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特開2023-111991トランスフェクションおよび薬剤送達用の新規デバイス
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  • 特開-トランスフェクションおよび薬剤送達用の新規デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023111991
(43)【公開日】2023-08-10
(54)【発明の名称】トランスフェクションおよび薬剤送達用の新規デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20230803BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20230803BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094688
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2019527319の分割
【原出願日】2017-11-20
(31)【優先権主張番号】62/425,546
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514135801
【氏名又は名称】シーダーズ-サイナイ メディカル センター
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガジット ダン
(72)【発明者】
【氏名】ペレド ガディ
(72)【発明者】
【氏名】フェラーラ キャサリン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス ダグラス エヌ.
(57)【要約】
【課題】患者を処置するための超音波送信デバイスを提供する。
【解決手段】超音波送信デバイスは、撮像用プローブと、撮像用アレイと、治療用超音波デバイスとを含み;撮像用プローブは、撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており;治療用超音波デバイスは、患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されており;かつ、撮像用プローブおよび治療用超音波デバイスは、患者の組織または骨の移植部位に治療用超音波を適用するため互いに連携して働くよう構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を具備し、
該撮像用プローブは、該撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており、かつ
該治療用超音波デバイスは、該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されている、
患者を処置するための超音波送信デバイス。
【請求項2】
撮像用プローブおよび治療用超音波デバイスが、該撮像用プローブが患者の処置部位を同定したら共に位置合わせされるよう構成されている、請求項1記載の超音波送信デバイス。
【請求項3】
治療用超音波デバイスが、超音波放射器、レンズ、超音波エネルギーの適用に必要な他の素子および位相調整のうち、少なくとも1つを具備する、請求項1記載の超音波送信デバイス。
【請求項4】
超音波エネルギーが、超音波放射器を機械的に動かすこと、レンズの使用、ならびに複数の素子および電子位相調整(electronic phasing)の使用のうち、少なくとも1つによって方向付けられる、請求項3記載の超音波送信デバイス。
【請求項5】
患者の処置部位上に遺伝子材料をトランスフェクトするよう構成されたトランスフェクションデバイスをさらに具備する、請求項1記載の超音波送信デバイス。
【請求項6】
トランスフェクションが、エレクトロポレーション、細胞スクイージング(cell squeezing)、ナノ粒子、マグネトフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション(impalefection)、静水圧、持続注入、ならびに音波処理および化学物質のうち、少なくとも1つによって行われる、請求項5記載の超音波送信デバイス。
【請求項7】
吸引チューブが腸チューブに対して長手方向にスライドできるよう、吸引セクションがスライド可能式に該腸チューブの外側部分に接続されている、請求項1記載の吸引チューブ。
【請求項8】
超音波エネルギーが、過渡的キャビテーションによって処置部位上への薬剤送達を増強するよう構成されている、請求項1記載の超音波送信デバイス。
【請求項9】
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を具備し、
該撮像用プローブは、該撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており、
該治療用超音波デバイスは、該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されており、かつ
該撮像用プローブおよび該治療用超音波デバイスは、該患者の組織または骨の移植部位に治療用超音波を適用するため互いに連携して働くよう構成されている、
患者を処置するための超音波送信デバイス。
【請求項10】
制御された超音波エネルギー生成手段により組織または骨の領域を超音波照射するために用いられる超音波焦点を形成するように作動するよう構成された、請求項9記載の超音波送信デバイス。
【請求項11】
超音波焦点が、点焦点、分布した焦点、または組み合わせのうち少なくとも1つを含む、請求項10記載の超音波送信デバイス。
【請求項12】
超音波ビームの焦点エネルギーを掃引様式、複数同時集束様式、広範囲集束様式、またはこれら様式の組み合わせで三次元体積にわたって分布させることによって組織の領域を超音波照射するために超音波焦点を動かすよう構成された、請求項11記載の超音波送信デバイス。
【請求項13】
治療用超音波が、過渡的キャビテーションによって処置部位上への薬剤送達を増強するよう構成されている、請求項9記載の超音波送信デバイス。
【請求項14】
患者の処置部位のキャビテーションをモニターするよう構成された、請求項9記載の超音波送信デバイス。
【請求項15】
安定的キャビテーションを決定するよう構成された、請求項14記載の超音波送信デバイス。
【請求項16】
安定的キャビテーションの決定に基づいて処置を調整するようさらに構成された、請求項14記載の超音波送信デバイス。
【請求項17】
患者の処置部位上のキャビテーションの3次元マップを構築するよう構成された、請求項14記載の超音波送信デバイス。
【請求項18】
患者の処置部位上のキャビテーションの1次元マップ、2次元マップ、または4次元マップを構築するよう構成された、請求項14記載の超音波送信デバイス。
【請求項19】
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を具備する超音波送信デバイスを提供する段階;
