIA)、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、発光ベースのビーズアレイ、磁気ビーズベースのアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、迅速試験形式、レアクリプテートアッセイであり得る。さらに、ポイントオブケア試験および例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験形式に好適なアッセイが用いられ得る。KRYPTORアッセイなどの自動イムノアッセイもまた、意図される。
【0178】
代替として、抗体の代わりに、proADMまたはその断片を特異的および/または選択的に認識する他の捕捉分子または分子足場が、本発明の範囲に包含されてもよい。本明細書において、「捕捉分子」または「分子足場」という用語は、試料からの標的分子または対象とする分子、すなわち分析物(例えば、ADM、proADM、MR-proADM、およびPCT)を結合するために使用されてもよい分子を含む。したがって、捕捉分子は、標的分子または対象とする分子に特異的に結合するように、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存在もしくは非存在などの表面の特徴に関しても、適切に成形されなければならない。これにより、結合は、例えば、イオン、ファンデルワールス力、π-π、Σ-π、疎水性もしくは水素結合相互作用、または上記の相互作用のうちの2つ以上の組み合わせ、または捕捉分子もしくは分子足場と標的分子または対象とする分子との間の共有結合性相互作用によって媒介されてもよい。本発明の文脈において、捕捉分子または分子足場は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質からなる群から選択されてもよい。捕捉分子または分子足場は、例えば、アプタマー、DARpin(設計アンキリンリピートタンパク質)を含む。アフィマーなどが含まれる。
【0179】
本発明のある特定の態様では、本方法は、イムノアッセイであり、
a)試料を、
i.該proADMの第1のエピトープに特異的な第1の抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体と、
ii.該proADMの第2のエピトープに特異的な第2の抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体と、接触させるステップと、
b)2つの抗体またはその抗原結合断片もしくは誘導体の、該proADMへの結合を検出するステップと、を含む。
【0180】
好ましくは、抗体の一方が標識され得、他方の抗体が固相に結合し得るか、または固相に選択的に結合し得る。アッセイの特に好ましい態様では、抗体の一方が標識されるが、他方は、固相に結合されるか、または固相に選択的に結合され得るかのいずれかである。第1の抗体および第2の抗体は、液体反応混合物中に分散して存在し得、蛍光または化学発光消光または増幅に基づく標識系の一部である第1の標識成分は、第1の抗体に結合され、該標識系の第2の標識成分は、第2の抗体に結合され、これにより、検出されるべき両方の抗体の該proADMまたはその断片への結合後、測定溶液中の得られたサンドイッチ錯体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。標識系は、特にシアニン型の蛍光色素または化学発光色素と組み合わせたレアアースクリプテートまたはキレートを含み得る。
【0181】
好ましい実施形態では、本方法は、不均一サンドイッチイムノアッセイとして実施され、ここで、抗体の1つは、任意に選択された固相、例えば被覆試験管(例えば、ポリスチロール試験管、被覆管、CT)もしくはポリスチロールから成るマイクロタイタープレート上に、または磁気粒子などの粒子に固定され、それにより、他の抗体は、検出可能な標識に似ている、または標識への選択的結合を可能にする基を有し、かつそれは、形成されたサンドイッチ構造の検出に役立つ。好適な固相を使用する一時的な遅延またはその後の固定化も可能である。
【0182】
本発明による方法は、均一な方法としてさらに具体化され得、検出されるべき抗体/複数の抗体およびマーカー、proADM、またはその断片によって形成されるサンドイッチ錯体は、液相中で懸濁状態のままである。この場合、2つの抗体が使用されるとき、両方の抗体が検出系の一部で標識され、それが、両方の抗体が単一のサンドイッチに統合される場合、シグナルの発生またはシグナルの誘発をもたらすことが好ましい。そのような技術は、特に蛍光増強または蛍光消光検出方法として具体化されるべきである。特に好ましい態様は、例えば、US4882733、EP0180492、またはEP0539477、およびそれらで引用される従来技術に記載されているものなど、対で使用される検出試薬の使用に関する。このようにして、反応混合物中の単一の免疫複合体中に直接両方の標識成分を含む反応生成物のみが検出される測定が可能になる。例えば、そのような技術は、商標名TRACE(登録商標)(時間分解増幅クリプテート放出(Time Resolved Amplified Cryptate Emission))、またはKRYPTOR(登録商標)の下で提供され、上記で引用された出願の教示を実践する。したがって、特に好ましい態様では、診断装置を使用して、本明細書で提供される方法を実施するために使用される。例えば、proADMもしくはその断片のレベル、および/またはPCTなどの本明細書で提供される方法の任意のさらなるマーカーのレベルが判定される。特に好ましい態様において、診断装置は、KRYPTOR(登録商標)である。
【0183】
本発明のマーカー、例えばproADMもしくはその断片、PCTもしくはその断片、または他のマーカーのレベルはまた、質量分析(MS)に基づく方法により判定され得る。そのような方法は、該生物学的試料または該試料からのタンパク質消化物(例えば、トリプシン消化物)中の例えばproADMまたはPCTの1つ以上の修飾または未修飾断片ペプチドの存在、量、または濃度を検出することと、任意に、クロマトグラフィ法で試料を分離することと、調製され、任意に分離された試料をMS分析にかけることと、を含んでもよい。例えば、特にproADMまたはその断片の量を判定するために、選択反応監視(SRM)、多重反応監視(MRM)、または並列反応監視(PRM)質量分析がMS分析で使用されてもよい。
【0184】
本明細書において、「質量分析」または「MS」という用語は、化合物をそれらの質量によって同定するための分析技術を指す。質量分析の質量分解および質量判定能力を高めるために、試料は、MS分析の前に処理され得る。
【0185】
したがって、本発明は、免疫濃縮技術、試料調製に関する方法、および/またはクロマトグラフィ法、好ましくは液体クロマトグラフィ(LC)、より好ましくは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、もしくは超高速液体クロマトグラフィ(UHPLC)と組み合わされ得るMS検出法に関する。
【0186】
試料調製方法は、溶解、分画、ペプチドへの試料の消化、枯渇、濃縮、透析、脱塩、アルキル化、および/またはペプチド還元のための技術を含む。
【0187】
ただし、これらのステップは、任意である。分析物イオンの選択的検出は、タンデム質量分析(MS/MS)で行われてもよい。タンデム質量分析は、質量選択ステップ(本明細書で使用される場合、「質量選択」という用語は、特定のm/zまたは狭い範囲のm/zを有するイオンの単離を意味する)、続いて選択されたイオンの断片化、および得られた生成物(断片)イオンの質量分析によって特徴付けられる。
【0188】
当業者は、質量分析法によって試料中のマーカーのレベルをどのように定量化するかを知っている。例えば、相対定量化「rSRM」または絶対定量化は、上記のように用いられ得る。
【0189】
さらに、レベル(参照レベルを含む)は、対象とするタンパク質もしくはその断片の相対的定量を判定する、または絶対定量を判定する方法などの質量分析に基づく方法によって判定され得る。
【0190】
相対定量化「rSRM」は、以下によって達成されてもよい:
1.試料中で検出された所与の標的断片ペプチドからのSRM(選択反応監視)シグネチャーピーク面積を、少なくとも第2、第3、第4、またはそれ以上の生体試料中の標的断片ペプチドの同じSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の存在の増減を判定する。
2.試料中で検出された所与の標的ペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積を、異なる別個の生物学的供給源に由来する他の試料中の他のタンパク質からの断片ペプチドから生じたSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の存在の増減を判定し、ここで、ペプチド断片についての2つの試料間のSRMシグネチャーピーク面積比較は、例えば各試料中で分析されたタンパク質の量に関して正規化される。
3.ヒストンタンパク質のレベルの変化を、様々な細胞条件下で発現レベルを変化させない他のタンパク質のレベルへ正規化するために、所与の標的ペプチドに関するSRMシグネチャーピーク面積を、同じ生体試料内の異なるタンパク質に由来する他の断片ペプチドからのSRMシグネチャーピーク面積と比較することによって、標的タンパク質の存在の増減を判定する。
4.これらのアッセイは、標的タンパク質の非修飾断片ペプチドおよび修飾断片ペプチドの両方に適用され得、ここで、修飾には、リン酸化および/またはグリコシル化、アセチル化、メチル化(モノ、ジ、トリ)、シトルリン化、ユビキチン化が含まれるが、これらに限定されず、修飾ペプチドの相対レベルは、未修飾ペプチドの相対量を判定するのと同じように判定される。
【0191】
所与のペプチドの絶対定量化は、以下によって達成されてもよい:
1.個々の生体試料中の標的タンパク質からの所与の断片ペプチドに関してSRM/MRMシグネチャーピーク面積を、生体試料からのタンパク質溶解物中にスパイクさせた内部断片ペプチド標準物のSRM/MRMシグネチャーピーク面積と比較する。内部標準物は、調べられている標的タンパク質または標識された組換えタンパク質からの断片ペプチドの標識合成バージョンであってもよい。この標準物は、消化の前(組換えタンパク質にとって必須)または後に既知量で試料中にスパイクさせ、SRM/MRMシグネチャーピーク面積が、それぞれ、生体試料中の内部断片ペプチド標準および天然断片ペプチドの両方に関して判定され、両方のピーク面積の比較が後に続くことができる。これは、未修飾断片ペプチドおよび修飾断片ペプチドに適用され得、ここで、修飾は、リン酸化および/またはグリコシル化、アセチル化、メチル化(例えば、モノ、ジ、またはトリメチル化)、シトルリン化、ユビキチン化を含むが、これらに限定されず、修飾ペプチドの絶対レベルは、未修飾ペプチドの絶対レベルを判定するのと同じように判定され得る。