該撮像用プローブ上または該撮像用プローブに隣接して置かれるよう構成された該撮像用アレイから発せられる超音波撮像を用いることによって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドする段階;ならびに
該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成する段階
を含む、患者を処置するための方法。
【請求項20】
撮像用プローブおよび治療用超音波デバイスが、該撮像用プローブが患者の処置部位を同定したら共に位置合わせされるよう構成されている、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野
本発明は、有効な組織治癒のためのデバイス、方法、およびシステムに関する。より具体的には、本開示のデバイス、方法、およびシステムは、超音波(US)を用いて同種異系トランスフェクションおよび/または薬剤送達をガイドおよび促進することを通じて、新規の組織治癒を提供する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
以下の説明は、本発明を理解するうえで有用となりうる情報を含む。以下の説明は、本明細書に提供する情報が先行技術であること、または、特許請求される本発明に関連することを認めるわけではない;以下の説明はまた、具体的もしくは暗示的に参照される刊行物が先行技術であることを認めるわけではない。
【0003】
偽関節骨折および靭帯/腱の断裂といった、骨格系の損傷は、整形外科患者の生活の質にとって深刻な結果をもたらす場合がある。偽関節骨折に対する現在の処置には自家移植が含まれるが、これは重篤な合併症または副作用を伴いうる。前十字靭帯(ACL)または回旋筋腱板の断裂は、自家移植片または同種異系移植片のいずれかを用いて再建されることが多いが、これは治癒期間の遷延および可動性の減少につながる。
【0004】
したがって、骨損傷および/または靭帯/腱の断裂からの患者の回復時間を短縮させることを目的とする方法は、臨床上の重要性が大きい。
【発明の概要】
【0005】
本開示の概要
骨および靭帯の修復が広く行われている現在において、修復手技後の患者の治癒が速くなると、病院費用および全体的な医療費が大幅に低減し、かつ、患者の経験も向上すると考えられる。
【0006】
整形外科医療の分野において、骨および靭帯/腱の修復を速めることができる新規の治療について、未だ満たされていないニーズが存在する。本開示のデバイスおよび方法は、超音波(US)を用いて同種異系トランスフェクションおよび/または薬剤送達をガイドおよび促進することを通じて、より有効な組織治癒を実施するための、革新的な手段を提供する。
【0007】
研究上の経験から、近年、ブタモデルにトランスフェクトされた同種異系遺伝子を用いることによって骨再生を誘導するために使用できる技法が示された。低強度超音波パルス(LIPUS)は、医療において診断にも骨治癒にも有効であることが何年も前から公知であったが、自己由来の骨移植片の治癒にもまた好影響を与えることが示されている。
【0008】
加えて、ウイルスを用いて実現される、骨形成タンパク質(BMP)遺伝子の送達は、齧歯類および大型動物において偽関節骨折の治癒を誘導すること、および、複数の動物モデルにおいて靭帯の統合(integration)も増強することが示されている。ウイルスベクターは最も効率的な遺伝子送達ツールであるが、一方で、腫瘍形成反応および免疫原性反応の潜在的リスクもまたもたらす。非ウイルスベクターは、遺伝子発現の効率がはるかに低いものの、ヒトに使用するうえでより安全であると考えられている。齧歯類における偽関節骨折部位内の内因性間葉系幹細胞(MSC)にBMP遺伝子を送達するために用いられたインビボエレクトロポレーションは、効率的な骨折治癒をもたらしたことが示されている。さらに、ソノポレーションと呼ばれる、遺伝子トランスフェクションの代替的な物理的方法、または遺伝子送達のための超音波の使用は、今日の診療において超音波が広く使われていることから、可能性がある臨床用途に対して特に魅力的である。
【0009】
しかし超音波は、齧歯類におけるBMP遺伝子送達および異所性骨形成に用いられて成功している一方で、エレクトロポレーションによって媒介される異所性骨形成よりも効率がはるかに低く、かつ、偽関節骨折モデルにおいて著明な骨修復につながらなかった。ソノポレーションおよび関連プロトコルは、現在、血液脳関門輸送の増強および急性心筋梗塞の処置について、ヒトにおける試験に到達している;しかしソノポレーションは、再生医学において、前臨床の大型動物モデルおよびヒトに使用する水準に到達できていない。実際には、ソノポレーションは、大型動物の骨折モデルにおいて、レポーター遺伝子を過剰発現させるために使用できることが示されている。近年、超音波をベースとした、内因性MSCへのBMP-6遺伝子送達は、ミニブタモデルにおいて分節性骨欠損の完全な修復をもたらした。さらに、同様のアプローチを用いて、ミニブタの膝関節におけるACL再建のために造られた骨トンネルに、プラスミドBMP-2が送達された。
【0010】
したがって、創傷治癒という目的のため、少なくとも1つの超音波プローブと、患者への遺伝子材料のトランスフェクションおよび/または薬剤送達を行うシステムとを、便利に組み合わせることによる、実際的かつ低侵襲のアプローチを用いた、回復時間の迅速化を目的としたデバイス、方法、およびシステムを開示する。遺伝子材料および/または薬剤を患者の標的部位に直接提供するための、便利で、安全で、かつ信頼できる方法もまた目的としている。
【0011】
本開示のシステムおよび方法は、USを用いて同種異系トランスフェクションおよび/または薬剤送達をガイドおよび促進することを通じて、シンプルで、安全で、有効で、かつ広範に適用可能な、組織治癒のための方法‐デバイスを提供する。
【0012】
加えて、本開示のシステムおよび方法は、超音波の使用を通じて正確な同種異系トランスフェクションを提供してもよい。例えば、創傷治癒を目的として患者への遺伝子材料のトランスフェクションをガイドおよび促進するため、手技における使用が協調的である、少なくとも2つの超音波プローブの組み合わせが開示される。
【0013】
トランスフェクションの方法には、例えば、エレクトロポレーション、細胞スクイージング(cell squeezing)、ナノ粒子、マグネトフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション(impalefection)、静水圧、持続注入、ならびに、リポフェクションなどの音波処理および化学物質、などが含まれうる。
【0014】
薬剤送達の方法には、集束超音波、過渡的キャビテーションなどが含まれうる。
【0015】
本開示のデバイスは撮像用アレイとしても治療用デバイスとしても機能し、撮像用アレイは治療用デバイスのポジションをガイドするために用いられる。いくつかの態様において、その組み合わせはまた、処置部位を正確に同定しかつ同時にそこを処置するという能力も提供する。
【0016】