2.ペプチドはまた、外部較正曲線を使用して定量化され得る。正規曲線手法は、内部標準物として一定量の重いペプチド、および試料中にスパイクさせた様々な量の軽い合成ペプチドを使用する。試験試料のマトリックスと同様の代表的なマトリックスを使用して、マトリックス効果を説明するための標準曲線を構築する必要がある。その上、逆曲線法は、マトリックス中の内因性分析物の問題を回避し、ここでは、一定量の軽いペプチドを内因性分析物の上にスパイクして、内部標準物を作り出し、様々な量の重いペプチドをスパイクして、一組の濃度標準物を作り出す。正規曲線または逆曲線のいずれかと比較される試験試料は、較正曲線を作り出すために使用されたマトリックスにスパイクされた内部標準物と同じ量の標準ペプチドでスパイクされる。
【0192】
本発明はさらに、キット、キットの使用、およびそのようなキットが使用される方法に関する。本発明は、本明細書の上記および下記に提供される方法を実施するためのキットに関する。例えば本方法に関して提供される、本明細書に提供される定義はまた、本発明のキットにも適用される。特に、本発明は、療法の指導、層別化、および/または感染の疑いがある患者制御するためのキットであり、該キットは、
-対象からの試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定するため、ならびに任意に追加的に、PCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質、もしくはそれらの断片(複数可)のレベルを判定するための検出試薬と、
-1nmol/L以上、好ましくは1.2nmol/l以上、より好ましくは1.27nmol/Lの該試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベル、ならびに任意にPCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質レベルに対応する、参照レベルなどの参照データであって、該参照データが、好ましくは、コンピュータ可読媒体に保存され、および/またはproADMまたはその一以上の断片の判定されたレベル、ならびに任意に追加的に、PCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質もしくはそれらの断片(複数可)の判定されたレベルを、該参照データと比較するために構成されたコンピュータ実行可能コードの形態で用いられる、参照データと、を含む。
【0193】
本明細書で使用される場合、「参照データ」は、proADM、ならびに任意にPCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質の参照レベル(複数可)を含む。対象の試料中のproADM、ならびに任意にPCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質のレベルは、キットの参照データに含まれる参照レベルと比較され得る。参照レベルは、本明細書で上述されており、かつ添付の実施例にも例示される。参照データはまた、proADM、ならびに任意にPCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質のレベルが比較される参照試料を含み得る。参照データはまた、本発明のキットの使用方法の取扱説明書を含み得る。
【0194】
キットは、血液試料などの試料を得るのに有用なアイテムをさらに含んでもよく、例えば、キットは、容器を含んでもよく、ここで、該容器は、カニューレもしくはシリンジに該容器を取り付けるための装置を含み、血液単離に好適なシリンジであり、例えば、予め決められた量の試料を該容器に引き込むのに好適な、気圧よりも低い内圧を示し、ならびに/または洗剤、カオトロピック塩、リボヌクレアーゼ阻害剤、キレート剤、例えばイソチオシアン酸グアニジニウム、塩酸グアニジニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、RNAse阻害タンパク質、およびそれらの混合物、ならびに/またはニトロセルロース、シリカマトリックス、強磁性球体、カップ回収スピルオーバー、トレハロース、フルクトース、ラクトース、マンノース、ポリエチレングリコール、グリセロール、EDTA、TRIS、リモネン、キシレン、ベンゾイル、フェノール、鉱油、アニリン、ピロール、クエン酸塩、およびそれらの混合物を含有するフィルターシステムを追加的に含む。
【0195】
本明細書中で使用される場合、「検出試薬」などは、本明細書中に記載される、例えば、proADM、PCT、乳酸塩、および/またはC-反応性タンパク質のマーカー(複数可)を判定するために好適な試薬である。そのような例示的な検出試薬は、例えば、本明細書に記載のマーカー(複数可)のペプチドまたはエピトープに特異的に結合するリガンド、例えば抗体またはその断片である。そのようなリガンドは、上記のようにイムノアッセイで使用されてもよい。マーカー(複数可)のレベルを判定するためにイムノアッセイで用いられるさらなる試薬も、キットに含まれてもよく、本明細書において検出試薬とみなされる。検出試薬はまた、MSに基づく方法によってマーカーまたはその断片を検出するために用いられる試薬にも関連し得る。したがって、そのような検出試薬はまた、MS分析のための試料を調製するために使用される試薬、例えば酵素、化学物質、緩衝剤などであり得る。質量分析計も、検出試薬とみなされ得る。本発明による検出試薬はまた、例えば、マーカー(複数可)のレベルを判定および比較するために用いられ得る較正溶液(複数可)であり得る。
【0196】
診断試験および/または予後診断試験の感度および特異性は、試験の分析の「品質」だけに依存するのではなく、それらはまた、異常な結果を構成するものの定義にも依存する。実際には、受信者動作特性曲線(ROC曲線)は、典型的には、「正常」集団(すなわち、感染症を有さない明らかに健康な個人)、および「疾患」集団、例えば感染症を有する対象における、その相対頻度に対する変数の値をプロットすることによって計算される。いずれかの特定のマーカー(proADMのような)について、疾患/状態の有無にかかわらず対象についてのマーカーレベルの分布は、おそらく重複するであろう。そのような条件下では、試験は、正常と疾患を100%の精度で完全に区別することはなく、重複の面積は、試験が正常と疾患を区別できない場所を示す可能性がある。閾値が選択され、それより下では試験は、異常であるとみなされ、それより上では試験は、正常であるとみなされ、またはそれより下もしくは上では、試験は、特定の条件、例えば感染症を示す。ROC曲線下面積は、知覚された測定値が状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。試験結果が必ずしも正確な数を与えない場合でも、ROC曲線が使用され得る。結果をランク付けできる限り、ROC曲線を作成することができる。例えば、「疾患」試料に対する試験の結果は、程度に応じてランク付けされてもよい(例えば、1=低い、2=正常、および3=高い)。このランク付けは、「正常」集団の結果、および作成されたROC曲線と相関し得る。これらの方法は、該技術分野において周知であり、例えば、Hanley et al.1982.Radiology 143:29-36を参照されたい。好ましくは、閾値は、約0.5を超える、より好ましくは約0.7を超える、さらにより好ましくは約0.8を超える、さらにより好ましくは約0.85を超える、最も好ましくは約0.9を超えるROC曲線面積を提供するように選択される。この文脈における「約」という用語は、所与の測定値の±5%を指す。
【0197】
ROC曲線の横軸は、(1特異性)を表し、これは、偽陽性率とともに増加する。曲線の縦軸は、感度を表し、これは、真陽性率とともに増加する。したがって、選択された特定のカットオフについて、(1特異性)の値を判定することができ、対応する感度を得ることができる。ROC曲線下面積は、測定されたマーカーレベルが疾患または状態の正しい識別を可能にするであろう確率の尺度である。したがって、ROC曲線下面積は、試験の有効性を判定するために使用され得る。
【0198】
したがって、本発明は、本明細書に記載される方法によって得られた情報に基づく治療に好適な抗生物質の投与を含む。
【0199】
本発明は、対象への本発明の医薬組成物の投与を包含する。本明細書中で使用される場合、「投与」または「投与すること」は、経口投与によって組成物を導入することを含むが、これらに限定されないものとする。そのような投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1つ以上の延長期間にわたって行われ得る。単一の投与が好ましいが、場合によっては、経時的な繰り返し投与(例えば、1時間毎、1日毎、1週間毎、1ヶ月毎、1四半期毎、半年毎、または1年毎に)が必要な可能性がある。そのような投与はまた、好ましくは、混合物および薬学的に許容される担体を使用して行われる。薬学的に許容される担体は、当業者に周知である。
【0200】
投与はまた、例えば、抗生物質(複数可)が活性であるべき部位での注射、例えば、内視鏡的または微小侵襲的手段によって局部的に行われてもよい。
【0201】
本明細書に記載の組成物は、それが固体、液体、またはエアゾール形態で投与されるかどうか、およびそれが注射としてのそのような投与経路のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体を含んでもよい。本発明の組成物は、静脈内、皮膚内、動脈内、腹腔内、病変内、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸腔内、気管内、鼻腔内、硝子体内、膣内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、結膜下、膀胱内、粘膜内、心臓内、臍帯内、眼内、経口、局所、局部、吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続注入、局部灌流標的細胞を直接浸す、カテーテルを介して、洗浄を介して、クリーム中、脂質組成物(例えば、リポソーム)中、または当業者に知られているであろう他の方法もしくは任意の組み合わせ(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990)によって投与され得る。