本開示の1つの局面において、開示される超音波送信デバイスは少なくとも2つの超音波プローブを含み、第一の超音波プローブは撮像用アレイであるよう構成され、かつ、第二の超音波プローブは、第一の超音波プローブによって患者体内の処置位置までガイドされる治療用アレイであるよう構成される。
【0017】
第一の超音波プローブおよび第二の超音波プローブは、例えばクリップ、ファスナー、釘、および錠などの締結機構を介して一緒に接合された、取り外し可能な2つの構成要素であるよう構成されてもよい。代替的に、2つの超音波プローブは、接着剤により接合されてもよい。さらに別の態様において、2つの超音波プローブは、互いに取り外しできないよう取り付けられた単一の構成要素であるよう構成されてもよい。
【0018】
いくつかの態様において、本開示の処置デバイスは、ジンバルポジショナー(gimbal positioner)、クラムシェル、および/または治療用アレイケーブルを含んでいてもよい。代替的に、治療用アレイはコードレスであってもよく、かつ、それ自体の電池/電源を含んでいてもよい。
【0019】
第二の超音波プローブは、処置位置までガイドされたら、処置位置に超音波処置を適用してもよい。本開示の処置デバイスは、処置位置に対して同種異系トランスフェクションを行うよう構成されたトランスフェクションデバイスを含んでいてもよい。本開示の処置デバイスは、処置位置に対して有効な薬剤送達を行うよう構成された、別個の薬剤送達デバイスをさらに含んでいてもよい。
【0020】
いくつかの態様において、撮像用アレイは、治療用アレイのポジションをガイドおよび確認するよう構成されてもよい。治療用アレイは、患者の処置部位に対して治療用ビーム(例えば超音波)を発する、治療用の超音波処置デバイスを含んでいてもよい。治療用ビームはまた、薬剤が注入されたら/薬剤が患者によって吸収されたら、薬剤を処置部位までガイドしてもよい。
【0021】
いくつかの態様において、撮像用アレイは、薬剤送達デバイスのポジションをガイドおよび確認するよう構成されてもよい。薬剤送達デバイスは、薬剤を処置部位までガイドするため治療用ビームを発するよう構成された、それ自体の治療用アレイを含んでいてもよい。
【0022】
治療用ビームは、方位角次元(azimuthal dimension)においてビームラインに沿って分布してもよく、一方でまた、方位方向に拡張したこのビーム焦点を仰角次元(elevation dimension)において動的に再ポジショニングする能力も有していてもよい。このことは、患者の処置部位の大きな領域を治療用ビームで系統的に走査することを可能にし、それにより、同種異系トランスフェクションのプロセスを増強するという目的のため、意図される患者の処置領域を比較的均一に超音波照射することが可能となる。
【0023】
大きなアレイの超音波照射を実現するため、拡張ビームは任意の数の方式で掃引されてもよい;これらの方法には、(a)方位角方向および仰角方向の両方における、低速もしくは高速の集中的焦点の掃引(例えばラスター走査);(b)仰角方向における、低速もしくは高速の、方位角方向拡張焦点の走査;または、(c)最も有効な超音波照射を作り出すための、(a)と(b)との組み合わせ;が含まれる。ビームの音響強度は、焦点形状にかかわらず、望ましい強度(典型的に約30 mW/cm2)に維持されてもよい。
【0024】
1つの態様において、治療用アレイは1Dアレイまたは2Dアレイとして構成されてもよい。
【0025】
さらに別の態様において、治療用アレイは、例えば、患者の処置部位を検出する機械によって自動的に;第二の超音波プローブを動かすことによって機械的に;レンズの使用によって;ならびに、複数の素子および電子位相調整(electronic phasing)の使用によって、操舵/方向付けされてもよい。
【0026】
本開示の超音波送信デバイスは患者のニーズに合わせられてもよい:例えば、超音波送信デバイスは、より大きなスケール(例えば肩全体、膝全体など)に適用されるように、または、より小さなスケール(例えば骨トンネル)を処置するように、構成されてもよい。
【0027】
本開示の別の局面において、本開示の超音波送信器は、撮像用アレイおよび治療用デバイスという少なくとも2つのプローブを含み、撮像用アレイは、直径約4 mmの小孔を有する骨トンネルまたは類似物を明瞭に撮像するための充分な分解能を提供するよう構成される。
【0028】
超音波送信器は、骨トンネルの部位を超音波を用いて観察している間、撮像用アレイを静止ポジションにポジショニングするよう構成された、高度に調節可能なアームを含む。調節可能アームは、撮像用アレイを、あらかじめ形成された「クラムシェル」内に保持してもよい。クラムシェルは撮像用アレイを強固に保持してもよいが、必要な時に随時、撮像用アレイの取り外しおよび精密な置換を行うことを許容する。撮像用アレイを保持しているアームは、まず骨トンネルを明瞭に観察するためにポジショニングされ、そして、アレイのフェースからわずか数ミリメートルのところで、骨トンネルの小孔がアレイ画像と中心合わせされるよう、精密にポジショニングされる。
【0029】
治療用デバイスは、治療用の超音波信号を発してもよく、そして、手技中にこの超音波信号が時間平均的な様式で骨トンネルに分布するよう、そのビームエネルギーを動的に操舵できてもよい。この第二のデバイスは、撮像用アレイに統合されるか、または別個に使用されるかのいずれかであってもよい。別個に使用される場合、手技は以下のように行われてもよい:第一に、撮像用アレイが、そのビューを骨トンネル上に位置決めおよび中心合わせする;第二に、撮像用アレイがそのクラムシェルから取り外され、そして、治療用USデバイスを収容するための中央穴を備えた撮像用アレイ模倣物が、撮像用アレイを置換するために用いられる。このようにして、治療用超音波デバイスは、それ自体が撮像を行う必要なく、骨トンネルのところに直接ポジショニングされる。その円筒形デバイスで治療用超音波手技が行われてもよく、そして、骨トンネルのところで適切な位置となるようこの治療デバイスのポジションを確認するため、撮像用プローブが随時用いられてもよい。
【0030】
1つの態様において、超音波送信器は、治療用超音波デバイスを収容するための中央空間を備えた撮像用アレイを含んでいてもよく、または代替的に、アレイは、治療用超音波デバイスを収容するための中央穴を備えたアレイ模倣物で置換されうる、クラムシェルホルダー内に保持された完全な標準的アレイであってもよい。
【0031】
1つの態様において、治療用デバイスは、低周波数(1~2 MHz)の放出信号を伴う超音波送信を、典型的な治療用US手技において使用できる。US治療手技では、音圧波として生きた組織を通りかつ生きた組織の中に伝達される、一形態の機械的エネルギーが用いられる。その治療用手技では、一般に、平均強度30 mW/cm2、パルス幅200マイクロ秒で、1 kHzで反復する、1 MHzの波による、1日あたり20分間の処置が利用される。治療用US導波デバイスは、治療手技全体を通して、超音波エネルギーが骨トンネル内に均一な様式で分布するように作られる。これを実現しかつ組織との非外傷性インターフェースを維持するため、デバイスは、重要性の順に列挙する以下の説明のように作製される。
【0032】
1. 超音波エネルギーの生成