【0202】
加えて、そのような組成物は、水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳剤、最も好ましくは水溶液または該技術分野で知られている様々な種類の固体製剤であり得る薬学的に許容される担体を含むことができる。水性担体としては、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール性/水溶液、乳剤、および懸濁液が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンガーズおよび固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、流体および栄養補給剤、リンガーのデキストロースなどの電解質補給剤、リンガーのデキストロースに基づくものなどが挙げられる。静脈内投与によく使用される液体は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,p.808,Lippincott Williams S-Wilkins(2000)で見られる。例えば、抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどの防腐剤および他の添加剤も存在してもよい。
【0203】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語またはその文法的変化形は、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つの以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群の追加を除外するものではない。この用語は、「からなる」および「から本質的になる」という用語を包含する。
【0204】
したがって、「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する」という用語は、任意のさらなる構成要素(または同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得る/してもよいということを意味する。「からなる」という用語は、さらなる構成要素(または同様に特徴、整数、ステップなど)が存在しないことを意味する。
【0205】
「から本質的になる」という用語またはその文法的変化形は、本明細書で使用される場合、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素を特定するものと解釈されるべきであるが、1つ以上の追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群の追加を除外しないが、それは、追加の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはその群が、請求されている組成物、装置、または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合のみである。
【0206】
したがって、「から本質的になる」という用語は、特定のさらなる構成要素(または同様に特徴、整数、ステップなど)が存在し得る、すなわち組成物、装置、または方法の本質的な特徴に実質的に影響を及ぼさないものを意味する。言い換えれば、「から本質的になる」という用語(本明細書では「実質的に含む」という用語と互換的に使用され得る)は、必須の構成要素(または同様に特徴、整数、ステップなど)に加えて、組成物、装置、または方法における他の構成要素の存在を可能にするが、ただし、装置または方法の本質的な特徴は、他の構成要素の存在によって実質的に影響されない。
【0207】
「方法」という用語は、化学、生物学、および生物物理学的分野の専門家に知られているか、または彼らによって知られている様式、手段、技法、および手順から容易に開発されるかのいずれかのそれらの様式、手段、技法、および手順を含むがこれらに限定されない、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術、および手順を指す。
【0208】
以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【実施例0209】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。これらは、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本明細書に記載される本発明のより大きな例示のために提供される本発明の態様の好ましい実施形態を表す。
【0210】
実施例の方法:
研究デザインおよび環境:
本研究は、スウェーデン、マルモのスコーネ大学病院の救急診療部で行われた。2013年12月から2015年2月の間に、臨床的に感染症の疑いがある成人患者が連続して予め登録された。試験対象患者基準は、担当看護師が判断した感染症の疑い、および≧2のSIRS基準であった。SIRSは、次のように定義した:体温>38℃もしくは<36℃、または過去24時間以内の自己報告の発熱/悪寒、呼吸速度>20回/分、および心拍数>90回/分。白血球数(WBC数)は、到着時の測定が不十分であるため、試験対象患者基準として使用しなかった。本研究は、スウェーデンのルンド大学の地域倫理審査委員会によって承認され(2013/635)、ヘルシンキ宣言に従って行われた。インフォームドコンセントをすべての患者またはその近親者から得た。