周波数範囲1~2 MHzであるシンプルな圧電トランスデューサで、治療用超音波の要件を満たすことができる。これは、必要な帯域幅が小さくかつ出力パワーが非常に少ないので、バッキング材を伴わず、かつ、実質的なマッチング層設計を伴わない、シンプルなディスクトランスデューサであってもよい。直径5 mmのトランスデューサの場合、期待される電気インピーダンスは約200オームであり、送信感度はおよそ5 kPa/Vであると考えられる。したがって、デバイスが必要とする駆動電圧は10 V未満であり、電力は250 mW未満であると考えられる。
【0033】
2. 処置対象組織に最良の超音波照射を行うための、非外傷性のトランスデューサハウジングおよび留置
ポリメチルペンテン(TPX、Mitsui Plastic社の商品名)など、超音波透過性が公知である材料が、トランスデューサ用のハウジングとして用いられてもよい。このようにして、トランスデューサおよびその可動部が完全に格納される。ハウジングチューブは、丸みを帯びた先端を伴って配置されてもよく、そして、治療用超音波手技中に骨トンネルの小孔部にまたはその近くにポジショニングされてもよい。撮像用アレイが超音波治療デバイスを収容するための中央ギャップを有している場合は、ボンドトンネルでのポジショニングのため、アレイによる先端の視認性を高めることができるよう、アレイハウジング先端の周りに薄い金属バンドが固定されてもよい。超音波透過性であるTPXシェル先端の使用が発展しており、1.5 MHzのエコー信号を顕著に妨げることはないと考えられる。
【0034】
3. ビーム操舵
治療用超音波パワーの周波数がそのように低く、かつ、組織に対して非常に近くから適用されることによって、ビームは、骨トンネルの内部から反射されてより複雑な波になるまで、主として放射球面波として存在する。骨トンネル内部の組織材料が、筋肉および肝臓と同程度の超音波減衰特性(すなわち0.5 dB/cm/MHz)を有するならば、これは、長さ15 mmの骨トンネルの端部における損失がわずか約1 dB(パワーの20%)であることを意味する。これは非常に少ない減衰である。
【0035】
超音波の放射パターン(「ビーム」としても公知である)によって、骨トンネル内に均一な時間平均超音波照射が生成されるようにするため、これを実現するようビームが操作されてもよい。トランスデューサは、単一素子または複数素子のデバイスとして存在してもよい。ビームの全般的な方向はまた、トランスデューサまたはレンズの機械的回転による影響を受けてもよい。
【0036】
トランスデューサの揺動は、機械的なワブラー(wobbler)または回転する固定レンズのいずれかという、2つの手段によって実現されてもよい。機械的なワブラーの場合、トランスデューサ(環状アレイまたは単一素子のいずれか)は、トランスデューサワイヤを封入しかつ中心軸から10~15度の傾斜角を許容する柔軟なエラストマーで作られたシャフト上にマウントされてもよい。緑色の管状シャフトが、管状シャフトが回転する際にトランスデューサを傾斜させる単一のオフセットボールとともに、回転する。
【0037】
レンズの使用において、ビームを軸から約10~15度ずらして操舵できる、例えばTPX(本明細書において速度2200 m/sの例示的材料)のレンズが作られてもよい。レンズはトランスデューサの前側フェースに直接結合されてもよい;または代替的に、レンズが先端内で回転してもよく、一方でトランスデューサが所定のポジションに固定されたままであってもよい。前者の場合、トランスデューサとレンズとのアセンブリ全体が、回転するか、または、+180度、-180度の振動パターンで回転する。
【0038】
デバイスが可動部を有さない可能性もあり、したがって(トランスデューサのチューブハウジング内における)水またはゲルとの連結に伴う問題を有さない可能性もある。治療用超音波トランスデューサのフェースは、平らであるが、ドーム状先端を作り出すため超音波適合材料で覆われる。トランスデューサのフェースは、環状アレイとして配置されるのではなく、よりマトリックスの様式に配置された、わずか数個の素子を有する。(すべてではなく)特定の素子を選択することによって、または代替的に、すべてを選択するが位相および/もしくは振幅の変更を伴うことによって、組織全体にわたる均一な時間平均超音波照射という目標を実現できるほど充分に、ビームを変化させることができる。望ましくない側方共振を防ぎ、かつ、各素子における厚さモード共振のみを促すためには、本発明の素子のサイズおよび周波数(1.5 MHz)ゆえに、素子のサブダイスが必要となる可能性がある。サブダイスを行うことは難しくない。
【0039】
提案するデバイスは、患者の骨損傷または靭帯/筋肉断裂からの回復時間を短縮できる大きな可能性を有する。提案するデバイスはまた、例えば脳(頭蓋骨からの干渉)、耳道、眼窩内、歯髄、骨髄、心臓および肺(肋骨からの干渉)、脊髄および椎間板(椎骨からの干渉)、ならびに軟骨など、骨構造から超音波への干渉が生じる可能性がある任意の処置部位にも用いられてもよい。また、都合のよい点として、本開示のデバイスおよび方法は、同種異系トランスフェクションまたは薬剤送達と組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
これらデバイスおよび方法の実施は、特に、患者の回復時間の短縮、患者の快適性および自律性の増大、ケア提供者の時間の短縮、毎日の吸引セットの減少など、測定可能なアウトカム向上をもたらすと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本明細書に組み込まれかつその一部を成す添付の図面は、本発明の諸態様を例証し、かつ、本明細書の記述とともに本発明の原理を説明および例示する。図面は、例示的諸態様の主な特徴を図の様式で例示することを意図している。図面は、実際の態様のすべての特徴を描写することも、また描写される要素の相対的寸法を描写することも、意図しておらず、かつ、一律の縮尺で描かれているわけではない。
【0042】
図1】本開示の原理に基づく、超音波を通じた治癒のためのシステムの例を示した図である。
図2A】本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、異なる例を示した図である。
図2B】本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、異なる例を示した図である。
図2C】本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、異なる例を示した図である。
図2D】本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、異なる例を示した図である。
図3図3A~3Dは、本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、別の例を示した図である。
図4】本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの、さらに別の例を示した図である。
図5図5Aは、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスの例を示した図である。図5Bは、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスの、さらに別の例を示した図である。
図6図6A~6Gは、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスによって発せられる超音波放射パターンの、異なる例を示した図である。
図7】本開示の原理に基づく固体アレイの例を示した図である。
【0043】
図面において、理解しやすさおよび利便性のため、同じ参照番号および頭文字は、構造または機能性が同じかまたは同様である要素または行為を同定する。具体的な要素または行為についての説明を容易に同定できるよう、参照番号における最上位桁は、その要素が最初に紹介されている図面番号を示している。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
添付の図面において説明および/または例示されかつ以下の説明において詳述される、非限定的な実施形態および実施例を参照しながら、本開示と、その様々な特徴および有利な細部とを、より詳しく説明する。図面に例示される特徴は必ずしも縮尺が一律でないこと、および、たとえ本明細書に明示されていなくても、当業者に認識されるであろうように、1つの実施形態の特徴が他の実施形態とともに利用されてもよいことが、留意されるべきである。本開示の実施を不必要に妨げることがないよう、周知の構成要素および処理技法の説明は省略される場合がある。本明細書において用いられる例は、本開示がどのように実現されうるかという理解を容易にすること、および、当業者が本開示の実施形態を実現できる可能性をさらに高めることを、意図しているにすぎない。したがって、本明細書における実施例および実施形態は、本開示の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0045】
他に特段に定義されない限り、本明細書において用いる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。Szycher's Dictionary of Medical Devices CRC Press, 1995は、本明細書において用いる多数の用語および句について有用な指針を提供する可能性がある。当業者には、本発明の実現において用いられてもよい、本明細書に説明するものと同様または等価な多数の方法および材料が認識されるであろう。事実、本発明は、具体的に説明する方法および材料にいかなる方式でも限定されることはない。
【0046】
いくつかの態様において、本発明の特定の態様について説明および特許請求するために用いられる、寸法、形状、および相対的ポジションなどの特質は、「約(about)」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。
【0047】
以下に本発明の様々な実施例を説明する。以下の説明は、これら実施例を充分に理解しかつその説明を可能にするための、具体的詳細を提供する。しかし、関連分野の当業者には、これら詳細の多くがなくても本発明が実現されうることが理解されるであろう。同様に、関連分野の当業者にはまた、本明細書において詳述されない他の多数の明白な特徴を本発明が含んでいてもよいことも理解されるであろう。加えて、関連する説明を不必要に妨げることを避けるため、いくつかの周知の構造または機能は、以下に提示または詳述されない可能性もある。
【0048】
以下に用いる専門用語は、本発明の特定の具体例の詳細な説明とともに用いられている場合であっても、その最も広い妥当な様式で解釈されるべきである。実際には、特定の用語が以下において強調すらされる可能性がある;ただし、何らかの制限された様式で解釈されることが意図される専門用語は、この詳細な説明の項において明白かつ具体的にそのように定義される。
【0049】
本明細書は多数の具体的な実施形態の詳細を含有するが、これらは、いかなる発明の範囲または特許請求されうるものの範囲に対しても限定として解釈されるべきでなく、むしろ、特定の発明の特定の実施形態に特有な特徴の説明として解釈されるべきである。別々の実施形態の文脈において本明細書に説明される特定の特徴は、単一の実施形態における組み合わせにおいてもまた実施されうる。逆に、単一の実施形態の文脈において説明される様々な特徴もまた、複数の実施形態において別々に、または、任意の好適な下位組み合わせにおいて、実施されうる。さらに、特徴は、特定の組み合わせにおいて作用するものとして上述されるか、または最初にそのように特許請求すらされる可能性もあるが、特許請求される組み合わせにおける1つまたは複数の特徴が、一部の場合においてその組み合わせから削除されてもよく、かつ、特許請求される組み合わせが、下位組み合わせまたは下位組み合わせのバリエーションに向けられてもよい。
【0050】
同様に、図面において動作が特定の順序で描写されている可能性があるが、これは、そのような動作がその特定の順序もしくは逐次的順序で行われること、または、図示されているすべての動作が行われることが、望ましい結果を実現するために必要であると理解されるべきではない。特定の状況において、マルチタスキングおよび並列処理が有利である可能性もある。さらに、上述の実施形態における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実施形態においてそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、かつ、本明細書に説明するプログラム構成要素およびシステムは、概して、単一のソフトウェア製品に一緒に統合されるかまたは複数のソフトウェア製品にパッケージ化されてもよいことが理解されるべきである。
【0051】
図1に、脛骨および腓骨の両方に関わる複雑な骨欠損の修復部位130に向けられた治療用アレイ120を示している、治療用デバイス110の用途の例を示す。撮像用プローブ140が治療用アレイ120のポジションをガイドおよび確認する。簡潔さのため、ジンバルポジショナー、クラムシェル、および治療用アレイケーブルは図面において省略されている。治療用デバイス110は、修復部位を検出し、かつ、既定の(または状況に基づいて動的に変化する)波長で超音波治療を適用する治療用アレイ120をガイドする、撮像用アレイを含む。
【0052】
治療用デバイス110はまた、そのような部位が撮像用プローブによって同定および位置決めされたら、修復部位上に遺伝子材料のトランスフェクションを行う、トランスフェクション用のデバイスまたはシステム(図には示していない)も含んでいてもよい。
【0053】
トランスフェクションの方法/システムには、例えば、エレクトロポレーション、細胞スクイージング、ナノ粒子、マグネトフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション、静水圧、持続注入、ならびに、リポフェクションなどの音波処理および化学物質、などが含まれうる。
【0054】