【0211】
データ収集およびバイオマーカー測定:
患者は、午前6時から午後6時の間に担当研究看護師によって登録し、カルテは、人口統計、共存症、および併用薬について体系的に見直した。スコーネ大学病院の臨床化学部の認定実験室によって日常検査が行われ、微生物検査および放射線検査にも留意した。さらに、補酸素、静脈内液などの支持臓器療法の必要性、ならびに昇圧剤、機械的換気療法、および腎代替療法の必要性に関する情報と同様に、救急診療部の発表から抗生物質の初回投与およびその他の治療までの時間を登録した。患者の滞在期間、ICUへの入室、28日間および全体の院内死亡率の情報も登録した。EDTA血漿試料を試料採取後2時間以内に凍結し、-80℃で保存し、分析前に解凍しなかった。PCTおよびMR-proADMは、KRYPTORプラットフォーム(Thermo Fisher Scientific、ドイツ)上で市販の二重サンドイッチイムノアッセイを使用して、すべての213試料において測定した。
【0212】
転帰の定義
各患者の臓器機能不全の有無および感染症状態は、研究医によって判定した。臓器機能不全または感染症の基準を明確に満たしていない患者について、2人の感染症専門医がデータを見直し、最終的な分類を決定した。主な転帰は、静脈内抗生物質の必要性、治療までの時間、登録から48時間以内の感染症関連臓器機能不全(重症敗血症)の発症、菌血症の存在、および原因を問わない28日間死亡率であった。
【0213】
臓器機能不全の基準は、コンセンサス基準および現在のSSCガイドライン23、24から適応した。したがって、重度敗血症は、少なくとも2つのSIRS基準を有する感染病、ならびに入院後48時間以内の低血圧、低灌注、および/または臓器不全の存在もしくは発症と定義した。敗血症性ショックは、敗血症、加えて液体蘇生または昇圧剤の投与を必要とする低血圧(収縮期血圧<90mmHg、または平均動脈圧<70mmHg)と定義した。
【0214】
統計学的分析:
28日間死亡率に関する臨床的特性の違いは、カテゴリ変数についてはχ2検定を、分布の正規性に応じて、連続変数についてはスチューデントt試験またはマンホイットニーU試験のいずれかを使用して評価した。正規分布変数および非正規分布変数を、それぞれ平均(標準偏差)および中央値[第1四分位-第3四分位]として表わした。抗生物質の必要性、菌血症の予測、重度敗血症の発症、および28日以内の死亡率の予測と各バイオマーカーおよび臨床スコアとの関連は、受信者動作特性曲線下面積(AUROC)、ロジスティック回帰分析、およびCox回帰分析を使用して評価した。ロジスティック回帰モデルは、単離におけるバイオマーカーまたはスコアのいずれかを使用して作成するか、または性別および年齢変数で調整し、オッズ比(OR)および95%信頼区間[95%Cl]として表した。両面p<0.05は、統計学的に有意であるとみなされた。すべてのデータは、統計ソフトウェアR(バージョン3.1.2)を使用して分析した。
【0215】
実施例1:患者の特性
合計213人の患者を本研究に登録し、113人(53.1%)が発現後最初の48時間以内に重度敗血症を発症し、7人(6.9%)が敗血症性ショックを呈した。総集団の平均年齢は、67.8歳であり、男女間で有意差はなかった(男性50.2%)。患者は、高血圧(42.2%)、貧血(35.4%)、冠動脈心臓病(22.3%)、慢性閉塞性肺疾患(18.4%)、および糖尿病(17.0%)の症例を含む高度の共存症を示した。感染源は、190人(89.2%)の患者において確立され得、肺感染症(N=85、39.9%)、尿路感染症(N=53、24.9%)、および軟部組織または皮膚感染症(N=21、9.9%)が最も多い。総集団における全体の28日間死亡率は、8.9%であり、203人(95.3%)の患者は、≦6点のSOFAスコアを有した。すべてのバイオマーカーおよび臨床スコアは、生存者と比較して、非生存患者において有意に高かった。非生存者はまた、重度敗血症を発症する可能性が高いか(p<0.01)、より高い数の臓器不全を有する可能性が高いか(p<0.001)、または集中治療室に入院する可能性が高かった(p<0.05)。
【0216】
28日間死亡率に関する患者の特性を表1に要約する。
【0217】
実施例2:抗生物質の必要性を評価する際の補助としてのバイオマーカーの使用
抗生物質を研究集団内の合計187人(87.8%)の患者に投与した。これらの患者のうち、164人(77.0%)を静脈内抗生物質のみで処置し、6人(2.8%)を静脈内抗生物質と経口抗生物質との混合を与え、17人(8.0%)を経口抗生物質のみで処置した。静脈内抗生物質の使用の包括的な概要は、補足表2に見ることができる。初回静脈内抗生物質治療までの時間の中央値は、93[28~160]分であり、71人(43.8%)の患者が60分以内に初回抗生物質治療を受けた。
【0218】