図2A~2Dに、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスから発せられる、操舵可能な超音波ビームの、異なる例を示す。図2Aは、長軸形状を備え、かつ、アレイ曲面を覆うランダムな(しかし公知の)ポジションにアレイ素子210が概ね記述された、操舵可能な治療用アレイ200の例を示している。図に示すように、主焦点が幾何学中心の焦点領域220から外れるよう操舵されたときに、望ましくないグレーティングローブを防ぐのに役立つよう、大きな治療用アレイは、ランダムな様式に配置された小さな素子210を含んでいてもよい。
【0055】
図2Bにおいて、治療用アレイ200の中心軸に沿って位置合わせされていることを示している、撮像用アレイ230が追加されている。図に示すように、この大きなアレイ230の鍵となる設計局面は、(厳密に球面の一部である表面であることよりむしろ)その長い方位角方向の寸法である;これは、アレイの、方位角方向の拡張焦点を作り出す能力を増強するために行われる。さらに鍵となる局面は、撮像用アレイを使用するための収容部(中央キャビティ)である。
【0056】
図2Cは、撮像平面240と、治療用アレイ200によって作り出された拡張焦点領域である円柱形領域250とを示している。比較的標準的な撮像用アレイをガイド用に用いることに加えて、本デバイスの鍵となる局面は、方位角次元においてビームラインに沿って分布するビームを作り出せる能力であり、一方でまた、方位角方向に拡張したこのビーム焦点を、仰角次元において動的に再ポジショニングする能力も有することである。この様式において、非常に大きな領域を系統的に走査することができ、それにより、同種異系トランスフェクションのプロセスを増強するという目的のため、意図される領域を比較的均一に超音波照射することが可能となる。大きなアレイの超音波照射を実現するため、拡張ビームは任意の数の方式で掃引されてもよい;これらの方法には、(a)方位角方向および仰角方向の両方における、低速もしくは高速の集中的焦点の掃引(例えばラスター走査);(b)仰角方向における、低速もしくは高速の、方位角方向拡張焦点の走査;または、(c)最も有効な超音波照射を作り出すための、(a)と(b)との組み合わせ;が含まれる。ビームの音響強度は、焦点形状にかかわらず、望ましい強度(典型的に約30 mW/cm2)に維持されてもよい。
【0057】
図2Dは、(例えば図2Cに示したような)拡張焦点領域が、仰角方向の平面内で操舵されてもよいことを示しており、このことは、治療用超音波照射の正味のアレイを大きくすることを可能にする。
【0058】
図3A~3Bに、1Dアレイまたは2Dアレイとして実現されてもよい平面状治療用アレイの例を示す。治療用USビームは、操舵中、非常に広く集束されてもよいので、多数の素子および小サイズのアレイ素子は必ずしも必要でない。操舵可能な治療用アレイは、1Dアレイまたは2Dアレイが低強度ビーム送信器として作動することを可能にするような方式で素子が分布している、比較的平面状のデバイスとして示されている。図3Aにおいて、平面状の1Dアレイが、ガイド用の撮像用トランスデューサのための中央スロットを伴って構成されている;図3Bにおいて、アレイは、所定の位置にある撮像用トランスデューサアレイとともに示されている;そして、図3Cにおいて、低いチャネルカウントを可能にするほど充分に粗いが、意図される領域を超音波照射するための適切なビーム操舵を可能にするほど充分に高度な素子を備えた2Dセグメント化アレイが示されている。
【0059】
図4に、本開示の原理に基づく操舵可能な治療用アレイの例を示す。用途に適した曲面および曲率半径を伴う、(図に示すような)操舵可能な治療用アレイ(例えば、図1に描写されているような膝関節用途には、50~75 mmの範囲内のROCが適している)。本発明の治療アレイは高強度をもたらさないので、治療アレイ素子区域410は比較的小さいが、事実上いかなる方向においても低周波数操舵を行えるよう、各素子を位相調整することを可能にする。治療サブアレイの4つのグループ間の広いギャップは「グレーティングローブ」を生成するが、これらはほとんど影響をもたらさないと考えられる;これは一般的な設計例であるので、素子の正確な数および分布はフレキシブルである。撮像用素子(黄色)は6 MHzでの撮像を可能にし、それにより、最大10 cmの深度まで、方位角方向および仰角方向の両方において良好なフォーカシングが可能になる。+/--15度の仰角方向操舵を容易に行えるよう、仰角方向のフォーカシングにおいて撮像平面が位相調整されてもよい;これは、撮像周波数の低下または仰角方向ピッチの低減のいずれかによって、必要に応じて増大されてもよい。この設計における、ここに示す撮像は、リニアアレイの標準的な移動アパーチャによって、または、合成アパーチャの実現においてサブアパーチャを総合することによって、実現されてもよい。
【0060】
図5AおよびBに、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスの、異なる例を示す。この第一のデバイスは、直径約4 mmの小孔を有する骨トンネルまたは同様物を明瞭に撮像できるほどの充分な分解能を備えた、超音波撮像用プローブであってもよい。このデバイスは、骨トンネルの部位を超音波を用いて観察している間、撮像用アレイを静止ポジションにポジショニングする、(例えば図5Aに示すような)高度に調節可能なアーム上で支持される。調節可能アームは、撮像用アレイを、(例えば図5bに示すような)あらかじめ形成された「クラムシェル」内に保持してもよい。クラムシェルはアレイを強固に保持するが、必要な時に随時、撮像用アレイの取り外しおよび精密な置換を行うことを許容する。撮像用アレイを保持しているアームは、まず骨トンネルを明瞭に観察するためにポジショニングされてもよく、そして、アレイのフェースからわずか数ミリメートルのところで、骨トンネルの小孔がアレイ画像と中心合わせされるよう、精密にポジショニングされる。第二のデバイスは、治療用の超音波信号を発し、そして、手技中にこの超音波信号が時間平均的な様式で骨トンネルに分布するよう、そのビームエネルギーを動的に操舵することができる。この第二のデバイスは、撮像用アレイに統合されるか、または別個に使用されるかのいずれかであってもよい。別個に使用される場合、手技は以下のように行われる:第一に、撮像用アレイが、そのビューを骨トンネル上に位置決めおよび中心合わせする;第二に、(例えば図5Bに示すように)撮像用アレイがそのクラムシェルから取り外され、そして、治療用USデバイスを収容するための中央穴を備えた撮像用アレイ模倣物が、撮像用アレイを置換するために用いられる。このようにして、治療用超音波デバイスは、それ自体が撮像を行う必要なく、骨トンネルのところに直接ポジショニングされる。その円筒形デバイスで治療用超音波手技が行われ、そして、骨トンネルのところで適切な位置となるようこの治療デバイスのポジションを確認するため、撮像用プローブが随時用いられてもよい。
【0061】
図6A~6Gに、本開示の原理に基づいて構築された治療用デバイスによって発せられる超音波放射パターンの、異なる例を示す。治療用超音波トランスデューサデバイスについての設計バリエーションが示されている。図6A~6Dにおいて、TPXシェルが治療トランスデューサアセンブリを覆っている。図6Aにおいて、ポジションが固定された単一のディスクトランスデューサが用いられている;この単一素子もまた図6Cのように揺動されてもよい。図6Bにおいて、図6E~6Gに示す様々な幅のビームを生成できる環状アレイが示されている。ビームは、図6Cのように機械的に揺動されてもよく、または図6Dのようにレンズにより揺動されてもよい。
【0062】
トランスデューサの揺動は、機械的なワブラーまたは回転する固定レンズのいずれかという、2つの手段によって実現されてもよい。機械的なワブラーの場合(例えば図2Cを参照)、トランスデューサ(環状アレイまたは単一素子のいずれか)は、トランスデューサワイヤを封入しかつ中心軸から10~15度の傾斜角を許容する柔軟なエラストマーで作られたシャフト(黄色で示されている)上にマウントされてもよい。緑色の管状シャフトが、管状シャフトが回転する際にトランスデューサを傾斜させる単一のオフセットボールとともに、回転する。
【0063】
(d)に示すようなレンズの使用において、ビームを軸から約10~15度ずらして操舵できる、TPX(本明細書において速度2200 m/sの例示的材料)のレンズが作られてもよい。レンズはトランスデューサの前側フェースに直接結合されてもよい;または代替的に、レンズが先端内で回転してもよく、一方でトランスデューサが所定のポジションに固定されたままであってもよい。前者の場合、トランスデューサとレンズとのアセンブリ全体が、回転するか、または、+180度、-180度の振動パターンで回転する。
【0064】
究極的に、最も信頼性の高いデバイスは、可動部を有さず、したがって(トランスデューサのチューブハウジング内における)水またはゲルとの連結に伴う問題も有さないと考えられる。治療用USトランスデューサのフェースは、平らであるが、ドーム状先端を作り出すため超音波適合材料で覆われる。トランスデューサのフェースは、環状アレイとして配置されるのではなく、よりマトリックスの様式に配置された、わずか数個の素子を有する。(すべてではなく)特定の素子を選択することによって、または代替的に、すべてを選択するが位相および/もしくは振幅の変更を伴うことによって、組織全体にわたる均一な時間平均超音波照射という目標を実現できるほど充分に、ビームを変化させることができる。望ましくない側方共振を防ぎ、かつ、各素子における厚さモード共振のみを促すためには、本発明の素子のサイズおよび周波数(1.5 MHz)ゆえに、素子のサブダイスが必要となる可能性がある。サブダイスを行うことは難しくない。固体アパーチャのフェースの例を図7に示す。
【0065】
図7に、本開示の原理に基づく固体アレイの例を示す。9つの素子を伴う固体アレイが示されており(a)、これらの素子は、治療用USという目的のために、一定したパワー密度を維持しながら方向性が変化するビームを作り出すため、必要に応じて位相調整または重み付けされてもよい。シンプルであるが、信号エネルギー伝達およびビーム操舵について同程度に有効である可能性が高いものが(b)に示されており、これは、位相調整される素子を4つのみ用いている。
【0066】
態様
態様1.
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を含み、
該撮像用プローブは、該撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており、かつ
該治療用超音波デバイスは、該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されている、
患者を処置するための超音波送信デバイス。
態様2. 撮像用プローブおよび治療用超音波デバイスが、該撮像用プローブが患者の処置部位を同定したら共に位置合わせされるよう構成されている、態様1の超音波送信デバイス。
態様3. 治療用超音波デバイスが、超音波放射器、レンズ、超音波エネルギーの適用に必要な他の素子および位相調整のうち、少なくとも1つを含む、態様1の超音波送信デバイス。
態様4. 超音波エネルギーが、超音波放射器を機械的に動かすこと、レンズの使用、ならびに複数の素子および電子位相調整(electronic phasing)の使用のうち、少なくとも1つによって方向付けられる、態様3の超音波送信デバイス。
態様5. 患者の処置部位上に遺伝子材料をトランスフェクトするよう構成されたトランスフェクションデバイスをさらに含む、態様1の超音波送信デバイス。
態様6. トランスフェクションが、エレクトロポレーション、細胞スクイージング(cell squeezing)、ナノ粒子、マグネトフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、インペールフェクション(impalefection)、静水圧、持続注入、ならびに音波処理および化学物質のうち、少なくとも1つによって行われる、態様5の超音波送信デバイス。
態様7. 吸引チューブが腸チューブに対して長手方向にスライドできるよう、吸引セクションがスライド可能式に該腸チューブの外側部分に接続されている、態様1の吸引チューブ。
態様8. 超音波エネルギーが、過渡的キャビテーションによって処置部位上への薬剤送達を増強するよう構成されている、態様1の超音波送信デバイス。
態様9.
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を含み、
該撮像用プローブは、該撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており、
該治療用超音波デバイスは、該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されており、かつ
該撮像用プローブおよび該治療用超音波デバイスは、該患者の組織または骨の移植部位に治療用超音波を適用するため互いに連携して働くよう構成されている、
患者を処置するための超音波送信デバイス。
態様10. 制御された超音波エネルギー生成手段により組織または骨の領域を超音波照射するために用いられる超音波焦点を形成するように作動するよう構成された、態様9の超音波送信デバイス。
態様11. 超音波焦点が、点焦点、分布した焦点、または組み合わせのうち少なくとも1つを含む、態様10の超音波送信デバイス。
態様12. 超音波ビームの焦点エネルギーを掃引様式、複数同時集束様式、広範囲集束様式、またはこれら様式の組み合わせで三次元体積にわたって分布させることによって組織の領域を超音波照射するために超音波焦点を動かすよう構成された、態様11の超音波送信デバイス。
態様13. 治療用超音波が、過渡的キャビテーションによって処置部位上への薬剤送達を増強するよう構成されている、態様9の超音波送信デバイス。
態様14. 患者の処置部位のキャビテーションをモニターするよう構成された、態様9の超音波送信デバイス。
態様15. 安定的キャビテーションを決定するよう構成された、態様14の超音波送信デバイス。
態様16. 安定的キャビテーションの決定に基づいて処置を調整するようさらに構成された、態様14の超音波送信デバイス。
態様17. 患者の処置部位上のキャビテーションの3次元マップを構築するよう構成された、態様14の超音波送信デバイス。
態様18. 患者の処置部位上のキャビテーションの1次元マップ、2次元マップ、または4次元マップを構築するよう構成された、態様14の超音波送信デバイス。
態様19.