ロジスティック回帰分析により、MR-proADMは、両方の回帰モデルにおいて、静脈内抗生物質の必要性と最も強い関連性を有することが示された(表3)。同様の結果がPCTに対しても見られ、両方のマーカーのオッズ比は、CRPまたは乳酸塩のそれよりも大きかった。多変量モデルにおいてPCTまたはMR-proADMのいずれかを互いに追加することにより、抗生物質の必要性の予測が有意に増加した(p<0.05)。
【0219】
その後、最適なカットオフをAUROC分析に基づいてすべてのバイオマーカーについて計算し、PCTおよびMR-proADMカットオフは、それぞれ0.12ng/mlおよび1.27nmol/Lという結果となった(表4)。サブグループ分析は、これらのマーカーカットオフの組み合わせに基づいて、静脈内抗生物質の必要性の間の有意差を示した(表5)。興味深いことに、MR-proADM値が<1.27nmol/Lの患者における抗生物質投与までの時間の中央値は、139[81~209]分であり、値が≧1.27nmol/Lの患者(43[26~134]分、p<0.001)よりも有意に長かった。対照的に、PCT値について、有意差はなかった。
【0220】
最後に、26人(12.6%)の患者は、EDに入る前の48時間未満に抗生物質を処方されていたことが分かった。これは、MR-proADM性能にほとんど影響を及ぼさなかったが、抗生物質の必要性に関するPCTの予測値は、これらの患者を分析から除外して、OR[955Cl]:4.22[2.21~8.04]から5.45[2.49~11.93]に増加したことが分かった。
【0221】
実施例3:静脈内抗生物質の必要性を予測するためのPCTとMR-proADMとの組み合わせの追加された値
個々のバイオマーカー単独ならびに患者の年齢および性別を含む多変量モデルに関するロジスティック回帰分析と比較して、PCTのMR-proADM多変量モデル(年齢+性別)への追加(表6)、ならびにMR-proADMのPCT多変量モデル(年齢+性別)への追加(表7)は、静脈内抗生物質の必要性を予測することに関して、MR-proADMが、PCTがMR-proADMに追加するよりも多くの値をPCTに追加することを示した(より高い追加されたLR2の数、および有意性に対するより低いp値によって証明される)。しかしながら、両方の組み合わせは、有意であった。
【0222】
以前抗生物質治療を受けていた患者(したがって、EDに到着したときにPCT濃度を人工的に低下させた)が、個々のマーカー単独について表8に、および年齢および性別を含む多変量モデルについて表9に示されるように、分析から除外されたとき、類似性も見ることができる。PCTのMR-proADM多変量モデルへの追加(年齢+性別)(表10)およびMR-proADMのPCT多変量モデルへの追加(年齢+性別)(表11)は、両方の組み合わせが有意であることを示した。
【0223】
実施例4:菌血症の予測および重症敗血症の発症
最も一般的な病原体である、大腸菌(n=9)、黄色ブドウ球菌(n=4)、および肺炎クラブシエラ(n=4)を有する34人(16.1%)の患者において陽性血液培養を得ることができた。PCTの使用は、菌血症に対して最も強い予測値を有した(OR[95%Cl]:3.73[2.14~6.51])が、多変量モデル内では、最大予測置は、MR-proADM(OR[95%Cl]:4.24[2.31~7.76])、表12)で見ることができた。興味深いことに、PCTを含有する多変量モデルへのMR-proADMの追加は、予測値を有意に増加させることができた(p<0.05)が、PCTは、MR-proADMを含有する対応するモデルに追加しなかった。追加のAuroc分析を表13に報告する。
【0224】
同様の結果が、EDへの入院後48時間以内の重症敗血症の発症に関しても見られ、MR-proADMが最大予測値(OR[95%Cl]:5.79[3.30~10.16])を有し、PCT(OR[95%Cl]:4.33[2.58~7.27]、表14および表15)が続いた。乳酸塩およびCRPの使用は、重症敗血症発症の比較的劣る予測因子であった(それぞれ、OR[95%Cl]:2.31[1.48~3.61]および1.94[1.28~2.95])。
【0225】
実施例5:原因を問わない28日間死亡率の予測
AUROCおよびCox回帰分析は、全28日間死亡率に関して測定されるとき、MR-proADMが疾患の重症度を評価する際の最大の性能を有することを示した。MR-proADMの性能とSOFAの性能との間に有意差はなかったが、AUROC(AUROC[95%Cl]:0.86[0.79~0.92]対0.84[0.77~0.91]、表16)、単変量Cox回帰(ハザード比[95%Cl]:4.29[2.54~7.26]対3.29[2.13~5.08])、および多変量コックス回帰(ハザード比[95%Cl]:3.73[2.12~5.58]対2.77[1.76~4.37])分析におけるMR-proADMの値は一貫して高かった(表17)。
【0226】
加えて、AUROC分析は、1.73nmol/LのMR-proADMに対する最適な感度および特異性カットオフを示した。このカットオフを総患者集団に適用すると、143人(67.1%)の患者は、<1.73nmol/Lの値を有し、結果として28日間死亡率は、1.4%であることが分かったが、70人(32.9%)の患者が、>1.73nmol/Lの値を有し、対応する28死亡率は、24.3%であった(カットオフを上回る対カットオフを下回るハザード比[95%Cl]:15.0[3.2~68.0]).