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を含む超音波送信デバイスを提供する段階;
該撮像用プローブ上または該撮像用プローブに隣接して置かれるよう構成された該撮像用アレイから発せられる超音波撮像を用いることによって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドする段階;ならびに
該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成する段階
を含む、患者を処置するための方法。
態様20. 撮像用プローブおよび治療用超音波デバイスが、該撮像用プローブが患者の処置部位を同定したら共に位置合わせされるよう構成されている、態様19の方法。
【0067】
結論
上述の様々な方法および技法は、本発明を行うための多数の方式を提供する。無論、本明細書に説明するいかなる特定の態様に基づいても、本明細書に説明するすべての目的または利点が必ずしも実現されうるわけではないことが、理解されるべきである。ゆえに、例えば、本明細書に教示するような1つの利点または1群の利点を実現または最適化するが、本明細書に教示または示唆するような他の目的または利点を必ずしも実現しない様式で、本発明の方法が行われてもよいことが、当業者に認識されるであろう。様々な代替物が本明細書において言及されている。いくつかの態様は、1つの、別の、もしくは複数の特徴を具体的に含み;他の態様は、1つの、別の、もしくは複数の特徴を具体的に排除し;さらに他の態様は、1つの、別の、もしくは複数の有利な特徴を含むことによって、特定の特徴を緩和することが、理解されるべきである。
【0068】
さらに、当業者には、異なる諸態様による様々な特徴の適用性が認識されるであろう。同様に、本明細書に説明する原理に基づいた方法を行うため、上述した様々な要素、特徴、および段階、ならびに、そうした各要素、特徴、または段階に対する他の公知の同等物が、当分野の当業者によって、様々な組み合わせで利用されてもよい。多様な態様において、様々な要素、特徴、および段階のうち、いくつかは具体的に含まれ、そして他のものは具体的に排除されるであろう。
【0069】
特定の態様および実施例の文脈において本出願を開示したが、本出願の態様は、具体的に開示される態様を超えて、他の代替的な態様ならびに/または使用および改変、ならびにそれらの同等物にまで拡張されることが、当業者に理解されるであろう。
【0070】
いくつかの態様において、本出願の特定の態様を説明する文脈において(特に添付の特許請求の範囲のうち特定の請求項の文脈において)用いられる、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語、ならびに同様の参照は、単数形および複数形をいずれも対象に含むとみなされうる。本明細書における値の範囲の詳述は、その範囲内に入る各個別の値を個々に参照することの簡略的な方法として役立つよう意図されているにすぎない。本明細書において別段の断りがない限り、個々の各値は、それが本明細書において個々に詳述されているかのごとく、本明細書に組み込まれる。本明細書に説明するすべての方法は、本明細書において別段の断りがあるかまたは文脈によって明瞭に否定されるのでない限り、任意の好適な順序で行われてよい。本明細書において特定の態様に関して提供される、いかなる例または例示的言葉(例えば「~など(such as)」)の使用も、本出願をより明確にすることを意図しているにすぎず、別段に特許請求される本出願の範囲に対して限定をもたらすことはない。本明細書におけるいかなる言葉も、特許請求されない要素が本出願の実現に不可欠であることを示すものとみなされるべきでない。
【0071】
本出願の特定の態様が本明細書に説明されている。それらの態様に対するバリエーションは、当業者にとって、以上の説明を読めば明らかになるであろう。当業者がそうしたバリエーションを適切に利用できることが予期され、そして本出願は、本明細書に具体的に説明した以外の方式でも実現されうる。したがって、本出願の多くの態様は、準拠法によって許容されるように、添付の特許請求の範囲において詳述される対象事項のすべての改変物および同等物を含む。さらに、本明細書において別段の断りがあるかまたは文脈によって明瞭に否定されるのでない限り、上述の要素の、すべての可能なバリエーションにおける任意の組み合わせが、本出願に包含される。
【0072】
本発明の対象事項の特定の実施形態を説明した。他の実施形態も添付の特許請求の範囲内に入る。いくつかの場合において、特許請求の範囲において詳述されている行為が、異なる順序で行われ、なおかつ望ましい結果が実現される可能性もある。加えて、添付の図面に描写されているプロセスは、望ましい結果を実現するのに、示されている特定の順序または逐次的順序を必ずしも必要としない。
【0073】
本明細書において参照されている、すべての特許、特許出願、特許出願の刊行物、ならびに、記事、書籍、明細書、刊行物、文書、および/または物など他の資料は、これらに関連する出願経過書類(prosecution file history)、これらのうち本文書と矛盾もしくは対立するもの、または、これらのうち、現在もしくは後に本文書に関連付けられる特許請求の範囲の、最も広い範囲に対して、限定的な影響を有しうるものを除いて、この参照により、すべての目的についてその全内容が本明細書に組み入れられる。例として、組み入れられる資料のいずれかに関連する説明、定義、および/または用語の使用と、本文書に関連するそれらとの間に、何らかの矛盾または対立が存在するならば、本文書における説明、定義、および/または用語の使用が優先する。
【0074】
最後に、本明細書に開示する本出願の態様は、本出願の諸態様の原理を例示するものであることが理解されるべきである。用いられうる他の改変も本出願の範囲内に入る可能性がある。ゆえに、限定としてではなく例として、本明細書の態様の代替的構成が、本明細書における教示に従って利用されてもよい。したがって、本出願の態様は、図示および説明されるとおりのものに限定されるわけではない。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用プローブと、
撮像用アレイと、
治療用超音波デバイスと
を具備し、
該撮像用プローブは、該撮像用アレイによる超音波撮像の使用によって、該治療用超音波デバイスを患者の処置部位までガイドするよう構成されており、かつ
該治療用超音波デバイスは、該患者の処置部位を処置するための制御された強度の超音波エネルギーを生成するよう構成されている、
患者を処置するための超音波送信デバイス。