【0227】
最後に、qSOFAが28日間死亡率を予測する際に極めて高いハザード比(HR IQR[95%Cl]:30.12[5.56~163.24]、表16)を有したことが見られたが、2点のカットオフでの感度は、比較的低かった(0.58[0.36~0.77])。実際に、28日以内に死亡した本研究内の19人の患者のうち、8人(42.1%)が<2点のqSOFAスコアを有した。いずれの場合にも、MR-proADM値は、1.73nmol/Lを超えた。
【0228】
実施例の議論
本研究は、救急診療部での敗血症重症度のマーカーとしてのMR-proADMの使用を初めて導入し、その後の治療決定および疾患進行の可能性に関して疾患重症度の早期かつ正確な評価の重要性を一意的に強調する。
【0229】
このような評価は、最も早い機会に適切なレベルの治療を提供することにおいて不可欠である。確かに、抗生物質の投与が1時間遅れるごとに、最も重篤な症例では、8%近く死亡率が上昇し得ると示されている25。しかしながら、PCTおよびCRPなどの低レベルの診断バイオマーカーと組み合わせた比較的安定した臨床徴候および症状は、患者の感染状態の重症度が評価される間に、治療の遅延を引き起こす場合がある。これらの状況において、病態生理学的プロセスの早期に有意に増加したバイオマーカーは、緊急の静脈内抗生物質治療の必要性、および特定の敗血症療法の必要性を評価する際の迅速なツールを提供する可能性がある。
【0230】
したがって、本研究は、中間領域プロアドレノメドリンの使用が、この臨床的要件を満たす可能性があることを見出した。これまでの調査では、血管透過性、内皮および微小循環障害に応答してアドレノメドリンが増加することが示されており14、17、18、26、27、これらのすべては、臓器機能における任意のその後の合併症に先行する可能性が高い28、29
【0231】
我々の結果は、臨床接触の最も早い時点でのMR-proADM性能が、疾患重症度を評価することにおいて、すべての従来のバイオマーカーの性能よりも大きいことを示す。同様の結果が、既存の臓器機能不全に応じて患者をグループ分けし、低重症度群(SOFA<6)および中間重症度群(8~13点のSOFA)において優れたMR-ProADM性能を見出した、以前の集中治療敗血症研究で見れらた30。低臓器重症度群は、「敗血症の臨床経過における最も初期の提示および/または疾患のより重症度の低い形態を表す」30だけでなく、臨床ケアに入る最大の感染集団も表すため、特に対象となる。さらに、2つの研究集団間のカットオフ(1.73対1.79nmol/L)、ならびに28日間死亡率を予測するための高感度値(89%対83%)における類似性は、疾患の初期段階がより一般的であるED環境でのこのバイオマーカーの潜在的な使用を強化する。さらに、本研究内で見られた1.73nmol/Lのカットオフの使用は、潜在的な療法が遅滞なく適用されるべきである高リスク感染患者集団を識別するのに役立ち得る。
【0232】
qSOFAの使用に関する問題においても、以前の研究との類似点が見出された11。両方の研究では、感染性関連死亡を予測するための極めて低い感受性が見られ(58%および52%)、最初にqSOFAスコアが0または1点であった非生存患者は、かなりの割合であった。興味深いことに、これらの患者の各々において、MR-proADM値は、≧1.73nmol/Lであったため、疾患重症度評価の初期ツールとしてのマーカーの使用を強調し、この場合、確立された臨床徴候および症状よりも早く有意に増加している。
【0233】
MR-proADMを使用する限られた数の研究は、救急診療部を受診する患者における全死亡率に焦点を当ててきたが19~21、敗血症患者における抗生物質投与および抗生物質治療までの時間に関するMR-proADMの使用は、以前に調査されていない。PCTは、一般に、ICUでの抗生物質指導の最適なバイオマーカーとみなされるが31~33、多くの研究は、救急診療部におけるその使用に関して相反する結果を見出している34、35。我々の結果は、PCTが、CRPまたは乳酸塩よりも抗生物質の必要性および菌血症のより正確なバイオマーカーであることが見出されたことを示すが、MR-proADMの使用は、従来使用されるすべてのバイオマーカーと比較して優れていた。その理由は、部分的には、リポ多糖(LPS)刺激に応答してPCTまたはCRPのいずれかよりも著しく早く増加する、バイオマーカーの急速に誘導される動態に起因する可能性がある36~38。これは、火傷患者における敗血症の発症を調査する別の研究でも確認され、MR-proADM濃度は、敗血症の診断の1日前に有意に増加したのに対し、PCTレベルは、感染の日に有意に増加した39
【0234】
この研究に関して、患者ごとに、抗生物質の投与、治療までの時間、および疾患進行に関する詳細な情報、ならびに現在の疾患重症度識別のゴールド標準と新規バイオマーカーであるMR-proADMとの比較が注目された。すべての患者は、正しい診断を確実にするために、疾患専門医によって徹底的に見直された。
【0235】
結論として、MR-proADMは、疾患の重症度を評価する際に、複雑な臨床スコアに代わる迅速な診断を提供し得、不利な転帰を防止するために、抗生物質の緊急の必要性、疾患進行の可能性、および代替治療戦略の必要性に関する有用な臨床情報を提供することができる。これらの初歩的な調査結果を確認し、詳細に説明するためにさらなる研究が必要である。

【表1-1】
【表1-2】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
参考文献
1.Martin GS,Mannino DM,Eaton S,Moss M.The epidemiology of sepsis in the United States from 1979 through 2000.N Engl J Med.Apr 17 2003;348(16):1546-1554.
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【配列表】
2023111913000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症を有する疑いがある患者における抗生物質療法の指導、層別化、および/または制御のための方法であって、
-前記患者からの試料を提供することと、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片のレベルを判定することと、を含み、
-前記試料中のproADMまたはその一以上の断片の前記レベルが、抗生物質治療の開始または変更が必要であるかどうかを示す、前記方法。
【外国語明細書】